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二 幼女の頃
インフォメーション
題名:
2 幼女の頃
著者:
愛善苑宣教部・編
ページ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100600c02
001
桐村家のひっそくの最中、
002
殊
(
こと
)
に稀有の飢饉年に危うく堕胎を免れて生まれられた開祖の前途には、
003
悲惨なる運命と申しますか、
004
大いなる神の試練と申しますか、
005
幾多の艱難苦労が黒い手を広げて待っていました。
006
元来開祖様の父・桐村五郎三郎さんは一徹短慮の気質で、
007
酒をたしなまれると妻子に対しても時々手荒いことをされ、
008
開祖様が三才のとき何かお気に障ったことがあって、
009
開祖様を
簀巻
(
すまき
)
にして裏庭の雪の中にほうり出されたことがあります。
010
また五才のとき五郎三郎さんから酒を買って来るよう云い付けられた時、
011
遊び盛りの子供のこととて、
012
うっかり忘れておられましたため非常に立腹され、
013
いきなり開祖様を布団にくるんで、
014
押し入れに放り込まれたこともあります。
015
その代わり、
016
御生母さんはまことによく出来たお方で、
017
優しい中にも平素のしつけが実に行き届かれ、
018
殊に姑のタケ子さんという方はなかなかむつかしい人でしたが「お殿様に仕えるつもりで仕えよう」と思って、
019
至れり尽せりにお仕えになったので、
020
さすがの姑さんも大変お気にいり「うちの嫁は嫁は」と、
021
いつも人々に自慢されていたほどです。
022
開祖様の立派な人となりは、
023
一つにはこの幼い時代の御生母の薫陶の
賜
(
たまもの
)
であると言えましょう。
024
暮らし向きは益々ひっそくして、
025
五郎三郎さんはついには甘酒のかつぎ売りまでされましたが、
026
弘化三年
[
※
1846年
]
開祖様十一才のとき悪性のかくらん(食中毒)をわずらい、
027
一日一夜苦しんでついに亡くなられました。
028
さなきだに貧窮であったのに一家の大黒柱を失ったこととて、
029
桐村家の当時の有様は全く想像に余りがあります。
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