霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第四章 玉眼(ぎよくがん)開(びらき)〔一一五五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻 篇:第1篇 狂風怪猿 よみ(新仮名遣い):きょうふうかいえん
章:第4章 玉眼開 よみ(新仮名遣い):ぎょくがんびらき 通し章番号:1155
口述日:1922(大正11)年11月26日(旧10月8日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
伊太公は二人に玉国別の介抱をたのみ、谷川に下って谷水を汲みに降りて行った。玉国別は両眼から血を流して痛さをこらえ、うつむいている。
谷から上がってきた伊太公はしかし、汲んだ水筒をどこかに落としてしまっていた。伊太公と純公は、水筒を探しに戻った。水筒は口を下に落ちており、水はこぼれて一滴も残っていない。
二人は谷底に降り立ち、水を汲んで坂をよじのぼり、ようやく玉国別に水を持ってきて目を洗った。玉国別の痛みはこれでかなり軽減したが、目は依然として見えないままであった。
玉国別の右の目はすっかりつぶれてしまっていた。玉国別は我が身第一で烈風を恐れ、神様への御祈願さえ怠った報いだと自らを省みている。
下の谷道から宣伝歌が聞こえてきた。これはケーリス、タークス、ポーロの一行が照国別の信書を携えて斎苑館に修業に行く途中であった。
三五教の宣伝歌に、道公は助けを求めようとするが、玉国別は宣伝使の身を持って他人に助けてもらうなどは恥ずかしい、何事も神様にお任せするしかないと押しとどめた。玉国別は天に向かって合掌し、天津祝詞を奏上し国治立大神の神名を唱えて罪を謝した。
祝詞を唱え終わると、玉国別の左目が見えだした。玉国別は合掌した。従者の三人は喜び、一斉に合掌して天津祝詞を奏上し始めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-10-27 11:39:06 文字数:4590 OBC :rm4304
愛善世界社版:46頁 八幡書店版:第8輯 45頁 修補版: 校定版:49頁 普及版:19頁 初版: ページ備考:
001伊太公(いたこう)『思(おも)ひきや きや きや きやと泣(な)く猿(さる)に
002キヤツといふ目(め)に会(あ)はされるとは』
003道公(みちこう)『コリヤコリヤ伊太公(いたこう)、004気楽相(きらくさう)に狂歌(きやうか)所(どころ)かい。005宣伝使(せんでんし)様(さま)が今日(けふ)か明日(あす)か知(し)らぬよな目(め)に会(あ)はされて苦(くるし)んで厶(ござ)るのに、006何(なに)を呆(とぼ)けてゐるのだ。007サ、008早(はや)く谷川(たにがは)へでも下(お)りて清水(しみづ)を汲(く)んで来(こ)い。009俺(おれ)は御(ご)介抱(かいはう)を申上(まをしあ)げるから……』
010伊太公(いたこう)『そんならお前(まへ)達(たち)両人(りやうにん)に、011先生(せんせい)の御(ご)介抱(かいはう)を頼(たの)む事(こと)にしよう。012俺(おれ)はこれから谷水(たにみづ)を汲(く)んで来(く)るワ』
013といひ乍(なが)ら、014水筒(すゐとう)をブラブラブラ下(さ)げ、015谷川(たにがは)さしておりて行(ゆ)く。
016伊太公(いたこう)『ヤア此所(ここ)に綺麗(きれい)な水(みづ)が流(なが)れてゐる。017之(これ)を汲(く)んで洗(あら)つて上(あ)げたらキツと癒(なほ)るだろ。
018山猿(やまざる)に掻(か)きむしられて何(なに)もかも
019水(みづ)の御霊(みたま)の救(すく)ひ求(もと)むる。
020この水(みづ)は神(かみ)の恵(めぐみ)の露(つゆ)なれば
021今日(けふ)は見(み)えると言(い)ひたくぞある。
022谷川(たにがは)に落(お)ち込(こ)み水(みづ)を汲(く)みに来(き)た
023深(ふか)き心(こころ)を汲(く)ませ玉(たま)へよ。
024此(この)みづは眼(まなこ)ばかりか命(いのち)まで
025救(すく)ひ助(たす)くる恵(めぐみ)の露(つゆ)ぞ。
026惟神(かむながら)神(かみ)の光(ひかり)の現(あら)はれて
027玉国別(たまくにわけ)の眼(まなこ)照(て)らせよ。
028みず知(し)らず懐谷(ふところだに)の山猿(やまざる)に
029掻(か)きむしられし事(こと)の悔(くや)しさ。
030さり乍(なが)ら神(かみ)の使命(しめい)をおろそかに
031いたせし罪(つみ)の報(むく)い来(き)しにや。
032時置師(ときおかし)神(かみ)の命(みこと)が現(あら)はれて
033心(こころ)の眼(まなこ)開(ひら)き玉(たま)へり。
034待(ま)てしばしぐづぐづしてるとこぢやない
035早(はや)く眼(まなこ)をあらはにやならぬ。
036伊太公(いたこう)の目(め)は大丈夫(だいぢやうぶ)さり乍(なが)ら
037師(し)の君(きみ)見(み)る目(め)いたいたしく思(おも)ふ』
038と口(くち)ずさみ乍(なが)ら、039清冽(せいれつ)なる秋(あき)の谷水(たにみづ)を水筒(すゐとう)に盛(も)り、040一刻(いつこく)も早(はや)く玉国別(たまくにわけ)を助(たす)けむと、041小柴(こしば)や茨(いばら)を掻(か)きわけ、042息(いき)をはづませ登(のぼ)り行(ゆ)く。043玉国別(たまくにわけ)は両眼(りやうがん)より血(ち)を垂(た)らし乍(なが)ら、044布(ぬの)にて血糊(ちのり)を拭(ふ)き取(と)り、045手(て)の掌(ひら)を両眼(りやうがん)にあてて痛(いた)さをこらへて俯(うつむ)いてゐる。046道公(みちこう)、047純公(すみこう)は、
048道公、純公『サア大変(たいへん)々々(たいへん)』
049と慌(あわ)てふためき、050うろたへ廻(まは)つて、051チツとも間(ま)しやくに合(あ)はない。
052玉国別(たまくにわけ)『道公(みちこう)、053水(みづ)はまだか。054伊太公(いたこう)はまだ帰(かへ)らぬか』
055道公(みちこう)『ハイ山路(やまみち)をタツタツタと下(くだ)つて行(い)たきり、056今(いま)に至(いた)り姿(すがた)を見(み)せませぬ。057先生(せんせい)が是(これ)程(ほど)傷(きず)で困(こま)つて厶(ござ)るのに……エヽ気(き)の利(き)かぬ奴(やつ)ですワイ。058オイ純公(すみこう)、059貴様(きさま)何(なに)をウロウロしてゐるのだ。060早(はや)く伊太公(いたこう)の水(みづ)の催促(さいそく)に伊太(いた)々々(いた)』
061純公(すみこう)『エヽ洒落(しやれ)どころかい。062大変(たいへん)な目(め)に会(あ)うて吾々(われわれ)は進路(しんろ)に迷(まよ)うてゐるのだ。063一寸先(いつすんさき)は真暗(まつくら)やみだ。064そんな気楽(きらく)なことどこかいやい』
065かかる所(ところ)へ伊太公(いたこう)はフースーフースーと鼻息(はないき)荒(あら)く登(のぼ)り来(きた)り、
066伊太公(いたこう)『アヽ大変(たいへん)遅(おそ)くなつてすみませぬ。067一刻(いつこく)の間(ま)も早(はや)く帰(かへ)りたいと思(おも)ひ、068気(き)をあせればあせる程(ほど)、069キツい坂(さか)で足(あし)がずり、070漸(やうや)くここ迄(まで)到着(たうちやく)致(いた)しました』
071道公(みちこう)『オイ早(はや)く水筒(すゐとう)を出(だ)さぬかい。072根(ね)つから持(も)つてゐないぢやないか』
073伊太公(いたこう)は腰(こし)のあたりを探(さぐ)り乍(なが)ら、074『アツ』と一声(いつせい)打驚(うちおどろ)き、
075伊太公(いたこう)『ヤア大変(たいへん)だ。076余(あま)り慌(あわ)てて、077谷底(たにそこ)へ水(みづ)を汲(く)んだなり忘(わす)れて来(き)たのだ。078オイ道公(みちこう)、079貴様(きさま)早(はや)く取(と)つて来(き)てくれぬかい。080先生(せんせい)の痛(いた)みが気(き)の毒(どく)だから、081早(はや)く目(め)を冷(ひや)さぬと段々(だんだん)腫(は)れて来(き)ちや大変(たいへん)だ』
082道公(みちこう)『エヽ慌者(あわてもの)だなア、083どこらに置(お)いておいたのだ。084それをスツカリ言(い)はぬかい』
085伊太公(いたこう)『谷川(たにがは)と云(い)つたら、086山(やま)の谷(たに)を流(なが)れる川(かは)だ。087其(その)水(みづ)を汲(く)んでチヤンと砂(すな)の上(うへ)においてあるのだ。088サア早(はや)く行(ゆ)かぬかい。089一(いつ)分間(ぷんかん)でも先生(せんせい)の苦痛(くつう)を助(たす)けにやなるまいぞ』
090純公(すみこう)『オイ伊太公(いたこう)、091貴様(きさま)が置(お)いといたのだから、092貴様(きさま)が行(ゆ)かなグヅグヅ捜(さが)してゐる間(ま)がないぢやないか。093本当(ほんたう)に困(こま)つた奴(やつ)だな。094丸(まる)で雉子(きぎす)の直使(ひたづかひ)だ。095水(みづ)を汲(く)みに行(い)つたつて、096持(も)つて帰(かへ)らにや何(なに)になるものか』
097伊太公(いたこう)『貴様(きさま)、098水(みづ)を汲(く)んで来(こ)いとぬかしたぢやないか。099別(べつ)に持(も)つて帰(かへ)れと迄(まで)は言(い)はぬものだから忘(わす)れたつて仕方(しかた)がないワイ。100オイ純公(すみこう)、101貴様(きさま)も来(き)てくれぬかい。102実(じつ)の所(ところ)はどこで落(おと)したか分(わか)らぬのだ。103二人(ふたり)よつて鵜(う)の目(め)鷹(たか)の目(め)で、104小柴(こしば)の中(なか)や枯草(かれくさ)の間(あひだ)を捜(さが)し求(もと)めて見(み)つけて来(こ)うぢやないか、105……モシモシ先生(せんせい)様(さま)、106モウ暫(しばら)くの御(ご)苦痛(くつう)、107どうぞ御(ご)辛抱(しんばう)下(くだ)さいませ。108誠(まこと)に気(き)の利(き)かぬ男(をとこ)で厶(ござ)いまして、109御(ご)心中(しんちう)お察(さつ)し申(まを)します。110コラ、111道公(みちこう)、112何(なに)を呆(とぼ)けてゐるのだ、113早(はや)く御(ご)介抱(かいはう)を申(まを)さぬかい』
114道公(みちこう)『介抱(かいほう)せいと云(い)つたつて、115仕方(しかた)がないぢやないか。116俺(おれ)やここで猿(さる)の再襲来(さいしふらい)を防禦(ばうぎよ)してゐるから、117貴様(きさま)等(たち)両人(りやうにん)、118水筒(すゐとう)捜(さが)しに行(い)つて来(こ)い』
119 伊太公(いたこう)、120純公(すみこう)両人(りやうにん)はブツブツ呟(つぶや)き乍(なが)ら、121小柴(こしば)を分(わ)けて水筒(すゐとう)の落(お)ちた場所(ばしよ)を探(さが)しに行(ゆ)く。122漸(やうや)くにして一丁(いつちやう)ばかり下(くだ)つた所(ところ)に、123水筒(すゐとう)は落(お)ちて居(ゐ)た。124併(しか)し乍(なが)ら入口(いりぐち)を下(した)に尻(しり)を上(うへ)に落(おと)したのだから、125一滴(いつてき)も残(のこ)らず吐(は)き出(だ)して了(しま)ひ、126空水筒(からすゐとう)となつて、127天下(てんか)太平(たいへい)気分(きぶん)で横(よこた)はつてゐる。
128伊太公(いたこう)『エヽ気(き)の利(き)かない水筒(すゐとう)だな、129落(お)ちるのなら何故(なぜ)上向(うへむ)けに落(お)ちないのだ。130折角(せつかく)俺(おれ)が呑(の)ましてやつた水(みづ)を、131皆(みな)吐(は)き出(だ)して……何(なん)と都合(つがふ)の悪(わる)い時(とき)にや、132都合(つがふ)の悪(わる)いものだなア。133オイ純公(すみこう)、134仕方(しかた)がない。135マ一度(いちど)谷底(たにそこ)まで一走(ひとはし)り行(い)つて来(こ)うかい』
136純公(すみこう)『さうだなア。137水筒(すゐとう)が見(み)つかつた以上(いじやう)は貴様(きさま)一人(ひとり)でいいのぢやけれど、138元来(ぐわんらい)が慌者(あわてもの)だから、139又(また)道(みち)で落(おと)しよると何(なん)にもならぬ。140俺(おれ)が監視役(かんしやく)として従(つ)いて行(い)てやらう』
141 純公(すみこう)は水筒(すゐとう)を懐(ふところ)にねぢ込(こ)み、142急坂(きふはん)を小柴(こしば)を分(わ)け、143草(くさ)に辷(すべ)り乍(なが)ら、144伊太公(いたこう)と共(とも)に深(ふか)き谷底(たにそこ)に下(お)り立(た)ち、145清泉(せいせん)をドブドブドブと丸(まる)い泡(あわ)を立(た)てさせ、146口(くち)まで満(み)たした。
147純公(すみこう)『すみ切(き)りし此(この)谷水(たにみづ)を水筒(すゐとう)に
148呑(の)ませて帰(かへ)る身(み)こそ嬉(うれ)しき。
149伊太公(いたこう)が折角(せつかく)汲(く)んだ谷水(たにみづ)は
150水泡(みなわ)となりて消(き)え失(う)せにける』
151伊太公(いたこう)『俺(おれ)だとて落(おと)す心(こころ)はなけれ共(ども)
152目(め)に見(み)ぬ智慧(ちゑ)を落(おと)したるらむ。
153落(おと)したる瓶(かめ)を拾(ひろ)うて音彦(おとひこ)の
154眼(まなこ)を洗(あら)ふわれおとましき』
155純公(すみこう)『さア早(はや)う伊太公(いたこう)の奴(やつ)よついて来(こ)い
156眼(まなこ)伊太公(いたこう)と待(ま)つて厶(ござ)るぞ』
157と云(い)ひ乍(なが)ら、158又(また)もや急坂(きふはん)を攀(よ)ぢ登(のぼ)り、159漸(やうや)くにして玉国別(たまくにわけ)の傍(そば)に着(つ)き、160水筒(すゐとう)の水(みづ)を手(て)にすくひ、161玉国別(たまくにわけ)の両眼(りやうがん)を念入(ねんい)りに洗滌(せんでう)した。
162玉国別(たまくにわけ)『アヽ有難(ありがた)い、163これでスツカリ目(め)の痛(いた)みが止(と)まつたやうだ』
164伊太公(いたこう)『先生(せんせい)、165痛(いた)みが止(と)まりましたか、166それは何(なに)より嬉(うれ)しい事(こと)で厶(ござ)います。167併(しか)し明(あか)りは見(み)えますかな』
168玉国別(たまくにわけ)『イヤ痛(いた)みは余程(よほど)軽減(けいげん)したやうだが、169チツとも見(み)えないワ』
170道公(みちこう)『エヽ何(なん)と仰有(おつしや)います、171お目(め)が見(み)えませぬか、172コリヤ大変(たいへん)だ。173大西洋(たいせいやう)の真中(まんなか)で蒸気船(じやうきせん)の機関(きくわん)が破裂(はれつ)したよなものだ、174これから俺(おれ)達(たち)は如何(どう)したら良(よ)からうかなア』
175玉国別(たまくにわけ)『心配(しんぱい)してくれな。176物(もの)のあいろは分(わか)らぬが、177ボンヤリとそこら中(ぢう)が明(あか)く見(み)えるやうだ。178何(いづ)れ熱(ねつ)が下(さが)つたら、179元(もと)の通(とほ)りになるだらう。180これといふのも吾(わが)身(み)の安全(あんぜん)を第一(だいいち)として烈風(れつぷう)に恐(おそ)れ、181肝腎(かんじん)の神(かみ)様(さま)に祈願(きぐわん)することや言霊(ことたま)を以(もつ)て風神(かぜのかみ)を駆逐(くちく)することを忘(わす)れてゐた其(その)罪(つみ)が報(むく)うて来(き)たのだ。182実(じつ)によい教訓(けうくん)を受(う)けたものだ。183せめて北光(きたてるの)神(かみ)様(さま)のやうに一眼(いちがん)なりと開(ひら)かして下(くだ)されば、184結構(けつこう)だがなア』
185 道公(みちこう)はつくづくと玉国別(たまくにわけ)の両眼(りやうがん)を打(う)ち眺(なが)め、
186道公『ヨウこれは思(おも)つたよりも大疵(おほきず)だ。187モシ先生(せんせい)、188右(みぎ)の目(め)はサツパリ潰(つぶ)れて了(しま)つてゐますよ。189まだも見込(みこみ)のあるのは左(ひだり)の目(め)ですよ』
190玉国別(たまくにわけ)『左(ひだり)の目(め)は日(ひ)の大神(おほかみ)様(さま)、191右(みぎ)の目(め)は月(つき)の大神(おほかみ)様(さま)だ。192月(つき)の国(くに)へ魔神(まがみ)の征服(せいふく)に出陣(しゆつぢん)の途中(とちう)、193月(つき)の大神(おほかみ)に配(はい)すべき右(みぎ)の目(め)を猿(さる)に取(と)られたのは、194全(まつた)く神罰(しんばつ)に違(ちがひ)ない。195まさしく坤(ひつじさる)の大神(おほかみ)様(さま)が、196吾(わが)目(め)をお取上(とりあ)げになつたのだらう、197あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
198道公(みちこう)『オイ伊太公(いたこう)、199純公(すみこう)、200コリヤ斯(か)うしては居(を)られまい、201これから三(さん)人(にん)は谷底(たにそこ)へ下(くだ)つて一生(いつしやう)懸命(けんめい)に水垢離(みづごり)を取(と)り、202先生(せんせい)の目(め)の祈願(きぐわん)をさして頂(いただ)かうぢやないか』
203 斯(か)く話(はな)す折(をり)しも、204下(した)の谷道(たにみち)を宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひつつ東北(とうほく)指(さ)して登(のぼ)り行(ゆ)く一隊(いつたい)があつた。205これはケーリス、206タークス、207ポーロの一行(いつかう)が照国別(てるくにわけ)の信書(しんしよ)を携(たづさ)へ、208斎苑(いそ)館(やかた)に修行(しうぎやう)に向(むか)ふのであつた。
209道公(みちこう)『ヤアあの声(こゑ)は三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)ぢやないか。210モシ先生(せんせい)、211キツとあれは吾々(われわれ)の味方(みかた)に違(ちがひ)ありませぬ。212一(ひと)つ後(あと)追(お)つかけて、213貴方(あなた)の眼病(がんびやう)を鎮魂(ちんこん)して貰(もら)ひませうか』
214玉国別(たまくにわけ)『苟(いやし)くも宣伝使(せんでんし)の身(み)を以(もつ)て、215山猿(やまざる)に眼(め)を掻(か)きむしられ、216どうしてそんな事(こと)が、217恥(はづか)しうて頼(たの)めるものか。218何事(なにごと)も神(かみ)様(さま)にお任(まか)せするより道(みち)はないのだから、219御(ご)親切(しんせつ)は有難(ありがた)いが、220それ丈(だけ)はどうぞ止(や)めてくれ』
221道公(みちこう)『それだと申(まを)して、222危急(ききふ)存亡(そんばう)の場合(ばあひ)、223そんな事(こと)が言(い)うてゐられますか。224今(いま)となつては恥(はぢ)も外聞(ぐわいぶん)もいつたものぢや厶(ござ)いませぬ。225何程(なにほど)神徳(しんとく)高(たか)き宣伝使(せんでんし)でも、226怪我(けが)は廻(まは)りものですからそれが恥(はぢ)になると云(い)ふ事(こと)はありますまい。227オイ伊太公(いたこう)、228純公(すみこう)、229何(なに)をグヅグヅしてるのだ。230千危(せんき)一機(いつき)の此(この)場合(ばあひ)に泣(な)く奴(やつ)があるかい。231早(はや)く宣伝歌(せんでんか)の声(こゑ)を尋(たづ)ねて頼(たの)んで来(こ)ぬか』
232伊太公(いたこう)『それもさうだ。233オイ純公(すみこう)、234お前(まへ)も御(ご)苦労(くらう)だが、235俺(おれ)に従(つ)いて来(き)てくれ』
236純公(すみこう)『ヨーシ、237合点(がつてん)だ。238急(せ)かねばならぬ、239急(せ)いては事(こと)を仕損(しそん)ずる。240気(き)をおちつけて、241ゆるゆる急(いそ)いで行(ゆ)かう』
242道公(みちこう)『何卒(どうぞ)さうしてくれ。243サアサア早(はや)う早(はや)う、244手(て)を合(あ)はして、245今日(けふ)は俺(おれ)が頼(たの)むから』
246玉国別(たまくにわけ)『コリヤ三(さん)人(にん)、247どうしても俺(おれ)のいふ事(こと)を聞(き)かぬのか、248俺(おれ)に恥(はぢ)をかかす積(つも)りか』
249 道公(みちこう)は頭(あたま)を掻(か)き乍(なが)ら、
250道公(みちこう)『ダツて貴方(あなた)、251これが如何(どう)して安閑(あんかん)として居(を)られませうか』
252玉国別(たまくにわけ)『神(かみ)様(さま)の教(をしへ)に、253人(ひと)を杖(つゑ)につくな、254身内(みうち)を力(ちから)にするな……といふ事(こと)がある。255俺(わし)の目(め)は俺(わし)が神(かみ)様(さま)に祈(いの)つて何(なん)とかして貰(もら)ふから、256どうぞそれ丈(だけ)はやめてくれ、257頼(たの)みだから』
258道公(みちこう)『オイ伊太(いた)、259純(すみ)、260どうも仕方(しかた)がないぢやないか』
261伊太公(いたこう)『俺(おれ)達(たち)の先生(せんせい)だもの、262俺(おれ)達(たち)三(さん)人(にん)が神(かみ)様(さま)に祈(いの)つて直(なほ)して貰(もら)へばいいのだ。263外(ほか)の宣伝使(せんでんし)に先生(せんせい)の恥(はぢ)を曝(さら)すのも済(す)まないからなア』
264 玉国別(たまくにわけ)は天(てん)に向(むか)つて合掌(がつしやう)し、265天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、266……国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)の神名(しんめい)を称(とな)へて、267罪(つみ)を謝(しや)した。268其(その)詞(ことば)、
269玉国別『高天原(たかあまはら)の主宰(しゆさい)にして、270一霊(いちれい)四魂(しこん)三元(さんげん)八力(はちりき)の大元霊(だいげんれい)にまします大国治立(おほくにはるたちの)大神(おほかみ)様(さま)、271私(わたし)は貴神(あなた)の尊(たふと)き霊力体(れいりよくたい)を賦与(ふよ)せられ、272此(この)地上(ちじやう)に生(うま)れ来(き)て、273幼少(えうせう)の頃(ころ)よりいろいろ雑多(ざつた)の善(よ)からぬ事(こと)のみ致(いた)しまして、274世(よ)を汚(けが)し、275道(みち)を損(そこな)ひ、276人(ひと)を苦(くるし)め、277親(おや)を泣(な)かせ、278他人(たにん)に迷惑(めいわく)をかけ、279しまひの果(はて)にはウラル教(けう)の宣伝使(せんでんし)となり、280日(ひ)の出別(でわけの)神(かみ)様(さま)に救(すく)はれて一人前(いちにんまへ)の宣伝使(せんでんし)として頂(いただ)きました。281かかる罪(つみ)深(ふか)き吾々(われわれ)をも捨(す)て玉(たま)はず、282きため玉(たま)はず、283広(ひろ)き厚(あつ)き大御心(おほみこころ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し詔直(のりなほ)し下(くだ)さいまして、284尊(たふと)き宣伝使(せんでんし)にお使(つか)ひ下(くだ)さいました事(こと)は、285罪(つみ)深(ふか)き吾々(われわれ)に取(と)つては、286無上(むじやう)の光栄(くわうえい)で厶(ござ)います。287かかる広大(くわうだい)無辺(むへん)なる御(ご)恩寵(おんちやう)に浴(よく)し乍(なが)ら、288知(し)らず知(し)らずの間(あひだ)に慢心(まんしん)を致(いた)し天下(てんか)の宣伝使(せんでんし)気分(きぶん)になつて、289世(よ)の中(なか)の盲(めくら)聾(つんぼ)唖(おし)躄(あしなへ)などを癒(い)やし助(たす)けむと、290勇(いさ)み進(すす)んで此処(ここ)迄(まで)参(まゐ)りました事(こと)を、291誠(まこと)に恥(はづ)かしく存(ぞん)じます。292今日(けふ)只今(ただいま)山猿(やまざる)の手(て)を借(か)つて、293吾々(われわれ)の両眼(りやうがん)を刔出(けつしゆつ)し、294汚(けが)れたる心(こころ)を清(きよ)め、295曇(くも)りたる心(こころ)の眼(まなこ)を開(ひら)かせ、296身霊(みたま)を明(あか)きに救(すく)ひ玉(たま)ひし其(その)御(ご)恩徳(おんとく)を有難(ありがた)く感謝(かんしや)致(いた)します。297人間(にんげん)の体(からだ)は神(かみ)様(さま)の生宮(いきみや)とある以上(いじやう)は何処迄(どこまで)も大切(たいせつ)に此(この)肉体(にくたい)を守(まも)らねばならないので厶(ござ)いますが、298自分(じぶん)の心(こころ)の愚昧(ぐまい)より大切(たいせつ)なる肉(にく)の宮(みや)を損(そこな)ひ破(やぶ)り、299吾々(われわれ)の霊肉(れいにく)を与(あた)へ下(くだ)さいました貴神(あなた)様(さま)に対(たい)してお詫(わび)の申上(まをしあ)げやうも厶(ござ)いませぬ。300誠(まこと)にすまない無調法(ぶてうはふ)を致(いた)しました。301仮令(たとへ)玉国別(たまくにわけ)両眼(りやうがん)の明(めい)を失(しつ)する共(とも)、302せめては心(こころ)の眼(まなこ)を照(て)らさせ下(くだ)さいますれば神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)より依(よ)さし玉(たま)ひし吾(わが)使命(しめい)を飽迄(あくまで)も果(は)たし、303斎苑(いそ)の館(やかた)に復命(ふくめい)をさして頂(いただ)く考(かんが)へで厶(ござ)います。304此(この)上(うへ)は御(ご)無理(むり)な願(ねがひ)は決(けつ)して致(いた)しませぬ。305何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)惟神(かむながら)の御(ご)摂理(せつり)に依(よ)りて、306御心(みこころ)の儘(まま)にお取成(とりな)し下(くだ)さいます様(やう)に謹(つつし)んで御(お)願(ねがひ)を申上(まをしあ)げます』
307と願(ねが)ひ終(をは)り、308両眼(りやうがん)より雨(あめ)の如(ごと)く涙(なみだ)を流(なが)してゐる。309三(さん)人(にん)も此(この)有様(ありさま)を見(み)て、310思(おも)はず落涙(らくるい)にむせび、311大地(だいち)にかぶり付(つ)いて感謝(かんしや)の祈願(きぐわん)を凝(こ)らしてゐる。312玉国別(たまくにわけ)は尚(なほ)も一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、313天地(てんち)の大神(おほかみ)に対(たい)し、314懺悔(ざんげ)の告白(こくはく)をなしつつあつた。315不思議(ふしぎ)や左(ひだり)の目(め)は俄(にはか)に明(あかる)くなり、316四辺(あたり)の状況(じやうきやう)は手(て)に取(と)る如(ごと)く見(み)えて来(き)た。317玉国別(たまくにわけ)は嬉(うれ)し涙(なみだ)に咽(むせ)び乍(なが)ら、318又(また)もや拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)して神恩(しんおん)を感謝(かんしや)する。
319玉国別(たまくにわけ)『イヤ道公(みちこう)、320伊太公(いたこう)、321純公(すみこう)、322喜(よろこ)んでくれ。323どうやら片眼(かため)が見(み)え出(だ)したやうだ。324神(かみ)様(さま)は罪(つみ)深(ふか)き玉国別(たまくにわけ)を助(たす)けて下(くだ)さつた。325あゝ有難(ありがた)し有難(ありがた)し』
326と又(また)もや合掌(がつしやう)。327三(さん)人(にん)は此(この)言葉(ことば)に驚喜(きやうき)し、
328三人『あゝ有難(ありがた)し勿体(もつたい)なし』
329と一斉(いつせい)に合掌(がつしやう)し、330勢(いきほひ)込(こ)んで再(ふたた)び天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し始(はじ)めた。331あゝ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
332(大正一一・一一・二六 旧一〇・八 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→