霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 祠前(ほこらのまへ)〔一一五七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻 篇:第2篇 月下の古祠 よみ(新仮名遣い):げっかのふるほこら
章:第6章 祠前 よみ(新仮名遣い):ほこらのまへ 通し章番号:1157
口述日:1922(大正11)年11月26日(旧10月8日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行は岩石けわしい急坂を、南を指して下って行く。伊太公はしわがれ声を張り上げて、冷たい風を苦にもせずに滑稽な宣伝歌を歌う。続いて純公が歌った。
一行は八分ばかり壊れた祠の前に下りついた。玉国別は目の痛みは軽減したが、頭がメキメキするといって休息を取ることになった。一行は古祠の前に両手を合わせ、天津祝詞を奏上した。
一行はまた祠の神の前に和歌を歌った。歌い終わって祠の神に別れを告げ、立ち出でようとすると、前方から駒の蹄の音が騒々しく聞こえてきた。これは大黒主の部下鬼春別将軍の先鋒隊が、斎苑館に向かって進軍してきたのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-01-05 18:36:08 文字数:4620 OBC :rm4306
愛善世界社版:77頁 八幡書店版:第8輯 56頁 修補版: 校定版:81頁 普及版:31頁 初版: ページ備考:
001山猿(やまざる)どものつどひたる
002懐谷(ふところだに)を後(あと)にして
003片目(かため)を取(と)られし神司(かむつかさ)
004玉国別(たまくにわけ)の一行(いつかう)は
005岩石(がんせき)崎嶇(きく)たる急坂(きふはん)を
006一足(ひとあし)一足(ひとあし)力(ちから)入(い)れ
007南(みなみ)をさして下(くだ)り行(ゆ)く
008又(また)もや吹(ふ)き来(く)る烈風(れつぷう)に
009笠(かさ)をむしられ裳裾(もすそ)をば
010捲(ま)くられながらしとしとと
011眼(まなこ)を据(す)ゑてアブト式(しき)に
012どんどんどんと膝栗毛(ひざくりげ)
013吾物顔(わがものがほ)に下(くだ)りゆく
014御供(みとも)に仕(つか)へし伊太公(いたこう)は
015皺枯声(しわがれごゑ)を張(は)り上(あ)げて
016一足(ひとあし)一足(ひとあし)拍子(へうし)取(と)り
017汗(あせ)をタラタラ流(なが)しつつ
018冷(つめ)たき風(かぜ)を苦(く)にもせず
019伊太公(いたこう)『「ウントコドツコイドツコイシヨ」
020玉国別(たまくにわけ)に従(したが)ひて
021斎苑(いそ)の館(やかた)を出立(しゆつたつ)し
022意気(いき)揚々(やうやう)と膝栗毛(ひざくりげ)
023上(のぼ)りつ下(くだ)りつ進(すす)み来(く)る
024今(いま)吹(ふ)く風(かぜ)よりひどいやつ
025どつと許(ばか)りにやつて来(き)て
026俺(わし)等(ら)の体(からだ)を中天(ちうてん)に
027遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)も荒風(あらかぜ)奴(め)
028吹(ふ)き散(ち)らさむとした故(ゆゑ)に
029用心(ようじん)深(ぶか)い宣伝使(せんでんし)
030吾(わが)師(し)の君(きみ)は吾々(われわれ)を
031労(いた)はりたまひ道端(みちばた)の
032木(き)の根(ね)に確(しつか)としがみつき
033「ウントコドツコイ危(あぶ)ないぞ」
034又(また)もや風(かぜ)が吹(ふ)いて来(き)た
035うつかりしてると散(ち)らされる
036これこれ二人(ふたり)の供(とも)の者(もの)
037確(しつか)り木(き)の根(ね)に喰(くら)ひつき
038風(かぜ)の通(とほ)るを待(ま)つがよい
039などとドツコイ仰有(おつしや)つた
040これ幸(さいは)ひと三(さん)人(にん)は
041轟(とどろ)く胸(むね)を撫(な)でながら
042慄(ふる)ひ戦(をのの)き夜(よ)を明(あ)かし
043又(また)もや吹(ふ)き来(く)る荒風(あらかぜ)に
044吾(わが)身(み)大事(だいじ)と一散(いつさん)に
045懐谷(ふところだに)に駆(か)けつけて
046避難(ひなん)なしける折柄(をりから)に
047「アイタヽヽタツタ コン畜生(ちくしやう)」
048高(たか)い石(いし)めに躓(つまづ)いた
049猿公(さるこう)の奴(やつ)めがやつて来(き)て
050畜生(ちくしやう)だてら吾々(われわれ)に
051揶揄(からか)ひやがる「ウントコシヨ」
052それ見(み)る度(たび)に「ウントコシヨ」
053癪(しやく)に触(さは)つて耐(たま)らない
054遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)も知(し)らぬ奴(やつ)
055とうとう側(そば)へやつて来(き)た
056伊太公(いたこう)さまは「ウントコシヨ」
057腕(うで)に力(ちから)を籠(こ)めながら
058お猿(さる)を一匹(いつぴき)突(つ)き倒(たふ)す
059キヤツ キヤツ キヤツ キヤツと吠(ほえ)乍(なが)ら
060縦横(じうわう)無尽(むじん)に「ウントコシヨ」
061群(むら)がり掛(かか)る恐(おそ)ろしさ
062大猿(おほざる)の奴(やつ)めが飛(と)んで来(き)て
063吾(わが)師(し)の君(きみ)の両眼(りやうがん)を
064キヤツとも何(なん)とも吐(ほざ)かずに
065背中(せなか)の方(はう)から掻(か)きむしり
066ドテライ羽目(はめ)に落(おと)しよつた
067俺(おれ)は谷川(たにがは)へ水汲(みづく)みに
068いつた所(ところ)が「ドツコイシヨ」
069肝腎要(かんじんかなめ)の水筒(すゐとう)を
070小柴(こしば)の中(なか)へ「ヤツトコシヨ」
071落(おと)した時(とき)の阿呆(あはう)らしさ
072道公(みちこう)さまにクドクドと
073お小言(こごと)計(ばか)り頂戴(ちやうだい)し
074俺(おれ)の立(た)つ瀬(せ)はあるものか
075アタ阿呆(あはう)らしい「ドツコイシヨ」
076純公(すみこう)さまの手(て)を引(ひ)いて
077水筒(すゐとう)の所在(ありか)を尋(たづ)ねむと
078下(くだ)つて往(ゆ)けば草(くさ)の上(うへ)
079平気(へいき)の平左(へいざ)で水筒(すゐとう)奴(め)が
080素知(そし)らぬ顔(かほ)して寝(ね)て居(ゐ)よる
081確(しつか)りせぬかと尻(しり)たたき
082純公(すみこう)さまがひん握(にぎ)り
083深(ふか)き谷間(たにま)に下(お)りたつて
084突(つ)つ込(こ)む水筒(すゐとう)ブルブルブル
085屁(へ)のよな泡(あわ)を吹(ふ)き乍(なが)ら
086腹(はら)一杯(いつぱい)に飲(の)みよつた
087今度(こんど)は落(おと)しちやならないと
088グツと素首(そつくび)ひん握(にぎ)り
089吾(わが)師(し)の君(きみ)の御(おん)前(まへ)に
090持(も)ち帰(かへ)り来(き)て両眼(りやうがん)を
091洗(あら)へば「ドツコイドツコイシヨ」
092俄(にはか)に止(と)まる眼(め)の痛(いた)み
093瑞(みづ)の御霊(みたま)の御(ご)神徳(しんとく)
094あゝ有難(ありがた)や尊(たふと)やと
095両手(りやうて)を合(あは)せ拝(をが)む折(をり)
096脚下(きやくか)に聞(きこ)ゆる宣伝歌(せんでんか)
097こいつはテツキリ三五(あななひ)の
098神(かみ)の司(つかさ)に相違(さうゐ)ない
099これより後(あと)を追(お)つかけて
100「ウントコドツコイ」鎮魂(ちんこん)を
101願(ねが)つて眼病(がんびやう)の全快(ぜんくわい)を
102祈(いの)つて貰(もら)はふと願(ねが)うたら
103律儀(りちぎ)一方(いつぱう)の宣伝使(せんでんし)
104なかなか縦(たて)に首(くび)ふらぬ
105吾(われ)は天下(てんか)の宣伝使(せんでんし)
106心(こころ)の油断(ゆだん)につけ込(こ)まれ
107畜生原(ちくしやうばら)に目(め)をとられ
108何(なん)の顔色(かんばせ)あるものぞ
109頼(たの)むでないと「ウントコシヨ」
110「ヤツトコドツコイ」危(あぶ)ないぞ
111なかなか許(ゆる)して下(くだ)さらぬ
112俺(おれ)も因果(いんぐわ)の腰(こし)を据(す)ゑ
113もう此(この)上(うへ)は神(かみ)様(さま)に
114お願(ねが)ひするより道(みち)はない
115枯草(かれくさ)の上(へ)にどつと坐(ざ)し
116両手(りやうて)を合(あは)せ惟神(かむながら)
117御霊(みたま)幸(さち)はへましませと
118祈(いの)りし甲斐(かひ)もありありと
119パツと開(ひら)いた左(ひだり)の目(め)
120あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
121神(かみ)の恵(めぐみ)は目(ま)のあたり
122「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
123これから先(さき)はだんだんと
124坂(さか)がはげしくなるやうだ
125純公(すみこう)気(き)をつけ道公(みちこう)さま
126お前(まへ)の足許(あしもと)危(あぶ)ないぞ
127俺(おれ)もなんだか膝坊子(ひざばうず)
128キヨクリ キヨクリと吐(ぬか)しよる
129ほんに困(こま)つた坂(さか)だなア
130アイタヽヽヽつまづいた
131躓(つまづ)く石(いし)も縁(えん)のはし
132一樹(いちじゆ)の影(かげ)の雨宿(あまやど)り
133一河(いつか)の流(なが)れを汲(く)むさへも
134深(ふか)き縁(えにし)と聞(き)く上(うへ)は
135「ウントコドツコイ躓(つまづ)いた」
136憎(にく)い石(いし)でも「ドツコイシヨ」
137余(あんま)り捨(す)てたものぢやない
138あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
139御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましまして
140一日(ひとひ)も早(はや)く月(つき)の国(くに)
141ハルナの都(みやこ)へドウドウと
142進(すす)ませ給(たま)へ三五(あななひ)の
143皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)前(まへ)に
144慎(つつし)み敬(うやま)ひ願(ね)ぎまつる
145「アイタタツタ又(また)倒(こ)けた」』
146 純公(すみこう)は又(また)唄(うた)ふ。
147純公『河鹿(かじか)峠(たうげ)の山(やま)の尾(を)を
148吹(ふ)く木枯(こがらし)に木々(きぎ)の葉(は)は
149敢(あへ)なく散(ち)りて羽衣(はごろも)を
150脱(ぬ)いで捨(す)てたる枯木原(かれきはら)
151冬野(ふゆの)の如(ごと)くなりにけり
152秋(あき)の山野(やまの)を飾(かざ)りたる
153黄金姫(わうごんひめ)の紅葉(こうえう)も
154夕日(ゆふひ)に清照姫(きよてるひめ)の木(き)も
155今(いま)は全(まつた)く「ドツコイシヨ」
156憐(あは)れ果(は)かなくなりにけり
157小猿(こざる)の奴(やつ)に目(め)の玉(たま)を
158「ウントコドツコイ」引抜(ひきぬ)かれ
159吾(わが)師(し)の君(きみ)は嘸(さぞ)やさぞ
160残念(ざんねん)だらう無念(むねん)だらう
161「ヤツトコドツコイ ドツコイシヨ」
162足許(あしもと)用心(ようじん)するがよい
163高(たか)い石(いし)奴(め)が並(なら)んで居(ゐ)る
164小面(こづら)の憎(にく)い猿(さる)の奴(やつ)
165天(あめ)と地(つち)との経綸者(けいりんしや)
166万(よろづ)の物(もの)の霊長(れいちやう)と
167生(うま)れ出(い)でたる人間(にんげん)を
168馬鹿(ばか)にしやがる「ドツコイシヨ」
169どうしてこれが世(よ)の人(ひと)に
170話(はなし)がならうか恥(はづ)かしや
171三人(みたり)の供(とも)がありながら
172肝腎要(かんじんかなめ)のお師匠(ししやう)を
173「ウントコドツコイ」むごい目(め)に
174遇(あ)はして何(なん)と申(まを)し訳(わけ)
175神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
176御前(みまへ)に申(まを)し上(あ)げられよか
177思(おも)へば思(おも)へば腑甲斐(ふがひ)ない
178話(はなし)にならぬ御(お)供(とも)達(たち)
179これから何(いづ)れも気(き)をつけて
180吾(わが)師(し)の君(きみ)の身辺(しんぺん)を
181守(まも)らにやならぬ道公(みちこう)よ
182伊太公(いたこう)も確(しつか)りするがよい
183アイタヽタツタ躓(つまづ)いた
184厄介(やくかい)至極(しごく)の坂道(さかみち)だ
185うかうかしとれば玉(たま)の緒(を)の
186命(いのち)も取(と)られて仕舞(しま)ふぞよ
187こんなところで斃(くた)ばつて
188どうして天地(てんち)の神(かみ)様(さま)へ
189何(なん)と云(い)ひ訳(わけ)立(た)つものか
190「ウントコドツコイ コレワイナ」
191又々(またまた)きつい風(かぜ)が吹(ふ)く
192頭(あたま)の先(さき)から爪(つめ)の先(さき)
193腰(こし)の廻(まは)りに気(き)をつけて
194一歩(ひとあし)々々(ひとあし)力(ちから)籠(こ)め
195「ウントコドツコイ」此(この)坂(さか)を
196エンヤラヤツと下(くだ)らうか
197黄金姫(わうごんひめ)や清照姫(きよてるひめ)の
198貴(うづ)の司(つかさ)は此(この)坂(さか)を
199どうして下(くだ)つて往(ゆ)かれたか
200その御(ご)艱難(かんなん)こそ思(おも)ひやる
201照国別(てるくにわけ)の宣伝使(せんでんし)
202三人(みたり)の供(とも)と諸共(もろとも)に
203此所(ここ)を通(とほ)らせたまうたに
204違(ちが)ひあるまい「ウントコシヨ」
205キツト功名(こうみやう)お手柄(てがら)を
206七千(しちせん)余国(よこく)の国々(くにぐに)で
207お立(た)てなさるで厶(ござ)らうぞ
208何程(なにほど)大将(たいしやう)が偉(えら)うても
209附(つ)き添(そ)ふ奴(やつ)が悪(わる)ければ
210力(ちから)一(いつ)ぱい動(うご)けない
211純公(すみこう)さまの云(い)ふ事(こと)が
212お前(まへ)のお気(き)に触(さは)つたら
213直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
214決(けつ)して決(けつ)して悪(わる)い事(こと)は
215「ウントコドツコイ」云(い)はぬぞよ』
216 斯(か)く歌(うた)ひ乍(なが)ら、217八分(はちぶ)許(ばか)り毀(こは)れた祠(ほこら)の前(まへ)に下(くだ)りついた。
218玉国別(たまくにわけ)『お蔭(かげ)で目(め)の痛(いた)みも余程(よほど)軽減(けいげん)したが何(なん)だか些(すこ)し許(ばか)り頭(あたま)がメキメキして来(き)た。219幸(さいは)ひ此処(ここ)に広場(ひろば)があり、220毀(こぼ)れた祠(ほこら)が立(た)つて居(ゐ)る、221何神(なにがみ)様(さま)がお祭(まつ)りしてあるか知(し)らぬが、222此処(ここ)で一息(ひといき)して往(ゆ)かうぢやないか』
223道公(みちこう)『ハイ、224それが宜敷(よろし)う厶(ござ)いませう、225貴方(あなた)は御(ご)病症(びやうしやう)の御(おん)身(み)の上(うへ)、226無理(むり)をなさつてはいけませぬ。227今日(けふ)計(ばか)りでない明日(あす)も明後日(あさつて)もあるのですから、228緩(ゆる)りと御(ご)休息(きうそく)なさいませ。229道公(みちこう)も大変(たいへん)疲(つか)れましたからおつきあひを致(いた)しませう』
230 玉国別(たまくにわけ)は諾(うなづ)き乍(なが)ら蓑(みの)を大地(だいち)にパツと敷(し)いて其(その)上(うへ)にドツカと腰(こし)を下(おろ)し、231古祠(ふるほこら)の前(まへ)に両手(りやうて)を合(あは)せ、232天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し初(はじ)めた。233三(さん)人(にん)も同(おな)じく祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)する。
234玉国別(たまくにわけ)『何神(なにがみ)を祭(まつ)りし祠(ほこら)かしらねども
235いたいたしくもなりましにける。
236よし宮(みや)は毀(こは)れたりとも神実(かむざね)は
237常磐(ときは)堅磐(かきは)に鎮(しづ)まりまさむ。
238国治立(くにはるたちの)神(かみ)の命(みこと)も時(とき)を得(え)ず
239根底(ねそこ)の国(くに)に隠(かく)れましぬる。
240あゝ吾(われ)は神(かみ)の御恵(みめぐみ)蒙(かかぶ)りて
241此(この)地(ち)の上(うへ)に勇(いさ)み居(を)るかな。
242神(かみ)様(さま)の国(くに)に生(うま)れて神(かみ)様(さま)を
243斎(いつ)かぬ奴(やつ)ぞ醜(しこ)の曲津見(まがつみ)。
244この社(やしろ)見(み)るにつけても思(おも)ふかな
245天(あま)の日澄(ひす)みの宮(みや)は如何(いか)にと。
246エルサレム昔(むかし)の姿(すがた)消(き)え果(は)てて
247今(いま)は淋(さび)しき凩(こがらし)の吹(ふ)く。
248惟神(かむながら)神(かみ)が表(おもて)に現(あ)れまして
249世(よ)を治(をさ)めます時(とき)ぞ待(ま)たるる。
250吾(わが)思(おも)ふ心(こころ)の儘(まま)になるならば
251千木高(ちぎたか)知(し)れる宮居(みやゐ)を建(た)てむ。
252たてとほす誠(まこと)の道(みち)の強(つよ)ければ
253珍(うづ)の宮居(みやゐ)もやがて建(た)つべし。
254伏(ふ)し拝(をが)む祠(ほこら)の前(まへ)に涙(なみだ)して
255我(わが)大神(おほかみ)の行方(ゆくへ)しのばゆ。
256世(よ)をしのび人草(ひとぐさ)を救(すく)ふ素盞嗚(すさのを)の
257神(かみ)の命(みこと)ぞ尊(たふと)かりけり。
258自凝(おのころ)の島(しま)にまします国武彦(くにたけひこ)の
259神(かみ)の命(みこと)の慕(した)はしきかな。
260玉照彦(たまてるひこ)貴(うづ)の命(みこと)や玉照姫(たまてるひめ)
261如何(いかが)まさむと空(そら)を仰(あふ)ぎつ』
262道公(みちこう)『神(かみ)の道(みち)朝(あさ)な夕(ゆふ)なに進(すす)む身(み)は
263やがて届(とど)かむ勝利(しようり)の都(みやこ)へ。
264瑞御魂(みづみたま)厳(いづ)の御魂(みたま)と諸共(もろとも)に
265三五教(あななひけう)を築(きづ)きましけり。
266三五(あななひ)の道(みち)に仕(つか)へし吾(われ)なれば
267醜(しこ)の曲津(まがつ)の如何(いか)で襲(おそ)はむ。
268惟神(かむながら)神(かみ)より外(ほか)に何(なに)もなし
269親(おや)も子(こ)もなき吾(わが)身(み)なりせば』
270伊太公(いたこう)『吾(われ)は今(いま)神(かみ)の司(つかさ)に従(したが)ひて
271神(かみ)の大路(おほぢ)の坂(さか)歩(あゆ)むなり。
272此(この)祠(ほこら)如何(いか)なる神(かみ)のましますか
273知(し)らずながらも祈(いの)りたくなりぬ。
274いろいろと神(かみ)の御(おん)名(な)はかはれども
275国治立(くにはるたち)のみすゑなるらむ。
276皇神(すめかみ)よ行先(ゆくさき)幸(さき)く守(まも)りませ
277吾(わが)師(し)の君(きみ)の御(おん)身(み)はことさら。
278行(ゆ)く先(さき)に如何(いか)なる曲(まが)のさやるとも
279神(かみ)の息吹(いぶき)に払(はら)はせたまへ』
280純公(すみこう)『村肝(むらきも)の心(こころ)の月(つき)の清(きよ)ければ
281如何(いか)なる曲(まが)もさやらざらまし。
282三五(あななひ)の月(つき)の教(をしへ)を守(まも)りつつ
283月(つき)の御国(みくに)へ吾(われ)進(すす)むなり。
284月(つき)の国(くに)ハルナの都(みやこ)に蟠(わだかま)る
285八岐(やまた)大蛇(をろち)を如何(いか)に救(すく)はむ。
286曲神(まがかみ)も皆(みな)皇神(すめかみ)の御子(みこ)ならば
287吾(われ)等(ら)は如何(いか)で憎(にく)むべしやは』
288玉国別(たまくにわけ)『玉国別(たまくにわけ)神(かみ)の司(つかさ)は今日(けふ)よりは
289神(かみ)のまにまに進(すす)み往(ゆ)くべし。
290斎苑(いそ)館(やかた)神(かみ)の御言(みこと)を蒙(かかぶ)りて
291吾(われ)等(ら)四(よ)人(にん)は大道(おほぢ)ゆくなり。
292河鹿山(かじかやま)峰(みね)の嵐(あらし)は強(つよ)くとも
293如何(いか)で恐(おそ)れむ神(かみ)の兵士(つはもの)。
294吹(ふ)く風(かぜ)に煽(あふ)られながら進(すす)み行(ゆ)く
295神(かみ)の司(つかさ)ぞ雄々(をを)しかりけり。
296バラモンの軍(いくさ)の司(つかさ)行(ゆ)く先(さき)に
297攻(せ)め来(きた)るとも刃向(はむか)ふなゆめ。
298さり乍(なが)ら千騎(せんき)一騎(いつき)の時(とき)来(く)れば
299神(かみ)のゆるしを受(う)けて動(うご)かむ。
300動(うご)きなき玉(たま)の御柱(みはしら)撞固(つきかた)め
301愛善(あいぜん)の道(みち)伝(つた)へ行(ゆ)くなり』
302道公(みちこう)『皇神(すめかみ)の道(みち)にさやりし曲神(まがかみ)を
303言向(ことむ)け進(すす)む身(み)の幸(さち)楽(たの)しも。
304此(この)森(もり)の千歳(ちとせ)の松(まつ)に言(こと)とはむ
305国治立(くにはるたち)の神(かみ)の昔(むかし)を。
306此(この)森(もり)の千歳(ちとせ)の松(まつ)の物(もの)言(い)はば
307神代(かみよ)の昔(むかし)聞(き)かましものを。
308過(す)ぎ去(さ)りし昔(むかし)の夢(ゆめ)を辿(たど)りつつ
309夢(ゆめ)の浮世(うきよ)に長(なが)らへてゆく。
310現世(うつしよ)も又(また)幽世(かくりよ)も神(かみ)の世(よ)も
311すべ守(まも)ります国(くに)の祖神(おやがみ)。
312三五(あななひ)の道(みち)を立(た)てたる神柱(かむばしら)
313神(かむ)素盞嗚(すさのを)の尊(みこと)畏(かしこ)き。
314素盞嗚(すさのを)の瑞(みづ)の御魂(みたま)にかなひなば
315如何(いか)なる曲(まが)も背(そむ)かざるらむ。
316吾(われ)は今(いま)神(かみ)の恵(めぐみ)に守(まも)られて
317師(し)の君(きみ)に従(したが)ひ宣伝(せんでん)の旅(たび)行(ゆ)く。
318ゆく先(さき)は空(そら)照(て)り渡(わた)る月(つき)の国(くに)
319ハルナの都(みやこ)と聞(き)くは勇(いさ)まし』
320伊太公(いたこう)『暫(しばら)くは嵐(あらし)吹(ふ)けどもやがて又(また)
321花(はな)咲(さ)く春(はる)に遇(あ)はむと楽(たの)しむ。
322山々(やまやま)の諸木(もろき)の末(すゑ)に至(いた)るまで
323冬(ふゆ)ごもりして時(とき)をまつなり。
324田鶴(たづ)巣(すく)ふ此(こ)の松ケ枝(まつがえ)は夏冬(なつふゆ)の
325わかちも知(し)らに栄(さか)えけるかも。
326鶯(うぐひす)の谷(たに)の戸(と)あけて出(で)る春(はる)を
327まつも嬉(うれ)しき宣伝(せんでん)の旅(たび)。
328杜鵑(ほととぎす)八千八(はつせんや)声(こゑ)を鳴(な)き涸(か)らし
329黄金(こがね)花(はな)咲(さ)く秋(とき)をまちぬる。
330冬(ふゆ)来(き)ぬと目(め)にはさやかに見(み)えねども
331空(そら)吹(ふ)く風(かぜ)にそれと偲(しの)ばる。
332此(この)森(もり)に常磐(ときは)堅磐(かきは)に在(いま)す神(かみ)
333吾(われ)等(ら)を永久(とは)に守(まも)らせ給(たま)へ』
334純公(すみこう)『澄(す)み渡(わた)る秋(あき)の大空(おほぞら)眺(なが)むれば
335忽(たちま)ち起(おこ)る醜(しこ)の黒雲(くろくも)。
336時雨(しぐれ)して晴(は)れ往(ゆ)く後(あと)に初冬(はつふゆ)の
337月(つき)は御空(みそら)に輝(かがや)きにけり。
338日(ひ)は既(すで)に西山(にしやま)の端(は)に舂(うすづ)きて
339うら淋(さび)しくもなりにけらしな。
340さりながら神(かみ)の心(こころ)にかへりなば
341夜昼(よるひる)しらに賑(にぎは)しと思(おも)ふ。
342いざさらば吾(わが)師(し)の君(きみ)よ立(た)ち給(たま)へ
343やがては広(ひろ)き道(みち)に出(い)でまさむ』
344玉国別(たまくにわけ)『有難(ありがた)し眼(まなこ)の痛(いた)み今(いま)は早(はや)
345うち忘(わす)れたり神(かみ)の恵(めぐ)みに。
346いざさらば三人(みたり)の供(とも)よ神(かみ)の前(まへ)に
347祝詞(のりと)捧(ささ)げて立(た)ち出(い)で往(ゆ)かむ。
348有(あ)り難(がた)し尊(たふと)き神(かみ)の御(おん)前(まへ)に
349息(いき)やすめたる恵(めぐみ)を嬉(うれ)しむ。
350御恵(みめぐみ)の露(つゆ)は木(こ)の葉(は)の末(すゑ)までも
351きらめき渡(わた)る月(つき)の夜半(よは)なり。
352望(もち)の夜(よ)の月(つき)は御空(みそら)に出(い)でましぬ
353山蔭(やまかげ)あかくなりしと思(おも)へば』
354 斯(か)く歌(うた)ひ終(をは)り祠(ほこら)の神(かみ)に別(わか)れを告(つ)げ、355立(た)ち出(い)でむとする時(とき)しもあれ、356前方(ぜんぱう)より駒(こま)の蹄(ひづめ)の音(おと)騒々(さうざう)しく聞(きこ)え数百騎(すうひやくき)の兵士(つはもの)時々(じじ)刻々(こくこく)此方(こなた)をさして進(すす)み来(きた)る。357玉国別(たまくにわけ)外(ほか)三(さん)人(にん)は此(この)物音(ものおと)に耳(みみ)をすませ何者(なにもの)ならむと双手(もろて)を組(く)み思案(しあん)に暮(く)れて居(ゐ)た。358今(いま)の物音(ものおと)は大黒主(おほくろぬし)の部下(ぶか)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)の先鋒隊(せんぽうたい)が斎苑(いそ)の館(やかた)に向(むか)つて進軍(しんぐん)し来(きた)るのである。359あゝ玉国別(たまくにわけ)一行(いつかう)の運命(うんめい)は如何(いか)に成(な)り行(ゆ)くならむか。
360(大正一一・一一・二六 旧一〇・八 加藤明子録)
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