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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第43巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 狂風怪猿
第1章 烈風
第2章 懐谷
第3章 失明
第4章 玉眼開
第5章 感謝歌
第2篇 月下の古祠
第6章 祠前
第7章 森議
第8章 噴飯
第9章 輸入品
第3篇 河鹿の霊嵐
第10章 夜の昼
第11章 帰馬
第12章 双遇
第4篇 愛縁義情
第13章 軍談
第14章 忍び涙
第15章 温愛
第5篇 清松懐春
第16章 鰌鍋
第17章 反歌
第18章 石室
余白歌
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<<< 総説
(B)
(N)
懐谷 >>>
第一章
烈風
(
れつぷう
)
〔一一五二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻
篇:
第1篇 狂風怪猿
よみ(新仮名遣い):
きょうふうかいえん
章:
第1章 烈風
よみ(新仮名遣い):
れっぷう
通し章番号:
1152
口述日:
1922(大正11)年11月26日(旧10月8日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
音彦は、玉国別と名を変えて、道公、伊太公、純公の三人を引率し、イソの館を出立してインドのハルナの都に旅立った。
一行は河鹿峠の難所で暴風に吹かれたが勇気を鼓して急坂を登って行った。山上のやや平坦なところで一行は話に花を咲かせた。道公と伊太公は、風のひどさにもう少し楽な旅を希望し、玉国別がたしなめている。
二人はそろそろ脱線し、狂歌を歌い始めた。ひとりきり話を終えた一行は、玉国別の号令で坂を下り始めた。
坂を下りながら伊太公は滑稽な歌を歌った。一行が河鹿峠の大曲りの山の懐に来ると、天地も割れるばかりの強風が猛然と吹き起こり、玉国別も一歩も進むことができず、木の根にしがみついて神言を奏上しながら風が渡りゆくことを待つことにした。
三人も玉国別にならって木の根にしがみつき、風が過ぎるのを待っていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-01-03 19:36:10
OBC :
rm4301
愛善世界社版:
7頁
八幡書店版:
第8輯 31頁
修補版:
校定版:
7頁
普及版:
2頁
初版:
ページ備考:
001
天地
(
てんち
)
にさやる
雲霧
(
くもきり
)
を
002
伊吹
(
いぶき
)
払
(
はら
)
ひて
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
003
三五教
(
あななひけう
)
の
神柱
(
かむばしら
)
004
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
005
神言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
み
音彦
(
おとひこ
)
は
006
玉国別
(
たまくにわけ
)
と
名
(
な
)
をかへて
007
道公
(
みちこう
)
伊太公
(
いたこう
)
純公
(
すみこう
)
の
008
三人
(
みたり
)
の
信徒
(
しんと
)
を
引率
(
いんそつ
)
し
009
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
を
立出
(
たちい
)
でて
010
凩
(
こがらし
)
すさぶ
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
011
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
012
登
(
のぼ
)
りつ
下
(
くだ
)
りつ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
013
目指
(
めざ
)
すは
印度
(
いんど
)
の
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
014
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
015
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
016
曲鬼
(
まがおに
)
醜
(
しこ
)
の
曲魂
(
まがたま
)
を
017
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
言向
(
ことむ
)
けて
018
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
の
神国
(
しんこく
)
を
019
此
(
この
)
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
建設
(
けんせつ
)
し
020
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
を
照
(
てら
)
さむと
021
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
んで
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
022
後
(
あと
)
に
眺
(
なが
)
めて
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
023
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
024
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
025
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
026
三人
(
みたり
)
の
従者
(
とも
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
027
はるばる
進
(
すす
)
む
首途
(
かどいで
)
を
028
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
守
(
まも
)
りまし
029
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
030
漏
(
も
)
れなく
落
(
お
)
ちなくすくすくと
031
述
(
の
)
べさせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
032
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
瑞月
(
ずゐげつ
)
が
033
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
みねぎまつる。
034
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
供人
(
ともびと
)
と
共
(
とも
)
に、
035
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
036
照国別
(
てるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
の
後
(
あと
)
より
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
谷間
(
たにま
)
に
転落
(
てんらく
)
して、
037
第一
(
だいいち
)
天国
(
てんごく
)
を
探検
(
たんけん
)
したりといふ、
038
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
に
鞭
(
むちう
)
ち、
039
石車
(
いしぐるま
)
の
危難
(
きなん
)
を
避
(
さ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
040
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひつつ、
041
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
を
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く。
042
折
(
をり
)
から
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
暴風
(
ばうふう
)
はライオンの
数百頭
(
すうひやくとう
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
吼
(
ほ
)
えたけるが
如
(
ごと
)
く、
043
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて、
044
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく
岩石
(
がんせき
)
も
飛
(
と
)
べよ、
045
草木
(
くさき
)
も
根底
(
ねそこ
)
より
抜
(
ぬ
)
け
散
(
ち
)
れよと
言
(
い
)
はむ
許
(
ばか
)
りに
吹
(
ふ
)
きまくる。
046
玉国別
(
たまくにわけ
)
は『
何
(
なに
)
これしきの
烈風
(
れつぷう
)
に
辟易
(
へきえき
)
してなるものか、
047
暴風
(
ばうふう
)
何者
(
なにもの
)
ぞ、
048
雷霆
(
らいてい
)
強雨
(
がうう
)
何
(
なん
)
ぞ
恐
(
おそ
)
れむや』と
勇気
(
ゆうき
)
を
鼓
(
こ
)
し、
049
向
(
むか
)
ふ
風
(
かぜ
)
に
逆
(
さか
)
らひ
乍
(
なが
)
ら、
050
急坂
(
きふはん
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
勇
(
いさ
)
ましさ、
051
壮烈
(
さうれつ
)
は、
052
鬼神
(
きじん
)
も
驚
(
おどろ
)
く
許
(
ばか
)
りに
思
(
おも
)
はれた。
053
漸
(
やうや
)
くにして
山上
(
さんじやう
)
の
稍
(
やや
)
平坦
(
へいたん
)
なる
羊腸
(
やうちやう
)
の
小路
(
こみち
)
に
登
(
のぼ
)
り
着
(
つ
)
いた。
054
道公
(
みちこう
)
『
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
、
055
板
(
いた
)
を
立
(
た
)
てたやうな
胸突坂
(
むねつきざか
)
を
登
(
のぼ
)
る
真最中
(
まつさいちう
)
、
056
弱味
(
よわみ
)
につけ
込
(
こ
)
む
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
057
滅多
(
めつた
)
矢鱈
(
やたら
)
に
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ、
058
吾々
(
われわれ
)
を
中天
(
ちうてん
)
に
巻上
(
まきあ
)
げむとして、
059
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
努力
(
どりよく
)
してゐやがつたぢやありませぬか。
060
一
(
ひと
)
つここらで
風
(
かぜ
)
の
歇
(
や
)
んだのを
幸
(
さいは
)
ひ
休養
(
きうやう
)
をやつたら
如何
(
どう
)
でせう』
061
玉国別
(
たまくにわけ
)
『アハヽヽヽ
今
(
いま
)
からそんな
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
いてたまるものか、
062
モウちつと
度胸
(
どきよう
)
を
据
(
す
)
ゑなくちやなるまい』
063
道公
(
みちこう
)
『
決
(
けつ
)
して
私
(
わたし
)
が
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くのぢやありませぬ。
064
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
065
滅多
(
めつた
)
矢鱈
(
やたら
)
に
吹
(
ふ
)
きやがるものだから、
066
私
(
わたし
)
も
一寸
(
ちよつと
)
吹
(
ふ
)
いてみたのです。
067
かうして
木々
(
きぎ
)
の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
を
無残
(
むざん
)
にも
吹散
(
ふきち
)
らし、
068
まるで
雑巾
(
ざふきん
)
以
(
もつ
)
ておさん
奴
(
め
)
が
縁
(
えん
)
の
埃
(
ほこり
)
を
拭
(
ふ
)
いたやうに
綺麗
(
きれい
)
サツパリふきやがつたぢやありませぬか』
069
伊太公
(
いたこう
)
『オイ
道公
(
みちこう
)
、
070
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くより
法螺
(
ほら
)
なと
吹
(
ふ
)
いたら
如何
(
どう
)
だ』
071
道公
(
みちこう
)
『エヽ
伊太公
(
いたこう
)
、
072
貴様
(
きさま
)
の
鼻
(
はな
)
はまるで
鍛冶屋
(
かぢや
)
の
鞴
(
ふいご
)
のやうにペコペコさして、
073
フースーフースーと
泡
(
あわ
)
まで
吹
(
ふ
)
いてるぢやないか。
074
気息
(
きそく
)
奄々
(
えんえん
)
、
075
呼吸
(
こきふ
)
促迫
(
そくはく
)
、
076
体熱
(
たいねつ
)
四十三
(
しじふさん
)
度
(
ど
)
といふ
弱
(
よわ
)
り
方
(
かた
)
ぢやないか。
077
他
(
ひと
)
の
事
(
こと
)
をゴテゴテ
言
(
い
)
ふ
所
(
どころ
)
かい、
078
自分
(
じぶん
)
の
蜂
(
はち
)
から
払
(
はら
)
うてかかれ』
079
伊太公
(
いたこう
)
『これはこれは
イタ
み
入
(
い
)
つたる
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
、
080
伊太公
(
いたこう
)
もサツパリ
頓服
(
とんぷく
)
致
(
いた
)
しました』
081
道公
(
みちこう
)
『
頓服
(
とんぷく
)
とは
何
(
なん
)
だ。
082
インフルエンザの
風邪
(
かぜ
)
を
引
(
ひ
)
いて、
083
キニーネでも
飲
(
の
)
んだやうなことを
吐
(
ほざ
)
くぢやないか』
084
玉国別
(
たまくにわけ
)
『コリヤコリヤ
両人
(
りやうにん
)
、
085
幸先
(
さいさき
)
の
悪
(
わる
)
い、
086
悪魔
(
あくま
)
征討
(
せいたう
)
の
道行
(
みちゆき
)
の
始
(
はじ
)
めに
当
(
あた
)
つて、
087
争論
(
そうろん
)
をやるといふことがあるか、
088
チと
沈黙
(
ちんもく
)
致
(
いた
)
さぬか』
089
道公
(
みちこう
)
『ハイ、
090
レコード
破
(
やぶ
)
りの
烈風
(
れつぷう
)
でさへ
沈黙
(
ちんもく
)
したのですから、
091
時刻
(
じこく
)
が
廻
(
まは
)
つて
来
(
く
)
れば、
092
自然
(
しぜん
)
に
発声器
(
はつせいき
)
の
停電
(
ていでん
)
を
来
(
きた
)
すでせう。
093
出
(
で
)
かけた
声
(
こゑ
)
だから、
094
出
(
だ
)
す
丈
(
だけ
)
出
(
だ
)
さねば
中途
(
ちうと
)
に
止
(
と
)
めると、
095
又
(
また
)
もや
痳病
(
りんびやう
)
をわづらひますからなア、
096
アハヽヽヽ』
097
玉国別
(
たまくにわけ
)
『あの
純公
(
すみこう
)
を
見
(
み
)
よ。
098
貴様
(
きさま
)
のやうに
鳴子
(
なるこ
)
か
鈴
(
すず
)
のやうにガラガラ
言
(
い
)
はず、
099
沈黙
(
ちんもく
)
を
始終
(
しじう
)
守
(
まも
)
つてゐるぢやないか。
100
男
(
をとこ
)
といふ
者
(
もの
)
はさうベラベラと
下
(
くだ
)
らぬことを
喋
(
しやべ
)
つたり、
101
白
(
しろ
)
い
歯
(
は
)
をさうやすやすと
人
(
ひと
)
に
見
(
み
)
せるものぢやない。
102
人間
(
にんげん
)
は
黙
(
だま
)
つてゐる
位
(
くらゐ
)
床
(
ゆか
)
しく
見
(
み
)
えるものはないぞ……
口
(
くち
)
あけて
腹綿
(
はらわた
)
見
(
み
)
せる
蛙
(
かはづ
)
哉
(
かな
)
……といふことを
忘
(
わす
)
れぬやうにしたがよからうぞ』
103
道公
(
みちこう
)
『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
104
純公
(
すみこう
)
は
貴方
(
あなた
)
のお
目
(
め
)
からそれ
程
(
ほど
)
床
(
ゆか
)
しく
見
(
み
)
えますかな。
105
さうすると
此奴
(
こいつ
)
も
矢張
(
やつぱり
)
、
106
スミにもおけない
代物
(
しろもの
)
ですなア。
107
アハヽヽヽ』
108
玉国別
(
たまくにわけ
)
『いらぬことを
言
(
い
)
ふものでない。
109
沈黙
(
ちんもく
)
が
男
(
をとこ
)
の
値打
(
ねうち
)
だ。
110
まるで
貴様
(
きさま
)
と
旅行
(
りよかう
)
をして
居
(
ゐ
)
ると
雲雀
(
ひばり
)
や
雀
(
すずめ
)
の
飼主
(
かひぬし
)
みたやうだ。
111
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だなア』
112
伊太公
(
いたこう
)
『
時
(
とき
)
に
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
、
113
随分
(
ずゐぶん
)
此
(
この
)
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
はキツイですが、
114
どうぞ
無難
(
ぶなん
)
に
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
の
鋭鋒
(
えいほう
)
を
避
(
さ
)
けて
通過
(
つうくわ
)
したいものですなア。
115
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
したと
思
(
おも
)
へば、
116
秋
(
あき
)
の
風
(
かぜ
)
だから
再
(
ふたた
)
び
低気圧
(
ていきあつ
)
が
襲来
(
しふらい
)
して、
117
一万
(
いちまん
)
ミリメートルの
速力
(
そくりよく
)
でやつて
来
(
こ
)
られちや、
118
何程
(
なにほど
)
押
(
お
)
しけつの
強
(
つよ
)
い
貴方
(
あなた
)
でも
堪
(
たま
)
りつこはありませぬぜ』
119
玉国別
(
たまくにわけ
)
『オイ、
120
それ
程
(
ほど
)
発声器
(
はつせいき
)
を
虐使
(
ぎやくし
)
すると、
121
レコードの
寿命
(
じゆみやう
)
が
短縮
(
たんしゆく
)
するぞ。
122
少
(
すこ
)
しは
大切
(
たいせつ
)
に
使用
(
しよう
)
せないか』
123
伊太公
(
いたこう
)
『
何分
(
なにぶん
)
秋
(
あき
)
漸
(
やうや
)
く
深
(
ふか
)
く、
124
木々
(
きぎ
)
の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
がバラバラバラと
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく
落
(
お
)
ち
行
(
ゆ
)
く
時節
(
じせつ
)
ですから
何
(
なん
)
とはなしに
寂寥
(
せきれう
)
の
気分
(
きぶん
)
に
打
(
う
)
たれて
沈黙
(
ちんもく
)
してゐる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬワイ。
125
チツとは
喋
(
しやべ
)
らして
貰
(
もら
)
はぬと、
126
心細
(
こころぼそ
)
いぢやありませぬか』
127
玉国別
(
たまくにわけ
)
『そんな
馬鹿口
(
ばかぐち
)
を
喋
(
しやべ
)
る
暇
(
ひま
)
があつたら、
128
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つたら
如何
(
どう
)
だ。
129
歌
(
うた
)
は
天地
(
てんち
)
神明
(
しんめい
)
の
心
(
こころ
)
を
感動
(
かんどう
)
させ、
130
山河
(
さんか
)
草木
(
さうもく
)
を
悦服
(
えつぷく
)
させる
神力
(
しんりき
)
のあるものだ』
131
伊太公
(
いたこう
)
『
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つても
宜
(
よろ
)
しいか。
132
そんならこれから
歌
(
うた
)
ひませう。
133
オイ
道公
(
みちこう
)
、
134
純公
(
すみこう
)
、
135
チツとは
粗製
(
そせい
)
濫造品
(
らんざうひん
)
だが、
136
後学
(
こうがく
)
の
為
(
ため
)
に
耳
(
みみ
)
をすまして
聞
(
き
)
くがよからう。
137
伊太公
(
いたこう
)
の
当意
(
たうい
)
即妙
(
そくめう
)
の
大
(
だい
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を……エヘン……』
138
道公
(
みちこう
)
『
早
(
はや
)
く
歌
(
うた
)
はぬかい。
139
前置
(
まへおき
)
ばかりダラダラとひつぱりよつて、
140
辛気
(
しんき
)
くさいわい』
141
伊太公
(
いたこう
)
『
足曳
(
あしびき
)
の
山鳥
(
やまどり
)
の
尾
(
を
)
のしだり
尾
(
を
)
の
長々
(
ながなが
)
し
夜
(
よ
)
を
独
(
ひと
)
りかもねむ……といふ
歌
(
うた
)
があるだらう。
142
それだから、
143
足曳
(
あしびき
)
の
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
で
歌
(
うた
)
ふ
歌
(
うた
)
はチツとは
足
(
あし
)
が
長
(
なが
)
いぞ、
144
エツヘン。
145
それ
聞
(
き
)
いた』
146
道公
(
みちこう
)
『
何
(
なに
)
を
聞
(
き
)
くのだ。
147
無言
(
むごん
)
の
歌
(
うた
)
が
聞
(
き
)
けるかい』
148
伊太公
(
いたこう
)
『
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
、
149
言外
(
げんぐわい
)
の
言
(
げん
)
、
150
歌外
(
かぐわい
)
の
歌
(
か
)
、
151
隻手
(
せきしゆ
)
の
声
(
こゑ
)
、
152
といふ
事
(
こと
)
があるだらう。
153
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
く
音
(
おと
)
も、
154
鳥
(
とり
)
の
囀
(
さへづ
)
る
声
(
こゑ
)
も、
155
虫
(
むし
)
の
鳴
(
な
)
く
音
(
ね
)
も、
156
皆
(
みな
)
自然
(
しぜん
)
の
歌
(
うた
)
だぞ。
157
俺
(
おれ
)
がかう
囀
(
さへづ
)
つてをるのもヤツパリ
恋欲歌
(
れんよくか
)
の
一種
(
いつしゆ
)
だ。
158
ウタウタと
云
(
い
)
はずに
俺
(
おれ
)
の
奇妙
(
きめう
)
奇天烈
(
きてれつ
)
な
大
(
だい
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
聞
(
き
)
いたら
貴様
(
きさま
)
のウタがひも
晴
(
は
)
れるだらう……
159
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
160
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
161
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
162
直日
(
なほひ
)
の
眼
(
まなこ
)
で
見渡
(
みわた
)
せば
163
伊太公
(
いたこう
)
さまは
善
(
ぜん
)
の
神
(
かみ
)
164
道公
(
みちこう
)
さまは
悪神
(
あくがみ
)
だ
165
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
166
一寸
(
ちよつと
)
お
偉
(
えら
)
い
方
(
かた
)
ぢやぞえ
167
黒
(
くろ
)
い
顔
(
かほ
)
して
墨
(
すみ
)
のよに
168
燻
(
くすぶ
)
つて
居
(
ゐ
)
るは
純公
(
すみこう
)
か
169
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
170
叶
(
かな
)
はないから
止
(
や
)
めておかう』
171
道公
(
みちこう
)
『コリヤ
伊太
(
いた
)
、
172
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
173
何
(
なん
)
と
下手
(
へた
)
な
歌
(
うた
)
だのう』
174
伊太公
(
いたこう
)
『イタれり
尽
(
つく
)
せりといふ
迷歌
(
めいか
)
だらう。
175
歌
(
うた
)
といふものは
余
(
あま
)
り
上手
(
じやうづ
)
にいふと、
176
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
奴
(
め
)
が
感動
(
かんどう
)
して、
177
又
(
また
)
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ふと
困
(
こま
)
るからなア。
178
そんな
事
(
こと
)
に
抜目
(
ぬけめ
)
のある
伊太公
(
いたこう
)
ぢやないぞ。
179
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
が
呆
(
あき
)
れて
蟄伏
(
ちつぷく
)
するやうに、
180
ワザとに
拙劣
(
へた
)
な
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つて
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
奴
(
め
)
を
遠
(
とほ
)
ざけたのだ。
181
或
(
あ
)
る
人
(
ひと
)
の
狂歌
(
きやうか
)
にも……
182
歌
(
うた
)
よみは
下手
(
へた
)
こそよけれ
天地
(
あめつち
)
の
183
動
(
うご
)
き
出
(
いだ
)
してたまるものかは。
184
……といふ
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
つてゐるか、
185
エーン』
186
と
無暗
(
むやみ
)
矢鱈
(
やたら
)
に
喋
(
しやべ
)
りちらし、
187
うつつになつて
細路
(
ほそみち
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
飛
(
と
)
びまはり、
188
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
して
一間
(
いつけん
)
ばかり
岩道
(
いはみち
)
から
辷
(
すべ
)
り
落
(
お
)
ち、
189
向脛
(
むかふづね
)
をすりむき、
190
伊太公
(
いたこう
)
『イヽイタい』
191
と
目
(
め
)
を
顰
(
しか
)
め、
192
鼻
(
はな
)
にまで
皺
(
しわ
)
をよせ、
193
向脛
(
むかふづね
)
をさすり『エヘヽヽ』と
笑
(
わら
)
ひ
泣
(
な
)
く
其
(
その
)
可笑
(
をか
)
しさ。
194
道公
(
みちこう
)
『そら
見
(
み
)
よ、
195
余
(
あま
)
りアゴタが
過
(
す
)
ぎると
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだ。
196
腰抜歌
(
こしぬけうた
)
計
(
ばか
)
り
詠
(
よ
)
むものだから、
197
とうとう
足曳
(
あしびき
)
の
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
で
足
(
あし
)
を
引
(
ひつ
)
かき、
198
すりむいて、
199
イタイタしくも、
200
伊太公
(
いたこう
)
の
其
(
その
)
ザマ、
201
それだから
伊太公
(
いたこう
)
なんて
言
(
い
)
ふやうな
名
(
な
)
は、
202
つけぬがいゝのだ。
203
のう
純公
(
すみこう
)
、
204
さうぢやないか、
205
伊太公
(
いたこう
)
は
丸
(
まる
)
で
鼬
(
いたち
)
のやうな
奴
(
やつ
)
だ。
206
とうと、
207
最後屁
(
さいごぺ
)
をひつて、
208
伊太張
(
いたば
)
つた、
209
イヤイヤくたばつたぢやないか、
210
ウツフヽヽ』
211
純公
(
すみこう
)
『いた
立
(
た
)
てたやうな
坂道
(
さかみち
)
ふみ
外
(
はづ
)
し
212
伊太
(
いた
)
々々
(
いた
)
しげに
伊太
(
いた
)
さまが
泣
(
な
)
く。
213
すみ
ずみに
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
る
純公
(
すみこう
)
は
214
どこもかしこも
すみ
渡
(
わた
)
りける』
215
道公
(
みちこう
)
『
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
、ふみ
外
(
はづ
)
したる
伊太公
(
いたこう
)
の
216
泣
(
な
)
き
苦
(
くるし
)
むは
道
(
みち
)
さまの
罰
(
ばち
)
。
217
道々
(
みちみち
)
にさやる
曲津
(
まがつ
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
218
進
(
すす
)
み
出
(
い
)
でます
道公司
(
みちこうつかさ
)
』
219
伊太公
(
いたこう
)
『
道公
(
みちこう
)
よ、
純公
(
すみこう
)
、
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なに
)
をいふ
220
どの
道
(
みち
)
此
(
この
)
儘
(
まま
)
すみ
はせぬぞよ。
221
伊太公
(
いたこう
)
が、
今
(
いま
)
にイタい
目
(
め
)
見
(
み
)
せてやる
222
鼬
(
いたち
)
の
最後屁
(
さいごぺ
)
ひらぬよにせよ』
223
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
道公
(
みちこう
)
の
道
(
みち
)
をたがへず
伊太公
(
いたこう
)
の
224
威猛
(
ゐたけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
舌
(
した
)
も
すみ
公
(
こう
)
』
225
純公
(
すみこう
)
『
玉国
(
たまくに
)
の
別
(
わけの
)
命
(
みこと
)
に
従
(
したが
)
ひて
226
今日
(
けふ
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
な
芝居
(
しばゐ
)
見
(
み
)
る
哉
(
かな
)
』
227
道公
(
みちこう
)
『
又
(
また
)
しても
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
奴
(
め
)
がソロソロと
228
山
(
やま
)
の
横面
(
よこづら
)
なぐり
相
(
さう
)
なる。
229
サア
行
(
ゆ
)
かう、
早行
(
はやゆ
)
きませう
宣伝使
(
せんでんし
)
230
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
奴
(
め
)
が
追
(
お
)
ひつかぬ
内
(
うち
)
』
231
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
又
(
また
)
ソロソロと
行
(
ゆ
)
かうか、
232
モウ
此
(
この
)
先
(
さき
)
は
下
(
くだ
)
り
坂
(
ざか
)
だ。
233
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
下
(
くだ
)
り
坂
(
ざか
)
は
用心
(
ようじん
)
をせなくては、
234
石車
(
いしぐるま
)
に
乗
(
の
)
つて
転落
(
てんらく
)
する
虞
(
おそれ
)
があるから、
235
暫
(
しばら
)
く
口
(
くち
)
を
噤
(
つま
)
へて、
236
足
(
あし
)
の
先
(
さき
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ、
237
コチコチとアブト
式
(
しき
)
に
下
(
くだ
)
るのだ。
238
余
(
あま
)
り
喋
(
しやべ
)
つてゐると、
239
外
(
ほか
)
へ
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られて、
240
足許
(
あしもと
)
がお
留守
(
るす
)
になるから、
241
一同
(
いちどう
)
に
注意
(
ちゆうい
)
を
施
(
ほどこ
)
しておく』
242
道公
(
みちこう
)
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました。
243
オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
244
大将軍
(
だいしやうぐん
)
の
命令
(
めいれい
)
だ。
245
沈黙
(
ちんもく
)
だぞ』
246
伊太公
(
いたこう
)
『
喋
(
しやべ
)
れと
云
(
い
)
つたつて、
247
かう
向脛
(
むかふづね
)
をすり
剥
(
む
)
いては
痛
(
いた
)
くつて、
248
喋
(
しやべ
)
る
所
(
どころ
)
かい。
249
足
(
あし
)
計
(
ばか
)
りに
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られて
仕方
(
しかた
)
がないワ』
250
純公
(
すみこう
)
『そんなら
伊太公
(
いたこう
)
、
251
お
前
(
まへ
)
は
道公
(
みちこう
)
さまの
後
(
あと
)
から
行
(
ゆ
)
け、
252
おれが
後
(
あと
)
から
気
(
き
)
をつけてやる。
253
宣伝使
(
せんでんし
)
の
命令
(
めいれい
)
には、
254
決
(
けつ
)
して
今後
(
こんご
)
違背
(
ゐはい
)
伊太
(
いた
)
さんと
誓
(
ちか
)
ふのだぞ』
255
道公
(
みちこう
)
『ヤアそろそろと
純公
(
すみこう
)
の
奴
(
やつ
)
三千
(
さんぜん
)
年
(
ねん
)
の
沈黙
(
ちんもく
)
を
破
(
やぶ
)
つてシヤシヤり
出
(
だ
)
したなア。
256
沈黙
(
ちんもく
)
々々
(
ちんもく
)
』
257
といひ
乍
(
なが
)
ら、
258
玉国別
(
たまくにわけ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に
一足
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
爪先
(
つまさき
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
259
伊太公
(
いたこう
)
は
足
(
あし
)
をチガチガさせ
乍
(
なが
)
ら、
260
又
(
また
)
もや
沈黙
(
ちんもく
)
の
封
(
ふう
)
じ
目
(
め
)
が
切
(
き
)
れて、
261
雲雀
(
ひばり
)
のやうに
囀
(
さへづ
)
り
出
(
だ
)
した。
262
伊太公
『
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
263
此
(
この
)
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
る
時
(
とき
)
や
264
決
(
けつ
)
して
頤
(
あご
)
を
叩
(
たた
)
くなと
265
誠
(
まこと
)
に
厳
(
きび
)
しき
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
266
さはさり
乍
(
なが
)
ら
伊太
(
いた
)
さまは
267
足
(
あし
)
の
痛
(
いた
)
みに
堪
(
た
)
へかねて
268
どしても
沈黙
(
ちんもく
)
守
(
まも
)
れない
269
ウンウンウンウン アイタタツタ
270
痛
(
いた
)
いわいな
痛
(
いた
)
いわいな
痛
(
いた
)
いわいな
271
そんなに
痛
(
いた
)
くば
一寸
(
ちよつと
)
ぬかうか
272
イエイエさうではないわいな
273
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
居
(
ゐ
)
たいわいな
274
アイタタタツターアイタタツタ
275
板
(
いた
)
を
立
(
た
)
てたよな
坂路
(
さかみち
)
に
276
尖
(
とが
)
つた
小石
(
こいし
)
がガラガラと
277
おれを
倒
(
たふ
)
さうと
待
(
ま
)
つてゐる
278
此奴
(
こいつ
)
あヤツパリ
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
279
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
眷族
(
けんぞく
)
が
280
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
征途
(
せいと
)
をば
281
邪魔
(
じやま
)
してやらむと
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へ
282
小石
(
こいし
)
に
化
(
ば
)
けて
居
(
ゐ
)
るのだろ
283
コリヤコリヤ
道公
(
みちこう
)
気
(
き
)
をつけよ
284
これ
程
(
ほど
)
キツい
道公
(
みちこう
)
の
285
どうまん
中
(
なか
)
にガラクタの
286
腐
(
くさ
)
つた
石
(
いし
)
めが
並
(
なら
)
んでる
287
これはヤツパリ
道公
(
みちこう
)
の
288
身魂
(
みたま
)
の
性来
(
しやうらい
)
が
現
(
あら
)
はれて
289
道
(
みち
)
にさやるに
違
(
ちがひ
)
ない
290
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
291
ガラガラガラガラ アイタヽツタ
292
それそれ
俺
(
おれ
)
をばこかしよつた
293
向脛
(
むかふづね
)
すりむ
いた
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
294
又
(
また
)
もやおけつをすりむ
いた
295
前
(
まへ
)
と
後
(
うしろ
)
に
傷
(
きず
)
をうけ
296
どうしてこんな
急坂
(
きふはん
)
が
297
さう
易々
(
やすやす
)
とテクられよか
298
向
(
むか
)
ふの
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
むれば
299
又
(
また
)
もや
怪
(
あや
)
しい
雲
(
くも
)
が
出
(
で
)
た
300
あの
一塊
(
いつくわい
)
の
妖雲
(
えううん
)
は
301
風
(
かぜ
)
の
鞴
(
ふいご
)
に
違
(
ちがひ
)
ない
302
皆
(
みな
)
さま
気
(
き
)
をつけなされませ
303
又
(
また
)
もや
前
(
さき
)
のよな
烈風
(
れつぷう
)
が
304
吹
(
ふ
)
いて
来
(
き
)
たなら
何
(
なん
)
としよう
305
空中
(
くうちう
)
滑走
(
くわつそう
)
の
曲芸
(
きよくげい
)
を
306
演
(
えん
)
じて
谷間
(
たにま
)
へ
転落
(
てんらく
)
し
307
頭
(
あたま
)
も
手足
(
てあし
)
もメチヤメチヤに
308
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みじん
)
となるだらう
309
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
310
劔
(
つるぎ
)
の
山
(
やま
)
か
針
(
はり
)
の
山
(
やま
)
311
血
(
ち
)
を
見
(
み
)
にやおかぬと
見
(
み
)
えるわい
312
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
313
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
314
星
(
ほし
)
は
天
(
てん
)
より
落
(
お
)
つるとも
315
海
(
うみ
)
はあせなむ
世
(
よ
)
ありとも
316
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
のある
限
(
かぎ
)
り
317
怪我
(
けが
)
なく
此
(
この
)
山
(
やま
)
スクスクと
318
通
(
とほ
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
伊太公
(
いたこう
)
が
319
ウントコドツコイ、アイタタツタ
320
又々
(
またまた
)
石
(
いし
)
に
躓
(
つまづ
)
いた
321
神
(
かみ
)
も
仏
(
ほとけ
)
もないのかと
322
心
(
こころ
)
淋
(
さび
)
しくなつて
来
(
き
)
た
323
こんな
事
(
こと
)
だと
知
(
し
)
つたなら
324
お
供
(
とも
)
をするのぢやなかつたに
325
コラコラ
道公
(
みちこう
)
純公
(
すみこう
)
よ
326
貴様
(
きさま
)
は
唖
(
おし
)
になつたのか
327
俺
(
おれ
)
ばつかりに
物
(
もの
)
言
(
い
)
はせ
328
返答
(
へんたふ
)
せぬとは
余
(
あま
)
りぞよ
329
オツト
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
てコリヤ
違
(
ちが
)
うた
330
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
331
篏口令
(
かんこうれい
)
をウントコシヨ
332
布
(
し
)
かれたことをウントコシヨ
333
サツパリ
忘
(
わす
)
れて
居
(
を
)
りました
334
広
(
ひろ
)
き
心
(
こころ
)
の
神直日
(
かむなほひ
)
335
大直日
(
おほなほひ
)
にと
見直
(
みなほ
)
して
336
どうぞお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さんせ
337
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
338
叶
(
かな
)
はぬ
時
(
とき
)
の
神頼
(
かみだの
)
み
339
チツとは
聞
(
き
)
いてくれるだろ
340
コリヤ
又
(
また
)
きつい
坂
(
さか
)
だなア
341
アイタタタツタ
又
(
また
)
こけた』
342
と
言
(
い
)
ひながら、
343
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
大曲
(
おほまが
)
りの
山
(
やま
)
の
懐
(
ふところ
)
に
進
(
すす
)
んだ。
344
天地
(
てんち
)
もわるる
許
(
ばか
)
りの
強風
(
きやうふう
)
、
345
又
(
また
)
もや
猛然
(
まうぜん
)
として
吹起
(
ふきおこ
)
り、
346
流石
(
さすが
)
の
玉国別
(
たまくにわけ
)
も
最早
(
もはや
)
一歩
(
いつぽ
)
も
進
(
すす
)
む
能
(
あた
)
はず、
347
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
にしがみつき、
348
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
349
風
(
かぜ
)
の
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
くを
待
(
ま
)
つ
事
(
こと
)
とした。
350
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
玉国別
(
たまくにわけ
)
に
傚
(
なら
)
つて、
351
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
にしがみつき、
352
ふるひふるひ
目
(
め
)
をつぶつて、
353
風
(
かぜ
)
の
過
(
す
)
ぐるのを
待
(
ま
)
つてゐる。
354
(
大正一一・一一・二六
旧一〇・八
松村真澄
録)
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