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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第25巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 相縁奇縁
第1章 水禽の音
第2章 与太理縮
第3章 鶍の恋
第4章 望の縁
第2篇 自由活動
第5章 酒の滝壺
第6章 三腰岩
第7章 大蛇解脱
第8章 奇の巌窟
第3篇 竜の宮居
第9章 信仰の実
第10章 開悟の花
第11章 風声鶴唳
第12章 不意の客
第4篇 神花霊実
第13章 握手の涙
第14章 園遊会
第15章 改心の実
第16章 真如の玉
第5篇 千里彷徨
第17章 森の囁
第18章 玉の所在
第19章 竹生島
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>
海洋万里(第25~36巻)
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第25巻(子の巻)
> 第5篇 千里彷徨 > 第18章 玉の所在
<<< 森の囁
(B)
(N)
竹生島 >>>
第一八章
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
〔七六四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻
篇:
第5篇 千里彷徨
よみ(新仮名遣い):
せんりほうこう
章:
第18章 玉の所在
よみ(新仮名遣い):
たまのありか
通し章番号:
764
口述日:
1922(大正11)年07月12日(旧閏05月18日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫、黒姫、高山彦、アール、エースは一生懸命、国依別と秋彦を元の人間に戻すようにと祈願を凝らし始めた。国依別と秋彦は起き上がると、飛び上がって高姫らをからかう。
高姫は、日の出神の神力で二人を畜生道から救い出したと悦に入っている。そして、そのまま二人から玉のありかを白状させようとする。駒彦は、二人は高姫たちをからかっているのだ、と忠告するが、高姫は耳を貸さない。
高姫が祈願をこらして霊を送ると、国依別は再度山の大天狗と名乗って、偽の神懸りを始めた。問答をしているうちに、国依別は面倒くさくなって白状するが、玉のありかを神懸りから聞き出したい高姫は、信用しないで詰問する。
仕方なく国依別は、高姫、黒姫、高山彦の三人に、三つの玉のありかをそれぞれ明かすと言ってこの場を逃れようとする。そして一人一人に、それぞれ玉のありかは竹生島の社殿の下に埋めてある、と同じ事を囁いた。
高姫、黒姫、高山彦は、国依別の偽の託宣を信じて、それぞれ互いに同じ場所に向かって走って行ってしまった。一方国依別と秋彦は、駒彦に留守を任せて聖地の神業に参加するために急いで出て行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-15 02:46:12
OBC :
rm2518
愛善世界社版:
266頁
八幡書店版:
第5輯 129頁
修補版:
校定版:
278頁
普及版:
119頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
従
(
したが
)
ひ、
002
黒姫
(
くろひめ
)
、
003
高山彦
(
たかやまひこ
)
、
004
アール、
005
エースは
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
汗
(
あせ
)
みどろに
成
(
な
)
つて、
006
両人
(
りやうにん
)
の
身魂
(
みたま
)
の
救
(
すく
)
はれむ
事
(
こと
)
を
祈願
(
きぐわん
)
し
始
(
はじ
)
めた。
007
国依別
(
くによりわけ
)
、
008
秋彦
(
あきひこ
)
両人
(
りやうにん
)
はムツクと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み、
009
ドスン ドスンと
座敷
(
ざしき
)
の
真中
(
まんなか
)
に
床
(
ゆか
)
がぬける
程
(
ほど
)
、
010
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り
揶揄
(
からか
)
ふ。
011
高姫
(
たかひめ
)
『
皆
(
みな
)
さま
御覧
(
ごらん
)
なさい。
012
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
と
言
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものでせう。
013
あの
通
(
とほ
)
り
生
(
い
)
き
乍
(
なが
)
ら
畜生道
(
ちくしやうだう
)
に
陥
(
お
)
ち
込
(
こ
)
み、
014
足
(
あし
)
をピンと
上
(
うへ
)
にあげて、
015
如何
(
どう
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ずに
鼠
(
ねずみ
)
の
霊
(
みたま
)
に
憑
(
うつ
)
られて……チユウ チユウ、
016
クウ クウ……と
泣
(
な
)
いて
居
(
を
)
りましたが、
017
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
反魂力
(
はんこんりよく
)
に
依
(
よ
)
りて
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
元
(
もと
)
の
様
(
やう
)
になりました。
018
座敷中
(
ざしきちう
)
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
つて
居
(
を
)
つたのも、
019
此
(
こ
)
の
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
に
恐
(
おそ
)
れての
事
(
こと
)
、
020
サア
皆
(
みな
)
さま、
021
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
から
鎮魂攻
(
ちんこんぜ
)
めにあはせ、
022
国依別
(
くによりわけ
)
等
(
ら
)
を
霊媒
(
れいばい
)
として、
023
誠
(
まこと
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
白状
(
はくじやう
)
させようぢやありませぬか』
024
黒姫
(
くろひめ
)
『そりや、
025
至極
(
しごく
)
結構
(
けつこう
)
でせう』
026
駒彦
(
こまひこ
)
『もしもし、
027
高姫
(
たかひめ
)
さま、
028
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
029
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さいますな。
030
彼奴
(
あいつ
)
ア、
031
あんな
事
(
こと
)
をして
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
を
揶揄
(
からか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですよ。
032
本当
(
ほんたう
)
にして
居
(
ゐ
)
ると
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
ますよ』
033
高姫
(
たかひめ
)
『お
黙
(
だま
)
りなさい。
034
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
に
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
りますか。
035
此
(
この
)
方
(
はう
)
には
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
とが
憑
(
つ
)
いて
居
(
を
)
ります。
036
揶揄
(
からか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか、
037
本当
(
ほんたう
)
か、
038
邪霊
(
じやれい
)
が
憑
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか、
039
そんな
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
らずに
如何
(
どう
)
して
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
ますか。
040
お
前
(
まへ
)
さまのやうに、
041
婆
(
ばば
)
になつたり
娘
(
むすめ
)
になつて
誤魔化
(
ごまくわ
)
さうとしても、
042
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が……ヘン……
見
(
み
)
れば
直
(
す
)
ぐ
化
(
ばけ
)
が
現
(
あら
)
はれる。
043
お
前
(
まへ
)
さまはゴテゴテ
言
(
い
)
ふ
資格
(
しかく
)
はないから、
044
其辺
(
そこら
)
辺
(
あたり
)
のペンペン
草
(
ぐさ
)
でも
引
(
ひ
)
きなさい。
045
それが
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
うて
居
(
を
)
りますワイ、
046
オホヽヽヽ』
047
駒彦
(
こまひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
048
お
前
(
まへ
)
さまの
仰有
(
おつしや
)
るのも
一応
(
いちおう
)
御尤
(
ごもつと
)
もだが、
049
よく
泳
(
およ
)
ぐ
者
(
もの
)
はよく
溺
(
おぼ
)
ると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありますぜ。
050
神懸
(
かむがか
)
りの
道
(
みち
)
を
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
は
神懸
(
かむがか
)
り
[
※
初版・三版・校定版では「神懸」、愛世版では「神憑」。
]
に
騙
(
だま
)
される
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いが、
051
お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
に
神懸
(
かむがか
)
りに
不徹底
(
ふてつてい
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
052
却
(
かへ
)
つてアフンと
言
(
い
)
ふ
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
はされるか
知
(
し
)
れませぬよ。
053
此処
(
ここ
)
は
例
(
れい
)
のアフン
鉄道
(
てつだう
)
の
終点
(
しうてん
)
、
054
ビツクリ
駅
(
えき
)
だからなア』
055
高姫
(
たかひめ
)
『エー、
056
八釜
(
やかま
)
しいワイな。
057
まア
黙
(
だま
)
つて
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
の
審神
(
さには
)
を
見
(
み
)
て
御座
(
ござ
)
れ。
058
今
(
いま
)
に
此
(
この
)
両人
(
りやうにん
)
に
口
(
くち
)
をきらして、
059
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
一切
(
いつさい
)
の
素性
(
すじやう
)
を
素破抜
(
すつぱぬ
)
かすから……。
060
アーア、
061
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
から
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
途中
(
とちう
)
随分
(
ずゐぶん
)
苦労
(
くらう
)
をしたが、
062
一
(
ひと
)
つ
試験
(
しけん
)
の
為
(
た
)
め
霊
(
れい
)
をかけて
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
よう』
063
と
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
064
高姫
『
大将軍
(
だいしやうぐん
)
様
(
さま
)
、
065
十悪道
(
じふあくだう
)
様
(
さま
)
、
066
地上
(
ちじやう
)
大神
(
だいじん
)
様
(
さま
)
、
067
地鎮
(
ぢちん
)
荒神
(
くわうじん
)
様
(
さま
)
、
068
大黒主
(
おほくろぬしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
069
鷹鳥
(
たかとりの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
070
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
此
(
この
)
両人
(
りやうにん
)
にお
憑
(
うつ
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
071
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
お
示
(
しめ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
072
天下
(
てんか
)
国家
(
こくか
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
、
073
決
(
けつ
)
して
高姫
(
たかひめ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
の
私有物
(
しいうぶつ
)
に
致
(
いた
)
すのでは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
074
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
075
一
(
ひと
)
、
076
二
(
ふた
)
、
077
三
(
みつ
)
つ
此
(
この
)
玉
(
たま
)
が
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
ます
様
(
やう
)
に、
078
一
(
ひと
)
、
079
二
(
ふた
)
、
080
三
(
み
)
、
081
四
(
よ
)
、
082
五
(
いつ
)
つの
玉
(
たま
)
が
又
(
また
)
もや
現
(
あら
)
はれたと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
、
083
それが
真実
(
しんじつ
)
ならば、
084
今度
(
こんど
)
こそは
高姫
(
たかひめ
)
、
085
黒姫
(
くろひめ
)
、
086
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
にお
渡
(
わた
)
し
下
(
くだ
)
さい。
087
一
(
ひ
)
、
088
二
(
ふ
)
、
089
三
(
み
)
、
090
四
(
よ
)
、
091
五
(
い
)
つの
玉
(
たま
)
が
早
(
はや
)
く
発見
(
はつけん
)
致
(
いた
)
しまするやう……
六
(
むゆ
)
、
092
七
(
なな
)
、
093
八
(
や
)
、
094
九
(
ここの
)
、
095
十
(
たり
)
、
096
百
(
もも
)
、
097
千
(
ち
)
、
098
万
(
よろづ
)
、
099
仮令
(
たとへ
)
何処
(
いづく
)
の
果
(
はて
)
に
隠
(
かく
)
しあるとも、
100
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
眼力
(
がんりき
)
を
以
(
もつ
)
て
御
(
ご
)
発見
(
はつけん
)
遊
(
あそ
)
ばし、
101
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
の
口
(
くち
)
を
借
(
か
)
つて
直接
(
ちよくせつ
)
に
御
(
お
)
示
(
しめ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
102
とウーンウーンと
霊
(
れい
)
を
送
(
おく
)
る。
103
国依別
(
くによりわけ
)
は
組
(
く
)
んだ
手
(
て
)
を
頭上
(
づじやう
)
高
(
たか
)
くさし
上
(
あ
)
げ、
104
弓
(
ゆみ
)
の
様
(
やう
)
に
反
(
そ
)
り
身
(
み
)
になつて、
105
国依別
『ウヽヽヽ
運命
(
うんめい
)
の
綱
(
つな
)
に
引
(
ひ
)
かれて、
106
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
まで
彷徨
(
さまよ
)
ひ
歩
(
ある
)
く
汝
(
なんぢ
)
の
心
(
こころ
)
の
可憐
(
いぢら
)
しさ、
107
オホヽヽヽおれは……
俺
(
おれ
)
は、
108
俺
(
おれ
)
は、
109
俺
(
おれ
)
は、
110
俺
(
おれ
)
は、
111
フヽヽヽ
再度山
(
ふたたびやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
であるぞよ。
112
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
の
心事
(
しんじ
)
を
憐
(
あはれ
)
み、
113
聖地
(
せいち
)
の
神
(
かみ
)
には
済
(
す
)
まぬなれども、
114
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
遣
(
つか
)
はす。
115
それに
就
(
つ
)
いては
意地
(
いぢ
)
くね
の
悪
(
わる
)
い
高姫
(
たかひめ
)
が、
116
此処
(
ここ
)
に
居
(
を
)
つては
絶対
(
ぜつたい
)
に
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬぞよ』
117
高姫
『
再度山
(
ふたたびやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
、
118
そりやチツと
量見
(
りやうけん
)
が
違
(
ちが
)
ひはしませぬか。
119
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
に
知
(
し
)
らして
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
に
知
(
し
)
らさぬと
言
(
い
)
ふのは、
120
そりや
又
(
また
)
如何
(
どう
)
言
(
い
)
ふ
理由
(
りいう
)
ぢや。
121
それを
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
され』
122
国依別
『それは…それは…それは
我
(
わが
)
眷族
(
けんぞく
)
の
小天狗
(
こてんぐ
)
が、
123
秋彦
(
あきひこ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
憑
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るから、
124
それに
聞
(
き
)
いたが
宜
(
よ
)
からうぞ。
125
俺
(
おれ
)
はもう
引
(
ひ
)
き
取
(
と
)
るぞよ』
126
高姫
『
引
(
ひ
)
き
取
(
と
)
ると
言
(
い
)
うても
此
(
この
)
事
(
こと
)
解決
(
かいけつ
)
をつける
迄
(
まで
)
、
127
霊縛
(
れいばく
)
を
加
(
くは
)
へて
引
(
ひ
)
き
取
(
と
)
らせませぬぞ。
128
サア
高姫
(
たかひめ
)
に
言
(
い
)
はれぬと
云
(
い
)
ふ
其
(
その
)
理由
(
りいう
)
から
判然
(
はつきり
)
と
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひませう』
129
国依別
『
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
世界中
(
せかいぢう
)
見
(
み
)
え
透
(
す
)
く
神
(
かみ
)
ぢやから、
130
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
は
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
知
(
し
)
らさずともよく
御存
(
ごぞん
)
じの
筈
(
はず
)
だ。
131
申上
(
まをしあ
)
ぐるも
畏
(
おそれおほ
)
し、
132
釈迦
(
しやか
)
に
説教
(
せつけう
)
を
致
(
いた
)
す
様
(
やう
)
なものだ。
133
高姫
(
たかひめ
)
に
対
(
たい
)
し
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
明
(
あ
)
かさぬのは、
134
畢竟
(
つまり
)
敬意
(
けいい
)
を
払
(
はら
)
つて、
135
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
輝
(
かがや
)
かさむと
思
(
おも
)
ふ
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
真心
(
まごころ
)
で
御座
(
ござ
)
る』
136
高姫
『
御
(
お
)
心遣
(
こころづか
)
ひは
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
に
成
(
な
)
されませ。
137
さあチヤツと
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
の
様
(
やう
)
な
尊
(
たふと
)
い
神
(
かみ
)
に
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
をかけるのも
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い、
138
お
前
(
まへ
)
さま、
139
知
(
し
)
つてるのなら
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
でソツと
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
140
黒姫
(
くろひめ
)
や
高山彦
(
たかやまひこ
)
は、
141
言
(
い
)
はばお
添物
(
そへもの
)
だから
如何
(
どう
)
でも
宜
(
よろ
)
しいのだ』
142
と
耳
(
みみ
)
の
端
(
はた
)
に
口
(
くち
)
を
持
(
も
)
つて
行
(
ゆ
)
き、
143
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で
囁
(
ささや
)
く。
144
国依別
(
くによりわけ
)
は
故意
(
わざ
)
と
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で、
145
国依別
『それは
高姫
(
たかひめ
)
、
146
一寸
(
ちよつと
)
量見
(
りやうけん
)
が
違
(
ちが
)
ひは
致
(
いた
)
さぬか、
147
今
(
いま
)
耳
(
みみ
)
の
端
(
はた
)
で……
高姫
(
たかひめ
)
さへ
玉
(
たま
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れたら
宜
(
よ
)
い、
148
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
黒姫
(
くろひめ
)
などは
添物
(
そへもの
)
だ、
149
如何
(
どう
)
でもいい……と
囁
(
ささや
)
いたであらうがな。
150
そんな
二心
(
ふたごころ
)
で
黒姫
(
くろひめ
)
、
151
高山彦
(
たかやまひこ
)
を
扱
(
あつか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか。
152
ヤイ、
153
高山彦
(
たかやまひこ
)
、
154
黒姫
(
くろひめ
)
、
155
よう
今迄
(
いままで
)
高姫
(
たかひめ
)
に
馬鹿
(
ばか
)
にしられよつたな。
156
もう
神懸
(
かむがか
)
りは
嫌
(
いや
)
になつた。
157
俺
(
おれ
)
は
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
つてもチツとも
霊
(
れい
)
は
懸
(
かか
)
つては
居
(
を
)
らぬぞ。
158
国依別
(
くによりわけ
)
は
肉体
(
にくたい
)
で
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
159
それに
間違
(
まちが
)
ひは
無
(
な
)
いぞよ。
160
よく
審神
(
さには
)
して
下
(
くだ
)
されよ』
161
高姫
『
悪神
(
あくがみ
)
と
言
(
い
)
ふものはよく
嘘言
(
うそ
)
をつくものだ。
162
コラ
大天狗
(
だいてんぐ
)
、
163
其
(
その
)
手
(
て
)
は
喰
(
く
)
はぬぞ。
164
国依別
(
くによりわけ
)
の
肉体
(
にくたい
)
が
言
(
い
)
うた
等
(
など
)
と
巧
(
うま
)
く
逃
(
に
)
げ
様
(
やう
)
と
思
(
おも
)
つても、
165
いつかないつかな
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
睨
(
にら
)
んだ
以上
(
いじやう
)
は
逃
(
に
)
がしはせぬ。
166
サア
綺麗
(
きれい
)
サツパリと、
167
高姫
(
たかひめ
)
、
168
黒姫
(
くろひめ
)
、
169
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
で
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
すが
宜
(
よ
)
からう』
170
国依別
(
くによりわけ
)
『
三
(
みつ
)
つの
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らせませうか、
171
但
(
ただ
)
し
五
(
いつ
)
つの
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
からお
知
(
し
)
らせ
致
(
いた
)
しませうか』
172
高姫
『
何卒
(
どうぞ
)
三
(
みつ
)
つの
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
は
申
(
まを
)
すも
更
(
さら
)
なり、
173
五
(
いつ
)
つの
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
174
さうすれば
再度山
(
ふたたびやま
)
に
立派
(
りつぱ
)
なお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
て、
175
其
(
その
)
上
(
うへ
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
遊
(
あそ
)
ぶ
公園
(
こうゑん
)
を
造
(
つく
)
つて
上
(
あ
)
げますから……
何卒
(
どうぞ
)
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
176
国依別
『そんなら
是非
(
ぜひ
)
に
及
(
およ
)
ばず、
177
知
(
し
)
らしてやらう。
178
三
(
みつ
)
つの
玉
(
たま
)
は
二三
(
にさん
)
日中
(
にちぢう
)
に
聖地
(
せいち
)
へ
八咫烏
(
やあたがらす
)
に
乗
(
の
)
つて
来
(
く
)
るぞよ。
179
一
(
ひと
)
つの
玉
(
たま
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
180
も
一
(
ひと
)
つは
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
181
も
一
(
ひと
)
つはお
玉
(
たま
)
の
方
(
かた
)
、
182
これが
三
(
みつ
)
つの
生魂
(
いきだま
)
であるぞよ。
183
又
(
また
)
も
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
184
玉照姫
(
たまてるひめ
)
を
合
(
あは
)
せて
五
(
いつ
)
つの
御魂
(
みたま
)
となるぞよ。
185
アハヽヽヽ』
186
高姫
『エー、
187
合点
(
がてん
)
の
悪
(
わる
)
い。
188
それは
人間
(
にんげん
)
の
名
(
な
)
ぢやないか。
189
本当
(
ほんたう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
は
何処
(
どこ
)
にあるのだ、
190
それを
言
(
い
)
ひなさい』
191
国依別
『
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
此
(
この
)
国依別
(
くによりわけ
)
も、
192
秋彦
(
あきひこ
)
、
193
駒彦
(
こまひこ
)
も
聖地
(
せいち
)
へ
行
(
ゆ
)
き
度
(
た
)
いのが
胸一杯
(
むねいつぱい
)
なれど、
194
折
(
をり
)
あしく
其
(
その
)
方
(
はう
)
等
(
ら
)
がやつて
来
(
き
)
たものだから
行
(
ゆ
)
くに
行
(
ゆ
)
かれず、
195
迷惑
(
めいわく
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るぞよ。
196
それに
就
(
つ
)
いて
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
は
此処
(
ここ
)
ぞと
嘘言
(
うそ
)
を
言
(
い
)
ひ、
197
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
一行
(
いつかう
)
を
或
(
ある
)
地点
(
ちてん
)
へ
玉
(
たま
)
探
(
さが
)
しにやつて
置
(
お
)
き、
198
其
(
その
)
ままコツソリと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
聖地
(
せいち
)
に
行
(
い
)
つて
秘密
(
ひみつ
)
の
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
する
積
(
つも
)
りであつたが……アヽ
如何
(
どう
)
したら
宜
(
よ
)
いかなア』
199
高姫
『それ
見
(
み
)
たか、
200
矢張
(
やつぱ
)
り
国依別
(
くによりわけ
)
では
無
(
な
)
い。
201
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
神懸
(
かむがか
)
りだ。
202
国依別
(
くによりわけ
)
が
如何
(
どう
)
して
自分
(
じぶん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
自分
(
じぶん
)
の
口
(
くち
)
で
言
(
い
)
ふものか。
203
これ
大天狗
(
だいてんぐ
)
、
204
そんな
嘘言
(
うそ
)
云
(
い
)
うた
処
(
ところ
)
で
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
は
承知
(
しようち
)
しませぬぞ。
205
早
(
はや
)
く
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さい。
206
大天狗
(
だいてんぐ
)
なら
何
(
なん
)
でも
知
(
し
)
つてる
筈
(
はず
)
だ』
207
国依別
『そんなら
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
詐
(
いつは
)
つて
騙
(
だま
)
してやらうか。
208
間違
(
まちが
)
つても
決
(
けつ
)
して
国依別
(
くによりわけ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
対
(
たい
)
して
不足
(
ふそく
)
は
申
(
まを
)
さぬか』
209
高姫
『
決
(
けつ
)
して
不足
(
ふそく
)
は
申
(
まを
)
さぬ。
210
嘘言
(
うそ
)
から
出
(
で
)
た
誠
(
まこと
)
、
211
誠
(
まこと
)
から
出
(
で
)
た
嘘言
(
うそ
)
と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
212
嘘実
(
きよじつ
)
不二
(
ふじ
)
表裏
(
へうり
)
一体
(
いつたい
)
だ。
213
何
(
なん
)
でも
宜
(
い
)
いから
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
214
物
(
もの
)
も
研究
(
けんきう
)
だ。
215
オーストラリヤ
三界
(
さんがい
)
まで
調
(
しら
)
べに
行
(
い
)
つて
来
(
き
)
た
熱心
(
ねつしん
)
な
我々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
、
216
仮令
(
たとへ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
二日
(
ふつか
)
遅
(
おく
)
れても
構
(
かま
)
ふものか、
217
なるべく
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
を
嘘言
(
うそ
)
らしく
言
(
い
)
ふのだよ』
218
国依別
『
本当
(
ほんたう
)
の
嘘言
(
うそ
)
の
事
(
こと
)
を
本真
(
ほんま
)
らしく
申
(
まを
)
してやらう。
219
神
(
かみ
)
の
奥
(
おく
)
には
奥
(
おく
)
があり、
220
其
(
その
)
又
(
また
)
奥
(
おく
)
には
奥
(
おく
)
があるぞよ』
221
高姫
『エーそんな
事
(
こと
)
は
妾
(
わし
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
222
奥
(
おく
)
の
奥
(
おく
)
の
其
(
その
)
奥
(
おく
)
は
羽織
(
はおり
)
の
紐
(
ひも
)
ぢやないがチヤンと
胸
(
むね
)
にある。
223
サア
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
224
国依別
『オヽヽヽ
俺
(
おれ
)
は、
225
俺
(
おれ
)
は
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
事
(
こと
)
であるから、
226
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
の
為
(
な
)
さる
事
(
こと
)
はチツとも
分
(
わか
)
らぬぞよ。
227
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
知
(
し
)
らぬと
申
(
まを
)
すより
外
(
ほか
)
は
無
(
な
)
いぞよ』
228
高姫
『エー、
229
意茶
(
いちや
)
つかさずに
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
され。
230
あた
辛気臭
(
しんきくさ
)
い、
231
早
(
はや
)
く
言
(
い
)
ふのだよ。
232
何時
(
いつ
)
までも
人
(
ひと
)
を
暇
(
ひま
)
さうに
焦慮
(
じ
)
らすものだない。
233
時機
(
じき
)
切迫
(
せつぱく
)
の
今日
(
こんにち
)
の
神界
(
しんかい
)
、
234
仮令
(
たとへ
)
一
(
いつ
)
分間
(
ぷんかん
)
でも
空
(
むだ
)
に
光陰
(
くわういん
)
を
費
(
つひ
)
やす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
235
国依別
『
此
(
この
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
知
(
し
)
らぬと
言
(
い
)
うたら
何処迄
(
どこまで
)
も、
236
シヽ
知
(
し
)
らぬぞよ。
237
ウフヽヽヽ』
238
黒姫
『もしもし
高姫
(
たかひめ
)
さま、
239
此奴
(
こいつ
)
ア
駄目
(
だめ
)
ですよ。
240
あんまり
玉々
(
たまたま
)
と
言
(
い
)
つて
玉
(
たま
)
に
魂
(
たましひ
)
を
抜
(
ぬ
)
かして
居
(
ゐ
)
るものだから、
241
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
鼻高
(
はなだか
)
が
我々
(
われわれ
)
を
嬲
(
なぶ
)
るのですから、
242
よい
加減
(
かげん
)
になつて
置
(
お
)
きなさいませ』
243
高姫
『これ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
244
そりや
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
る。
245
掃溜
(
はきだめ
)
の
中
(
なか
)
にも
金玉
(
きんぎよく
)
が
隠
(
かく
)
される
事
(
こと
)
がある。
246
斯
(
か
)
う
言
(
い
)
ふ
低
(
ひく
)
い
神
(
かみ
)
に
聞
(
き
)
いた
方
(
はう
)
が
却
(
かへつ
)
て
都合
(
つがふ
)
が
好
(
い
)
いのだ。
247
少
(
すこ
)
し
腹
(
はら
)
のある
神
(
かみ
)
は
中々
(
なかなか
)
秘密
(
ひみつ
)
は
申
(
まを
)
さぬが、
248
斯
(
か
)
う
言
(
い
)
ふ
低
(
ひく
)
い
神
(
かみ
)
は
責
(
せ
)
めて
責
(
せ
)
めて
責
(
せ
)
め
倒
(
たふ
)
すとツイ
白状
(
はくじやう
)
するものだ。
249
お
前
(
まへ
)
さまも
来
(
き
)
てチツト
鎮魂攻
(
ちんこんぜ
)
めを
手伝
(
てつだひ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
250
何処
(
どこ
)
までも
責
(
せ
)
めて、
251
白状
(
はくじやう
)
させねば
措
(
お
)
きませぬぞえ』
252
国依別
『アーア、
253
悪戯
(
てんご
)
が
本当
(
ほんたう
)
になつて
来
(
き
)
た。
254
二進
(
につち
)
も
三進
(
さつち
)
も
方法
(
はうはふ
)
がつかぬワイ、
255
……もし
高姫
(
たかひめ
)
さま、
256
何
(
なに
)
も
憑
(
うつ
)
つては
居
(
を
)
りませぬ。
257
国依別
(
くによりわけ
)
が
出放題
(
ではうだい
)
を
申
(
まを
)
したのですから、
258
何卒
(
どうぞ
)
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
259
一座
(
いちざ
)
の
興
(
きよう
)
だと
思
(
おも
)
つて
諦
(
あきら
)
めて
下
(
くだ
)
さい』
260
高姫
(
たかひめ
)
は
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
りウンと
息
(
いき
)
をかけ、
261
高姫
『
一座
(
いちざ
)
の
けふ
も
明日
(
あす
)
もあつたものかい。
262
何処
(
どこ
)
までも
調
(
しら
)
べて
調
(
しら
)
べて、
263
調
(
しら
)
べ
上
(
あ
)
げねば
措
(
お
)
きませぬぞ。
264
仮令
(
たとへ
)
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
かかつても
千
(
せん
)
日
(
にち
)
かかつても
白状
(
はくじやう
)
させねば
措
(
お
)
くものか、
265
サア
大天狗
(
だいてんぐ
)
、
266
もう
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
白状
(
はくじやう
)
したら
如何
(
どう
)
だい』
267
国依別
『アヽ
困
(
こま
)
つたな。
268
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
早
(
はや
)
く
聖地
(
せいち
)
に
行
(
ゆ
)
かねば、
269
言依別
(
ことよりわけの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
目玉
(
めだま
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
するのだ。
270
然
(
しか
)
し
高姫
(
たかひめ
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
帰
(
かへ
)
つては
困
(
こま
)
るなり、
271
実際
(
じつさい
)
は
嘘言
(
うそ
)
だから
何処
(
どこ
)
に
玉
(
たま
)
が
隠
(
かく
)
してあるか、
272
そんな
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
るものか。
273
国依別
(
くによりわけ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
間違
(
まちが
)
ひないから、
274
何卒
(
どうぞ
)
疑
(
うたが
)
ひを
晴
(
は
)
らして
下
(
くだ
)
さい』
275
高姫
(
たかひめ
)
はキツとなり、
276
高姫
『こりや、
277
再度山
(
ふたたびやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
奴
(
め
)
、
278
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
白状
(
はくじやう
)
させねば
措
(
お
)
くものか』
279
と
又
(
また
)
もや
汗
(
あせ
)
をたらたら
流
(
なが
)
し、
280
『ウンウン』と
霊
(
れい
)
を
送
(
おく
)
る。
281
側
(
そば
)
に
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んで
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
た
秋彦
(
あきひこ
)
の
方
(
はう
)
は
根
(
ね
)
つから、
282
相手
(
あひて
)
になつて
呉
(
く
)
れぬので、
283
秋彦
『アーア、
284
偽神懸
(
にせかむがか
)
りも
辛
(
つら
)
いものだ。
285
誰
(
たれ
)
も
相手
(
あひて
)
になつて
呉
(
く
)
れない。
286
本当
(
ほんたう
)
に
玉
(
たま
)
なしだ。
287
アヽもう
廃
(
や
)
めとこかい』
288
高姫
『これ、
289
小天狗
(
こてんぐ
)
、
290
巧
(
うま
)
い
事
(
こと
)
化
(
ば
)
けやがるな。
291
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
肉体
(
にくたい
)
ぢや
無
(
な
)
い。
292
サアお
前
(
まへ
)
はチツとでよいから
何方
(
どちら
)
の
方面
(
はうめん
)
だと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
位
(
くらゐ
)
は
知
(
し
)
らして
呉
(
く
)
れ。
293
さうしたら
公園
(
こうゑん
)
を
拵
(
こしら
)
へお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てて
祀
(
まつ
)
つてやる』
294
秋彦
『
公園
(
こうゑん
)
も
何
(
なに
)
も
要
(
い
)
りませぬ。
295
あゝ
足
(
あし
)
が
痛
(
いた
)
くなつて
来
(
き
)
た』
296
と
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
らうとする。
297
高姫
『これ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
298
高山彦
(
たかやまひこ
)
さま。
299
秋彦
(
あきひこ
)
の
両方
(
りやうはう
)
の
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
300
小天狗
(
こてんぐ
)
の
奴
(
やつ
)
、
301
何処
(
どこ
)
へ
肉体
(
にくたい
)
を
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
くか
分
(
わか
)
りませぬぞ。
302
白状
(
はくじやう
)
させる
迄
(
まで
)
は
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
を
外
(
そと
)
にやる
事
(
こと
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
になりませぬぞ』
303
国依別
(
くによりわけ
)
『そんなら、
304
エー、
305
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
します。
306
再度山
(
ふたたびやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
に
間違
(
まちが
)
ひはありませぬ。
307
又
(
また
)
此
(
この
)
秋彦
(
あきひこ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
憑
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのは
私
(
わたし
)
の
眷族
(
けんぞく
)
小天狗
(
こてんぐ
)
です。
308
何卒
(
どうぞ
)
しつかり
手足
(
てあし
)
を
掴
(
つか
)
まへて
立
(
た
)
つて
去
(
い
)
なぬ
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さい』
309
秋彦
『これこれ
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
310
殺生
(
せつしやう
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
はないで
下
(
くだ
)
さい。
311
足
(
あし
)
が
痛
(
いた
)
んで
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
312
お
前
(
まへ
)
さまがするから
真似
(
まね
)
したのが
病付
(
やみつ
)
きだ。
313
……もしもし
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
314
どうぞ
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さい。
315
お
前
(
まへ
)
さまも
肉体
(
にくたい
)
か
神懸
(
かむがか
)
りか
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
はあるまい。
316
本当
(
ほんたう
)
によく
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さい』
317
黒姫
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
小天狗
(
こてんぐ
)
は
小天狗
(
こてんぐ
)
だ。
318
国依別
(
くによりわけ
)
は
平常
(
ふだん
)
から
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
いから
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
憑
(
うつ
)
るのは
当然
(
あたりまへ
)
だ。
319
お
前
(
まへ
)
も
鼻高
(
はなだか
)
だから
身魂
(
みたま
)
相応
(
さうおう
)
の
小天狗
(
こてんぐ
)
が
憑
(
うつ
)
るのだ。
320
巧
(
うま
)
い
事
(
こと
)
肉体
(
にくたい
)
に
化
(
ば
)
けても
あき
ませぬぞよ』
321
国依別
(
くによりわけ
)
『アハヽヽヽ、
322
暁没漢
(
わからずや
)
ほど
困
(
こま
)
つたものは
無
(
な
)
いワイ。
323
そんなら
偽
(
にせ
)
の
神懸
(
かむがか
)
りで、
324
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
高姫
(
たかひめ
)
に
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
の
スカタン
を
知
(
し
)
らして
上
(
あ
)
げようかい。
325
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
知
(
し
)
らしてやつたら
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
退
(
の
)
くだらうなア』
326
高姫
『
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
もお
前
(
まへ
)
を
引張
(
ひつぱ
)
つて
行
(
い
)
つて
神懸
(
かむがか
)
りをさせて
玉
(
たま
)
を
探
(
さが
)
させ、
327
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
でも
何尺
(
なんじやく
)
下
(
した
)
と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
透視
(
とうし
)
さすのだから、
328
玉
(
たま
)
が
出
(
で
)
る
迄
(
まで
)
放
(
はな
)
しませぬぞえ』
329
国依別
(
くによりわけ
)
『こいつは
困
(
こま
)
つたなア。
330
俺
(
わし
)
も
自分
(
じぶん
)
乍
(
なが
)
ら
肉体
(
にくたい
)
だか
神懸
(
かむがか
)
りだか
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になつて
仕舞
(
しま
)
つた』
331
高姫
(
たかひめ
)
『それ
見
(
み
)
なさい。
332
何処
(
どこ
)
だかハツキリと
白状
(
はくじやう
)
しなさい、
333
事
(
こと
)
と
品
(
しな
)
とに
依
(
よ
)
つたら
此
(
この
)
場
(
ば
)
で
開放
(
かいはう
)
してやるかも
知
(
し
)
れませぬ』
334
国依別
(
くによりわけ
)
『
別
(
べつ
)
に
開放
(
かいはう
)
して
貰
(
もら
)
はなくてもよい。
335
霊縛
(
れいばく
)
されたのでも
無
(
な
)
し、
336
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
行
(
ゆ
)
き
度
(
た
)
い
処
(
ところ
)
に
行
(
ゆ
)
けるのだが、
337
一
(
ひと
)
つ
困
(
こま
)
るのはお
前
(
まへ
)
さまが
跟
(
つ
)
いてくる
事
(
こと
)
だ。
338
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
さへせねば
国依別
(
くによりわけ
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
としての
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まるのだ。
339
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
遅
(
おく
)
れて
聖地
(
せいち
)
へ
帰
(
かへ
)
るなら
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
340
それ
迄
(
まで
)
にチヤンと
秘密
(
ひみつ
)
の
相談
(
さうだん
)
をして、
341
お
前
(
まへ
)
さま
達
(
たち
)
にアフンとさせる
仕組
(
しぐみ
)
をさせねばならぬからなア』
342
高姫
『
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
国依別
(
くによりわけ
)
が
其
(
そ
)
んな
自分
(
じぶん
)
の
不利益
(
ふりえき
)
な
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
るものか。
343
再度山
(
ふたたびやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
に
間違
(
まちがひ
)
はあるまいがな』
344
と
後
(
あと
)
程
(
ほど
)
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
りつける。
345
国依別
『そんなら
三
(
みつ
)
つの
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
一人
(
ひとり
)
々々
(
ひとり
)
一ケ所
(
いつかしよ
)
づつ
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げるから、
346
互
(
たがひ
)
に
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
347
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
乍
(
なが
)
ら
分
(
わか
)
らない
様
(
やう
)
にするといふお
約束
(
やくそく
)
になれば、
348
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
を
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げませう。
349
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
が
明日
(
あす
)
の
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
く
掘
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
しに
御
(
お
)
出
(
いで
)
になり、
350
又
(
また
)
外
(
ほか
)
へお
隠
(
かく
)
し
遊
(
あそ
)
ばすのだから、
351
玉
(
たま
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れるのなら
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
ですよ』
352
高姫
(
たかひめ
)
、
353
首
(
くび
)
を
縦
(
たて
)
に
三
(
みつ
)
つ
四
(
よ
)
つ
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
354
高姫
『あ、
355
さうだらうさうだらう、
356
そんなら
高山彦
(
たかやまひこ
)
さま、
357
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
358
妾
(
わたし
)
は
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
聞
(
き
)
きますから、
359
貴方
(
あなた
)
達
(
たち
)
は
彼方
(
あちら
)
へ
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
360
順番
(
じゆんばん
)
が
廻
(
まは
)
つて
来
(
き
)
たら
知
(
し
)
らせますから……』
361
黒姫
(
くろひめ
)
『エー、
362
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い。
363
そんなら
順番
(
じゆんばん
)
が
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ませう』
364
と
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
下
(
さ
)
がる。
365
国依別
『
此
(
この
)
家
(
いへ
)
を
遠
(
とほ
)
く
離
(
はな
)
れて
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
まで
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
366
さうでないとお
前
(
まへ
)
さまの
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
立聞
(
たちぎ
)
きすると
困
(
こま
)
るから……』
367
黒姫
『ハーイ ハーイ』
368
と
長
(
なが
)
い
返事
(
へんじ
)
をし
乍
(
なが
)
ら
黒姫
(
くろひめ
)
は
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
369
高姫
(
たかひめ
)
『さア
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
通
(
どほ
)
り
誰
(
たれ
)
も
居
(
を
)
りませぬ。
370
チヤツと
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
371
国依別
『
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
御
(
おん
)
玉
(
たま
)
は、
372
杢助
(
もくすけ
)
の
娘
(
むすめ
)
、
373
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
374
言依別
(
ことよりわけ
)
の
手
(
て
)
より
受取
(
うけと
)
り
給
(
たま
)
ひ、
375
近江
(
あふみ
)
の
国
(
くに
)
の
竹生島
(
ちくぶしま
)
の
社殿
(
しやでん
)
の
下
(
した
)
に
三角石
(
さんかくいし
)
を
標
(
しるし
)
として
匿
(
かく
)
し
置
(
お
)
かれたぞよ。
376
その
方
(
はう
)
は
只今
(
ただいま
)
より
黒姫
(
くろひめ
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して、
377
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
竹生島
(
ちくぶしま
)
に
向
(
むか
)
つて
玉取
(
たまと
)
りに
行
(
ゆ
)
くが
宜
(
よ
)
からう。
378
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ると
言依別
(
ことよりわけ
)
の
使者
(
ししや
)
に
先
(
さき
)
に
掘出
(
ほりだ
)
されて
仕舞
(
しま
)
ふぞよ』
379
高姫
『
何
(
なん
)
でも
妾
(
わし
)
の
霊眼
(
れいがん
)
に
映
(
えい
)
じたのは
島
(
しま
)
ぢやと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
た。
380
お
礼
(
れい
)
は
後
(
あと
)
で
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げる。
381
又
(
また
)
国依別
(
くによりわけ
)
の
肉体
(
にくたい
)
も
良
(
よ
)
い
御用
(
ごよう
)
をしたのだから、
382
肉体
(
にくたい
)
に
対
(
たい
)
しても
後
(
あと
)
で
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
すから……』
383
と
欣々
(
いそいそ
)
と
杢助館
(
もくすけやかた
)
の
裏口
(
うらぐち
)
より
駆出
(
かけだ
)
して
仕舞
(
しま
)
つた。
384
国依別
(
くによりわけ
)
『オイ
秋彦
(
あきひこ
)
、
385
駒彦
(
こまひこ
)
、
386
如何
(
どう
)
だ。
387
俺
(
おれ
)
の
狂言
(
きやうげん
)
は
余
(
あま
)
り
巧
(
うま
)
くやり
過
(
す
)
ぎて、
388
本当
(
ほんたう
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
にしられて
仕舞
(
しま
)
つたぢやないか。
389
アハヽヽヽ』
390
秋彦
(
あきひこ
)
『
然
(
しか
)
し
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
391
本当
(
ほんたう
)
に
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふえ
)
の
玉
(
たま
)
は
竹生島
(
ちくぶしま
)
に
隠
(
かく
)
してあるのですか。
392
俺
(
おれ
)
は
初
(
はじ
)
めて
聞
(
き
)
きましたよ』
393
国依別
(
くによりわけ
)
『
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
言
(
い
)
ふな。
394
疑
(
うたが
)
ひ
深
(
ぶか
)
い
高姫
(
たかひめ
)
がソツと
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
話
(
はなし
)
を
立聞
(
たちぎ
)
きしてるか
知
(
し
)
れぬぞ……オイ、
395
駒彦
(
こまひこ
)
、
396
家
(
いへ
)
の
周囲
(
ぐるり
)
を
見
(
み
)
て
来
(
こ
)
い』
397
駒彦
(
こまひこ
)
『イヽエ、
398
高姫
(
たかひめ
)
は
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
走
(
はし
)
つて
行
(
ゆ
)
きましたよ』
399
国依別
『サア、
400
之
(
これ
)
から
此
(
この
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
黒姫
(
くろひめ
)
、
401
高山彦
(
たかやまひこ
)
を
何
(
なん
)
とか
撒
(
ま
)
かねばならぬ。
402
今度
(
こんど
)
は
何処
(
どこ
)
に
隠
(
かく
)
したと
言
(
い
)
はうかな。
403
エー、
404
よしよし、
405
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
塩梅
(
あんばい
)
ぢや、
406
……オイ
駒彦
(
こまひこ
)
、
407
黒姫
(
くろひめ
)
さま
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
来
(
こ
)
いと
言
(
い
)
うて
呼
(
よ
)
んで
来
(
こ
)
い』
408
駒彦
『
承知
(
しようち
)
しました』
409
と
尻引
(
しりひつ
)
からげ、
410
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
る
黒姫
(
くろひめ
)
を
迎
(
むか
)
へて
来
(
き
)
た。
411
黒姫
(
くろひめ
)
はイソイソとして
足
(
あし
)
も
地
(
ち
)
に
着
(
つ
)
かず
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれた。
412
国依別
『
今
(
いま
)
改
(
あらた
)
めて
大天狗
(
だいてんぐ
)
より
黒姫
(
くろひめ
)
に
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らしてやらう。
413
高姫
(
たかひめ
)
は
既
(
すで
)
に
宝
(
たから
)
の
所在
(
ありか
)
を
教
(
をし
)
へられ
掘出
(
ほりだ
)
しに
出立
(
しゆつたつ
)
致
(
いた
)
したぞよ。
414
サア
秋彦
(
あきひこ
)
、
415
駒彦
(
こまひこ
)
、
416
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
門外
(
もんぐわい
)
へ
出
(
で
)
て
仕舞
(
しま
)
へ、
417
秘密
(
ひみつ
)
が
洩
(
も
)
れると
大変
(
たいへん
)
だから……』
418
二人
(
ふたり
)
は
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
門口
(
もんぐち
)
へ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
す。
419
国依別
『
再度山
(
ふたたびやま
)
の
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
今
(
いま
)
改
(
あらた
)
めて
黒姫
(
くろひめ
)
に
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らしてやる
程
(
ほど
)
に、
420
仮令
(
たとへ
)
高山彦
(
たかやまひこ
)
になりとも
口外
(
こうぐわい
)
せぬと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
誓
(
ちか
)
ふか、
421
如何
(
どう
)
だ』
422
黒姫
『ハイ、
423
決
(
けつ
)
して
秘密
(
ひみつ
)
は
漏
(
も
)
らしませぬ』
424
国依別
『そんなら
確
(
たしか
)
に
聞
(
き
)
け。
425
近江
(
あふみ
)
の
国
(
くに
)
は
琵琶
(
びは
)
の
湖
(
みづうみ
)
、
426
竹生島
(
ちくぶしま
)
の
弁天
(
べんてん
)
の
祠
(
ほこら
)
の
下
(
した
)
に、
427
三角形
(
さんかくけい
)
の
石
(
いし
)
を
標
(
しるし
)
として
三尺
(
さんじやく
)
下
(
した
)
に
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
は
隠
(
かく
)
されてあるぞよ。
428
早
(
はや
)
く
参
(
まゐ
)
らぬと
言依別
(
ことよりわけ
)
の
使
(
つかひ
)
の
者
(
もの
)
が
掘出
(
ほりだ
)
して、
429
後
(
あと
)
でアフンとせねばならぬぞよ。
430
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
行
(
い
)
つたが
宜
(
よ
)
からう』
431
黒姫
『それはそれは、
432
有難
(
ありがた
)
い
貴方
(
あなた
)
のお
示
(
しめ
)
し、
433
そんなら
之
(
これ
)
から
参
(
まゐ
)
ります』
434
と
裏口
(
うらぐち
)
より
夜叉
(
やしや
)
の
如
(
ごと
)
く
尻引
(
しりひつ
)
からげ、
435
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
しぬ。
436
続
(
つづ
)
いて
高山彦
(
たかやまひこ
)
も
此処
(
ここ
)
に
招
(
まね
)
かれて
又
(
また
)
もや
国依別
(
くによりわけ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
る。
437
国依別
『ヤア
其方
(
そなた
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
で
御座
(
ござ
)
つたか。
438
今
(
いま
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
知
(
し
)
つた
丈
(
だけ
)
の
事
(
こと
)
を
教
(
をし
)
へて
遣
(
つか
)
はす。
439
高姫
(
たかひめ
)
には
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
示
(
しめ
)
し、
440
黒姫
(
くろひめ
)
には
黄金
(
こがね
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らした
処
(
ところ
)
、
441
両人
(
りやうにん
)
は
時
(
とき
)
おくれては
一大事
(
いちだいじ
)
と、
442
玉
(
たま
)
の
隠
(
かく
)
し
場所
(
ばしよ
)
へ
走
(
はし
)
つて
行
(
い
)
つたぞ。
443
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
は
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
の
佩
(
は
)
かせ
給
(
たま
)
ふ
十握
(
とつか
)
の
剣
(
つるぎ
)
より
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる、
444
三女神
(
さんぢよしん
)
の
鎮
(
しづ
)
まり
給
(
たま
)
ふ
近江
(
あふみ
)
の
国
(
くに
)
は
竹生島
(
ちくぶしま
)
、
445
弁天
(
べんてん
)
の
祠
(
ほこら
)
の
下
(
した
)
に、
446
三角形
(
さんかくけい
)
の
石
(
いし
)
を
乗
(
の
)
せて
三尺
(
さんじやく
)
ばかり
底
(
そこ
)
の
方
(
はう
)
へ
隠
(
かく
)
してあるぞよ。
447
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
取
(
と
)
りに
行
(
ゆ
)
かぬと
聖地
(
せいち
)
より
掘出
(
ほりだ
)
しに
行
(
ゆ
)
くぞよ。
448
如何
(
どう
)
ぢや、
449
ありがたいか』
450
高山彦
『ハイ、
451
有難
(
ありがた
)
う。
452
三
(
さん
)
人
(
にん
)
共
(
とも
)
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
453
御
(
お
)
礼
(
れい
)
は
後
(
あと
)
から、
454
ゆつくり……
左様
(
さやう
)
なら……
大天狗
(
だいてんぐ
)
様
(
さま
)
、
455
之
(
これ
)
にてお
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
します』
456
国依別
『
汝
(
なんぢ
)
は
裏口
(
うらぐち
)
より
走
(
はし
)
つて
行
(
ゆ
)
け。
457
さうしてアール、
458
エースの
二人
(
ふたり
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
459
刻
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
走
(
はし
)
つて
行
(
ゆ
)
くが
宜
(
よ
)
いぞよ』
460
高山彦
『
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
まで
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
461
御
(
お
)
礼
(
れい
)
は
後
(
あと
)
より……』
462
と
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てて、
463
長
(
なが
)
いコンパスを
大股
(
おほまた
)
に
踏張
(
ふんば
)
り
乍
(
なが
)
ら
地響
(
ぢひび
)
き
打
(
う
)
たせて、
464
ドスンドスンと
床
(
ゆか
)
を
鳴
(
な
)
らして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
465
国依別
(
くによりわけ
)
は
後見送
(
あとみおく
)
つて、
466
国依別
『アハヽヽヽ、
467
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
にはチツとも
嘘言
(
うそ
)
は
申
(
まを
)
されぬのだが、
468
アア
責
(
せ
)
められちや
仕方
(
しかた
)
がない。
469
玉
(
たま
)
はなくても
弁天
(
べんてん
)
様
(
さま
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
して
結構
(
けつこう
)
な
悟
(
さとり
)
を
開
(
ひら
)
き、
470
玉
(
たま
)
以上
(
いじやう
)
の
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
くと
思
(
おも
)
つて、
471
竹生島
(
ちくぶしま
)
詣
(
まゐ
)
りをさしてやつたのだ。
472
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
に
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げさすと
言
(
い
)
ふ
俺
(
おれ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
だ、
473
何
(
なん
)
と
妙案
(
めうあん
)
だらう』
474
秋彦
(
あきひこ
)
『
其奴
(
そいつ
)
ア
上出来
(
じやうでき
)
だつた。
475
然
(
しか
)
し
駒彦
(
こまひこ
)
さま、
476
お
前
(
まへ
)
しつかり
留守
(
るす
)
して
居
(
ゐ
)
て
呉
(
く
)
れ。
477
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
や
玉能姫
(
たまのひめ
)
様
(
さま
)
が
聖地
(
せいち
)
へお
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
後
(
あと
)
になつては
大変
(
たいへん
)
だから、
478
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
は
之
(
これ
)
から
聖地
(
せいち
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
するから……あと
宜
(
よろ
)
しく
頼
(
たの
)
むよ』
479
駒彦
(
こまひこ
)
『ヨシ、
480
承知
(
しようち
)
した。
481
サア
早
(
はや
)
く
行
(
い
)
つたが
宜
(
よ
)
からう。
482
東助
(
とうすけ
)
さまも、
483
モウ
今頃
(
いまごろ
)
は
聖地
(
せいち
)
へ
安着
(
あんちやく
)
されてる
時分
(
じぶん
)
だ。
484
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
の
帰
(
かへ
)
るのを
首
(
くび
)
を
長
(
なが
)
うして
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
られるだらう。
485
サア
後
(
あと
)
は
俺
(
おれ
)
が
引受
(
ひきう
)
けるから、
486
心配
(
しんぱい
)
せずに
早
(
はや
)
く
足
(
あし
)
の
用意
(
ようい
)
に
掛
(
かか
)
つて
呉
(
く
)
れ』
487
国依別
(
くによりわけ
)
、
488
秋彦
(
あきひこ
)
は
急
(
いそ
)
ぎ
旅装
(
りよさう
)
を
整
(
ととの
)
へ、
489
館
(
やかた
)
を
後
(
あと
)
に
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
490
(
大正一一・七・一二
旧閏五・一八
北村隆光
録)
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