霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 不意(ふい)(きやく)〔七五八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第25巻 海洋万里 子の巻 篇:第3篇 竜の宮居 よみ(新仮名遣い):たつのみやい
章:第12章 不意の客 よみ(新仮名遣い):ふいのきゃく 通し章番号:758
口述日:1922(大正11)年07月10日(旧閏05月16日) 口述場所: 筆録者:谷村真友 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月25日
概要: 舞台:地恩城 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
地恩城の広場でマール、貫州、武公が雑談にふけっていると、友彦が女房のテールス姫を連れてたった二人で城にやってきた。友彦は旧知の貫州と武公に挨拶するが、貫州と武公は友彦に邪険にして城内に入れまいとする。
友彦は自分が改心したことを訴え、門内に入ったところ、門番たちは友彦とテールス姫を突き倒して打ち据えた。しかし友彦とテールス姫は、感謝祈願の祝詞を唱えるのみだった。
いつの間にか貫州たちも、友彦夫婦と共に感謝祈願の祝詞を奏上していた。そこへ通りかかった鶴公は、城内に戻って黄竜姫に見たことをつぶさに報告した。鶴公は友彦を疑っていたが、黄竜姫は自ら友彦夫婦のところに赴いた。
友彦はテールス姫が熱心な三五教の信者となり、今は自分の神務を補佐していると黄竜姫に紹介した。黄竜姫は二人を城の奥殿に招きいれた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-09-05 18:57:30 OBC :rm2512
愛善世界社版:172頁 八幡書店版:第5輯 94頁 修補版: 校定版:178頁 普及版:78頁 初版: ページ備考:
001(こころ)(おに)()められて
002黄竜姫(わうりようひめ)(その)(むかし)
003(とし)二八(にはち)花盛(はなざか)
004(だい)(をとこ)素気(すげ)()くも
005錫蘭島(セイロンとう)山奥(やまおく)
006義理(ぎり)(なさけ)荒男(あらをとこ)
007(さび)しき(ねや)友彦(ともひこ)
008(さけ)()はせて籠抜(かごぬけ)
009憂目(うきめ)()はせた古疵(ふるきず)
010女王(ぢよわう)となりし今日(けふ)までも
011(こころ)(おく)(わだ)かまり
012(なや)(くるし)()たりしが
013(そら)()(わた)中秋(ちうしう)
014(つき)(ひかり)()らされて
015()てた(をとこ)心根(こころね)
016(おも)(うか)べて()(たて)
017(たま)らぬ(ばか)(くる)しみの
018(くも)(つつ)まれ(おそ)ろしく
019(そら)(なが)めて()(うち)
020天空(てんくう)(にはか)にかき(くも)
021数多(あまた)(おに)引率(ひきつ)れて
022鋼鉄(まがね)(ほこ)(あめ)()らす
023友彦(ともひこ)幕下(ばくか)(おに)(ども)
024(かげ)(をのの)千仭(せんじん)
025谷間(たにま)(たちま)顛落(てんらく)
026(つづ)いて(はは)蜈蚣姫(むかでひめ)
027黄竜姫(わうりようひめ)(すく)はむと
028階段(かいだん)(くだ)()みはづし
029(おな)じく谷間(たにま)顛落(てんらく)
030(つみ)(つぐな)(たに)(そこ)
031ヤレ(おそ)ろしや(おそ)ろしや
032(むかし)(つみ)(めぐ)()
033根底(ねそこ)(くに)()ちたるか
034天地(てんち)(かみ)友彦(ともひこ)
035(わたし)(つみ)(ゆる)せよと
036(いの)(をり)しも秋風(あきかぜ)
037()かれて()()一葉(いちえう)
038紅花(こうくわ)(わが)()にヒラヒラと
039()るよと()れば(ゆめ)()めて
040(あふ)げば(もと)高殿(たかどの)
041梅子(うめこ)(ひめ)諸人(もろびと)
042(つき)(ひかり)()()たる
043(この)正夢(まさゆめ)小糸姫(こいとひめ)
044(いよいよ)此処(ここ)三五(あななひ)
045(かみ)御前(みまへ)()(あは)
046月光神(げつくわうがみ)(こころ)より
047月見(つきみ)無礼(ぶれい)(しや)(なが)
048奥殿(おくでん)(ふか)(すす)()
049(かみ)御前(みまへ)太祝詞(ふとのりと)
050()れる(をり)しも貫州(くわんしう)
051(いき)せき()つて駆来(かけきた)
052(ゆめ)(なか)なる出来事(できごと)
053(まこと)しやかに()りつれば
054黄竜姫(わうりようひめ)(あや)しみて
055スマートボールを門外(もんぐわい)
056(つか)はし偵察(ていさつ)せしむるに
057(てき)()()(かげ)もなく
058(つき)(ひかり)皎々(かうかう)
059四辺(あたり)(くま)なく()(わた)
060黄竜姫(わうりようひめ)(はじ)めとし
061貫州(くわんしう)武公(たけこう)(むね)(うち)
062まだ()れやらぬ黒雲(くろくも)
063疑心(ぎしん)暗鬼(あんき)()(いだ)
064(われ)(わが)()(なや)みたる
065転迷(てんめい)開悟(かいご)物語(ものがたり)
066(よこ)()しつつ瑞月(ずゐげつ)
067天井(てんじやう)(さん)(かぞ)へつつ
068(かたち)(まる)(あん)パンを
069頬張(ほほば)頬張(ほほば)()べて()
070黄竜姫(わうりようひめ)物語(ものがたり)
071(すす)むにつれて不思議(ふしぎ)なれ
072嗚呼(ああ)惟神(かむながら)々々(かむながら)
073御霊(みたま)幸倍(さちはへ)()しませよ。
074
075 地恩城(ちおんじやう)城内(じやうない)広場(ひろば)木蔭(こかげ)に、076貫州(くわんしう)077武公(たけこう)大将株(たいしやうかぶ)(はじ)め、078門番(もんばん)(その)()一同(いちどう)079芝生(しばふ)(うへ)()(よこ)たへ、080(あるひ)(すわ)りなどして雑談(ざつだん)(ふけ)つて()る。
081 門番(もんばん)のマール(万蔵)は貫州(くわんしう)(むか)ひ、
082マール『モシモシ、083ボールさま(組長(くみちやう)()(この)(あひだ)友彦(ともひこ)軍勢(ぐんぜい)がやつて()たさうですが、084如何(どう)なりましたかなア』
085貫州(くわんしう)『お(まへ)貫州(くわんしう)する(ところ)でない。086マール蜃気楼(しんきろう)(やう)(はなし)であつたよ』
087マール『貴方(あなた)黄竜姫(わうりようひめ)(さま)への()報告(はうこく)は、088マールで(ゆめ)(やう)だつたと()ふことですが、089(ゆめ)にしても大袈裟(おほげさ)なことですな』
090貫州(くわんしう)(おれ)ばつかりぢやない。091武公(たけこう)でさへも(おな)(ゆめ)()たのだから、092貫武(くわんぶ)一途(いつと)だよ。093どうしても(うそ)とは(おも)へないものだから報告(はうこく)(およ)んだのだ。094(しか)(なが)(おれ)(たち)は、095黄竜姫(わうりようひめ)(さま)()()(うへ)(あん)(わづら)(たてまつ)つて()忠臣(ちうしん)だから、096貴様(きさま)()(ゆめ)とは、097(やや)(せん)(こと)にして()るのだ』
098マール『(せん)(こと)にして()られるから、099(せんさう)(ゆめ)御覧(ごらん)になり、100戦々(せんせん)恟々(きようきよう)として戦況(せんきやう)()報告(はうこく)なさつたのですなア。101……武公(たけこう)さま、102貴方(あなた)本当(ほんたう)()んな(ゆめ)()たのですか』
103武公(たけこう)(おれ)(べつ)(ゆめ)()たと()(わけ)ではないが、104常々(つねづね)そんな(こと)()りはせぬかと、105(あん)じて()つた矢先(やさ)き、106貫州(くわんしう)周章(あわただ)しく(はな)したものだから、107(おれ)(ゆめ)(うつつ)()らぬが、108ツイ()()まれて報告(はうこく)()つたまでだ。109(しか)軽信(けいしん)報告(はうこく)敬神(けいしん)報国(はうこく))の至誠(しせい)発露(はつろ)だから、110黄竜姫(わうりようひめ)(さま)(べつ)にお(とが)(あそ)ばさず、111マア無事(ぶじ)事済(ことずみ)となつたやうなものだ』
112マール『そんなら(これ)から貴方(あなた)(がた)両人(りやうにん)(たい)し、113蜃気楼(しんきろう)ボールと()尊名(そんめい)(たてまつ)ることにしませうかい。114……のうミユーズ(妙州(めうしう))』
115ミユーズ『オウそれが()からう。116蜃気楼(しんきろう)()ふやつは、117(すこ)しくどんよりとしたやうなハツキリせぬ(そら)に、118空中(くうちう)楼閣(ろうかく)出来(でき)たり、119松林(まつばやし)出来(でき)たり、120人馬(じんば)往来(わうらい)する有様(ありさま)(うつ)つて()るものだ。121何時(いつ)春夏(はるなつ)(ころ)になると、122ネルソン(ざん)(うへ)(はう)蜃気楼(しんきろう)(あら)はれ、123色々(いろいろ)立派(りつぱ)女神(めがみ)姿(すがた)()えたり、124(なか)には(おに)大蛇(をろち)姿(すがた)(あら)はるる(こと)がある。125大方(おほかた)貫州(くわんしう)さまは(ゆめ)ではなくて、126(その)蜃気楼(しんきろう)(なが)め、127ビツクリして本真物(ほんまもの)ぢやと(おも)つて報告(はうこく)しられたのだらう』
128貫州(くわんしう)(おれ)自転倒(おのころ)(じま)から此処(ここ)へやつて()たものだから、129空中(くうちう)にそんな(もの)(あら)はれると()(こと)は、130(はなし)()いて()るがまだ()(こと)はない。131一遍(いつぺん)()たいものだなア』
132マール『(この)竜宮島(りうぐうじま)には諏訪(すは)(うみ)()つて、133立派(りつぱ)金銀(きんぎん)(すな)(もつ)湖底(こてい)(かた)めた(やう)綺麗(きれい)(ひろ)水溜(みづたま)りがあり、134其処(そこ)竜神(りうじん)沢山(たくさん)女神(めがみ)(あらは)れて、135色々(いろいろ)(こと)(あそ)ばして御座(ござ)姿(すがた)が、136(とき)あつて天上(てんじやう)(えい)我々(われわれ)国人(くにびと)(おどろ)かし(たま)(こと)度々(たびたび)ありますよ。137(しか)(なが)近年(きんねん)如何(どう)したものか、138今迄(いままで)(やう)にさう度々(たびたび)(あら)はれなくなつた。139大方(おほかた)ネルソン(ざん)(むか)ふに()えた秘密郷(ひみつきやう)へ、140鼻曲(はなまが)りの友彦(ともひこ)()つたものだから、141竜神(りうじん)(いか)つて諏訪(すは)(うみ)(そこ)(ふか)くお(かく)(あそ)ばし、142色々(いろいろ)神業(しんげふ)()中止(ちゆうし)になつて、143蜃気楼(しんきろう)(あら)はれないのかも()れない。144本当(ほんたう)竜神(りうじん)友彦(ともひこ)()めに、145蜃気(しんきろう)一転(いつてん)(あそ)ばしたのかも()れないよ。146アハヽヽヽ』
147貫州(くわんしう)『オイ(むか)ふを()よ。148(うはさ)をすれば(かげ)とやら、149鼻先(はなさき)(あか)出歯(でば)団栗眼(どんぐりまなこ)友彦(ともひこ)()(やつ)綺麗(きれい)(をんな)()れてやつて()るぢやないか』
150武公(たけこう)『ヤア、151ホンによく()(やつ)だ。152(しか)彼奴(あいつ)はジヤンナの(さと)非常(ひじやう)(いきほひ)郷人(さとびと)にもてはやされ、153(ほとん)どネルソン(ざん)以西(いせい)友彦(ともひこ)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)になり、154()はば黄竜姫(わうりようひめ)(さま)匹敵(ひつてき)する(やう)地位(ちゐ)(まで)(すす)んだと()(うはさ)だから、155仮令(たとへ)此処(ここ)()るにしても、156(じふ)(にん)二十(にじふ)(にん)(とも)()れて()るべき(はず)だ。157(はな)(まが)つた(やつ)(ひろ)世間(せけん)には、158二人(ふたり)(さん)(にん)()いとも(かぎ)らぬ。159よもや友彦(ともひこ)ではあるまいなア』
160貫州(くわんしう)『ソレでもよく()よ。161友彦(ともひこ)間違(まちが)ひない(やう)だ。162彼奴(あいつ)今迄(いままで)地金(ぢがね)()して、163ジヤンナの郷人(さとびと)愛想(あいさう)をつかされ、164()たたまらなくなり、165テールス(ひめ)()()()つて駆落(かけおち)出掛(でか)け、166地恩城(ちおんじやう)救援軍(きうゑんぐん)(ねが)ひに()たのか、167(ただし)居候(ゐさふらふ)()()んで来居(きを)つたのに間違(まちが)ひあるまいぞ』
168武公(たけこう)(はた)して友彦(ともひこ)だつたらどうする(かんが)へだ』
169貫州(くわんしう)無論(むろん)(こと)170()つて(たか)つて(こら)しめの()()のめすのだ。171何程(なにほど)無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)三五教(あななひけう)()つても、172あんな(やつ)門内(もんない)()れて(たま)るものかい。173黄竜姫(わうりようひめ)(さま)(たい)し、174どんな(こと)をし()るか(わか)つたものでない。175(また)黄竜姫(わうりようひめ)(さま)も、176あんな(をとこ)仮令(たとへ)(いち)(ねん)でも(をつと)であつたと、177(ひと)(おも)はれては(はづ)かしいと()()()まれるに(きま)つて()る。178それに(また)(かか)アを()れて()()るから、179そんな(こと)(わか)らうものなら(また)もや悋気(りんき)(つの)()やして、180どんな騒動(さうだう)をおつぱじめるか(わか)らないから、181()(かく)(この)門内(もんない)一歩(いつぽ)たりとも()れてはならぬ。182先年(せんねん)(やう)(ほう)()して仕舞(しま)ふに(かぎ)る』
183話合(はなしあ)(ところ)(ゆめ)でもなく(うつつ)でも蜃気楼(しんきろう)でもなく、184本当(ほんたう)友彦(ともひこ)はテールス(ひめ)とただ二人(ふたり)スタスタと(この)()(ちか)づき(きた)り、
185友彦(ともひこ)『ヤア貫州(くわんしう)さま、186武公(たけこう)さま、187(ひさ)()りで、188()機嫌(きげん)(よろ)しう』
189貫州(くわんしう)『ヤア矢張(やつぱ)貴様(きさま)友彦(ともひこ)だな。190日頃(ひごろ)地金(ぢがね)()して、191又候(またぞろ)土人(どじん)(やつ)愛想(あいさう)をつかされ、192ノソノソと()つて()たのだらうが、193(この)城門(じやうもん)我々(われわれ)勢力(せいりよく)圏内(けんない)()かれてある関所(せきしよ)だから、194(とほ)(こと)(まか)りならぬ。195折角(せつかく)だがトツトと(かへ)つて()れ』
196友彦(ともひこ)左様(さやう)御座(ござ)いませうが、197今日(こんにち)友彦(ともひこ)(いま)までの体主(たいしゆ)霊従(れいじう)友彦(ともひこ)(ちが)ひますから、198()心配(しんぱい)なく通過(つうくわ)させて(いただ)きたい』
199マール『モシモシ、200ボールさま、201()んな(やつ)絶対(ぜつたい)(とほ)(こと)出来(でき)ませぬなア』
202貫州(くわんしう)『オウさうだ。203金輪際(こんりんざい)(とほ)(こと)出来(でき)ぬ。204(あきら)めて(かへ)つたがよからうぞ』
205友彦(ともひこ)(その)()(うたが)ひは御尤(ごもつと)(なが)ら、206我々(われわれ)はジヤンナイ(けう)立替(たてか)へ、207大慈(だいじ)大悲(だいひ)三五教(あななひけう)(をしへ)()て、208今日(こんにち)(ところ)大変(たいへん)勢力(せいりよく)になりましたので、209(おな)(ひと)(じま)()ける(かみ)(さま)()(みち)210黄竜姫(わうりようひめ)(さま)一切(いつさい)報告(はうこく)し、211その部下(ぶか)使(つか)つて(もら)ひ、212全島(ぜんたう)統一(とういつ)して(いただ)かうと(わざ)とに(とも)をも()れず、213女房(にようばう)のテールス(ひめ)(ただ)二人(ふたり)遥々(はるばる)(まゐ)りました。214どうぞ黄竜姫(わうりようひめ)(さま)()面会(めんくわい)(かな)はねば、215()つてとは(まを)しませぬ。216左守(さもり)(さま)になりとも()はして(いただ)きたう御座(ござ)います』
217マール『ヤイヤイ友彦(ともひこ)218(とも)()れずにやつて()たと(いま)()つたが、219(とも)(とも)()るかい。220テールス(ひめ)だとか()つて、221(めう)なアトラスのやうな(つら)した女房(にようばう)が、222それ(ほど)有難(ありがた)いのか。223(はな)(あか)(やつ)や、224(かほ)(まだら)(あか)(やつ)勿体(もつたい)なくも地恩城(ちおんじやう)にやつて()て、225左守(さもり)(さま)()面会(めんくわい)(ねが)ひたいとは、226そりや(なに)(ふざ)けた(こと)(ほざ)くのだ。227チツト貴様(きさま)228(つら)相談(さうだん)して()ろ』
229テールス(ひめ)友彦(ともひこ)さま、230サーチライス地恩城(ちおんじやう)231エツプツプ、232エツパエツパ、233パーチクパーチク、234イツパーパー』
235土人語(どじんご)(さへづ)つて()る。236(この)意味(いみ)は……友彦(ともひこ)救世主(きうせいしゆ)を、237地恩城(ちおんじやう)門番(もんばん)が、238(わけ)(わか)らずに我々(われわれ)軽蔑(けいべつ)して入門(にふもん)拒絶(きよぜつ)して()るが、239(けつ)して躊躇(ちうちよ)(およ)ばぬ、240ドシドシ這入(はい)りませう……との意味(いみ)であつた。241友彦(ともひこ)は、
242友彦貫州(くわんしう)243武公(たけこう)(その)()方々(かたがた)244(はなし)(あと)(わか)りませう。245()(かく)左守(さもり)(さま)()面会(めんくわい)(うへ)………』
246()(なが)らテールス(ひめ)()()き、247表門(おもてもん)(むか)つて(すす)()かむとする。248貫州(くわんしう)249武公(たけこう)は、
250貫州(くわんしう)『コリヤ大変(たいへん)だ、251貴様(きさま)()れてなるものか……』
252と、253マール、254ミユーズ(その)()人々(ひとびと)目配(めくば)せした。255マールを(はじ)一同(いちどう)友彦(ともひこ)(あと)より()(すが)り、256()つて(たか)つて二人(ふたり)(その)()()(たふ)し、257()む、258()る、259(たた)く、260(ほとん)半死(はんし)半生(はんしやう)()()はせた。261友彦(ともひこ)夫婦(ふうふ)(すこ)しも抵抗(ていかう)せず、262一同(いちどう)打擲(ちやうちやく)する(まま)()(まか)両手(りやうて)(あは)せて感謝(かんしや)祈願(きぐわん)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)して()た。263一同(いちどう)(あま)友彦(ともひこ)夫婦(ふうふ)従順(じうじゆん)なるに、264(すこ)しく小気味(こぎみ)(わる)くなり、265友彦(ともひこ)言葉(ことば)につれ、266貫州(くわんしう)267武公(たけこう)(はじ)一同(いちどう)は、268大地(だいち)蹲踞(しやが)(なが)(こゑ)(そろ)へて感謝(かんしや)祈願(きぐわん)祝詞(のりと)(とな)へて()る。
269 右守(うもり)鶴公(つるこう)門内(もんない)木蔭(こかげ)逍遥(せうえう)()(をり)しも、270門外(もんぐわい)(あた)つて大勢(おほぜい)祝詞(のりと)(こゑ)(きこ)えたのを(いぶ)かり(なが)ら、271(こゑ)(たづ)ねて表門(おもてもん)(くぐ)り、272門前(もんぜん)密樹(みつじゆ)(しげ)れる(ひろ)(はやし)立出(たちい)で、273一同(いちどう)姿(すがた)(みと)めて此処(ここ)(あら)はれ(きた)りて、274友彦(ともひこ)大勢(おほぜい)(なか)(まじ)りて祝詞(のりと)奏上(そうじやう)するを()(おほ)いに(おどろ)き、275無言(むごん)(まま)276(きびす)(かへ)奥殿(おくでん)(ふか)黄竜姫(わうりようひめ)(まへ)(すす)(この)(よし)委曲(つぶさ)報告(はうこく)した。277黄竜姫(わうりようひめ)(おどろ)くかと(おも)ひの(ほか)278ニツコリとして、
279黄竜姫右守殿(うもりどの)280友彦(ともひこ)()入来(いで)になつたとやら、281(とも)(かた)はいづれ沢山(たくさん)()りでせうな』
282鶴公(つるこう)『ハイ、283(べつ)(とも)らしき(もの)御座(ござ)いませぬ。284見慣(みな)れぬ(をんな)(かた)(ただ)一人(ひとり)285大方(おほかた)(うはさ)(たか)きテールス(ひめ)でせう』
286黄竜姫『ハテ不思議(ふしぎ)(こと)もあるものだ。287あれ()勢力(せいりよく)()たる旭日(きよくじつ)昇天(しようてん)友彦(ともひこ)さまが、288(とも)をも()れず夫婦(ふうふ)(づれ)()しになつたとは、289一体(いつたい)どうした(わけ)だらう』
290鶴公(つるこう)(わたし)(さつ)する(ところ)291友彦(ともひこ)さまは(また)(れい)地金(ぢがね)(あら)はし、292土人(どじん)愛想(あいさう)をつかされ夫婦(ふうふ)()()()つて、293此処(ここ)(いのち)からがら()()られたものと(おも)はれます。294如何(いかが)(いた)したら(よろ)しう御座(ござ)いますか。295()指図(さしづ)(ねが)ひます』
296黄竜姫(けつ)して(けつ)して左様(さやう)(こと)()入来(いで)になつたのではありますまい。297(わたし)(すこ)(こころ)(あた)(こと)がある。298()(かく)オーストラリヤに()ける三五教(あななひけう)太柱(ふとばしら)299敬意(けいい)(はら)()めに、300黄竜姫(わうりようひめ)(わたし)門外(もんぐわい)にお(むか)ひに(まゐ)りませう』
301鶴公(つるこう)右守(うもり)として申上(まをしあ)げます。302(いやしく)地恩城(ちおんじやう)女王(ぢよわう)たる(おん)()(もつ)て、303軽々(かるがる)しくお()(あそ)ばすは、304()威勢(ゐせい)にも(かかは)りませう。305どうぞ(この)(こと)(ばか)りは()中止(ちうし)(ねが)ひたう(ぞん)じます。306(わたし)がお(むか)(まを)して(まゐ)りますから、307奥殿(おくでん)にお()(くだ)さいます(やう)にお(ねが)(まを)します』
308 黄竜姫(わうりようひめ)(くび)左右(さいう)()り、
309黄竜姫『イエイエ、310(おな)天地(てんち)分霊(わけみたま)311人間(にんげん)上下(じやうげ)区別(くべつ)はない。312(また)(いま)313友彦(ともひこ)(さま)はジヤンナの(さと)国人(くにびと)主宰(しゆさい)する立派(りつぱ)()(かた)とお()(あそ)ばし、314(わたし)地恩城(ちおんじやう)女王(ぢよわう)とまで()つて()るのも、315(あさ)からぬ因縁(いんねん)でせう。316仮令(たとへ)(いつ)(ねん)でも夫婦(ふうふ)となつた間柄(あひだがら)317(むか)申上(まをしあ)げねばなりますまい』
318蜈蚣姫(むかでひめ)319梅子姫(うめこひめ)(この)()()らざるを(さいは)ひ、320(みづか)らスタスタと門前(もんぜん)(あら)はれ、321友彦(ともひこ)端坐(たんざ)する(かたはら)()()ひ、
322黄竜姫(わたし)地恩城(ちおんじやう)黄竜姫(わうりようひめ)323(むかし)小糸姫(こいとひめ)御座(ござ)います。324友彦(ともひこ)(さま)(なら)びにテールス(ひめ)(さま)325サアどうぞ(わたし)(とも)奥殿(おくでん)にお(すす)(くだ)さいませ』
326 友彦(ともひこ)(この)(こゑ)にフト見上(みあ)ぐれば、327(むかし)面影(おもかげ)アリアリと(かほ)何処(どこ)やらに(のこ)つて()小糸姫(こいとひめ)なので、328……友彦(ともひこ)はハツと(かしら)()(うやうや)しく両手(りやうて)をつき、
329友彦(ともひこ)『これはこれは女王(ぢよわう)(さま)330勿体(もつたい)ない斯様(かやう)(ところ)(まで)()(くだ)さいまして、331……これなるは(わたし)女房(にようばう)テールス(ひめ)(まを)すもの、332(いま)熱心(ねつしん)三五教(あななひけう)信者(しんじや)として、333友彦(ともひこ)神務(しんむ)(ちから)(かぎ)補助(ほじよ)(いた)すもので御座(ござ)います。334申上(まをしあ)げたき(こと)山々(やまやま)御座(ござ)いますが、335(しか)らば奥殿(おくでん)にて悠々(ゆるゆる)申上(まをしあ)げませう』
336テールス(ひめ)女王(ぢよわう)(さま)337(はじ)めてお()にかかります。338何分(なにぶん)(よろ)しくお(ねが)(いた)します』
339友彦(ともひこ)()れられ、340黄竜姫(わうりようひめ)(あと)()いて門内(もんない)(ふか)姿(すがた)(かく)した。341右守(うもり)鶴公(つるこう)不承(ふしよう)不性(ぶしよう)(さん)(にん)(あと)(したが)()く。342貫州(くわんしう)343武公(たけこう)(その)()一同(いちどう)は、344(ゆめ)(うつつ)(まぼろし)かと、345(たがひ)(かほ)見合(みあは)(あき)れて(ふたた)言葉(ことば)もなく、346(そら)()(くも)をアフンとして(なが)めて()る。
347大正一一・七・一〇 旧閏五・一六 谷村真友録)
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