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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第49巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 神示の社殿
第1章 地上天国
第2章 大神人
第3章 地鎮祭
第4章 人情
第5章 復命
第2篇 立春薫香
第6章 梅の初花
第7章 剛胆娘
第8章 スマート
第3篇 暁山の妖雲
第9章 善幻非志
第10章 添書
第11章 水呑同志
第12章 お客さん
第13章 胸の轟
第14章 大妨言
第15章 彗星
第4篇 鷹魅糞倒
第16章 魔法使
第17章 五身玉
第18章 毒酸
第19章 神丹
第20章 山彦
余白歌
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霊界物語
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真善美愛(第49~60巻)
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<<< 剛胆娘
(B)
(N)
善幻非志 >>>
第八章 スマート〔一二八二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻
篇:
第2篇 立春薫香
よみ(新仮名遣い):
りっしゅんくんこう
章:
第8章 スマート
よみ(新仮名遣い):
すまーと
通し章番号:
1282
口述日:
1923(大正12)年01月18日(旧12月2日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年11月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
六と八が怖気づいてぶるぶる震えながら夜を過ごしていると、一本橋の向こうから提灯を下げて杢助がやってくるのが見えた。六と八は、恐ろしい剛胆なことを言って野宿に熟睡している初稚姫は、本物の姫ではなく、化け物が化けているのではないかと杢助に訴えた。
杢助と六と八のやり取りの中、初稚姫はやにわに旅支度を整えて起き上がり、斎苑館の総務として仕える父・杢助が、神務を忘れてわが子を気にかけて出てくるはずがないと言い残し、夜中にもかかわらずすたすたと進んで行ってしまった。
初稚姫は河鹿峠の坂口の岩に腰かけて休みながら、昨夜の杢助、六、八三人のことを不審に考えていた。そこへ三人がやってきて、杢助は言い残したことがあるから追いかけてきたのだ、と話しかけた。
初稚姫は、旅立ちにあたってわが子を気にかけて追いかけてくるような卑怯な父は持っていないときっぱり答えた。そして杢助に化けているのは、自分を邪道に導こうとする妖怪だろうと言い放った。
六と八はこれを聞いて、杢助を疑い始めた。杢助は初稚姫、六、八に対して怒ったが、初稚姫が天の数歌を歌いあげるとたちまち、唐獅子の正体を現した。
初稚姫は平然として天津祝詞を奏上し始めた。唐獅子が初稚姫にかみつこうとしたとき、後ろの方から山犬が現れ、疾風のように唐獅子に飛びついた。唐獅子は一目散に逃げて行き、山犬はその後を追跡して行った。
初稚姫は神様の試にあって及第したようだと喜び、驚いて倒れていた六と八に、館に帰って自分の無事を杢助に報告せよと告げ、足早に河鹿峠を登って行った。
初稚姫が峠を登って行くと、先ほどの猛犬が尾を振りながら駆けてきて後をついてきた。姫が坂の頂上で休息すると、猛犬も前にうずくまって尾を振っている。
初稚姫は犬の働きに感じ、スマートと名を与えて家来となし、ハルナの都までついてくるようにと告げた。初稚姫は犬を抱いていたわり、スマートはワンワンと鳴きながら尾を振り、感謝の意を表している。
初稚姫はスマートを得て心強くなり、宣伝歌を歌いながら河鹿峠の南坂を下って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-06-10 15:45:31
OBC :
rm4908
愛善世界社版:
111頁
八幡書店版:
第9輯 72頁
修補版:
校定版:
114頁
普及版:
51頁
初版:
ページ備考:
001
夜風
(
よかぜ
)
は
寒
(
さむ
)
く
吹雪
(
ふぶき
)
さへ
002
まじりて
淋
(
さび
)
しき
草枕
(
くさまくら
)
003
露
(
つゆ
)
の
蓐
(
しとね
)
をやすやすと
004
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
眠
(
ねむ
)
れ
共
(
ども
)
005
臆病風
(
おくびやうかぜ
)
に
誘
(
さそ
)
はれし
006
六公
(
ろくこう
)
八公
(
はちこう
)
両人
(
りやうにん
)
は
007
歯
(
は
)
の
根
(
ね
)
も
合
(
あ
)
はずガタガタと
008
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
き
抱
(
いだ
)
き
合
(
あ
)
ひ
009
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けゆくを
一時
(
ひととき
)
も
010
早
(
はや
)
かれかしと
祈
(
いの
)
りつつ
011
宙
(
ちう
)
に
飛
(
と
)
ばした
魂
(
たましひ
)
の
012
据
(
す
)
ゑ
所
(
どころ
)
なき
憐
(
あは
)
れさよ
013
暗
(
やみ
)
はますます
深
(
ふか
)
くして
014
天津空
(
あまつそら
)
には
星
(
ほし
)
さへも
015
見
(
み
)
えぬ
許
(
ばか
)
りの
黒雲
(
くろくも
)
に
016
包
(
つつ
)
まれ
胸
(
むね
)
はドキドキと
017
戦
(
をのの
)
く
折
(
をり
)
しも
時置師
(
ときおかし
)
018
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
家
(
いへ
)
の
紋
(
もん
)
019
付
(
つ
)
けた
提灯
(
ちようちん
)
ブラブラと
020
一本橋
(
いつぽんばし
)
の
向方
(
むかふ
)
より
021
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
足早
(
あしばや
)
に
022
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るを
両人
(
りやうにん
)
は
023
眺
(
なが
)
めてハツと
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
024
これぞ
全
(
まつた
)
く
時置師
(
ときおかし
)
025
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
のわれわれを
026
救
(
すく
)
はむ
為
(
ため
)
に
遥々
(
はるばる
)
と
027
イソの
館
(
やかた
)
を
立出
(
たちい
)
でて
028
来
(
きた
)
らせ
玉
(
たま
)
ふものならむ
029
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な
有様
(
ありさま
)
を
030
見
(
み
)
せまいものと
両人
(
りやうにん
)
は
031
俄
(
にはか
)
にムツクと
立上
(
たちあが
)
り
032
近寄
(
ちかよ
)
る
提灯
(
ちようちん
)
打
(
うち
)
ながめ
033
貴方
(
あなた
)
は
杢助
(
もくすけ
)
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
か
034
六公
(
ろくこう
)
八公
(
はちこう
)
で
厶
(
ござ
)
ります
035
仰
(
あふ
)
せに
従
(
したが
)
ひ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
036
度胸
(
どきよう
)
を
甘
(
うま
)
くためさむと
037
茲
(
ここ
)
まで
進
(
すす
)
み
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
038
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
似
(
に
)
たれ
共
(
ども
)
039
まだ
十七
(
じふしち
)
の
初心娘
(
うぶむすめ
)
040
柄
(
がら
)
に
合
(
あ
)
はないことを
言
(
い
)
ふ
041
此奴
(
こいつ
)
ア、テツキリ
妖怪
(
えうくわい
)
奴
(
め
)
042
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
をば
043
うまうま
喰
(
くら
)
ひ
吾々
(
われわれ
)
を
044
騙
(
だま
)
さむ
為
(
ため
)
に
姫
(
ひめ
)
となり
045
ここにグウスウ
八兵衛
(
はちべゑ
)
と
046
大胆
(
だいたん
)
至極
(
しごく
)
に
寝
(
ね
)
てゐます
047
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
の
048
お
出
(
い
)
でありしを
幸
(
さいはひ
)
に
049
姫
(
ひめ
)
の
仇
(
かたき
)
を
吾々
(
われわれ
)
と
050
力
(
ちから
)
を
併
(
あは
)
せ
討
(
う
)
つてたべ
051
残念
(
ざんねん
)
至極
(
しごく
)
で
厶
(
ござ
)
います
052
私
(
わたし
)
もすでに
妖怪
(
えうくわい
)
の
053
餌食
(
ゑじき
)
たらむとせし
所
(
ところ
)
054
ウブスナ
山
(
やま
)
の
神徳
(
しんとく
)
で
055
貴方
(
あなた
)
を
茲
(
ここ
)
に
遣
(
つか
)
はして
056
一
(
ひと
)
つは
姫
(
ひめ
)
の
仇
(
あだ
)
を
討
(
う
)
ち
057
一
(
ひと
)
つは
家来
(
けらい
)
を
助
(
たす
)
けむと
058
お
越
(
こ
)
しなさつた
有難
(
ありがた
)
さ
059
早
(
はや
)
く
御
(
お
)
査
(
しら
)
べ
下
(
くだ
)
さんせ
060
それそれそこにあの
通
(
とほ
)
り
061
バツチヨ
笠
(
かさ
)
をばひつかぶり
062
グウグウ
鼾
(
いびき
)
をかいてゐる
063
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
の
化物
(
ばけもの
)
と
064
いふ
声
(
こゑ
)
さへも
慄
(
ふる
)
ひつつ
065
語
(
かた
)
れば
杢助
(
もくすけ
)
打笑
(
うちわら
)
ひ
066
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な
六
(
ろく
)
八
(
はち
)
よ
067
そも
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
化物
(
ばけもの
)
と
068
誠
(
まこと
)
のあるべき
筈
(
はず
)
がない
069
貴様
(
きさま
)
は
余程
(
よほど
)
卑怯者
(
ひけふもの
)
070
其
(
その
)
化物
(
ばけもの
)
はどこにゐる
071
早
(
はや
)
く
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
せよと
072
一声
(
ひとこゑ
)
呶鳴
(
どな
)
れば
両人
(
りやうにん
)
は
073
ハイハイ
只今
(
ただいま
)
それ
其処
(
そこ
)
に
074
鼾
(
いびき
)
をかいて
居
(
を
)
りまする
075
貴方
(
あなた
)
は
先
(
さき
)
へ
御
(
ご
)
出張
(
しゆつちやう
)
076
遊
(
あそ
)
ばしませ
腰
(
こし
)
の
骨
(
ほね
)
077
何
(
なん
)
とはなしに
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
し
078
私
(
わたし
)
の
命令
(
めいれい
)
を
聞
(
き
)
きませぬ
079
自由
(
じいう
)
の
身体
(
からだ
)
となつたなら
080
どんなことでも
聞
(
き
)
きませう
081
斯
(
か
)
かる
折
(
をり
)
しもムクムクと
082
笠
(
かさ
)
を
被
(
かぶ
)
つて
立上
(
たちあが
)
る
083
片方
(
かたへ
)
の
長
(
なが
)
き
芒原
(
すすきばら
)
084
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
優
(
やさ
)
しげに
085
三人
(
みたり
)
の
男
(
をとこ
)
に
打向
(
うちむか
)
ひ
086
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
087
何用
(
なによう
)
あつて
真夜中
(
まよなか
)
に
088
妾
(
わらは
)
が
跡
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ
来
(
く
)
る
089
六
(
ろく
)
、
八
(
はち
)
、
二人
(
ふたり
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
090
杢助
(
もくすけ
)
などと
佯
(
いつは
)
つて
091
ここに
来
(
きた
)
れる
可笑
(
をか
)
しさよ
092
そも
杢助
(
もくすけ
)
はイソ
館
(
やかた
)
093
総務
(
そうむ
)
の
役
(
やく
)
に
仕
(
つか
)
へたる
094
尊
(
たふと
)
き
司
(
つかさ
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
095
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
のことが
気
(
き
)
にかかり
096
神務
(
しんむ
)
を
忘
(
わす
)
れてはるばると
097
慕
(
した
)
ふて
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
向
(
むか
)
ふ
見
(
み
)
ず
098
左様
(
さやう
)
の
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らない
099
妾
(
わらは
)
は
親
(
おや
)
は
持
(
も
)
ちませぬ
100
正
(
まさ
)
しく
悪魔
(
あくま
)
の
変化
(
へんげ
)
して
101
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
行手
(
ゆくて
)
を
妨害
(
ばうがい
)
し
102
神務
(
しんむ
)
を
遂行
(
すゐかう
)
させまいと
103
企
(
たく
)
みしものと
覚
(
おぼ
)
えたり
104
早々
(
さうさう
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れよ
105
妾
(
わらは
)
は
初稚姫
(
はつわかひめの
)
神
(
かみ
)
106
汝
(
なんぢ
)
に
構
(
かま
)
つてゐる
暇
(
ひま
)
は
107
なければ
是
(
これ
)
より
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
108
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
トツクリと
109
善
(
よ
)
からぬ
相談
(
さうだん
)
するがよい
110
お
先
(
さき
)
へ
御免
(
ごめん
)
と
云
(
い
)
ひながら
111
蓑
(
みの
)
を
被
(
かぶ
)
つて
杖
(
つゑ
)
をつき
112
スタスタ
進
(
すす
)
み
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
113
杢助
(
もくすけ
)
後
(
あと
)
より
声
(
こゑ
)
をかけ
114
オーイオーイと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
115
六
(
ろく
)
、
八
(
はち
)
、
二人
(
ふたり
)
を
従
(
したが
)
へて
116
姫
(
ひめ
)
の
後
(
あと
)
をば
追
(
お
)
ひ
来
(
きた
)
る
117
初稚姫
(
はつわかひめ
)
はトントンと
118
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
119
神歌
(
しんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
120
夜
(
よ
)
はホノボノと
明
(
あ
)
けそめて
121
あたりも
明
(
あか
)
くなりぬれば
122
道
(
みち
)
の
片方
(
かたへ
)
の
岩石
(
がんせき
)
に
123
腰
(
こし
)
うちかけて
息
(
いき
)
休
(
やす
)
め
124
少時
(
しばし
)
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れにける。
125
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
坂口
(
さかぐち
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
腰
(
こし
)
うちかけ、
126
初稚姫
『
昨夜
(
さくや
)
現
(
あら
)
はれし
怪物
(
くわいぶつ
)
は
合点
(
がつてん
)
のゆかぬ
代物
(
しろもの
)
だナア。
127
六
(
ろく
)
、
128
八
(
はち
)
両人
(
りやうにん
)
と
言
(
い
)
ひ、
129
父
(
ちち
)
の
杢助
(
もくすけ
)
と
云
(
い
)
ひ、
130
合点
(
がつてん
)
のゆかぬことだなア。
131
妾
(
わらは
)
が
首途
(
かどで
)
の
時
(
とき
)
、
132
あの
様
(
やう
)
に
素気
(
すげ
)
なく
云
(
い
)
つた
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
が、
133
妾
(
わらは
)
を
慕
(
した
)
つて
追
(
お
)
つかける
位
(
くらゐ
)
ならば、
134
モウ
少
(
すこ
)
し
優
(
やさ
)
しい
言葉
(
ことば
)
をかけさうな
筈
(
はず
)
。
135
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の、
136
妾
(
わたし
)
が
心
(
こころ
)
を
試
(
ため
)
さむ
為
(
ため
)
の
御
(
お
)
計
(
はか
)
らひだらうか、
137
何
(
なに
)
につけても
合点
(
がつてん
)
のゆかぬことだなア』
138
と
差俯
(
さしうつむ
)
いて
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れてゐる。
139
そこへ
突然
(
とつぜん
)
現
(
あら
)
はれたのは
杢助
(
もくすけ
)
、
140
六
(
ろく
)
、
141
八
(
はち
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
であつた。
142
杢助
(
もくすけ
)
『オイ
其方
(
そなた
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
だないか、
143
なぜ
父
(
ちち
)
があれ
程
(
ほど
)
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めるのに
待
(
ま
)
つてくれないのだ。
144
一言
(
いちごん
)
お
前
(
まへ
)
の
旅立
(
たびだち
)
について
言
(
い
)
つておきたいことがあつた。
145
それを
忘
(
わす
)
れたに
仍
(
よ
)
つて、
146
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけ、
147
言
(
い
)
ひきかしに
来
(
き
)
たのだ』
148
初稚
(
はつわか
)
『
妾
(
わらは
)
はお
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
な
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な
親
(
おや
)
は
持
(
も
)
ちませぬ。
149
能
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
150
貴方
(
あなた
)
が
果
(
はた
)
して
杢助
(
もくすけ
)
とやら
言
(
い
)
ふお
方
(
かた
)
ならば、
151
なぜイソの
館
(
やかた
)
に
専心
(
せんしん
)
お
仕
(
つか
)
へなされませぬか。
152
何事
(
なにごと
)
も
一身
(
いつしん
)
一家
(
いつか
)
を
捧
(
ささ
)
げて
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へるとお
誓
(
ちか
)
ひなさつた
杢助
(
もくすけ
)
ぢやありませぬか。
153
ヤツパリ
貴方
(
あなた
)
も
年
(
とし
)
が
老
(
よ
)
つたとみえて
耄碌
(
まうろく
)
しましたねえ。
154
妾
(
わらは
)
はイソの
館
(
やかた
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
より
直接
(
ちよくせつ
)
使命
(
しめい
)
を
受
(
う
)
けた、
155
年
(
とし
)
は
若
(
わか
)
うても、
156
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
で
厶
(
ござ
)
います。
157
最早
(
もはや
)
悪魔
(
あくま
)
の
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
つた
上
(
うへ
)
は、
158
立派
(
りつぱ
)
に
使命
(
しめい
)
を
果
(
はた
)
す
迄
(
まで
)
、
159
杢助
(
もくすけ
)
さま
何
(
なん
)
かに
用
(
よう
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
160
早
(
はや
)
く
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りなさいませ。
161
併
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
さまぢやありますまい。
162
其
(
その
)
耳
(
みみ
)
は
何
(
なん
)
ですか、
163
獣
(
けもの
)
の
様
(
やう
)
にペラペラと
動
(
うご
)
いているぢやありませぬか。
164
初稚姫
(
はつわかひめ
)
がハルナの
都
(
みやこ
)
に
参
(
まゐ
)
ると
聞
(
き
)
き、
165
手
(
て
)
をまはして
出発
(
しゆつぱつ
)
の
間際
(
まぎわ
)
に
妾
(
わらは
)
を
邪道
(
じやだう
)
に
引入
(
ひきい
)
れ、
166
目的
(
もくてき
)
の
妨
(
さまた
)
げを
致
(
いた
)
さうとするのだらう。
167
いかなる
魔術
(
まじゆつ
)
も
初稚姫
(
はつわかひめ
)
に
対
(
たい
)
しては
一切
(
いつさい
)
駄目
(
だめ
)
ですよ。
168
ホヽヽヽヽ、
169
マアマア
能
(
よ
)
くも
巧
(
たくみ
)
に
化
(
ば
)
けましたねえ』
170
杢助
(
もくすけ
)
『
其方
(
そなた
)
は
父
(
ちち
)
に
向
(
むか
)
つて
何
(
なん
)
といふ
無礼
(
ぶれい
)
なことを
言
(
い
)
ふのだ。
171
これ
見
(
み
)
よ、
172
何程
(
なにほど
)
耳
(
みみ
)
が
動
(
うご
)
いても、
173
これは
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いてゐるからだ。
174
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
けば
耳
(
みみ
)
許
(
ばか
)
りか、
175
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
でさへも、
176
大木
(
たいぼく
)
でも
動
(
うご
)
くだないか、
177
流石
(
さすが
)
は
子供
(
こども
)
だなア。
178
親
(
おや
)
の
心
(
こころ
)
は
子
(
こ
)
知
(
し
)
らずとはお
前
(
まへ
)
のことだ。
179
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
は
何程
(
なにほど
)
冷淡
(
れいたん
)
に
見
(
み
)
せて
居
(
を
)
つても、
180
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
には
愛
(
あい
)
の
熱涙
(
ねつるゐ
)
が
沸
(
わ
)
き
立
(
た
)
つてゐるのだ。
181
左様
(
さやう
)
なことをいはずに
人間
(
にんげん
)
は
老少
(
らうせう
)
不定
(
ふぢやう
)
だ。
182
不惜
(
ふじやく
)
身命
(
しんめい
)
的
(
てき
)
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
するお
前
(
まへ
)
、
183
これが
別
(
わか
)
れにならうも
知
(
し
)
れぬと
思
(
おも
)
ひ、
184
態々
(
わざわざ
)
ここ
迄
(
まで
)
、
185
夜
(
よ
)
の
目
(
め
)
も
寝
(
ね
)
ずに、
186
御用
(
ごよう
)
の
隙
(
すき
)
を
考
(
かんが
)
へて
追
(
お
)
つかけて
来
(
き
)
たのだ。
187
親
(
おや
)
の
心
(
こころ
)
もチツとは
推量
(
すゐりやう
)
してくれ、
188
初稚姫
(
はつわかひめ
)
殿
(
どの
)
』
189
初稚
(
はつわか
)
『ホツホヽヽヽ、
190
うまい
事
(
こと
)
お
化
(
ば
)
けなさいますなア。
191
妾
(
わらは
)
は
二人
(
ふたり
)
の
父
(
ちち
)
は
持
(
も
)
ちませぬ、
192
いい
加減
(
かげん
)
にお
帰
(
かへ
)
りなさい。
193
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
駄目
(
だめ
)
ですよ』
194
六
(
ろく
)
『もし
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
195
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
はさうすると
本真物
(
ほんまもの
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
196
初稚
(
はつわか
)
『
本真物
(
ほんまもの
)
か
贋物
(
にせもの
)
か、
197
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
から
足
(
あし
)
の
爪先
(
つまさき
)
迄
(
まで
)
、
198
能
(
よ
)
く
見
(
み
)
て
御覧
(
ごらん
)
』
199
八
(
はち
)
『オイ
六
(
ろく
)
、
200
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
り、
201
様子
(
やうす
)
が
変
(
へん
)
だぞ。
202
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
に
本当
(
ほんたう
)
に
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
てゐるが、
203
何
(
なん
)
となしに
腑
(
ふ
)
におちぬ
所
(
ところ
)
があるぢやないか』
204
六
(
ろく
)
『コヽコラ、
205
モヽ
杢助
(
もくすけ
)
のバヽ
化物
(
ばけもの
)
、
206
ドヽ
何
(
ど
)
うぢや、
207
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
眼力
(
がんりき
)
には
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
したか』
208
杢助
(
もくすけ
)
『コラ
六
(
ろく
)
、
209
主人
(
しゆじん
)
に
向
(
むか
)
つて
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
な、
210
化物扱
(
ばけものあつか
)
ひに
致
(
いた
)
すことがあるか、
211
八
(
はち
)
、
212
貴様
(
きさま
)
も
六
(
ろく
)
と
同
(
おな
)
じやうな
奴
(
やつ
)
だ。
213
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
暇
(
ひま
)
を
遣
(
つか
)
はすから、
214
モウ、
215
イソ
館
(
やかた
)
へ
帰
(
かへ
)
るには
及
(
およ
)
ばぬツ』
216
六
(
ろく
)
『
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
化物
(
ばけもの
)
の
乾児
(
こぶん
)
になつてたまるかい。
217
のう
八公
(
はちこう
)
、
218
さうではないか』
219
八
(
はち
)
『さう
共
(
とも
)
さう
共
(
とも
)
、
220
本当
(
ほんたう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
だ。
221
こんな
耳
(
みみ
)
の
動
(
うご
)
く
奴
(
やつ
)
の
家来
(
けらい
)
になつてたまるかい。
222
コラ
化州
(
ばけしう
)
、
223
何時
(
なんどき
)
だと
考
(
かんが
)
へてる、
224
モウ
夜明
(
よあ
)
けだないか。
225
可
(
い
)
いかげんスツ
込
(
こ
)
まぬかい』
226
杢助
(
もくすけ
)
『アツハヽヽヽ
六
(
ろく
)
、
227
八
(
はち
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
228
若
(
もし
)
も
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
本当
(
ほんたう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
であつたら
何
(
なん
)
と
致
(
いた
)
す』
229
六
(
ろく
)
『ナアニ、
230
本当
(
ほんたう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
であつた
所
(
ところ
)
が
構
(
かま
)
ふものかい。
231
暇
(
ひま
)
を
貰
(
もら
)
つたら
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
つ
)
いて、
232
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
でもお
供
(
とも
)
するのだ。
233
のう
八公
(
はちこう
)
』
234
初稚
(
はつわか
)
『
六
(
ろく
)
、
235
八
(
はち
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
236
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りなさい、
237
妾
(
わらは
)
は
飽迄
(
あくまで
)
一人旅
(
ひとりたび
)
でゆかねばならぬ。
238
今
(
いま
)
に
此
(
この
)
化物
(
ばけもの
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はし
往生
(
わうじやう
)
さして
見
(
み
)
せるから、
239
お
前
(
まへ
)
さまは
早
(
はや
)
く
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りなさい』
240
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
241
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
唱
(
とな
)
へ
上
(
あ
)
げた。
242
杢助
(
もくすけ
)
は
忽
(
たちま
)
ち、
243
牛
(
うし
)
の
如
(
ごと
)
き
怪物
(
くわいぶつ
)
となり、
244
(杢助)
『ウー』
245
と
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
て、
246
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
247
牙
(
きば
)
を
剥
(
む
)
き
出
(
だ
)
し、
248
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
目
(
め
)
がけて
飛
(
と
)
びかからむとし、
249
前足
(
まへあし
)
の
爪
(
つめ
)
を
逆立
(
さかだ
)
て、
250
大地
(
だいち
)
の
土
(
つち
)
をかいて、
251
爪
(
つめ
)
を
尖
(
とが
)
らしてゐる。
252
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
253
六
(
ろく
)
、
254
八
(
はち
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
此
(
この
)
姿
(
すがた
)
をみて、
255
顔色
(
がんしよく
)
土
(
つち
)
の
如
(
ごと
)
くに
変
(
かは
)
り、
256
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
打倒
(
うちたふ
)
れ、
257
チウの
声
(
こゑ
)
も
得上
(
えあ
)
げず
慄
(
ふる
)
ふてゐる。
258
怪獣
(
くわいじう
)
の
顔
(
かほ
)
をよくよくみれば、
259
巨大
(
きよだい
)
なる
唐獅子
(
からしし
)
である。
260
唐獅子
(
からしし
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
をグツと
睨
(
ね
)
めつけ、
261
猛然
(
まうぜん
)
として
咬
(
か
)
みつかむとする
一刹那
(
いちせつな
)
、
262
後
(
うしろ
)
の
方
(
かた
)
より『ウー』と
又
(
また
)
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
、
263
何者
(
なにもの
)
ならむと、
264
後
(
あと
)
ふり
返
(
かへ
)
れば、
265
逞
(
たくま
)
しい
大
(
おほ
)
きい
山犬
(
やまいぬ
)
である。
266
山犬
(
やまいぬ
)
は
大獅子
(
おほしし
)
に
向
(
むか
)
つて、
267
疾風
(
しつぷう
)
の
如
(
ごと
)
く
飛
(
と
)
び
付
(
つ
)
いた。
268
獅子
(
しし
)
は
一目散
(
いちもくさん
)
に
細
(
ほそ
)
くなつて、
269
逃
(
に
)
げてゆく、
270
山犬
(
やまいぬ
)
は
獅子
(
しし
)
の
跡
(
あと
)
を
追跡
(
つゐせき
)
する。
271
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
つて
打笑
(
うちわら
)
ひ、
272
初稚姫
『ホツホヽヽ、
273
始
(
はじ
)
めての
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
試
(
ため
)
しに
会
(
あ
)
うて、
274
お
蔭
(
かげ
)
で
及第
(
きふだい
)
した
様
(
やう
)
だ。
275
ヤア
六
(
ろく
)
、
276
八
(
はち
)
、
277
最早
(
もはや
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ、
278
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
立帰
(
たちかへ
)
り、
279
父
(
ちち
)
の
杢助
(
もくすけ
)
に、
280
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
遊
(
あそ
)
ばせと
伝
(
つた
)
へてくれ、
281
左様
(
さやう
)
ならば』
282
といふより
早
(
はや
)
く、
283
足早
(
あしばや
)
に
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
284
六
(
ろく
)
、
285
八
(
はち
)
両人
(
りやうにん
)
はヤツと
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でおろし、
286
神言
(
かみごと
)
を
称
(
とな
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
287
杢助館
(
もくすけやかた
)
を
指
(
さ
)
して、
288
又
(
また
)
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れては
一大事
(
いちだいじ
)
と
急
(
いそ
)
ぎ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
289
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
290
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
291
以前
(
いぜん
)
の
猛犬
(
まうけん
)
慌
(
あわ
)
ただしく
駆来
(
かけきた
)
り、
292
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
前
(
まへ
)
になり、
293
後
(
あと
)
になり
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つて、
294
嬉
(
うれ
)
しさうにワンワンとなき
乍
(
なが
)
ら、
295
駆
(
か
)
けめぐる。
296
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
漸
(
やうや
)
く
坂
(
さか
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
し、
297
四方
(
よも
)
の
景色
(
けしき
)
を
眺
(
なが
)
め
乍
(
なが
)
ら、
298
少時
(
しばし
)
腰
(
こし
)
を
卸
(
おろ
)
して
休息
(
きうそく
)
した。
299
以前
(
いぜん
)
の
猛犬
(
まうけん
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
蹲
(
うづく
)
まり、
300
耳
(
みみ
)
を
垂
(
た
)
れ
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
くし、
301
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つてゐる。
302
初稚姫
『
其方
(
そなた
)
はどこの
山犬
(
やまいぬ
)
か
知
(
し
)
らぬが、
303
随分
(
ずいぶん
)
敏活
(
びんくわつ
)
な
働
(
はたら
)
きをする
者
(
もの
)
だ。
304
これから
妾
(
わらは
)
の
家来
(
けらい
)
として
上
(
あ
)
げよう。
305
ハルナの
都
(
みやこ
)
まで
従
(
つ
)
いて
来
(
く
)
るのだよ。
306
而
(
さう
)
してお
前
(
まへ
)
には「スマート」といふ
名
(
な
)
を
上
(
あ
)
げませう』
307
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
308
猛犬
(
まうけん
)
を
抱
(
かか
)
へ、
309
首筋
(
くびすぢ
)
を
撫
(
な
)
でなどして
労
(
いた
)
はつてゐる。
310
スマートは
頻
(
しき
)
りに
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
り、
311
ワンワンと
叫
(
さけ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
312
感謝
(
かんしや
)
の
意
(
い
)
を
表
(
へう
)
してゐる。
313
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
此
(
この
)
犬
(
いぬ
)
を
得
(
え
)
て
非常
(
ひじやう
)
に
心強
(
こころづよ
)
くなり、
314
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
315
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
南坂
(
みなみざか
)
を
下
(
くだ
)
りつつ
歌
(
うた
)
ふ。
316
初稚姫
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
317
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
318
悪魔
(
あくま
)
の
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
319
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
魂
(
たましひ
)
を
320
査
(
しら
)
べむ
為
(
ため
)
か
父
(
ちち
)
となり
321
或
(
あるひ
)
は
巨大
(
きよだい
)
な
獅子
(
しし
)
となり
322
妾
(
わらは
)
が
首途
(
かどで
)
を
遮
(
さへぎ
)
りて
323
所存
(
しよぞん
)
の
程
(
ほど
)
を
調
(
しら
)
べしか
324
但
(
ただ
)
しは
誠
(
まこと
)
の
曲神
(
まがかみ
)
か
325
心
(
こころ
)
に
解
(
げ
)
せぬ
事
(
こと
)
あれど
326
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
一身
(
いつしん
)
を
327
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
上
(
うへ
)
からは
328
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
あるも
329
初心
(
しよしん
)
を
曲
(
ま
)
げずドシドシと
330
人
(
ひと
)
にたよらず
皇神
(
すめかみ
)
の
331
神言
(
みこと
)
のままに
真心
(
まごころ
)
を
332
尽
(
つく
)
して
往
(
ゆ
)
かむ
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
333
仮令
(
たとへ
)
曲津
(
まがつ
)
は
行先
(
ゆくさき
)
に
334
さやりて
仇
(
あだ
)
をなすとても
335
吾
(
われ
)
には
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りあり
336
今
(
いま
)
又
(
また
)
神
(
かみ
)
はスマートを
337
吾
(
わが
)
行先
(
ゆくさき
)
の
供
(
とも
)
となし
338
与
(
あた
)
へ
玉
(
たま
)
ひし
尊
(
たふと
)
さよ
339
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
と
共
(
とも
)
にあり
340
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
341
いかでか
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
342
大和心
(
やまとごころ
)
をふり
起
(
おこ
)
し
343
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
344
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
345
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
346
誠
(
まこと
)
をあらはし
奉
(
たてまつ
)
り
347
五六七
(
みろく
)
の
御代
(
みよ
)
を
詳細
(
まつぶさ
)
に
348
普
(
あまね
)
く
地上
(
ちじやう
)
に
建設
(
けんせつ
)
し
349
三五教
(
あななひけう
)
の
神力
(
しんりき
)
を
350
現
(
あら
)
はし
奉
(
まつ
)
る
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
351
進
(
すす
)
みゆくこそ
嬉
(
うれ
)
しけれ
352
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
353
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ』
354
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
355
(
大正一二・一・一八
旧一一・一二・二
松村真澄
録)
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(B)
(N)
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