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五、祖父の再生
インフォメーション
題名:
5 祖父の再生
著者:
大本教学院・編
ページ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100800c05
001
喜三郎さんは七歳になる頃までは山へ行くにも、
002
川へ行くにも隣家へ遊びに行くにも、
003
腰のまがった小さい爺さんが自分のそばについているので、
004
自分の家にはお祖父さんもお祖母さんもいるものだと思っておられました。
005
ところがにわかに見えなくなったので、
006
ものを言わぬ祖父さんはどこへ行ったかと祖母に尋ねると、
007
祖母はおどろいて「それは祖父さんの幽霊が、
008
祖父さんは坊の
一歳
(
ひとつ
)
の冬に死なれた」といわれ、
009
こわくなって一人で隣りの家にも遊びに行かなくなったことがありました。
010
喜三郎さんが六歳のとき、
011
過っていろりの火の中にころげこんだことがありますが、
012
その時にもお祖父さんがどこからとも知らず走って来て、
013
火の中からひき出して助けてくれたということであります。
014
吉松さんは至って潔癖で、
015
野良へ出て畑を耕すにも、
016
草切れ一本生やさぬようにした人で、
017
たまたま一株の雑草があると、
018
それをその場でぬいて土の中に埋めてしまえばよいものを、
019
わざわざ口にくわえて、
020
東から西まで一あぜを耕し終るまで放さず、
021
あぜの終点まで行ったところでこれを畑の外の野路へ捨てる癖がありました。
022
ところが、
023
喜三郎さんの弟の
由松
(
よしまつ
)
さんが生まれた時に、
024
吉松さんの顔にそっくりなので、
025
家の人たちはお祖父さんの生まれがわりであろう。
026
また大きくなったらバクチ打ちになって、
027
両親や兄弟を苦しめるのではないかと心配していました。
028
由松さんが四歳になった夏、
029
畑へ父母が草ひきにつれて行って畑の中に遊ばしておきますと、
030
四歳の由松さんは畑の草を引きぬいては口に喰わえ、
031
口に一ぱいになると、
032
畑の外へもって出て捨てるのを見て、
033
いよいよ吉松さんの生まれがわりに間違いないということになったのであります。
034
この由松さんは十三・四歳の頃から、
035
そろそろと小バクチを打ち出し、
036
一旦は屋敷も
小町田
(
こまちだ
)
も全部なくなり、
037
小さな家は明治三十四年旧二月、
038
火事にあって財産全部灰にしてしまいました。
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