言依別命は、神素盞嗚大神の命を奉じて、照山と桶伏山の間に貴の御舎を仕え祀って国治立大神、豊国姫大神の霊を鎮祭した。
これを錦の宮という。玉照彦、玉照姫は幼時より神人に秀で、神格勝れ、救世主として尊敬を集めた。
言依別命は錦の宮を根拠として自転倒島の総統権を握った。コーカス山、斎苑の館と相俟って、天下修斎の神業を世界に拡げることになった。
高姫、黒姫、松姫も身命を三五教に奉じて、世界を渡り歩き、神徳を拡充することになった。
元照彦の御魂の再来である天の真浦は、錦の宮のことを聞くと、きこりをやめて聖地に訪ねて来て、言依別命より宣伝使に任命された。
真浦は神徳宣布の旅に出て、人の尾峠の西麓に着いた。真浦は雪に悩まされながら、熊のつけた獣道をたどっていくと、道の傍らに一軒のあばら家に灯りがともっているのが見えた。
真浦が外で屋内の様子をうらやんでいると、あばら家から真浦を中に招き入れる声がする。厚意に甘えて中に入ると、あばら家に居た二人は、真浦の身ぐるみを剥ごうとしていた。二人はバラモン教徒だと名乗った。
しかし真浦は、二人が三五教の駒彦、秋彦に似ていることに気付く。二人はバラモン教徒の振りをして、真浦を試したのだということがわかった。
真浦は駒彦、秋彦とともに武志の宮を祀っている浮木の里に着いた。三人は社務所で休んでいると、この宮に仕える松鷹彦と出合った。三人は、バラモン教を言向け和すために、バラモン教の司・友彦の館に案内するように松鷹彦に頼み込んだ。
道中、駒彦と秋彦は、突然真浦を抱えると崖の下に投げ落とした。松鷹彦は驚くが、駒彦と秋彦はこれも宣伝使の試練だと言う。松鷹彦は驚いて逃げてしまった。
駒彦と秋彦は、真浦が平気な様子でいるのを確認すると、試験に合格したと祝福して、またどこかへ行ってしまった。
真浦は一人雪を踏みしめて河原の茅屋にたどり着いた。そこは松鷹彦の家であった。松鷹彦は真浦の身を心配するが、真浦は逆に、駒彦、秋彦のお陰で腹に宝をいただいた、と述べた。
松鷹彦は翻然として悟り笑うと、三五教に興味を抱いた。真浦と松鷹彦は信仰についての問答で互いに親交を深めた。真浦は四五日逗留して、法話を聞かせた。
ある日、松鷹彦は漁をして真浦に魚を捕ろうと川(宇都山川)に入った。しかし松鷹彦は川に落ちてしまった。真浦は婆に諭されて不言実行の教えに思い出し、松鷹彦を助け出した。
松鷹彦夫婦は、実地をもって不言実行の教えを真浦に教え、真浦は自ら裏の川で禊をなすと、松鷹彦の足の痛みを祈願によって治した。