霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 如意(によい)宝珠(ほつしゆ)〔六七四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第20巻 如意宝珠 未の巻 篇:第3篇 三国ケ嶽 よみ(新仮名遣い):みくにがだけ
章:第12章 如意宝珠 よみ(新仮名遣い):にょいほっしゅ 通し章番号:674
口述日:1922(大正11)年05月14日(旧04月18日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年3月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
聖地では、高姫、黒姫、若彦、紫姫ら幹部が集まって、夜もすがら秘密の話にふけっている。高姫は、元々青雲山から持ってこられて埴安彦が桶伏山に隠していた、黄金の玉がバラモン教に奪われたことを明かした。
高姫、黒姫、若彦は、その責任の所在を巡って言い争いになる。その声を聞きつけて、言依別命が部屋に入ってきた。
悠然としている言依別命に対して、高姫は、黄金の玉紛失の事態の責任を問う。しかし言依別命は、すべて神様の仕組がしてあるから大丈夫だと請合う。
そこへ、夜警の鬼丸から、お玉の方と黄金の玉が戻ったと注進があった。言依別命は祝意を表して立ち、宣伝歌を歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-04-18 03:39:38 文字数:5094 OBC :rm2012
愛善世界社版:266頁 八幡書店版:第4輯 247頁 修補版: 校定版:276頁 普及版:121頁 初版: ページ備考:
001心(こころ)の色(いろ)も照山(てらやま)の
002麓(ふもと)に建(た)てる高殿(たかどの)は
003錦(にしき)の宮(みや)の社務所(ながとこ)と
004世(よ)に鳴(な)り渡(わた)る秋(あき)の風(かぜ)
005紅葉(もみぢ)の錦(にしき)散(ち)り敷(し)きて
006寒(さむ)さ身(み)に沁(し)む時(とき)もあれ
007頭(かしら)に霜(しも)を戴(いただ)きし
008三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
009黒姫(くろひめ)、高姫(たかひめ)、青彦(あをひこ)や
010紫姫(むらさきひめ)は終夜(よもすがら)
011眠(ねむ)りもやらずヒソヒソと
012秘密(ひみつ)の話(はなし)に耽(ふけ)り居(を)る。
013高姫(たかひめ)『皆(みな)さま、014高(たか)い声(こゑ)では云(い)はれませぬが、015玉照彦(たまてるひこ)様(さま)、016玉照姫(たまてるひめ)様(さま)御(ご)両人(りやうにん)も大切(たいせつ)だが、017それよりも、018もつともつと肝腎要(かんじんかなめ)の根本(こつぽん)の生粋(きつすゐ)の神政(しんせい)成就(じやうじゆ)のお宝(たから)が紛失(ふんしつ)したのを皆(みな)さま知(し)つて居(ゐ)ますか』
019 青彦(あをひこ)は『エヽツ』と頓狂(とんきやう)な声(こゑ)を出(だ)し、020驚(おどろ)いて仰向(あふむ)きに倒(たふ)れようとしてやつと身(み)を支(ささ)へた。
021高姫(たかひめ)『コレコレ、022青彦(あをひこ)さま……お前(まへ)の名(な)は若彦(わかひこ)ぢやが……つい口癖(くちぐせ)になつて云(い)うたのだから怺(こら)へて下(くだ)されや。023若葉(わかば)の色(いろ)は青(あを)いから若彦(わかひこ)でも青彦(あをひこ)でもよう通(かよ)ひますからな……然(しか)し、024ちつと気(き)を沈(しづ)めて聞(き)いて下(くだ)さい。025外(ほか)の人(ひと)に斯(こ)んな話(はなし)が聞(きこ)えたら高天原(たかあまはら)は大騒動(おほさうどう)ぢや、026何(なん)とか工夫(くふう)せねばなるまい。027こんな事(こと)はまだ誰(たれ)にも言(い)うては無(な)いのぢやが本当(ほんたう)に心配(しんぱい)の事(こと)が出来(でき)て居(ゐ)るのだよ』
028黒姫(くろひめ)『心配(しんぱい)な事(こと)とは何事(なにごと)が起(おこ)りました、029妾(わたし)の力(ちから)に及(およ)ぶことなら生命(いのち)を捨(す)ててでも御用(ごよう)を聞(き)かして貰(もら)ひませう』
030高姫(たかひめ)『実(じつ)はお玉(たま)の方(かた)がバラモン教(けう)の悪神(あくがみ)に攫(さら)はれて仕舞(しま)ひ、031今(いま)に行方(ゆくへ)が分(わか)らぬので言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)にも申上(まをしあ)げ、032心配(しんぱい)をして居(を)るのぢや』
033 是(これ)を聞(き)いて黒姫(くろひめ)、034紫姫(むらさきひめ)、035若彦(わかひこ)は真蒼白(まつさを)な顔(かほ)をし『ヘエ』と言(い)つたきり呆(あき)れて、036互(たがひ)に目(め)と目(め)を見合(みあは)すのみで途方(とはう)に暮(く)れて居(ゐ)る。
037高姫(たかひめ)『お前(まへ)さま、038お玉(たま)の方(かた)が攫(さら)はれたと言(い)つてそれだけ吃驚(ぴつくり)する様(やう)な事(こと)では仕方(しかた)がないぢやないか、039ちつと胴(どう)を据(す)ゑなさい。040「身魂(みたま)が研(みが)けて居(を)らぬと真逆(まさか)の時(とき)にびく付(つ)くぞよ。041身魂(みたま)さへ研(みが)いて置(お)けば如何(どん)な心配(しんぱい)が起(おこ)つても胴(どう)が据(すわ)つて楽(らく)に凌(しの)げるぞよ」とお筆先(ふでさき)に有(あ)りませうがな、042まだまだ吃驚(びつくり)の親玉(おやだま)がモ一(ひと)つありますぞや』
043紫姫(むらさきひめ)『高姫(たかひめ)さま、044吃驚(びつくり)の親玉(おやだま)とは如何(どん)な事(こと)です、045何卒(どうぞ)聞(き)かして下(くだ)さい。046妾(わたし)も力(ちから)一杯(いつぱい)出来(でき)る事(こと)なら勤(つと)めさして頂(いただ)きますから』
047高姫(たかひめ)『親玉(おやだま)と言(い)つたら玉(たま)を盗(と)られたのぢやがなア』
048紫姫(むらさきひめ)『あのお玉(たま)の方(かた)をですか』
049高姫(たかひめ)『お玉(たま)もお玉(たま)ぢやが、050そんな玉(たま)とは玉(たま)で玉(たま)が違(ちが)ふのぢや。051天地(てんち)がデングリ覆(がへ)る様(やう)な大騒動(おほさうどう)ぢや。052皆(みな)さまに言(い)うて上(あ)げ度(た)いけれど、053あまり胴(どう)が据(すわ)つて居(を)らぬので如何(どう)する事(こと)も出来(でき)やしない。054アヽア、055神(かみ)様(さま)の、056もつと確(しつか)りしたお道具(だうぐ)に成(な)る人(ひと)が欲(ほ)しいものだなア』
057黒姫(くろひめ)『玉(たま)とは何(なん)で御座(ござ)います』
058高姫(たかひめ)『金(きん)の玉(たま)ぢや、059それを盗(と)られたのぢや』
060黒姫(くろひめ)『それは言依別(ことよりわけ)様(さま)ですか、061高山彦(たかやまひこ)さまですか、062そんな処(とこ)を……また誰(たれ)が如何(どう)して……穢(むさくる)しい……取(と)つたのでせう』
063高姫(たかひめ)『エー、064合点(がつてん)の悪(わる)い人(ひと)ぢや、065睾丸(きんたま)と違(ちが)ひますよ。066桶伏山(をけふせやま)に埴安彦(はにやすひこの)神(かみ)様(さま)が匿(かく)して置(お)かれた、067青雲山(せいうんざん)から持(も)つて来(こ)られた神政(しんせい)成就(じやうじゆ)の元津(もとつ)御霊(みたま)の黄金(こがね)の玉(たま)、068如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の宝物(ほうもつ)を……皆(みんな)が気(き)をつけぬものだから、069到頭(たうとう)盗(と)られて仕舞(しま)うた。070こりや屹度(きつと)バラモン教(けう)が攫(さら)へて去(い)んだのに違(ちが)ひない、071大変(たいへん)だらうがな』
072黒姫(くろひめ)『大変(たいへん)です、073如何(どう)したら宜(よろ)しからう、074言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)に伺(うかが)ひませうか』
075若彦(わかひこ)『困(こま)つた事(こと)になりましたなア、076そつと伺(うかが)つて来(き)ませうか』
077高姫(たかひめ)『そんな事(こと)は此(この)間(あひだ)から幾度(いくど)も幾度(いくど)も、078妾(わし)がそつと言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)に相談(そうだん)に行(い)つて居(を)るのぢやけれども、079何(な)んとか、080かんとか言(い)つて、081「マア黙(だま)つて居(を)つて下(くだ)さい、082何(なん)とか神(かみ)様(さま)がして下(くだ)さるでせう」なんて、083キヨロリ、084カンと大山(たいざん)が崩(くづ)れて来(き)ても動(うご)かぬと言(い)ふやうな態度(たいど)をして御座(ござ)るものだから、085妾(わし)は、086もう気(き)が揉(も)めて揉(も)めて、087立(た)つても居(ゐ)ても居(を)られぬから、088今日(けふ)はお前(まへ)さま達(たち)に寄(よ)つて貰(もら)つて、089何(なん)とかせねばならぬと思(おも)ひ、090相談(そうだん)をするのぢや』
091黒姫(くろひめ)『これは又(また)、092どえらい失敗(しつぱい)をしたものですな、093夜警(やけい)にも廻(まは)る者(もの)が無(な)かつたのかいな』
094高姫(たかひめ)『その夜警(やけい)ぢやて、095三五教(あななひけう)の信者(しんじや)らしう見(み)せて這入(はい)つて来(き)よつて、096其奴(そいつ)が手引(てびき)して黄金(こがね)の玉(たま)を盗(ぬす)み、097何処(どこ)かへ逃(に)げて行(ゆ)きよつたのぢや。098それだから神(かみ)様(さま)が各自(めんめ)に気(き)をつけて置(お)けと仰有(おつしや)るのぢや。099若(わか)い者(もの)の眠(ねむ)たい盛(さか)りに夜警(やけい)をさして、100寝(ね)つきの悪(わる)い年寄(としより)が、101無理(むり)に寝(ね)ようとして無精(ぶしやう)をかわくものだから、102神(かみ)様(さま)が改心(かいしん)の為(た)めに罰(ばつ)をあてなさつたのぢや。103之(これ)から年寄(としより)は夜(よる)寝(ね)ぬ事(こと)にして下(くだ)さい。104その代(かは)り昼(ひる)は何程(いくら)なりと寝(ね)て、105夜(よさり)は気(き)を付(つ)けて貰(もら)はねば、106之(これ)から先(さき)に如何(どん)な事(こと)が起(おこ)るか分(わか)つたものぢやない。107若(わか)い者(もの)を昼(ひる)遊(あそ)ばし夜(よさり)夜警(やけい)をさすと、108屹度(きつと)碌(ろく)な事(こと)は出来(でき)はしない。109夜分(やぶん)は宵(よひ)から寝(ね)させ、110昼(ひる)働(はたら)けば宜(よ)いのぢやに、111第一(だいいち)幹部(かんぶ)のやり方(かた)が御(ご)神慮(しんりよ)に叶(かな)はぬものだから、112斯(こ)んな心配事(しんぱいごと)が起(おこ)るのぢや。113黒姫(くろひめ)さま、114ちつと気(き)をつけなされや』
115黒姫(くろひめ)『ハイハイ、116気(き)をつけます。117何(なん)と言(い)つても身魂(みたま)の因縁(いんねん)性来(しやうらい)だから仕方(しかた)がありませぬワ。118悪(あく)の御用(ごよう)をさされる身魂(みたま)と善(ぜん)の御用(ごよう)をさされる身魂(みたま)と、119神(かみ)様(さま)が立別(たてわ)けて見(み)せて下(くだ)さるのぢやから、120最前(さいぜん)も高姫(たかひめ)さまが「神(かみ)さまの罰(ばち)が当(あた)つた」と仰有(おつしや)つたが、121そりやチツトお考(かんが)へ違(ちが)ひぢやありませぬか。122神(かみ)様(さま)自(みづか)らがお仕組(しぐみ)遊(あそ)ばす肝腎(かんじん)の宝(たから)を敵(てき)に盗(と)られて迄(まで)、123妾(わたし)達(たち)に罰(ばち)を当(あ)てるなんて…可怪(をか)しいぢやありませぬか。124妾(わたし)等(ら)が盗(と)られたのぢやない、125畢竟(つまり)神(かみ)様(さま)が神業(かむわざ)の宝(たから)を盗(と)られなさつたのぢや、126謂(い)はば神(かみ)様(さま)に罰(ばち)が当(あた)つたのぢや。127さうぢやから素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)様(さま)は善(よ)い所(とこ)もあるけど、128変性(へんじやう)女子(によし)だから間(あひさ)に大縮尻(おほしくじり)をなさるのぢや。129緯(よこ)は梭(さとく)が落(お)ちたり糸(いと)が切(き)れると言(い)ふのは、130ここの事(こと)でせう。131経(たて)は一条(ひとすぢ)を立(た)て通(とほ)してさへ居(を)れば斯(こ)んな事(こと)は無(な)いのだけれどなア。132アーア然(しか)し時世(ときよ)時節(じせつ)には神(かみ)様(さま)も叶(かな)はぬのだから、133妾(わたし)等(ら)は一旦(いつたん)改心(かいしん)した以上(いじやう)は、134時(とき)の天下(てんか)に従(したが)ふより外(ほか)に道(みち)は有(あ)りませぬ、135大将(たいしやう)がしつかりしてくれぬと下(した)の者(もの)迄(まで)が難儀(なんぎ)をする。136一匹(いつぴき)の馬(うま)が狂(くる)へば千匹(せんびき)の馬(うま)が狂(くる)ふとやら言(い)うて、137良(よ)い大将(たいしやう)の神(かみ)様(さま)が欲(ほ)しいものだ。138如何(どう)しても変性(へんじやう)女子(によし)の身魂(みたま)が我(が)を張(は)つた時(とき)は斯(こ)んな懲戒(みせしめ)が出(で)て来(く)るのぢや。139神(かみ)さんだつて矢張(やつぱり)失敗(しつぱい)はあるのだからなア』
140若彦(わかひこ)『これ、141黒姫(くろひめ)さま、142そりやちつと量見(りやうけん)が違(ちが)ひはせぬか、143言(い)へばお前(まへ)さま達(たち)の取締(とりしまり)が悪(わる)いから斯(こ)んな事(こと)になつたのぢや。144自分(じぶん)の責任(せきにん)を棚(たな)へ上(あ)げて二(ふた)つ目(め)には瑞(みづ)の御霊(みたま)さんへ責任(せきにん)を持(も)つて行(ゆ)くのぢやな、145何程(なにほど)千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)うて下(くだ)さる神(かみ)さまぢやと言(い)うても……そいつア余(あんま)りぢや、146お前(まへ)さまの論法(ろんぱふ)は脱線(だつせん)だらけぢやないか』
147黒姫(くろひめ)『ちつとは脱線(だつせん)もしようかい、148天変(てんぺん)地異(ちい)の大騒動(おほさうどう)が起(おこ)つとるのだから……一(ひと)つや二(ふた)つ汽車(きしや)電車(でんしや)の脱線(だつせん)はありさうなものぢや』
149高姫(たかひめ)『何時(いつ)まで斯(こ)んな事(こと)を言(い)うて居(を)つた所(とこ)で、150黄金(こがね)の玉(たま)は帰(かへ)つて来(く)る気遣(きづか)ひも無(な)し、151お玉(たま)の方(かた)が戻(もど)つて御座(ござ)る筈(はず)もない。152ここは一(ひと)つ我々(われわれ)が千騎(せんき)一騎(いつき)の活動(くわつどう)をして、153生命(いのち)を的(まと)に黄金(こがね)の玉(たま)を取返(とりかへ)し、154お玉(たま)の方(かた)を探(さが)して帰(かへ)つて来(こ)ねば、155第一(だいいち)我々(われわれ)初(はじ)め貴女(あなた)等(がた)の責任(せきにん)が済(す)みますまい』
156 此(この)時(とき)ガラガラと表(おもて)の戸(と)を開(あ)けて這入(はい)つて来(き)た二人(ふたり)の男(をとこ)、157若彦(わかひこ)は目早(めばや)く見(み)て、
158若彦(わかひこ)『ヤア、159お前(まへ)はテルヂーにコロンボぢやないか、160しつかり夜警(やけい)をして居(ゐ)るかな』
161テルヂー『夜警(やけい)も神妙(しんめう)にやつて居(ゐ)ますが、162黄金(こがね)の玉(たま)を、163前(まへ)に来(き)て居(を)つた徳(とく)の野郎(やらう)奴(め)、164バラモン教(けう)の蜈蚣姫(むかでひめ)の間者(まはしもの)と共謀(ぐる)になりやがつて、165ソツと玉(たま)を盗(ぬす)んで行(ゆ)きやがつてからと言(い)ふものは、166何(なん)の為(た)めに夜警(やけい)をするのやら有名(いうめい)無実(むじつ)、167馬鹿(ばか)らしうて夜警(やけい)もやけ気味(ぎみ)になつて来(き)ます哩(わい)』
168高姫(たかひめ)『なに、169あの徳(とく)奴(め)が此(この)間(あひだ)から姿(すがた)を見(み)せぬと思(おも)へば、170彼奴(あいつ)が手引(てびき)をして居(を)つたのか。171何(なん)と悪(わる)い奴(やつ)ぢやな、172それで人(ひと)に心(こころ)を許(ゆる)すでないぞよと神(かみ)様(さま)が仰有(おつしや)るのだ、173皆(みな)さまよう聞(き)いて下(くだ)さいや、174うまい事(こと)言(い)うて来(き)ても神(かみ)に伺(うかが)はねば相手(あひて)になつては往(い)かぬとのお筆先(ふでさき)を余(あんま)り軽(かる)く見(み)て居(を)つたから、175斯(こ)んな事(こと)になつて仕舞(しま)ふのぢや』
176黒姫(くろひめ)『モシ高姫(たかひめ)様(さま)、177貴方(あなた)は何時(いつ)も徳(とく)さんは偉(えら)い、178誠(まこと)の人(ひと)ぢや、179あんな人(ひと)ばつかり信者(しんじや)になつて居(を)つたら、180三五教(あななひけう)は一遍(いつぺん)に世界(せかい)の掌(てのひら)を翻(かへ)す事(こと)が出来(でき)ると云(い)うて褒(ほ)めそやし、181お前(まへ)も徳(とく)さまを見習(みなら)うて手本(てほん)にしなさいと仰有(おつしや)いましたな。182貴方(あなた)の仰有(おつしや)る事(こと)を聞(き)いて手本(てほん)にでもして居(を)つたものなら、183今頃(いまごろ)は如何(どん)な騒動(そうだう)がオツ始(ぱじ)まつて居(ゐ)るやら分(わか)りやしませぬぞえ。184鼈(すつぽん)に尻(けつ)の穴(あな)を吸(す)はれた様(やう)な惨目(みじめ)な目(め)に成(な)つて仕舞(しま)ふのだ』
185高姫(たかひめ)『黒姫(くろひめ)さま、186お前(まへ)は何(なに)を言(い)ふのぢやぞえ、187誰(たれ)がそんな事(こと)を言(い)うたのぢや。188一寸(ちよつと)一遍(いつぺん)手洗(てうづ)でも使(つか)うて来(き)なさい』
189 言依別(ことよりわけの)命(みこと)は何(なん)となく心(こころ)いそいそして寝(ねむ)られぬままに、190月(つき)の光(ひかり)を浴(あ)び、191杖(ステツキ)をついてブラブラと此(この)高殿(たかどの)の前(まへ)にやつて来(き)た。192屋内(をくない)の争(いさか)ひ声(ごゑ)に耳(みみ)をとめ、193自(みづか)ら雨戸(あまど)を引(ひ)き開(あ)けて進(すす)み入(い)り、
194言依別(ことよりわけ)『ヤア皆(みな)さま、195遅(おそ)う迄(まで)エライ勉強(べんきやう)ですな、196何(なん)ぞ結構(けつこう)なお話(はなし)でもありますかな』
197高姫(たかひめ)『貴方(あなた)は高天原(たかあまはら)の大将(たいしやう)ぢやありませぬか、198能(よ)うそんな気楽(きらく)な事(こと)を言(い)うて居(を)られますな、199肝腎要(かんじんかなめ)の根本(こつぽん)のお宝(たから)を紛失(ふんしつ)し、200お玉(たま)の方(かた)の肉(にく)の宮(みや)は行方(ゆくへ)不明(ふめい)となつて、201妾(わたし)達(たち)が夜(よ)も碌(ろく)によう寝(ね)ず、202此(この)通(とほ)り目(め)を赤(あか)うして心配(しんぱい)をして居(ゐ)ますのに、203貴方(あなた)は何(なん)ともありませぬか。204貴方(あなた)が余(あんま)り平気(へいき)な顔(かほ)して御座(ござ)るものですから、205幹部(かんぶ)の連中(れんちう)さまが誰(たれ)も彼(かれ)も、206いや惟神(かむながら)とか、207御(ご)都合(つがふ)だとか言(い)つて、208尽(つく)すべき事(こと)も尽(つく)さず、209懐中(ふところ)に手(て)を束(つか)ね、210握(にぎ)り麻羅(まら)でポカンとみて居(を)るのぢや、211ちつと確(しつか)りして下(くだ)さい』
212言依別(ことよりわけ)『ハヽヽヽヽ、213エライ御(ご)心配(しんぱい)を掛(か)けて済(す)みませぬな、214神(かみ)様(さま)は抜目(ぬけめ)が有(あ)りませぬから、215さう心配(しんぱい)はなさいますな』
216高姫(たかひめ)『抜目(ぬけめ)の無(な)い神(かみ)様(さま)なら、217なんで其(そ)んな大切(たいせつ)な玉(たま)を盗(と)られなさつたのぢや。218神(かみ)さまだつて此方(こちら)から気(き)をつけて上(あ)げなければ如何(どう)なるものか、219こんな不調法(ぶてうはふ)ばかりなさる、220筆先(ふでさき)にも「何卒(どうぞ)誠(まこと)の者(もの)は神(かみ)に気(き)をつけて下(くだ)されよ」と現(あら)はれて居(を)るぢやないか、221能(よ)うマア、222ほんにほんにそんな陽気(やうき)浮気(うはき)で如何(どう)して此(この)高天原(たかあまはら)の城(しろ)が保(たも)てますか、223大勢(おほぜい)の者(もの)の統一(とういつ)が出来(でき)ますかい』
224言依別(ことよりわけ)『黄金(こがね)の玉(たま)も、225お玉(たま)の方(かた)も、226何(いづ)れ明日(あす)の朝(あさ)か昼頃(ひるごろ)には此処(ここ)へ帰(かへ)つて見(み)えますよ。227神(かみ)さまがちやんと仕組(しぐ)んで居(を)られるから……貴方(あなた)等(がた)が何程(なにほど)鯱(しやち)になつても駄目(だめ)ですよ』
228 此(この)時(とき)門(もん)の戸(と)を慌(あわただ)しく叩(たた)き、
229鬼丸(又は谷丸)『モシモシ、230言依別(ことよりわけの)神(かみ)様(さま)はお見(み)えになつて居(を)りませぬか』
231黒姫(くろひめ)『誰(たれ)だいなア、232無作法(ぶさはふ)な……戸(と)を割(わ)れる程(ほど)ポンポン叩(たた)いて……ヤアお前(まへ)は谷丸(たにまる)ぢやな、233身体(しんたい)維(こ)れ谷丸(たにまる)処(ところ)ぢや、234早(はや)う彼方(あつち)へ行(い)つて夜警(やけい)をして来(き)なさい』
235鬼丸(おにまる)『エー、236滅相(めつさう)な夜警(やけい)どころですかい、237大変(たいへん)な事(こと)が起(おこ)りました。238何卒(どうぞ)早(はや)う言依別(ことよりわけの)神(かみ)様(さま)に帰(かへ)つて貰(もら)ひ度(た)いのです。239実(じつ)の処(ところ)は此(この)間(あひだ)盗(ぬす)まれた黄金(こがね)の玉(たま)とお玉(たま)の方(かた)が今(いま)表門(おもてもん)まで無事(ぶじ)に帰(かへ)られました』
240言依別(ことよりわけ)『宗彦(むねひこ)も一緒(いつしよ)に帰(かへ)つたかな』
241鬼丸(おにまる)『ハイ、242宗彦(むねひこ)さまも、243その外(ほか)三人(みたり)のお伴(とも)もついてお帰(かへ)りになりました』
244 言依別(ことよりわけの)命(みこと)は莞爾(にこにこ)し乍(なが)ら鬼丸(おにまる)を伴(ともな)ひ表門(おもてもん)へ進(すす)み行(ゆ)く。
245高姫(たかひめ)『サア黒姫(くろひめ)さま、246青(あを)さま、247若(わか)さま、248紫(むらさき)さま、249如何(どう)しよう如何(どう)しよう、250大変(たいへん)ぢや大変(たいへん)ぢや』
251 若彦(わかひこ)、252紫姫(むらさきひめ)、253黒姫(くろひめ)、254高姫(たかひめ)は嬉(うれ)しさの余(あま)り室内(しつない)を狼狽(うろた)へ廻(まは)つて居(ゐ)る。255お玉(たま)の方(かた)に抱(だ)かれて黄金(こがね)の玉(たま)の御(ご)神体(しんたい)は一(ひ)とまづ錦(にしき)の宮(みや)の殿内(でんない)深(ふか)く納(をさ)まり給(たま)うた。256あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
257 言依別(ことよりわけの)命(みこと)は祝意(しゆくい)を表(へう)し立(た)つて宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ始(はじ)めたり。
258言依別命『朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
259月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
260仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
261誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ
262三五教(あななひけう)の神宝(かんだから)
263黄金(こがね)の玉(たま)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
264バラモン教(けう)の曲神(まがかみ)に
265そつと盗(ぬす)まれ言依(ことより)の
266別(わけ)の命(みこと)は驚(おどろ)いて
267錦(にしき)の宮(みや)に馳(は)せ参(さん)じ
268玉照彦(たまてるひこ)や玉照(たまてる)の
269姫(ひめ)の命(みこと)に伺(うかが)へば
270宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)は三国岳(みくにだけ)
271バラモン教(けう)の副棟梁(ふくとうりやう)
272心(こころ)の鬼(おに)ケ城(じやう)山(ざん)に
273砦(とりで)構(かま)へし鬼熊別(おにくまわけ)の
274醜(しこ)の魔神(まがみ)の宿(やど)の妻(つま)
275蜈蚣(むかで)の姫(ひめ)の鬼婆(おにば)さま
276岩窟(いはや)の中(なか)に立(た)て籠(こも)り
277貴(うづ)の宝(たから)を奪(うば)ひ取(と)り
278お玉(たま)の方(かた)と諸共(もろとも)に
279占奪(せんだつ)せりと聞(き)きしより
280我(われ)は神勅(しんちよく)畏(かしこ)みて
281人(ひと)に知(し)らさず三五(あななひ)の
282道(みち)の司(つかさ)の新参者(しんざんもの)
283天(あめ)の真浦(まうら)が弟(おとと)なる
284心(こころ)の清(きよ)き宗彦(むねひこ)に
285旨(むね)を含(ふく)めて霧(きり)の海(うみ)
286渡(わた)りて三国(みくに)の山奥(やまおく)に
287遣(つか)はしければ宗彦(むねひこ)は
288使命(しめい)を果(はた)し漸(やうや)うに
289お玉(たま)の方(かた)と諸共(もろとも)に
290いそいそ此処(ここ)に帰(かへ)りけり
291玉照彦(たまてるひこ)や玉照姫(たまてるひめ)の
292神(かみ)の命(みこと)の神司(かんづかさ)
293お玉(たま)の方(かた)の三(み)つ霊(みたま)
294黄金(こがね)の玉(たま)の五(い)つ霊(みたま)
295三(み)つと五(い)つとの睦(むつ)み合(あ)ひ
296此処(ここ)に愈(いよいよ)三五(あななひ)の
297神(かみ)の教(をしへ)は輝(て)り渡(わた)る
298三五(さんご)の月照彦(つきてるひこ)の神(かみ)
299思(おも)ひも此処(ここ)に足真彦(だるまひこ)
300教(をしへ)は四方(よも)に弘子彦(ひろやすひこ)の
301神(かみ)の命(みこと)と現(あら)はれて
302悪(あ)しき病(やまひ)も少名彦(すくなひこ)
303愈(いよいよ)神(かみ)の御光(みひかり)も
304高照姫(たかてるひめ)や純世姫(すみよひめ)
305真澄(ますみ)の姫(ひめ)の鑑(かがみ)なす
306尊(たふと)き教(をしへ)も竜世姫(たつよひめ)
307御代(みよ)も豊(ゆたか)に国治立(くにはるたち)の
308神(かみ)の命(みこと)や豊国姫(とよくにひめ)の
309瑞(みづ)の御魂(みたま)のお喜悦(よろこぴ)
310埴安彦(はにやすひこ)や埴安姫(はにやすひめ)の
311清(きよ)き御魂(みたま)も勇(いさ)み立(た)ち
312天津(あまつ)神(かみ)等(たち)八百万(やほよろづ)
313国津(くにつ)神(かみ)等(たち)八百万(やほよろづ)
314是(これ)の聖地(せいち)に神集(かむつど)ひ
315今日(けふ)の生日(いくひ)の喜悦(よろこび)を
316祝(ことほ)ぎ給(たま)ふ嬉(うれ)しさよ
317あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
318御霊(みたま)幸倍(さちはひ)坐(ま)しまして
319世(よ)は久方(ひさかた)の空(そら)高(たか)く
320天津(あまつ)日嗣(ひつぎ)の永久(とこしへ)に
321動(うご)かぬ御代(みよ)と守(まも)りませ
322円山姫(まるやまひめ)の守(まも)られし
323黄金(こがね)の玉(たま)は恙(つつが)なく
324再(ふたた)び此処(ここ)に復(かへ)りまし
325五六七(みろく)神政(しんせい)の神業(かむわざ)の
326光(ひかり)と現(あら)はれ給(たま)ふらむ
327勇(いさ)めよ勇(いさ)め諸人(もろびと)よ
328人(ひと)が勇(いさ)めば神(かみ)勇(いさ)む
329吾(われ)は言依別(ことよりわけの)命(みこと)
330コーカス山(ざん)や斎苑(いそ)館(やかた)
331珍(うづ)の都(みやこ)のヱルサレム
332エデンの園(その)に現(あ)れませる
333御神(みかみ)も共(とも)に喜(よろこ)びて
334堅磐(かきは)常磐(ときは)に何時(いつ)までも
335栄(さか)えませよと祈(いの)りつつ
336日(ひ)の出神(でのかみ)や日(ひ)の出別(でわけ)
337木(こ)の花姫(はなひめ)の御(お)活動(はたらき)
338天地(てんち)の神(かみ)も三五(あななひ)の
339教(をしへ)の司(つかさ)も信徒(まめひと)も
340歓(えら)ぎ喜(よろこ)び舞(ま)ひ遊(あそ)ぶ
341鶴(つる)の齢(よはひ)の末長(すゑなが)く
342亀(かめ)万歳(ばんざい)の永久(とこしへ)に
343守(まも)らせ給(たま)ふ此(この)教(をしへ)
344あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
345御霊(みたま)幸倍(さちはひ)坐(ま)しませよ』
346(大正一一・五・一四 旧四・一八 北村隆光録)
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