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一〇 身だしなみ
インフォメーション
題名:
10 身だしなみ
著者:
愛善苑宣教部・編
ページ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100600c10
001
このように貧乏のどん底にあって、
002
仕事はボロ買いという汚い仕事に携っていながら、
003
身なりは決してくずされませんでした。
004
破れた所には継ぎをあて、
005
小ざっぱりと洗濯をして、
006
のりの落ちたようなものを着ることは、
007
かつてなかったのであります。
008
「お直さんが糊つけを着ているのは、
009
他の人がおこそを着ているより立派に見える」
010
と町の
内儀
(
おかみ
)
さん達がいつも話し合っていました。
011
久子さんが桧山という所へ女中奉公に行っておられました頃、
012
開祖様はのっぴきならぬ金の工面に恥をしのんで奉公先を訪ねられましたとき、
013
奉公先の主人が久子さんに、
014
015
「あれがほんとにお前のお母さんか」
016
と不思議そうに三度まで繰り返してたずねたほど、
017
身に粗服はまといながらも、
018
娘を女中奉公に出しているとはどうしても思えない気品が備わって居ました。
019
また商売に出掛けるときお子さん達に、
020
021
「家のまわりに気をつけて、
022
草があったら抜いておいておくれよ。
023
父さんが寝ているので草を生やしていると思われてはいかんでな。
024
それからよその物には藁一本も手をかけるでないぞ、
025
欲しいものは母さんが帰ってから何でも買ってあげるでな」
026
と必ずこういって諭されました。
027
極度に貧乏な生活をすれば誰でも、
028
子供の養育には手が回らないのが普通ですが、
029
開祖様は子供の養育のためには、
030
生活難も眼中になく、
031
八人の子供を大切にいつくしまれ、
032
大きな声で叱りつけるというようなことはかつてありませんでした。
033
紙屑買いの同業者仲間では「貧乏人のくせにあまり子供を大事にしすぎる」と、
034
開祖様の気位の高さに嫌味を云う者さえありました。
035
またお商売から帰られると、
036
いつも稲の落穂を一掴みほど袂からお出しになるのが常でした。
037
これは
田圃道
(
たんぼみち
)
のあちらこちらに稲の穂が落としてあるので拾って来られるのです。
038
「この尊いお米さんは、
039
神様の御守護によってできるのじゃ。
040
なんでもお土から上がるものはみな神様の御姿と同然なのに、
041
世間の人はもちろん、
042
百姓をする人さえ踏んで歩いているのがもったいのうて……」
043
と近所の人達にもよくお話しされました。
044
毎年大晦日の晩には、
045
神床や仏壇に白い御飯を大きな鉢に盛ってお供えになり、
046
子供さん達に向かって、
047
048
「お水の御恩というものは、
049
この世のなかで一番大きなものじゃが、
050
誰もその御恩を返すことを知らぬ。
051
お水の御恩は毎年大晦日に夜通し起きて、
052
何でも手に合う仕事をしもって返すものじゃ。
053
お水は決して無茶に使ってはならないよ」
054
と諭しながら、
055
足袋のつくろいなどして徹夜されました。
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