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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第25巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 相縁奇縁
第1章 水禽の音
第2章 与太理縮
第3章 鶍の恋
第4章 望の縁
第2篇 自由活動
第5章 酒の滝壺
第6章 三腰岩
第7章 大蛇解脱
第8章 奇の巌窟
第3篇 竜の宮居
第9章 信仰の実
第10章 開悟の花
第11章 風声鶴唳
第12章 不意の客
第4篇 神花霊実
第13章 握手の涙
第14章 園遊会
第15章 改心の実
第16章 真如の玉
第5篇 千里彷徨
第17章 森の囁
第18章 玉の所在
第19章 竹生島
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(B)
(N)
不意の客 >>>
第一一章
風声
(
ふうせい
)
鶴唳
(
かくれい
)
〔七五七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻
篇:
第3篇 竜の宮居
よみ(新仮名遣い):
たつのみやい
章:
第11章 風声鶴唳
よみ(新仮名遣い):
ふうせいかくれい
通し章番号:
757
口述日:
1922(大正11)年07月10日(旧閏05月16日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年5月25日
概要:
舞台:
地恩城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
地恩城では、黄竜姫が配下を従えて月見の宴を催していた。突如、黄竜姫は顔色青ざめ、友彦とその軍勢の幻影を空中に見て、高殿から転落して人事不省となってしまった。
しかし不思議なことに、配下の者たちからは黄竜姫は依然としてその場にあるが如くに見えていた。蜈蚣姫だけには、転落した黄竜姫が見えていた。蜈蚣姫は慌てて駆け下りて行く。
これは二人の執着心の鬼によって、幻覚が見えたのであった。またその罪悪より成れる肉体は、千尋の谷底に落とされ、後には二人の本守護神のみが残っていた。
本守護神となった黄竜姫はますます荘厳の度を増し、月の大神様を宴の肴として宴を開いたことを悔いた。一同は宴を中止し、梅子姫は導師となって神言を奏上した。以後は月見の宴を為すことは厳禁された。
すると貫州と武公が慌てて注進にやってきた。二人は、城外に友彦の大軍勢が押し寄せて城は陥落寸前だという。スマートボールは黄竜姫の命で様子を見に行くと、城外には誰もいなかった。
スマートボールは戻って来て貫州と武公を平手打ちすると、二人はようやく我に返った。二人は取り越し苦労が募って夢を見たと一同に詫びた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-09-05 18:56:03
OBC :
rm2511
愛善世界社版:
162頁
八幡書店版:
第5輯 90頁
修補版:
校定版:
168頁
普及版:
73頁
初版:
ページ備考:
001
蒼空
(
さうくう
)
一点
(
いつてん
)
の
雲
(
くも
)
なく、
002
星光
(
せいくわう
)
疎
(
まばら
)
にして
中秋
(
ちうしう
)
の
月
(
つき
)
は
中空
(
ちうくう
)
に
懸
(
かか
)
り、
003
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
き
温顔
(
をんがん
)
をもて
下界
(
げかい
)
を
照
(
てら
)
し
給
(
たま
)
ふ。
004
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
棟
(
むね
)
に
鏤
(
ちりば
)
めたる
十曜
(
とえう
)
の
金紋
(
きんもん
)
は、
005
月光
(
げつくわう
)
に
映
(
えい
)
じて
目
(
め
)
も
眩
(
まばゆ
)
きばかりなり。
006
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
女王
(
ぢよわう
)
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は、
007
梅子姫
(
うめこひめ
)
、
008
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
、
009
左守
(
さもり
)
のスマートボール、
010
宇豆姫
(
うづひめ
)
を
始
(
はじ
)
め
右守
(
うもり
)
の
鶴公
(
つるこう
)
、
011
貫州
(
くわんしう
)
、
012
武公
(
たけこう
)
其
(
その
)
他
(
た
)
を
従
(
したが
)
へ、
013
高殿
(
たかどの
)
に
登
(
のぼ
)
り
月見
(
つきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
開
(
ひら
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
014
果物
(
くだもの
)
の
酒
(
さけ
)
は
芳醇
(
はうじゆん
)
なる
香
(
にほひ
)
を
放
(
はな
)
ち、
015
柑子
(
こうづ
)
、
016
バナナ、
017
桃
(
もも
)
其
(
そ
)
の
他
(
た
)
の
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
を
麗
(
うるは
)
しき
器
(
うつは
)
に
盛
(
も
)
り、
018
一同
(
いちどう
)
歓
(
くわん
)
を
尽
(
つく
)
して
月光
(
げつくわう
)
を
仰
(
あふ
)
ぐ
折
(
をり
)
しも、
019
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
顔色
(
がんしよく
)
蒼白
(
あを
)
ざめ、
020
身体
(
しんたい
)
頻
(
しき
)
りに
動揺
(
どうえう
)
して、
021
心中
(
しんちう
)
不安
(
ふあん
)
の
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれし
如
(
ごと
)
き
容態
(
ようたい
)
となれり。
022
梅子姫
(
うめこひめ
)
、
023
其
(
その
)
他
(
た
)
の
人々
(
ひとびと
)
の
目
(
め
)
には、
024
中秋
(
ちうしう
)
の
月
(
つき
)
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
き、
025
紺碧
(
こんぺき
)
の
空
(
そら
)
は
愈
(
いよいよ
)
高
(
たか
)
く、
026
風
(
かぜ
)
は
涼
(
すず
)
しく
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
気分
(
きぶん
)
に
包
(
つつ
)
まれて
居
(
ゐ
)
る。
027
独
(
ひと
)
り
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
眼
(
まなこ
)
に
映
(
えい
)
じたるは、
028
ジヤンナ
郷
(
きやう
)
のテールス
姫
(
ひめ
)
の
夫
(
をつと
)
となり、
029
三五
(
あななひ
)
の
道
(
みち
)
をネルソン
山
(
ざん
)
以西
(
いせい
)
に
布
(
し
)
き、
030
旭日
(
きよくじつ
)
昇天
(
しようてん
)
の
勢
(
いきほひ
)
ありと
称
(
しよう
)
せらるる
友彦
(
ともひこ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に、
031
数多
(
あまた
)
の
鬼
(
おに
)
の
如
(
ごと
)
き
土人
(
どじん
)
、
032
怪
(
あや
)
しき
黒雲
(
くろくも
)
に
乗
(
の
)
り、
033
幾十万
(
いくじふまん
)
とも
限
(
かぎ
)
りなく
鋭利
(
えいり
)
なる
鎗
(
やり
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
034
中空
(
ちうくう
)
より
地上
(
ちじやう
)
を
眺
(
なが
)
め、
035
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
向
(
むか
)
つて
鋼鉄
(
まがね
)
の
矛
(
ほこ
)
を
驟雨
(
しうう
)
の
如
(
ごと
)
く
降
(
ふ
)
らせ、
036
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
を
挽
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れ、
037
青
(
あを
)
、
038
赤
(
あか
)
、
039
黒
(
くろ
)
の
鬼
(
おに
)
、
040
虎皮
(
こひ
)
の
褌
(
ふんどし
)
を
締
(
し
)
め、
041
牛
(
うし
)
の
如
(
ごと
)
き
角
(
つの
)
を
生
(
は
)
やし
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る
恐
(
おそ
)
ろしさに、
042
身体
(
しんたい
)
忽
(
たちま
)
ち
震動
(
しんどう
)
して、
043
高殿
(
たかどの
)
より
終
(
つひ
)
に
顛落
(
てんらく
)
、
044
人事
(
じんじ
)
不省
(
ふせい
)
に
陥
(
おちい
)
りける。
045
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
きてものをも
言
(
い
)
はず、
046
老
(
おい
)
の
身
(
み
)
も
甲斐
(
かひ
)
々々
(
がひ
)
しく
階段
(
かいだん
)
を
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
047
されど
梅子姫
(
うめこひめ
)
、
048
スマートボール
其
(
その
)
他
(
た
)
の
面々
(
めんめん
)
には、
049
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
姿
(
すがた
)
並
(
ならび
)
に
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
姿
(
すがた
)
は
依然
(
いぜん
)
として
高殿
(
たかどの
)
に
月
(
つき
)
を
賞
(
しやう
)
するかの
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
え
居
(
ゐ
)
たり。
050
それ
故
(
ゆゑ
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
周章
(
あわて
)
て
階段
(
かいだん
)
を
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
きし
事
(
こと
)
も、
051
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
が
高殿
(
たかどの
)
より
墜落
(
つゐらく
)
せし
事
(
こと
)
も
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らざりし。
052
要
(
えう
)
するに
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
、
053
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
は、
054
依然
(
いぜん
)
として
此
(
この
)
高殿
(
たかどの
)
に
其
(
その
)
儘
(
まま
)
の
体
(
たい
)
を
現
(
あら
)
はし、
055
嬉々
(
きき
)
として
月
(
つき
)
を
賞
(
しやう
)
しつつありしなり。
056
二人
(
ふたり
)
が
身体
(
からだ
)
に
残
(
のこ
)
れる
執着心
(
しふちやくしん
)
の
鬼
(
おに
)
の
為
(
た
)
めに
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
き
幻覚
(
げんかく
)
を
起
(
おこ
)
し、
057
又
(
また
)
其
(
その
)
罪悪
(
ざいあく
)
の
凝固
(
かたまり
)
より
成
(
な
)
れる
肉体
(
にくたい
)
は、
058
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
容器
(
いれもの
)
として
高殿
(
たかどの
)
の
下
(
した
)
なる
千仭
(
せんじん
)
の
谷間
(
たにま
)
に
突
(
つ
)
き
落
(
おと
)
されたるなりき。
059
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
つた
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
姿
(
すがた
)
は、
060
恰
(
あだか
)
も
鼈甲
(
べつかふ
)
の
如
(
ごと
)
く
身体
(
しんたい
)
半
(
なか
)
ば
透
(
す
)
き
通
(
とほ
)
りて
一層
(
いつそう
)
の
美
(
び
)
を
加
(
くは
)
へ、
061
言葉
(
ことば
)
も
俄
(
にはか
)
に
涼
(
すず
)
しく
且
(
か
)
つ
荘重
(
さうちよう
)
を
帯
(
お
)
び
来
(
き
)
たりぬ。
062
梅子姫
(
うめこひめ
)
『
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
様
(
さま
)
、
063
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
があるもので
御座
(
ござ
)
いますな。
064
今迄
(
いままで
)
の
貴女
(
あなた
)
のお
姿
(
すがた
)
とうつて
変
(
かは
)
り、
065
一入
(
ひとしほ
)
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
おん
)
顔色
(
かんばせ
)
、
066
お
身体
(
からだ
)
の
恰好
(
かつかう
)
までも、
067
何処
(
どこ
)
ともなく
威厳
(
ゐげん
)
の
加
(
くは
)
はつた
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ひます。
068
変
(
かは
)
ると
言
(
い
)
つても、
069
斯
(
か
)
う
迅速
(
じんそく
)
に
向上
(
かうじやう
)
遊
(
あそ
)
ばすと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
070
不思議
(
ふしぎ
)
でなりませぬ』
071
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『ハイ、
072
妾
(
わたし
)
は
勿体
(
もつたい
)
なくも
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
となり、
073
且
(
かつ
)
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
女王
(
ぢよわう
)
と
迄
(
まで
)
上
(
のぼ
)
りつめ、
074
稍
(
やや
)
得意
(
とくい
)
の
色
(
いろ
)
を
浮
(
うか
)
べ
安心
(
あんしん
)
の
気
(
き
)
にうたれて、
075
勿体
(
もつたい
)
なくも
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
を
玩弄物
(
おもちや
)
か
何
(
なに
)
かの
様
(
やう
)
に、
076
酒肴
(
さけさかな
)
を
持
(
も
)
ち
出
(
だ
)
し
月見
(
つきみ
)
の
宴
(
えん
)
だと、
077
花見
(
はなみ
)
か
雪見
(
ゆきみ
)
の
様
(
やう
)
な
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い
事
(
こと
)
を
何
(
なん
)
とも
思
(
おも
)
はず
始
(
はじ
)
めましたが、
078
忽
(
たちま
)
ち
大空
(
おほぞら
)
の
月光
(
げつくわう
)
菩薩
(
ぼさつ
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
に
照
(
て
)
らされハテ、
079
済
(
す
)
まない
事
(
こと
)
をした、
080
妾
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
こそ
飛
(
た
)
つ
鳥
(
とり
)
も
落
(
おと
)
す
様
(
やう
)
な
威勢
(
ゐせい
)
で
斯
(
か
)
うして
此処
(
ここ
)
に
安楽
(
あんらく
)
に
暮
(
くら
)
して
居
(
を
)
るが、
081
月
(
つき
)
の
鏡
(
かがみ
)
に
妾
(
わたし
)
の
古
(
ふる
)
い
傷
(
きず
)
がスツカリ
写
(
うつ
)
つた
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
になり、
082
月見
(
つきみ
)
どころか、
083
穴
(
あな
)
でもあらば
這入
(
はい
)
り
度
(
た
)
い
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
になり、
084
悔悟
(
くわいご
)
の
念
(
ねん
)
に
苦
(
くる
)
しむ
時
(
とき
)
しも、
085
満天
(
まんてん
)
の
星
(
ほし
)
は
黒雲
(
くろくも
)
に
包
(
つつ
)
まれ
月光
(
げつくわう
)
は
影
(
かげ
)
を
隠
(
かく
)
し
四面
(
しめん
)
咫尺
(
しせき
)
暗澹
(
あんたん
)
となりしと
思
(
おも
)
ふ
間
(
ま
)
もなく、
086
ジヤンナの
郷
(
さと
)
に
三五
(
あななひ
)
の
道
(
みち
)
を
伝
(
つた
)
ふる
友彦
(
ともひこ
)
は
妾
(
わたし
)
が
昔
(
むかし
)
彼
(
かれ
)
に
与
(
あた
)
へた
凌辱
(
りようじよく
)
の
怨
(
うら
)
みを
復
(
かへ
)
さむと
数多
(
あまた
)
の
鬼
(
おに
)
を
従
(
したが
)
へ、
087
天上
(
てんじやう
)
より
鋼鉄
(
まがね
)
の
矛
(
ほこ
)
を
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
くに
降
(
ふ
)
らせ、
088
火
(
ひ
)
の
車
(
くるま
)
を
以
(
もつ
)
て
我
(
わが
)
肉体
(
にくたい
)
を
迎
(
むか
)
へ
来
(
きた
)
る
其
(
その
)
恐
(
おそ
)
ろしさ。
089
罪
(
つみ
)
にかたまつた
肉体
(
にくたい
)
の
衣
(
きぬ
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
に
依
(
よ
)
つて
剥
(
は
)
ぎ
取
(
と
)
られ、
090
又
(
また
)
母上
(
ははうへ
)
も
子
(
こ
)
の
愛
(
あい
)
に
溺
(
おぼ
)
れ
給
(
たま
)
ふ
執着心
(
しふちやくしん
)
の
衣
(
ころも
)
は、
091
此
(
この
)
谷間
(
たにま
)
に
落
(
お
)
ちて
白烟
(
はくえん
)
となり
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せました。
092
アヽ
斯
(
か
)
くなる
上
(
うへ
)
は
最早
(
もはや
)
妾
(
わたし
)
の
肉体
(
にくたい
)
には
一点
(
いつてん
)
の
雲霧
(
くもきり
)
も
無
(
な
)
く、
093
正
(
まさ
)
に
此
(
この
)
中秋
(
ちうしう
)
のお
月様
(
つきさま
)
の
如
(
ごと
)
き
身魂
(
しんこん
)
と
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
つた
様
(
やう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
094
それに
就
(
つ
)
いては
皆様
(
みなさま
)
、
095
只今
(
ただいま
)
より
月見
(
つきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
廃
(
はい
)
し、
096
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
詫
(
わび
)
を
致
(
いた
)
しませう』
097
との
物語
(
ものがた
)
りに
梅子姫
(
うめこひめ
)
は
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
り、
098
自
(
みづか
)
ら
導師
(
だうし
)
となつて
高殿
(
たかどの
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
099
月光
(
げつくわう
)
に
向
(
むか
)
つて
感謝
(
かんしや
)
祈願
(
きぐわん
)
の
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
100
月見
(
つきみ
)
に
用
(
もち
)
ゐたる
総
(
すべ
)
ての
器
(
うつは
)
を
此
(
この
)
高殿
(
たかどの
)
より
眼下
(
がんか
)
の
谷底
(
たにそこ
)
目蒐
(
めが
)
けて
一品
(
ひとしな
)
も
残
(
のこ
)
らず
投
(
な
)
げやり、
101
今後
(
こんご
)
は
決
(
けつ
)
して
月見
(
つきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
為
(
な
)
さざる
事
(
こと
)
を
神明
(
しんめい
)
に
約
(
やく
)
し、
102
悄然
(
せうぜん
)
として
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
奥殿
(
おくでん
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し、
103
再
(
ふたた
)
び
一同
(
いちどう
)
打揃
(
うちそろ
)
ひ
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
する
事
(
こと
)
となりぬ。
104
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
を
始
(
はじ
)
め、
105
重
(
おも
)
だちたる
幹部
(
かんぶ
)
は
奥殿
(
おくでん
)
に
入
(
い
)
り、
106
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
了
(
をは
)
つて
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
き
居
(
を
)
る
際
(
さい
)
、
107
慌
(
あわただ
)
しく
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
目蒐
(
めが
)
けて
駆入
(
かけい
)
り
来
(
きた
)
る
貫州
(
くわんしう
)
、
108
武公
(
たけこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
109
息
(
いき
)
も
絶
(
た
)
え
絶
(
だ
)
えに
後鉢巻
(
うしろはちまき
)
グツと
締
(
し
)
め、
110
各自
(
てにてに
)
茨
(
いばら
)
の
鞭
(
むち
)
を
握
(
にぎ
)
つた
儘
(
まま
)
、
111
貫州、武公
『
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます。
112
タヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
113
御
(
ご
)
用意
(
ようい
)
を
遊
(
あそ
)
ばしませ』
114
と
息
(
いき
)
もつき
敢
(
あへ
)
ず
泣声
(
なきごゑ
)
になつて
言上
(
ごんじやう
)
する。
115
スマートボール『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
貫州
(
くわんしう
)
、
116
武公
(
たけこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
117
大変
(
たいへん
)
とは
何事
(
なにごと
)
だ。
118
苦
(
くる
)
しうない、
119
近
(
ちか
)
く
寄
(
よ
)
つて
細
(
つぶ
)
さに
物語
(
ものがた
)
つたが
宜
(
よ
)
からうぞ』
120
貫州
(
くわんしう
)
は
両手
(
りやうて
)
にて
胸
(
むね
)
を
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
121
稍
(
やや
)
反身
(
そりみ
)
になつて、
122
貫州
『
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
、
123
地恩城
(
ちおんじやう
)
の
城門
(
じやうもん
)
を、
124
スマートボールの
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
り
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
監督
(
かんとく
)
し、
125
用心
(
ようじん
)
堅固
(
けんご
)
に
守
(
まも
)
る
折
(
をり
)
しも
遥
(
はるか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
、
126
何事
(
なにごと
)
ならむと
高殿
(
たかどの
)
に
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆登
(
かけのぼ
)
り、
127
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らして
向
(
むか
)
ふをキツと
眺
(
なが
)
むれば、
128
十曜
(
とえう
)
の
紋
(
もん
)
の
旗印
(
はたじるし
)
、
129
瓢箪形
(
へうたんがた
)
の
馬標
(
うまじるし
)
は
幾十百
(
いくじふひやく
)
とも
無
(
な
)
く
樹々
(
きぎ
)
の
間
(
ま
)
に
間
(
ま
)
に
出没
(
しゆつぼつ
)
し、
130
赤鉢巻
(
あかはちまき
)
に
赤襷
(
あかたすき
)
、
131
数多
(
あまた
)
の
駒
(
こま
)
に
跨
(
またが
)
りて
鬨
(
とき
)
を
作
(
つく
)
つて
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
る
其
(
その
)
勢
(
いきほ
)
ひの
凄
(
すさま
)
じさ、
132
敵
(
てき
)
は
何者
(
なにもの
)
ならむと
斥候
(
せきこう
)
を
放
(
はな
)
ち、
133
よくよく
見
(
み
)
れば
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
134
曩
(
さき
)
に
城外
(
じやうぐわい
)
に
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
されたる
元
(
もと
)
のバラモン
教
(
けう
)
の
友彦
(
ともひこ
)
、
135
ジヤンナの
荒武者
(
あらむしや
)
共
(
ども
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ、
136
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
に
厳談
(
げんだん
)
せむと
呼
(
よ
)
ばはり
乍
(
なが
)
ら、
137
猛虎
(
まうこ
)
の
勢
(
いきほひ
)
にて
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
る。
138
味方
(
みかた
)
は
薄衣
(
うすぎぬ
)
綾錦
(
あやにしき
)
、
139
数万
(
すうまん
)
の
敵軍
(
てきぐん
)
は
甲冑
(
かつちう
)
に
身
(
み
)
を
固
(
かた
)
め
小手
(
こて
)
脛当
(
すねあ
)
て、
140
鋭利
(
えいり
)
の
武器
(
ぶき
)
を
携
(
たづさ
)
へ
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
る
物々
(
ものもの
)
しさ。
141
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は、
142
味方
(
みかた
)
の
奴輩
(
やつばら
)
残
(
のこ
)
らず
駆
(
か
)
り
集
(
あつ
)
め、
143
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
る
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
言霊戦
(
ことたません
)
を
開始
(
かいし
)
し、
144
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
歌
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げて
両手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み、
145
指頭
(
しとう
)
より
五色
(
ごしき
)
の
霊光
(
れいくわう
)
を
発射
(
はつしや
)
し
敵
(
てき
)
の
魔軍
(
まぐん
)
に
向
(
むか
)
つて
防
(
ふせ
)
ぎ
戦
(
たたか
)
へ
共
(
ども
)
、
146
彼
(
かれ
)
も
強者
(
しれもの
)
、
147
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
て
応酬
(
おうしう
)
し、
148
其
(
その
)
上
(
うへ
)
鋭利
(
えいり
)
なる
武器
(
ぶき
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
149
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
近寄
(
ちかよ
)
り
来
(
きた
)
る
危
(
あやふ
)
さ。
150
日頃
(
ひごろ
)
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
地恩城
(
ちおんじやう
)
なれども、
151
斯
(
か
)
くなる
上
(
うへ
)
は
最早
(
もはや
)
詮
(
せん
)
なし、
152
武器
(
ぶき
)
に
代
(
か
)
へて
所在
(
あらゆる
)
小石
(
こいし
)
を
引掴
(
ひつつか
)
み、
153
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
る
敵軍
(
てきぐん
)
に
向
(
むか
)
つて
雨霰
(
あめあられ
)
と
乱射
(
らんしや
)
すれば、
154
敵
(
てき
)
は
雪崩
(
なだれ
)
をうつて
一二丁
(
いちにちやう
)
ばかり
一旦
(
いつたん
)
ドツと
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げしが、
155
又
(
また
)
もや
鬨
(
とき
)
を
作
(
つく
)
つて、
156
暴虎
(
ばうこ
)
憑河
(
ひようが
)
の
勢
(
いきほひ
)
恐
(
おそ
)
ろしく、
157
口
(
くち
)
より
火焔
(
くわえん
)
を
吹
(
ふ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
158
青
(
あを
)
、
159
赤
(
あか
)
、
160
黒
(
くろ
)
の
鬼神
(
おにがみ
)
共
(
ども
)
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
ち、
161
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
き
怪声
(
くわいせい
)
を
放
(
はな
)
ちて
攻来
(
せめきた
)
る。
162
味方
(
みかた
)
は
僅
(
わづか
)
に
三百
(
さんびやく
)
有余
(
いうよ
)
人
(
にん
)
、
163
死力
(
しりよく
)
を
尽
(
つく
)
して
挑
(
いど
)
み
戦
(
たたか
)
へども、
164
敵
(
てき
)
は
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふ
大軍
(
たいぐん
)
、
165
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
薙立
(
なぎた
)
てられ、
166
無念
(
むねん
)
乍
(
なが
)
らも
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
、
167
敵
(
てき
)
を
斬
(
き
)
り
抜
(
ぬ
)
け
漸
(
やうや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り
候
(
さふらふ
)
程
(
ほど
)
に、
168
この
処
(
ところ
)
に
御座
(
ござ
)
あつては
御
(
ご
)
身辺
(
しんぺん
)
危
(
あや
)
ふし、
169
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
裏門
(
うらもん
)
より、
170
山伝
(
やまづた
)
ひにシオン
山
(
ざん
)
の
方面
(
はうめん
)
指
(
さ
)
して
落
(
お
)
ち
延
(
の
)
び
給
(
たま
)
へ。
171
サア、
172
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
173
と
身
(
み
)
を
慄
(
ふる
)
はし、
174
左右
(
さいう
)
の
手
(
て
)
を
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り
打
(
う
)
ち
振
(
ふ
)
り
注進
(
ちゆうしん
)
に
及
(
およ
)
ぶ
其
(
その
)
怪
(
あや
)
しさ。
175
スマートボールは
合点
(
がてん
)
往
(
ゆ
)
かず、
176
スマートボール
『
只今
(
ただいま
)
まで
高殿
(
たかどの
)
に
於
(
おい
)
て
月見
(
つきみ
)
の
宴
(
えん
)
を
催
(
もよほ
)
し
居
(
ゐ
)
たりし
我々
(
われわれ
)
、
177
敵
(
てき
)
の
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
る
気配
(
けはい
)
あれば
何
(
なん
)
とか
神界
(
しんかい
)
より
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しあるべき
筈
(
はず
)
、
178
扨
(
さ
)
ても
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
であるワイ。
179
……もうし
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
様
(
さま
)
、
180
梅子姫
(
うめこひめ
)
様
(
さま
)
、
181
如何
(
いかが
)
思召
(
おぼしめ
)
し
給
(
たま
)
ふや、
182
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
両人
(
りやうにん
)
が
注進
(
ちゆうしん
)
』
183
と
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
を
打
(
う
)
ち
守
(
まも
)
り、
184
稍
(
やや
)
不安
(
ふあん
)
の
面持
(
おももち
)
にて
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らせて
居
(
を
)
る。
185
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は
悠揚
(
いうやう
)
迫
(
せま
)
らず、
186
黄竜姫
『あいや、
187
スマートボール、
188
……
貫州
(
くわんしう
)
、
189
武公
(
たけこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
を
我
(
わが
)
前
(
まへ
)
に
伴
(
ともな
)
ひ
来
(
きた
)
れ』
190
との
厳命
(
げんめい
)
にスマートボールは
両人
(
りやうにん
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
き、
191
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
膝下
(
しつか
)
に
導
(
みちび
)
いた。
192
二人
(
ふたり
)
は
頭
(
かうべ
)
を
垂
(
た
)
れ、
193
猫
(
ねこ
)
に
追
(
お
)
はれし
鼠
(
ねずみ
)
の
如
(
ごと
)
く
畏縮
(
ゐしゆく
)
して
慄
(
ふる
)
ひ
上
(
あが
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
194
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『あいや、
195
貫州
(
くわんしう
)
、
196
武公
(
たけこう
)
両人
(
りやうにん
)
、
197
只今
(
ただいま
)
汝
(
なんぢ
)
が
注進
(
ちゆうしん
)
せし
事
(
こと
)
は
過去
(
くわこ
)
の
出来事
(
できごと
)
なりや、
198
将
(
はた
)
未来
(
みらい
)
の
事
(
こと
)
なるか、
199
但
(
ただし
)
は
現在
(
げんざい
)
の
事
(
こと
)
か、
200
明瞭
(
めいれう
)
に
答弁
(
たふべん
)
せよ』
201
武公
(
たけこう
)
『ハイ、
202
過去
(
くわこ
)
の
事
(
こと
)
や
未来
(
みらい
)
の
出来事
(
できごと
)
ならば
我々
(
われわれ
)
は
決
(
けつ
)
して
斯様
(
かやう
)
な
心配
(
しんぱい
)
は
致
(
いた
)
しませぬ。
203
既
(
すで
)
に
城内
(
じやうない
)
の
者共
(
ものども
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
滅亡
(
めつぼう
)
致
(
いた
)
し、
204
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
も
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
顔
(
かほ
)
に
手疵
(
てきず
)
を
負
(
お
)
ひし
以上
(
いじやう
)
は、
205
只今
(
ただいま
)
の
事
(
こと
)
、
206
今
(
いま
)
や……アレアレあの
通
(
とほ
)
り
間近
(
まぢか
)
くなつた
声
(
こゑ
)
、
207
人馬
(
じんば
)
の
物音
(
ものおと
)
、
208
今
(
いま
)
に
友彦
(
ともひこ
)
、
209
鋼鉄
(
まがね
)
の
矛
(
ほこ
)
を
打振
(
うちふる
)
ひ
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
攻
(
せ
)
め
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
りますれば、
210
何卒
(
どうぞ
)
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
裏門
(
うらもん
)
より
逃
(
に
)
げ
延
(
の
)
びて
下
(
くだ
)
さいませ』
211
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
『あいや、
212
スマートボール、
213
其方
(
そなた
)
は
表門
(
おもてもん
)
に
行
(
い
)
つて
実否
(
じつぴ
)
を
調査
(
てうさ
)
し
来
(
きた
)
れ』
214
スマートボールは『ハイ』と
答
(
こた
)
へて
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
らむとする。
215
貫州
(
くわんしう
)
は
其
(
その
)
裾
(
すそ
)
を
掴
(
つか
)
んで、
216
貫州
『モシモシ
左守
(
さもり
)
様
(
さま
)
、
217
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ、
218
衆寡
(
しうくわ
)
敵
(
てき
)
せず、
219
飛
(
と
)
んで
火
(
ひ
)
に
入
(
い
)
る
夏
(
なつ
)
の
虫
(
むし
)
、
220
決
(
けつ
)
して
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
しませぬ。
221
……
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
様
(
さま
)
、
222
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
用意
(
ようい
)
遊
(
あそ
)
ばしませ』
223
梅子姫
(
うめこひめ
)
『
今
(
いま
)
武公
(
たけこう
)
の
言葉
(
ことば
)
におひおひ
近
(
ちか
)
づく
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
、
224
人馬
(
じんば
)
の
物音
(
ものおと
)
と
申
(
まを
)
したが、
225
天地
(
てんち
)
は
至
(
いた
)
つて
静寂
(
せいじやく
)
、
226
何
(
なん
)
の
声
(
こゑ
)
も
無
(
な
)
いではありませぬか』
227
武公
(
たけこう
)
『ソヽヽそりや
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います。
228
あの
声
(
こゑ
)
が
分
(
わか
)
りませぬか』
229
と
顔色
(
がんしよく
)
変
(
か
)
へて
落
(
お
)
ち
付
(
つ
)
かぬ
気
(
げ
)
に、
230
震
(
ふる
)
ひ
震
(
ふる
)
ひ
答
(
こた
)
へる。
231
スマートボールは
貫州
(
くわんしう
)
の
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
り
放
(
はな
)
し、
232
一目散
(
いちもくさん
)
に
表門
(
おもてもん
)
に
現
(
あら
)
はれ
見
(
み
)
れば、
233
月
(
つき
)
は
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
き
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
一匹
(
いつぴき
)
其辺
(
そこら
)
に
見
(
み
)
えぬ。
234
『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
』と
高殿
(
たかどの
)
に
登
(
のぼ
)
り
四方
(
しはう
)
をキツと
見渡
(
みわた
)
せば
山
(
やま
)
はコバルト
色
(
いろ
)
に
蒼
(
あを
)
ずんで
一点
(
いつてん
)
の
白雲
(
はくうん
)
もなく、
235
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
輪画
(
りんくわく
)
は
一入
(
ひとしほ
)
瞭然
(
れうぜん
)
として、
236
淋
(
さび
)
しき
中
(
うち
)
に
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
雅味
(
がみ
)
を
漲
(
みなぎ
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
237
スマートボールは
悠々
(
いういう
)
として
奥殿
(
おくでん
)
に
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
り、
238
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
立現
(
たちあら
)
はれ、
239
矢庭
(
やには
)
に
平手
(
ひらて
)
を
以
(
もつ
)
て
貫州
(
くわんしう
)
、
240
武公
(
たけこう
)
の
横面
(
よこづら
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つピシヤピシヤと
打
(
う
)
てば、
241
二人
(
ふたり
)
は
初
(
はじ
)
めてポカンとした
様
(
やう
)
な
面
(
つら
)
を
曝
(
さら
)
し、
242
両人
(
りやうにん
)
『ヤア……これはこれは
不躾
(
ぶしつけ
)
千万
(
せんばん
)
にも
女王
(
ぢよわう
)
様
(
さま
)
の
御殿
(
ごてん
)
に
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
侵入
(
しんにふ
)
致
(
いた
)
し、
243
実
(
じつ
)
に
申
(
まを
)
し
訳
(
わけ
)
なき
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
244
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
245
と
平伏
(
へいふく
)
する。
246
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
『ほんにほんに、
247
妾
(
わし
)
の
荒肝
(
あらぎも
)
を
取
(
と
)
りかけよつた。
248
お
前
(
まへ
)
は
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて
来
(
く
)
るのだ。
249
大方
(
おほかた
)
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたのだらう』
250
両人
(
りやうにん
)
『ハイ、
251
今
(
いま
)
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ますれば、
252
夢
(
ゆめ
)
の
連続
(
れんぞく
)
的
(
てき
)
行為
(
かうゐ
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
253
あまり
友彦
(
ともひこ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
出
(
で
)
て
来
(
く
)
ると
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
を
)
つたものですから、
254
ドエライ
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たので
御座
(
ござ
)
いませう……あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
255
と
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
256
両人
(
りやうにん
)
『マアマア
夢
(
ゆめ
)
で
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
257
……
皆
(
みな
)
さま、
258
お
目出度
(
めでた
)
う、
259
お
祝
(
いは
)
ひ
申
(
まを
)
します』
260
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
、
261
梅子姫
(
うめこひめ
)
、
262
宇豆姫
(
うづひめ
)
一度
(
いちど
)
に
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し、
263
三人
『プツフヽヽヽ、
264
オホヽヽヽ』
265
館
(
やかた
)
の
外
(
そと
)
には
皎々
(
かうかう
)
たる
明月
(
めいげつ
)
輝
(
かがや
)
き、
266
松虫
(
まつむし
)
、
267
鈴虫
(
すずむし
)
、
268
蟋蟀
(
こほろぎ
)
、
269
螽斯
(
きりぎりす
)
の
声
(
こゑ
)
賑
(
にぎは
)
しく
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
270
(
大正一一・七・一〇
旧閏五・一六
北村隆光
録)
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