主文
被告人王仁三郎を懲役五年、被告人与之助、由太郎、仙蔵、徳太郎及弘を各懲役壱年六月、被告人重雄を懲役壱年、被告人愛隣を懲役八月、被告人助三郎を懲役六月に処す。
原審に於ける未決勾留日数中被告人王仁三郎に対し七百日、被告人与之助、由太郎、仙蔵、徳太郎及弘に対し各参百五拾日、被告人重雄、愛隣及助三郎に対し各其刑期に相当する日数を夫々右本刑に算入す。
被告人由太郎、仙蔵、徳太郎、弘及愛隣を各治安維持法違反の所為に付無罪とす。
被告人スミ、伊佐男、留五郎、吉三郎、同吉、昂三、斎治郎、浩三、慶三郎、雄次郎、義邦、新衛、猛彦、純一、田中省三、勇造、市左衛門、靖都、隆三、中、久治、東洋男、鑅吉、敏雄、貞次、盛政、井上省三、満蔵、新助、恭一郎、常雄、幹造、守、光俊、義之輔、康男、武夫、知二、隆次及喜八郎を無罪とす。
被告人出口王仁三郎事件押収証第参五五壱号霊界物語第六拾巻、同証第四壱六〇号、霊界物語第拾巻及同証第四弐弐七号、瑞祥新聞昭和拾年四月壱日号中の各判示不敬記事記載部分、被告人浜中助三郎事件押収証第九号、瑞祥新聞昭和拾年四月壱日号は孰れも之を没収す。
訴訟費用中原審証大物射りん、下位春吉、石田卓次、四方実之助、衣川郁太郎、石坂政雄、山口利隆及東島猪之吉、当審証人深町孝之亮鑑定人水野満年に支給したる分は被告人王仁三郎予審証人植田太一及小原トキヱ、当審証人植田太一に支給したる分は被告人与之助、当審証人井口太郎吉に支給したる分は被告人与之助、仙蔵、徳太郎及弘、当審証人市毛五郎及唐沢俊樹に支給したる分は、被告人王仁三郎、与之助、仙蔵、徳太郎、弘、重雄、愛隣及助三郎、原審証人中西景治、安田寅吉、塩貝作太郎、寺沢良一、城義治、飯田外次郎、北窪光則、高橋誠治及小浦定雄、当案証人高橋誠治、小浦定雄及飯田外次郎に支給したる分は被告人王仁三郎、与之助、由太郎、仙蔵、徳太郎、弘、重雄、愛隣及助三郎の負担とす。
理由
皇道大本は出口直事ナカが明治三十年頃金光教より分離して、大本なる名称を用ゐ京都府何鹿郡綾部町字裏町の自宅に艮金神を祀りて祈禧禁厭等を為し居りしに端を発し、被告人王仁三郎〔以下履歴・沿革に関する記述につき省略。予審終結決定書を参照〕。抑々大本に於て主張する所の根本目的はみろく神政成就と称し、現在の世は体主霊従の悪の世故、至仁至愛の神の命を受けたる神が出現し之を大改革して霊主体従善一筋のみろくの世を出現せしめ、神国日本の天皇に依り統治せらるべきものなりと為し、みろく神政成就を必要とする理由の一として国常立尊の隠退再現、其の二として素盞嗚尊の神逐再現なる二箇の教説を立て前者は国常立尊は至仁至愛なる撞の大神の命に依り地球を修理固成し、之を主宰し居たるも部下の万神に謀られ艮へ隠退したる処、右大神の命に依り現在の混乱せる世界を立替立直して、至仁至愛の世と為す為再現し、後者は伊邪那岐尊の神勅に依り全地球を主宰し居たる素盞嗚尊は神逐に逐はれたるも、現在の優勝劣敗、弱肉強食の紛乱せる地球を救済し、至仁至愛の世と為す為め再現せりと謂ふにあり、而して王仁三郎は皇統の御稜威の下に国常立尊及素盞嗚尊の顕現霊代として体主霊従なる現世の立替立直を為し、みろく神政を成就せしむるものなりと説示せり、前示教典たる筆先其の他の大本文献には敬神勤皇愛国を高調せるもの多々あるに拘らず不敬なりと解せざるを得ざるが如きもの尠からざる為、信者中には王仁三郎を尊敬過信するの余、前記教説を憶測し王仁三郎が世界を統一し其の君主と為るものの如く解し我国体の尊貴比類なき所以を忘却し、皇室に対し不敬なる思想を抱懐する者を生じ、王仁三郎の其の対策宜しきを得ざりし為、此種解釈は信者各層に浸潤瀰漫の慮ありしものなるところ、