霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第20巻(未の巻)
序
凡例
総説歌
第1篇 宇都山郷
第1章 武志の宮
第2章 赤児の誤
第3章 山河不尽
第4章 六六六
第2篇 運命の綱
第5章 親不知
第6章 梅花の痣
第7章 再生の歓
第8章 心の鬼
第3篇 三国ケ嶽
第9章 童子教
第10章 山中の怪
第11章 鬼婆
第12章 如意宝珠
霊の礎(六)
霊の礎(七)
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第20巻(未の巻)
> 第1篇 宇都山郷 > 第2章 赤児の誤
<<< 武志の宮
(B)
(N)
山河不尽 >>>
第二章
赤児
(
あかご
)
の
誤
(
あやまり
)
〔六六四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻
篇:
第1篇 宇都山郷
よみ(新仮名遣い):
うづやまごう
章:
第2章 赤児の誤
よみ(新仮名遣い):
あかごのあやまり
通し章番号:
664
口述日:
1922(大正11)年05月12日(旧04月16日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年3月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
鬼雲彦の残党・友彦は、宇都山郷にバラモン教を広めて勢力を保っていた。
松鷹彦のところへ、留公たち四五人の村人がやってきて、家にかくまっている三五教の宣伝使を渡せ、と言ってきた。
松鷹彦と村人が言い争っていると、奥から天の真浦の宣伝歌が聞こえてきた。留公たちはにわかに頭が痛くなり、逃げ帰る。松鷹彦は、ここの村人たちは質朴だが、理解力がないために誤った教えに頑なになっている、と嘆く。
松鷹彦と婆は、聞こえよがしに誰かこの村を救ってくれる者はないか、と会話する。天の真浦はそれを聞いてそっと里に向かって行った。
バラモン教の友彦のところへ、松鷹彦の家から逃げてきた留公ら村人たちが戻ってきた。そして、負け戦の報告をしているところへ、別の村人がやってきて、留公が逃げるときに、畑の芋の苗を踏み潰したと文句をつけた。
友彦はそれを聞いて、留公を一時破門した。留公は怒って、これからは三五教の味方をするのだと言って、出て行ってしまう。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-04-18 19:02:21
OBC :
rm2002
愛善世界社版:
38頁
八幡書店版:
第4輯 162頁
修補版:
校定版:
39頁
普及版:
17頁
初版:
ページ備考:
001
雪
(
ゆき
)
に
埋
(
うづ
)
まる
川端
(
かはばた
)
の
002
賤
(
しづ
)
の
伏家
(
ふせや
)
も
春
(
はる
)
が
来
(
き
)
て
003
冷
(
つめ
)
たき
雪
(
ゆき
)
も
何時
(
いつ
)
しかに
004
溶
(
と
)
けて
嬉
(
うれ
)
しき
老夫婦
(
らうふうふ
)
005
宇都山
(
うづやま
)
川
(
がは
)
の
水
(
みづ
)
温
(
ぬる
)
み
006
枯木
(
かれき
)
も
青芽
(
あをめ
)
を
萌
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
して
007
軒端
(
のきば
)
の
梅
(
うめ
)
も
匂
(
にほ
)
ひ
初
(
そ
)
め
008
谷
(
たに
)
の
戸
(
と
)
開
(
あ
)
けて
鶯
(
うぐひす
)
の
009
訪
(
おとづ
)
る
季節
(
きせつ
)
となりにける
010
山
(
やま
)
と
山
(
やま
)
とに
包
(
つつ
)
まれし
011
此処
(
ここ
)
は
世界
(
せかい
)
の
秘密郷
(
ひみつきやう
)
012
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
も
質朴
(
しつぼく
)
に
013
宛然
(
さながら
)
神代
(
かみよ
)
の
如
(
ごと
)
くなり
014
時
(
とき
)
しもあれや
婆羅門
(
ばらもん
)
の
015
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
016
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
残党
(
ざんたう
)
と
017
世
(
よ
)
に
聞
(
きこ
)
えたる
友彦
(
ともひこ
)
が
018
二十戸
(
にじつと
)
許
(
ばか
)
りの
里人
(
さとびと
)
に
019
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
を
標榜
(
へうぼう
)
し
020
剣
(
つるぎ
)
を
渡
(
わた
)
り
火
(
ひ
)
を
渡
(
わた
)
り
021
水底
(
みなそこ
)
潜
(
くぐ
)
り
浮
(
う
)
き
沈
(
しづ
)
み
022
鳥
(
とり
)
さへとまらぬ
茨室
(
いばむろ
)
に
023
郷
(
さと
)
の
男女
(
なんによ
)
を
裸体
(
はだか
)
とし
024
言葉
(
ことば
)
巧
(
たくみ
)
に
説
(
と
)
きつけて
025
身体
(
からだ
)
を
破
(
やぶ
)
る
曲
(
まが
)
の
行
(
ぎやう
)
026
足駄
(
あしだ
)
の
表
(
おも
)
に
釘
(
くぎ
)
を
打
(
う
)
ち
027
穿
(
うが
)
ちて
歩
(
あゆ
)
む
村人
(
むらびと
)
は
028
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
ふる
第一
(
だいいち
)
の
029
清
(
きよ
)
き
御業
(
みわざ
)
と
迷信
(
めいしん
)
し
030
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
め
身
(
み
)
を
痛
(
いた
)
め
031
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
の
嬉
(
うれ
)
し
泣
(
な
)
き
032
この
惨状
(
さんじやう
)
を
救
(
すく
)
はむと
033
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
034
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
が
賤
(
しづ
)
の
家
(
や
)
に
035
長
(
なが
)
らく
足
(
あし
)
を
留
(
とど
)
めつつ
036
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
037
うまら
に
委曲
(
つばら
)
に
説
(
と
)
きつれど
038
迷
(
まよ
)
ひ
切
(
き
)
つたる
里人
(
さとびと
)
の
039
肯
(
うけご
)
ふ
事
(
こと
)
とならずして
040
迷
(
まよ
)
ひに
迷
(
まよ
)
ふ
憫
(
あは
)
れさよ。
041
春
(
はる
)
は
漸
(
やうや
)
く
深
(
ふか
)
く、
042
菜種
(
なたね
)
の
花
(
はな
)
も
すげ
なく
散
(
ち
)
りて
青
(
あを
)
い
莢
(
さや
)
の
針
(
はり
)
をいただき、
043
大根
(
だいこん
)
の
花
(
はな
)
遅
(
おく
)
れ
馳
(
ば
)
せ
乍
(
なが
)
ら
白
(
しろ
)
く
咲
(
さ
)
いてゐる。
044
一方
(
いつぱう
)
は
大川
(
おほかは
)
、
045
一方
(
いつぱう
)
は
田圃
(
たんぼ
)
で
挟
(
はさ
)
まれた
川堤
(
かはづつみ
)
の
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
の
茅屋
(
ばうをく
)
さして
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男女
(
なんによ
)
、
046
甲
(
かふ
)
『ハイ
御免
(
ごめん
)
なさいませ』
047
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
留公
(
とめこう
)
か。
048
大勢
(
おほぜい
)
伴
(
づ
)
れで
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へて
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのだ』
049
留公
(
とめこう
)
『イヤ
何処
(
どこ
)
へも
行
(
ゆ
)
かぬ。
050
当家
(
たうけ
)
へ
村人
(
むらびと
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
として、
051
吾々
(
われわれ
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
がやつて
来
(
き
)
たのだ。
052
今日
(
けふ
)
は
確
(
しつか
)
りと
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ひませう。
053
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
関
(
くわん
)
する
大問題
(
だいもんだい
)
だから』
054
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
『
大問題
(
だいもんだい
)
とはソラ
何
(
なん
)
だ。
055
又
(
また
)
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
で
河童
(
かつぱ
)
が
屁
(
へ
)
を
放
(
ひ
)
つたやうな
事
(
こと
)
を
針小
(
しんせう
)
棒大
(
ぼうだい
)
に
言
(
い
)
つて
来
(
き
)
たのだらう』
056
留公
(
とめこう
)
は
肩
(
かた
)
を
張
(
は
)
り、
057
腕
(
うで
)
を
捲
(
まく
)
り
捩鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
058
半分
(
はんぶん
)
許
(
ばか
)
り
逃
(
に
)
げ
腰
(
ごし
)
になつて、
059
留公
(
とめこう
)
『オイお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
、
060
道
(
みち
)
をサツと
開
(
あ
)
けて
置
(
お
)
けよ。
061
まさか
の
時
(
とき
)
に
邪魔
(
じやま
)
になると
困
(
こま
)
るから』
062
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
『なんだ
貴様
(
きさま
)
は
肩
(
かた
)
をいからし、
063
腕
(
うで
)
をまくり、
064
よう
気張
(
きば
)
つたものだなア。
065
今
(
いま
)
からそれだけ
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
出
(
だ
)
して
気張
(
きば
)
つて
居
(
を
)
ると、
066
力
(
ちから
)
の
原料
(
げんれう
)
が
欠乏
(
けつぼう
)
するぞ。
067
先
(
ま
)
づ
じつくり
せぬかい』
068
留公
(
とめこう
)
は
少
(
すこ
)
し
肩
(
かた
)
の
角
(
かど
)
を
削
(
けづ
)
り、
069
手持
(
てもち
)
無沙汰
(
ぶさた
)
にそつと
捲
(
まく
)
つた
腕
(
うで
)
を
隠
(
かく
)
す。
070
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
『なんだ
其
(
そ
)
の
鉢巻
(
はちまき
)
は。
071
他人
(
ひと
)
の
家
(
うち
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るのに、
072
あまり
無作法
(
ぶさはふ
)
ぢやないか。
073
親
(
おや
)
の
仇敵
(
かたき
)
にでも
出会
(
であ
)
つたやうな
勢
(
いきほひ
)
だなア』
074
留公
(
とめこう
)
『
親
(
おや
)
の
仇敵
(
かたき
)
どころかい。
075
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の、
076
最
(
もつと
)
も
大切
(
たいせつ
)
な
仇敵
(
かたき
)
をお
前
(
まへ
)
の
家
(
うち
)
に
匿
(
かく
)
まうて
居
(
を
)
るでないか。
077
其奴
(
そいつ
)
を
一
(
ひと
)
つ
ふん
縛
(
じば
)
つて
帰
(
かへ
)
り、
078
友彦
(
ともひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
曳
(
ひ
)
き
据
(
す
)
ゑて、
079
相当
(
さうたう
)
の
処置
(
しよち
)
をつけるのだ。
080
サア
爺
(
ぢい
)
、
081
もう
斯
(
か
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
は
隠
(
かく
)
しても
駄目
(
だめ
)
だ、
082
キリキリと
宣伝使
(
せんでんし
)
を
おつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
して
吾々
(
われわれ
)
に
渡
(
わた
)
すのだよ。
083
ゴテゴテ
吐
(
ぬか
)
すと
村中
(
むらぢう
)
が
貴様
(
きさま
)
の
信用
(
しんよう
)
を
買
(
か
)
はないぞ。
084
ボイコツトを
始
(
はじ
)
めるが、
085
それでもいいか。
086
さうすれば、
087
武志
(
たけし
)
の
宮
(
みや
)
の
宮司
(
みやづかさ
)
は、
088
足袋屋
(
たびや
)
の
看板
(
かんばん
)
足上
(
あしあが
)
り、
089
鼻
(
はな
)
の
下
(
した
)
の
大旱魃
(
だいかんばつ
)
、
090
大恐慌
(
だいきようくわう
)
だ。
091
悪
(
わる
)
いことは
言
(
い
)
はないからさつさと
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れ。
092
老爺
(
おやぢ
)
の
身
(
み
)
に
取
(
と
)
つて
実
(
じつ
)
に
大切
(
たいせつ
)
な
場合
(
ばあひ
)
ぢやぞ。
093
焦頭
(
せうとう
)
爛額
(
らんがく
)
の
急場
(
きふば
)
と
言
(
い
)
ふのは
今
(
いま
)
のことだ。
094
サア
早
(
はや
)
く
神妙
(
しんめう
)
に
宣伝使
(
せんでんし
)
を
吾々
(
われわれ
)
に
渡
(
わた
)
したがよからう。
095
里人
(
さとびと
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
留公
(
とめこう
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
はないぞ。
096
覚悟
(
かくご
)
を
定
(
き
)
めて
返答
(
へんたふ
)
しろ』
097
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
『
何事
(
なにごと
)
かと
思
(
おも
)
へばそんな
事
(
こと
)
かい。
098
ベラボウ
教
(
けう
)
のドモ
彦
(
ひこ
)
だな。
099
矢張
(
やつぱ
)
り
彼奴
(
あいつ
)
は
何時迄
(
いつまで
)
も
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
ゐ
)
るのかい。
100
遠
(
とほ
)
の
昔
(
むかし
)
に
宇都山
(
うづやま
)
の
里
(
さと
)
から
消滅
(
せうめつ
)
した
筈
(
はず
)
だが、
101
オイ
留公
(
とめこう
)
、
102
此方
(
こちら
)
には
用
(
よう
)
が
無
(
な
)
いが
訊
(
たづ
)
ねたい
事
(
こと
)
があれば、
103
宣伝使
(
せんでんし
)
は
奥
(
おく
)
にチヤンと
祭
(
まつ
)
りこみてあるから、
104
友彦
(
ともひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
を
此処
(
ここ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
い。
105
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
が
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し、
106
友彦
(
ともひこ
)
の
身魂
(
みたま
)
を
浄
(
きよ
)
めて
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
真浦
(
まうら
)
様
(
さま
)
のお
伴彦
(
ともひこ
)
として
使
(
つか
)
つてやるから
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
注進
(
ちうしん
)
致
(
いた
)
せ』
107
留公
(
とめこう
)
『
中々
(
なかなか
)
老耄
(
おいぼれ
)
の
癖
(
くせ
)
に
俄
(
にはか
)
に
強
(
つよ
)
くなりやがつたな。
108
オイお
春
(
はる
)
、
109
お
弓
(
ゆみ
)
、
110
樽公
(
たるこう
)
、
111
捨公
(
すてこう
)
、
112
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してゐるのだ。
113
俺
(
おれ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
奥
(
おく
)
へ
踏
(
ふ
)
んごみ、
114
宣伝使
(
せんでんし
)
を
ふん
縛
(
じば
)
つて
帰
(
かへ
)
らうぢやないか。
115
こんな
奴
(
やつ
)
が
此
(
こ
)
の
結構
(
けつこう
)
な
里
(
さと
)
に
来
(
き
)
やがつて、
116
三五教
(
あななひけう
)
とかを
説
(
と
)
きやがるものだから、
117
この
御
(
お
)
天道
(
てんだう
)
様
(
さま
)
の
色
(
いろ
)
を
見
(
み
)
よ。
118
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
悪
(
わる
)
うて
黒
(
くろ
)
い
雲
(
くも
)
が
出
(
で
)
て
居
(
を
)
るぢやないか。
119
御
(
お
)
天道
(
てんだう
)
さまのお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬ
奴
(
やつ
)
が
此
(
こ
)
の
里
(
さと
)
へ
来
(
く
)
ると、
120
何時
(
いつ
)
も
黒
(
くろ
)
い
雲
(
くも
)
が
出
(
で
)
ると
云
(
い
)
ふことだ。
121
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
から
人
(
ひと
)
の
尾
(
を
)
峠
(
たうげ
)
の
頂
(
いただ
)
きに、
122
真黒
(
まつくろ
)
けの
鍋墨
(
なべずみ
)
のやうな
雲
(
くも
)
が
現
(
あら
)
はれたのも、
123
全
(
まつた
)
くお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
が
仕様
(
しやう
)
も
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
を
宿
(
と
)
めて
居
(
を
)
るからだ。
124
バラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
友彦
(
ともひこ
)
さまの
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しだぞ』
125
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
より
真浦
(
まうら
)
の
声
(
こゑ
)
として、
126
涼
(
すず
)
しき
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
127
真浦
『
天教山
(
てんけうざん
)
に
現
(
あら
)
はれし
128
木花姫
(
このはなひめ
)
の
分霊
(
わけみたま
)
129
玉照彦
(
たまてるひこ
)
や
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
130
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
朝夕
(
あさゆふ
)
に
131
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
め
身
(
み
)
を
浄
(
きよ
)
め
132
仕
(
つか
)
へ
給
(
たま
)
へる
丹波
(
あかなみ
)
の
133
国
(
くに
)
の
真秀良場
(
まほらば
)
ただなはる
134
青垣山
(
あをがきやま
)
を
繞
(
めぐ
)
らせる
135
真中
(
まなか
)
に
立
(
た
)
てる
世継王
(
よつわう
)
山
(
ざん
)
136
御稜威
(
みいづ
)
も
高
(
たか
)
く
照山
(
てらやま
)
の
137
袂
(
たもと
)
にひらく
神
(
かみ
)
の
苑
(
その
)
138
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
最聖
(
いときよ
)
き
139
心
(
こころ
)
の
花
(
はな
)
も
咲耶姫
(
さくやひめ
)
140
彦
(
ひこ
)
火々出見
(
ほほでみ
)
の
二柱
(
ふたはしら
)
141
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
や
142
豊国姫
(
とよくにひめ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
143
厳
(
いづ
)
の
御言
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
144
天地
(
てんち
)
にさやる
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
145
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
146
バラモン
教
(
けう
)
に
立籠
(
たてこも
)
る
147
醜
(
しこ
)
の
曲鬼
(
まがおに
)
言向
(
ことむ
)
けて
148
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
清
(
きよ
)
め
澄
(
すま
)
さむと
149
七十五
(
しちじふご
)
声
(
せい
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
150
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
宣
(
の
)
り
出
(
い
)
でて
151
教司
(
をしへつかさ
)
を
招
(
よ
)
び
集
(
つど
)
へ
152
言依別
(
ことよりわけ
)
を
三五
(
あななひ
)
の
153
神
(
かみ
)
の
柱
(
はしら
)
と
つき
立
(
た
)
てて
154
錦
(
にしき
)
の
機
(
はた
)
の
御
(
おん
)
経綸
(
しぐみ
)
155
開
(
ひら
)
かせ
給
(
たま
)
ふ
常磐木
(
ときはぎ
)
の
156
われは
小
(
ちひ
)
さき
者
(
もの
)
なれど
157
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
蒙
(
かうむ
)
りし
158
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
159
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
の
命
(
みこと
)
ぞや
160
高天原
(
たかあまはら
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
161
雲霧
(
くもきり
)
分
(
わ
)
けて
降
(
くだ
)
り
来
(
く
)
る
162
人
(
ひと
)
の
尾
(
を
)
山
(
やま
)
は
高
(
たか
)
くとも
163
宇都山
(
うづやま
)
川
(
がは
)
は
深
(
ふか
)
くとも
164
如何
(
いか
)
で
及
(
およ
)
ばむ
神
(
かみ
)
の
徳
(
とく
)
165
バラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
が
166
舌
(
した
)
の
剣
(
つるぎ
)
に
操
(
あやつ
)
られ
167
神
(
かみ
)
よりうけし
生血
(
いきち
)
をば
168
滝
(
たき
)
の
如
(
ごと
)
くに
流
(
なが
)
し
居
(
を
)
る
169
哀
(
あは
)
れ
果敢
(
はか
)
なき
里人
(
さとびと
)
を
170
諭
(
さと
)
して
誠
(
まこと
)
の
大道
(
おほみち
)
に
171
救
(
すく
)
はむための
鹿島立
(
かしまだち
)
172
武志
(
たけし
)
の
宮
(
みや
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
173
しばし
憩
(
やす
)
らふ
折柄
(
をりから
)
に
174
宮
(
みや
)
の
司
(
つかさ
)
の
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
175
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
吾々
(
われわれ
)
を
176
これの
伏家
(
ふせや
)
に
伴
(
ともな
)
ひて
177
朝夕
(
あさゆふ
)
唱
(
とな
)
ふる
太祝詞
(
ふとのりと
)
178
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みもいやちこに
179
五風
(
ごふう
)
十雨
(
じふう
)
の
順序
(
ついで
)
よく
180
花
(
はな
)
は
梢
(
こずゑ
)
に
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れ
181
梅
(
うめ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
はさわさわに
182
枝
(
えだ
)
もたわわに
重
(
かさ
)
なり
合
(
あ
)
ひ
183
見渡
(
みわた
)
す
限
(
かぎ
)
り
野
(
の
)
も
山
(
やま
)
も
184
色
(
いろ
)
蒼々
(
あをあを
)
と
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
く
185
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
目
(
ま
)
の
当
(
あた
)
り
186
眺
(
なが
)
め
乍
(
なが
)
らに
汝
(
いまし
)
等
(
ら
)
は
187
何
(
なに
)
を
狼狽
(
うろた
)
へ
騒
(
さわ
)
ぐぞよ
188
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
立帰
(
たちかへ
)
り
189
汝
(
なんぢ
)
が
親
(
おや
)
と
頼
(
たの
)
み
居
(
ゐ
)
る
190
バラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
を
191
わが
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
伴
(
つ
)
れ
来
(
きた
)
り
192
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とを
守
(
まも
)
ります
193
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
御心
(
みこころ
)
を
194
うまら
に
委曲
(
つばら
)
に
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し
195
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
里人
(
さとびと
)
悉
(
ことごと
)
が
196
眠
(
ねむ
)
れる
眼
(
まなこ
)
を
醒
(
さ
)
まさなむ
197
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
198
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
199
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
200
我
(
わが
)
宗門
(
しうもん
)
の
神力
(
しんりき
)
は
201
如何
(
いか
)
に
強
(
つよ
)
しと
誇
(
ほこ
)
るとも
202
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
言霊
(
ことたま
)
の
203
幸
(
さちは
)
ひ
助
(
たす
)
くる
三五
(
あななひ
)
の
204
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
205
月
(
つき
)
に
鼈
(
すつぽん
)
雲
(
くも
)
に
泥
(
どろ
)
206
天地
(
てんち
)
の
差別
(
けじめ
)
あることを
207
洩
(
も
)
らさず
落
(
おと
)
さず
細
(
こま
)
やかに
208
教
(
をし
)
へて
呉
(
く
)
れむ
里人
(
さとびと
)
よ
209
神代
(
かみよ
)
ながらの
里人
(
さとびと
)
よ
210
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
211
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
212
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
213
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
214
世
(
よ
)
の
過
(
あやま
)
ちを
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
215
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
省
(
かへり
)
みて
216
天地
(
てんち
)
の
道
(
みち
)
を
誤
(
あやま
)
りし
217
深
(
ふか
)
き
罪
(
つみ
)
をも
差赦
(
さしゆる
)
し
218
高天原
(
たかあまはら
)
の
神国
(
かみぐに
)
の
219
教
(
をしへ
)
の
御子
(
みこ
)
と
何時迄
(
いつまで
)
も
220
心
(
こころ
)
に
安
(
やす
)
きを
与
(
あた
)
ふべし
221
栄
(
さか
)
えの
花
(
はな
)
は
永久
(
とは
)
に
咲
(
さ
)
く
222
高天原
(
たかあまはら
)
の
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
と
223
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
りし
其
(
その
)
上
(
うへ
)
は
224
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
恐
(
おそ
)
るるものは
無
(
な
)
し
225
アヽ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
226
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
227
留公
(
とめこう
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
里人
(
さとびと
)
を
228
安
(
やす
)
きに
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
へかし
229
アヽ
留公
(
とめこう
)
よ
里人
(
さとびと
)
よ
230
友彦
(
ともひこ
)
伴
(
ともな
)
ひ
早来
(
はやきた
)
れ
231
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
の
神司
(
かむづかさ
)
232
襟
(
えり
)
を
正
(
ただ
)
して
待暮
(
まちくら
)
す
233
アヽ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
234
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
235
と
屋外
(
をくぐわい
)
に
響
(
ひび
)
く
竜声
(
りうせい
)
に
留公
(
とめこう
)
始
(
はじ
)
め
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男女
(
なんによ
)
は、
236
四人
『ヤア
大変
(
たいへん
)
だ。
237
頭
(
あたま
)
が
痛
(
いた
)
い、
238
胸
(
むね
)
が
苦
(
くる
)
しい。
239
一先
(
ひとま
)
づ
此
(
この
)
家
(
や
)
を
立去
(
たちさ
)
り、
240
友彦
(
ともひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
注進
(
ちうしん
)
せむ』
241
と
大麦
(
おほむぎ
)
、
242
小麦
(
こむぎ
)
、
243
豌豆
(
えんどまめ
)
、
244
蚕豆畑
(
そらまめばたけ
)
を
踏躙
(
ふみにじ
)
り、
245
周章
(
あわて
)
狼狽
(
ふため
)
き
帰
(
かへ
)
り
往
(
ゆ
)
く。
246
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
『
此
(
こ
)
の
村
(
むら
)
は
質朴
(
しつぼく
)
な
代
(
かは
)
りに
理解力
(
りかいりよく
)
が
無
(
な
)
いので
困
(
こま
)
る。
247
信仰
(
しんかう
)
も
結構
(
けつこう
)
だが
無理解
(
むりかい
)
な
信仰
(
しんかう
)
にああ
堅
(
かた
)
くなつては、
248
何
(
ど
)
うにも
斯
(
か
)
うにも
手
(
て
)
の
付
(
つ
)
け
方
(
かた
)
が
無
(
な
)
い。
249
まるで
鉄
(
てつ
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
めた
城壁
(
じやうへき
)
に
向
(
むか
)
つて、
250
無手
(
むて
)
で
子供
(
こども
)
が
襲撃
(
しふげき
)
するやうなものだ。
251
アヽ
何
(
ど
)
うしたら
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
目
(
め
)
を
醒
(
さま
)
す
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようかなア。
252
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
に
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
の
教理
(
けうり
)
を
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
発揮
(
はつき
)
して
欲
(
ほ
)
しいものだ。
253
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
には
何処
(
どこ
)
かに、
254
一人
(
ひとり
)
や
半分
(
はんぶん
)
位
(
くらゐ
)
天
(
てん
)
から
溢
(
こぼ
)
れて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
り
相
(
さう
)
なものだなア』
255
と、
256
わざと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
聞
(
きこ
)
えよがしに、
257
松鷹彦
『ナアお
竹
(
たけ
)
』
258
と
婆
(
ば
)
アに
向
(
むか
)
つて
話
(
はな
)
しかけたればお
竹
(
たけ
)
はウナヅイて、
259
お竹
『さうですな、
260
随分
(
ずゐぶん
)
いろいろの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
もあり、
261
宣伝使
(
せんでんし
)
も
沢山
(
たくさん
)
ありますが、
262
どれもこれも
言葉
(
ことば
)
の
花
(
はな
)
の
山吹
(
やまぶき
)
ばつかりで、
263
実
(
み
)
の
のつた
例
(
ためし
)
は
無
(
な
)
い。
264
あれだけ
近
(
ちか
)
くにバラモンが
跋扈
(
ばつこ
)
して
居
(
を
)
るのだから、
265
何
(
なん
)
とかして
彼
(
あ
)
の
様
(
やう
)
な
惨酷
(
ざんこく
)
な
教
(
をしへ
)
を
根底
(
こんてい
)
より
転覆
(
てんぷく
)
させ、
266
せめて
此
(
こ
)
の
村
(
むら
)
だけなりと
助
(
たす
)
けて
呉
(
く
)
れる
真人
(
しんじん
)
が
現
(
あら
)
はれ
相
(
さう
)
なものだなア』
267
とお
竹
(
たけ
)
も
亦
(
また
)
爺
(
ぢぢ
)
の
言葉尻
(
ことばじり
)
について、
268
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
聞
(
き
)
けよがしに
言
(
い
)
つてゐる。
269
真浦
(
まうら
)
は
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
くや
否
(
いな
)
や、
270
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
の
戸
(
と
)
を、
271
音
(
おと
)
させじとソツと
開
(
ひら
)
き、
272
スタスタと
宇都山
(
うづやま
)
の
里
(
さと
)
を
目
(
め
)
ざして
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
273
留公
(
とめこう
)
の
離
(
はな
)
れ
座敷
(
ざしき
)
に
陣取
(
ぢんど
)
つて
日夜
(
にちや
)
怪気焔
(
くわいきえん
)
を
吐
(
は
)
き
里人
(
さとびと
)
を
煙
(
けぶり
)
に
捲
(
ま
)
いてゐるバラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
は、
274
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
の
茅屋
(
ばうをく
)
に
遣
(
つか
)
はしたる
使
(
つかひ
)
の
帰
(
かへ
)
り
来
(
く
)
るを、
275
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
首
(
くび
)
を
長
(
なが
)
くして
日当
(
ひあた
)
りのよい
角窓
(
かくまど
)
から
覗
(
のぞ
)
いてゐる。
276
倒
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ、
277
ハーハー、
278
スースーと
息
(
いき
)
を
喘
(
はず
)
ませ
帰
(
かへ
)
り
来
(
く
)
る
留公
(
とめこう
)
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより、
279
友彦
(
ともひこ
)
は、
280
友彦
(
ともひこ
)
『ヤア
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねた。
281
様子
(
やうす
)
は
如何
(
どう
)
だ。
282
早
(
はや
)
く
返答
(
へんたふ
)
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れ』
283
留公
(
とめこう
)
『イヤもう
暗雲
(
あんうん
)
低迷
(
ていめい
)
、
284
前途
(
ぜんと
)
暗黒
(
あんこく
)
、
285
収拾
(
しうしふ
)
すべからざる
形勢
(
けいせい
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
286
この
留公
(
とめこう
)
が
深遠
(
しんゑん
)
微妙
(
びめう
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
依
(
よ
)
つて、
287
漸
(
やうや
)
く
騒乱
(
さうらん
)
鎮静
(
ちんせい
)
の
曙光
(
しよくわう
)
を
認
(
みと
)
めました』
288
友彦
(
ともひこ
)
『アヽさうか、
289
それは
大儀
(
たいぎ
)
であつたのう』
290
お
春
(
はる
)
『モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
291
全
(
まつた
)
くですよ。
292
全
(
まつた
)
くは
全
(
まつた
)
くだが
零敗
(
ゼロはい
)
の
大当違
(
おほあてちが
)
ひ、
293
夜食
(
やしよく
)
に
外
(
はづ
)
れた
梟鳥
(
ふくろどり
)
の
憫
(
あは
)
れ
儚
(
はか
)
なき
列
(
れつ
)
を
乱
(
みだ
)
した
頓狂
(
とんきやう
)
振
(
ぶ
)
り、
294
実
(
じつ
)
に
目
(
め
)
も
当
(
あ
)
てられぬ
惨状
(
さんじやう
)
でしたワ』
295
留公
(
とめこう
)
『コラコラ
女
(
をんな
)
の
差出
(
さしで
)
るところでない。
296
黙
(
だま
)
つて
物言
(
ものい
)
へ。
297
それだから
女
(
をんな
)
に
大事
(
だいじ
)
は
明
(
あ
)
かされぬと
昔
(
むかし
)
の
聖人
(
せいじん
)
が
云
(
い
)
つたのだ』
298
友彦
(
ともひこ
)
『
一体
(
いつたい
)
何方
(
どちら
)
が
本当
(
ほんたう
)
だ。
299
吉
(
きち
)
か
凶
(
きよう
)
か、
300
天
(
てん
)
か
地
(
ち
)
か、
301
月
(
つき
)
か
鼈
(
すつぽん
)
か、
302
雪
(
ゆき
)
か
炭
(
すみ
)
か』
303
お
春
(
はる
)
『
鼈
(
すつぽん
)
に
炭
(
すみ
)
の
様
(
やう
)
なものです。
304
爺
(
ぢい
)
さま、
305
中々
(
なかなか
)
の
剛情者
(
がうじやうもの
)
で
村中
(
むらぢう
)
の
協議
(
けふぎ
)
の
結果
(
けつくわ
)
を
一
(
いち
)
も
二
(
に
)
もなく
退
(
しりぞ
)
け、
306
青瓢箪
(
あをべうたん
)
のやうなヘボ
宣伝使
(
せんでんし
)
の
加勢
(
かせい
)
ばつかりやつて
居
(
ゐ
)
ます。
307
さうして
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
から
何百
(
なんびやく
)
人
(
にん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
308
照
(
て
)
るとか
曇
(
くも
)
るとか
歌
(
うた
)
ひ
居
(
を
)
つた。
309
其
(
そ
)
の
声
(
こゑ
)
に
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
の
結構
(
けつこう
)
な
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
は
忽
(
たちま
)
ち
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
、
310
目
(
め
)
は
暈
(
ま
)
ふ、
311
鼻
(
はな
)
はうづく、
312
口
(
くち
)
は
自然
(
しぜん
)
に
弛
(
ゆる
)
んで
下顎
(
したあご
)
が
乳
(
ちち
)
の
辺
(
あたり
)
まで
垂下
(
すゐか
)
する、
313
胸
(
むね
)
は
早鐘
(
はやがね
)
をつく
消防夫
(
せうばうふ
)
は
駆出
(
かけだ
)
す、
314
纏
(
まとひ
)
はガサガサ チヤンチヤン』
315
友彦
(
ともひこ
)
『オイオイ
貴様
(
きさま
)
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
つてゐるのだ。
316
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
たのだ』
317
留公
(
とめこう
)
『ハイ
一寸
(
ちよつと
)
小火
(
ぼや
)
があつたものですから』
318
お
春
(
はる
)
『
留
(
とめ
)
さま、
319
何
(
なに
)
をボヤボヤして
居
(
を
)
るのだ。
320
火事
(
くわじ
)
つたら
何処
(
どこ
)
にあつたのだい』
321
留公
(
とめこう
)
『エー
貴様
(
きさま
)
の
見
(
み
)
えない、
322
遠
(
とほ
)
い
遠
(
とほ
)
い
神霊界
(
しんれいかい
)
に
無形
(
むけい
)
の
火事
(
くわじ
)
があつたのだよ。
323
霊眼
(
れいがん
)
の
開
(
ひら
)
けないデモ
信者
(
しんじや
)
の
窺知
(
きち
)
し
得
(
う
)
る
限
(
かぎ
)
りでないワイ。
324
女
(
をんな
)
だてらブカブカと
此
(
こ
)
の
場面
(
ばめん
)
に
浮
(
う
)
き
出
(
だ
)
して
水
(
みづ
)
をさすよりも
女
(
をんな
)
らしう
暫
(
しば
)
らく
沈艇
(
ちんてい
)
をしてゐて
呉
(
く
)
れ』
325
友彦
(
ともひこ
)
『アハアお
前
(
まへ
)
たちはフの
字
(
じ
)
だな』
326
お
春
(
はる
)
『フの
字
(
じ
)
ですとも、
327
それはそれは
麩
(
ふ
)
のやうな
腑抜
(
ふぬ
)
け
魂
(
だま
)
ですよ。
328
戦況
(
せんきやう
)
を
詳細
(
しやうさい
)
に
報告
(
はうこく
)
致
(
いた
)
しませうか』
329
留公
(
とめこう
)
『オイ
敗軍
(
はいぐん
)
の
将
(
しやう
)
は
兵
(
へい
)
を
語
(
かた
)
らずだ。
330
弱虫
(
よわむし
)
は
弱虫
(
よわむし
)
らしう
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
らう』
331
斯
(
か
)
く
争
(
いさか
)
ふ
所
(
ところ
)
へ、
332
スタスタと
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
た
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
、
333
鍬
(
くは
)
をかたげ
頬被
(
ほほかぶ
)
りをし
乍
(
なが
)
ら、
334
男
(
をとこ
)
(田吾作)
『
留
(
とめ
)
さん、
335
一寸
(
ちよつと
)
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい。
336
俺
(
おれ
)
ん
所
(
とこ
)
の
大事
(
だいじ
)
な
赤子
(
あかご
)
を
踏
(
ふ
)
み
殺
(
ころ
)
しやがつて、
337
如何
(
どう
)
して
呉
(
く
)
れるのだい』
338
留公
(
とめこう
)
『
貴様
(
きさま
)
の
家
(
いへ
)
に
赤子
(
あかご
)
があるのか。
339
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
んだのだ。
340
嬶
(
かかあ
)
も
無
(
な
)
い
癖
(
くせ
)
に
如何
(
どう
)
して
赤子
(
あかご
)
を
踏
(
ふ
)
まれる
道理
(
だうり
)
があるか』
341
男
(
をとこ
)
(田吾作)
『
有
(
あ
)
らいでか、
342
有
(
あ
)
りやこそ
言
(
い
)
うて
来
(
き
)
たのだ。
343
嘘
(
うそ
)
と
思
(
おも
)
ふなら
俺
(
おれ
)
ん
所
(
とこ
)
の
畑
(
はたけ
)
までやつて
来
(
こ
)
い。
344
さうしたら
一目
(
いちもく
)
瞭然
(
れうぜん
)
貴様
(
きさま
)
も
成程
(
なるほど
)
と
合点
(
がつてん
)
がいくだらう』
345
留公
(
とめこう
)
『
赤子
(
あかご
)
の
三
(
みつ
)
つや
五
(
いつ
)
つ
踏
(
ふ
)
み
殺
(
ころ
)
したつて、
346
なんだい。
347
此
(
こ
)
の
村
(
むら
)
は
今
(
いま
)
や
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
の
最中
(
さいちう
)
だ。
348
ちつと
位
(
くらゐ
)
辛抱
(
しんばう
)
して
作戦
(
さくせん
)
の
用意
(
ようい
)
にかからねばならぬだないか。
349
悠々
(
いういう
)
と
野良
(
のら
)
へ
出
(
で
)
て
仕事
(
しごと
)
をして
居
(
を
)
る
場合
(
ばあひ
)
ぢやない。
350
挙国
(
きよこく
)
一致
(
いつち
)
で
敵
(
てき
)
に
当
(
あた
)
らねばならぬ
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
だぞ』
351
男
(
をとこ
)
(田吾作)
『それでも
貴重
(
きちよう
)
な
赤子
(
あかご
)
を
捨
(
す
)
ててまで
馬鹿
(
ばか
)
らしい、
352
斯
(
こ
)
んな
戦争
(
せんそう
)
が
出来
(
でき
)
るかい。
353
婦人
(
ふじん
)
国有論
(
こくいうろん
)
が
起
(
おこ
)
つて
赤子
(
あかご
)
を
一人
(
ひとり
)
でも
殖
(
ふ
)
やさにやならぬ
時
(
とき
)
に、
354
二十
(
にじふ
)
も
三十
(
さんじふ
)
も
踏
(
ふ
)
み
殺
(
ころ
)
されてたまるものかい』
355
留公
(
とめこう
)
『
貴様
(
きさま
)
鼠
(
ねずみ
)
のやうな
奴
(
やつ
)
だな。
356
沢山
(
たくさん
)
な
赤子
(
あかご
)
を
如何
(
どう
)
して
産
(
う
)
んだのだい。
357
あまり
仕様
(
しやう
)
も
無
(
な
)
い
種子
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
くと、
358
米
(
こめ
)
が
騰貴
(
とうき
)
して
国家
(
こくか
)
的
(
てき
)
破産
(
はさん
)
を
来
(
きた
)
さねばならぬやうになるぞ。
359
産児
(
さんじ
)
制限
(
せいげん
)
の
問題
(
もんだい
)
が
喧
(
やかま
)
しい
時
(
とき
)
だ。
360
俺
(
おれ
)
が
踏
(
ふ
)
み
殺
(
ころ
)
したのも
国家
(
こくか
)
の
為
(
た
)
めだよ』
361
男
(
をとこ
)
(田吾作)
『
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みで、
362
やうやうと
芽
(
め
)
をふき、
363
葉
(
は
)
も
出来
(
でき
)
、
364
花
(
はな
)
も
一寸
(
ちよつと
)
咲
(
さ
)
きかけたとこだ。
365
それを
貴様
(
きさま
)
が
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
に
驚
(
おどろ
)
き
慌
(
あわ
)
てて、
366
広
(
ひろ
)
い
道路
(
みち
)
があるのに
俺
(
おれ
)
ん
所
(
とこ
)
の
芋畑
(
いもばたけ
)
を
通
(
とほ
)
りやがつて、
367
三度芋
(
さんどいも
)
[
※
三度芋はジャガイモの別称。
]
の
赤子
(
あかご
)
をすつかり
踏割
(
ふみわ
)
つて
了
(
しま
)
ひやがつた』
368
留公
(
とめこう
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのだい。
369
俺
(
おれ
)
は
又
(
また
)
人間
(
にんげん
)
の
赤子
(
あかご
)
だと
早合点
(
はやがつてん
)
して、
370
聊
(
いささ
)
か
同情
(
どうじやう
)
の
涙
(
なみだ
)
にくれて
居
(
を
)
つたのだ。
371
貴様
(
きさま
)
の
芋畑
(
いもばたけ
)
を
通
(
とほ
)
つたものは
俺
(
おれ
)
ばかりぢやないぞ、
372
五
(
ご
)
人
(
にん
)
も
居
(
を
)
るのだから、
373
そりや
大方
(
おほかた
)
人違
(
ひとちがひ
)
だらう』
374
男
(
をとこ
)
(田吾作)
『
馬鹿
(
ばか
)
言
(
い
)
ふな、
375
足型
(
あしがた
)
でよく
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
る。
376
六本
(
ろつぽん
)
も
指
(
ゆび
)
のある
奴
(
やつ
)
は、
377
此
(
この
)
村
(
むら
)
には
貴様
(
きさま
)
一人
(
ひとり
)
より
無
(
な
)
いのだ。
378
指
(
ゆび
)
の
型
(
かた
)
が
証拠
(
しようこ
)
だ。
379
モシモシ バラモン
教
(
けう
)
の
先生
(
せんせい
)
、
380
あんなことをしても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
許
(
ゆる
)
されますか。
381
私
(
わたくし
)
は
何時
(
いつ
)
も
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いてゐますが、
382
畔放
(
あはな
)
ちの
罪
(
つみ
)
と
云
(
い
)
ふことは
大変
(
たいへん
)
な
重
(
おも
)
い
罪
(
つみ
)
だ。
383
そんなことを
致
(
いた
)
したものは
直
(
ただち
)
にバラモン
教
(
けう
)
を
破門
(
はもん
)
すると
仰有
(
おつしや
)
いましたなア』
384
友彦
(
ともひこ
)
『それは
何時
(
いつ
)
も
言
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
る
通
(
とほ
)
りだ。
385
オイ
留公
(
とめこう
)
、
386
お
前
(
まへ
)
は
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
破門
(
はもん
)
する。
387
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
明日
(
あす
)
は
又
(
また
)
明日
(
あす
)
のことだ。
388
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
教
(
をしへ
)
が
許
(
ゆる
)
さぬから
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
つたがよからう』
389
留公
(
とめこう
)
『エー
置
(
お
)
きやがれ、
390
今
(
いま
)
まで
先生
(
せんせい
)
々々
(
せんせい
)
と
崇
(
あが
)
めてやれば、
391
好
(
い
)
い
気
(
き
)
になりやがつて、
392
なんだい
芋種子
(
いもだね
)
の
二十
(
にじふ
)
や
三十
(
さんじふ
)
踏
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
つたと
言
(
い
)
つて、
393
それがそれ
程
(
ほど
)
悪
(
わる
)
いのか。
394
芋
(
いも
)
と
人間
(
にんげん
)
と
何方
(
どちら
)
が
貴
(
たつと
)
い、
395
芋
(
いも
)
よりも
安
(
やす
)
く
見
(
み
)
られるのなら、
396
俺
(
おれ
)
も
此方
(
こちら
)
から
破門
(
はもん
)
だ。
397
其
(
そ
)
の
代
(
かは
)
りにタツタ
今
(
いま
)
頭
(
あたま
)
の
痛
(
いた
)
い、
398
胸
(
むね
)
の
苦
(
くるし
)
い
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
つて、
399
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
とか
云
(
い
)
ふ
偉
(
えら
)
い
生神
(
いきがみ
)
様
(
さま
)
がやつて
来
(
く
)
るから、
400
その
時
(
とき
)
に
犬突這
(
いぬつくば
)
ひになつて、
401
ベソをかかぬやうに
用心
(
ようじん
)
せい。
402
これが
俺
(
おれ
)
の
別
(
わか
)
れのお
土産
(
みやげ
)
だ。
403
オイお
春
(
はる
)
、
404
貴様
(
きさま
)
も
好
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
目
(
め
)
を
醒
(
さま
)
せ。
405
俺
(
おれ
)
はこれから
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
御
(
お
)
味方
(
みかた
)
するのだ』
406
と
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
て、
407
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆出
(
かけだ
)
した。
408
(
大正一一・五・一二
旧四・一六
外山豊二
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 武志の宮
(B)
(N)
山河不尽 >>>
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第20巻(未の巻)
> 第1篇 宇都山郷 > 第2章 赤児の誤
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第2章 赤児の誤|第20巻|如意宝珠|霊界物語|/rm2002】
合言葉「みろく」を入力して下さい→