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顕幽の神称

インフォメーション
題名:顕幽の神称 著者:出口王仁三郎
ページ:222
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-11-28 01:16:49 OBC :B195301c42
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]写本(成瀬勝勇筆、大正14年3月、大本本部所蔵)
顕幽の神称
 
 『古事記』の解釈は、従来、表面的辞句の解釈に(とど)まり、従って荒唐無稽(こうとうむけい)にして(むし)ろ幼稚なる一の神話として取扱われて居たが、大本言霊学の活用によりて、漸く其真面目(しんめんぼく)が発揮され、深遠博大、世界独歩の真経典たることが分って来た。之によりて観ると、天之御中主神の御神業は、大別して四階段を成して居る。第一段が天地初発の根本造化の経営で、皇典でいえば、伊邪那岐(いざなぎ)伊邪那美(いざなみ)以前である。第二段が理想世界たる天界の経営で、主として、伊邪那岐、伊邪那美二神の御活動に(かか)り、三貴神の御顕現に至りて、それが()と先ず大成する。
 第三段が地の神界の経営で、天孫降臨から神武天皇以前に達する。第四段が現実世界たる人間界の経営である。(この)四階段は、決して単に時代の区別ではない。(むし)ろ方面の区別である。換言すれば第一段が全部済みて第二段の経営に移り、順次に第三段、第四段と成って来たのではなくして、四階段同時の活動であり、経営である。そして現在に於ては、(いず)れも未製品で、不整理、不整頓を免れず、又各階段の連絡も充分でない。『大本神諭』の所謂(いわゆる)「世の大立替(おおたてかえ)大立直(おおたてなおし)」を待ちて、始めて目鼻がつくという状態に成って居る。無論、天だの、地だの、神だの、人だのが、ごちゃごちゃに同時に出来上ったのではなく、秩序整々、適当の順序を以て発生顕現したのであるから、其点から考うれば、時代という(かんがえ)もなくてはならぬ。矢張り第一段の経営が真先に始まり、第二段の経営が之に続き、第三段、第四段とは成って来たのだ。ただ四階段の経営が(ことごと)く現在まで引続き、そして今後も永久に続くのである事を忘れてはならぬ。此事(ことこと)が充分()に落ちて居らぬと、天地経綸の真相は到底会得(えとく)し得ない。現在大活動を()されて居る神々を、歴史的遺物として遇する様な大過誤に()ちて(しま)う。
 吾々は、説明の便宜の為めに、此階段に名称を付して呼んで居る。即ち第一段が「幽之幽」、第二段が「幽の顕」、第三段が「顕之幽」、第四段が「顕之顕」である。此四階段に就きての明確な観念を伝えて居るものは、古経典中、(ひと)り『古事記』あるのみで、他は、大抵最初の三階段を、ごっちゃに取扱ったり、又は無関係のものの如く取扱ったりして居るから、天地の経綸などという事が到底腑に落ちない。宇宙と天体との関係も分らず、天津神と国津神との区別も分らず、宛然(さながら)、暗中模索の感がある。従来の宗教などは、其様(そん)な片輪な、幼稚なものを(ひっさ)げて、「之を信仰せよ」と迫ったのだから、随分無理な話だ。頭脳の鈍い者には、迷信も出来ようが、(いやし)くも健全な理性常識を具えて居る人には、到底出来ない。十八、九世紀以降、無神、無宗教を唱うる者、年々歳々増加したのは、(まこと)に当然の話である。在来の宗教などを信奉する人は、単にそれ(だけ)で頭脳が健全でない事を証明して居るのだ。()る程度迄、天文、地文学に背反し、古生物学に背馳し、歴史に背馳し、理化学に背馳し、倫理、人道に背馳し、その他諸種の科学や常識に背馳して居る宗教が、何で人類に対し絶対の権威を有し得る筈があるものか。真正の大道は、是等(これら)一切の学問を網羅抱擁し、其不完全を補い、其誤謬(ごびゅう)を正し、()お進んで其根原に(さかのぼ)り、其出発点を探りて、帰一大成するものでなければならぬ。無論天地間の秘奥は、人間の小智小才を以て()ぐるのみでは、不充分である。人間の推理研究には程度があって、大宇宙の奥底に透徹するなどは思いも寄らぬ。
 (すべ)ての科学、哲学等が大成せぬは、之れが為めである。最高の堂奥(どうおう)は、是非とも偉大純正なる神啓に待たねば分らぬ。昔では、我皇祖皇宗の御遺訓たる『古事記』、今では、国祖国常立尊(くにとこたちのみこと)の垂示し給う『大本神諭』等が、即ちそれである。(いず)れも人間の推理研究の結果として生れたる産物ではなく、醇正無二(じゅんせいむに)の大神啓である。従って議論や理屈を超越して居るが、併し決して正しき議論、正しき理屈、正しき推理研究と背馳しないで、(かえ)って之を補正、抱擁して、余裕綽々(しゃくしゃく)たるものがある。理屈から言うても、成程と首肯(しゅこう)せざるを得ぬものである。それでこそ、人生に対して絶対の権威のある真正の大道である。自分は、是から皇典に()りて、四階段の分担方面、及び各階段の関係、脈略等を説明したい。
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