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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第43巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 狂風怪猿
第1章 烈風
第2章 懐谷
第3章 失明
第4章 玉眼開
第5章 感謝歌
第2篇 月下の古祠
第6章 祠前
第7章 森議
第8章 噴飯
第9章 輸入品
第3篇 河鹿の霊嵐
第10章 夜の昼
第11章 帰馬
第12章 双遇
第4篇 愛縁義情
第13章 軍談
第14章 忍び涙
第15章 温愛
第5篇 清松懐春
第16章 鰌鍋
第17章 反歌
第18章 石室
余白歌
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舎身活躍(第37~48巻)
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第43巻(午の巻)
> 第4篇 愛縁義情 > 第14章 忍び涙
<<< 軍談
(B)
(N)
温愛 >>>
第一四章
忍
(
しの
)
び
涙
(
なみだ
)
〔一一六五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻
篇:
第4篇 愛縁義情
よみ(新仮名遣い):
あいえんぎじょう
章:
第14章 忍び涙
よみ(新仮名遣い):
しのびなみだ
通し章番号:
1165
口述日:
1922(大正11)年11月28日(旧10月10日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-01-10 12:40:38
OBC :
rm4314
愛善世界社版:
222頁
八幡書店版:
第8輯 109頁
修補版:
校定版:
232頁
普及版:
96頁
初版:
ページ備考:
001
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
には
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
敵味方
(
てきみかた
)
頤
(
あご
)
の
紐
(
ひも
)
を
解
(
ほど
)
いて
他愛
(
たあい
)
もなく
笑
(
わら
)
ひ
興
(
きよう
)
じてゐる。
002
五三公
(
いそこう
)
『ヤア
随分
(
ずゐぶん
)
バラモン
教
(
けう
)
にも
面白
(
おもしろ
)
い
男
(
をとこ
)
が
混入
(
こんにふ
)
してゐるね。
003
俺
(
おれ
)
も
今日
(
けふ
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
睾丸
(
きんたま
)
の
皺伸
(
しわのば
)
しをしたよ。
004
旅
(
たび
)
と
云
(
い
)
ふものは
愉快
(
ゆくわい
)
なものだなア』
005
マツ
公
(
こう
)
『
俺
(
おれ
)
だつてこんな
面白
(
おもしろ
)
い
動物
(
どうぶつ
)
に
出会
(
であ
)
つたのは
今日
(
けふ
)
が
初
(
はじ
)
めてだ。
006
チツトも
戦争
(
せんそう
)
気分
(
きぶん
)
がせないわ。
007
まるで
喜劇
(
きげき
)
をロハで
見
(
み
)
てゐるやうだつた。
008
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
009
俺
(
おれ
)
も
秘書役
(
ひしよやく
)
を
止
(
や
)
めて
喜劇師
(
きげきし
)
となりハルナの
都
(
みやこ
)
の
大劇場
(
だいげきぢやう
)
で
一
(
ひと
)
つ
腕
(
うで
)
を
揮
(
ふる
)
つて
見度
(
みた
)
くなつた』
010
五三公
(
いそこう
)
『そりや
貴様
(
きさま
)
のスタイルと
云
(
い
)
ひ、
011
饒舌
(
ぜうぜつ
)
と
云
(
い
)
ひ、
012
気転
(
きてん
)
の
利
(
き
)
く
点
(
てん
)
から
滑稽
(
こつけい
)
諧謔
(
かいぎやく
)
を、
013
のべつ
幕
(
まく
)
なしに
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
てる
点
(
てん
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
見上
(
みあ
)
げたものだ。
014
屹度
(
きつと
)
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
役者
(
やくしや
)
になれるかも
知
(
し
)
れぬよ』
015
マツ
公
(
こう
)
『ナーニ
駄目
(
だめ
)
だ。
016
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
を
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
(
占領
(
せんりやう
)
)
役者
(
やくしや
)
と
出掛
(
でか
)
けた
処
(
ところ
)
、
017
こんな
嵐
(
あらし
)
に
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らされ、
018
惨
(
みぢ
)
めな
敗軍
(
はいぐん
)
をやつたのだからな』
019
五三公
(
いそこう
)
『さうだから
貴様
(
きさま
)
は
軍人
(
ぐんじん
)
には
適
(
てき
)
しないのだ。
020
如何
(
どう
)
しても
役者
(
やくしや
)
代物
(
しろもの
)
だよ』
021
マツ
公
(
こう
)
『さうかな、
022
何
(
なん
)
だか
俺
(
おれ
)
もさう
聞
(
き
)
くと
役者
(
やくしや
)
を
志願
(
しぐわん
)
したくなつた。
023
こんな
殺風景
(
さつぷうけい
)
な、
024
何時
(
いつ
)
首
(
くび
)
が
飛
(
と
)
ぶかも
知
(
し
)
れぬ
様
(
やう
)
な
危険
(
きけん
)
千万
(
せんばん
)
な
商売
(
しやうばい
)
は
嫌
(
いや
)
になつて
了
(
しま
)
つたよ』
025
五三公
(
いそこう
)
『そんなら
俺
(
おれ
)
と
此処
(
ここ
)
で
会
(
あ
)
うたのも
何
(
なに
)
かの
因縁
(
いんねん
)
だらうから、
026
一
(
ひと
)
つ
奮発
(
ふんぱつ
)
して
改心
(
かいしん
)
とでかけ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
となつたら
如何
(
どう
)
だ。
027
修業
(
しうげふ
)
が
出来
(
でき
)
た
上
(
うへ
)
は
又
(
また
)
宣伝使
(
せんでんし
)
となれぬとも
限
(
かぎ
)
らぬからな』
028
マツ
公
(
こう
)
『ヤ、
029
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
も
駄目
(
だめ
)
だ。
030
猿
(
さる
)
に
目
(
め
)
を
引
(
ひつ
)
かかれたり、
031
捕虜
(
とりこ
)
にせられて
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
へ
打
(
ぶ
)
ち
込
(
こ
)
まれる
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
になると、
032
さつぱり
詮
(
つま
)
らぬからな、
033
アハヽヽヽ』
034
純公
(
すみこう
)
は
膝
(
ひざ
)
をにじり
寄
(
よ
)
り、
035
グツとマツ
公
(
こう
)
の
右手
(
めて
)
を
握
(
にぎ
)
り
声
(
こゑ
)
を
慄
(
ふる
)
はして、
036
純公
『
何
(
なに
)
、
037
貴様
(
きさま
)
、
038
誰
(
たれ
)
にそんな
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いたのだ。
039
チと
可笑
(
をか
)
しいぢやないか。
040
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
此処
(
ここ
)
で
白状
(
はくじやう
)
しろ』
041
マツ
公
(
こう
)
『
誰
(
たれ
)
にも
聞
(
き
)
きやせぬわい。
042
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
供
(
とも
)
して
居
(
ゐ
)
た
伊太公
(
いたこう
)
を
捕虜
(
ほりよ
)
にして
訊問
(
じんもん
)
した
所
(
ところ
)
、
043
俺
(
おれ
)
の
先生
(
せんせい
)
の
玉国別
(
たまくにわけ
)
さまは
猿
(
さる
)
に
目
(
め
)
を
引掻
(
ひつか
)
かれたと
白状
(
はくじやう
)
したのだよ』
044
純公
(
すみこう
)
『その
伊太公
(
いたこう
)
は
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
に
居
(
ゐ
)
るのだ。
045
貴様
(
きさま
)
知
(
し
)
つてるだらう。
046
サア
早
(
はや
)
く
白状
(
はくじやう
)
せぬかい』
047
マツ
公
(
こう
)
『そりや
知
(
し
)
つてる。
048
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
から
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
れと
云
(
い
)
はれてゐるのだから
如何
(
どう
)
しても
所在
(
ありか
)
は
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないわい。
049
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
生命
(
いのち
)
には
別条
(
べつでう
)
ないから
安心
(
あんしん
)
するが
宜
(
よ
)
からう。
050
彼奴
(
あいつ
)
は
何
(
なん
)
でも
尋
(
たづ
)
ねされすればベラベラ
喋
(
しやべ
)
るから
大変
(
たいへん
)
重宝
(
ちようほう
)
だと
云
(
い
)
つてバラモン
教
(
けう
)
の
連中
(
れんちう
)
が
岩窟
(
いはや
)
に
入
(
い
)
れ
毎日
(
まいにち
)
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
まして
酔
(
よ
)
はして
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
皆
(
みんな
)
して
聞
(
き
)
く
事
(
こと
)
にしてゐるのだ。
051
あんなに
口
(
くち
)
の
軽
(
かる
)
い
奴
(
やつ
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つたものだね。
052
尋
(
たづ
)
ねもせぬのに
猿
(
さる
)
に
掻
(
か
)
かれた
事
(
こと
)
もベラベラ
喋
(
しやべ
)
つて
了
(
しま
)
つたのだ。
053
さうだから
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
も
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
も
玉国別
(
たまくにわけ
)
が
負傷
(
ふしやう
)
したと
聞
(
き
)
いて
大安心
(
だいあんしん
)
の
体
(
てい
)
で
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
つて
行
(
い
)
つたのだ。
054
さうした
処
(
ところ
)
が
前門
(
ぜんもん
)
の
狼
(
おほかみ
)
は
弱
(
よわ
)
りよつたが
後門
(
こうもん
)
の
虎
(
とら
)
に
出会
(
でくは
)
し
昨日
(
ゆうべ
)
のあの
敗軍
(
はいぐん
)
だ』
055
純公
(
すみこう
)
『
何
(
なん
)
と
貴様
(
きさま
)
も
尋
(
たづ
)
ねもせぬ
事
(
こと
)
に
秘密
(
ひみつ
)
をベラベラ
喋
(
しやべ
)
るぢやないか。
056
伊太公
(
いたこう
)
以上
(
いじやう
)
だぞ』
057
マツ
公
(
こう
)
『ナニ、
058
斯
(
か
)
うして
貴様
(
きさま
)
等
(
たち
)
と
兄弟
(
きやうだい
)
同様
(
どうやう
)
になつたのだから、
059
それ
位
(
ぐらゐ
)
の
秘密
(
ひみつ
)
は
喋
(
しやべ
)
つたつて
宜
(
い
)
いぢやないか。
060
怪我
(
けが
)
もしとらぬ
足
(
あし
)
を
癒
(
なほ
)
して
呉
(
く
)
れた
親切
(
しんせつ
)
なお
前
(
まへ
)
だからな、
061
アハヽヽヽ』
062
五三公
(
いそこう
)
『そこ
迄
(
まで
)
打解
(
うちと
)
けた
以上
(
いじやう
)
は
伊太公
(
いたこう
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らしても
宜
(
い
)
いぢやないか。
063
どつと
奮発
(
ふんぱつ
)
して
祠
(
ほこら
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
へ
寄附
(
きふ
)
すると
思
(
おも
)
つて
伊太公
(
いたこう
)
の
所在
(
ありか
)
を
奏上
(
そうじやう
)
せぬかい。
064
御
(
ご
)
神殿
(
しんでん
)
に……エーン』
065
マツ
公
(
こう
)
『オイ、
066
タツ
公
(
こう
)
、
067
如何
(
どう
)
しようかな。
068
何
(
なん
)
だか
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
に
済
(
す
)
まない
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がするぢやないか』
069
タツ
公
(
こう
)
『ウン
何
(
なん
)
だか
不徳義
(
ふとくぎ
)
の
様
(
やう
)
で
言
(
い
)
はれないな。
070
秘密
(
ひみつ
)
の
守
(
まも
)
れぬ
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
は
男子
(
をとこ
)
でないからな』
071
純公
(
すみこう
)
『そんな
出
(
だ
)
し
惜
(
をし
)
みをせずに
打
(
う
)
たぬ
博奕
(
ばくち
)
に
負
(
ま
)
けたと
思
(
おも
)
つてどうだ、
072
アツサリと
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れたら。
073
俺
(
おれ
)
だつて
友達
(
ともだち
)
の
難儀
(
なんぎ
)
をジツとして
見逃
(
みのが
)
す
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かぬからな』
074
マツ
公
(
こう
)
『ウン、
075
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふのなら
言
(
い
)
つてやつてもいいが、
076
最前
(
さいぜん
)
のやうに
頭抑
(
あたまおさ
)
へに
白状
(
はくじやう
)
せいなどと
呶鳴
(
どな
)
りつけると、
077
俺
(
おれ
)
だつて
少
(
すこ
)
し
腹
(
はら
)
に
虫
(
むし
)
があるから、
078
云
(
い
)
ひ
度
(
た
)
くても
云
(
い
)
へぬぢやないか』
079
純公
(
すみこう
)
『いや
済
(
す
)
まなかつた。
080
そら、
081
さうぢや、
082
人間
(
にんげん
)
は
感情
(
かんじやう
)
の
動物
(
どうぶつ
)
だからな、
083
矢張
(
やつぱり
)
穏
(
おだや
)
かに
下
(
した
)
から
出
(
で
)
て
掛合
(
かけあ
)
ふのが
利益
(
りえき
)
だな』
084
マツ
公
(
こう
)
『ハヽヽヽヽ、
085
到頭
(
たうとう
)
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
いでマツ
公
(
こう
)
さまの
軍門
(
ぐんもん
)
に
降
(
くだ
)
ると
云
(
い
)
ふ
場面
(
ばめん
)
だな。
086
ヨシヨシお
前
(
まへ
)
がさう
出
(
で
)
りや
俺
(
おれ
)
だつて
まんざら
悪人
(
あくにん
)
でもない
事
(
こと
)
はないから
人情
(
にんじやう
)
に
絆
(
ほだ
)
されて、
087
チツと
位
(
ぐらゐ
)
は
知
(
し
)
らしてやつてもいいわ。
088
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
マツ
公
(
こう
)
は
云
(
い
)
はない。
089
俺
(
おれ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
憑依
(
ひようい
)
してゐる
邪霊
(
じやれい
)
が
云
(
い
)
ふのだからな。
090
今後
(
こんご
)
屹度
(
きつと
)
マツ
公
(
こう
)
に
聞
(
き
)
いたなんて
云
(
い
)
つちや
不可
(
いけな
)
いよ。
091
悪神
(
わるがみ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
に
聞
(
き
)
いたと
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
はぬと
困
(
こま
)
るからな』
092
五三公
(
いそこう
)
『アハヽヽヽ、
093
中々
(
なかなか
)
うまくやりをるわい。
094
流石
(
さすが
)
は
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
秘書役
(
ひしよやく
)
だけあるわい。
095
何
(
なに
)
につけても
巧妙
(
かうめう
)
なものだ。
096
いや
此
(
この
)
五三公
(
いそこう
)
も
大
(
おほい
)
に
感服
(
かんぷく
)
仕
(
つかまつ
)
つた』
097
マツ
公
(
こう
)
『オイ、
098
俺
(
おれ
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の、
099
やつぱり
部下
(
ぶか
)
だから
三五教
(
あななひけう
)
のお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
に
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
にや
行
(
ゆ
)
かない。
100
何程
(
なにほど
)
邪神
(
じやしん
)
だつて
俺
(
おれ
)
の
体
(
からだ
)
に
憑
(
つ
)
いてゐるのだから
直接
(
ちよくせつ
)
三五教
(
あななひけう
)
には
明
(
あか
)
されない。
101
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
するから
其
(
その
)
祝詞
(
のりと
)
を
拝聴
(
はいちやう
)
する
方
(
はう
)
がよからう。
102
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れ、
103
谷川
(
たにがは
)
へ
下
(
お
)
りて
口
(
くち
)
を
濺
(
すす
)
ぎ
手
(
て
)
を
洗
(
あら
)
つて
来
(
く
)
るから』
104
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
谷川
(
たにがは
)
へ
下
(
お
)
り
立
(
た
)
ち、
105
口
(
くち
)
や
手
(
て
)
を
清
(
きよ
)
め
再
(
ふたた
)
び
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
106
マツ
公
(
こう
)
は
二拍手
(
にはくしゆ
)
再拝
(
さいはい
)
終
(
をは
)
つて
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
107
マツ公
『
掛巻
(
かけまく
)
も
畏
(
かしこ
)
き
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
宮柱
(
みやばしら
)
太敷
(
ふとしき
)
建
(
た
)
て
高天原
(
たかあまはら
)
に
千木
(
ちぎ
)
高
(
たか
)
知
(
し
)
りて
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
鎮
(
しづ
)
まり
給
(
たま
)
ふ
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
大前
(
おほまへ
)
にバラモン
教
(
けう
)
の
軍
(
いくさ
)
の
司
(
つかさ
)
、
108
千歳
(
ちとせ
)
の
緑
(
みどり
)
栄
(
さか
)
えに
栄
(
さか
)
ゆマツ
公
(
こう
)
矣
(
い
)
慎
(
つつし
)
み
敬
(
ゐやま
)
ひ
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
みも
白
(
まを
)
す。
109
抑
(
そもそも
)
秋
(
あき
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
は
色
(
いろ
)
づき
初
(
はじ
)
め
小男鹿
(
さをしか
)
の
妻
(
つま
)
恋
(
こ
)
ふ
河鹿山
(
かじかやま
)
の
水
(
みづ
)
清
(
きよ
)
き
谷川
(
たにがは
)
の
辺
(
ほとり
)
、
110
十
(
じふ
)
月
(
ぐわつ
)
十六
(
じふろく
)
日
(
にち
)
の
朝日
(
あさひ
)
の
豊栄昇
(
とよさかのぼ
)
りに
願
(
ね
)
ぎまつる。
111
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
の
大御言
(
おほみこと
)
を
蒙
(
かかぶ
)
りて
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
鎮
(
しづ
)
まり
給
(
たま
)
ふ
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
し
糺
(
きた
)
めむとランチ
将軍
(
しやうぐん
)
を
初
(
はじ
)
めとし
片彦
(
かたひこ
)
、
112
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
、
113
征討
(
せいたう
)
に
百
(
もも
)
の
軍
(
いくさ
)
を
従
(
したが
)
へて
上
(
のぼ
)
りましき。
114
先鋒隊
(
せんぽうたい
)
として
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
十五
(
じふご
)
日
(
にち
)
の
夕間暮
(
ゆふまぐれ
)
、
115
月
(
つき
)
の
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
る
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
みまし、
116
暫
(
しば
)
し
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
らひ
兵士
(
つはもの
)
の
数
(
かず
)
を
調
(
しら
)
べ
進軍
(
しんぐん
)
の
御歌
(
みうた
)
を
歌
(
うた
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
117
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
より
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる、
118
三五教
(
あななひけう
)
の
伊太公
(
いたこう
)
伊
(
い
)
、
119
物
(
もの
)
をも
言
(
い
)
はず
軍
(
いくさ
)
の
群
(
むれ
)
に
打
(
う
)
ち
入
(
い
)
り
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
荒
(
あ
)
れ
狂
(
くる
)
ひ、
120
恨
(
うら
)
めしくも
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
を
打
(
う
)
ち
奉
(
たてまつ
)
りたれば
馬
(
うま
)
は
驚
(
おどろ
)
きて
跳
(
は
)
ね
廻
(
まは
)
り
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り
将軍
(
しやうぐん
)
は
佐久奈多里
(
さくなだり
)
に
道
(
みち
)
の
辺
(
へ
)
に
落
(
お
)
ち
給
(
たま
)
ひぬ。
121
スワ
強者
(
しれもの
)
現
(
あら
)
はれたりと、
122
おのれマツ
公
(
こう
)
は
其
(
その
)
強者
(
しれもの
)
に
組
(
く
)
みつき
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
め
三人
(
みたり
)
の
軍人
(
いくさびと
)
に
護
(
まも
)
らせて、
123
教
(
をしへ
)
も
清晴
(
きよはる
)
の
山
(
やま
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
隠
(
かく
)
しおきぬ。
124
掛巻
(
かけまく
)
も
畏
(
かしこ
)
き
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
、
125
厳
(
いづ
)
の
御魂
(
みたま
)
を
照
(
て
)
らさせ
給
(
たま
)
ひて
吾
(
わが
)
捕
(
とら
)
へたる
伊太公
(
いたこう
)
を
何処
(
どこ
)
までも
敵
(
てき
)
の
手
(
て
)
に
帰
(
かへ
)
らざる
様
(
やう
)
守
(
まも
)
り
幸
(
さきは
)
へ
給
(
たま
)
へ。
126
又
(
また
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
軍人
(
いくさびと
)
共
(
ども
)
は
一人
(
ひとり
)
も
過
(
あやま
)
ちなく
平
(
たひら
)
けく
安
(
やす
)
らけく
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ひて、
127
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御前
(
みまへ
)
に
復言
(
かへりごと
)
申
(
まを
)
させ
給
(
たま
)
へと
鹿児自
(
かごじ
)
物膝
(
ものひざ
)
折伏
(
をりふせ
)
鵜自物
(
うじもの
)
頸根
(
うなね
)
突抜天
(
つきぬきて
)
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
みも
祈願奉
(
こひのみまつ
)
らくと
白
(
まを
)
す。
128
かなはぬからたまちはへませ、
129
ポンポン』
130
純公
(
すみこう
)
『イヤ
斎主
(
さいしゆ
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
131
あゝ
貴方
(
あなた
)
の
熱誠
(
ねつせい
)
な
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
に
感
(
かん
)
じ
純公
(
すみこう
)
大明神
(
だいみやうじん
)
も
其
(
その
)
願事
(
ねがひごと
)
を
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
までお
聞
(
き
)
きなさつたでせう、
132
アハヽヽヽ』
133
マツ
公
(
こう
)
『エー、
134
時
(
とき
)
にお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
の
先生
(
せんせい
)
は
如何
(
どう
)
なつたのだ。
135
根
(
ね
)
つから
其処辺
(
そこら
)
にお
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えぬぢやないか』
136
純公
(
すみこう
)
『
此
(
この
)
森
(
もり
)
のチツと
向
(
むか
)
ふに
治国別
(
はるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
137
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
共
(
とも
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
友達
(
ともだち
)
と
休息
(
きうそく
)
して
居
(
を
)
られるのだ。
138
何
(
なん
)
なら
面会
(
めんくわい
)
したら
如何
(
どう
)
だ』
139
マツ
公
(
こう
)
『イヤ、
140
そりや
願
(
ねが
)
うてもない
事
(
こと
)
だ、
141
おいタツ
公
(
こう
)
、
142
どうだ。
143
一
(
ひと
)
つ
拝顔
(
はいがん
)
の
栄
(
えい
)
を
賜
(
たまは
)
つたら』
144
タツ
公
(
こう
)
『そいつア
有難
(
ありがた
)
いなア。
145
何程
(
なにほど
)
神力
(
しんりき
)
の
強
(
つよ
)
い
恐
(
おそろ
)
しい
宣伝使
(
せんでんし
)
だつて、
146
よもや
吾々
(
われわれ
)
を
頭
(
あたま
)
から
噛
(
かぶ
)
りもなさるまいからな』
147
五三公
(
いそこう
)
『
何
(
なに
)
、
148
頭
(
あたま
)
から
直
(
すぐ
)
にかぶりなさるぞ』
149
タツ
公
(
こう
)
『ヤアそりや
大変
(
たいへん
)
だ。
150
まるで
狼
(
おほかみ
)
の
様
(
やう
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
だな』
151
五三公
(
いそこう
)
『きまつた
事
(
こと
)
だよ。
152
大神
(
おほかみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
だもの。
153
頭
(
あたま
)
からかぶらいで
如何
(
どう
)
して
役
(
やく
)
が
勤
(
つと
)
まろかい』
154
タツ
公
(
こう
)
『ヤアそいつア
大変
(
たいへん
)
だ。
155
おいマツ
公
(
こう
)
、
156
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
つて
退却
(
たいきやく
)
しようぢやないか』
157
五三公
(
いそこう
)
『アハヽヽヽ
頭
(
あたま
)
からかぶると
云
(
い
)
ふのは
宣伝使
(
せんでんし
)
の
必要
(
ひつえう
)
な
古代冠
(
こだいくわん
)
だよ』
158
タツ
公
(
こう
)
『なんだ。
159
吃驚
(
びつくり
)
させやがつた。
160
俺
(
おれ
)
だつて
口
(
くち
)
からかぶるよ、
161
無花果
(
いちぢゆく
)
や
林檎
(
りんご
)
位
(
くらゐ
)
なら、
162
アハヽヽヽ』
163
純公
(
すみこう
)
『オイ、
164
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
は
何処
(
どこ
)
ともなしに
親
(
した
)
しみのある
男
(
をとこ
)
だ。
165
何
(
いづ
)
れバラモン
教
(
けう
)
へ
這入
(
はい
)
つた
位
(
くらゐ
)
だから
一通
(
ひととほ
)
りではあるまい。
166
一
(
ひと
)
つ
経歴談
(
けいれきだん
)
でも
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れないか』
167
マツ
公
(
こう
)
『ウン、
168
俺
(
おれ
)
の
生
(
うま
)
れはな、
169
実
(
じつ
)
はアーメニヤだ』
170
五三公
(
いそこう
)
『
何
(
なに
)
、
171
アーメニヤ?』
172
マツ
公
(
こう
)
『ウン、
173
其
(
その
)
アーメニヤが
不思議
(
ふしぎ
)
なのか』
174
五三公
(
いそこう
)
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
俺
(
おれ
)
の
先生
(
せんせい
)
も
純公
(
すみこう
)
の
先生
(
せんせい
)
も
生
(
うま
)
れはアーメニヤだからな』
175
マツ
公
(
こう
)
『アーメニヤの
生
(
うま
)
れならウラル
教
(
けう
)
ぢやないか。
176
それが
又
(
また
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
になつてゐるのか。
177
俺
(
おれ
)
もアーメニヤの
生
(
うま
)
れだが
三五教
(
あななひけう
)
は
今
(
いま
)
におき、
178
一人
(
ひとり
)
も
居
(
ゐ
)
やせぬ。
179
チツと
可怪
(
をか
)
しいな』
180
五三公
(
いそこう
)
『
俺
(
おれ
)
の
先生
(
せんせい
)
はな、
181
今迄
(
いままで
)
は
亀彦
(
かめひこ
)
さまと
云
(
い
)
つてウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だつたのだ。
182
さうしてウラル
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
で
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
宣伝
(
せんでん
)
に
行
(
い
)
つて
厶
(
ござ
)
つた
所
(
ところ
)
、
183
さつぱり
駄目
(
だめ
)
になつて
帰
(
かへ
)
る
途中
(
とちう
)
フサの
海
(
うみ
)
で
難風
(
なんぷう
)
に
会
(
あ
)
ひ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
に
助
(
たす
)
けられ、
184
それから
国許
(
くにもと
)
へも
帰
(
かへ
)
らず
三五教
(
あななひけう
)
になつて
了
(
しま
)
はれたのだ。
185
そりや
何
(
なん
)
とも
神徳
(
しんとく
)
の
高
(
たか
)
い
先生
(
せんせい
)
だぞ』
186
マツ
公
(
こう
)
『
何
(
なに
)
、
187
ウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
宣伝
(
せんでん
)
に
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
つた? はてな、
188
そしてその
名
(
な
)
が
亀彦
(
かめひこ
)
と
云
(
い
)
ふのか』
189
五三公
(
いそこう
)
『ウンさうだ。
190
随分
(
ずゐぶん
)
以前
(
いぜん
)
は
面白
(
おもしろ
)
い
人
(
ひと
)
だつたさうだ。
191
今
(
いま
)
こそ
真面目
(
まじめ
)
臭
(
くさ
)
つて
偉
(
えら
)
い
人
(
ひと
)
だがな』
192
マツ
公
(
こう
)
『そのお
連
(
つ
)
れの
名
(
な
)
は
聞
(
き
)
いてゐるのか』
193
五三公
(
いそこう
)
『ウン、
194
聞
(
き
)
いてゐる。
195
梅彦
(
うめひこ
)
に
岩彦
(
いはひこ
)
、
196
鷹彦
(
たかひこ
)
、
197
音彦
(
おとひこ
)
、
198
駒彦
(
こまひこ
)
、
199
そこへ
俺
(
おれ
)
の
先生
(
せんせい
)
の
亀彦
(
かめひこ
)
様
(
さま
)
と
六人
(
ろくにん
)
連
(
づ
)
れだ。
200
半
(
はん
)
ダース
宣伝使
(
せんでんし
)
と
云
(
い
)
つて
随分
(
ずゐぶん
)
名高
(
なだか
)
いものだつたらしいぞ』
201
マツ
公
(
こう
)
『その
亀彦
(
かめひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
は
此
(
この
)
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
に
休
(
やす
)
んでゐられるのか』
202
五三公
(
いそこう
)
『ウン、
203
居
(
ゐ
)
られる』
204
マツ
公
(
こう
)
『
一遍
(
いつぺん
)
会
(
あ
)
ひたいものだな』
205
五三公
(
いそこう
)
『お
前
(
まへ
)
は
又
(
また
)
先生
(
せんせい
)
の
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふと
顔色
(
かほいろ
)
まで
変
(
か
)
へて
熱心
(
ねつしん
)
に
尋
(
たづ
)
ねるが
何
(
なに
)
か
縁由
(
ゆかり
)
があるのか』
206
マツ
公
(
こう
)
『
有
(
あ
)
るの
無
(
な
)
いのつて、
207
その
亀彦
(
かめひこ
)
さまなら
俺
(
おれ
)
の
永
(
なが
)
らく
尋
(
たづ
)
ねてゐる
兄
(
にい
)
さまだよ。
208
今
(
いま
)
は
斯
(
こ
)
うしてバラモン
教
(
けう
)
に
這入
(
はい
)
つてゐるが、
209
もしや
兄
(
にい
)
さまの
所在
(
ありか
)
が、
210
何
(
なに
)
かの
機
(
はづみ
)
に
分
(
わか
)
りはせぬかと、
211
そればつかり
苦
(
く
)
にしてゐるのだ。
212
アヽ
有難
(
ありがた
)
い、
213
その
亀彦
(
かめひこ
)
は
俺
(
おれ
)
の
兄
(
にい
)
さまに
違
(
ちが
)
ひない。
214
アヽ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
215
と
声
(
こゑ
)
まで
曇
(
くも
)
らせて
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
するのであつた。
216
五三公
(
いそこう
)
は
忽
(
たちま
)
ち
声
(
こゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
217
五三公
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
218
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
219
それのみならず
三五
(
あななひ
)
の
220
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
守
(
まも
)
る
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
221
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
所在
(
ありか
)
をば
222
いと
審
(
つまびらか
)
に
知
(
し
)
らします
223
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
憩
(
いこ
)
ひたる
224
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
よ
亀彦
(
かめひこ
)
よ
225
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
も
啻
(
ただ
)
ならぬ
226
突発
(
とつぱつ
)
事件
(
じけん
)
が
出来
(
でき
)
ました
227
さあさあ
早
(
はや
)
く
腰
(
こし
)
上
(
あ
)
げて
228
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
い
)
でませよ
229
思
(
おも
)
ひもよらぬ
松
(
まつ
)
さまが
230
トボトボ
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれて
231
亀彦
(
かめひこ
)
さまに
会
(
あ
)
ひ
度
(
た
)
いと
232
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
して
待
(
ま
)
つてゐる
233
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
234
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
は
目
(
ま
)
のあたり
235
バラモン
教
(
けう
)
の
片彦
(
かたひこ
)
が
236
一方
(
いつぱう
)
の
腕
(
うで
)
と
仕
(
つか
)
へたる
237
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
のマツさまは
238
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
弟
(
おとうと
)
に
239
間違
(
まちが
)
ひないと
知
(
し
)
れました
240
治国別
(
はるくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
241
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
逸早
(
いちはや
)
く
242
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
下
(
くだ
)
り
来
(
き
)
て
243
別
(
わか
)
れて
程経
(
ほどへ
)
し
兄弟
(
きやうだい
)
の
244
目出度
(
めでた
)
き
対面
(
たいめん
)
なされませ
245
此
(
この
)
五三公
(
いそこう
)
も
嬉
(
うれ
)
しうて
246
手
(
て
)
の
舞
(
まひ
)
足
(
あし
)
の
踏
(
ふ
)
む
所
(
ところ
)
247
知
(
し
)
らぬばかりになりました
248
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
249
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
250
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
251
兄弟
(
きやうだい
)
二人
(
ふたり
)
の
其
(
その
)
縁由
(
えにし
)
252
なかなか
尽
(
つ
)
きは
致
(
いた
)
すまい
253
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
254
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
255
ただ
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
256
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
257
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
258
仮令
(
たとへ
)
マツ
公
(
こう
)
バラモンの
259
神
(
かみ
)
のお
道
(
みち
)
にあればとて
260
改心
(
かいしん
)
したれば
天地
(
あめつち
)
の
261
清
(
きよ
)
き
氏子
(
うぢこ
)
に
違
(
ちが
)
ひない
262
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
よ
逸早
(
いちはや
)
く
263
此処
(
ここ
)
までお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さんせ
264
歓天
(
くわんてん
)
喜地
(
きち
)
の
花
(
はな
)
開
(
ひら
)
く
265
前代
(
ぜんだい
)
未聞
(
みもん
)
の
御
(
ご
)
慶事
(
けいじ
)
が
266
今
(
いま
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
展開
(
てんかい
)
し
267
面白
(
おもしろ
)
う
嬉
(
うれ
)
しうなりまする
268
貴方
(
あなた
)
に
仕
(
つか
)
へし
五三公
(
いそこう
)
が
269
真心
(
まごころ
)
籠
(
こ
)
めて
願
(
ねが
)
ひます
270
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
271
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
272
と
歌
(
うた
)
つてゐる。
273
森
(
もり
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めてゐた
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
274
五三公
(
いそこう
)
の
高
(
たか
)
らかに
歌
(
うた
)
ふ
声
(
こゑ
)
に
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
ませてゐる。
275
晴公
(
はるこう
)
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
276
あの
歌
(
うた
)
の
声
(
こゑ
)
は
五三公
(
いそこう
)
でせう。
277
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふぢやありませぬか』
278
治国別
(
はるくにわけ
)
『ウン、
279
何
(
なん
)
だか
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つてゐる
様
(
やう
)
だ』
280
晴公
(
はるこう
)
『
先生
(
せんせい
)
貴方
(
あなた
)
は
兄弟
(
きやうだい
)
がおありなさるのですか』
281
治国別
(
はるくにわけ
)
『ウン、
282
あると
云
(
い
)
へばある、
283
ないと
云
(
い
)
へばないやうなものだ』
284
晴公
(
はるこう
)
『それでも
今
(
いま
)
五三公
(
いそこう
)
の
歌
(
うた
)
に
先生
(
せんせい
)
の
弟
(
おとうと
)
が
来
(
き
)
たから
会
(
あ
)
つてやつて
呉
(
く
)
れえと
云
(
い
)
つてるぢやありませぬか』
285
治国別
(
はるくにわけ
)
『さう
云
(
い
)
つた
様
(
やう
)
だな。
286
如何
(
どう
)
しても
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
話
(
はなし
)
だ。
287
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
日頃
(
ひごろ
)
念
(
ねん
)
ずる
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
兄弟
(
きやうだい
)
の
対面
(
たいめん
)
をさして
下
(
くだ
)
さるのかも
知
(
し
)
れない』
288
と
言葉
(
ことば
)
も
静
(
しづ
)
かに
落着
(
おちつ
)
き
払
(
はら
)
つてゐる。
289
玉国別
(
たまくにわけ
)
『
治国別
(
はるくにわけ
)
さま、
290
どうも
私
(
わたし
)
は
御
(
ご
)
兄弟
(
きやうだい
)
が
見
(
み
)
えたやうな
気
(
き
)
がしますがね。
291
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
御
(
ご
)
兄弟
(
きやうだい
)
とすれば
如何
(
どう
)
して
斯
(
こ
)
んなバラモン
教
(
けう
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
の
中
(
なか
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
来
(
こ
)
られたのでせうか』
292
治国別
(
はるくにわけ
)
『
大方
(
おほかた
)
バラモン
教
(
けう
)
へでも
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んでゐたのでせう。
293
何
(
なん
)
だか
最前
(
さいぜん
)
から
純公
(
すみこう
)
や
五三公
(
いそこう
)
の
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
え、
294
又
(
また
)
外
(
ほか
)
に
二人
(
ふたり
)
ばかりも
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えてゐた
様
(
やう
)
です。
295
どうもあの
声
(
こゑ
)
に
何
(
なん
)
だか
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
えがある
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ひましたよ』
296
かく
話
(
はな
)
し
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
へスタスタとやつて
来
(
き
)
たのは
狼狽者
(
あわてもの
)
の
五三公
(
いそこう
)
であつた。
297
五三公
(
いそこう
)
は
上
(
のぼ
)
り
坂
(
ざか
)
で
苦
(
くる
)
しかつた
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませ
乍
(
なが
)
ら、
298
五三公
『セヽヽ
先生
(
せんせい
)
、
299
最前
(
さいぜん
)
から……
私
(
わたし
)
があの
通
(
とほ
)
り
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で……
歌
(
うた
)
つて
知
(
し
)
らしてゐるのに、
300
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
られるのだ。
301
サア
早
(
はや
)
く
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな。
302
偉
(
えら
)
い
事
(
こと
)
になりましたぞ。
303
それはそれは
吃驚虫
(
びつくりむし
)
が
洋行
(
やうかう
)
する
様
(
やう
)
な
突発
(
とつぱつ
)
事件
(
じけん
)
ですわ。
304
サア
早
(
はや
)
う
下
(
お
)
りて
下
(
くだ
)
さい。
305
そして
又
(
また
)
伊太公
(
いたこう
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
りました』
306
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
慌
(
あわ
)
てて、
307
玉国別
『
何
(
なに
)
?
伊太公
(
いたこう
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
りましたか。
308
ヤアそれは
有難
(
ありがた
)
い』
309
治国別
(
はるくにわけ
)
『
俺
(
おれ
)
の
弟
(
おとうと
)
が
分
(
わか
)
つたと
云
(
い
)
ふのか』
310
五三公
(
いそこう
)
『
分
(
わか
)
つたも
分
(
わか
)
らぬもあつたものですかい。
311
最前
(
さいぜん
)
からあれ
程
(
ほど
)
八釜
(
やかま
)
しう
騒
(
さわ
)
いでゐるのに
貴方
(
あなた
)
は
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してゐるのですか。
312
サア
早
(
はや
)
く
来
(
き
)
てマツ
公
(
こう
)
さまに
喜
(
よろこ
)
ばしてやつて
下
(
くだ
)
さい』
313
治国別
(
はるくにわけ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
少
(
すこ
)
しも
騒
(
さわ
)
がず、
314
笑
(
わら
)
ひもせず、
315
別
(
べつ
)
に
喜
(
よろこ
)
びもせずと
云
(
い
)
ふ
態度
(
たいど
)
で、
316
治国別
『ウン、
317
弟
(
おとうと
)
が
分
(
わか
)
つたら、
318
それで
宜
(
い
)
い。
319
やつぱり
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
つたかな』
320
五三公
(
いそこう
)
『
何
(
なん
)
と
先生
(
せんせい
)
は
兄弟
(
きやうだい
)
に
水臭
(
みづくさ
)
い
人
(
ひと
)
ですな。
321
兄弟
(
きやうだい
)
は
他人
(
たにん
)
の
初
(
はじ
)
まりとか
聞
(
き
)
きますが
如何
(
いか
)
にも
古人
(
こじん
)
は
嘘
(
うそ
)
は
云
(
い
)
ひませぬな。
322
あれだけ
焦
(
こが
)
れ
慕
(
した
)
うて
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
兄
(
にい
)
さまの
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
り
飛
(
と
)
びつき
武者
(
むしや
)
振
(
ぶ
)
りつきし
度
(
た
)
い
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
つて
厶
(
ござ
)
るのに、
323
旃陀羅
(
せんだら
)
が
榎
(
えのき
)
で
鼻
(
はな
)
を
擦
(
こす
)
つた
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
つちやマツ
公
(
こう
)
さまの
折角
(
せつかく
)
の
期待
(
きたい
)
を
裏切
(
うらぎ
)
ると
云
(
い
)
ふものだ。
324
も
少
(
すこ
)
し
優
(
やさ
)
しく
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな。
325
エー
私
(
わたし
)
までが
悲
(
かな
)
しくなつて
来
(
き
)
た』
326
治国別
(
はるくにわけ
)
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
迄
(
まで
)
下
(
くだ
)
る
事
(
こと
)
としよう。
327
ヤア
玉国別
(
たまくにわけ
)
さま、
328
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
共
(
ども
)
ボツボツ
此
(
この
)
天然
(
てんねん
)
別荘
(
べつさう
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
する
事
(
こと
)
にしようかなア、
329
アハヽヽヽ』
330
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
331
治国別
(
はるくにわけ
)
は
悠々
(
いういう
)
として
四
(
よ
)
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
に
森
(
もり
)
の
坂道
(
さかみち
)
を
下
(
くだ
)
り
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
着
(
つ
)
いた。
332
純公
(
すみこう
)
『ヤア、
333
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
、
334
お
目出度
(
めでた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
335
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
兄弟
(
きやうだい
)
が
分
(
わか
)
りました。
336
サア
何卒
(
どうぞ
)
お
名乗
(
なの
)
りをなさいませ』
337
治国別
(
はるくにわけ
)
は
以前
(
いぜん
)
の
如
(
ごと
)
く
冷然
(
れいぜん
)
として、
338
治国別
『アヽ
左様
(
さやう
)
か、
339
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
看病
(
かんびやう
)
に
預
(
あづ
)
かつたさうだな。
340
マツ
公
(
こう
)
さまの
仮病
(
けびやう
)
も
全快
(
ぜんくわい
)
しただらう。
341
白十字
(
はくじふじ
)
病院
(
びやうゐん
)
も
余程
(
よほど
)
繁昌
(
はんじやう
)
してゐたさうですな』
342
純公
(
すみこう
)
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
343
そんな
洒落
(
しやれ
)
はどうでも
宜
(
よろ
)
しい、
344
弟
(
おとうと
)
さまですよ。
345
早
(
はや
)
くお
名乗
(
なのり
)
なさらぬか』
346
治国別
(
はるくにわけ
)
『
左様
(
さやう
)
、
347
弟
(
おとうと
)
に
間違
(
まちが
)
ひはあるまい。
348
別
(
べつ
)
に
名乗
(
なの
)
る
必要
(
ひつえう
)
もないから』
349
玉国別
(
たまくにわけ
)
『ウフヽヽヽ』
350
道公
(
みちこう
)
『
此奴
(
こいつ
)
ア、
351
妙
(
めう
)
なコントラストだ、
352
アハヽヽヽ』
353
(
大正一一・一一・二八
旧一〇・一〇
北村隆光
録)
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