霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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(十四)

インフォメーション
題名:(十四) 著者:浅野和三郎
ページ:176
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-01-24 22:22:00 OBC :B142400c49
 五月も暮れ、六月も半ばに近づいた時には、何がさて気になつて(たま)らないのは、ヴエルダン要塞戦の結果であつた。新聞電報は幾度かその危機を伝へたが、仏軍の善戦苦闘により容易に落ちない。天狗さんの予言した六月十六日陥落説が、だんだん怪しくなつて来た。
 自分は或る程度まで天狗さんの(げん)を信じて、ヴエルダン陥落説を同僚にも、兄にも、其他二三の人にも(もら)した。若し之が外れやうものなら、自分の不明の(そしり)はかまはぬにしても、神憑(かみがか)りそのものの信用にかかはり、引いて皇道大本の迷惑になるかも知れぬ。(いづ)れにしても厄介な事になつたと思つた。
『ああ予言めきたる事は絶対に()くべきである。素性の知れぬ神憑者(かみがかり)が何を言はうと、決してそれを外間(ぐわいかん)に漏らすべきではない』
とつくづく衷心(ちうしん)から感じたのであつた。
 さうする(うち)に十六日が来た。いかに新聞を捜しても陥落の電報はない。十七日も()、十八日も()、たうとう二十日になつても陥落した模様はない。
『いよいよあの予言は嘘だ』
と思ふと、自分の胸には慚愧(ざんき)憤怒(ふんぬ)悔恨(くわいこん)、落胆、その他種々(しゆじゆ)雑多の感情が渦巻をなして入り乱れた。最後に自分は宮沢君を鎮魂し、そしてあの守護神を発動せしめて、大々的詰問をなすべく決心の(ほぞ)を固めた。
縦令(たとひ)何事があつても今度は承知出来ん。不都合極まる偽神(にせがみ)だ!』
 丁度この時に例の飯森機関中佐と福島久子さんとが、又も二人連れ立ちて機関学校へひよツくりやつて来た。委細の話をすると、二人とも宮沢氏に(かか)れる神が武甕槌命とは真紅(まつか)(いつは)り、天狗か何ぞに相違ないといふ鑑定であつた。そして先づ福島久子さんが、一度鎮魂して見たいと言つて、宮沢氏を自宅(うち)へ連れて行つたのは、たしか六月二十一日の午後二時であつた。自分は授業の都合で、(なほ)一時間ばかり学校に居残つた。
 ()にしろ福島対宮沢の鎮魂が気にかかるので、急いで帰宅して見ると、離座敷(はなれ)では既に鎮魂が開始されて居た。見れば宮沢君は立ちあがつて福島さんに突撃する。福島さんも(まけ)てばかりは居ない。同じく神懸(かみがか)り状態になつて、武者ぶるひして応戦する。両方の額と額とがかつちり合つて、中腰になつて押しツくらをするといふ、物騒千万な、飛んでもない鎮魂。
 自分は急ぎ和服に着換へ、(ただち)離座敷(はなれ)に飛んで行つた。いささか騒ぐ胸を押し鎮め、ウンと下腹部(したはら)に力を籠めて鎮魂の姿勢を取り、先づ神明(しんめい)に祈願を籠めた上で
『拙者がこれから審神者(さには)を致す。福島さんはしばらくお控へくだされい』
 自分ながら可笑しい(ほど)言葉が改まる。二人の身体はさツと左右に引き別れた。
『それならば審神者(さには)貴下(あなた)にお譲り致します』と、福島さんは、そのまま、つと(そば)に寄る。今迄福島さんに向つて居た宮沢君は、(ただち)に方面をかへて自分に向つて来たが、イヤ其権幕!
 ギラギラ光る両眼、逆立つた頭髪、満面に(しゆ)(そそ)ぎ、気息(いき)をはづませ、握り固めた両手を前に突き出し、ジリジリと自分に詰め寄せて来る。気のせゐか日頃の宮沢君の身体(からだ)の、二倍大、三倍大にも見える。
 不意の出来事ではあるし、(うま)れて初めての経験ではあるし、自分は内心(すくな)からず驚いた。逃げ出したいやうな気がせぬでもなかつたが、(ここ)ぞと(やうや)く勇気を取り直し、表面(うはべ)には出来るだけ平気を装うて、
何誰(どなた)であるか、神の御名(おんな)を伺ひます』
 平生(ふだん)ならば(ただ)ちに『武甕槌命』と名告(なの)るべき筈であるのに、形勢()なりと見て取つたか、何とも返事をせぬ。黙つてジリジリと詰寄(つめよ)せる。自分は少しく声を高めて、
審神者(さには)が御名前を請求するにも(かかは)らず、御返事のなきは其()を得ぬ。審神者は神に向つてお名告(なのり)を要求する権能があり、神は審神者(さには)に向つて御名(おんな)を答ふべき義務がある。早々(さうさう)御名(おんな)を伺ひたい』
 依然として先方は返事をせすに、益々詰め寄せるばかりだ。モー其(にぎ)つた(こぶし)は、自分の胸を()ること一尺(ばかり)に過ぎない。自分の方は坐つて居るのに(ひき)かへ、先方(むかう)は中腰で圧迫し(きた)るのであるから、若しも胸か顔かを突き飛ばされた日には、()とたまりもなく転げて了ふ。
(ひど)い事をする。大丈夫かしらん……』胸の一方には()ンな弱い気が(おこ)らんでもないが、他方には又『何に糞ツ』といふ痩我慢もムラムラと首を(もた)げる。兎に角自分は気を落着けて凝手(じつ)と先方の眼を睨みつけた。
 暫時(しばらく)(にら)めつくらをして居たものの、ドウも果てしがない。自分は声を励まして、
『御返事なきは余りに無法と存ずる。しかのみならす、あなたの其態度は何でムるか。いやしくも神ともあらうものが、車夫(しゃふ)馬丁(ばてい)に似たる腕力沙汰に()づるとは以ての(ほか)の振舞、拙者はあなたが果して武甕槌命であるや否やを大いに疑ひます。現にあなたは六月十六日を以てヴエルダンの要塞陥落を予言されたが、見事失敗して居るてはムらぬか。さア包まずお名告(なの)りください、さアさア』
 今迄一尺ばかり離れて居つた(こぶし)が、更に一二寸の所に迫る。宮沢君の総身にはハチ切れんばかり力が(こも)つて居る。いよいよ危機は切迫した。
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