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天地剖判

インフォメーション
題名:天地剖判 著者:出口王仁三郎
ページ:218 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-11-28 01:16:28 OBC :B195301c41
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]写本(成瀬勝勇筆、大正14年3月、大本本部所蔵)
天地剖判
 
 ()に角、宇宙間に、この「進左退右」の根本運動が開始され、其結果が天地剖判、日月、血、星辰(せいしん)の顕現という事に成って来るのであるが、この事を理解する為めには、先ず大宇宙の形態に就きて、正確なる観念を有する事が必要だ。大宇宙は吾々人間から客観すれば、時間、空間共に無限であり、無始無終である。
 到底、其窮極、際涯を知る事は出来ない。(しか)(なが)ら、天之御中主神から主観されれば、無限でも無く、無始無終でもないに決まって居る。そして其全体に(わた)りて、統一あり秩序ある進左退右運動を始められたとすれば、無論其運動には、大中心もあり、又太極もあるに相違ない。
 一個の大中心から、東西南北、四方八面に向って太極がありとすれば、(ここ)に吾々の頭脳には、髣髴(ほうふつ)として至大天界の在ることが浮んで来る。
 かくして出来た至大天球の内部は、最初は混沌(こんとん)として天地の区別もなかったが、進左退右の旋回運動が継続さるる(うち)に、軽く澄みたるものと、重く濁れるものとは次第に分離され、そして軽きものは外周に、重きものは中心に向って凝集して来る。是れは吾々が簡単な方法で実験して見ても判る。泥水を円形の器物に入れ、左右の手で、とんとん叩いて旋回運動を与えるなども、一の実験法である。そうして居ると、泥は次第に中央に向って突起したように凝集し、周囲の方は澄んで来る。又立体と平面体との差別はあるが、円盆の上に、豆だの(ちり)だのを載せて()き混ぜて置き、同様に両手で叩いて見ても判る。軽い塵は周囲に集り、重い豆は中心に集る。農夫などは、惟神(かんながら)に此の天則を知って居て、平生(へいぜい)(この)方法で塵と穀類との選別(よりわけ)をして居る。天とは、宇宙の内部で軽く澄みたる所の総称で、科学者はエーテル界などと(とな)える。又地とは、重く濁れるものの総称で、即ち物質世界である。無論、天も陰陽二元から成り、地も同様である。只陰陽の配合に於て、二者甚だしく赴きを異にする。根本の原質に於て差異はないが、形態機能の上には多大の相違がある。
 天地剖判(ぼうはん)の初頭に於ては、天に対して地も(ただ)一個であった。旋回運動が継続されて居る(うち)に、大地の内部に(おい)ても、重い物と軽い物、澄んだ所と濁った所とが次第に区分され、外周に集合した所の比較的軽く澄んだ所、例えば瓦斯体(がすたい)は、()る時期に於て、中心の固形体、又は液体との共同運動が不可能となり、(つい)に分離して(しま)う。そして天の一角に或る位置をを占めて、一方宇宙の大運動に伴いつつ、自己も(また)独立せる小運動を続ける。これが第一の星である。次に第二の星が分離し、次に第三、第四、第五と次第に分離して、現在見るが如き無数の天体を形成するに至った。是等(これら)諸星辰の分離に連れて、無論地の容積は縮小又縮小、最後に太陽、太陰等と分るるに及びて、現在の大地と成って仕舞(しま)った。容積から言えば、天体中には大地球よりも大きいものもあるが、(しか)し宇宙の中心という点から言えば、大地球がそれであらねばならぬ。最早(もはや)大地は大体出来(あが)って、此上(このうえ)分離するものがなく、例えば充分酒を絞り()げた酒粕(さけかす)の如きものになって居るのだ。
 宇宙根本の「力」を体現するものは、既に述ぶるが如く、宇宙を機関として、無限、絶対、無始、無終の活動を続け給う所の全一祖神天之御中主神、一名大国常立尊(おおくにとこたちのみこと)である。此意義に於て、宇宙は一神であるが、宇宙の内部に発揮さるる力は、各々分担が異り、軽重大小が異り、千種万様、其窮極を知らない。そして是等の千種万様の力は、各々相当の体現者を以て代表されて居る。此意義に於ては、宇宙は多神に依りて経営され、所謂(いわゆる)八百万神(やおよろずのかみ)の御活動である。由来一神論と多神論とは、(あい)背馳(はいち)して並立する事が出来ぬものの如く見做(みな)され、今日に於ても尚お迷夢の覚めざる頑冥(がんめい)者流が多いが、実は一神論も多神論も、共にそれ(だけ)では半面の真理しか捕えて居ない。一神にして同時に多神、多神にして同時に一神、(これ)を捲けば一神に集まり、之を放てば万神に(わかれ)るのである。此の意義に於て、天地、日月、万有、一切(ことごと)く神であり、神の機関である。小天之御中主神である。世人の多数は、現象に捕えられ、物質に拘泥して、神に就きて正しい観念を容易に()ち得ないが、元来、言葉の意義から(しら)べて、神とは「火水(かみ)」である。即ち陰陽、霊体、火水の二元が結果して、各自特有の「力」を発揮するものは皆神である。それが幽体であろうが、現体であろうが、共に神である事に変りはない。幽と現との区画は、そう分明なものでない。甲の人の眼に映ずるものが、必ずしも乙の人の目には映じない。換言すれば、甲には現であるが、乙には幽である、という事になる。即ち現体といい、幽体といい、人といい、神といい、単に大小、高下、強弱、清濁、軽重等の差異(だけ)で、根元に於ては同一である。程度の差異丈で、原質の差異ではない。自己の肉眼に見えないものは、多くの人は否定したがる、少くとも疑を(はさ)みたがるが、色盲患者が五色を見せられた時に、「これは三色である」、「四色である」と主張するのと、何の相違はない。だから従来、肉眼本位、物質本位の人でも、充分修業を積みて、一旦、霊聞霊眼等が開け出し、所謂(いわゆる)神の言葉をきき、神の姿を拝することに成ると、多くは翻然(ほんぜん)として大悟し、「自分が足りなかったのだ」という事が判って来る。現在、地上人類の大多数は、悉く一種の色盲患者であるから、五色を見せられ(なが)ら、これはたった三色であると主張する所の頑冥者流が多いのである。
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