霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
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一〇、獣医学の研究
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一二、青年時代の煩悶
一三、高熊山出修の動機
一四、高熊山の修行
一五、使命の自覚
一六、幽斎の修業
一七、開祖との会見
一八、聖師の大本入り
一九、聖師と筆先
二〇、聖師の苦闘
二一、神苑の拡張と造営
二二、神島開き
二三、大本の発展
二四、第一次大本事件
二五、霊界物語の口述
二六、エスペラントとローマ字の採用
二七、世界紅卍字会との提携
二八、蒙古入り
二九、世界宗教連盟と人類愛善会
三〇、大正より昭和へ
三一、明光社の設立
三二、急激な発展
三三、第二次大本事件
三四、愛善苑の新発足
三五、晩年の聖師
三六、御昇天
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一四、高熊山の修行
インフォメーション
題名:
14 高熊山の修行
著者:
大本教学院・編
ページ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100800c14
001
高熊山
(
たかくまやま
)
は丹波穴太の山奥にある高台で、
002
上古には
開化
(
かいか
)
天皇
[
※
9代天皇
]
を祭った延喜式内
小幡
(
おばた
)
神社のあったところであります。
003
この高熊山における修行は、
004
旧二月九日から一週間にわたって行われたもので、
005
この修行中に喜三郎さんは
天眼通
(
てんがんつう
)
、
006
天耳通
(
てんじつう
)
、
007
自他心通
(
じたしんつう
)
、
008
天言通
(
てんげんつう
)
、
009
宿命通
(
しゅくめいつう
)
の大要を心得し、
010
過去現在未来に透徹し、
011
神界の秘奥を窺知し得るとともに、
012
現界の出来事などは数百年、
013
数千年の後までことごとく知ることが出来たのであります。
014
喜三郎さんの破天荒な修行中の状況は、
015
聖師の著、
016
「霊界物語」に詳しく示されていますが、
017
いま第一巻の中の「現界の苦行」および「現実的苦行」と題する一説を次に抜粋いたします。
018
「高熊山の修行は一時間神界の修行をさせられると、
019
現界は二時間の比例で修行をさせられた。
020
しかし二時間の現界の修行より、
021
一時間の神界の修行の方が数十倍も苦しかった。
022
現界の修行といっては、
023
寒天
(
さむぞら
)
に
襦袢
(
じゅばん
)
[
※
着物の下に着る下着
]
一枚となって、
024
前後一週間水一ぱい飲まず、
025
一食もせず、
026
岩の上に静坐して無言でおったことである。
027
その間には降雨もあり、
028
寒風も吹き来たり、
029
夜中になっても
狐狸
(
こり
)
の声もきかず、
030
虫の音もなく、
031
時々山もくずれんばかりの怪音や、
032
何とも言えぬ、
033
いやらしい身の毛の震慄する怪声が
耳朶
(
じだ
)
を打つ。
034
さびしいとも、
035
恐ろしいとも、
036
何とも形容のできぬ光景であった。
037
……たとえ狐でも、
038
狸でも、
039
虎
(
とら
)
狼
(
おおかみ
)
でもかまわぬ、
040
生ある動物が出てきて生きた声をきかしてほしい、
041
その姿なりと、
042
生物
(
いきもの
)
であったら、
043
一眼見たいものだと、
044
あこがれるようになった。
045
アヽ生物くらい人の力になるものはない……と思っていると、
046
かたわらの小篠の中からガサガサと足音をさして、
047
黒い影の動物が、
048
自分の静坐する一尺ほど前までやってきた。
049
夜眼には確かにそれとわかりかねるが、
050
非常に大きな熊のようであった。
051
この山の主は巨大な熊であるということを、
052
常に古老から聞かされておった。
053
そして夜中に人を見つけたが最後、
054
その大熊が八つざきにして、
055
松の枝にかけて行くということを聞いていた。
056
自分は今夜こそこの大熊に引きさかれて死ぬのかも知れないと、
057
その瞬間に心臓の血をおどらした。
058
ままよ何事も惟神に一任するにしかず……と、
059
心を
臍下
(
さいか
)
丹田
(
たんでん
)
に落ちつけた。
060
サアそうなると恐ろしいと思った大熊の姿が大変な力となり、
061
そのうなり声が恋しくなつかしくなった。
062
世界一さいの生物に、
063
仁慈の神の
生魂
(
いくみたま
)
が宿りたもうということが、
064
適切に感じられたのである。
065
かかる猛獣でさえも寂しいときには力になるものを、
066
いわんや万物の霊長たる人においておやだ。
067
アヽ世界の人々を憎んだり、
068
おこらしたり、
069
あなどったり、
070
苦しめたり、
071
人を何とも思わず、
072
日々を暮してきた自分は、
073
何としたもったいない罰あたりであったのか、
074
たとえ仇敵悪人といえども、
075
みな神様の霊が宿っている。
076
人は神である。
077
いな人ばかりではない、
078
一さいの動物も植物も、
079
みな我々のためには、
080
必要な力であり、
081
たのみの杖であり、
082
神の断片である。
083
人はどうしても一人で世に立つことは出来ぬものだ。
084
四恩
(
しおん
)
ということを忘れては人の道が立たぬ。
085
人はもちつもたれつ相互に助け合って行くべきものである。
086
人と名がつけば、
087
たとえその心は鬼でも
蛇
(
じゃ
)
でもかまわぬ、
088
大切にしなくてはならぬ。
089
それに人は少しの感情や、
090
利害の打算上から、
091
たがいに憎みねたみ争うとは、
092
何たる矛盾であろう。
093
不真面目であろう。
094
人間は神様である。
095
人間をおいて力になってくれる神様がどこにあるであろうか。
096
神界では神様が第一の力であり、
097
たよりであるが、
098
現界では人間こそ、
099
我らを助くる誠の生きたる尊い神様であると、
100
こう心の底から考えてくると、
101
人間が尊くありがたくなって、
102
粗末に取り扱りあつかうことは、
103
天地の神明に対し
奉
(
たてまつ
)
り、
104
恐れありということを強く悟了したのである。
105
これが自分の万有に対する、
106
慈悲心の発芽であって、
107
有難き大神業に奉仕するの基礎的実習であった。
108
次に自分の第一にありがたく感じたのは水である。
109
一週間というものは水一滴口に入れることも出来ず、
110
咽喉
(
のど
)
は時々刻々にかわき出し、
111
何ともいえぬ苦痛であった。
112
たとえ泥水でもよい、
113
水気のあるものがほしい。
114
木の葉でもかんでみたら、
115
少々くらい水は含んでおるであろうが、
116
それも一週間は神界から飲食一さいを禁止されておるので、
117
手近にある木の葉一枚さえも、
118
口に入れるというわけにはゆかない。
119
そのうえ時々刻々に空腹を感じ、
120
気力は次第におとろえてくる。
121
されど神のおゆるしがないので、
122
お土の一片も口にすることは出来ぬ。
123
膝は
崎嶇
(
きく
)
たる崖上に静坐せることとて、
124
これくらい痛くて苦しいことはない。
125
寒風は肌身をきるようであった。
126
自分がフト空をあおぐ途端に、
127
松の露がポトポトと雨後の風にゆられて、
128
自分の唇辺に落ちかかった。
129
何心
(
なにごころ
)
なくこれをなめた。
130
ただ一滴の松葉の露のその味は、
131
甘露とも何ともたとえられぬおいしさであった。
132
これを考えてみても、
133
結構な水を火にかけ湯にわかして、
134
ぬるいの熱いのと、
135
小言をいって居るくらい勿体ないことはない。
136
草木の葉一枚でも、
137
神様のおゆるしがなければ、
138
戴くことは出来ず、
139
衣服は何ほど持っておっても、
140
神様のおゆるしなき以上は着ることも出来ず、
141
あたかも餓鬼道の修行であった。
142
その御陰によって水の恩を知り、
143
衣食住の大恩をさとり、
144
ぜいたくなどは夢にも思わず、
145
どんな苦難にあうもおどろかず、
146
悲しまず、
147
いかなる反対や熱罵嘲笑も、
148
ただ勿体ない、
149
有難い有難いで、
150
平気で社会に泰然自若、
151
感謝のみの生活を楽しむことが出来るようになったのも、
152
全く修行のおかげである。
153
それについて今一つ、
154
衣食住よりも人間にとって尊く、
155
有難いものは空気である。
156
飲食物は十日や二十日くらい廃したところで、
157
死ぬようなことは滅多にないが、
158
空気はただの二三分間でも呼吸せなかったならば、
159
ただちに死んで了うよりみちはない。
160
自分がこの修行中にも空気を呼吸することだけは許されたのは、
161
神様の無限の仁慈であると思った。
162
人は衣食住の大恩を知ると同時に、
163
空気の御恩を感謝せなくてはならない。
164
しかし以上延べたるところは、
165
自分が高熊山における修行の、
166
現界的すなわち肉体上における神示の修行である。
167
霊界における神示の修行は、
168
とうてい前述のごとき軽い容易なものではなかった。
169
幾十倍とも幾百倍とも知れぬ大苦難的修練であった」
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