霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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九 母は栗柄へ

インフォメーション
題名:9 母は栗柄へ 著者:出口澄子
ページ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :B124900c11
001 そのうちにおりょうさんは子守り奉公にゆき、002私は西町(にしまち)の大槻鹿造さんのところにあずけられました。003そうして母は栗柄(くりから)というところへ糸ひきにゆかれました。
004 西町にあずけられた私は、005自分の生まれた新宮(しんぐう)の家が恋しくて、006家を見にかえりました。007母さんは栗柄(くりから)に出かせぎに、008家には鍵がかかっていました。009それでも私は家の(まわ)りをぐるぐる廻って楽しみました。010家のぐるりには母さんの植えてゆかれたナンバ(唐黍(とうきび))が背高く伸びていました。011風の吹くたびにナンバの大きな葉が鳴り、012青い皮のある実がゆれました。013昼も夜もこのごろは母さんから離れて、014さびしい思いの私に、015母さんの植えてゆかれたナンバは眼に()みるようでした。016しかし私はなぜかそのナンバの毛をむしりとって両手ではさんで、017「毛が生えた毛が生えた」と大声で言いながら町を走ってゆきました。018町を通る人が面白がって見る。019その表情に、020私の悲しみはかえってするどくなるのですが、021私にはなぜか、022そうしなければ()られないのでした。023そしてまた西町にもどりました。
024 ある日、025西町で伝吉(でんきち)兄さんから糸つなぎを習っていますと、026そこへ母さんが栗柄(くりから)からひょっこり帰ってこられ、027大変ほめてもらったことをおぼえています。
028 母は夏中を糸引きして、029働いた金で、030私のあずけ(ちん)として西町の大槻鹿造のところへ、031一日米三合とおかず代として三銭を払っておられました。032私には八十銭で双子縞(ふたごじま)の着物を一反(いったん)買って下さいました。033これが母さんが私に初めて()うて下さいました着物で、034その時のよろこびとともに色目(いろめ)までもよくおぼえています。035()の姉たちは他家(よそ)(とつ)いだり奉公にでかけて私一人が残っておりましたところで、036教祖さまとしましても一番生計(せいけい)の楽なころであったようです。
037 私もあずけられてはいましても、038一人で一瀬山(いちのせやま)に柴刈りにでかけ働いておりました。039ある時、040柴を背負って帰りの(みち)(のど)が乾いてしようがないので、041池のところに降りて水を飲もうと思い、042池の(とい)のところに足をかけて、043手でゴミを分けながら、044口を水面に近づけようとしたはずみに、045池の(とい)がゴトンとはずれて私は池に落ちこみました。046私はあわてて無我夢中で這い上がりましたが、047手の指の爪の中の半分どころまで土がささっていました。048えらい勢いで生命(いのち)がけで這い上がったものらしいです。
049 (とい)がはずれると池の水が近くの田に流れこんだので、050働いていた百姓さんがびっくりしてかけ上がってきてくれました。
051「お前、052自分ではい上がれたのか」と聞くので「はい一人で上がりました」と言うていると、053「なんと運のよい子じゃのう」と言って感心しておりました。054それは(とい)がはずれると池の水が非常な勢いで走り出るので、055水の力に吸いこまれて大人でも生命(いのち)をとられることがあるそうです。
056 いまの彰徳殿(しょうとくでん)の近くの池に(ひし)の実とりにゆき、057溺れかけたこともありましたが、058その時も不思議に助かりました。059そういうことは他にもありまして、060これは後になってその時その時、061神様に守られていることを分からしてもらいました。
062 蛍とりに夢中になって、063権現さんの森に迷いこんだこともありました。064どうしても外にでることができんので困りきっておりましたとき、065パッと目の前が明るくなって、066急に辺りが見えました。067その時はただ家に帰れた喜びで不思議なことに気付いていなかったのですが、068綾部の町はそのころ三百軒ほどしかなく、069権現さんの森はいまよりはずっと大きく、070年へた木が(しげ)っていたのです。071およね姉さんが(かん)がかりになった時に「熊野大権現であるぞ、072おすみ、073お前は蛍とりにきて道を(うしの)うて困っているとき、074こちが道を教えてやったことを覚えておるか」と言われまして、075不思議なことやと思ってきいたことがあります。
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