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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第25巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 相縁奇縁
第1章 水禽の音
第2章 与太理縮
第3章 鶍の恋
第4章 望の縁
第2篇 自由活動
第5章 酒の滝壺
第6章 三腰岩
第7章 大蛇解脱
第8章 奇の巌窟
第3篇 竜の宮居
第9章 信仰の実
第10章 開悟の花
第11章 風声鶴唳
第12章 不意の客
第4篇 神花霊実
第13章 握手の涙
第14章 園遊会
第15章 改心の実
第16章 真如の玉
第5篇 千里彷徨
第17章 森の囁
第18章 玉の所在
第19章 竹生島
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第25巻(子の巻)
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<<< 信仰の実
(B)
(N)
風声鶴唳 >>>
第一〇章
開悟
(
かいご
)
の
花
(
はな
)
〔七五六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻
篇:
第3篇 竜の宮居
よみ(新仮名遣い):
たつのみやい
章:
第10章 開悟の花
よみ(新仮名遣い):
かいごのはな
通し章番号:
756
口述日:
1922(大正11)年07月10日(旧閏05月16日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
スワの湖の男島と女島は、神に仕える諸神が金銀の蛇・ムカデとなって三寒三熱限りない苦痛を嘗めて世を救うという、諸善竜神の修行場であった。清公に入り込んだ蛇は、玉依姫の分霊・玉永姫の化身であった。
アイルやテーナやチャンキーを女島に投げて苦しい修行をさせ、水晶の身魂に磨き上げた。モンキーはひとり善悪の判断に迷ったが、亀によって導かれ、心の闇を照らされた。
モンキーは神船に乗って進み、遠浅の湖岸に向かって来た。金砂の磯端に着くと、モンキーは飛び降りた。美しい湖面の光景を眺めながら進んで行くと、突然後ろから、虎の両手がモンキーの肩を掴んだ。モンキーは引かれて林の中に導かれ、瑠璃のごとき岩石の元に穿たれた岩窟に導き入れられた。
モンキーはいかなることが出来しても、理智を捨ててただ神に任すべく決心を固めていた。ただ自然に引かれるままに進んで行った。
モンキーは光り輝く洞穴の中をきりきり舞いしながら進んで行く。何時の間にはモンキーは、美しい宝玉で飾られた宝座の上に端座していた。洞穴内の遥か向こうから、五つの玉の光が目も眩むばかりに照らしてきた。
モンキーは思わず目を閉じたが、玉の光る方を眺めてみると、紫の玉には初稚姫、赤い玉には玉能姫、青い玉には玉治別、白い玉には久助、黄色い玉にはお民の顔が映っていた。モンキーはたちまち精神が宙に浮き上がる如く感じ、その場に倒れてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-09-05 19:12:12
OBC :
rm2510
愛善世界社版:
155頁
八幡書店版:
第5輯 87頁
修補版:
校定版:
160頁
普及版:
70頁
初版:
ページ備考:
001
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
も
清公
(
きよこう
)
が
002
チヤンキー(長吉)モンキー(茂吉)
始
(
はじ
)
めとし
003
アイル、テーナの
五人
(
ごにん
)
連
(
づ
)
れ
004
黄金
(
こがね
)
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
海中
(
わだなか
)
の
005
竜宮島
(
りうぐうじま
)
の
中心地
(
ちうしんち
)
006
玉野
(
たまの
)
ケ
原
(
はら
)
を
打
(
う
)
ち
渡
(
わた
)
り
007
酷暑
(
こくしよ
)
の
光
(
ひかり
)
受
(
う
)
け
乍
(
なが
)
ら
008
涼風
(
すずかぜ
)
香
(
かを
)
る
諏訪
(
すは
)
の
湖
(
うみ
)
009
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
して
010
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
011
浮世
(
うきよ
)
の
衣
(
きぬ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
捨
(
す
)
てつ
012
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
の
真裸体
(
まつぱだか
)
013
後
(
あと
)
をも
先
(
さき
)
をも
みづ
御霊
(
みたま
)
014
五
(
い
)
つの
御霊
(
みたま
)
は
諸共
(
もろとも
)
に
015
身
(
み
)
を
躍
(
をど
)
らして
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
めば
016
千尋
(
ちひろ
)
の
底
(
そこ
)
より
猶
(
な
)
ほ
深
(
ふか
)
き
017
罪
(
つみ
)
の
凝固
(
ぎようこ
)
の
清公
(
きよこう
)
を
018
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
てて
各自
(
めいめい
)
は
019
歩
(
あゆ
)
むに
連
(
つ
)
れて
摺鉢
(
すりばち
)
の
020
深
(
ふか
)
き
水底
(
みそこ
)
に
身
(
み
)
を
沈
(
しづ
)
め
021
一度
(
いちど
)
は
息
(
いき
)
も
絶
(
き
)
れたるが
022
金銀
(
きんぎん
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
を
鏤
(
ちりば
)
めし
023
目無
(
めなし
)
堅間
(
かたま
)
の
神船
(
しんせん
)
に
024
棹
(
さを
)
さし
来
(
きた
)
る
神人
(
しんじん
)
に
025
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げられ
常磐木
(
ときはぎ
)
の
026
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
立
(
た
)
ち
並
(
なら
)
ぶ
027
雄島
(
をしま
)
の
岸
(
きし
)
に
救
(
すく
)
はれぬ
028
抑
(
そもそも
)
此島
(
ここ
)
は
竜宮
(
りうぐう
)
の
029
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
ふる
百神
(
ももがみ
)
の
030
金
(
きん
)
と
銀
(
ぎん
)
との
蛇
(
じや
)
と
変
(
へん
)
じ
031
或
(
あるひ
)
は
蜈蚣
(
むかで
)
と
化
(
な
)
り
変
(
かは
)
り
032
澆季
(
げうき
)
末法
(
まつぽふ
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
033
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
けて
神
(
かみ
)
の
代
(
よ
)
を
034
建
(
た
)
てむが
為
(
ため
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
に
035
三寒
(
さんかん
)
三熱
(
さんねつ
)
限
(
かぎ
)
りなき
036
苦痛
(
くつう
)
を
嘗
(
な
)
めて
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
037
諸善
(
しよぜん
)
竜神
(
りうじん
)
の
修業場
(
しゆげふば
)
038
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
039
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
になり
変
(
かは
)
り
040
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
も
清公
(
きよこう
)
が
041
喉
(
のど
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
這
(
は
)
ひ
込
(
こ
)
みし
042
黄金
(
こがね
)
の
蛇
(
へび
)
は
何者
(
なにもの
)
ぞ
043
玉依姫
(
たまよりひめ
)
の
分
(
わ
)
け
御霊
(
みたま
)
044
玉永姫
(
たまながひめ
)
の
化身
(
けしん
)
にて
045
竜宮洲
(
りうぐうじま
)
を
清
(
きよ
)
めむと
046
名
(
な
)
も
清公
(
きよこう
)
の
体
(
たい
)
を
借
(
か
)
り
047
アイルテーナやチヤンキーを
048
蜈蚣
(
むかで
)
の
島
(
しま
)
に
投
(
な
)
げやりて
049
現界
(
このよ
)
幽界
(
あのよ
)
の
境
(
さかひ
)
なる
050
苦
(
くる
)
しき
修業
(
しうげふ
)
を
事依
(
ことよ
)
さし
051
水晶
(
すゐしやう
)
身魂
(
みたま
)
に
磨
(
みが
)
き
上
(
あ
)
げ
052
罪
(
つみ
)
も
穢
(
けがれ
)
も
軽衣
(
かるごろも
)
053
錦
(
にしき
)
の
船
(
ふね
)
に
運
(
はこ
)
ばれて
054
竜
(
たつ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
055
雄島
(
をしま
)
の
岸
(
きし
)
に
残
(
のこ
)
されし
056
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
モンキーは
057
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見送
(
みおく
)
りて
058
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
の
判断
(
はんだん
)
に
059
迷
(
まよ
)
ふ
折
(
をり
)
しも
金銀
(
きんぎん
)
の
060
浪
(
なみ
)
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
けて
浮
(
うか
)
び
来
(
く
)
る
061
青緑毛
(
せいりよくまう
)
の
大亀
(
おほかめ
)
は
062
忽
(
たちま
)
ちモンキーが
足許
(
あしもと
)
に
063
のたりのたりと
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
り
064
山上
(
さんじやう
)
目蒐
(
めが
)
けて
這
(
は
)
ひ
出
(
だ
)
せば
065
茲
(
ここ
)
にモンキーは
遅
(
おく
)
れじと
066
亀
(
かめ
)
の
後
(
あと
)
をば
追
(
お
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
067
大樹
(
たいじゆ
)
の
枝
(
えだ
)
に
駆
(
か
)
け
登
(
のぼ
)
り
068
亀
(
かめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
高所
(
かうしよ
)
より
069
忽
(
たちま
)
ち
地上
(
ちじやう
)
に
顛落
(
てんらく
)
し
070
大切
(
だいじ
)
の
頭
(
あたま
)
を
打
(
う
)
ちながら
071
神
(
かみ
)
の
御息
(
みいき
)
を
両
(
りやう
)
の
手
(
て
)
の
072
掌
(
ひら
)
に
吹
(
ふ
)
きかけ
疵所
(
きずしよ
)
をば
073
つるりつるりと
撫
(
な
)
でつれば
074
疵
(
きず
)
は
忽
(
たちま
)
ち
癒
(
い
)
えにける
075
緑毛
(
りよくまう
)
の
亀
(
かめ
)
は
足早
(
あしばや
)
に
076
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
駆
(
か
)
け
出
(
いだ
)
す
077
我
(
われ
)
遅
(
おく
)
れじとモンキーは
078
汀
(
みぎは
)
に
進
(
すす
)
む
折柄
(
をりから
)
に
079
緑毛
(
りよくまう
)
の
亀
(
かめ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
080
身
(
み
)
を
躍
(
をど
)
らして
水中
(
すゐちう
)
に
081
ザンブと
許
(
ばか
)
り
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
みぬ
082
モンキー
後
(
あと
)
より
後
(
おく
)
れじと
083
又
(
また
)
もや
水中
(
すゐちう
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
めば
084
手足
(
てあし
)
も
疲
(
つか
)
れ
身
(
み
)
も
弱
(
よわ
)
り
085
息
(
いき
)
も
絶
(
た
)
えむとする
所
(
ところ
)
086
緑毛
(
りよくまう
)
の
亀
(
かめ
)
は
何故
(
なにゆゑ
)
か
087
湖面
(
こめん
)
に
姿
(
すがた
)
を
浮
(
うか
)
べつつ
088
手足
(
てあし
)
を
休
(
やす
)
めて
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り
089
モンキーの
来
(
きた
)
るを
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
たる
090
漸
(
やうや
)
く
亀
(
かめ
)
に
縋
(
すが
)
りつき
091
両手
(
りやうて
)
に
甲
(
かふ
)
を
抱
(
かか
)
へつつ
092
命
(
いのち
)
辛々
(
からがら
)
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く
093
亀
(
かめ
)
は
直様
(
すぐさま
)
水中
(
すゐちう
)
を
094
潜
(
もぐ
)
りて
深
(
ふか
)
き
海底
(
うなぞこ
)
に
095
一旦
(
いつたん
)
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めつつ
096
再
(
ふたた
)
び
湖面
(
こめん
)
に
浮
(
う
)
き
上
(
あが
)
り
097
忽
(
たちま
)
ち
変
(
へん
)
じて
船
(
ふね
)
となる
098
命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りのモンキーは
099
初
(
はじ
)
めて
蘇生
(
そせい
)
したるごと
100
心
(
こころ
)
も
勇
(
いさ
)
み
気
(
き
)
も
勇
(
いさ
)
み
101
救
(
すく
)
ひの
船
(
ふね
)
に
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
102
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
の
判断
(
はんだん
)
に
103
心
(
こころ
)
の
闇
(
やみ
)
を
照
(
て
)
らしつつ
104
船
(
ふね
)
のまにまに
浪
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
105
朱欄
(
しゆらん
)
碧瓦
(
へきぐわ
)
の
竜宮
(
りうぐう
)
の
106
高楼
(
たかどの
)
目蒐
(
めが
)
けて
惟神
(
かむながら
)
107
神
(
かみ
)
のまにまに
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く。
108
遠浅
(
とほあさ
)
の
湖岸
(
こがん
)
に
船
(
ふね
)
は
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
109
湖底
(
うなぞこ
)
は
水晶
(
すゐしやう
)
の
如
(
ごと
)
く
明
(
あきら
)
かに、
110
金砂
(
きんしや
)
銀砂
(
ぎんしや
)
の
光
(
ひかり
)
太陽
(
たいやう
)
に
映
(
えい
)
じて
何物
(
なにもの
)
にも
譬方
(
たとへがた
)
なき
麗
(
うるは
)
しさ。
111
小
(
ちひ
)
さき
青
(
あを
)
、
112
赤
(
あか
)
、
113
紫
(
むらさき
)
の
魚
(
うを
)
は
金魚
(
きんぎよ
)
のやうな
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つて
縦横
(
じうわう
)
に
溌溂
(
はつらつ
)
として
游
(
およ
)
いで
居
(
ゐ
)
る。
114
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
の
輝
(
かがや
)
くやうに
水
(
みづ
)
の
深
(
ふか
)
さ
五寸
(
ごすん
)
乃至
(
ないし
)
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
許
(
ばか
)
りの
所
(
ところ
)
になりて、
115
金剛石
(
こんがうせき
)
のやうな
光
(
ひかり
)
、
116
五六
(
ごろく
)
尺
(
しやく
)
或
(
あるひ
)
は
一二
(
いちに
)
尺
(
しやく
)
を
隔
(
へだ
)
てて
目
(
め
)
も
眩
(
くら
)
む
許
(
ばか
)
り
強
(
つよ
)
き
光
(
ひかり
)
を
放
(
はな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
117
船
(
ふね
)
は
一寸
(
いつすん
)
許
(
ばか
)
りの
水
(
みづ
)
の
上
(
うへ
)
さへも
軽々
(
かるがる
)
しく
辷
(
すべ
)
りつつ、
118
遂
(
つい
)
に
金砂
(
きんしや
)
の
磯端
(
いそばた
)
に
着
(
つ
)
いた。
119
モンキーは
船
(
ふね
)
を
飛
(
と
)
び
下
(
お
)
り、
120
砂原
(
すなはら
)
を
歩
(
あゆ
)
みかけた。
121
一歩
(
いつぽ
)
々々
(
いつぽ
)
運
(
はこ
)
ぶ
毎
(
ごと
)
に
足
(
あし
)
の
下
(
した
)
から
鶯
(
うぐひす
)
のやうな
声
(
こゑ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る。
122
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
つて
砂
(
すな
)
に
印
(
いん
)
した
足跡
(
あしあと
)
を
見
(
み
)
れば、
123
大
(
だい
)
なる
小判
(
こばん
)
を
敷
(
し
)
いたやうに
金色
(
こんじき
)
に
光
(
ひか
)
つて
居
(
を
)
る。
124
モンキーはふと
佇
(
たたず
)
み、
125
乗
(
の
)
り
来
(
き
)
し
船
(
ふね
)
や
湖面
(
こめん
)
を
見
(
み
)
れば、
126
青
(
あを
)
、
127
紅
(
べに
)
、
128
紫
(
むらさき
)
、
129
白
(
しろ
)
、
130
黄
(
き
)
、
131
橄欖色
(
かんらんしよく
)
、
132
其
(
その
)
他
(
た
)
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
宝玉
(
ほうぎよく
)
、
133
湖上
(
こじやう
)
三尺
(
さんじやく
)
許
(
ばか
)
りの
所
(
ところ
)
を
蝶
(
てふ
)
の
花
(
はな
)
に
戯
(
たはむ
)
る
如
(
ごと
)
くに
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
浮動
(
ふどう
)
して
居
(
ゐ
)
る
麗
(
うるは
)
しさ、
134
玉
(
たま
)
と
玉
(
たま
)
とは
時々
(
ときどき
)
衝突
(
しようとつ
)
して
煙火
(
はなび
)
の
如
(
ごと
)
き
光
(
ひかり
)
を
湖面
(
こめん
)
に
投
(
な
)
げて
居
(
ゐ
)
る。
135
恰
(
あたか
)
も
宝玉
(
ほうぎよく
)
の
粉末
(
ふんまつ
)
を
撒
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らした
様
(
やう
)
な
眺
(
なが
)
めである。
136
モンキーは
夢
(
ゆめ
)
では
無
(
な
)
いかと
我
(
われ
)
と
我
(
わが
)
身
(
み
)
を
疑
(
うたが
)
ひつつ
尚
(
なほ
)
も
湖面
(
こめん
)
を
熟視
(
じゆくし
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
137
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
より
思
(
おも
)
はず
両方
(
りやうはう
)
の
肩
(
かた
)
をグツと
抱
(
かか
)
へた
者
(
もの
)
がある。
138
何者
(
なにもの
)
ならむと
吾
(
わが
)
胸
(
むね
)
の
辺
(
あたり
)
に
目
(
め
)
を
転
(
てん
)
ずれば、
139
金色
(
きんいろ
)
、
140
黒色
(
こくしよく
)
のダンダラ
条
(
すぢ
)
のある
虎
(
とら
)
の
両手
(
りやうて
)
であつた。
141
モンキーは
其
(
その
)
手
(
て
)
を
我
(
わが
)
両手
(
りやうて
)
に
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
142
何者
(
なにもの
)
にか
引
(
ひ
)
かるる
如
(
ごと
)
き
心地
(
ここち
)
し、
143
自分
(
じぶん
)
の
姿
(
すがた
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら、
144
紫
(
むらさき
)
の
麗
(
うるは
)
しき
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
数多
(
あまた
)
茂
(
しげ
)
れる
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
に
導
(
みちび
)
かれ、
145
瑠璃光
(
るりくわう
)
の
如
(
ごと
)
き
岩石
(
がんせき
)
の
根下
(
ねもと
)
に
穿
(
うが
)
たれたる
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
へ、
146
不知
(
しらず
)
不識
(
しらず
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
りける。
147
モンキーは、
148
如何
(
いか
)
なること
有
(
あ
)
りとも、
149
理智
(
りち
)
を
捨
(
す
)
てて
唯
(
ただ
)
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
すべく、
150
決心
(
けつしん
)
の
臍
(
ほぞ
)
を
固
(
かた
)
めて
居
(
ゐ
)
た
際
(
さい
)
であるから、
151
一切
(
いつさい
)
の
考慮
(
かうりよ
)
を
捨
(
す
)
て、
152
唯
(
ただ
)
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
自然
(
しぜん
)
に
引
(
ひ
)
かるるままに
任
(
まか
)
して
居
(
を
)
るのみ。
153
モンキーの
体
(
からだ
)
は、
154
金銀色
(
きんぎんいろ
)
の
光
(
ひかり
)
輝
(
かがや
)
く
洞穴
(
ほらあな
)
の
中
(
なか
)
に
自然
(
しぜん
)
にキリキリ
舞
(
ま
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
155
何処
(
どこ
)
ともなく
聞
(
きこ
)
ゆる
音楽
(
おんがく
)
の
声
(
こゑ
)
に
従
(
つ
)
れて
時々
(
ときどき
)
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
り、
156
或
(
あるひ
)
は
横
(
よこ
)
になり、
157
或
(
あるひ
)
は
逆様
(
さかさま
)
に
手
(
て
)
を
以
(
もつ
)
て
歩
(
あゆ
)
むなど、
158
全
(
まつた
)
く
一身
(
いつしん
)
心魂
(
しんこん
)
を
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せて、
159
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
其
(
その
)
身体
(
からだ
)
は
美
(
うる
)
はしき
宝玉
(
ほうぎよく
)
をもつて
飾
(
かざ
)
られたる
宝座
(
ほうざ
)
の
上
(
うへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
160
坑内
(
かうない
)
の
遥
(
はるか
)
向
(
むか
)
ふより
青
(
あを
)
、
161
赤
(
あか
)
、
162
紫
(
むらさき
)
、
163
白
(
しろ
)
、
164
黄
(
き
)
の
五
(
いつ
)
つの
玉
(
たま
)
の
光
(
ひかり
)
、
165
サーチライトの
数千倍
(
すうせんばい
)
の
光力
(
くわうりよく
)
をもつて、
166
目
(
め
)
も
眩
(
くら
)
む
許
(
ばか
)
り
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
光
(
ひかり
)
を
放射
(
はうしや
)
し
出
(
だ
)
した。
167
モンキーは
思
(
おも
)
はず
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ、
168
玉
(
たま
)
の
光
(
ひか
)
る
方
(
はう
)
を
眺
(
なが
)
むれば
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
169
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
の
中
(
なか
)
には
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
170
赤
(
あか
)
き
玉
(
たま
)
には
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
171
青
(
あを
)
き
玉
(
たま
)
には
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
172
白
(
しろ
)
き
玉
(
たま
)
には
久助
(
きうすけ
)
、
173
黄色
(
きいろ
)
の
玉
(
たま
)
にはお
民
(
たみ
)
の
顔
(
かほ
)
がありありと
映
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
174
モンキーは
是
(
これ
)
を
見
(
み
)
るより
忽
(
たちま
)
ち
精神
(
せいしん
)
宙
(
ちう
)
に
浮
(
う
)
き
上
(
あが
)
る
如
(
ごと
)
く
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らず
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
仕舞
(
しま
)
つた。
175
(
大正一一・七・一〇
旧閏五・一六
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
風声鶴唳 >>>
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