朝晴れの庭に雀のちうちうと
唄ひて御代島青葉輝く。
栗原氏土居より肉体諸共に
講演終りて帰り来たれり。
今治の片山宣使わが一行
迎への為に上り来ませリ。
君恋ふる心の空は五月闇
燃ゆる蛍の雨にも消えなく。(蛍)
午後の二時白石邸を立ち出でて
今治停車場さして急ぎぬ。
前後三日間の新居浜の滞在、白石家に非常に厄介を掛けしが今日漸く今治に向ふ事となり、午後二時と云ふに三台の自動車に分乗、楠の大樹を以て名高き県社一宮神社の前を疾駆しつつ、定刻二十分前に着駅、今治行の汽車を待つ事となりぬ。新居浜駅には見送りの人々数十人既に已に先着してあり。
いよいよ発車するや白石夫妻を始めとし、白石亀雄氏、同夫人、令嬢、小笠原夫妻、片山誉吉、青野さかえ、一色明、服部恕一、真鍋実の諸氏同車、今治の宿まで見送りたり。直ちに支部に入り神前に拝礼終り、米屋町一丁目宮田氏方に入る。正に午後五時、夕陽暖かに風和ぎて最とも静なり。
別子銅山鉱石運輸の鉄路線
海岸さして布設せる見ゆ。
中萩の駅の北方松の岡
茂りて桑園広く連なる。
渦井川左右の堤に常磐木の
茂れる風光捨てがたきかな。
柑橘の段々畠のまん中に
大樹一本茂り立つ見ゆ。
石槌の高峯は雲に頂を
包まれ乍ら雄姿崇高し。
右手の森いと新らしき楼門は
石槌山の出張所なりけり。
産土の森青々と老木の
茂る小松の駅につきたり。
中山川鉄橋渡る上下の
土堤の並木の松ぞ美はし。
山遠み海遠みつつ吾汽車は
壬生川駅に流れ入れたり。
大明神川の左右の岸の辺に
翠も清く松並木立つ。
麦の畠黄ばみて海の面見え初めつ
三芳の駅に吾汽車は着きぬ。
白妙青松茂れる海辺に厳かに
綱敷天満宮の社の見ゆ。
漆器にて名を知られたる桜井の
駅のあたりの風光佳きかな。
富田より遠く南方見渡せば
釈迦を祀りし桂山茂る。
蒼社川水浅みつつ両岸の
並木林の景色妙なり。
今治の駅に降れば宇知麿と
岩田氏宣信倶に待ち居り。
自動車を連ねて午後四時二十分
今治支部に安く入りけり。
信徒と支部の礼拝相すませ
宮田氏方につきて休らふ。
波止浜の講演終り宇知麿と
栗原両氏夜半に帰る。
新しき木の香の匂ふ置風呂に
入りて身体の疲れを払ふ。