霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
サイトをリニューアルしました(従来バージョンはこちら)【新着情報】サブスクのお知らせ)

第八章 噴飯(ふんぱん)〔一一五九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第43巻 舎身活躍 午の巻 篇:第2篇 月下の古祠 よみ(新仮名遣い):げっかのふるほこら
章:第8章 噴飯 よみ(新仮名遣い):ふんぱん 通し章番号:1159
口述日:1922(大正11)年11月27日(旧10月9日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
玉国別は伊太公が飛び込んで行ったあと、バラモン軍が右往左往するありさまを冷然と見守って控えている。純公は玉国別に向かって、なぜ我々二人に伊太公救出を命じないのか、と食って掛かった。
玉国別は純公に勇について説明をして諭した。道公も、玉国別の計略を知っているので、何事も神に任せるようにと純公をなだめた。
玉国別はひとしきり純公に説諭した後、実は治国別の一行とバラモン軍を挟み撃ちにしようという考えを明らかにした。純公はようやく納得した。玉国別は道公を祠のあたりに斥候に出して様子を探らせた。
玉国別は残った純公に、あと一時ほどするとバラモン軍は治国別たちの言霊に打たれて逃げ帰ってくるだろうから、それまでに十分休養して英気を養っておこうと語った。
祠の前にはバラモン軍の目付が二人、関守を務めていた。二人は、伊太公が突然現れて暴れこみ、片彦将軍に一打ち食らわせたために部隊が混乱に陥った事件を話し合っていた。
そのうちに二人は暇をつぶすために馬鹿な夢の話を始めた。その話の落ちのおかしさに、祠の後ろに隠れていた道公は思わず大きな笑い声をたてた。バラモン軍の二人は驚き、肝をつぶして逃げて行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-11-21 20:50:35 OBC :rm4308
愛善世界社版:112頁 八幡書店版:第8輯 68頁 修補版: 校定版:119頁 普及版:45頁 初版: ページ備考:
001 玉国別(たまくにわけ)は、002伊太公(いたこう)命令(めいれい)()かず森影(もりかげ)()()しバラモン(けう)先鋒隊(せんぽうたい)(むか)つて(ただ)一人(ひとり)突入(とつにふ)し、003(ほこら)(まへ)にて敵軍(てきぐん)(さん)(みだ)右往(うわう)左往(さわう)(おどろ)いて往来(わうらい)する有様(ありさま)(はるか)()やり、004冷然(れいぜん)として(すく)ひに()かうともせず(ひか)へてゐる。005純公(すみこう)()をいらち両手(りやうて)(ひざ)をピシヤピシヤと(おも)はず(たた)(なが)言葉(ことば)せはしく玉国別(たまくにわけ)(むか)ひ、
006純公『モシ、007先生(せんせい)(さま)008如何(どう)(いた)しませうか。009勇敢(ゆうかん)決死(けつし)010敵軍(てきぐん)(なか)伊太公(いたこう)(ただ)一人(ひとり)()(きみ)()命令(めいれい)()かず()()みましたが、011何程(なにほど)伊太公(いたこう)鬼神(きしん)(ひし)(ゆう)ありとも()んで()()(なつ)(むし)012(くわ)(もつ)(しう)(あた)るのだから屹度(きつと)(ほろ)ぼされて(しま)ふでせう。013サアこれから道公(みちこう)両人(りやうにん)(こころ)(あは)援兵(ゑんぺい)出掛(でかけ)ませう。014貴方(あなた)はお()(わる)いのだから何卒(どうぞ)此処(ここ)にお(ひそ)(あそ)ばし吾々(われわれ)奮闘(ふんとう)()りを御覧(ごらん)なさいませ。015サア道公(みちこう)()かう』
016 玉国別(たまくにわけ)平然(へいぜん)として(ことば)(おもむろ)に、
017玉国別()て、018純公(すみこう)019(いま)()()すのは(あま)無謀(むぼう)ぢや』
020純公(すみこう)『だと()つて貴方(あなた)()()部下(ぶか)見殺(みごろ)しになさる()所存(しよぞん)ですか。021(わたし)だつて親友(しんいう)危難(きなん)をどうして高見(たかみ)から見物(けんぶつ)する(こと)出来(でき)ませう』
022道公(みちこう)伊太公(いたこう)(やつ)023とうとう荒魂(あらみたま)をおつ()()しよつたな』
024玉国別(たまくにわけ)伊太公(いたこう)のは荒魂(あらみたま)ではない。025暴魂(あれみたま)だ。026荒魂(あらみたま)()ふのは陰忍(いんにん)自重(じちよう)(こころ)だ、027(かれ)匹夫(ひつぷ)(ゆう)だ。028(すべ)武士(つはもの)には二種類(にしゆるゐ)がある』
029純公(すみこう)二種類(にしゆるゐ)とは如何(いか)なるもので(ござ)いますか』
030玉国別(たまくにわけ)()(つはもの)血気(けつき)勇者(ゆうしや)仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)との二種類(にしゆるゐ)がある。031(そもそ)血気(けつき)勇者(ゆうしや)とは合戦(がつせん)(のぞ)(ごと)(いさ)(すす)んで(ひぢ)()(つよ)きを(やぶ)(かた)きを(くだ)(こと)(おに)(ごと)忿神(ふんしん)(ごと)(すみや)かである。032されど(これ)()(つはもの)(てき)(ため)()(もつ)(ふく)め、033味方(みかた)(いきほひ)(うしな)()()がるるに便(べん)あれば(あるひ)(てき)降伏(かうふく)して(はぢ)(わす)れ、034(あるひ)(こころ)にも(おこ)らぬ()(そむ)くものだ。035(かく)(ごと)きものは(すなは)血気(けつき)勇者(ゆうしや)だ。036(また)仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)といふものは、037(かなら)ずしも(ひと)(せん)(あらそ)ひ、038(てき)()(いさ)むに高声(かうせい)多言(たげん)にして(いきほひ)()るひ(ひぢ)()らねども、039一度(ひとたび)約束(やくそく)をして(たの)まれた以上(いじやう)(けつ)して二心(ふたごころ)(そん)せず、040変心(へんしん)もせず、041大節(たいせつ)(のぞ)み、042その(こころざし)(うば)はず(かたむ)(ところ)(いのち)(かろ)んずる、043(かく)(ごと)きは(すなは)仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)だ。044現代(げんだい)(おい)ては聖人(せいじん)賢者(けんじや)()りて(ひさ)しく梟悪(けうあく)()まること(おほ)きが(ゆゑ)仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)(すくな)いのだよ』
045純公(すみこう)成程(なるほど)046よく(わか)りましたが(しか)(この)危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)047血気(けつき)勇者(ゆうしや)仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)もそんな区別(くべつ)()ててゐる余裕(よゆう)がありませうか。048吾々(われわれ)二者(にしや)合併(がつぺい)血気(けつき)勇者(ゆうしや)となり、049仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)となつて大活動(だいくわつどう)(えん)()(かく)伊太公(いたこう)(たす)けねばならぬぢやありませぬか』
050道公(みちこう)『それもさうだが、051何事(なにごと)(かみ)(さま)御心(みこころ)にあるのだから如何(どう)なるのも仕組(しぐみ)だ。052(かみ)のまにまに(まか)すが()からうぞ。053吾々(われわれ)はこうなつた以上(いじやう)先生(せんせい)()命令(めいれい)(どほ)遵奉(じゆんぽう)するより(ほか)(みち)はないのだから』
054純公(すみこう)(なん)として(また)今夜(こんや)はこんな軟風(なんぷう)()くのだらう。055昨日(きのふ)強風(きやうふう)()()へ、056天地(てんち)顛倒(てんたふ)(じつ)(はなはだ)しい。057(この)(もり)にはどうやら柔弱神(じうじやくしん)()くつてゐると()える。058如何(いか)落着(おちつ)かうと(おも)つたつて(とも)危難(きなん)見捨(みす)てて如何(どう)して安閑(あんかん)として()られやうか』
059玉国別(たまくにわけ)『さう(さわ)ぐものでない。060(かみ)(さま)(おい)(なに)仕組(しぐみ)のある(こと)だらう。061何事(なにごと)惟神(かむながら)()摂理(せつり)だ』
062純公(すみこう)先生(せんせい)063さう惟神(かむながら)中毒(ちうどく)をなさつては仕方(しかた)がないぢやありませぬか。064ここは惟人(ひとながら)必要(ひつえう)でせう。065人事(じんじ)(つく)して天命(てんめい)()つと()ふぢやありませぬか。066袖手(しうしゆ)傍観(ばうくわん)(なん)()(やす)きにつく卑怯(ひけふ)(かぎ)りを(つく)して惟神(かむながら)摂理(せつり)といつて遁辞(とんじ)(まう)け、067すましこんでゐるとは(なん)(こと)ですか。068宣伝使(せんでんし)体面(たいめん)にも(かか)はりませう。069エーもう仕方(しかた)がない。070(この)純公(すみこう)伊太公(いたこう)()めに殉死(じゆんし)覚悟(かくご)(ござ)います。071これが(この)()のお(いとま)()ひ、072先生(せんせい)(さま)073随分(ずゐぶん)()壮健(さうけん)()神業(しんげふ)奉仕(ほうし)なさいませ。074道公(みちこう)075(これ)(かほ)見納(みをさ)めになるかも()れない。076随分(ずゐぶん)(まめ)でお()(わる)先生(せんせい)(こと)だからお世話(せわ)をして()げて()れ。077貴様(きさま)もこれから段々(だんだん)寒天(さむぞら)(むか)ふから随分(ずゐぶん)(からだ)注意(ちゆうい)して(かぜ)()かない(やう)にして()れよ』
078(なみだ)(はら)(なが)決心(けつしん)(いろ)(かた)(はや)くも(この)()立去(たちさ)り、079(てき)(むれ)(むか)つて突入(とつにふ)せむとする(その)(いきほ)容易(ようい)制止(せいし)(がた)くぞ()えてゐる。080玉国別(たまくにわけ)(すこ)しく言葉(ことば)(とが)らし、
081玉国別純公(すみこう)082(その)(はう)(わが)命令(めいれい)無視(むし)するのか、083(わが)命令(めいれい)(すなは)(かみ)命令(めいれい)だ。084(かみ)(そむ)いて天地(てんち)(あひだ)如何(どう)して活動(くわつどう)をする(つも)りだ。085チツと荒魂(あらみたま)()()したら如何(どう)だ。086なる堪忍(かんにん)(たれ)もする、087ならぬ堪忍(かんにん)するが堪忍(かんにん)だ。088(しの)ぶべからざるを(しの)ぶのが所謂(いはゆる)荒魂(あらみたま)発動(はつどう)だ、089仁義(じんぎ)勇者(ゆうしや)だ』
090純公(すみこう)『それだつて(てき)(やつ)091伊太公(いたこう)ばかりか(おそ)(おほ)くも(われ)()(ほう)ずる神柱(かむばしら)(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)を、092悪神(わるがみ)(よば)はりし打亡(うちほろ)ぼし()れむと、093貴方(あなた)もお()きの(とほ)進軍歌(しんぐんか)(うた)つて()つたぢやありませぬか。094(これ)如何(どう)して看過(かんくわ)する(こと)出来(でき)ませうぞ。095(きみ)(はづかし)められて(しん)()すとは此処(ここ)(こと)096(わたし)はこれから()にます。097何卒(どうぞ)(その)()(はな)して(くだ)さいませ』
098玉国別(たまくにわけ)()(おのれ)()るもののために()す、099玉国別(たまくにわけ)だとて忠誠(ちうせい)無比(むひ)伊太公(いたこう)をムザムザ(てき)(わた)して(なに)安閑(あんかん)としてゐるものか。100(むね)万斛(ばんこく)(なみだ)(たた)灼熱(しやくねつ)()(ただよ)はして()千万(せんばん)無量(むりやう)(わが)心裡(しんり)101ちとは推量(すゐりやう)してくれても()からう』
102純公(すみこう)『ヘエー』
103道公(みちこう)(なん)()つても先生(せんせい)仰有(おつしや)(とほ)(しばら)時機(じき)()てい。104何程(なにほど)貴様(きさま)(かしこ)いと()つてもヤツパリ先生(せんせい)智慧(ちゑ)には(かな)ふまいぞ。105屹度(きつと)伊太公(いたこう)仮令(たとへ)(てき)(とら)はれても無事(ぶじ)生命(いのち)(たも)つてゐるに(ちが)ひない。106(てき)(やつ)107伊太公(いたこう)をムザムザ(ころ)さうものなら、108此方(こちら)様子(やうす)(わか)らないから屹度(きつと)生命(いのち)(たも)たしておくに相違(さうゐ)ない。109如何(どう)なり()くも(みち)のため、110()()めだ。111あまり心配(しんぱい)するな』
112 玉国別(たまくにわけ)益々(ますます)冷然(れいぜん)として、
113玉国別『どうで伊太公(いたこう)吾々(われわれ)命令(めいれい)()かずに単独(たんどく)行動(かうどう)()つたのだから、114表向(おもてむ)きから()へば反抗者(はんかうしや)()つてもいいのだが、115(かれ)(こころ)(また)()みとつてやらねばなるまい。116(いづ)(てき)(とら)はれ大変(たいへん)(くるし)みをするだらうが(けつ)して(かみ)(さま)はお見捨(みす)(あそ)ばさぬから、117なるべく伊太公(いたこう)苦痛(くつう)軽減(けいげん)する(やう)吾々(われわれ)(いの)るより(みち)はない。118最前(さいぜん)道公(みちこう)にソツと吾々(われわれ)策戦(さくせん)計劃(けいくわく)打明(うちあ)かし、119純公(すみこう)には()はなかつたのは(ふか)(かんが)へのあつての(こと)だ。120伊太公(いたこう)(やう)慌者(あわてもの)()()(てき)(とら)へられてウツカリ(しやべ)られては大変(たいへん)だと(おも)つたから、121純公(すみこう)水臭(みづくさ)いと(おも)つただらうが、122それも()むを()なかつたのだ。123(いま)となつては(なに)(かく)必要(ひつえう)もない。124(なに)もかも安心(あんしん)する(やう)()つてやらう。125(じつ)(ところ)はバラモンの軍隊(ぐんたい)無事(ぶじ)通過(つうくわ)させたならば屹度(きつと)懐谷(ふところだに)方面(はうめん)治国別(はるくにわけ)(さま)一隊(いつたい)出会(でくは)すであらう。126さうすれば(まへ)(うしろ)から治国別(はるくにわけ)127玉国別(たまくにわけ)言霊隊(ことたまたい)攻撃(こうげき)開始(かいし)し、128(てき)怪我(けが)なしに帰順(きじゆん)させ(まこと)(みち)引入(ひきい)れようと()(かんが)へだ。129最前(さいぜん)道公(みちこう)一寸(ちよつと)(この)大略(たいりやく)()らしたのだから道公(みちこう)もそれがために発動(はつどう)中止(ちゆうし)したのだ。130アハヽヽヽ』
131純公(すみこう)『イヤ、132それで(わたし)安心(あんしん)(いた)しました。133何時(いつ)()にか敵軍(てきぐん)()つて(しま)つたぢやありませぬか。134伊太公(いたこう)首尾(しゆび)()(てき)捕虜(ほりよ)となつたでせうなア』
135玉国別(たまくにわけ)『ウン、136そりや(たしか)捕虜(ほりよ)となつてゐる。137(なに)()もあれ月夜(つきよ)(さいは)(ほこら)(まへ)まで出張(でば)らうぢやないか。138(しか)(なが)らまだ(てき)片割(かたわ)れが(のこ)つてゐないとも(かぎ)らないから(こゑ)()てぬ(やう)139足音(あしおと)(しの)ばせて(ほこら)(まへ)まで()つて()ようぢやないか』
140道公(みちこう)先生(せんせい)141貴方(あなた)はお()(わる)(うへ)(すこ)しく頭痛(づつう)がなさるのだから何卒(どうぞ)此処(ここ)純公(すみこう)一緒(いつしよ)休息(きうそく)してゐて(くだ)さい。142(わたし)一寸(ちよつと)斥候隊(せきこうたい)(やく)(つと)めて()ます。143さうして何者(なにもの)()ないと(おも)へば()()つて合図(あひづ)(いた)しますから、144()がなりましたら何卒(なにとぞ)ボツボツお()(くだ)さいませ』
145 玉国別(たまくにわけ)(あたま)両手(りやうて)(おさ)(なが)ら、
146玉国別『ウン、147そんなら()苦労(くらう)だが(てき)様子(やうす)(うかが)つて()()れ。148(しばら)くの(あひだ)()森影(もりかげ)純公(すみこう)とヒソヒソ(ばなし)でもやつて()(こと)としよう』
149道公(みちこう)左様(さやう)ならば一足(ひとあし)(さき)へ』
150()(なが)(ほこら)をさして(あし)(しの)ばせノソリノソリと(すす)んで()く。
151玉国別(たまくにわけ)純公(すみこう)152心配(しんぱい)(いた)すな。153もう一時(ひととき)ばかりは大丈夫(だいぢやうぶ)だ。154一時(ひととき)()つと敵軍(てきぐん)屹度(きつと)治国別(はるくにわけ)言霊(ことたま)()たれて此処(ここ)()(かへ)つて()るに相違(さうゐ)ない。155それ(まで)十分(じふぶん)休養(きうやう)をなし、156英気(えいき)(やしな)うておくが()からうぞ』
157純公(すみこう)『イヤ、158それは(いさ)ましい(こと)(ござ)いますな。159そんなら此処(ここ)()(なが)治国別(はるくにわけ)(さま)のお(あま)りを頂戴(ちやうだい)すると()ふのですか。160それを(うけたま)はりますと(おも)はず(うで)がリユウリユウと()()しました。161どれ(いま)(うち)両腕(りやううで)(より)をかけて(てき)()(こと)としませう』
162玉国別(たまくにわけ)腕力(わんりよく)必要(ひつえう)はない。163(まへ)身魂(みたま)(より)をかけて何者(なにもの)(あら)はれても(さわ)がず、164(あせ)らず、165泰然(たいぜん)自若(じじやく)として大山(たいざん)(ごと)(みたま)(つく)つておかねばならないぞ。166一寸(ちよつと)した(こと)にも(あわて)ふためき軽挙(けいきよ)妄動(もうどう)する(やう)(こと)では悪魔(あくま)征服(せいふく)御用(ごよう)到底(たうてい)駄目(だめ)だ』
167純公(すみこう)(とき)道公(みちこう)()つから()()たぬぢやありませぬか。168これを(おも)へばまだ残党(ざんたう)(ほこら)附近(ふきん)()るのでせうなア』
169玉国別(たまくにわけ)『ウン、170(たしか)()(はず)だ。171二人(ふたり)ばかり見張(みはり)がついてゐるだらう』
172純公(すみこう)貴方(あなた)()(わる)いのに、173(しか)夜分(やぶん)ぢやありませぬか。174(ほこら)(まへ)()人間(にんげん)如何(どう)して()えますか。175(わたし)道公(みちこう)姿(すがた)さへ、176テンデ(わか)りませぬがな』
177玉国別(たまくにわけ)『さうだらう。178肉眼(にくがん)では()えない。179(こころ)(まなこ)()たのだ。180(ほこら)(まへ)には二人(ふたり)(をとこ)181種々(いろいろ)(めう)(はなし)をしてゐる。182道公(みちこう)(ほこら)(うしろ)から(いき)()らして一言(いちごん)(もら)さじと()いてゐる』
183純公(すみこう)『ヘエ、184その(こゑ)(きこ)えますかな。185貴方(あなた)のお(つむ)異状(いじやう)(きた)しガンガン()つて()るのでそれが人声(ひとごゑ)(きこ)えるのぢやありませぬか。186(わたし)壮健(さうけん)(あたま)でも(みみ)には(はい)りませぬがな』
187玉国別(たまくにわけ)(おれ)(こころ)(みみ)()いてゐるのだ。188天耳通(てんじつう)(ちから)だよ』
189純公(すみこう)『いやもう感心(かんしん)(いた)しました。190ヤツパリ(わたし)先生(せんせい)何処(どこ)(ちが)つた(ところ)がありますな』
191 一方(いつぱう)(ほこら)(まへ)には甲乙(かふおつ)二人(ふたり)のバラモン(けう)目付(めつけ)192(ほこら)(まへ)にドツカと()し、193(あと)から、194もしや三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(あら)はれ(きた)りはせぬかと片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)厳命(げんめい)によつて臨時(りんじ)関守(せきもり)(つと)めてゐる。
195(かふ)『オイ、196(にはか)(ほこら)(うら)から三五教(あななひけう)(やつ)一匹(いつぴき)()()しやがつて大変(たいへん)番狂(ばんくるは)せを(くら)はせやがつたぢやないか。197片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(さま)彼奴(あいつ)痛棒(つうぼう)(くら)つて()から()()落馬(らくば)なさつたが本当(ほんたう)(あぶ)ない(こと)だつた。198三五教(あななひけう)(やつ)生命(いのち)()らずだからな』
199(おつ)本当(ほんたう)盲滅法(めくらめつぱふ)(むか)()ずと()(やつ)だな。200(なん)()つても素盞嗚(すさのをの)(みこと)眷族(けんぞく)だから(あら)つぽい(こと)をしよるわい。201クルスの(もり)では照国別(てるくにわけ)宣伝使(せんでんし)一行(いつかう)()(まく)られ金剛杖(こんがうづゑ)(もつ)縦横(じうわう)無尽(むじん)(たた)きつけられ、202無残(むざん)にも散々(ちりぢり)バラバラに敗走(はいそう)し、203(やうや)くライオン(がは)勢揃(せいぞろ)ひし此処迄(ここまで)やつて()(くらゐ)だから、204(この)(いくさ)中々(なかなか)容易(ようい)(こと)勝利(しようり)()られまいぞ。205(なん)()つても三五教(あななひけう)天下(てんか)強敵(きやうてき)だからな』
206(かふ)(しか)し、207(なん)だよ、208照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)(つぎ)にやつて()るのは玉国別(たまくにわけ)()(こと)だ。209チヤーンと斥候(せきこう)報告(はうこく)によつて片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)には(わか)つてゐるのだよ。210大方(おほかた)最前(さいぜん)(あら)はれた(ゐのしし)武者(むしや)玉国別(たまくにわけ)部下(ぶか)かも()れないぞ。211さすれば玉国別(たまくにわけ)(やつ)212(この)(ほこら)近所(きんじよ)潜伏(せんぷく)してゐるのぢやあるまいか。213そんな(こと)だつたら、214それこそ大変(たいへん)だがな』
215(おつ)『もう三五教(あななひけう)(はなし)はいい加減(かげん)()()げたら如何(どう)だ。216あななひ(どころ)かあぶないわ。217もうこれきりあぶない(けう)(こと)(はな)さぬ(やう)にして、218(なに)(ひと)口直(くちなほ)しに生言霊(いくことたま)をチツとばかり(にほ)はしたらどうだ』
219(かふ)『さうだね、220吾々(われわれ)殿(しんがり)(つと)めて()るのだから矢受(やう)けになる気遣(きづか)ひもなし、221()()安全(あんぜん)地帯(ちたい)()(やう)なものだ。222(ひと)昔噺(むかしばなし)でも(おも)()して博覧会(はくらんくわい)でも(ひら)かうかな』
223(おつ)『そりや面白(おもしろ)からう。224賛成(さんせい)々々(さんせい)225入場料(にふぢやうれう)何程(いくら)()るのだ』
226(かふ)貴様(きさま)創立(さうりつ)委員(ゐゐん)だから特別(とくべつ)優待券(いうたいけん)交附(かうふ)する。227随分(ずゐぶん)面白(おもしろ)(おれ)のローマンスを()かしてやつたら()()(やう)だぞ。228エーン』
229(おつ)(なに)(ぬか)しやがるのだい。230南瓜(かぼちや)目鼻(めはな)をつけた(やう)()面相(めんさう)で、231ローマンスもあつたものかい』
232(かふ)『それでもあつたのだから仕方(しかた)がない。233あつた(こと)()りのまま(さら)()したならば如何(いか)頑強(ぐわんきやう)貴様(きさま)だつて自然(しぜん)()(ほそ)くなり(くち)()(はな)がむけつき垂涎(すゐえん)三尺(さんじやく)()()なしと()愉快(ゆくわい)境遇(きやうぐう)引入(ひきい)れられるかも()れないぞ』
234(おつ)『アハヽヽヽ(なに)(ぬか)すのだい。235そんなら(おと)(ばなし)でも()くと(おも)つて辛抱(しんばう)して()いてやらう。236折角(せつかく)博覧会(はくらんくわい)開設(かいせつ)しても観覧者(くわんらんしや)がなければ会計(くわいけい)がもてないからな』
237(かふ)(おれ)(うま)れは貴様(きさま)()つてる(とほ)りチルの(くに)だ。238そこにチルとばかり渋皮(しぶかは)()けた、239(いな)(おほい)渋皮(しぶかは)()けた(ゆき)(はな)かと()(やう)なホールと()ふナイスがあつたのだ。240(とし)二八(にはち)二九(にく)からぬ(はな)(はぢ)らふ優姿(やさすがた)241そいつが毎日(まいにち)日日(ひにち)乳母(うば)()()かれて天王(てんわう)(もり)参拝(さんぱい)しよるのだ。242その(とほ)(みち)丁度(ちやうど)(おれ)(うち)(まへ)だ。243往復(わうふく)(とも)(おれ)何時(いつ)もお(きやう)調(しら)べて()ると、244()るともなし、245()ぬともなし、246(めう)目付(めつき)をして(とほ)りやがるぢやないか』
247(おつ)『ウン、248そらさうだらう。249貴様(きさま)(やう)南瓜面(かぼちやづら)は、250滅多(めつた)類例(るゐれい)がないからな。251(ただ)化物(ばけもの)()ると(おも)つて(とほ)つてゐたのだらうよ』
252(かふ)馬鹿(ばか)()ふない、253思案(しあん)(ほか)()(こと)()つてるか。254そこが(こひ)妙味(めうみ)だ。255(おれ)だつて自分(じぶん)(なが)愛想(あいさう)のつきる(やう)(この)面相(めんさう)256乞食(こじき)()だつて、257旃陀羅(せんだら)()だつて、258一瞥(いちべつ)もくれないだらうと予期(よき)して()たのだ。259それが貴様(きさま)260(あに)(はか)らむや、261天王(てんわう)(もり)(まゐ)りは表向(おもてむき)(その)(じつ)(おれ)何々(なになに)して()たのだといの、262エヘヽヽヽ』
263(おつ)『ウフヽヽヽコラ、264いい加減(かげん)(おと)(ばなし)()()げぬかい』
265(かふ)馬鹿(ばか)()ふな。266こんなローマンスを(おと)したり(ほか)したりして(たま)らうか。267(おれ)一生(いつしやう)昔噺(むかしばなし)だから、268(にしき)のお守袋(まもり)さまに()れて(かた)保護(ほご)してゐるのだ。269(ゆめ)にだつてこんな(こと)(わす)れて(たま)るかい』
270(おつ)『それから如何(どう)したと()ふのだ。271(はや)(あと)()はぬかい』
272(かふ)追徴金(つゐちようきん)何程(いくら)()すか。273こんな正念場(しやうねんば)になつてから天機(てんき)(もら)して、274貴様(きさま)()幾分(いくぶん)でもかきとられて(しま)つちや(たちま)大損耗(だいそんもう)(きた)家資(かし)分散(ぶんさん)(やく)()ふかも()れないからな』
275(おつ)『エー、276口上(こうじやう)(なが)(やつ)だな。277そんならもう()いてやらぬわ。278(おれ)(はう)から真平(まつぴら)御免(ごめん)だ、279(ひら)(この)()はお(ことわり)(まを)しませうかい』
280(かふ)『ウン、281(その)御免(ごめん)(おも)()した。282さうやつたさうやつた(おれ)経典(きやうてん)一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつて奉読(ほうどく)してゐると松虫(まつむし)(やう)(こゑ)(まど)(そと)に「オホヽヽヽ(なん)とマア(うぐひす)(やう)立派(りつぱ)(こゑ)(こと)283あんな(すず)しい(こゑ)()(かた)屹度(きつと)(こころ)綺麗(きれい)(ひと)でせうね。284(あたい)あんな(ひと)(をつと)仮令(たとへ)(いち)(にち)でも()(こと)出来(でき)たならば()んでも得心(とくしん)だわ。285ナア乳母(うば)や」と(はづ)かし(さう)(こゑ)(きこ)えて()る。286経典(きやうてん)拝読(はいどく)(ふけ)つて()つた(おれ)もフツと(かほ)()げて窓外(さうぐわい)(なが)むれば嬋妍(せんけん)窈窕(えうてう)たる美人(びじん)薔薇(しやうび)(はな)(あめ)(うるほ)(ごと)絶世(ぜつせい)美人(びじん)287ハテ不思議(ふしぎ)よとよくよく()れば何時(いつ)(わが)門先(かどさき)(とほ)るホールさまだつた。288チルの(くに)のホールさまと()へば美人(びじん)名高(なだか)いものだ。289ハルナの(みやこ)石生能(いその)(ひめ)だつて真裸足(まつぱだし)()()すと()尤物(いうぶつ)だからね、290エーン』
291(おつ)(なん)ぢや、292みつともない。293しまりのない(こゑ)()しやがつて、294(あご)(ひも)(ほど)けて()るぢやないか』
295(かふ)『ほどけるのは当然(あたりまへ)だ「とけて(うれ)しき二人(ふたり)(なか)」と()ふのだからな』
296(おつ)『それから如何(どう)したと()ふのだ』
297(かふ)『それからが正念場(しやうねんば)だ。298(おれ)一寸(ちよつと)()()かして「何方(どなた)()りませぬが、299そこは()(あた)つてお(あつ)いでせう。300破家(あばらや)なれどテクシの住宅(ぢゆうたく)301サアサア()遠慮(ゑんりよ)なくお二人(ふたり)ともお這入(はい)りなさい」とかました(ところ)302ホールさまはパツと(ほう)(くれなゐ)()らし起居(たちゐ)振舞(ふるまひ)(しと)やかに裾模様(すそもやう)梅花(ばいくわ)()らしたお小袖(こそで)でゾロリゾロリと庭土(にはつち)()(なが)欣然(きんぜん)として()入来(じゆらい)()光景(くわうけい)だ。303(おれ)(をとこ)(うま)れた甲斐(かひ)にはこんなナイスと一言(ひとくち)(はなし)するさへも光栄(くわうえい)だと(おも)つてゐるのに、304エヘヽヽヽ(おれ)のお(やかた)へお這入(はい)(あそ)ばすぢやないか。305(その)(とき)(うれ)しさと()つたら(てん)もなければ()もなく、306一切(いつさい)万事(ばんじ)(ただ)(この)美人(びじん)(いち)(にん)テクシ(いち)(にん)307宇宙(うちう)中心(ちうしん)()つて()(やう)心地(ここち)がした。308エーンそりやお(まへ)309エヘヽヽヽウフヽヽヽ』
310(おつ)『そりや(なに)(ぬか)すのだ。311さう意茶(いちや)つかさずに(はや)()つて(しま)はないか』
312(かふ)『さうするとホールさま、313ニタリと(わら)(べに)(ちひ)さい(くちびる)をパツと(ひら)き「これなテクシさま、314あたいが毎日(まいにち)日日(ひにち)天王(てんわう)(もり)参拝(さんぱい)するのは(なん)のためだと(おも)つて(くだ)さいますか」、315とやさしい(こゑ)(ぬか)しやがるのだ。316エヘヽヽヽあゝ(よだれ)主人(しゆじん)(ゆる)しもなく滅多(めつた)矢鱈(やたら)出動(しゆつどう)しやがるわい。317さうしてな、318(あたた)かい(やはら)らかい真白気(まつしろけ)()(おれ)()をグツと(にぎ)()()(からだ)(ゆす)りよつた(とき)(うれ)しさ、319エヘヽヽヽ』
320(おつ)『それから如何(どう)したのだ』
321(かふ)(あと)()はいでも()れた(こと)だ。322大抵(たいてい)そこ(まで)()つたら(なん)頭脳(づなう)空気(くうき)がぬけた貴様(きさま)でも推量(すゐりやう)がつくだらう』
323(おつ)『そんな正念場(しやうねんば)中止(ちゆうし)されちや今迄(いままで)辛抱(しんばう)して()いた効能(かうのう)がないわい。324ドツと()()んで(その)(あと)引続(ひきつづ)きお(みみ)(たつ)せぬかい』
325(かふ)『バベルの(たふ)から()んだ(やう)心持(こころもち)でドツと奮発(ふんぱつ)して秘密(ひみつ)(くら)()けてやらうかな。326(じつ)(この)テクシもホールさまの(やはら)かい()でグツと(にぎ)られ(やなぎ)(やう)視線(しせん)(そそ)がれた(とき)にや、327まるで章魚(たこ)のやうにグニヤ グニヤ グニヤとなつて(しま)四肢(しこ)五体(ごたい)五臓(ござう)六腑(ろつぷ)躍動(やくどう)心臓寺(しんざうでら)和尚(おせう)警鐘(けいしよう)乱打(らんだ)する。328まるで天変(てんぺん)地異(ちい)突発(とつぱつ)した心持(こころもち)がしたが、329そこは(こひ)名人(めいじん)(ちが)つたものだ。330天変(てんぺん)地異(ちい)警鐘(けいしよう)もグツと鎮圧(ちんあつ)素知(そし)らぬ(かほ)してキツとなり、331儼然(げんぜん)たる態度(たいど)(もつ)てホールさまに(むか)(わざ)渋柿(しぶがき)でも()んだやうな(つら)(よそほ)ひ「これはこれは大家(たいか)のお(ぢやう)さまの()(もつ)吾々(われわれ)(ごと)青二才(あをにさい)()(にぎ)られるとは()冗談(じやうだん)にも(ほど)がある」とかました(ところ)332ホールさまもよつぽど(おれ)にホールさまと()えて、333(おも)()つたやうに「エーもう()うなつては(かま)ひませぬ、334どうなつと貴方(あなた)勝手(かつて)にして(くだ)さい」と(やはら)かい(しろ)いデツプリとした(からだ)(おれ)(ひざ)()げつけられた(とき)(うれ)しさ、335エヘヽヽヽこれが(なん)(よろこ)ばずに()れやうか。336それで(おれ)(をとこ)だ、337据膳(すゑぜん)()はねば(はぢ)だと(おも)(いや)ぢやないけれど(ひと)(はし)()つてやらうかと(やはら)かいフサフサした(ちち)(あた)りをグツと(にぎ)るや(いな)や、338(あに)(はか)らむや(いもうと)(はか)らむやホールさまはピーンと肱鉄砲(ひぢでつぱう)()ましよつた。339ハア…………よつぽどよく(おれ)においでて()るな。340乳母(うば)(まへ)だからあんな体裁(ていさい)(つく)つてゐるのだな。341益々(ますます)前途(ぜんと)有望(いうばう)だ、342(はつ)(しやく)男子(だんし)343(はし)()らずんばある()からずと、344(また)もやグツと()りつく途端(とたん)にホールさまは「エー」と一声(ひとこゑ)強力(がうりき)(まか)せて(おれ)(からだ)(まど)(そと)へホール()しよつた。345()()された(おれ)(かど)(とが)つた(いし)(こし)()ち「アイタヽヽ」と(おも)つた途端(とたん)()()めた。346そしたら貴様(きさま)(のみ)(やつ)347(おれ)(こし)一生(いつしやう)懸命(けんめい)()んでけつかつたのだ、348アハヽヽヽ』
349(おつ)『ウフヽヽヽ、350大方(おほかた)そんな(こと)だと(おも)つてゐたよ』
351 (ほこら)(うしろ)から割鐘(われがね)(やう)(わら)(ごゑ)
352『クワツハヽヽヽ』
353 甲乙(かふおつ)二人(ふたり)(この)(こゑ)(きも)(つぶ)し、
354甲、乙『ヤア大変(たいへん)だ。355化物(ばけもの)(あら)はれたり』
356一生(いつしやう)懸命(けんめい)坂道(さかみち)さしてフース フースと(いき)(はづ)ませ()げて()く。
357大正一一・一一・二七 旧一〇・九 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki