霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 武志(たけし)(みや)〔六六三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻 篇:第1篇 宇都山郷 よみ(新仮名遣い):うづやまごう
章:第1章 武志の宮 よみ(新仮名遣い):たけしのみや 通し章番号:663
口述日:1922(大正11)年05月12日(旧04月16日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年3月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
言依別命は、神素盞嗚大神の命を奉じて、照山と桶伏山の間に貴の御舎を仕え祀って国治立大神、豊国姫大神の霊を鎮祭した。
これを錦の宮という。玉照彦、玉照姫は幼時より神人に秀で、神格勝れ、救世主として尊敬を集めた。
言依別命は錦の宮を根拠として自転倒島の総統権を握った。コーカス山、斎苑の館と相俟って、天下修斎の神業を世界に拡げることになった。
高姫、黒姫、松姫も身命を三五教に奉じて、世界を渡り歩き、神徳を拡充することになった。
元照彦の御魂の再来である天の真浦は、錦の宮のことを聞くと、きこりをやめて聖地に訪ねて来て、言依別命より宣伝使に任命された。
真浦は神徳宣布の旅に出て、人の尾峠の西麓に着いた。真浦は雪に悩まされながら、熊のつけた獣道をたどっていくと、道の傍らに一軒のあばら家に灯りがともっているのが見えた。
真浦が外で屋内の様子をうらやんでいると、あばら家から真浦を中に招き入れる声がする。厚意に甘えて中に入ると、あばら家に居た二人は、真浦の身ぐるみを剥ごうとしていた。二人はバラモン教徒だと名乗った。
しかし真浦は、二人が三五教の駒彦、秋彦に似ていることに気付く。二人はバラモン教徒の振りをして、真浦を試したのだということがわかった。
真浦は駒彦、秋彦とともに武志の宮を祀っている浮木の里に着いた。三人は社務所で休んでいると、この宮に仕える松鷹彦と出合った。三人は、バラモン教を言向け和すために、バラモン教の司・友彦の館に案内するように松鷹彦に頼み込んだ。
道中、駒彦と秋彦は、突然真浦を抱えると崖の下に投げ落とした。松鷹彦は驚くが、駒彦と秋彦はこれも宣伝使の試練だと言う。松鷹彦は驚いて逃げてしまった。
駒彦と秋彦は、真浦が平気な様子でいるのを確認すると、試験に合格したと祝福して、またどこかへ行ってしまった。
真浦は一人雪を踏みしめて河原の茅屋にたどり着いた。そこは松鷹彦の家であった。松鷹彦は真浦の身を心配するが、真浦は逆に、駒彦、秋彦のお陰で腹に宝をいただいた、と述べた。
松鷹彦は翻然として悟り笑うと、三五教に興味を抱いた。真浦と松鷹彦は信仰についての問答で互いに親交を深めた。真浦は四五日逗留して、法話を聞かせた。
ある日、松鷹彦は漁をして真浦に魚を捕ろうと川(宇都山川)に入った。しかし松鷹彦は川に落ちてしまった。真浦は婆に諭されて不言実行の教えに思い出し、松鷹彦を助け出した。
松鷹彦夫婦は、実地をもって不言実行の教えを真浦に教え、真浦は自ら裏の川で禊をなすと、松鷹彦の足の痛みを祈願によって治した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-04-18 03:27:47 OBC :rm2001
愛善世界社版:7頁 八幡書店版:第4輯 151頁 修補版: 校定版:7頁 普及版:2頁 初版: ページ備考:
001常世(とこよ)(やみ)()らさむと
002(かみ)御稜威(みいづ)高熊(たかくま)
003(しづ)岩窟(いはや)奥深(おくふか)
004(めぐみ)(つゆ)(あめ)となり
005(ゆき)ともなりて空蝉(うつせみ)
006醜世(しこよ)(あら)(てら)さむと
007(そら)(かがや)旭子(あさひこ)
008(ひかり)(つよ)玉照彦(たまてるひこ)
009伊豆(いづ)(みこと)奉按(ほうあん)
010言照姫(ことてるひめ)神霊(しんれい)
011数多(あまた)(かみ)(おく)られて
012五六七(みろく)神代(みよ)松姫(まつひめ)
013(こころ)イソイソ山坂(やまさか)
014(わた)りて(きた)玉鉾(たまぼこ)
015(みち)(ひろ)らに世継王(よつわう)(ざん)
016東表面(ひがしおもて)(みね)(つづ)
017紅葉(もみぢ)(いろ)照山(てらやま)
018(ふもと)()てる(かり)殿(との)
019(かみ)御言(みこと)(かしこ)みて
020悦子(よしこ)(ひめ)(まも)りたる
021(うづ)宮居(みやゐ)()(はな)
022(ひめ)(みこと)御水火(みいき)より
023()でし玉照彦(たまてるひこ)(かみ)
024(いさ)(すす)んで(おく)()
025(てん)(くわ)(すゐ)()(むす)びたる
026紫姫(むらさきひめ)若彦(わかひこ)
027(よろこ)(いさ)彦神(ひこがみ)
028(むか)(まつ)りて玉照(たまてる)
029(ひめ)(みこと)夫神(つまがみ)
030(たた)へまつらむ真心(まごころ)
031(かぎ)りを(つく)(つか)()
032(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)
033英子(ひでこ)(ひめ)(つか)はして
034五六七(みろく)神代(みよ)(いしずゑ)
035(もも)仕組(しぐみ)(つか)へしめ
036国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)
037国武彦(くにたけひこ)(あら)はれて
038(くも)()てたる(すゑ)()
039(てら)(きよ)むる先駆(さきがけ)
040姿(すがた)(かく)して桶伏山(をけふせやま)
041黄金(こがね)(たま)諸共(もろとも)
042御稜威(みいづ)四方(よも)(かがや)きぬ
043言依別(ことよりわけ)宣伝使(せんでんし)
044斎苑(いそ)(やかた)立出(たちい)でて
045雲路(くもぢ)押分(おしわ)遥々(はるばる)
046(あや)聖地(せいち)()(たま)
047(こころ)(そら)玉照彦(たまてるひこ)
048(かみ)(みこと)(ひめ)(みこと)
049(たて)(よこ)との皇神(すめかみ)
050(わけ)御霊(みたま)(うれ)しみて
051三五教(あななひけう)(いや)(かた)
052いや遠永(とほなが)()(つた)ふ。
053 言依別(ことよりわけの)(みこと)は、054(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(めい)(ほう)じ、055照山(てらやま)桶伏山(をけふせやま)山間(やまあひ)に、056国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)057豊国姫(とよくにひめ)大神(おほかみ)の、058(うづ)御舎(みあらか)(つか)へまつりて、059(その)威霊(ゐれい)鎮祭(ちんさい)し、060玉照彦(たまてるひこ)061玉照姫(たまてるひめ)をして宮仕(みやづか)へとなし、062世界(せかい)経綸(けいりん)神業(しんげふ)基礎(きそ)樹立(じゆりつ)せむとしたまひ、063遠近(をちこち)山野(さんや)()()り、064(みづ)御舎(みあらか)(つか)へまつつた。065神人(しんじん)()(みち)(おも)ひ、066()(おも)真心(まごころ)凝結(ぎようけつ)して、067荘厳(さうごん)無比(むひ)(みづ)御舎(みあらか)(またた)(うち)建造(けんざう)された。068(しよう)して(にしき)(みや)()ふ。069玉照彦(たまてるひこ)070玉照姫(たまてるひめ)幼時(えうじ)より数多(あまた)神人(しんじん)(ひい)で、071神徳(しんとく)(たか)く、072神格(しんかく)(すぐ)れ、073神代(かみよ)()ける救世主(きうせいしゆ)として、074天下(てんか)万民(ばんみん)尊敬(そんけい)(あつ)めたまふに(いた)りけり。
075 言依別(ことよりわけの)(みこと)は、076素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(めい)(ほう)じ、077(にしき)(みや)背景(はいけい)として、078自転倒(おのころ)(じま)()ける三五教(あななひけう)総統権(そうとうけん)(にぎ)り、079コーカス(ざん)080斎苑(いそ)(やかた)相俟(あひま)つて、081天下(てんか)修斎(しうさい)神業(しんげふ)宇内(うだい)拡張(くわくちやう)(たま)(こと)となつた。082三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()ふも(さら)なり、083ウラナイ(けう)()て、084(みづ)()御霊(みたま)極力(きよくりよく)反抗(はんかう)したる高姫(たかひめ)085黒姫(くろひめ)086松姫(まつひめ)は、087(ゆめ)()めたる(ごと)(こころ)(ひるがへ)し、088身命(しんめい)三五教(あななひけう)(ほう)じ、089自転倒(おのころ)(じま)(はじ)め、090海外(かいぐわい)諸国(しよこく)跋渉(ばつせう)して、091神徳(しんとく)拡充(くわくじゆう)することとなつた。092(ここ)元照彦(もとてるひこ)御霊(みたま)再来(さいらい)093(あめ)真浦(まうら)は、094大台(おほだい)(はら)山麓(さんろく)(うま)れ、095木樵(きこり)(わざ)となし(その)()(おく)()たるが、096(あや)高天(たかま)(にしき)(みや)建造(けんざう)され、097神徳(しんとく)四方(よも)(ひか)(かがや)くと()きて、098樵夫(きこり)(わざ)(はい)し、099遥々(はるばる)聖地(ここ)(たづ)(きた)り、100言依別(ことよりわけの)(みこと)(えつ)し、101(あらた)宣伝使(せんでんし)となることを()た。102(あめ)真浦(まうら)(おほい)(よろこ)び、103昼夜(ちうや)区引(くべつ)なく宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、104()自転倒(おのころ)(じま)(むか)つて、105神徳(しんとく)宣布(せんぷ)神業(しんげふ)(こころ)みむとし、106聖地(せいち)(あと)(ただ)一人(ひとり)107(きり)海原(うなばら)押分(おしわ)けて(かぜ)のまにまに、108(ひと)()(たうげ)西麓(せいろく)()いた。109(みち)()(ひと)()えぬ(ばか)りの粉雪(こなゆき)110(たき)(ごと)くに()(きた)り、111()()(いつ)(しやく)(ばか)りも地上(ちじやう)()もり、112()黄昏(たそが)れて、113(みち)いよいよ(とほ)く、114真浦(まうら)行手(ゆくて)(まよ)ひ、115(すす)みもならず、116退(しりぞ)きもならず、117蓑笠(みのかさ)()けたる(まま)118路上(ろじやう)佇立(ちよりつ)して、119声低(こゑびく)天津(あまつ)祝詞(のりと)幾度(いくど)となく繰返(くりかへ)しつつあつた。120(あや)しき(けだもの)(かげ)幾十(いくじふ)となく(たい)をなして、121山上(さんじやう)より(くだ)()る。122されど真浦(まうら)(たき)()()(ゆき)()(さへぎ)られ、123足許(あしもと)(すす)()るまで()らざりき。124(ただ)(なん)となく(ゆき)()(くだ)何者(なにもの)かの足音(あしおと)125追々(おひおひ)(ちか)づく(こゑ)のみ(みみ)()る。126真浦(まうら)独言(ひとりごと)
127真浦今迄(いままで)(あたた)かい(くに)(そだ)ち、128(この)(やう)深雪(ふかゆき)()(こと)がなかつた。129(はじ)めて(かみ)(さま)のお(みち)()り、130(ひやく)(にち)百夜(ひやくや)修行(しうぎやう)()み、131(やうや)(ゆる)されて(いま)(ここ)宣伝使(せんでんし)()となり、132(あし)(まか)せて(すす)みて()たが……アヽゆき(つま)つたものだ。133言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)より「(なんぢ)()れより(ひと)()(たうげ)()え、134河水(かはみづ)(きよ)宇都(うづ)(さと)初宣伝(はつせんでん)(こころ)みよ」と(あふ)せられた。135(しか)(なが)ら、136()()(つも)大雪(おほゆき)137()して樹木(じゆもく)(しげ)れる(この)谷間(たにあひ)138()(くれ)かかる……アーア宣伝使(せんでんし)(つら)いものだ。139追々(おひおひ)(つも)(ゆき)(かさ)140(まか)(ちが)へば(わが)()(ゆき)(うづ)まつて、141(つめ)たくなつて(しま)うであらう。142進退(しんたい)惟谷(これきは)まるとは(この)(こと)だなア』
143心細(こころぼそ)げに(つぶや)(をり)しも、144最前(さいぜん)足音(あしおと)追々(おひおひ)(ちか)づき(きた)る。145()れば数十頭(すうじつとう)(くま)(むれ)146真浦(まうら)足許(あしもと)勢込(いきほひこ)んで(はし)()く。147真浦(まうら)(おどろ)いて(ゆき)(なか)(みち)()けた。148(くま)(むれ)(なん)遠慮(ゑんりよ)もなくスタスタと(れつ)()んで、149西方(せいはう)さして(はし)()く。
150 真浦(まうら)はホツと(いき)をつき、
151真浦『アヽ、152有難(ありがた)い、153沢山(たくさん)(くま)(あら)はれて雪路(ゆきみち)()()けて、154立派(りつぱ)通路(つうろ)(ひら)いて()れた。155()れも(まつた)(かみ)(さま)()神徳(しんとく)であらう…………有難(ありがた)有難(ありがた)し』
156感謝(かんしや)しながら、157(くま)足跡(あしあと)()()(のぼ)()く。158(みち)(かたはら)一軒(いつけん)茅屋(あばらや)()ることが()()いた。159屋内(をくない)には(かす)かな火影(ほかげ)(またた)いて()る。160(かぜ)()()(ゆき)しばき益々(ますます)(はげ)しく、161(くま)折角(せつかく)(ひら)いて()れた(ゆき)新道(しんだう)も、162(またた)(うち)閉塞(へいそく)して(しま)つた。163屋内(をくない)には気楽(きらく)さうに(わら)ひさざめく(こゑ)164真浦(まうら)(この)愉快気(ゆくわいげ)(わら)(こゑ)()き、
165真浦『ホンに(うらや)ましい(こと)だなア。166()れは神命(しんめい)とは()(なが)ら、167(この)雪路(ゆきみち)(なや)み、168(たま)()さへも()れなむとする極寒(ごくかん)(くる)しみ、169血管(けつくわん)(なが)るる血潮(ちしほ)凝結(ぎようけつ)せむとする(つら)さに引替(ひきか)へ、170(この)()(うち)面白(おもしろ)さうな(わら)(ごゑ)171…………(じつ)(ひと)境遇(きやうぐう)(くらゐ)運否(うんぷ)のあるものはない。172(しか)(なが)()れも(かみ)(みち)(つた)ふる宣伝使(せんでんし)初陣(うひぢん)173(かく)(ごと)(ゆき)(おそ)れ、174(ひと)(いへ)這入(はい)つて、175一夜(いちや)宿(やど)()はんとするも、176(なん)となくウラ(はづ)かしい、177アヽ如何(いか)にせむか』
178躊躇(ためら)(をり)しも、179屋内(をくない)より(をとこ)(こゑ)
180(をとこ)『オイ、181どこの乞食(こじき)だか()らぬが、182(この)(ゆき)()るのに、183(なに)愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()るのだ。184チツと(おれ)(うち)へでも這入(はい)つて(やす)んだらどうだ。185あつたかい()()いてある。186沢山(たくさん)()()いてあるぞ』
187真浦(まうら)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。188(しか)(なが)(わたくし)はどうしても(この)(たうげ)()さねばなりませぬ。189()(こころざし)有難(ありがた)御座(ござ)いますが……』
190(をとこ)『ナニ、191(おれ)(うち)(やす)むのは(いや)だと()ふのか、192馬鹿(ばか)(やつ)だなア。193(おれ)(この)(へん)杣人(そまびと)だ。194(すこ)しの(ゆき)はチツとも()にならない(をとこ)だが、195流石(さすが)山猿(やまざる)(おれ)でさへも、196一歩(いつぽ)今日(けふ)(ゆき)には(あゆ)(こと)出来(でき)ない。197どうして(この)(さか)(のぼ)れると(おも)ふのか。198マアそんな馬鹿(ばか)(こと)()はずに(たび)道連(みちづ)()(なさけ)だ。199一樹(いちじゆ)(かげ)雨宿(あまやど)り、200一河(いちが)(なが)れを()(ひと)も、201(ふか)(えにし)()るものだ。202サア遠慮(ゑんりよ)()らぬ、203這入(はい)つて休息(きうそく)したがいい』
204 真浦(まうら)(その)言葉(ことば)(やや)(こころ)(うご)き、
205真浦『どなたか()りませぬが、206()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)います。207左様(さやう)ならば(しばら)休息(きうそく)をさせて(いただ)きませう』
208(をとこ)『アヽそれが()い。209サアサアお這入(はい)りなさい』
210真浦(まうら)()()()()れ、211(はすかひ)(ゆが)んだ雨戸(あまど)をピシヤツと()めた。
212(をとこ)大変(たいへん)大雪(おほゆき)で、213()けかかつた(いへ)益々(ますます)(あや)しくなつて()た。214愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()ると(ゆき)(おも)みで、215(この)(いへ)平太(へた)つて(しま)ふかも()れないぞ。216………オイ駒公(こまこう)217(きやく)さまだ。218どつさりと薪木(たきぎ)()べて()馳走(ちそう)するのだぞ。219(さむ)(とき)には()一番(いちばん)()馳走(ちそう)だ』
220駒公(こまこう)馬鹿(ばか)()ふな。221どこの(うま)(ほね)か、222鹿(しか)(ほね)(わか)りもせぬ代物(しろもの)を、223物好(ものず)きにも(こま)さんの承諾(しようだく)()ず、224()()()みやがつて、225()()けも()つたものかい。226貴様(きさま)(なん)でも取込(とりこ)(こと)ばつかり(かんが)へて()やがる。227チツと執着心(しふちやくしん)脱却(だつきやく)せぬかい。228()()むことなら(いぬ)葬式(さうしき)でも(よろこ)んで引張(ひつぱ)()むと()代物(しろもの)だから(こま)つて(しま)ふ。229そんな(こと)()立派(りつぱ)(いへ)が、230どうして()つて()くと(おも)ふのか、231秋公(あきこう)不経済(ふけいざい)()には(おれ)本当(ほんたう)アキ()た。232(さむ)(とき)(にはか)(からだ)()(ちか)づけると、233(かへつ)凍傷(とうしやう)(おこ)すものだ。234どこの(やつ)()らぬが、235赤裸(まつぱだか)にして(あたま)から冷水(れいすゐ)でも、236ドツサリ()馳走(ちそう)してやるのだなア。237貴様(きさま)二人(ふたり)()うして(ゆき)(とざ)されて()つても、238チツとも面白味(おもしろみ)がない。239此奴(こいつ)衣服(いふく)万端(ばんたん)(うば)()り、240(その)(うへ)赤裸(まつぱだか)にして(みづ)をかけ、241それを(さかな)一杯(いつぱい)やつたら面白(おもしろ)からう』
242真浦(まうら)『なんだ、243(その)(はう)らは甘言(かんげん)(もつ)(この)(はう)をひつぱり()み、244泥棒(どろばう)(いた)すのか』
245秋彦(あきひこ)『アハヽヽヽ、246()頓馬(とんま)だなア。247そんな(こと)(たづ)ねるのが馬鹿(ばか)だ。248(おれ)今日(けふ)泥棒(どろばう)初陣(うひぢん)だ。249(この)(いへ)(じつ)吾々(われわれ)(もの)ではない。250老爺(ぢい)(ばば)アとが()つたのだが、251(すご)文句(もんく)(なら)べてやつた(ところ)252昨日(きのふ)()(くれ)(ごろ)253どつかへ()げて()きよつた。254彼奴(あいつ)雪爺(ゆきぢい)雪婆(ゆきばば)だつたと()えて(にはか)にこんな大雪(おほゆき)()つて()た。255サア(かは)()いてやらう』
256真浦(まうら)()()けたる衣服(いふく)剥奪(はくだつ)せむとする。
257真浦(まうら)『それは、258あまりぢや。259一寸(ちよつと)()つて()れ』
260秋彦(あきひこ)(まつ)(ひのき)()つたものか。261(ふくろ)(ねずみ)262どうしたつて()かねば()かぬ』
263真浦(まうら)(この)()立去(たちさ)(とき)()ぎませう。264それまで(この)衣服(いふく)(わたくし)()して(くだ)さいませぬか』
265駒彦(こまひこ)『オイ秋公(あきこう)266仕方(しかた)がない、267()してやれ。268……オイ何程(なんぼ)借賃(かりちん)()す? それから約束(やくそく)して()かねば喰逃(くひに)げされては、269泥棒(どろばう)商売(しやうばい)(ぼう)()れるからなア。270ワハヽヽヽ』
271真浦(まうら)自分(じぶん)着物(きもの)利息(りそく)をつけて()して(もら)ふとは、272(また)(めう)規則(きそく)出来(でき)たものですなア』
273駒彦(こまひこ)愚図(ぐづ)々々(ぐづ)()ふない。274(がう)()つては(がう)(したが)へだ。275()れが泥棒(どろばう)社会(しやくわい)規則(きそく)だ』
276真浦(まうら)貴様(きさま)(たち)(まる)でバラモン(けう)みたやうな(やつ)だなア』
277駒彦(こまひこ)『きまつた(こと)だ。278鬼雲彦(おにくもひこ)(さま)乾児(こぶん)だよ。279(あき)280(こま)()つたら、281それは本当(ほんたう)()(とり)(おと)すやうなバラモン(けう)有名(いうめい)宣伝使(せんでんし)だぞ。282貴様(きさま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)283無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)標榜(へうぼう)して()腰抜教(こしぬけけう)(やつ)だから、284指一本(ゆびいつぽん)(おれ)()へても、285抗言(くちごたへ)(ひと)(いた)しても、286抵抗(ていかう)した(こと)になる。287(あたま)をカチ()られようが、288(だま)つて辛抱(しんばう)するのだぞ』
289真浦(まうら)『アーア(こま)つた(こと)になつたもんだワイ。290三五教(あななひけう)には(うはさ)()けば、291もとは(うま)292鹿(しか)()紫姫(むらさきひめ)(さま)家来(けらい)があつて、293それが高城山(たかしろやま)松姫(まつひめ)さまを帰順(きじゆん)させ、294駒彦(こまひこ)295秋彦(あきひこ)()()(もら)つたさうだが、296(まへ)()(あき)()ひ、297(こま)()ひ、298()()()る。299(なに)因縁(いんねん)(いと)(むす)ばれて()(やう)だ。300もしや三五教(あななひけう)駒彦(こまひこ)301秋彦(あきひこ)ではなからうかなア』
302秋彦(あきひこ)『そんな腰抜(こしぬけ)秋彦(あきひこ)や、303駒彦(こまひこ)とはチト相場(さうば)(ちが)ふのだぞ。304(おれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)真浦(まうら)()新米者(しんまいもの)宇都山(うづやま)(さと)初陣(うひぢん)()くので、305言依別(ことよりわけ)(かみ)(さま)から……』
306駒彦(こまひこ)『オイ秋公(あきこう)307(なに)()ふのだ。308ウツカリした(こと)()ふものでないぞ』
309真浦(まうら)『アハヽヽヽ、310大方(おほかた)そんな(こと)だと(おも)つた。311言依別(ことよりわけ)(かみ)(さま)(おれ)信仰力(しんかうりよく)(ため)(ため)に、312貴様(きさま)此処(ここ)(まは)しおき、313そうして(この)(みち)(とほ)れと仰有(おつしや)つたのだなア……オイ秋彦(あきひこ)314駒彦(こまひこ)315モウ駄目(だめ)だぞ。316泥棒(どろばう)でも、317バラモンでも、318ベラボウでもない、319貴様(きさま)(えり)(しるし)(なん)だ』
320(こま)321(あき)『アハヽヽヽ、322到頭(たうとう)陰謀(いんぼう)発覚(はつかく)したか。323エヽ仕方(しかた)がない。324そんなら事実(じじつ)をスツカリ白状(はくじやう)(いた)して(つか)はす』
325真浦(まうら)『イヤもう沢山(たくさん)だ。326(なに)(うけたま)はる必要(ひつえう)()りませぬワイ』
327駒公(こまこう)()宣伝使(せんでんし)点数(てんすう)六十五(ろくじふご)(てん)だ。328(すみやか)言依別(ことよりわけ)(かみ)(さま)成績表(せいせきへう)書留(かきとめ)郵便(ゆうびん)(おく)つて()かう。329()()ける(まで)(さん)(にん)鼎坐(ていざ)してお神酒(みき)(いただ)いて()日待(ひまち)をしようではないか』
330真浦(まうら)『またそんな(こと)()つて、331点数(てんすう)()らすのではないか』
332秋彦(あきひこ)心配(しんぱい)するな。333一旦(いつたん)(みと)めた以上(いじやう)減点(げんてん)(けつ)してしない。334(その)(かは)(おれ)(こと)もよく報告(はうこく)するのだぞ』
335真浦(まうら)()報告(はうこく)してやらう。336コンミツシヨンとしてモウ四十五(しじふご)(てん)あげて()れ』
337秋彦(あきひこ)六十五(ろくじふご)(てん)四十五(しじふご)(てん)(くは)へると満点(まんてん)以上(いじやう)になつて(しま)ふ。338それでは試験官(しけんくわん)として報告(はうこく)仕方(しかた)がないワ』
339真浦(まうら)(おれ)改心(かいしん)百点(ひやくてん)以上(いじやう)だ。340(その)(かは)貴様(きさま)百八十(ひやくはちじつ)(てん)(おれ)から報告(はうこく)してやらう。341(しか)二人(ふたり)合計(がふけい)してだから……』
342他愛(たあい)なき雑談(ざつだん)一夜(いちや)()かしたりける。
343(あめ)真浦(まうら)宣伝使(せんでんし)
344秋彦(あきひこ)駒彦(こまひこ)諸共(もろとも)
345(かみ)(をしへ)(つた)へむと
346(ひと)()(たうげ)急坂(きふはん)
347(ゆき)かき()けて(のぼ)()
348()一面(いちめん)銀世界(ぎんせかい)
349金烏(きんう)(ひか)りキラキラと
350またたき()めて大空(おほぞら)
351(ぬぐ)ふが(ごと)()(わた)
352(ここ)三人(みたり)(いさ)ましく
353(たに)(なが)れに沿()(なが)
354(あし)()みなづみ(すす)()
355(あさひ)(かがや)(ゆき)()
356(かみ)(めぐみ)白妙(しらたへ)
357(ゆき)(つつ)まる宇都(うづ)(さと)
358武志(たけし)(みや)(まつ)りたる
359浮木(うきき)(さと)辿(たど)()
360(また)もや()()(ゆき)しばき
361(ここ)三人(みたり)大宮(おほみや)
362(わき)()ちたる社務所(ながとこ)
363(ゆき)(しの)いで車座(くるまざ)
364なつて(だん)をば()(なが)
365(たづさ)()てる(にぎ)(めし)
366ムシヤリムシヤリと(たひら)げて
367四方(よも)(はなし)(ふけ)(をり)
368(ゆき)かき()けて(のぼ)()
369(あや)しの(おきな)(ただ)一人(ひとり)
370覚束(おぼつか)()げに(つゑ)()
371(みや)階段(かいだん)(のぼ)()
372真浦(まうら)秋彦(あきひこ)駒彦(こまひこ)
373(まなこ)()ゑて(なが)むれば
374(あや)しの(おきな)神前(しんぜん)
375やうやう(ちか)づき拍手(かしはで)
376(おと)(すず)しく太祝詞(ふとのりと)
377(とな)ふる(こゑ)(うるは)しく
378三人(みたり)(みみ)()きとほる
379(かみ)使(つかひ)真人(しんじん)
380(ただし)悪魔(あくま)化身(けしん)かと
381(あや)しみ(なが)秋彦(あきひこ)
382(この)()()ちてザクザクと
383(ゆき)()()らし神前(しんぜん)
384(ぬか)づく(おきな)打向(うちむか)
385(なれ)何処(いづく)何人(なにびと)
386人里(ひとざと)(はな)れし(この)(もり)
387(ゆき)(をか)して参来(まゐき)たり
388祈願(ねぎごと)するは何故(なにゆゑ)
389()かまほしやと(たづ)ぬれば
390(おきな)(やうや)(かほ)()
391(むね)()れたる白鬚(しらひげ)
392(ふた)つの()にて()(なが)
393四辺(あたり)キヨロキヨロ見廻(みまは)して
394武志(たけし)(みや)神司(かんづかさ)
395(あさ)(ゆふ)なに真心(まごころ)
396(つく)して(つか)(たてまつ)
397()れは松鷹彦(まつたかひこ)(かみ)
398(いまし)何処(いづく)何人(なにびと)
399(いぶ)かしさよと()(かへ)
400(その)容貌(ようばう)のどことなく
401()()はれざる気高(けだか)さに
402秋彦(あきひこ)(おも)はず()()いて
403三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
404(こころ)(いろ)紅葉(もみぢば)
405(にしき)(みや)(つか)へたる
406秋彦(あきひこ)駒彦(こまひこ)二人(ふたり)()
407(あめ)真浦(まうら)諸共(もろとも)
408宇都山(うづやま)(がう)(あら)はれし
409バラモン(けう)曲神(まがかみ)
410言向(ことむ)(やは)鹿島立(かしまだ)
411(ゆき)(をか)してやうやうに
412此処(ここ)まで(すす)(きた)りしぞ
413(ゆき)(うづ)まる山里(やまざと)
414家並(やなみ)()えぬ(さび)しさに
415武志(たけし)(みや)社務所(ながとこ)
416()りて(やす)らひ()たりけり
417(あや)高天(たかま)(あら)はれし
418玉照彦(たまてるひこ)玉照姫(たまてるひめ)
419宇豆(うづ)(みこと)(つか)へます
420三五教(あななひけう)司神(つかさがみ)
421言依別(ことよりわけ)御言(みこと)もて
422あもり(きた)りし三人(みたり)()
423(なんぢ)松鷹彦(まつたかひこ)(かみ)
424(われ)()三人(みたり)宇都山(うづやま)
425バラモン(やかた)(とも)なひて
426(ふと)しき功績(いさを)()てませよ
427応答(いらへ)如何(いかん)()()れば
428松鷹彦(まつたかひこ)(かしこ)みて
429(おい)(あゆ)みもトボトボと
430(ゆき)階段(かいだん)(くだ)りつつ
431(あめ)真浦(まうら)駒彦(こまひこ)
432(まへ)(あら)はれ会釈(ゑしやく)なし
433先頭(せんとう)()たむと(いざな)へば
434三人(みたり)(いさ)(よろこ)びつ
435(おきな)(あと)(したが)ひて
436武志(たけし)(みや)一礼(いちれい)
437(ひがし)()して(すす)()く。
438 松鷹彦(まつたかひこ)雪路(ゆきみち)(つゑ)()(なが)先頭(せんとう)()ちて、439バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)(きこ)えたる友彦館(ともひこやかた)案内(あんない)すべく(すす)()く。440真浦(まうら)(おきな)(あと)七八(しちはつ)(しやく)(おく)れて、441一歩(ひとあし)々々(ひとあし)深雪(ふかゆき)(なか)足跡(あしがた)目標(めあて)(すす)(をり)しも、442秋彦(あきひこ)443駒彦(こまひこ)(もの)をも()はず、444真浦(まうら)引抱(ひつかか)へ、445数丈(すうぢやう)崖下(がけした)突落(つきおと)した。446突落(つきおと)された真浦(まうら)(なん)負傷(ふしやう)もせず、447(たか)()もれる(ゆき)(うへ)にニコニコと安坐(あんざ)して(さん)(にん)姿(すがた)(あふ)()()る。
448秋彦(あきひこ)『モシ真浦(まうら)さま、449どうだ、450()気分(きぶん)(よろ)しいかな。451どこもお怪我(けが)御座(ござ)いませぬか』
452真浦(まうら)『ハイ有難(ありがた)う、453無事(ぶじ)着陸(ちやくりく)(いた)しました』
454駒彦(こまひこ)『サア六十五(ろくじふご)(てん)三十五(さんじふご)(てん)(くは)へて百点(ひやくてん)だ。455肉体(にくたい)高所(かうしよ)から落第(らくだい)したが、456御霊(みたま)はいよいよ立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)及第(きふだい)したのだから(よろこ)(たま)へ』
457 松鷹彦(まつたかひこ)458()(まる)くし、
459松鷹彦(まつたかひこ)『コレコレお(まへ)(たち)(なん)()乱暴(らんばう)(こと)をするのだい。460世界(せかい)人民(じんみん)(たす)けて天国(てんごく)(すく)(やく)であり(なが)ら、461地獄(ぢごく)のやうな断崖(だんがい)から突落(つきおと)すと()(こと)()るものか、462グヅグヅして()ると(この)老人(としより)まで、463どんな(こと)をするか(わか)つたものぢやない』
464秋彦(あきひこ)『お(ぢい)さま()心配(しんぱい)(くだ)さいますな。465身魂(みたま)調(しら)べの(ため)に、466吾々(われわれ)両人(りやうにん)言依別(ことよりわけ)(さま)()命令(めいれい)()りて、467あの(をとこ)修業(しうげふ)をさせに()たのです。468ここで(はら)()てる(やう)(こと)では、469宣伝使(せんでんし)資格(しかく)がないのだから、470()はば我々(われわれ)宣伝使(せんでんし)試験(しけん)委員(ゐゐん)だ。471()れであの(をとこ)立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)になりました』
472松鷹彦(まつたかひこ)『こんな絶壁(ぜつぺき)から(おと)されては、473どうする(こと)出来(でき)ない。474(なん)とか工夫(くふう)をして此処(ここ)まで(すく)()げて()なさらねばなりますまい』
475秋彦(あきひこ)(なに)()心配(しんぱい)()りませぬよ。476獅子(しし)()()んで三日目(みつかめ)谷底(たにそこ)()て、477(あが)つて()(やつ)(また)突落(つきおと)し、478三遍目(さんべんめ)()がつた(やつ)を、479(はじ)めて自分(じぶん)()にすると()(こと)だ。480こんな(とこ)から一遍(いつぺん)二遍(にへん)突落(つきおと)されて屁古垂(へこた)れる(やう)(もの)なら、481到底(たうてい)駄目(だめ)だ。482悪魔(あくま)(さか)ゆる()(なか)宣伝使(せんでんし)にはなれませぬ。483(あが)つて()よつたら、484(また)()(おと)(つも)りです』
485松鷹彦(まつたかひこ)『それだと()つて、486それはあまり残酷(ざんこく)ぢやないか。487(はや)(たす)けてお()げなさい』
488秋彦(あきひこ)『そんな宋襄(そうじやう)(じん)(かへ)つてあの(をとこ)(にく)(やう)なものだ。489可愛(かはい)いから(この)断崕(だんがい)から()(おと)してやつたのです』
490松鷹彦(まつたかひこ)『なんと(めう)可愛(かはい)がり(やう)()つたものだなア。491(わし)(この)(とし)をして()るが、492そんな(あい)()いた(こと)()い』
493不思議(ふしぎ)さうに(のぞ)()んで()る。
494駒彦(こまひこ)『お(ぢい)さま、495(まへ)(ひと)可愛(かはい)がつてあげようか』
496松鷹彦(まつたかひこ)『イヤもう結構(けつこう)々々(けつこう)497(まへ)()可愛(かはい)がられようものなら、498生命(いのち)(なに)()くなつて(しま)ふ。499(わか)(もの)()(かく)も、500(この)老人(としより)がどうなるものか。501(おそ)ろしい(ひと)(たち)だなア』
502蒼惶(さうくわう)として(はし)()る。
503駒彦(こまひこ)『アハヽヽヽ、504到頭(たうとう)老爺(ぢい)さま(きも)(つぶ)して()げて(しま)ひよつた。505サア秋彦(あきひこ)506モウ(よう)()んだ。507()れから各自(めいめい)手分(てわ)けをして、508(めい)ぜられた方面(はうめん)()(こと)にしよう。509…コレコレ真浦(まうら)さま、510マアゆつくりと(ゆき)(うへ)でお鎮魂(ちんこん)でもなさいませ。511これでお(いとま)(いた)します。512(その)(かは)りに百点(ひやくてん)だよ』
513両手(りやうて)(ひろ)げて()せ、514雪路(ゆきみち)一生(いつしやう)懸命(けんめい)何処(いづく)ともなく左右(さいう)(わか)れて(はし)()く。515真浦(まうら)苦心(くしん)惨憺(さんたん)結果(けつくわ)516(やうや)(まは)(みち)見出(みいだ)して、517(もと)(ところ)駆上(かけあが)り、518四辺(あたり)をキヨロキヨロ見廻(みまは)(なが)ら、
519真浦(まうら)『アヽ(たれ)(かれ)(みな)どつかへ埋没(まいぼつ)して(しま)つた。520エヽ仕方(しかた)がない、521足型(あしがた)便(たよ)りに(あと)()つかけよう』
522独語(どくご)しつつ(ゆき)(いん)した草鞋(わらぢ)(あと)を、523(いぬ)鋭利(えいり)嗅覚(きゆうかく)(しし)(あと)()(やう)調子(てうし)(すす)んで()く。524(ゆき)鵞毛(がまう)()(しき)り、525足跡(あしあと)(くぼ)みは(ほとん)埋没(まいぼつ)して(しま)つた。526見渡(みわた)(かぎ)りの白雪(しらゆき)()を、527一歩(ひとあし)々々(ひとあし)(さぐ)(やう)にして、528(つひ)には大川(おほかは)(ほとり)辿(たど)()いた。529(かは)(つつみ)(ほそ)(けぶり)破風口(はふぐち)より立昇(たちのぼ)(ちひ)さき茅屋(ばうをく)(さび)しげに()つて()る。530真浦(まうら)は『御免(ごめん)』と押戸(おしど)()けて()()れば以前(いぜん)老爺(ぢい)が、531(ばば)アと二人(ふたり)(ちや)(すす)つて()る。
532松鷹彦(まつたかひこ)『ヤアお(まへ)最前(さいぜん)宣伝使(せんでんし)だつたなア。533()()(くだ)さつた。534随分(ずゐぶん)乱暴(らんばう)(をとこ)()つたものだ。535あれは大方(おほかた)バラモンの残党(ざんたう)であらう。536(まへ)()()けないと、537どんな()()はされるか()れませぬぞや』
538真浦(まうら)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。539(じつ)(ひと)()(たうげ)西麓(せいろく)(おい)て、540盗賊(たうぞく)出会(であ)ひました。541それから(その)盗賊(たうぞく)さまに武志(たけし)(みや)まで(おく)つて(いただ)いたのです』
542松鷹彦(まつたかひこ)(なに)()られましたかなア』
543真浦(まうら)『イエ(べつ)に……()られる(どころ)結構(けつこ??
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