霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(九)

インフォメーション
題名:(九) 著者:浅野和三郎
ページ:31
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142400c11
 確か十月の初旬のある晩のことであつたと記憶する。夕飯も()うに済んで、子供達はモウ三人とも臥床(ふしど)に入つて了つた。自分は書斎から六畳の茶の()へ出で来て(たばこ)()んで居ると、火鉢の(そば)縫物(ぬひもの)をして居た妻は、やがて針を棄てて(たく)を隔てて自分の正面に坐つた。
『実は今晩残らす申上げて了はねばならぬ事がございます』
 平常(ふだん)とは違つて、大変真面目な、ツキ詰めた様子であつた。恁麼(こんな)ことは滅多に無いことなので、(いささ)か自分も眼を円くした。
『何ンのことかネ』自分は(わざ)と気軽く述べた所思(つもり)だつたが、実は早く後を聴きたかつた。
『はやく(まをし)上げよう申上げようと思つて居ましたが、叱られることが判つて居りますので、ツイ一日延ばし二日延ばして、モウ十日にもなります。実は三郎の事ですが、余り病気が捗々(はかばか)しくございませんので、あなたには内証で……』と涙ぐんで、言ひ渋るのであつた。
『イヤ構ふことはない。早くお言ひなさい。何うしたといふのか』
『実は……髪結(かみゆひ)から聞きまして──お祖師様の(わき)三峰山(みつみねざん)といふ(をんな)行者(ぎやうじや)の所へ三郎を連れて参りました──大変よくその祈祷が効くといひますので……』
『ナニ女行者?』と自分も奇想天外なるに(すくな)からず驚いた。『何故それを早く言はなかつたのか』
『申訳がございません。申上れば必然(きつと)()めなさるだらうと思ひまして、今度ばかりは(うま)れて初めて内証事を致しました。何時見付かつてお叱りを受けるかと真実(ほんと)に此十日ばかりといふものは辛い思ひを致しました……』
『うむ、左様(さう)か』と言つて、自分も暫時(しばし)黙つて腕を(こまぬ)いて了つた。
 段々()いて見ると、其女行者といふのは本名を石井ふゆと称し、孝信(かうしん)教会といふ看板を掲げて居るが、普通は三峰山(みつみねざん)といふ名称で通つて居るさうである。もと海軍工廠の職工の女房であるが、いつしか其一種の霊術が呼び物になり、殊に病気直し、当て物等には不思議な力量を(そな)へ、其実例は無数にあるとの事である。『お医者様の方で(なほ)らぬといふのなら、一遍お宅のお坊つちやまも連れて行つて御覧あそばせ』との髪結の勧めに任せ、自分には内証で十日程前にたうとう出掛けて行つたのださうである。
 之を聞いた時に、自分は先づ一種の侮辱を感ぜない訳に行かなかつた。いかに子供の病気が不治で困らうが、行者の(もと)に行つて、加持祈祷の如きものを受けようといふ考へは爪の(あか)ほども起らなかつた。(うま)れ落ちてから四十二歳の当時に至るまで、彼麼(あんな)ものは全然別世界の人間の()る事位に思つて居た。然るに自分には内証であつたとはいへ、自分の家族が、今女行者の門をくぐる! 実に何ともいへぬ不快な感じであつた。迷信といふ事は人間の弱みに付け込み、恁麼(こんな)(ふう)に其の手を延ばして行くのだらう、などとも考へた。自分の顔は恐らく羞恥の為に(あか)くなつた事であつたらう。(わき)の下からはポタポタ汗が垂れた。
 が、自分は其時()ういふものか、怒つて妻を叱る気にはなれなかつた。心の底では、加持祈祷などは九分九厘まで駄目なものと(きめ)て居たにも拘らず、暫時(しばらく)(のち)には妻に向つて次ぎのやうな事を()く丈けの心の落着(おちつき)()つて居た。
『その女行者は年齢(とし)は何歳位か』
『四十八九か五十位にもなるでせう』妻は天下の形勢が案外穏かであるのを見て安心したといふ風に、
頭髪(かみ)を切下げにしたお婆アさんで、一寸(ちよつと)見た丈けでは別に変つた所はございません』
『三郎の病気に就いて什麼(どんな)事を言つたかネ』
『不思議な事を申しましたよ。何んでも気管支の上部にソラマメ位の(きず)があつて、それが(なほ)りかけては()りむけ、癒りかけては又()りむける。それで低い熱が出るのださうです。お婆アさんには身体(からだ)の内部まで透視が出来るらしいのです……』
『それで、其病気は癒るといふのか?』
『ええ、随分治し難い病気だが、神様にお縋りして頼んであげたから、十一月の四日には全治すると申しました』
『本当だらうか』
請合(うけあ)つた上は一日でも違はないと、そりゃ(かた)い事を申しました。兎に角あなた一遍お出でになつて、(しら)べて戴けませんか』
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