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第二五章

インフォメーション
題名:第25章 著者:出口瑞月
ページ:90 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :B117100c25
一、国を愛するといふ事は如何なる事をいふのであらうか、その心を尽し力を尽して以て我が国を愛し守る事である。
二、慈み深き母親がその児を養ひ育つる如く(しき)りに国を思ふ事が愛国である。
三、我国は豊葦原の瑞穂の国と称へ、(かしこ)くも天祖天照大神が皇孫命(すめみまのみこと)邇邇岐命(ににぎのみこと)を降し給ひてこの国の(きみ)と定め以てこの国の民草(たみくさ)を愛撫し給ひし御国であるから、ことさらに尊き国柄で他に並ぶべき国家は世界に無いのである。
四、ただし豊葦原の瑞穂の国とは、我日本(ひものと)のみならずこの大地の上のあらゆる国々すべてを指して仰せられたのである。
五、数多の民草はこの麗しき御国(みくに)によりてその生涯を預けて祈るのである。祖父よりして父、そうして子にまた孫に代々相承(あひう)け、この国の米を喰ひこの国の君に仕へて安く平かにその日を送り得るは、全く天津神のこの国を造り給ひし御稜威(みいづ)に依るものであるから、どこまでもこの国に成り出でし人たる者は、この国を守るためには十分の力を尽して守らねばならぬのである。
六、地球上に国があれば(すなは)ち人がある。散らばりて類を(わか)ち、集まりては(ぐん)をなし野蛮人といえども尚(よろ)しく(おのおの)が住む国を守り愛することはよく(わきま)へて居るのである。
七、(いは)んや我日本(ひのもと)の如きは神国(しんこく)とも称へ世界の祖国である。(いやし)くもこの尊き麗しき瑞穂の国に(われ)の生涯を預けながら、(すこし)も神の恩を思はず、また敬神と愛国の心のなきものは人であつて人といふ事は出来ぬものである。この頃の露探(ろたん)などをやる奴の如きは実に畜生にも劣つたものといふべきである。
八、また我国体(こくたい)は祖先崇拝教国であるにも(かかは)らず、天祖や我祖先の恩徳を(なみ)して、祖先祀るなかれなど唱ふる邪教を奉ずるものは果して愛国の行ひと唱ふる事が出来やうか。我国は祖先を崇拝するを以て国家の礎とせられてあるのである。祖先を崇め(まつ)るはこれ忠孝の大義にして百徳の根元である。国を愛するのはどうしても祖先を崇め奉らねばならぬではないか。
九、人のこの世に生れ来るや、等しくこれ父母の養ふ所にしてその性質また父母に同じく、その身を愛せざるものはないのである。父母はその身を愛する心よりして一入(ひとしほ)その子を愛するのである。その子もまた我身を愛するよりしてその親を敬ひ愛するのである。
一〇、我身を愛するものは必ずその家を愛す。家を愛する心をもつて国に及ぼす時は即ち愛の至らぬ所なきに至るのである。
一一、船に乗る者は必ず帆柱(ほばしら)の太く強きを選ぶ。車に乗る者は必ず(わだち)や心棒の健かなるものを選ぶ。船車(せんしや)一時に取つて用ふるもその生命を(たく)する事久しからず、しかもなほ覆へり溺るる(うれ)へあるを(おそ)るるではないか。
一二、国土に到つては即ちその生を托するや久しくして世々変ることなし。ゆゑに国の富み賑ひ、国の権利の強きと安く穏かなるとは即ち(わが)(せい)幸福(とど)のみに止まらず、また子々孫々の幸福となるのである。
一三、然るに吾国人(わがこくじん)のその国土を見るや、一時の船車(せんしや)にも()かざるが如し。これ(あに)生を托するの道といふべきものであらうか。
一四、すべてのものには遠き、近き、大き、小さきあり。しかして近くして小さきものは遠くして大きなるものの(うち)にあるのである。遠くして大なるものは何ぞ。近くして小さきものとは何ぞ。
一五、我身体(しんたい)も家宅も既に国土の間にあり、これを如何にしてその身その家を近く小さきに愛し重んじて、国土を遠く大きに省みざる者の多きは、実に悲しむべきの至りである。
一六、人には各自貴賤(きせん)の分あり。これをもつて愛国の道同じからず。有司には有司の愛国あり。商の貿易に於ける、工の技芸に於ける、農の耕耘(かううん)に於ける、奉道者の布教に於ける、(おのおの)その分に従ひ以てその業に力を尽すはこれ愛国の道といふべきである。
一七、愛国の道は高卑の不同ありといへども、要は国土を維持してこれを富強にし、これを平安にし、世界の強悪なる国をして我神洲(しんしう)に悦服せしめんために心を一にし、力を合せて国光を宇内(うだい)に宣揚するのが愛国の本義である。
一八、国土の広大なること一人(いちにん)の力を以て何ぞよくこれを富強ならしめ、また平静ならしむる事を得んや。要は衆力を合せて以て国土を維持するにあり。蟻の蚯蚓(みみづ)を引き去るや、その身の数百倍の太さと重量とあるにもかかはらず、苦もなく己が住家たる巣窟へ運び得るもの、これ全く小さき蟻といへども数千の力を合したるの功に依るものなり。今や我皇軍は彼の強大なる露国と戦ひて、海に陸に連戦連勝しつつあるのもまたこの国民なり、軍人が、一致したる功に依るものなり。
一九、今一人(いちにん)の力は少く弱しといへども、全国五千万人の兄弟が心を(おなじ)うし、力を尽し以て国の富強(ふうきやう)安寧(あんねい)を図りなば、その国土を維持し国権を伸張すること何ぞ(かた)き事やあらむ。
二〇、持統天皇の(みことのり)に尊朝愛国の言葉あり。藤原基経(もとつね)の文書に愛国忠誠の(げん)あり。(よろ)しく考ふべし。愛国の説は(いにしへ)よりすでにこれを尊重せられたりし事を。
二一、明治維新の際に当つて、内は武門柄政(へいせい)宿弊(しゆくへい)をうけ、外は万国の(あらた)なる交際を開く。この時に当りて(かしこ)くも天皇陛下は日夜(まつりごと)を勉め励み給ひて国家を文明に導き給ひ、百官は(ひし)めき走りてその職分に尽し、遂に今日の如き強国となりしも皆愛国の精神の(たまもの)といふべきなり。
二二、天皇陛下の御稜威(みいづ)に依りて維新以来我国は外国と戦ふ(ごと)に勝ちて国光を世界に宣揚したるものは、皆この愛国心の国内に溢備(いつび)せるが故なり。
二三、忠勇義烈なる我皇軍は、炎熱(かね)(とろ)かす如き暑き夏の日も、寒威(かんゐ)肌を裂くの厳しき冬の日も、千辛万苦身を鴻毛(こうまう)よりも軽んじ国家を泰山よりも重んじて、奮戦奮闘()く連戦連捷(れんせふ)し、世界の戦史に未曽有の武勲を奏し、皇国の光栄を宇内(うだい)に輝かしたるにあらずや。この時に当りて農工商の実業に従事するもの(あに)この好機を看過して()ならんや。
二四、戦争の後には平和の戦争あり。この平和の戦争を為すべきものは実業家なり。ゆゑに我実業家たるものは、宜しく世界と闘ふの勇気と胆力と知識となかるべからず。しかしてこの勇気と知識を得んとするものは、宜しく皇祖皇宗の御遺訓に依らざるべからず。
二五、我国には天神地祇(ちぎ)祐助(ゆうじよ)と至尊の御稜威(みいづ)と軍人の忠勇と国民の至誠とに依りて国光を宇内に輝かしたりといへども、農工商の実業家にしてこれに伴はずしてこの千載一遇の好機を逸せんか、光栄ある戦捷(せんせふ)の利益は他国の為に大方獲収せらるること必定なり。(こと)遂にここに至らば、我勢力を満韓地満洲と韓国の意に扶植し東洋百年の平和を維持せんと欲するも(あに)得べけんや。
二六、この戦捷をして有終の美を()すもまた窮乏に帰せしむるも、一に実業家の感奮興起して事に従ひ愛国の精神を貫徹するとせざるとにあり。
二七、実業の振ふと振はざるとは、実に国家の興廃に係はるものなり。(ただ)我国の興亡のみならず東洋の平和を維持すると否とは一に実業の振否に依らざるべからざるなり。
二八、帝国の前途は好望なり。日の出の(いきほひ)なり。この機を逸せず我が本教を顕彰してもつて四民をして向ふ所を知らしむるは大本教の主旨にして、教役者たるものは一日も猶予するの時にあらざるべし。
二九、士農工商の進歩発達するは、これ惟神(かんながら)の徳性にして生成化育の神慮に叶ふものなり、ゆゑに神明は日夜に各自の業務について絶えず保護し給ひつつあることを忘るべからず。
三〇、実業の発達を祈るものは第一に神祇(しんぎ)を畏敬せざるべからず。けだし愛国の理は敬神に出で敬神の用は愛国に行はるるなり。
三一、宜しく神を敬するものは宜しく国を愛す。よく国土を愛するものはよく神を敬す。敬神と愛国とはその()一にして二ならずと知るべし。
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