霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 大変歌(だいへんか)〔七七九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第26巻 海洋万里 丑の巻 篇:第4篇 波瀾重畳 よみ(新仮名遣い):はらんちょうじょう
章:第14章 大変歌 よみ(新仮名遣い):だいへんか 通し章番号:779
口述日:1922(大正11)年07月19日(旧閏05月25日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
吹き来る夜嵐に社は風にゆられてギクギクと音を立てた。物音に乗じて亀彦は社から出て床下の三人に近寄り、白衣の布をふわりと頭から被せた。そして、木花姫神の声色で託宣を始めた。
そして三人を戒めると、九月九日にすでに麻邇の宝珠は聖地に納まったので、早く聖地に帰るようにと促した。亀彦は託宣を終えると、闇に紛れて館を指して帰ってしまった。
亀彦の託宣に、名指しされた三人は始めて、お互いが同じ場所で玉を探していることに気付いた。
高姫は国依別に騙されたことに気がついて怒り、その怒りを黒姫と高山彦に向けて罵り始めた。
黒姫は高姫の八つ当たりを聞いて怒り、日の出神が偽天狗に騙されるのか、と逆に食ってかかる。
高山彦も日ごろの思いが爆発し、高姫・黒姫に懸っているという日の出神と竜宮の乙姫に対して疑いを並べたてると、慢心を改めて聖地に帰り、懺悔して改心するようにと促した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:5236 OBC :rm2614
愛善世界社版:200頁 八幡書店版:第5輯 212頁 修補版: 校定版:220頁 普及版:72頁 初版: ページ備考:
001折(をり)から吹(ふ)き来(く)る夜嵐(よあらし)に
002湖水(こすゐ)の面(おも)は波(なみ)高(たか)く
003島(しま)の老木(おいき)の根本(ねもと)より
004吹(ふ)きも倒(たふ)さむ勢(いきほひ)に
005神(かむ)さび建(た)てる神社(かむやしろ)
006風(かぜ)にゆられてギクギクと
007怪(あや)しき音(おと)を立(た)て初(そ)めぬ
008これ幸(さいは)ひと亀彦(かめひこ)は
009社(やしろ)の扉(とびら)を打開(うちひら)き
010そろそろ階段(かいだん)下(くだ)り来(き)て
011玉(たま)に魂(たま)をばぬかれたる
012三(み)つ巴(どもゑ)の玉奴(たまやつこ)
013身辺(しんぺん)近(ちか)く進(すす)み寄(よ)り
014白衣(びやくえ)の着物(きもの)を頭(あたま)より
015フワリと被(かぶ)り吹(ふ)く風(かぜ)に
016長(なが)き袖(そで)をばなぶらせつ
017声(こゑ)も女神(めがみ)の淑(しとや)かに
018宣(の)り出(いだ)せるぞ面白(おもしろ)き
019天教山(てんけうざん)に現(あら)はれし
020われは木花姫(このはなひめの)神(かみ)
021その御心(みこころ)を汲(く)みとりて
022汝(なんぢ)等(ら)三人(みたり)の迷人(まよひど)に
023玉(たま)の在処(ありか)を説(と)き示(しめ)す
024あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
025御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
026三五教(あななひけう)やバラモンの
027どちらか知(し)らぬが宣伝使(せんでんし)
028三(さん)人(にん)ここに現(あら)はれて
029憑依(ひようい)もせない天狗(たかがみ)の
030宣示(せんじ)を誠(まこと)と思(おも)ひつめ
031長途(ちやうと)の旅(たび)をエチエチと
032暗(やみ)かき分(わ)けて波(なみ)の上(うへ)
033三(み)つの御霊(みたま)の鎮(しづ)まれる
034竹生(ちくぶ)の島(しま)に漕(こ)ぎつけて
035隠(かく)してもない神宝(しんぱう)を
036下(くだ)らぬ意地(いぢ)に絡(から)まれて
037探(さが)しに来(きた)る愚(おろか)さよ
038鼻高姫(はなたかひめ)や村肝(むらきも)の
039心(こころ)の暗(やみ)の黒姫(くろひめ)や
040頭(あたま)の光(ひか)る福禄寿(げほう)面(づら)
041揃(そろ)ひも揃(そろ)うた大馬鹿(おほばか)の
042社殿(しやでん)の下(した)の玉探(たまさが)し
043たとへ百丈(ひやくぢやう)掘(ほ)つたとて
044金輪(こんりん)奈落(ならく)その玉(たま)は
045出(で)て来(く)る気(き)づかひあるまいぞ
046日(ひ)の出神(でのかみ)や竜宮(りうぐう)の
047乙姫(おとひめ)さまの生宮(いきみや)と
048威張(ゐば)つて居(ゐ)たが何(なん)の態(ざま)
049女神(めがみ)の癖(くせ)に荒(あら)い事(こと)
050吐(ほざ)くと思(おも)ふか知(し)らねども
051決(けつ)して女神(めがみ)が云(い)ふでない
052三人(みたり)の心(こころ)に憑(うつ)りたる
053副守(ふくしゆ)の鬼(おに)が吐(ほざ)くのだ
054要(い)らぬ苦労(くらう)をするよりも
055吾(わが)身(み)の行(おこな)ひ省(かへり)みて
056玉(たま)の詮索(せんさく)思(おも)ひ切(き)り
057一日(ひとひ)も早(はや)く大神(おほかみ)の
058誠(まこと)の道(みち)を世(よ)の中(なか)に
059懺悔(ざんげ)さらして仕(つか)へ行(ゆ)け
060先(さき)に来(き)たのは高姫(たかひめ)ぢや
061次(つぎ)に出(で)て来(き)た黒姫(くろひめ)が
062言依別(ことよりわけ)の遣(つか)はせし
063玉掘神(たまほりがみ)と誤解(ごかい)して
064吾(われ)劣(おと)らじと暗雲(やみくも)で
065指(ゆび)の先(さき)まですりむきつ
066オチヨボのやうに砂(すな)を掘(ほ)り
067いよいよ味噌(みそ)を摺鉢(すりばち)の
068糠喜(ぬかよろこ)びの砂煙(すなけむり)
069何時(いつ)迄(まで)お前(まへ)が掘(ほ)つたとて
070隠(かく)してないもな出(で)ては来(こ)ぬ
071高山彦(たかやまひこ)のハズバンド
072婆(ば)さまのお尻(しり)をつけ狙(ねら)ひ
073六十面(ろくじふづら)を下(さ)げながら
074ようも天狗(てんぐ)に欺(だま)された
075あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
076訳(わけ)の解(わか)らぬ奴(やつ)ばかり
077こんなお方(かた)が三五(あななひ)の
078教(をしへ)の幹部(かんぶ)に坐(すわ)るなら
079それこそ勿(たちま)ち聖場(せいぢやう)は
080地異(ちい)天変(てんぺん)の大騒動(おほさうだう)
081亀彦(かめひこ)ドツコイ亀(かめ)の背(せ)に
082乗(の)つて波間(なみま)に浮(うか)び来(く)る
083木花姫(このはなひめ)の御心(みこころ)を
084承(うけたま)はりて現(あらは)れた
085玉(たま)の在処(ありか)を守(まも)り居(ゐ)る
086わしは誠(まこと)の女神(めがみ)ぞや
087三(みつ)つの玉(たま)は神界(しんかい)の
088御(お)経綸(しぐみ)なれば高姫(たかひめ)が
089何程(なにほど)日(ひ)の出神(でのかみ)ぢやとて
090現(あら)はれ来(きた)る筈(はず)はない
091そんな謀反(むほん)は諦(あきら)めて
092一(いち)時(じ)も早(はや)く三五(あななひ)の
093綾(あや)の聖地(せいち)に立帰(たちかへ)り
094神(かみ)に御(お)詫(わび)をするがよい
095九(く)月(ぐわつ)八日(やうか)の秋(あき)の空(そら)
096黄金(こがね)花(はな)咲(さ)く竜宮(りうぐう)の
097一(ひと)つ島(じま)なる諏訪(すは)の湖(うみ)
098玉依姫(たまよりひめ)の御(おん)宝(たから)
099天(てん)火(くわ)水(すゐ)地(ち)と結(むす)びたる
100麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)は由良港(ゆらみなと)
101秋山彦(あきやまひこ)の庭先(にはさき)に
102鳩(はと)の如(ごと)くに下(くだ)りまし
103言依別(ことよりわけ)を始(はじ)めとし
104梅子(うめこ)の姫(ひめ)や五十子(いそこ)姫(ひめ)
105お前(まへ)の嫌(きら)ひな玉能姫(たまのひめ)
106初稚姫(はつわかひめ)も諸共(もろとも)に
107神輿(みこし)に乗(の)せて悠々(いういう)と
108由良(ゆら)の川瀬(かはせ)を遡(さかのぼ)り
109嬉(うれ)しき便(たよ)りを菊(きく)の月(つき)
110今日(けふ)は九日(ここのか)四尾(よつをう)の
111山(やま)の麓(ふもと)の八尋殿(やひろどの)
112たしかに納(をさ)まる日(ひ)なるぞや
113お前(まへ)もグヅグヅして居(ゐ)ると
114後(あと)の祭(まつり)の十日菊(とをかぎく)
115恥(はぢ)の上塗(うはぬ)りせにやならぬ
116生田(いくた)の森(もり)の館(やかた)から
117直様(すぐさま)聖地(せいち)に帰(かへ)りなば
118前代(ぜんだい)未聞(みもん)の盛典(せいてん)に
119首尾(しゆび)よく列(れつ)して五色(いついろ)の
120麻邇(まに)の宝珠(ほつしゆ)を拝観(はいくわん)し
121尊(たふと)き神業(みわざ)の末端(はしくれ)に
122奉仕(ほうし)出来(でき)たであらうのに
123執着心(しふちやくしん)に煽(あふ)られて
124憑依(ひようい)もせない天狗(たかがみ)に
125だまされぬいて遥々(はるばる)と
126探(たづ)ねて来(きた)る盲神(めくらがみ)
127気(き)の毒(どく)なりける次第(しだい)なり
128あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
129それが叶(かな)はぬと思(おも)ふなら
130一(いち)時(じ)も早(はや)く立帰(たちかへ)れ
131玉守姫(たまもりひめ)が親切(しんせつ)で
132一寸(ちよつと)誠(まこと)を明(あか)し置(お)く
133そろそろ風(かぜ)も強(つよ)なつた
134嵐(あらし)に吹(ふ)かれて何時(いつ)迄(まで)も
135ここに居(を)つては堪(たま)らない
136ウントコドツコイ高姫(たかひめ)さま
137ヤツトコドツコイ黒姫(くろひめ)さま
138高山彦(たかやまひこ)の福禄寿(げほう)さま
139そんならお暇(いとま)申(まを)します
140ドツコイシヨのドツコイシヨ
141ウントコドツコイドツコイシヨ
142ヤツトコセーのヨーイヤナ
143アレはのせーコレはのせー
144ヤツトコドツコイ玉(たま)探(さが)せ。
145と歌(うた)ひ了(をは)り、146暗(やみ)に紛(まぎ)れてクツクツ噴出(ふきだ)しながら英子姫(ひでこひめ)の館(やかた)を指(さ)して帰(かへ)り行(ゆ)く。
147○
148ここに三人(みたり)の玉探(たまさが)し
149汗(あせ)をタラタラ流(なが)しつつ
150無言(むごん)のままで一心(いつしん)に
151側目(わきめ)もふらず土掘(つちほ)りの
152真最中(まつさいちう)に亀彦(かめひこ)が
153俄(にはか)に女神(めがみ)の作(つく)り声(ごゑ)
154高姫(たかひめ)、黒姫(くろひめ)、高山彦(たかやまひこ)の
155福禄寿(げほう)頭(あたま)の三(さん)人(にん)と
156図星(づぼし)を指(さ)されて高姫(たかひめ)は
157ハツと驚(おどろ)き立上(たちあが)り
158よくよく見(み)れば黒姫(くろひめ)や
159高山彦(たかやまひこ)の二人(ふたり)連(づ)れ
160アヽ残念(ざんねん)や口惜(くちを)しや
161国依別(くによりわけ)の極道(ごくだう)奴(め)
162日(ひ)の出神(でのかみ)や高姫(たかひめ)や
163竜宮(りうぐう)さまの生宮(いきみや)を
164マンマとよくも騙(だま)したな
165馬鹿(ばか)にするのも程(ほど)がある
166十(じふ)里(り)二十(にじふ)里(り)三十(さんじふ)里(り)
167痛(いた)い足(あし)をば引(ひき)ずつて
168いよいよ今度(こんど)は如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
169その外(ほか)二(ふた)つの宝(たから)をも
170うまく手(て)に入(い)れ年来(ねんらい)の
171願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)と思(おも)ひきや
172又(また)だまされて玉探(たまさが)し
173わしより若(わか)い奴輩(やつばら)に
174馬鹿(ばか)にしられて口惜(くちを)しい
175黒姫(くろひめ)さまもこれからは
176チツとしつかりするがよい
177高山彦(たかやまひこ)も余(あんま)りぢや
178朝(あさ)から晩(ばん)までニヤニヤと
179黒姫(くろひめ)さまの面(つら)計(ばか)り
180眺(なが)めて居(ゐ)るからこんな事(こと)
181流石(さすが)に尊(たふと)い竜宮(りうぐう)の
182乙姫(おとひめ)さまも腹(はら)を立(た)て
183遠(とほ)くの昔(むかし)に魂(たま)ぬけの
184あとは盲(めくら)の守護神(しゆごじん)
185今(いま)までお前(まへ)を生宮(いきみや)と
186思(おも)うて居(ゐ)たのが情(なさけ)無(な)い
187思(おも)へば思(おも)へば腹(はら)が立(た)つ
188それぢやに依(よ)つて初(はじめ)から
189神(かみ)の誠(まこと)の御(おん)道(みち)は
190夫婦(ふうふ)あつては勤(つと)まらぬ
191わしがあれ程(ほど)言(い)うたのに
192馬耳(ばじ)東風(とうふう)と聞(き)き流(なが)し
193肝腎要(かんじんかなめ)の竜宮(りうぐう)の
194乙姫(おとひめ)さまにぬけられて
195その面付(つらつき)は何(なん)の事(こと)
196暗夜(やみよ)でお面(かほ)は分(わか)らねど
197定(さだ)めて夜食(やしよく)に外(はづ)れたる
198梟(ふくろ)のやうな面付(つらつき)で
199アフンとしてるに違(ちが)ひない
200私(わし)も愛想(あいそ)がつきました
201何程(なにほど)日(ひ)の出神(でのかみ)ぢやとて
202こんな分(わか)らぬ守護神(しゆごじん)
203憑(つ)いた御(おん)身(み)を伴(とも)にして
204どうして神業(みわざ)が勤(つと)まらう
205チツとは改心(かいしん)なされませ
206性懲(しやうこり)もなく又(また)しても
207油揚(あぶらげ)鳶(とび)にさらはれた
208高山彦(たかやまひこ)の親爺(おやぢ)さま
209六日(むゆか)の菖蒲(あやめ)十日菊(とをかぎく)
210きくさへ胸(むね)が悪(わる)くなる
211再度山(ふたたびやま)の大天狗(だいてんぐ)
212身魂(みたま)の曇(くも)つた国公(くにこう)に
213サツと憑(うつ)つて世迷言(よまひごと)
214吐(ほざ)いた言葉(ことば)を真(ま)にうけて
215ここ迄(まで)来(き)たのは情(なさけ)無(な)や
216あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
217神(かみ)の御(ご)都合(つがふ)と諦(あきら)めて
218これから大(おほ)きな面(つら)をして
219正々(せいせい)堂々(だうだう)陣(ぢん)を張(は)り
220言依別(ことよりわけ)のハイカラに
221恨(うら)みを晴(は)らす逆理屈(さかりくつ)
222御(お)二人(ふたり)しつかりしなされよ
223神(かみ)の教(をしへ)を次(つぎ)にして
224親爺(おやぢ)の事(こと)や女房(にようばう)の
225身(み)の上(うへ)計(ばか)り気(き)にかけて
226現(うつつ)を吐(ぬか)すと此(この)通(とほ)り
227これこそ神(かみ)の御(お)戒(いまし)め
228これで改心(かいしん)なさつたか
229思(おも)へば思(おも)へば馬鹿(ばか)らしい
230お前(まへ)のやうな没分暁漢(わからずや)
231黄金(こがね)の玉(たま)を盗(ぬす)まれて
232在処(ありか)探(たづ)ねてはるばると
233竜宮島(りうぐうじま)に二三(にさん)年(ねん)
234留(とど)まりながら何(なん)の態(ざま)
235お前(まへ)の帰(かへ)つたその後(あと)で
236初稚姫(はつわかひめ)や玉能姫(たまのひめ)
237玉治別(たまはるわけ)や友彦(ともひこ)に
238又(また)もや麻邇(まに)の如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
239尊(たふと)い御用(ごよう)を占領(せんりやう)され
240天地(てんち)の神(かみ)の御(おん)前(まへ)に
241何(ど)うして顔(かほ)が立(た)ちますか
242胸(むね)に手(て)を当(あ)てつくづくと
243考(かんが)へなさるがよからうぞ
244何程(なにほど)泣(な)いて悔(くや)んでも
245もう斯(か)うなれば是非(ぜひ)は無(な)い
246サアサア皆(みな)さま帰(かへ)りませう
247一度(いちど)に開(ひら)く梅(うめ)の花(はな)
248開(ひら)いて散(ち)りて実(み)を結(むす)ぶ
249平助(へいすけ)お楢(なら)の両人(りやうにん)が
250腹(はら)から生(うま)れたお節(せつ)等(ら)に
251馬鹿(ばか)にしられて堪(たま)らうか
252高姫(たかひめ)ぢやとて骨(ほね)がある
253お前(まへ)のやうなグニヤグニヤの
254蒟蒻腰(こんにやくごし)では無(な)い程(ほど)に
255見違(みちが)ひなさるな高姫(たかひめ)が
256岩(いは)より堅(かた)い大和魂(やまとだま)
257日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)に
258お前(まへ)のやうな盲神(めくらがみ)
259何(ど)うしてついて来(き)たであろ
260うまい果実(このみ)にや虫(むし)がつく
261賢(かしこ)い人(ひと)には魔(ま)が来(きた)る
262お前(まへ)の忠告(ちうこく)真(ま)に受(う)けて
263今迄(いままで)出(で)て来(き)た高姫(たかひめ)も
264余(あんま)り偉(えら)そにや言(い)はれねど
265大将(たいしやう)は素(もと)より看板(かんばん)ぢや
266側(そば)に付添(つきそ)ふ副柱(そへばしら)
267こいつに力(ちから)の無(な)い時(とき)は
268何程(なにほど)偉(えら)い生宮(いきみや)も
269策(さく)を施(ほどこ)す余地(よち)がない
270持(も)つべきものは家来(けらい)ぢやが
271持(も)つて困(こま)るは馬鹿(ばか)家来(けらい)
272こんな事(こと)なら初(はじめ)から
273お前(まへ)を使(つか)ふぢや無(な)かつたに
274悔(くや)みて返(かへ)らぬ今日(けふ)の首尾(しゆび)
275諦(あきら)めようより仕様(しやう)が無(な)い
276あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
277御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ。
278と、279流石(さすが)の高姫(たかひめ)も焼糞(やけくそ)になつて、280黒姫(くろひめ)、281高山彦(たかやまひこ)に八当(やつあた)りの歌(うた)をうたひ、282胸(むね)の焔(ほのほ)を消(け)さむとして居(ゐ)る。
283○
284星(ほし)の明(あか)りに黒姫(くろひめ)は
285高慢(かうまん)強(つよ)き高姫(たかひめ)の
286歌(うた)を聞(き)くより腹(はら)を立(た)て
287暗(やみ)をすかして眺(なが)むれば
288前歯(まへば)のぬけた膨(ふく)れ面(づら)
289汗(あせ)をブルブルかきながら
290蟹(かに)の様(やう)なる泡(あわ)を吹(ふ)き
291眼(め)を怒(いか)らして睨(にら)み居(ゐ)る
292黒姫(くろひめ)見(み)るより腹(はら)を立(た)て
293こちらも劣(おと)らぬムツと顔(がほ)
294声(こゑ)の色(いろ)まで尖(とが)らして
295日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)と
296当(あ)てすつぽうな名(な)をとなへ
297世界(せかい)が見(み)え透(す)く見(み)え透(す)くと
298何時(いつ)も仰有(おつしや)るその癖(くせ)に
299たかの知(し)れたる再度(ふたたび)の
300山(やま)に隠(かく)れた野天狗(のてんぐ)に
301うまく騙(だま)され泡(あわ)を吹(ふ)き
302何程(なにほど)腹(はら)が立(た)つたとて
303私(わたし)に当(あた)るといふ事(こと)は
304お前(まへ)さまそれはチト無理(むり)ぢや
305口(くち)に税金(ぜいきん)要(い)らぬとて
306業託(ごうたく)言(い)ふにも程(ほど)がある
307私(わたし)も女(をんな)の端(はし)くれぢや
308日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)が
309高姫(たかひめ)さまなら黒姫(くろひめ)は
310矢張(やつぱり)竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)ぢや
311日(ひ)の出神(でのかみ)と引添(ひつそ)うて
312竜宮(りうぐう)さまの御(お)手伝(てつだひ)
313これで無(な)ければ神界(しんかい)の
314経綸(しぐみ)は成就(じやうじゆ)せぬぢや無(な)いか
315あなたは何時(いつ)も言(い)うただろ
316その言霊(ことたま)を夢(ゆめ)の如(ごと)
317ケロリと忘(わす)れて黒姫(くろひめ)に
318熱(ねつ)を吹(ふ)くとは余(あんま)りぢや
319私(わし)もチツトは腹(はら)が立(た)つ
320私(わたし)丈(だけ)なら何(ど)うなりと
321悔(くや)しい残念(ざんねん)堪(こば)らうが
322二世(にせ)を契(ちぎ)つたハズバンド
323高山(たかやま)さままで引出(ひきだ)して
324悪口(あくこう)言(い)ふとは虫(むし)がよい
325神(かみ)のお道(みち)を世(よ)の中(なか)に
326伝(つた)へて歩(ある)く高姫(たかひめ)の
327仰有(おつしや)る事(こと)とは受取(うけと)れぬ
328真(まこと)の日(ひ)の出神(でのかみ)さまは
329余(あんま)り偉(えら)い慢神(まんしん)に
330愛想(あいそ)をつかして御(お)帰(かへ)りの
331あとに曲津(まがつ)が巣(す)をくみて
332お前(まへ)の御(お)口(くち)を自由(じいう)にし
333そんな悪口(あくこう)吐(つ)くのだろ
334油断(ゆだん)も隙(すき)も無(な)い御(お)道(みち)
335一寸(ちよつと)慢神(まんしん)するや否(いな)
336八岐(やまた)の大蛇(をろち)の醜魂(しこだま)に
337のり憑(うつ)られて眼(め)はくらみ
338魂(たま)は捻(ねぢ)けて此(こ)の通(とほ)り
339国依別(くによりわけ)や秋彦(あきひこ)の
340身体(からだ)に憑(うつ)つた野天狗(のてんぐ)に
341チヨロマカされてはるばると
342夜(よ)を日(ひ)についで三十(さんじふ)里(り)
343琵琶(びは)の湖(うみ)までやつて来(き)て
344寄辺渚(よるべなぎさ)の離(はな)れ島(じま)
345隠(かく)してもない玉探(たまさが)し
346お腹(なか)が立(た)つのは尤(もつと)もぢや
347さはさりながらお前(まへ)さま
348胸(むね)に手(て)をあてトツクリと
349考(かんが)へなさるが宜(よろ)しかろ
350真(まこと)の日(ひ)の出神(でのかみ)ならば
351玉(たま)の在処(ありか)は居(ゐ)ながらに
352判然(はつきり)分(わか)らにやなるまいに
353海洋(かいやう)万里(ばんり)の島々(しまじま)を
354うろつき廻(まは)る玉探(たまさが)し
355それから可笑(をか)しと思(おも)て居(ゐ)た
356何(ど)うしても斯(か)うしても腑(ふ)に落(お)ちぬ
357口先(くちさき)ばかり偉(えら)さうに
358頬桁(ほほげた)叩(たた)くやくざ神(がみ)
359早(はや)く帰(いな)すがよいわいな
360これから心(こころ)改(あらた)めて
361三五教(あななひけう)の神司(かむつかさ)
362言依別(ことよりわけ)の命令(めいれい)に
363ハイハイハイと箱根山(はこねやま)
364痩馬(やせうま)追(お)うて登(のぼ)る様(やう)に
365神妙(しんめう)に御用(ごよう)を聞(き)きなされ
366私(わたし)はこれで三五(あななひ)の
367神(かみ)の御(お)道(みち)は止(や)めまする
368聖地(せいち)へ帰(かへ)つて人々(ひとびと)に
369何(ど)うして面(かほ)が合(あ)はされよう
370鉄面皮(てつめんぴ)なる黒姫(くろひめ)も
371今度(こんど)計(ばか)りは何(ど)うしても
372面向(かほむ)け致(いた)す術(すべ)が無(な)い
373変性(へんじやう)男子(なんし)の筆先(ふでさき)に
374慢神(まんしん)致(いた)すと面(つら)の皮(かは)
375引(ひ)きめくられて家(いへ)の外(そと)
376歩(ある)けぬやうに成(な)り果(は)てて
377頭(あたま)抱(かか)へて奥(おく)の間(ま)に
378潜(ひそ)みて居(を)らねばならないと
379御(お)示(しめ)しなさつてあるものを
380日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を
381無性(むしやう)矢鱈(やたら)に振(ふ)り廻(まは)し
382せつぱつまつた今日(けふ)の空(そら)
383思(おも)へば思(おも)へば御(お)気(き)の毒(どく)
384私(わたし)は同情(どうじやう)いたします
385これから聖地(せいち)へ立帰(たちかへ)り
386心(こころ)の底(そこ)から改(あらた)めて
387今迄(いままで)とつたる横柄(わうへい)な
388態度(たいど)をすつかり止(や)めにして
389小猫(こねこ)のやうになりなされ
390仁慈(じんじ)無限(むげん)の神(かみ)様(さま)の
391尊(たふと)き試練(ためし)に遇(あ)ひました
392あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
393御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ
394叶(かな)はぬから帰(かへ)りませう。
395○
396高山彦(たかやまひこ)はムツとして
397薬鑵頭(やくわんあたま)に湯気(ゆげ)を立(た)て
398ドス声(ごゑ)頻(しき)りに張(は)りあげて
399高姫(たかひめ)さまよ黒姫(くろひめ)よ
400日(ひ)の出神(でのかみ)や竜宮(りうぐう)の
401乙姫(おとひめ)さまを楯(たて)にとり
402一丈(いちぢやう)二(に)尺(しやく)の褌(ふんどし)を
403締(し)めた男(をとこ)を馬鹿(ばか)にした
404俺(おれ)は元(もと)からお前(まへ)等(ら)の
405言(い)うとる事(こと)が怪(あや)しいと
406思(おも)うて居(ゐ)たがまさかにも
407こんな馬鹿(ばか)とは知(し)らなんだ
408男(をとこ)の顔(かほ)に泥(どろ)を塗(ぬ)り
409返(かへ)しのつかぬ恥(はぢ)かかせ
410日(ひ)の出神(でのかみ)もあるものか
411尻(しり)が呆(あき)れて屁(へ)も出(い)でぬ
412お前(まへ)の様(やう)な年寄(としより)を
413女房(にようばう)に持(も)つのは厭(いや)なれど
414尊(たふと)い竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)が
415肉(にく)の宮(みや)ぢやと聞(き)いた故(ゆゑ)
416高姫(たかひめ)さまの媒介(ばいかい)で
417波斯(フサ)の国(くに)から遥々(はるばる)と
418天(あま)の鳥船(とりふね)空(そら)高(たか)く
419乗(の)つて来(き)たのは馬鹿(ばか)らしい
420白(しろ)い頭(あたま)に黒(くろ)い汁(しる)
421コテコテ塗(ぬ)つて誤魔化(ごまくわ)して
422枯木(かれき)に花(はな)の咲(さ)きほこり
423こんな事(こと)だと知(し)つたなら
424お前(まへ)と添(そ)ふのぢや無(な)かつたに
425日(ひ)の出神(でのかみ)も竜宮(りうぐう)の
426乙姫(おとひめ)さまも此(この)頃(ごろ)は
427ねつから当(あて)にはならないぞ
428執着心(しふちやくしん)にそそられて
429国々(くにぐに)島々(しまじま)かけめぐり
430玉(たま)の在処(ありか)を探(さが)し行(ゆ)く
431二人(ふたり)の婆(ばば)の馬鹿(ばか)加減(かげん)
432俺(おれ)は愛想(あいそ)が尽(つ)きたぞよ
433国依別(くによりわけ)や秋彦(あきひこ)の
434若(わか)い男(をとこ)の憑霊(ひようれい)に
435眉毛(まゆげ)をよまれてこんな態(ざま)
436どうして聖地(せいち)へ帰(かへ)られうか
437女(をんな)子供(こども)に到(いた)る迄(まで)
438俺(おれ)の顔(かほ)見(み)りや馬鹿(ばか)にする
439かうなり行(ゆ)くも高姫(たかひめ)や
440黒姫(くろひめ)二人(ふたり)の為(な)す業(わざ)ぞ
441あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
442玉(たま)の詮議(せんぎ)は今日(けふ)限(かぎ)り
443すつぱり思(おも)ひ諦(あきら)めて
444誠心(まことごころ)に立帰(たちかへ)り
445三五教(あななひけう)の神司(かむづかさ)
446玉照彦(たまてるひこ)や玉照姫(たまてるひめ)の
447貴(うづ)の命(みこと)の神人(しんじん)が
448御言(みこと)畏(かしこ)みよく仕(つか)へ
449必(かなら)ず自我(じが)を出(だ)すでない
450高山彦(たかやまひこ)が両人(りやうにん)に
451真心(まごころ)こめて気(き)を付(つ)ける
452あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
453神(かみ)のまします此(この)島(しま)に
454何時迄(いつまで)居(を)つても仕様(しやう)がない
455恥(はぢ)をばしのび面(めん)被(かぶ)り
456兎(と)も角(かく)聖地(せいち)へ立帰(たちかへ)り
457心(こころ)の底(そこ)から今迄(いままで)の
458誤解(ごかい)慢神(まんしん)悉(ことごと)く
459神(かみ)の御前(みまへ)に御(お)詫(わび)して
460赤恥(あかはぢ)さらせばせめてもの
461罪滅(つみほろぼ)しとなるであろ
462それが嫌(いや)なら高姫(たかひめ)も
463女房(にようばう)の黒姫(くろひめ)今日(けふ)限(かぎ)り
464三行半(みくだりはん)の離縁状(りえんじやう)
465すつぱり書(か)いて渡(わた)さうか
466今迄(いままで)男(をとこ)を馬鹿(ばか)にした
467天罰(てんばつ)忽(たちま)ち報(むく)い来(き)て
468こんな憂目(うきめ)に遇(あ)うたのだ
469改心(かいしん)するのは結構(けつこう)だ
470高天原(たかあまはら)の門開(もんびら)き
471慢心(まんしん)すると此(この)通(とほ)り
472世間(せけん)の人(ひと)に顔向(かほむ)けの
473ならない様(やう)な事(こと)が来(く)る
474今日(けふ)からサツパり心(こころ)をば
475洗(あら)ひ直(なほ)して惟神(かむながら)
476うぶの心(こころ)になるがよい
477サアサア帰(い)のうサア帰(い)のう
478吹(ふ)き来(く)る風(かぜ)は強(つよ)くとも
479高波(たかなみ)如何(いか)に猛(たけ)ぶとも
480仁慈(じんじ)無限(むげん)の大神(おほかみ)の
481大御守(おほみまもり)を力(ちから)とし
482杖(つゑ)と頼(たの)みて帰(かへ)らうぞ
483あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
484御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ。
485(大正一一・七・一九 旧閏五・二五 外山豊二録)
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