霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 船歌(ふなうた)〔七七五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第26巻 海洋万里 丑の巻 篇:第3篇 神都の秋 よみ(新仮名遣い):しんとのあき
章:第10章 船歌 よみ(新仮名遣い):ふなうた 通し章番号:775
口述日:1922(大正11)年07月18日(旧閏05月24日) 口述場所: 筆録者:谷村真友 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
由良の港の川口から、新調の船に神輿を乗せて麻邇の宝珠を守護しながら、北風に真帆をはらませて聖地を指して上っていった。
宣伝使服を来た国依別は船の先にすっくと立ち、被面布を巻き上げて、声も涼しく伏し面白く宣伝歌を歌いだした。かつてバラモン教の宗彦として悪事を為した自分の過去を懺悔し、生き別れの父・松鷹彦と兄・天の真浦と出会って改心し、アルプス教を言向け和したことを歌った。
その後高姫・黒姫が玉を探しに生田の森の館にやって来たのをからかった挙句、高姫・黒姫・高山彦は国依別のからかいの神懸りを真に受けて、竹生島に行ってしまったことを面白く歌い、三人の怒りが穏やかにおさまることを願った。
言依別命をはじめ、船上の一同は国依別の滑稽な歌いまわしに腹を抱えて笑い転げた。
空には様々な色の雲が天を包み、芳香が四方に薫じた。微妙の音楽が聞こえ、一同は天女が中空から船を祝している気分に包まれた。長途の船路もまたたく間に帰り着く如くに感じた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-10-07 19:03:30 文字数:2656 OBC :rm2610
愛善世界社版:131頁 八幡書店版:第5輯 190頁 修補版: 校定版:145頁 普及版:47頁 初版: ページ備考:
001 由良(ゆら)の港(みなと)の川口(かはぐち)より新調(しんてう)の御船(みふね)に神輿(みこし)を乗(の)せ、002麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)を守護(しゆご)しながら、003音楽(おんがく)の音(ね)も勇(いさ)ましく、004北風(きたかぜ)に真帆(まほ)を孕(はら)ませ、005悠々(いういう)として深(ふか)き川瀬(かはせ)を聖地(せいち)を指(さ)して上(のぼ)り行(ゆ)く。
006 船(ふね)の先(さき)にスツクと立上(たちあが)り、007宣伝服(せんでんふく)を着(ちやく)したる国依別(くによりわけ)は、008被面布(ひめんぷ)を巻上(まきあ)げながら、009声(こゑ)も涼(すず)しく節(ふし)面白(おもしろ)く歌(うた)ひ出(だ)した。010其(その)歌(うた)、
011国依別『三千(さんぜん)世界(せかい)の梅(うめ)の花(はな)
012一度(いちど)に開(ひら)く時津風(ときつかぜ)
013天(あめ)の八重雲(やへくも)掻(か)き分(わ)けて
014深(ふか)く包(つつ)みし天津(あまつ)日(ひ)の
015影(かげ)もやうやう冴(さ)え渡(わた)り
016月(つき)の光(ひかり)も皎々(かうかう)と
017下界(げかい)を照(て)らす世(よ)となりぬ
018此(この)世(よ)を洗(あら)ふ瑞御霊(みづみたま)
019神徳(しんとく)輝(かがや)く厳御霊(いづみたま)
020経(たて)と緯(よこ)との御(ご)経綸(けいりん)
021茲(ここ)に揃(そろ)うて北(きた)の空(そら)
022由良(ゆら)の港(みなと)に名(な)も高(たか)き
023人子(ひとご)の司(つかさ)秋山彦(あきやまひこ)の
024神(かみ)の命(みこと)の御(おん)館(やかた)
025奥(おく)の一間(ひとま)に安置(あんち)して
026玉(たま)を納(をさ)めし柳筥(やなぎばこ)
027神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)や
028国武彦(くにたけひこの)大神(おほかみ)の
029御言(みこと)畏(かしこ)み言依別(ことよりわけ)の
030瑞(みづ)の命(みこと)の神司(かむづかさ)
031八人(やたり)乙女(をとめ)の五十子(いそこ)姫(ひめ)
032梅子(うめこ)の姫(ひめ)のいと清(きよ)く
033玉(たま)を守(まも)りて小波(さざなみ)の
034打(う)ち寄(よ)せ来(きた)る川口(かはぐち)を
035ゆらりゆらりと上(のぼ)り来(く)る
036科戸(しなど)の風(かぜ)も爽(さはや)かに
037吹(ふ)き払(はら)ひたる塵(ちり)芥(あくた)
038曲(まが)の身魂(みたま)の影(かげ)失(う)せて
039尊(たふと)き神世(かみよ)は近(ちか)づきぬ
040流(なが)れも清(きよ)き由良(ゆら)の川(かは)
041神(かみ)の恵(めぐみ)に上(のぼ)り行(ゆ)く
042あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
043御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
044尊(たふと)き神(かみ)の仕組(しぐ)みたる
045誠(まこと)の花(はな)は匂(にほ)ひ初(そ)め
046空前(くうぜん)絶後(ぜつご)の神業(かむわざ)に
047仕(つか)へ奉(まつ)りし国依別(くによりわけ)の
048神(かみ)の命(みこと)の宣伝使(せんでんし)
049何(なに)に譬(たと)へむ術(すべ)もなく
050喜(よろこ)び勇(いさ)み伝(つた)へ行(ゆ)く
051思(おも)へば遠(とほ)き其(その)昔(むかし)
052メソポタミヤの顕恩郷(けんおんきやう)
053バラモン教(けう)に身(み)を任(まか)せ
054教司(をしへつかさ)となりぬれど
055神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)が
056高天原(たかあまはら)に上(のぼ)りまし
057天(あま)の岩戸(いはと)は閉(とざ)されて
058世(よ)は常闇(とこやみ)となりしより
059年端(としは)も行(ゆ)かぬ幼児(をさなご)の
060親(おや)には別(わか)れ兄弟(きやうだい)に
061生(い)き別(わか)れたる悲(かな)しさに
062奸(ねぢ)け曲(まが)りし吾(わが)身魂(みたま)
063曲(まが)の限(かぎ)りを尽(つく)しつつ
064親(おや)を探(たづ)ねて夫婦(ふうふ)連(づれ)
065自転倒(おのころ)島(じま)を遠近(をちこち)と
066憂(うき)を三年(みとせ)の旅枕(たびまくら)
067嶮(けは)しき山(やま)を乗(の)り越(こ)えて
068胸(むね)の動悸(どうき)も宇都山(うづやま)の
069川辺(かはべ)に進(すす)む二人(ふたり)連(づれ)
070日頃(ひごろ)探(たづ)ぬる吾(わが)父(ちち)に
071知(し)らず識(し)らずに廻(めぐ)り会(あ)ひ
072武志(たけし)の森(もり)の神司(かむづかさ)
073松鷹彦(まつたかひこ)は吾(わが)父(ちち)と
074覚(さと)りし時(とき)の嬉(うれ)しさよ
075それのみならず吾(わが)兄(あに)の
076天(あめ)の真浦(まうら)にゆくりなく
077廻(めぐ)り会(あ)うたる嬉(うれ)しさに
078胸(むね)轟(とどろ)かす折(をり)もあれ
079妻(つま)の命(みこと)は兄妹(おとどい)と
080知(し)らず識(し)らずに暮(くら)したる
081吾(わが)身(み)の罪(つみ)の恐(おそ)ろしさ
082神(かみ)に祈(いの)りて許々多久(ここたく)の
083罪(つみ)や穢(けがれ)を払(はら)はむと
084綾(あや)の聖地(せいち)に参上(まゐのぼ)り
085言依別(ことよりわけ)の神司(かむづかさ)
086貴(うづ)の御前(みまへ)に立出(たちい)でて
087尊(たふと)き神(かみ)の御教(みをしへ)を
088いと懇(ねもごろ)に教(をし)へられ
089罪(つみ)赦(ゆる)されし其(その)上(うへ)に
090実(げ)にも尊(たふと)き三五(あななひ)の
091神(かみ)の教(をしへ)の宣伝使(せんでんし)
092国依別(くによりわけ)と名(な)を賜(たま)ひ
093玉治別(たまはるわけ)や竜国別(たつくにわけ)の
094親(した)しき友(とも)と諸共(もろとも)に
095尊(たふと)き聖地(せいち)を後(あと)にして
096名(な)さへ目出度(めでた)き亀山(かめやま)の
097月宮殿(げつきうでん)に参詣(まゐまう)で
098月(つき)照(て)る夜半(よは)の森(もり)の下(した)
099玉治別(たまはるわけ)にからかはれ
100肝(きも)を冷(ひや)せし愚(おろか)さよ
101神(かみ)の御稜威(みいづ)も高熊(たかくま)の
102厳(いづ)の岩窟(いはや)に参拝(さんぱい)し
103神徳(しんとく)更(さら)に蒙(かかぶ)りて
104堺峠(さかひたうげ)を打渉(うちわた)り
105足(あし)に任(まか)せて法貴谷(ほふきだに)
106道(みち)にさやれる小盗人(こぬすびと)
107わが言霊(ことたま)に言向(ことむ)けて
108進(すす)み行(ゆ)く折(をり)千匹(せんびき)の
109聞(き)くも恐(おそ)ろし狼(おほかみ)が
110山路(やまみち)を渉(わた)る足音(あしおと)に
111木(こ)の葉(は)茂(しげ)れる青山(あをやま)に
112姿(すがた)を隠(かく)し進(すす)み行(ゆ)く
113玉治別(たまはるわけ)の吾(わが)友(とも)に
114湯谷(ゆや)ケ谷(たに)なる杢助(もくすけ)が
115館(やかた)に目出度(めでた)く廻(めぐ)り会(あ)ひ
116心(こころ)も勇(いさ)む宣伝使(せんでんし)
117津田(つだ)の湖水(こすゐ)の水際(みづぎは)に
118袂(たもと)を別(わか)ち六甲(ろくかふ)の
119峰(みね)を伝(つた)ひて鷹依(たかより)の
120姫(ひめ)の命(みこと)の岩窟(がんくつ)に
121一同(いちどう)漸(やうや)く廻(めぐ)り会(あ)ひ
122高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)を
123救(すく)ひ出(いだ)して鷹依(たかより)の
124姫(ひめ)の命(みこと)を三五(あななひ)の
125誠(まこと)の道(みち)に服(まつろ)はせ
126それより進(すす)んで杢助(もくすけ)が
127生田(いくた)の森(もり)の神館(かむやかた)
128留守居(るすゐ)の役(やく)を命(めい)ぜられ
129秋彦(あきひこ)、駒彦(こまひこ)諸共(もろとも)に
130教(をしへ)を開(ひら)く折柄(をりから)に
131玉(たま)に心(こころ)を奪(と)られたる
132日(ひ)の出神(でのかみ)と自称(じしよう)せる
133高姫(たかひめ)さまを始(はじ)めとし
134高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)の
135神(かみ)の司(つかさ)に夕間暮(ゆふまぐれ)
136来訪(らいはう)されて奥(おく)の間(ま)に
137秋彦(あきひこ)諸共(もろとも)忍(しの)び居(ゐ)る
138高姫(たかひめ)、駒彦(こまひこ)門口(かどぐち)の
139戸(と)を隔(へだ)てたる押問答(おしもんだふ)
140婆(ば)さまの声(こゑ)や娘声(むすめごゑ)
141言葉(ことば)巧(たくみ)に操(あやつ)れば
142高姫(たかひめ)さまも一時(いつとき)は
143迷(まよ)はされたる可笑(をか)しさよ
144漸(やうや)う表戸(おもてど)引開(ひきあ)けて
145教司(をしへつかさ)の駒彦(こまひこ)と
146暫時(しばし)争(あらそ)ひ居(ゐ)たりしが
147奥(おく)の一間(ひとま)に煙草(たばこ)吸(す)ふ
148煙管(きせる)の音(おと)に心(こころ)付(づ)き
149高姫(たかひめ)さまは忽(たちま)ちに
150襖(ふすま)押開(おしあ)け進(すす)み入(い)る
151南無(なむ)三宝(さんぽう)と仰向(あふむ)けに
152グレンと覆(かへ)つて四足(よつあし)の
153憑依(ひようい)せし如(ごと)装(よそほ)ひつ
154憑依(ひようい)もせない大天狗(だいてんぐ)
155再度山(ふたたびやま)の鼻高(はなだか)と
156早速(さそく)の頓智(とんち)が仇(あだ)となり
157高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)に
158真(まこと)の天狗(てんぐ)と誤(あやま)られ
159玉(たま)の在処(ありか)を知(し)らせよと
160夢(ゆめ)にも知(し)らぬ国依別(くによりわけ)の
161命(みこと)に向(むか)つて攻(せ)めかくる
162遁(のが)るる由(よし)もなきままに
163嘘言(うそ)でもよいかと言(い)ひ乍(なが)ら
164三(み)つの玉(たま)の隠(かく)し場所(ばしよ)
165近江(あふみ)の国(くに)は琵琶(びは)の湖(うみ)
166波(なみ)に漂(ただよ)ふ竹生島(ちくぶしま)
167社(やしろ)の下(した)に三角(さんかく)の
168石(いし)の蓋(ふた)して隠(かく)し在(あ)り
169一(いち)時(じ)も早(はや)く片時(かたとき)も
170急(いそ)いで行(ゆ)かねば言依別(ことよりわけ)の
171瑞(みづ)の命(みこと)の使(つかひ)等(ら)が
172又(また)も掘出(ほりだ)す虞(おそれ)あり
173早(はや)く早(はや)くとせき立(た)てて
174三(さん)人(にん)共(とも)に竹生島(ちくぶしま)
175同(おな)じ所(ところ)に別々(べつべつ)に
176指図(さしづ)をすれば三(さん)人(にん)が
177宙(ちう)を駆(かけ)つて走(はし)り行(ゆ)く
178国依別(くによりわけ)や秋彦(あきひこ)は
179虎口(ここう)を逃(のが)れた心地(ここち)して
180生田(いくた)の森(もり)の館(やかた)をば
181後(あと)に眺(なが)めてスタスタと
182心(こころ)の駒(こま)の逸(はや)るまに
183足(あし)に鞭打(むちう)つ膝栗毛(ひざくりげ)
184山野(さんや)を渉(わた)り川(かは)を越(こ)え
185夜(よ)を日(ひ)に次(つい)で綾(あや)の里(さと)
186錦(にしき)の宮(みや)に来(き)て見(み)れば
187言依別(ことよりわけ)や杢助(もくすけ)の
188神(かみ)の司(つかさ)を始(はじ)めとし
189聖地(せいち)の役員(やくゐん)一同(いちどう)は
190由良(ゆら)の港(みなと)に帰(かへ)ります
191麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)を迎(むか)へむと
192立出(たちい)で給(たま)ふ真最中(まつさいちう)
193喜(よろこ)び勇(いさ)み秋彦(あきひこ)を
194伴(ともな)ひ此処(ここ)に来(き)て見(み)れば
195思(おも)ひ掛(が)けなき瑞御霊(みづみたま)
196神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大御神(おほみかみ)
197厳(いづ)の顔(かんばせ)莞爾(にこにこ)と
198吾(われ)等(ら)を待(ま)たせ給(たま)ひけり
199あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
200恩頼(みたまのふゆ)の幸(さち)はひて
201今(いま)此(この)船(ふね)に身(み)を委(まか)せ
202聖地(せいち)に帰(かへ)る楽(たの)しさよ
203さはさりながら高姫(たかひめ)や
204高山彦(たかやまひこ)や黒姫(くろひめ)の
205三(み)つの身魂(みたま)は嘸(さぞ)やさぞ
206案(あん)に相違(さうゐ)の力(ちから)抜(ぬ)け
207国依別(くによりわけ)の曲神(まがかみ)に
208尻(しり)の毛(け)までも抜(ぬ)かれたと
209面(つら)をふくらし泡(あわ)を吹(ふ)き
210随分(ずゐぶん)怒(おこ)つて居(ゐ)られませう
211三(み)つの宝珠(ほつしゆ)は手(て)に入(い)らず
212五(いつ)つの玉(たま)の神業(かむわざ)は
213又(また)もや人(ひと)に勤(つと)められ
214心(こころ)のもめる事(こと)だらう
215どうせ聖地(せいち)へ帰(かへ)りなば
216国依別(くによりわけ)は高姫(たかひめ)に
217胸倉(むなぐら)とられ一叱言(ひとこごと)
218聞(き)かして貰(もら)ふ事(こと)だらう
219あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
220御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
221高姫(たかひめ)さまの腹立(はらだ)ちを
222なる事(こと)ならば穏(おだや)かに
223和(なご)め給(たま)へよと三五(あななひ)の
224道(みち)を守(まも)らす大御神(おほみかみ)
225玉照彦(たまてるひこ)や玉照(たまてる)の
226姫(ひめ)の命(みこと)の御(おん)前(まへ)に
227先(さき)を案(あん)じて国依別(くによりわけ)の
228神(かみ)の司(つかさ)が願(ね)ぎ奉(まつ)る
229はや神徳(しんとく)を河守(かうもり)の
230川辺(かはべ)に着(つ)いた嬉(うれ)しさよ
231波(なみ)にせかれて川中(かはなか)に
232高姫(たかひめ)ならぬいと高(たか)く
233腹立岩(はらたちいは)も漸(やうや)うに
234越(こ)えて嬉(うれ)しき八雲川(やくもがは)
235落(お)ち合(あ)ふ水(みづ)に颯々(さつさつ)と
236涼(すず)しき風(かぜ)も福知山(ふくちやま)
237嬉(うれ)しき便(たよ)りを白瀬川(しらせがは)
238波(なみ)を蹴立(けた)てて上(のぼ)り行(ゆ)く
239あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
240御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
241と歌(うた)ひ終(をは)つた。
242 言依別(ことよりわけの)命(みこと)を始(はじ)め一同(いちどう)は此(この)歌(うた)に吹出(ふきだ)し腹(はら)を抱(かか)へて笑(わら)ひこけた。
243 船(ふね)は清流(せいりう)を八十綱(やそつな)もて索(ひ)かるる如(ごと)く、244順風(じゆんぷう)に真帆(まほ)を膨(ふく)らせスルリスルリと辷(すべ)り行(ゆ)く。
245 仰(あふ)いで空(そら)を眺(なが)むれば天(てん)高(たか)く風(かぜ)澄(す)み渡(わた)る秋(あき)の色(いろ)、246忽(たちま)ち青(あを)、247赤(あか)、248白(しろ)、249黄(き)、250紫(むらさき)の雲(くも)満天(まんてん)を包(つつ)み、251得(え)も言(い)はれぬ芳香(はうかう)四辺(しへん)に薫(くん)じ、252微妙(びめう)の音楽(おんがく)聞(きこ)え、253天人(てんにん)天女(てんによ)の中空(ちうくう)に舞(ま)ひ狂(くる)ひて此(この)船(ふね)を祝(しゆく)しつつ送(おく)り給(たま)ふ如(ごと)き爽快(さうくわい)の気分(きぶん)に一同(いちどう)漂(ただよ)はされ、254歓(くわん)湧(わ)き興(きよう)満(み)ち、255勇気(ゆうき)凛々(りんりん)として流石(さすが)長途(ちやうと)の船路(ふなぢ)も瞬(またた)く間(うち)に聖地(せいち)に帰(かへ)り着(つ)く如(ごと)く思(おも)はれた。
256(大正一一・七・一八 旧閏五・二四 谷村真友録)
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