霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 真心(まごころ)の花(はな)(二)〔七六八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第26巻 海洋万里 丑の巻 篇:第1篇 伊都宝珠 よみ(新仮名遣い):いずほっしゅ
章:第3章 真心の花(二) よみ(新仮名遣い):まごころのはな 通し章番号:768
口述日:1922(大正11)年07月17日(旧閏05月23日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
続いて玉治別は銀扇を広げて立ち、歌った。自分が三五教に導かれた経緯から初めて、鷹依姫退治の後に宝玉に紛失して玉探しが始まった経緯を歌った。玉の執着にとらわれた高姫を見守って竜宮島に至り、ネルソン山を越えて諏訪の湖に達して麻邇の宝玉の神業に携わった経緯を歌った。そして神素盞嗚大神と国武彦命に、生きとし生けるすべてのものに平安と栄光と歓喜を祈願して歌を終えた。
黄竜姫は立ち上がり歌い始めた。自分のこれまでの経緯を明かし、友彦と共に父母の許から逐電したが、錫欄の島で友彦と別れて五十子姫に救われ、オーストラリヤの新女王となった経緯、その後の麻邇の宝玉の神業に携わった経緯を歌った。しかしその中で、密かに玉治別に恋心を抱いていた心のたけを歌に歌いこんで明かした。
玉治別は当惑しながら、言葉静かに返歌を歌った。自分にはすでにお勝という妻があり、黄竜姫の思いには応えられないと、神の前に表白した。
黄竜姫はこの返歌に恋の雲も晴れて、いよいよ熱心に神業に奉仕することとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-09-24 19:39:14 文字数:6029 OBC :rm2603
愛善世界社版:36頁 八幡書店版:第5輯 160頁 修補版: 校定版:40頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001 玉治別(たまはるわけ)は立上(たちあが)り銀扇(ぎんせん)を拡(ひろ)げて歌(うた)ひ舞(ま)ひ始(はじ)めた。
002玉治別『吾(われ)は玉治別(たまはるわけ)司(つかさ)
003天(あめ)と地(つち)との三五(あななひ)の
004誠(まこと)を諭(さと)す神使(かむづかひ)
005宇都山(うづやま)郷(がう)に現(あら)はれて
006樵(きこり)の業(わざ)や野良(のら)仕事(しごと)
007名(な)も田吾作(たごさく)の賤(しづ)の男(を)が
008天(あめ)の真浦(まうら)の宣伝使(せんでんし)
009松鷹彦(まつたかひこ)に三五(あななひ)の
010誠(まこと)の道(みち)を教(をし)へられ
011国依別(くによりわけ)と諸共(もろとも)に
012三国(みくに)ケ嶽(だけ)にバラモンの
013教(をしへ)の館(やかた)を構(かま)へたる
014此処(ここ)に在(あ)れます蜈蚣姫(むかでひめ)
015三五教(あななひけう)の大道(おほみち)に
016救(すく)はむものと老木(らうぼく)の
017茂(しげ)る山路(やまぢ)を打(う)ち渉(わた)り
018岩窟(いはや)の中(なか)に乗(の)り込(こ)みて
019お玉(たま)の方(かた)に廻(めぐ)り会(あ)ひ
020蜈蚣(むかで)の姫(ひめ)の秘蔵(ひざう)せる
021黄金(こがね)の玉(たま)を発見(はつけん)し
022綾(あや)の高天原(たかま)へ持(も)ち帰(かへ)り
023意気(いき)揚々(やうやう)と宣伝(せんでん)の
024使(つかさ)となりて遠近(をちこち)を
025彷徨(さまよ)ひ歩(ある)く其(その)中(うち)に
026バラモン教(けう)の其(その)一派(いつぱ)
027鷹依姫(たかよりひめ)の神司(かむつかさ)
028高春山(たかはるやま)に居(きよ)を構(かま)へ
029体主(たいしゆ)霊従(れいじう)の御教(みをしへ)を
030四方(よも)に開(ひら)くと聞(き)きしより
031国依別(くによりわけ)や竜国別(たつくにわけ)の
032貴(うづ)の命(みこと)と諸共(もろとも)に
033心(こころ)の駒(こま)に鞭(むち)韃(う)ちて
034進(すす)む折(をり)しも津田(つだ)の湖(うみ)
035敵(てき)の捕手(とりて)に囲(かこ)まれて
036生命(いのち)危(あやふ)き折柄(をりから)に
037杢助司(もくすけつかさ)や初稚姫(はつわかひめ)の
038貴(うづ)の命(みこと)に助(たす)けられ
039高春山(たかはるやま)に立(た)ち向(むか)ひ
040廻(めぐ)り会(あ)うたる天(あめ)の森(もり)
041竜国別(たつくにわけ)と鬼娘(おにむすめ)
042ヤツサモツサの問答(もんだふ)も
043神(かみ)の恵(めぐ)みの御光(みひかり)に
044煙(けむり)と消(き)えて潔(いさぎよ)く
045神(かみ)の御稜威(みいづ)を伏(ふ)し拝(をが)み
046鷹依姫(たかよりひめ)の割拠(かつきよ)せる
047岩窟(いはや)の中(なか)に立(た)ち入(い)りて
048高姫(たかひめ)、黒姫(くろひめ)両人(りやうにん)を
049救(すく)ひ出(いだ)して鷹依(たかより)の
050姫(ひめ)の命(みこと)は忽(たちま)ちに
051アルプス教(けう)を解散(かいさん)し
052三五教(あななひけう)の大道(おほみち)に
053仕(つか)へまつりて綾錦(あやにしき)
054高天原(たかあまはら)に連(つ)れ帰(かへ)り
055黄金(こがね)の玉(たま)の紛失(ふんしつ)に
056思(おも)はぬ濡衣(ぬれぎぬ)被(かぶ)せられ
057泣(な)く泣(な)く立(た)つて和田(わだ)の原(はら)
058遥々(はるばる)越(こ)えて何処(どこ)となく
059黄金(こがね)の玉(たま)の在処(ありか)をば
060探(さぐ)らむ為(ため)に親(おや)と子(こ)が
061海(うみ)の彼方(あなた)に出(い)でましぬ
062あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
063神(かみ)の恵(めぐ)みの幸(さち)はひて
064一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も
065疾(と)く速(すむや)けく親(おや)と子(こ)が
066在処(ありか)を知(し)らせ給(たま)へよと
067玉治別(たまはるわけ)の朝宵(あさよひ)に
068祈(いの)る心(こころ)ぞ悲(かな)しけれ
069金剛(こんがう)不壊(ふゑ)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
070紫色(むらさきいろ)の宝玉(ほうぎよく)の
071在処(ありか)探(たづ)ねて高姫(たかひめ)が
072又(また)もや神都(しんと)を後(あと)にして
073海(うみ)の内外(うちと)の区別(わかち)なく
074探(たづ)ねて廻(まは)る気(き)の毒(どく)さ
075神(かみ)の仕組(しぐみ)を打(う)ち明(あ)けて
076当所(あてど)も知(し)らぬ玉探(たまさが)し
077諦(あきら)めさせむと玉能姫(たまのひめ)
078初稚姫(はつわかひめ)と諸共(もろとも)に
079屋根無(たなな)し小舟(こぶね)に身(み)を任(まか)せ
080遠(とほ)き浪路(なみぢ)を打(う)ち渡(わた)り
081高姫(たかひめ)一行(いつかう)の危難(きなん)をば
082救(すく)ひ守(まも)りつ竜宮島(りうぐうじま)
083到(いた)りて見(み)れば高姫(たかひめ)は
084高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)と
085暗(やみ)に紛(まぎ)れて逸早(いちはや)く
086後白浪(あとしらなみ)となり果(は)てぬ
087あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
088御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
089高姫(たかひめ)一行(いつかう)が執着(しふちやく)の
090心(こころ)の雲(くも)を晴(は)らせかし
091一日(ひとひ)も早(はや)く真心(まごころ)に
092かへらせ給(たま)へと太祝詞(ふとのりと)
093となふる声(こゑ)も湿(しめ)り勝(が)ち
094玉治別(たまはるわけ)は是非(ぜひ)もなく
095初稚姫(はつわかひめ)と諸共(もろとも)に
096ネルソン山(ざん)の高嶺(たかね)をば
097西(にし)に渉(わた)りて山(やま)深(ふか)み
098谷底(たにそこ)潜(くぐ)り種々(いろいろ)と
099百(もも)の艱難(なやみ)に出会(であ)ひつつ
100神(かみ)の恵(めぐみ)を力(ちから)とし
101誠(まこと)の道(みち)を杖(つゑ)として
102石(いし)の枕(まくら)に星(ほし)の夜具(やぐ)
103猛獣(まうじう)哮(た)ける大野原(おほのはら)
104夜(よ)を日(ひ)に次(つ)いで進(すす)みつつ
105虎(とら)狼(おほかみ)や大蛇(をろち)まで
106吾(わが)三五(あななひ)の言霊(ことたま)に
107言向(ことむ)け和(やは)し玉野原(たまのはら)
108一眸(いちぼう)千里(せんり)の草(くさ)分(わ)けて
109諏訪(すは)の湖辺(こへん)に辿(たど)り着(つ)き
110社(やしろ)の前(まへ)に額(ぬかづ)きて
111善言(ぜんげん)美詞(びし)の太祝詞(ふとのりと)
112汗(あせ)に穢(けが)れし身体(からたま)を
113清(きよ)き湖水(こすゐ)に禊(みそ)ぎつつ
114拍手(はくしゆ)の声(こゑ)は中天(ちうてん)に
115轟(とどろ)き渡(わた)る折柄(をりから)に
116浪(なみ)を十字(じふじ)に引(ひ)き分(わ)けて
117現(あら)はれ給(たま)ふ百(もも)の神(かみ)
118天(てん)火(くわ)水(すゐ)地(ち)と結(むす)びつつ
119五(い)づの身魂(みたま)の御(おん)宝(たから)
120携(たづさ)へ来(きた)る女神(めがみ)等(たち)
121吾(われ)等(ら)一行(いつかう)に立(た)ち向(むか)ひ
122竜宮海(りうぐうかい)の麻邇(まに)の玉(たま)
123汝(なんぢ)等(ら)五(ご)人(にん)に授(さづ)けむと
124いと厳(おごそ)かに宣(の)らせつつ
125身魂(みたま)を研(みが)けと言(い)ひ捨(す)てて
126後白浪(あとしらなみ)と消(き)え給(たま)ふ
127初稚姫(はつわかひめ)や玉能姫(たまのひめ)
128玉治別(たまはるわけ)は伏(ふ)し拝(をが)み
129諏訪(すは)の湖(みづうみ)あとにして
130西北(せいほく)指(さ)して進(すす)みつつ
131幾度(いくたび)となく皇神(すめかみ)の
132深(ふか)き試錬(ためし)に遇(あ)ひながら
133さしもに広(ひろ)き竜宮島(りうぐうじま)
134神(かみ)の使(つかひ)の霊鳥(れいてう)に
135救(すく)はれ無事(ぶじ)に国人(くにびと)を
136言向(ことむ)け和(やは)し神業(かむわざ)を
137略(ほぼ)了(を)へまつる折柄(をりから)に
138神(かみ)の使(つかひ)の八咫烏(やあたがらす)
139黄金(こがね)の翼(つばさ)拡(ひろ)げつつ
140吾(われ)等(ら)一行(いつかう)五(い)つ身魂(みたま)
141其(その)背(せ)に乗(の)せて玉依姫(たまよりひめ)の
142貴(うづ)の命(みこと)の在(あ)れませる
143竜(たつ)の宮居(みやゐ)に送(おく)りけり
144あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
145御霊(みたま)の幸(さち)を蒙(かかぶ)りて
146吾(われ)等(ら)五(ご)人(にん)は皇神(すめかみ)の
147教(をしへ)の道(みち)に尽(つく)すより
148外(ほか)に一(ひと)つの望(のぞ)みなし
149執着心(しふちやくしん)の雲(くも)晴(は)れて
150輝(かがや)き渡(わた)る日月(じつげつ)は
151心(こころ)の空(そら)に永久(とこしへ)に
152鎮(しづ)まりいます心地(ここち)して
153不言(ふげん)実行(じつかう)の神(かみ)の業(わざ)
154竜(たつ)の館(やかた)に仕(つか)へつつ
155時(とき)の到(いた)るを待(ま)つ間(うち)に
156梅子(うめこ)の姫(ひめ)を始(はじ)めとし
157黄竜姫(わうりようひめ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
158テールス姫(ひめ)や友彦(ともひこ)が
159黄金(こがね)の舟(ふね)に浮(うか)びつつ
160黄金(こがね)の門(もん)を潜(くぐ)りぬけ
161現(あら)はれ来(き)ます嬉(うれ)しさに
162互(たがひ)に見合(みあ)はす顔(かほ)と顔(かほ)
163嬉(うれ)し涙(なみだ)はせきあへず
164言葉(ことば)を掛(か)くる術(すべ)もなく
165無言(むごん)の儘(まま)に奥殿(おくでん)に
166進(すす)む折柄(をりから)玉依姫(たまよりひめ)の
167神(かみ)の命(みこと)は悠々(いういう)と
168青人草(あをひとぐさ)を救(すく)へよと
169露(つゆ)の滴(したた)る青(あを)の玉(たま)
170ものをも言(い)はず玉治別(たまはるわけ)の
171神(かみ)の司(つかさ)の掌(てのひら)に
172授(さづ)け給(たま)ひし嬉(うれ)しさを
173喜(よろこ)び畏(かしこ)み村肝(むらきも)の
174心(こころ)の魂(たま)の照(て)るままに
175黄竜姫(わうりようひめ)の双(さう)の手(て)に
176漸(やうや)く渡(わた)し胸(むね)を撫(な)で
177不言(ふげん)実行(じつかう)の一端(いつたん)に
178仕(つか)へまつりし折柄(をりから)に
179玉依姫(たまよりひめ)は奥(おく)深(ふか)く
180御神姿(みすがた)隠(かく)し給(たま)ひけり
181吾(われ)等(ら)一同(いちどう)勇(いさ)み立(た)ち
182三(みつ)つの御門(ごもん)を潜(くぐ)りぬけ
183黄金(こがね)の浪(なみ)の漂(ただよ)へる
184諏訪(すは)の湖辺(こへん)に来(き)て見(み)れば
185忽(たちま)ち飛(と)び来(く)る八咫烏(やあたがらす)
186吾(われ)等(ら)を乗(の)せて白雲(しらくも)の
187御空(みそら)を高(たか)く翔上(かけのぼ)り
188翼(つばさ)の音(おと)も勇(いさ)ましく
189漸(やうや)く当館(ここ)に帰(かへ)りけり
190あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
191御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
192三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)は
193堅磐(かきは)常磐(ときは)に松(まつ)の世(よ)の
194ミロク神政(しんせい)の基礎(いしずゑ)と
195仕(つか)へまつりて天地(あめつち)の
196百(もも)の神(かみ)等(たち)百人(ももびと)を
197浦安国(うらやすくに)の心安(うらやす)く
198守(まも)らせ給(たま)へ惟神(かむながら)
199神(かみ)の命(みこと)の御(おん)前(まへ)に
200玉治別(たまはるわけ)が真心(まごころ)を
201開(ひら)いて細(つぶ)さに願(ね)ぎまつる
202神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)や
203国治立(くにはるたち)の御分魂(わけみたま)
204国武彦(くにたけひこの)大神(おほかみ)よ
205三五教(あななひけう)は言(い)ふも更(さら)
206島(しま)の八十島(やそしま)八十(やそ)の国(くに)
207青雲(あをくも)棚引(たなび)く其(その)限(かぎ)り
208天地(あめつち)百(もも)の生物(いきもの)に
209平安(やすき)と栄光(さかえ)と歓喜(よろこび)を
210与(あた)へ給(たま)へと願(ね)ぎまつる
211あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
212御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
213と歌(うた)ひ終(をは)つて自席(じせき)に着(つ)いた。
214 次(つぎ)に黄竜姫(わうりようひめ)は立(た)ち上(あが)り歌(うた)ひ始(はじ)めた。
215黄竜姫『大国彦(おほくにひこ)の神霊(かむみたま)
216堅磐(かきは)常磐(ときは)に祀(まつ)りたる
217バラモン教(けう)は常世国(とこよくに)
218大国別(おほくにわけ)の神司(かむつかさ)
219開(ひら)き給(たま)ひし貴(うづ)の道(みち)
220万里(ばんり)の波濤(はたう)を乗(の)り越(こ)えて
221イホの都(みやこ)に来(きた)りまし
222教(をしへ)の園(その)を開(ひら)く折(をり)
223三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
224夏山彦(なつやまひこ)や祝姫(はふりひめ)
225行平別(ゆきひらわけ)の言霊(ことたま)に
226鬼雲彦(おにくもひこ)の大棟梁(だいとうりやう)
227根城(ねじろ)を抜(ぬ)かれ是非(ぜひ)もなく
228数多(あまた)の部下(ぶか)を引(ひ)き率(つ)れて
229天恵(てんけい)洽(あまね)きエヂプトを
230見捨(みす)てて来(きた)る中津国(なかつくに)
231メソポタミヤの顕恩郷(パラダイス)
232漸(やうや)く此処(ここ)に落(お)ち付(つ)いて
233堅磐(かきは)常磐(ときは)に根城(ねじろ)をば
234固(かた)めて道(みち)を四方(よも)の国(くに)
235布(し)き弘(ひろ)めたる折柄(をりから)に
236神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
237肉(にく)の宮(みや)より生(あ)れませる
238神姿(すがた)優(やさ)しき八乙女(やおとめ)が
239心(こころ)の色(いろ)もいと清(きよ)く
240誠(まこと)の花(はな)を開(ひら)かせて
241教(をしへ)の園(その)を作(つく)らむと
242忍(しの)び忍(しの)びに出(い)で給(たま)ふ
243鬼雲彦(おにくもひこ)を始(はじ)めとし
244鬼熊別(おにくまわけ)や蜈蚣姫(むかでひめ)
245吾(わが)足乳根(たらちね)はバラモンの
246教(をしへ)の道(みち)に勤(いそ)しみて
247心(こころ)のたけを尽(つく)しつつ
248仕(つか)へ給(たま)へる折柄(をりから)に
249功績(いさを)も太玉(ふとだま)宣伝使(せんでんし)
250現(あら)はれ況(ま)して言霊(ことたま)の
251珍(うづ)の剣(つるぎ)を抜(ぬ)き放(はな)ち
252誠(まこと)の鉾(ほこ)を振廻(ふりまは)し
253薙立(なぎた)て斬(き)り立(た)てバラモンの
254教(をしへ)の疵(きず)を正(ただ)さむと
255真心(まごころ)籠(こ)めて出(い)で給(たま)ふ
256その御心(みこころ)を白雲(しらくも)の
257烟(けむり)に巻(ま)かれて大棟梁(だいとうりやう)
258鬼雲彦(おにくもひこ)を始(はじ)めとし
259従(したが)ひ給(たま)ふ神司(かむつかさ)
260顕恩郷(けんおんきやう)を後(あと)にして
261波斯(フサ)の御国(みくに)へ出(い)で給(たま)ふ
262さはさりながら其(その)以前(いぜん)
263顕恩郷(けんおんきやう)の神司(かむづかさ)
264幹部(かんぶ)一同(いちどう)を従(したが)へて
265花見(はなみ)の宴(えん)を開(ひら)きまし
266饗応(うたげ)の酒(さけ)に酔(よ)ひしれて
267エデンの川(かは)を渡(わた)る折(をり)
268御舟(みふね)の傍(わき)に立(た)ち居(ゐ)たる
269十五(じふご)の春(はる)の吾(わが)姿(すがた)
270酔(ゑ)ひたる人(ひと)に撥(は)ねられて
271ザンブとばかりエデン川(がは)
272流(なが)れて底(そこ)に白浪(しらなみ)の
273生命(いのち)絶(た)えむとする折(をり)に
274従僕(しもべ)の司(つかさ)の友彦(ともひこ)は
275身(み)を躍(をど)らして川中(かはなか)を
276潜(くぐ)り潜(くぐ)りて漸(やうや)くに
277妾(われ)を抱(いだ)きて救(すく)ひ上(あ)げ
278背(せな)に負(お)ひつつ吾(わが)父(ちち)の
279館(やかた)を指(さ)して帰(かへ)りましぬ
280あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
281神(かみ)の恵(めぐ)みの浅(あさ)からず
282二(ふた)つなき身(み)の生命(いのち)をば
283神(かみ)の恵(めぐ)みと言(い)ひながら
284助(たす)け呉(く)れたる友彦(ともひこ)に
285心(こころ)は移(うつ)る恋(こひ)の闇(やみ)
286吾(わが)垂乳根(たらちね)の目(め)を忍(しの)び
287闇(やみ)に紛(まぎ)れて顕恩郷(けんおんきやう)を
288ソツト脱(ぬ)け出(い)で友彦(ともひこ)と
289手(て)に手(て)を取(と)つて錫蘭(シロ)の島(しま)
290深山(みやま)の奥(おく)に身(み)を潜(ひそ)め
291一年(ひととせ)ばかり経(ふ)る中(うち)に
292妾(わらは)が心機(しんき)一転(いつてん)し
293何(なん)の情(なさけ)もあら男(をとこ)
294後(あと)に残(のこ)して逃(に)げて行(ゆ)く
295錫蘭(シロ)の浜辺(はまべ)の里人(さとびと)の
296チヤンキー、モンキーの両人(りやうにん)に
297艪(ろ)を操(あやつ)らせ限(かぎ)りなき
298大海原(おほうなばら)を打(う)ち渡(わた)り
299九死(きうし)一生(いつしやう)の苦(くるし)みを
300五十子(いそこ)の姫(ひめ)や梅子姫(うめこひめ)
301御供(みとも)の神(かみ)に助(たす)けられ
302長(なが)き浪路(なみぢ)を渡(わた)りつつ
303昼(ひる)は終日(ひねもす)終夜(よもすがら)
304三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
305心(こころ)の底(そこ)の奥庭(おくには)に
306植付(うゑつ)けられてバラモンの
307迷(まよ)ひの夢(ゆめ)も醒(さ)めにけり
308五十子(いそこ)の姫(ひめ)の一行(いつかう)に
309推戴(すゐたい)されて竜宮(りうぐう)の
310黄金(こがね)花(はな)咲(さ)く一(ひと)つ島(じま)
311地恩(ちおん)の郷(さと)に顕現(けんげん)し
312オーストラリヤの新女王(しんぢよわう)
313三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)
314あらゆる名誉(めいよ)を身(み)に負(お)ひて
315本末(ほんまつ)顛倒(てんたう)の境遇(きやうぐう)を
316知(し)らず識(し)らずに日(ひ)を送(おく)る
317心(こころ)の中(なか)の浅間(あさま)しさ
318高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)に
319政務(せいむ)教務(けうむ)を打(う)ち任(まか)せ
320ブランジー、クロンバー相並(あひなら)び
321政教(せいけう)一致(いつち)の神業(かむわざ)を
322開(ひら)いて国(くに)を守(まも)る折(をり)
323三五教(あななひけう)の高姫(たかひめ)と
324共(とも)に来(き)ませし蜈蚣姫(むかでひめ)
325母(はは)の命(みこと)に廻(めぐ)り会(あ)ひ
326嬉(うれ)し涙(なみだ)にせきあへず
327心(こころ)を協(あは)せ身(み)を尽(つく)し
328教(をしへ)は四方(よも)に輝(かがや)きて
329朝日(あさひ)の豊栄(とよさか)昇(のぼ)る如(ごと)
330歓(ゑら)ぎ楽(たの)しむ折柄(をりから)に
331現(あら)はれ来(きた)る友彦(ともひこ)が
332夫婦(ふうふ)の神(かみ)の来訪(らいはう)に
333喜(よろこ)び驚(おどろ)き一時(ひととき)は
334心(こころ)の海(うみ)に荒浪(あらなみ)の
335立(た)つ瀬(せ)なき迄(まで)狼狽(らうばい)し
336互(たがひ)に過去(くわこ)を語(かた)り合(あ)ひ
337ヤツと解(と)けたる胸(むね)の裡(うち)
338園遊会(ゑんいうくわい)になぞらへて
339昔(むかし)の交(まじは)り温(あたた)めつ
340東(ひがし)と西(にし)と相応(あひおう)じ
341宝(たから)の島(しま)を治(をさ)めむと
342心(こころ)も勇(いさ)む時(とき)もあれ
343ネルソン山(ざん)の空(そら)高(たか)く
344現(あら)はれ出(い)でし蜃気楼(しんきろう)
345如何(いか)なる事(こと)の天啓(てんけい)か
346よくよく仰(あふ)ぎ眺(なが)むれば
347紛(まが)ふ方(かた)なき諏訪(すは)の湖(うみ)
348地恩(ちおん)の城(しろ)に仕(つか)へたる
349左守(さもりの)神(かみ)の清公(きよこう)が
350チヤンキー、モンキー其(その)外(ほか)の
351二人(ふたり)の供(とも)と諸共(もろとも)に
352荘厳(さうごん)美麗(びれい)の玉(たま)の宮(みや)
353玉依姫(たまよりひめ)の御(おん)前(まへ)に
354近(ちか)く仕(つか)ふる有様(ありさま)は
355手(て)に取(と)る如(ごと)く見(み)えにけり
356ネルソン山(ざん)の西(にし)の空(そら)
357尊(たふと)き神(かみ)の坐(ま)しますと
358思(おも)ひ定(さだ)めて梅子姫(うめこひめ)
359蜈蚣(むかで)の姫(ひめ)やテールスの
360姫(ひめ)の命(みこと)と諸共(もろとも)に
361友彦(ともひこ)さまを先頭(せんとう)に
362旅(たび)の枕(まくら)も数(かず)重(かさ)ね
363漸(やうや)く来(きた)る玉野原(たまのはら)
364金砂(きんしや)銀砂(ぎんしや)を敷(し)きし如(ごと)
365漸(やうや)く道(みち)を進(すす)みつつ
366諏訪(すは)の湖畔(こはん)に建(た)てられし
367祠(ほこら)の前(まへ)に辿(たど)り着(つ)き
368湖面(こめん)に向(むか)つて再拝(さいはい)し
369天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し
370愈(いよいよ)此処(ここ)に村肝(むらきも)の
371心(こころ)の帳(とばり)も開(ひら)け初(そ)め
372梅子(うめこ)の姫(ひめ)の御(おん)前(まへ)に
373知(し)らず識(し)らずに犯(をか)したる
374百(もも)の罪咎(つみとが)詫(わ)びぬれば
375木花姫(このはなひめ)の懸(かか)らせて
376天(てん)火(くわ)水(すゐ)地(ち)の大道(たいだう)を
377諭(さと)し給(たま)へば小糸姫(こいとひめ)
378蜈蚣(むかで)の姫(ひめ)や一同(いちどう)は
379転迷(てんめい)開悟(かいご)の蓮花(はちすばな)
380一度(いちど)に開(ひら)く梅子姫(うめこひめ)
381尊(たふと)き神(かみ)の御教(みをしへ)を
382心(こころ)の底(そこ)より正覚(しやうかく)し
383感謝(かんしや)祈願(きぐわん)の折柄(をりから)に
384諏訪(すは)の湖面(こめん)に浮(うか)びたる
385浮島(うきしま)影(かげ)を悠々(いういう)と
386黄金(こがね)の船(ふね)に真帆(まほ)を上(あ)げ
387此方(こなた)に向(むか)つて進(すす)み来(く)る
388その気高(けだか)さに驚(おどろ)きて
389湖上(こじやう)を看守(みまも)る折(をり)もあれ
390左守(さもりの)神(かみ)の清公(きよこう)が
391四(よ)人(にん)の供(とも)と諸共(もろとも)に
392ものをも言(い)はず手(て)を挙(あ)げて
393乗(の)らせ給(たま)へと麾(さしまね)く
394妾(わらは)一行(いつかう)五人(ごにん)連(づ)れ
395直(ただち)に船(ふね)に打(う)ち乗(の)りて
396黄金(こがね)の浪(なみ)を辷(すべ)りつつ
397西北(せいほく)指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く
398天国(てんごく)浄土(じやうど)か楽園(らくゑん)か
399青(あお)赤(あか)白(しろ)黄(き)紫(むらさき)の
400花(はな)は梢(こずゑ)に咲(さ)き乱(みだ)れ
401大小(だいせう)無数(むすう)の島嶼(しまじま)は
402彼方(あなた)此方(こなた)に永久(とこしへ)に
403浮(うか)べる中(なか)を心地(ここち)よく
404勇(いさ)み進(すす)んで玉依(たまより)の
405姫(ひめの)命(みこと)の在(あ)れませる
406竜(たつ)の宮居(みやゐ)に行(ゆ)き見(み)れば
407月雪花(つきゆきはな)の御姿(みすがた)に
408擬(まが)ふべらなる姫神(ひめがみ)の
409十二(じふに)の神姿(すがた)立(た)ち並(なら)び
410玉治別(たまはるわけ)や初稚姫(はつわかひめ)の
411神(かみ)の命(みこと)や玉能姫(たまのひめ)
412久助(きうすけ)お民(たみ)も諸共(もろとも)に
413吾(われ)等(ら)一行(いつかう)を迎(むか)へつつ
414奥殿(おくでん)深(ふか)く進(すす)み入(い)る
415梅子(うめこ)の姫(ひめ)は奥(おく)の間(ま)の
416宝座(ほうざ)に静(しづか)に座(ざ)を占(し)めて
417暗祈(あんき)黙祷(もくたう)なし給(たま)ふ
418時(とき)しもあれや高御座(たかみくら)
419扉(とびら)を開(ひら)き悠々(いういう)と
420現(あら)はれ給(たま)ふ貴姿(うづすがた)
421玉依姫(たまよりひめ)の御(おん)神(かみ)は
422数多(あまた)の侍女(じぢよ)を従(したが)へて
423貴(うづ)の玉器(たまもひ)携(たづさ)へつ
424十曜(とえう)の紋(もん)の十人(とたり)連(づ)れ
425ものをも言(い)はず目礼(もくれい)し
426微笑(びせう)を浮(うか)べてそれぞれに
427五色(ごしき)の玉(たま)を手(て)づからに
428渡(わた)し給(たま)へば玉治(たまはる)の
429別(わけ)の命(みこと)の神司(かむづかさ)
430青(あを)き玉(たま)をば授(さづ)かりて
431直(ただち)に吾(わが)手(て)に微笑(ほほゑ)みつ
432渡(わた)させ給(たま)ふ尊(たふと)さよ
433天(てん)火(くわ)水(すゐ)地(ち)と結(むす)びたる
434麻邇(まに)の御玉(みたま)の其(その)一(ひと)つ
435授(さづ)かり給(たま)ひし喜(よろこ)びを
436私(わたくし)せずに妾(あが)の手(て)に
437渡(わた)し給(たま)ひし功績(いさをし)を
438建(た)てよと示(しめ)す玉治別(たまはるわけ)の
439神(かみ)の命(みこと)の志(こころざし)
440玉(たま)を争(あらそ)ふ世(よ)の中(なか)に
441執着心(しふちやくしん)の影(かげ)もなく
442月日(つきひ)の如(ごと)く明(あきら)けき
443其(そ)の御(おん)身魂(みたま)々々々(おんみたま)
444感謝(かんしや)の涙(なみだ)せきあへず
445感謝(かんしや)は忽(たちま)ち村肝(むらきも)の
446心(こころ)の海(うみ)に浪(なみ)起(おこ)り
447進(すす)みかねたる恋(こひ)の海(うみ)
448玉治別(たまはるわけ)の真心(まごころ)は
449天地(てんち)の神(かみ)も嘉(よみ)すらむ
450妾(われ)は賤(いや)しき小糸姫(こいとひめ)
451恵(めぐみ)の露(つゆ)に潤(うるほ)ひて
452今(いま)は嬉(うれ)しき宣伝使(せんでんし)
453神(かみ)の司(つかさ)となりぬれど
454心(こころ)汚(きたな)き人(ひと)の身(み)の
455いかで誠(まこと)を尽(つく)し得(え)む
456斯(かか)る身魂(みたま)も省(かへり)みず
457尊(たふと)き玉(たま)の神業(かむわざ)を
458惜(を)しまず妾(わらは)に譲(ゆづ)りてし
459清(きよ)き心(こころ)は又(また)と世(よ)に
460何処(いづく)の果(はて)を探(たづ)ぬとも
461いかで例(ためし)のあら涙(なみだ)
462漂(ただよ)ひ浮(うか)ぶ一(ひと)つ島(じま)
463夫(をつと)なき身(み)の独身者(ひとりもの)
464玉治別(たまはるわけ)の神司(みつかさ)よ
465妾(わらは)は切(せつ)なき恋(こひ)の闇(やみ)
466玉(たま)の光(ひかり)の現(あら)はれて
467照(て)らさせ給(たま)へ妹(いも)と背(せ)の
468尊(たふと)き道(みち)の誓言(うけひごと)
469神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)や
470国武彦(くにたけひこの)大神(おほかみ)の
471尊(たふと)き御前(みまへ)を顧(かへり)みず
472心(こころ)のたけを打(う)ち明(あ)けて
473幾重(いくへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
474黄竜姫(わうりようひめ)が授(さづ)かりし
475麻邇(まに)の御玉(みたま)を妾(わらは)のみ
476私(わたくし)なさず三五(あななひ)の
477教司(をしへつかさ)の高姫(たかひめ)や
478高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)の
479神(かみ)の司(つかさ)も諸共(もろとも)に
480空前(くうぜん)絶後(ぜつご)の此(この)度(たび)の
481尊(たふと)き神業(みわざ)に参加(さんか)させ
482心(こころ)の隔(へだ)てを除(のぞ)き去(さ)り
483三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
484月日(つきひ)輝(かがや)く地上(つちのへ)に
485照(てら)させ給(たま)へ厳魂(いづみたま)
486瑞(みづ)の魂(みたま)の御(おん)前(まへ)に
487黄竜姫(わうりようひめ)が真心(まごころ)を
488捧(ささ)げて謹(つつし)み願(ね)ぎ申(まを)す
489あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
490御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
491神(かむ)伊弉諾(いざなぎの)大御神(おほみかみ)
492神(かむ)伊弉冊(いざなみの)大神(おほかみ)の
493撞(つき)の御柱(みはしら)右左(みぎひだり)
494廻(めぐ)り給(たま)ひて千代(ちよ)八千代(やちよ)
495誓(ちか)ひ給(たま)ひし其(その)如(ごと)く
496妹背(いもせ)の契(ちぎり)を結(むす)ばせて
497神(かみ)の教(をしへ)を四方(よも)の国(くに)
498夫婦(めをと)の息(いき)を合(あは)せつつ
499身(み)もたなしらに仕(つか)ふべし
500許(ゆる)させ給(たま)へ玉治別(たまはるわけ)の
501神(かみ)の司(つかさ)の宣伝使(せんでんし)
502心(こころ)の底(そこ)を打(う)ち明(あ)けて
503完全(うまら)に詳細(つばら)に願(ね)ぎ奉(まつ)る
504朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
505月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
506仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
507神(かみ)の御前(みまへ)に誓(ちか)ひたる
508妹背(いもせ)の道(みち)は永久(とこしへ)に
509変(かは)らざらまし松(まつ)の世(よ)の
510尊(たふと)き神(かみ)の御心(みこころ)に
511八千代(やちよ)を籠(こ)めて願(ね)ぎ奉(まつ)る
512あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
513御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
514と祝賀(いはひ)と喜悦(よろこび)と恋慕(こひ)とゴツチヤにして心(こころ)のたけを歌(うた)ひ終(をは)り座(ざ)に着(つ)いた。515玉治別(たまはるわけ)は聊(いささ)か当惑(たうわく)し直(ただち)に立(た)つて黄竜姫(わうりようひめ)の歌(うた)に答(こた)ふべく、516再(ふたた)び銀扇(ぎんせん)を開(ひら)いて言葉(ことば)静(しづ)かに歌(うた)ひ始(はじ)めた。
517玉治別『神(かみ)の恵(めぐみ)に助(たす)けられ
518玉治別(たまはるわけ)と名(な)を負(お)ひて
519今(いま)は尊(たふと)き宣伝使(せんでんし)
520三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)を
521天地(あめつち)四方(よも)に開(ひら)かむと
522山(やま)の尾(を)渉(わた)り川(かは)を越(こ)え
523潮(しほ)の八百路(やほぢ)も厭(いと)ひなく
524進(すす)み進(すす)みて竜宮(りうぐう)の
525一(ひと)つの島(しま)に上陸(じやうりく)し
526心(こころ)も清(きよ)き諏訪(すは)の湖(うみ)
527玉依姫(たまよりひめ)の御(おん)神(かみ)に
528麻邇(まに)の御玉(みたま)を賜(たま)はりて
529地恩(ちおん)の城(しろ)を治(をさ)めます
530黄竜姫(わうりようひめ)の玉(たま)の手(て)に
531渡(わた)して神(かみ)の功績(いさをし)を
532高(たか)き低(ひく)きの隔(へだ)てなく
533神(かみ)の御前(みまへ)に現(あら)はして
534教(をしへ)の道(みち)を照(てら)さむと
535心(こころ)を尽(つく)す玉治(たまはる)が
536清(きよ)き身魂(みたま)を臠(みそなは)し
537妹背(いもせ)の道(みち)を結(むす)ばむと
538語(かた)らひ給(たま)ふ尊(たふと)さよ
539さはさりながら玉治(たまはる)の
540別(わけ)の命(みこと)は其(その)昔(むかし)
541宇都山(うづやま)郷(がう)に現(あら)はれし
542国依別(くによりわけ)が妹(いもと)なる
543お勝(かつ)の姫(ひめ)を妻(つま)となし
544夫婦(ふうふ)揃(そろ)ひて睦(むつ)まじく
545神(かみ)の神業(みわざ)に仕(つか)ふ身(み)ぞ
546黄竜姫(わうりようひめ)の真心(まごころ)は
547己(おのれ)玉治別(たまはるわけ)として
548無限(むげん)の感謝(かんしや)に充(み)ちぬれど
549皇(すめ)大神(おほかみ)の定(さだ)めたる
550一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)の御(おん)規則(みのり)
551破(やぶ)らむ由(よし)もないじやくり
552国(くに)に残(のこ)せし若草(わかぐさ)の
553妻(つま)の命(みこと)の心根(こころね)を
554思(おも)へばいとど哀(あは)れなり
555宇都山(うづやま)郷(がう)の田吾作(たごさく)と
556蔑(さげす)まれたる時(とき)も時(とき)
557卑(いや)しき身(み)をも顧(かへり)みず
558尊(たふと)き神(かみ)の御裔(みすゑ)もて
559吾(われ)に仕(つか)へし貴(うづ)の妻(つま)
560吾(わが)身(み)に一人(ひとり)ある事(こと)を
561完全(うまら)に詳細(つばら)に聞(き)こし召(め)し
562此(この)事(こと)のみは今日(けふ)限(かぎ)り
563心(こころ)に放(はな)させ給(たま)へかし
564汝(な)が身(み)を思(おも)ひ妻(つま)の身(み)を
565思(おも)ふ玉治別(たまはるわけの)神(かみ)
566清(きよ)き心(こころ)を汲(く)みとりて
567必(かなら)ず怒(おこ)らせ給(たま)ふまじ
568あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
569生命(いのち)二(ふた)つとあるならば
570汝(なれ)をも娶(めと)り又(また)もとの
571お勝(かつ)の方(かた)と睦(むつ)まじく
572仕(つか)へむものと吾(わが)心(こころ)
573汲(く)ませ給(たま)へよ黄竜姫(わうりようひめ)
574神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大御神(おほみかみ)
575国武彦(くにたけひこ)の御(おん)前(まへ)に
576真心(まごころ)明(あ)かし汝(なれ)が身(み)の
577思(おも)ひを此処(ここ)に情(つれ)なくも
578科戸(しなど)の風(かぜ)に打(う)ち払(はら)ふ
579黄竜姫(わうりようひめ)の神司(かむづかさ)
580汝(なれ)が切(せつ)なる心根(こころね)を
581仇(あだ)には捨(す)てぬ玉治別(たまはるわけ)の
582仇(あだ)に思(おも)はぬ真心(まごころ)を
583直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
584弥永久(いやとこしへ)に宣(の)り直(なほ)し
585吾(われ)に勝(まさ)りていと清(きよ)き
586夫(つま)の命(みこと)を持(も)たせまし
587あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
588神(かみ)の御前(みまへ)に玉治(たまはる)が
589真心(まごころ)明(あ)かし奉(たてまつ)る』
590と妻(つま)のお勝(かつ)の宇都山(うづやま)郷(がう)にありて神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)し居(を)れば、591貴嬢(きぢやう)の御(お)心(こころ)は察(さつ)すれども、592到底(たうてい)夫婦(ふうふ)たる事(こと)を得(え)ずとの旨(むね)を神(かみ)の前(まへ)に表白(へうはく)したのである。593黄竜姫(わうりようひめ)は愈(いよいよ)恋(こひ)の雲(くも)晴(は)れて熱心(ねつしん)に神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)する事(こと)となつた。
594(大正一一・七・一七 旧閏五・二三 北村隆光録)
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