霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(十二)

インフォメーション
題名:(十二) 著者:浅野和三郎
ページ:168
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142400c47
 (その)翌日自分は学校へ出勤して見ると、宮沢君が一週日(いつしうじつ)の欠勤届を出して居るのを発見して(おほい)に驚いた。段々聞いて見ると、昨晩(さくばん)自分が辞してから間もなく、又復(またまた)神懸(かみがかり)状態となり、何か奇怪の行動をやつたとやらで、両親その他が心配し、帝国大学の精神病科の診療を受けるべく、今朝(こんてう)東京に連れて行き、模様によつては入院させるかも知れぬといふことであつた。
『こりや宮沢君は飛んだ目に逢つたものだ。さぞ今頃は弱つて居るだらう。』
『お気の毒ですこと。まさか入院はさせられはしますまいネ』
『狂人でもないものを入院もさせはしまいと思ふが……』
 自分達夫婦は宮沢君の境遇に同情し、其風評(うはさ)ばかりしてゐたが、如何(いかん)とも致し方がない。その内()うかなるだらうとは思ひつつも、毎日東京方面からの音信(たより)を待つて居た。
 上村(うへむら)工学士が時々やつて来て、矢張り宮沢君の風評(うはさ)をやる。『()うも誤解といふものは怖ろしいものだ。私か行つて宮沢君のお母さんにも、妻君(さいくん)にも、詳しく神憑(かみがか)りの話をしてきかせたが、さツぱり耳に入れて呉れない。一種の恐怖心に襲はれて居て、当方のいふことが判らんから困る。宮沢君よりは家族の方が余程発狂に近い』
 二三日経つと初めて宮沢君から手紙が届いた。
一同(みんな)が僕を狂人扱ひにして居るから、馬鹿らしくもあり、腹立たしくもあり、滑稽でもあり、仕方がないから、黙つて好きにさせて居ます。昨日大学の精神病科へ連れて行かれて、○○博士の診察を受けました。滑稽なのは其診断で、極度に神経が昂奮して居るから、全治迄には約三週間を要すといふのです。成るべく入院せいといふのですが、そればかりは(ひら)に御免を蒙つて、只今親戚の(うち)に帰つてゴロゴロして居ます。霊の発動が全く()んだので、幾らか一同(みんな)が安心したやうです。この分なら入院は免れさうに思ひます。』
 此手紙で幾分(いくぶん)自分達も安心したが、それにつけても大本の道を天下に布き、世人を霊に目覚めさせることの至難なるを更に痛切に感じたのであつた。
 更に両三日過ぎると又手紙が同君から届いた。
『たうとう入院(だけ)は免れましたから御安心を願ひます。昨日(きのふ)僕は義兄に連れられて、江間(えま)の所へ行きました。これは発狂か否かの鑑定を受ける為めなのです。病院よりはまだこの方が余程有難い……。江間の霊力は(たい)したものとも思はれませんが、しかし何かはあります。江間が発狂でないと言つてくれましたから、親戚も安心しました。その(うち)横須賀へ帰れるでせう』
 十日程経つと宮沢君は東京から戻つて来て、無事に出勤することになつた。いよいよ発狂でないことが判り、無罪放免といふことに決まつたのである。但し今後は自分の所へ来て鎮魂はせぬといふ誓約を、両親その他から強請され、若し之れに服従せねば、又東京へ送るといふ条件つきであつた。宮沢君もこれには()(かた)ならず弱つて、
『まるで罪人扱ひだから驚いて了ふ。仕方がない。朝早く出勤前にお宅へ(あが)りますから、その時鎮魂を願ひます』
『さうでもするかネ。しかし見つかると又一騒(ひとさわ)ぎせんければなるまいネ』
 自分達は若き男と女との媾引(あひびき)でもするやうに、通例午前七時頃を期して毎日鎮魂をつづけた。
 此頃の鎮魂状態はずつと静粛なもので、大声(たいせい)も発せねば、乱暴もしなくなつた。大抵鎮魂(ごと)に自分は古事記を引ツ張り出して質問すると、天狗さんはお師匠さん(ぜん)として之に答へた。
『浅野はまだまだ古事記の読み方が足らん。(すくな)くとも五十回は繰返して読まんければ()かんぞ』などといふ。自分も随分(せい)を出して古事記を読んだもので、自分がほぼ神名(しんめい)を暗記するところまでになつたのは、(ひとへ)に天狗さんの(たまもの)であつた。自分は今でも宮沢君の天狗さんに(おほい)に感謝して居る。
 しかし天狗さんの説明は、余り深いものではなく、今日(こんにち)から考へると余程ゴマカシが(まじ)つて居たやうに思ふ。時々天狗さん説明に困ると、
『この次ぎまでに教へてやる。(ただ)さう質問ばかりしては(かへ)つて利益(ため)にならんぞ』
 などと遁辞(とんじ)を設けて逃げる場合もあつた。日数(ひかず)を重ぬるにつれ自分は(いささ)か此神の神格に就いて疑惑を(さしはさ)む様になつた。そしてヴエルダンの陥落の予言も果して確実であるか()うか少々気に成り出した。
 自分が連日妻の天眼通を活用して、ヴエルダンの戦況を観察せしめたのは此際のことであつた。砲弾に(ゑぐ)られた、緩傾斜(くわんけいしゃ)の、赤土(せきど)の丘陵、累々(るゐるゐ)たる死屍(しし)を乗り越えて猛烈に突撃する独逸軍隊、その()戦場の全部(ならび)に局部の光景は、手に取るやうに天眼に映じた。しかし陥落すべき模様は何処にも見えなかつた。たうとう自分は心配の余り、戦ひの経過を文字で(しら)して貰ひたいと妻の守護神に請求した。すると白地の長い旗が現れて、それに大きく『(せめる)』といふ一字が書いてあつた。
『攻めることは攻めるが、陥落はせぬといふことかしら』と自分は自問自答した。『若し陥落せぬとすれば、宮沢君の神はニセ(がみ)に相違ない。武甕槌命といふのはドウも怪しい』
 神としても至難なる古事記の解釈や、ヴエルダン攻囲戦(こうゐせん)の予言では、天狗さん少々ボロを出しかけたが、しかし決してただの(つま)らない野天狗ではなかつた。時によると中々(きは)どい腕の冴えを見せた。二三日後の天気の予言などは、百発百中決して外れつこがなかつた。又数学の問題にしても、運算(うんざん)なしでイキナリ(こたへ)を出した。そして百題が百題とも決して誤謬がなかつた技倆(ぎりやう)は、(たしか)に舌を()かすに足るものがあつた。兎に角(この)天狗が修業の初期に於ける自分にとりて(もつと)も大切な教師であり、指導者であつたことは争ふべくもない。
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