霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 失明(しつめい)〔一一五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻 篇:第1篇 狂風怪猿 よみ(新仮名遣い):きょうふうかいえん
章:第3章 失明 よみ(新仮名遣い):しつめい 通し章番号:1154
口述日:1922(大正11)年11月26日(旧10月8日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
猿たちは時々刻々に数をまし、じりじりと押し寄せてくる。伊太公や道公はどうにもできずに掛け合いをしている。玉国別は訓戒を始めた。
押し迫ってくる猿の一匹を、伊太公が押し倒した。すると猿たちは四方から四人に対して掻きついてきた。いっそう大きな白毛の猿は、玉国別の後ろから不意に目のあたりをかきむしった。
玉国別はあっと叫んでその場に打ち倒れた。三人は猿に向かって金剛杖を打ち振り防ぎ戦ったが、数万の猿は入れ替わり立ち替わり押し寄せ、力尽きてきた。
すると山岳が崩れるばかりの獅子の唸り声が響き渡り、猿たちは悲鳴を上げて一目散に逃げうせた。
杢助宣伝使が獅子を率いて助けてくれたのであった。杢助は宣伝歌に、風に肝を冷やして谷間に隠れ、しばらくの安きを盗んだ愚かさによって、玉国別は天罰を被ったのだ、と厳しく一行を諭した。
一同は、巨大な獅子に乗った時置師神の雄姿を伏し拝んで涙を流した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-05-05 00:59:00 文字数:3390 OBC :rm4303
愛善世界社版:34頁 八幡書店版:第8輯 41頁 修補版: 校定版:36頁 普及版:14頁 初版: ページ備考:
001 伊太公(いたこう)の膏汗(あぶらあせ)を流(なが)しての飛(と)び切(き)り上等(じやうとう)舶来(はくらい)と称(しよう)する宣伝歌(せんでんか)も寸効(すんかう)なく尾長猿(をながざる)、002手長猿(てながざる)の群(むれ)は時々(じじ)刻々(こくこく)に其(その)数(すう)を増(ま)し、003チクリチクリと一行(いつかう)の身辺(しんぺん)に押(お)し寄(よ)せ来(きた)る。
004道公(みちこう)『オイ俄(にはか)宣伝使(せんでんし)の伊太公(いたこう)、005偉(えら)さうに仰有(おつしや)つたが、006根(ね)つから言霊(ことたま)は利(き)いたやうにないぢやありませぬか。007猿(さる)の人真似(ひとまね)をして掻(か)き廻(まは)すものだからサツパリ猿公(ゑんこう)、008立(た)ち去(さ)る気配(けはい)もトンとないぢやないか、009猿智慧(さるぢゑ)奴(やつこ)さん』
010伊太公(いたこう)『暫(しばら)く吾輩(わがはい)に与(あた)ふるに時(とき)をもつてせよぢや……「猿冠者(さるくわんじや)の猿智慧(さるぢゑ)と聞(き)きしに勝(まさ)る真柴(ましば)久吉(ひさよし)」だ……おれや太閤(たいかう)さまぢやぞ、011「大功(たいこう)は細瑾(さいきん)を顧(かへり)みず」だ、012なんぼ猿公(ゑんこう)が最近(さいきん)へ寄(よ)せて来(き)ても顧(かへり)みないと云(い)ふのが英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)の心事(しんじ)だ』
013道公(みちこう)『どれ此(こ)の道公(みちこう)が一(ひと)つ猿(さる)に道(みち)を伝(つた)へ血路(けつろ)を開(ひら)かしてやらう。014貴様(きさま)のやり方(かた)とは些(ちつ)と製造法(せいざうはふ)が違(ちが)ふのだからよく聞(き)いたらよからう、015猿(さる)とは猿(さる)とは困(こま)つた代者(しろもの)だな。016今年(ことし)は庚申(かうしん)の年(とし)だから、017さう猿(さる)をボロクソに云(い)つては猿公(さるこう)だつて承知(しようち)しないぞ。018今年(ことし)は吾々(われわれ)も猿公(さるこう)さまの御(ご)守護(しゆご)を受(う)けて居(ゐ)るのぢやからなア。019さうして俺(おれ)も申(さる)の年(とし)の申(さる)の月(つき)の申(さる)の日(ひ)の申(さる)の刻(こく)に生(うま)れたのだからなア、020四輪(しりん)揃(そろ)うた道公(みちこう)ぢや、021三輪(さんりん)揃(そろ)うたら天下(てんか)の長者(ちやうじや)になると云(い)ふ位(くらゐ)だのに、022此(この)方(はう)は猿(さる)が四(よつ)つも揃(そろ)うて、023「サル者(もの)あり」と生(うま)れて来(き)た俺(おれ)ぢやから、024猿(さる)だつて全然(ぜんぜん)他人(たにん)ぢやない。025きつと降服(かうふく)して此(この)場(ば)を立(た)ち去(さ)るにきまつて居(ゐ)るわい。026ナア玉国別(たまくにわけ)様(さま)あんな仕様(しやう)もない歌(うた)を歌(うた)つたつて、027如何(いか)に畜生(ちくしやう)だつて去(さ)るものですか、028どうぞ私(わたし)に一(ひと)つ特別製(とくべつせい)の意匠(いしやう)登録(とうろく)を得(え)た宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)はして下(くだ)さいな』
029玉国別(たまくにわけ)『待(ま)て待(ま)て、030お前(まへ)達(たち)は猿智慧(さるぢゑ)だから困(こま)る。031俺(おれ)が一(ひと)つ此処(ここ)で訓戒(くんかい)をするから、032それをよく腹(はら)へ入(い)れて其(その)上(うへ)で何(なん)とか考(かんが)へたら宜(よ)からう。
033第一(だいいち)、034未申(ひつじさる)の金神(こんじん)瑞(みづ)の御霊(みたま)の御教(みをしへ)を忘(わす)れざる事(こと)
035一(ひとつ)、036汝(なんぢ)が心(こころ)の垢(あか)をさる事(こと)
037一(ひとつ)、038邪悪(じやあく)分子(ぶんし)を根底(こんてい)よりさる事(こと)
039一(ひとつ)、040総(すべ)ての悪事(あくじ)災難(さいなん)を払(はら)ひさるについては大(おほい)に神心(かみごころ)に帰(かへ)らざる可(べ)からざる事(こと)
041一(ひとつ)、042一糸(いつし)みだれざる底(てい)の信仰心(しんかうしん)をもつて奮起(ふんき)せざる可(べ)からざる事(こと)
043一(ひとつ)、044天地(てんち)人道(じんだう)に背(そむ)かざる事(こと)
045一(ひとつ)、046外(はづ)れざる事(こと)
047一(ひとつ)、048違(たが)はざる事(こと)
049一(ひとつ)、050至誠(しせい)一貫(いつくわん)万世(ばんせい)朽(く)ちざる香(かんば)しき名(な)を伝(つた)ふる事(こと)
051一(ひとつ)、052天下(てんか)の為(ため)には地位(ちゐ)、053名望(めいばう)、054財産(ざいさん)、055生命(せいめい)も敢(あへ)て惜(をし)まざる事(こと)
056一(ひとつ)、057至誠(しせい)天地(てんち)に恥(は)ぢざる行(おこな)ひを為(な)す事(こと)
058一(ひとつ)、059善(ぜん)をなす為(た)めには如何(いか)なる妨害(ばうがい)にも屈(くつ)せざる事(こと)
060一(ひとつ)、061肉体(にくたい)は仮令(たとへ)死(し)すとも霊魂(れいこん)は永遠(ゑいゑん)に死(し)せざる真理(しんり)を悟(さと)る事(こと)
062一(ひとつ)、063大業(たいげふ)を成(な)すに当(あた)つては千苦(せんく)万難(ばんなん)に撓(たゆ)まざる事(こと)
064一(ひとつ)、065道(みち)のためには屈(くつ)せざる事(こと)
066一(ひとつ)、067勁敵(けいてき)に遇(あ)ふとも退却(たいきやく)せざる事(こと)
068一(ひとつ)、069弱(よわ)らざる事(こと)
070一(ひとつ)、071決(けつ)して何事(なにごと)にも悲観(ひくわん)せざる事(こと)
072一(ひとつ)、073勇気(ゆうき)を鼓(こ)して如何(いか)なる失敗(しつぱい)をも挽回(ばんくわい)せざる可(べ)からざる事(こと)
074一(ひとつ)、075人欲(じんよく)のために心(こころ)を乱(みだ)さざる事(こと)
076一(ひとつ)、077総(すべ)ての生物(せいぶつ)を苦(くる)しめざる事(こと)
078一(ひとつ)、079佯(いつは)らざる事(こと)
080一(ひとつ)、081罵(ののし)らざる事(こと)
082一(ひとつ)、083欺(あざむ)かざる事(こと)
084一(ひとつ)、085人(ひと)の成功(せいこう)を嫉(ねた)まざる事(こと)
086一(ひとつ)、087人(ひと)の業(げふ)を妨(さまた)げざる事(こと)
088一(ひとつ)、089奪(うば)はざる事(こと)
090一(ひとつ)、091傷(きず)つけざる事(こと)
092一(ひとつ)、093殺(ころ)さざる事(こと)
094一(ひとつ)、095媚(こ)び諂(へつら)はざる事(こと)
096一(ひとつ)、097酒色(しゆしよく)を好(この)まざる事(こと)
098一(ひとつ)、099道(みち)に外(はづ)れざる事(こと)
100一(ひとつ)、101世界(せかい)の進運(しんうん)に後(おく)れざる事(こと)
102一(ひとつ)、103何事(なにごと)にも成功(せいこう)を急(いそ)がざる事(こと)
104一(ひとつ)、105暴富(ばうふ)を望(のぞ)まざる事(こと)
106一(ひとつ)、107貧乏(びんばふ)を憂(うれ)へざる事(こと)
108一(ひとつ)、109漫(みだり)に竹木(ちくぼく)を伐(き)らざる事(こと)
110一(ひとつ)、111軽挙(けいきよ)妄動(もうどう)せざる事(こと)
112一(ひとつ)、113人(ひと)を攻撃(こうげき)せざる事(こと)
114一(ひとつ)、115悪所(あくしよ)に足(あし)を踏(ふ)み入(い)れざる事(こと)
116一(ひとつ)、117日々(ひび)の職務(しよくむ)を怠(おこた)らざる事(こと)
118一(ひとつ)、119四恩(しおん)を忘(わす)れざる事(こと)
120一(ひとつ)、121衣食(いしよく)に驕(おご)らざる事(こと)
122一(ひとつ)、123何事(なにごと)にも怒(おこ)らざる事(こと)
124一(ひとつ)、125物(もの)に動(どう)ぜざるやう常(つね)に心胆(しんたん)を錬磨(れんま)する事(こと)
126一(ひとつ)、127欲(よく)のため危(あやふ)きに近寄(ちかよ)らざる事(こと)
128一(ひとつ)、129敵(てき)を恨(うら)まざる事(こと)
130一(ひとつ)、131迷信(めいしん)に陥(おちい)らざる事(こと)
132一(ひとつ)、133神明(しんめい)に仕(つか)へ奉(まつ)る身(み)は常(つね)に清潔(せいけつ)を尊(たふと)び、134汚(けが)れざるやう注意(ちうい)せざるべからざる事(こと)
135一(ひとつ)、136終始(しうし)一貫(いつくわん)初一念(しよいちねん)を変(へん)ぜざる事(こと)
137一(ひとつ)、138異端(いたん)邪説(じやせつ)に惑(まど)はざる事(こと)
139一(ひとつ)、140現代(げんだい)の悪思想(あくしさう)に染(そ)まざる事(こと)
141一(ひとつ)、142吾(わが)良心(りやうしん)を欺(あざむ)かざる事(こと)
143一(ひとつ)、144物(もの)云(い)ふ花(はな)に狂(くる)はざる事(こと)
145一(ひとつ)、146惟神(かむながら)の大道(おほみち)を外(はづ)さざる事(こと)
147一(ひとつ)、148総(すべ)ての事(こと)に騒(さわ)がざる事(こと)
149一(ひとつ)、150人(ひと)の悪事(あくじ)を摘発(てきはつ)せざる事(こと)
151一(ひとつ)、152義理(ぎり)人情(にんじやう)を捨(す)てざる事(こと)
153一(ひとつ)、154長上(ちやうじやう)に対(たい)し反感(はんかん)の念(ねん)をもたざる事(こと)
155一(ひとつ)、156産土(うぶすな)神社(じんしや)へ信仰(しんかう)を怠(をこた)らざる事(こと)
157一(ひとつ)、158衛生(ゑいせい)に注意(ちうい)し病(やまひ)にかからざるやう注意(ちうい)すべき事(こと)
159一(ひとつ)、160如何(いか)なる憂目(うきめ)に遇(あ)ふとも決(けつ)して泣(な)き悲(かな)しまざる事(こと)
161一(ひとつ)、162禽獣(きんじう)の精神(せいしん)に劣(おと)らざるやう身魂(みたま)をみがく事(こと)
163一(ひとつ)、164交際(かうさい)に貴賤(きせん)貧富(ひんぷ)の別(べつ)を立(た)てざる事(こと)
165一(ひとつ)、166猿(さる)共(ども)に揶揄(からか)はざる事(こと)
167一(ひとつ)、168何事(なにごと)も見(み)ざる、169聞(き)かざる、170云(い)はざるの三猿(さんゑん)主義(しゆぎ)を取(と)る事(こと)
171マアざつと如上(じよじやう)の条項(でうかう)を守(まも)り、172減(へ)らず口(ぐち)を叩(たた)かず、173法螺(ほら)を吹(ふ)かず、174沈黙(ちんもく)を守(まも)り、175禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)の末(すゑ)に至(いた)る迄(まで)、176其(その)徳(とく)に悦服(えつぷく)するやう注意(ちうい)をせなくてはなりませぬぞ』
177伊太公(いたこう)『何(なん)とまあサルだのザルだのと、178ザル籠(かご)に這入(はい)らぬ程(ほど)陳列(ちんれつ)なさいましたなア。179さう云(い)はれて仕舞(しま)へばモウこれからは吾々(われわれ)は唖(おし)とならなくては仕方(しかた)がありませぬワ。180ほんとに惜(をし)い事(こと)で厶(ござ)いますわい』
181道公(みちこう)『それ見(み)たか伊太公(いたこう)、182偉(えら)さうに云(い)つても忽(たちま)ち箝口令(かんこうれい)を布(し)かれて仕舞(しま)へば、183チウの声(こゑ)も揚(あが)らぬぢやないか、184本当(ほんたう)に困(こま)つたものぢやのう』
185伊太公(いたこう)『コリヤコリヤ道公(みちこう)、186今(いま)宣伝使(せんでんし)が「罵(ののし)らざる事(こと)」と仰有(おつしや)つたぢやないか。187あれ見(み)よ猿(さる)の奴(やつ)あまりに宣伝使(せんでんし)がサルだのザルだのと仰有(おつしや)るものだから得意(とくい)になつて益々(ますます)接近(せつきん)して来(く)るぢやないか』
188道公(みちこう)『何(なあ)に猿(さる)はサルとしての、189一(ひと)つの考案(かうあん)があつて押寄(おしよ)せて来(く)るのだ。190何(なん)と云(い)つても道公(みちこう)の様(やう)な好男子(かうだんし)が厶(ござ)るものだからなア。191あの猿(さる)は決(けつ)して雄(をす)ばかりぢやない、192雌(めす)だつて沢山(たくさん)居(を)るからなア』
193伊太公(いたこう)『アハヽヽヽ、194好男子(かうだんし)が聞(き)いて呆(あき)れるわい。195「講談師(かうだんし)見(み)て来(き)たやうな嘘(うそ)を云(い)ひ」と云(い)つて目(め)に見(み)えた嘘(うそ)を云(い)ふぢやないか。196貴様(きさま)の顔(かほ)は猿(さる)に似(に)て居(ゐ)るから自分(じぶん)達(たち)の仲間(なかま)ぢやと思(おも)つて寄(よ)つて来(く)るのだよ』
197道公(みちこう)『何(なに)、198俺(おれ)が猿(さる)に似(に)とるのぢやない、199猿(さる)の方(はう)から俺(おれ)に似(に)てけつかるのだ。200アハヽヽ』
201伊太公(いたこう)『どつちから似(に)て居(ゐ)ても同(おな)じ事(こと)ぢやないかそれそれ、202身動(みうご)きもならぬ程(ほど)近(ちか)くへやつて来(き)やがつた。203えゝコン畜生(ちくしやう)、204ちつとそつちへ行(ゆ)かぬかい』
205と伊太公(いたこう)は力(ちから)に任(まか)して間近(まぢか)にやつて来(き)た猿(さる)を押倒(おしたふ)した。206猿(さる)の群(むれ)は俄(にはか)にキヤツキヤツと叫(さけ)び出(だ)し、207彼方(あちら)の山(やま)の端(はし)からも此方(こちら)の山(やま)の端(はし)からも幾万(いくまん)とも知(し)れない猿(さる)の数(かず)となり四(よ)人(にん)に向(むか)ひ金切声(かなきりごゑ)を出(だ)して掻(か)きつく、208武者振(むしやぶり)つく、209後(うしろ)の方(はう)の猿(さる)は石(いし)を拾(ひろ)つて巧(たくみ)になげつける。210四(よ)人(にん)は衆寡(しうくわ)敵(てき)せず、211一生(いつしやう)懸命(けんめい)に正当(せいたう)防衛(ばうゑい)に力(ちから)を尽(つく)して居(ゐ)る。212ノソリノソリと後(うしろ)の方(はう)からやつて来(き)た、213一層(いつそう)大(おほ)きな白毛(はくまう)の猿(さる)は玉国別(たまくにわけ)の後(うしろ)より不意(ふい)に目(め)のあたりをかきむしつた。214玉国別(たまくにわけ)はアツと叫(さけ)んで其(その)場(ば)に打倒(うちたふ)れた。215三(さん)人(にん)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)に猿(さる)に向(むか)つて金剛杖(こんがうづゑ)を打(う)ち振(ふ)り防(ふせ)ぎ戦(たたか)へど、216数万(すうまん)の猿(さる)は入(い)り替(か)はり立(た)ち替(か)はり押寄(おしよ)せ来(きた)るに力(ちから)尽(つ)き今(いま)や危(あやふ)くなつて来(き)た。217時(とき)しもあれ山岳(さんがく)も崩(くづ)るる許(ばか)りの獅子(しし)の唸(うな)り声(ごゑ)、218ウーウーと響(ひび)き渡(わた)る。219此(この)声(こゑ)に数万(すうまん)の猿群(ゑんぐん)はキヤツキヤツと悲鳴(ひめい)をあげ一目散(いちもくさん)に逃(に)げ失(う)せて仕舞(しま)つた。
220 いづくともなく宣伝歌(せんでんか)の声(こゑ)爽(さはや)かに聞(きこ)え来(く)る。
221(時置師神)『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
222玉国別(たまくにわけ)の一行(いつかう)は
223尊(たふと)き使命(しめい)を忘却(ばうきやく)し
224尾上(をのへ)を渡(わた)る荒風(あらかぜ)に
225肝(きも)を冷(ひや)してぶるぶると
226慄(ふる)ひ戦(をのの)き懐(ふところ)の
227谷間(たにま)に隠(かく)れ暫(しばら)くの
228安(やす)きを盗(ぬす)みし愚(おろ)かさよ
229天罰(てんばつ)忽(たちま)ち報(むく)い来(き)て
230人(ひと)にもあらぬ猿(さる)の群(むれ)
231責(せ)めなやまされ両眼(りやうがん)を
232掻(か)きやぶられし浅(あさ)はかさ
233吾(われ)は杢助(もくすけ)宣伝使(せんでんし)
234汝(なんぢ)一行(いつかう)の旅立(たびだち)を
235心(こころ)に案(あん)じわづらひつ
236獅子(しし)の背中(せなか)に跨(またが)りて
237後(あと)追(お)ひ来(きた)り眺(なが)むれば
238悲惨(ひさん)至極(しごく)のていたらく
239三五教(あななひけう)の面汚(つらよご)し
240天地(てんち)の神(かみ)に如何(いか)にして
241此(この)失策(しつさく)を謝罪(しやざい)する
242月日(つきひ)にたとへし両眼(りやうがん)を
243掻(か)きやぶられし宣伝使(せんでんし)
244心(こころ)の眼(まなこ)くらみなば
245神(かみ)の光(ひかり)も知(し)らぬ火(ひ)の
246浪間(なみま)に漂(ただよ)ふ如(ごと)くなり
247あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
248誠(まこと)の心(こころ)に立(た)ち帰(かへ)り
249心(こころ)の駒(こま)の手綱(たづな)をば
250引(ひ)きしめ引(ひ)きしめ大神(おほかみ)の
251勅(みこと)のままに逸早(いちはや)く
252月(つき)の御国(みくに)に猛進(まうしん)し
253神(かみ)の依(よ)さしの神業(かむわざ)を
254一日(ひとひ)も早(はや)くなし遂(と)げよ
255たとへ眼(まなこ)はやぶるとも
256神(かみ)の御守(みまも)りある上(うへ)は
257霊(たま)は開(ひら)けて天国(てんごく)の
258救(すく)ひの道(みち)を安々(やすやす)と
259此(この)地(ち)の上(うへ)に開設(かいせつ)し
260天(あめ)と地(つち)との経綸(けいりん)の
261司(つかさ)と仕(つか)へ得(え)らるべし
262朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
263月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
264星(ほし)は天(てん)より落(お)つるとも
265浜(はま)の真砂(まさご)は尽(つ)くるとも
266神(かみ)の依(よ)さしの言(こと)の葉(は)は
267決(けつ)して背(そむ)く事(こと)なかれ
268此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
269心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
270直日(なほひ)の霊(みたま)幸倍(さちは)ひて
271曇(くも)りし汝(なれ)が魂(たましひ)の
272眼(まなこ)を開(ひら)き助(たす)くべし
273いざいざさらば いざさらば
274吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)も恐(おそ)れなく
275虎(とら)狼(おほかみ)の襲来(しふらい)も
276臆(おく)せず屈(くつ)せず道(みち)のため
277一(いち)時(じ)も早(はや)く進(すす)めかし
278あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
279御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ』
280と歌(うた)ひ終(をは)るや、281忽然(こつぜん)として四(よ)人(にん)の前(まへ)に現(あら)はれたのは、282巨大(きよだい)なるライオンに跨(またが)つた時置師(ときおかし)の神(かみ)の姿(すがた)であつた。283玉国別(たまくにわけ)は両眼(りやうがん)を潰(つぶ)され、284打(う)ち伏(ふ)して宣伝歌(せんでんか)の声(こゑ)のみを謹聴(きんちやう)して居(ゐ)た。285道公(みちこう)、286伊太公(いたこう)、287純公(すみこう)の三(さん)人(にん)は時置師(ときおかしの)神(かみ)の雄姿(ゆうし)を伏拝(ふしをが)み、288滂沱(ばうだ)たる涙(なみだ)を腮辺(しへん)に漂(ただよ)はして居(ゐ)る。289時置師(ときおかしの)神(かみ)は疾風(しつぷう)迅雷(じんらい)の如(ごと)く、290獅子(しし)に跨(またが)り嶮(けは)しき山(やま)を踏(ふ)み越(こ)えていづこともなく姿(すがた)を隠(かく)したり。
291(大正一一・一一・二六 旧一〇・八 加藤明子録)
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