霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 善幻(ぜんげん)非志(びし)〔一二八三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻 篇:第3篇 暁山の妖雲 よみ(新仮名遣い):ぎょうざんのよううん
章:第9章 善幻非志 よみ(新仮名遣い):ぜんげんびし 通し章番号:1283
口述日:1923(大正12)年01月18日(旧12月2日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年11月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
祠の森の神殿は、珍彦と静子の夫婦が神司となって奉仕していた。二日目の夜中ごろから娘の楓に神がかりが始まり、数多の信者は生き神が現れたと喜んで、神殿はにわかに神勅を乞う参拝者であふれかえった。
しかし楓の神がかりはあまり高等なものではなかった。バラモン教から改心したイル、イク、サール、ヨル、テル、ハルの六人は、楓の神がかりに盲従して神務に奉仕していた。そこへ、中婆の宣伝使が現れ、神徳が立っている神殿に伺いに来たと訪ねてきた。受付にいたヨルは、楓姫に日の出神様がかかって大変な神徳が立っていると答えた。
この婆は高姫であった。高姫は東助を慕って斎苑館にやってきたが叱り飛ばされ、なんとかして自分の腕前を見せて東助の気を引こうと、信仰がぐらつきだした。そして祠の森にあまり徳の高い信者が仕えて居ないことを知って、一旗揚げようとやってきた。
高姫は楓に憑いた神霊を怒鳴りたてて追い出してしまい、その弁舌で珍彦、静子らを掌中に丸め込んでしまった。そして朝から晩まで脱線だらけの神懸りをはじめ、ふたたび筆先を書き始めた。
そもそも、精霊と人間の談話は危険至極のため、神界ではこれを許し給わぬことになっている。人間は精霊の容れものであるが、精霊は人間の肉体の中に入っても、そのことを知ることはできないようになっている。しかし鋭敏な精霊は、肉体と自問自答することで、自分が人間の肉体の中にいることを悟ることができる。
精霊には正守護神と副守護神がある。副守護神は人間を憎悪する。ゆえに、もし副守護神が自分が人間の肉体の中に入っていることを知ると、その霊魂と肉体を亡ぼそうと企むのである。
高姫はこの副守護神に左右され、精霊を神徳無辺の日の出神と固く信じ、なすがままに使われてしまっていた。
副守護神は高姫の肉体をすぐに亡ぼさず、むしろこれを使って自らの思惑を遂行し、大神の神業を妨げ、地獄の団体をますます発達させようと願っている。精霊は、霊界のことは相応に見ることができるが、自然界のことを見ることができないから高姫の肉体を使うのである。
もし神が、人間と精霊が交信することを許してしまうと、精霊は人間の存在を知ってしまい実に危険である。人が深く宗教上のことを考え、もっぱらこれにのみ心を注いでしまうと、自分が思惟したことを現実的に見てしまう。このような人間は、精霊の話を聞きはじめてしまう。
すべて宗教上のことは、心の中で考えるとともに世間における諸々の事物の用によってこれを修正するべきなのである。もし修正できないときは、宗教上の事物がその人の内分に入り込む。そして精霊がそこに居を定め、霊魂をまったく占領してしまうのである。
空想に富み、熱情に盛んなる高姫は、いかなる精霊の声をも聖き霊なりと信じ、精霊の言うがままに盲従してでたらめを並べられ、宇宙唯一の尊い神を表したように得意満面になって礼拝し、これをあまねく世に伝えようとしている。
高姫もまた副守護神に幾度となく虚偽を教えられ嘘を書かされても、神が気を引いたとかご都合だとか自分の改心が足りないとか理屈をつけて少しも疑わず、ますます有難く信じ込む。悪霊に魅せられた人間はこんな具合になるものである。
この日の出神と自称している副守護神は、自分自身は八岐大蛇の悪霊であり、金毛九尾の悪孤であった。しかし他の精霊と変わっている点は、五六七の世が出てくることを知り、いつまでも悪を立て通すわけにはいかないことを知っていた。
そこで、心の底から改心し、昔から世を乱してきた自分の悪を悔い改めて誠の神の片腕となって働くのであると考えていた。そして、悪に強かったものはまた善にも強いはずだ、ゆえに自分の言うことは一切が霊的であり神的であり、かつ善の究極である、と信じているのである。
高姫はその精霊を、義理天上日の出神であり、悪神が改心して誠に立ち返った尊い神だと信じて崇拝し、いいように使われてしまっていた。
精霊は自分が人間の体に入っていることを感知していた。人間もまた精霊が体にいることを感知していながら、かえってこれを自分の便宜となし、愛するのである。精霊に迷わされる者は愚直な者か、貪欲な者か、精神に欠陥のある者であることを記憶しなければならない。
現今の大本にも、高姫類似のてん狂者や強欲人間が集まり随喜の涙をこぼし、地獄の門戸を開こうと努めている者があるのは、仁慈の神の目から見て忍び難いところである。しかし悪霊の肉体と霊魂を占有された者は、容易に神の聖言を受け入れることはできないものである。
神の道を信仰する者は、この消息を十分に理解して、邪神に欺かれないように注意することを望む次第である。悪の精霊は決して悪相をもって現れず、表面もっともらしい善を言い、集まってきた人間に対してあるいは脅し、あるいは賞揚し、霊の因縁とか先祖の因縁とか言ってごまかし、人を知らず知らずのうちに邪道に導こうとするものである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-06-19 16:02:22 OBC :rm4909
愛善世界社版:125頁 八幡書店版:第9輯 77頁 修補版: 校定版:129頁 普及版:57頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 第四篇 神霊世界 > 第五章 精霊
001 (ほこら)(もり)神殿(しんでん)珍彦(うづひこ)002静子(しづこ)夫婦(ふうふ)神司(かむつかさ)となり、003(あさ)(ゆふ)なに奉仕(ほうし)する(こと)となつた。004(しか)して二日目(ふつかめ)夜中(よなか)(ごろ)から(むすめ)(かへで)神懸(かむがかり)(はじ)まり、005数多(あまた)信者(しんじや)生神(いきがみ)(あら)はれたりと打喜(うちよろこ)び、006八尋殿(やひろどの)(あつ)まり(きた)りて、007神勅(しんちよく)()ふもの絡繹(らくえき)として絶間(たえま)なく、008(いま)(まで)森閑(しんかん)としてゐた(この)谷間(たにま)(じつ)(ひと)(やま)(きづ)き、009(にはか)山中(さんちう)都会(とくわい)(ごと)くになつて()た。010(かへで)神懸(かむがかり)(あま)高等(かうとう)なものではなかつた。011されど神理(しんり)(くら)人々(ひとびと)は、012(かみ)(うつ)つて直接(ちよくせつ)一切(いつさい)(をし)ふると()いて、013救世主(きうせいしゆ)出現(しゆつげん)(ごと)くに尊敬(そんけい)し、014(うれ)(なみだ)をたらし(なが)ら、015老若(らうにやく)男女(なんによ)(きら)ひなく、016ここに(あつ)まり(きた)り、017楓姫(かへでひめ)(わか)(むすめ)(くち)よりいろいろの指図(さしづ)()けて、018随喜(ずゐき)渇仰(かつがう)するのであつた。
019 バラモン(ぐみ)のイル、020イク、021サール、022ヨル、023テル、024ハルの(ろく)(にん)何事(なにごと)(この)楓姫(かへでひめ)神懸(かむがかり)のまにまに盲従(まうじゆう)して、025(すべ)ての神務(しんむ)忠実(ちうじつ)奉仕(ほうし)してゐた。026ここへ(あら)はれて()たのは、027中婆(ちうば)アさまの宣伝使(せんでんし)であつた。028()宣伝使(せんでんし)(わざ)素人(しろうと)らしく(よそほ)ひ、029玄関口(げんくわんぐち)()つて、
030(ばば)一寸(ちよつと)(うかが)ひます、031(この)(ほこら)(もり)三五教(あななひけう)()神殿(しんでん)()きましたが、032大変(たいへん)()神徳(しんとく)()つて結構(けつこう)さまで(ござ)います。033どうか(わたし)(ひと)(うかが)つて(いただ)きたいので(ござ)いますが、034世話(せわ)になれるでせうか』
035 受付(うけつけ)(ひか)へてゐたヨルは()軽々(かるがる)しく、
036ヨル『ハイ、037(なん)なとお(うかが)ひなされませ、038それはそれは(えら)(かみ)さまですよ。039つい(この)(あひだ)から神懸(かむがかり)になられまして、040いろいろの()託宣(たくせん)(あそ)ばし、041(なに)(うかが)つても百発(ひやくぱつ)百中(ひやくちゆう)042それ(ゆゑ)(この)(とほ)大勢(おほぜい)参拝者(さんぱいしや)(あさ)から(ばん)まで(ひき)つづき、043(この)険阻(けんそ)山奥(やまおく)(もの)ともせずに(まゐ)られます。044(なん)神力(しんりき)()ふものは(えら)いものでせう。045(まへ)さまも余程(よつぽど)苦労人(くらうにん)()えますが、046サアズツと(おく)(とほ)つて、047大神(おほかみ)(さま)直接(ちよくせつ)(うかが)ひなさいませ』
048(ばば)『ハイ有難(ありがた)う、049(さう)して大神(おほかみ)(さま)とは何方(どなた)(ござ)います』
050ヨル『ハイ、051楓姫(かへでひめ)(さま)日出(ひのでの)(かみ)(さま)がお(うつ)(あそ)ばし、052それはそれは(えら)()神徳(しんとく)(ござ)います』
053(ばば)『ナアニ、054日出(ひのでの)(かみ)(さま)? あ、055それは(みみ)よりのお(はなし)だ。056それぢや(ひと)(うかが)つて(いただ)きませう』
057ヨル『オイ、058イク、059(おく)審神室(さにはしつ)(まで)案内(あんない)して(くだ)さい』
060イク『サア、061貴方(あなた)062大神(おほかみ)(さま)居間(ゐま)(まで)()案内(あんない)(いた)しませう』
063一人(ひとり)(ばば)楓姫(かへでひめ)居間(ゐま)案内(あんない)した。064楓姫(かへでひめ)白衣(びやくい)()(はかま)穿(うが)ち、065(いま)神霊(しんれい)降臨(かうりん)真最中(まつさいちう)であつた。066(さう)して二三(にさん)(にん)信徒(しんと)神勅(しんちよく)()ひ、067指図(さしづ)()け、068有難(ありがた)がつて(はな)をすすつてゐる。069各自(めいめい)(うかが)ひがすみ、070(せき)退(しりぞ)くと、071あとにはイクと(ばば)二人(ふたり)072(ばば)叮嚀(ていねい)両手(りやうて)をつき、
073(ばば)一寸(ちよつと)日出(ひのでの)(かみ)(さま)にお(うかが)(いた)しますが、074(わたし)(なん)()(もの)御存(ごぞん)じで(ござ)いませうなア』
075神主(かむぬし)(その)(はう)(かみ)(こころ)むるのか、076無礼(ぶれい)千万(せんばん)な、077(さが)りをらう……』
078(ばば)『コリヤ面白(おもしろ)い、079(この)(ばば)(なん)心得(こころえ)(ござ)る。080(だい)それた日出(ひのでの)(かみ)などと(まを)して、081(めくら)(つんぼ)(いつは)つても、082(この)(ばば)(いつは)(こと)出来(でき)ませぬぞや』
083神主(かむぬし)(しか)らば(なんぢ)(うたがひ)()(ため)()つてやらう。084(なんぢ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)生田(いくた)(もり)神司(かむつかさ)高姫(たかひめ)であらうがなア』
085(ばば)成程(なるほど)086高姫(たかひめ)間違(まちが)ひはない。087そんならお(まへ)さま、088それ(ほど)よく(わか)るなら、089(わし)(うかが)(こと)一々(いちいち)(こた)へて(くだ)さるであらうなア』
090神主(かむぬし)(その)(はう)はイソ(やかた)にまします、091教主(けうしゆ)代理(だいり)東野別(あづまのわけ)(あと)(した)ふて()た、092不心得(ふこころえ)(もの)であらうがな。093何程(なにほど)(その)(はう)一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつても、094東野別(あづまのわけ)見向(みむき)(いた)さぬぞや。095左様(さやう)(くさ)つた神柱(かむばしら)ではない(ほど)に、096チツと改心(かいしん)(いた)したがよからうぞ』
097高姫(たかひめ)『コレ、098楓姫(かへでひめ)さまお(まへ)は、099つい(この)(あひだ)まで(なん)にも()らずに()つて、100(にはか)にそんな神懸(かむがかり)(いた)しても駄目(だめ)ですよ。101(この)高姫(たかひめ)(あら)はれた以上(いじやう)は、102ドコドコまでも(しら)()げねばおかぬのだ。103義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)は、104ヘン、105すまぬが、106(この)高姫(たかひめ)(ござ)んすぞえ。107(まへ)なんぞに、108(けつ)して日出(ひのでの)(かみ)(うつ)つた(おぼえ)はありませぬ、109そんな山子(やまこ)(いた)すと、110(まこと)日出(ひのでの)(かみ)大勢(おほぜい)(まへ)(つら)(さら)しますぞや。111(まへ)山口(やまぐち)(もり)大蛇(をろち)(みたま)だらう。112悪神(あくがみ)にのり(うつ)られ、113(うし)(とき)(まゐ)りなんどして、114(ひと)(のろ)(ころ)さうとした悪霊(あくれい)が、115(まへ)(からだ)(のこ)つて()つて、116日出(ひのでの)(かみ)()使(つか)ひ、117一旗(ひとはた)()げようと(いた)して()るのだらう。118サア、119()うだ、120高姫(たかひめ)審神者(さには)(たい)返答(へんたふ)をなさるか。121メツタに返答(へんたふ)出来(でき)よまい』
122 楓姫(かへでひめ)高姫(たかひめ)(きび)しく審神(さには)され、123呶鳴(どな)りつけられたので、124まだ(とし)もゆかぬ乙女(をとめ)(こと)とて吃驚(びつくり)して(しま)ひ、125憑霊(ひようれい)逸早(いちはや)脱出(だつしゆつ)して(しま)つた。126楓姫(かへでひめ)高姫(たかひめ)(かほ)()て、127打慄(うちふる)ひ、
128楓姫(かへでひめ)『あゝ(こは)小母(をば)さま』
129()きゐるのであつた。130イクは(この)有様(ありさま)()て、131ズツと感心(かんしん)して(しま)ひ、
132イク『コレハ コレハ、133高姫(たかひめ)(さま)134()神徳(しんとく)には(かん)()りました。135(うへ)には(うへ)のあるもので(ござ)いますな』
136(しき)りに(くび)をかたげて賞讃(しやうさん)してゐる。137高姫(たかひめ)はイソ(やかた)(いた)り、138東助(とうすけ)にヤツと面会(めんくわい)し、139手厳(てきび)しく(しか)()ばされ、140馬鹿(ばか)らしくてたまらず、141されど(なん)とかして、142東助(とうすけ)往生(わうじやう)づくめにしてでも、143一度(いちど)旧交(きふかう)(あたた)めねば承知(しようち)せぬ、144それに()いては、145東助(とうすけ)羽振(はぶり)()かしてゐるイソ(やかた)(なん)とかして(こま)らせ、146自分(じぶん)腕前(うでまへ)()せて、147東助(とうすけ)(かぶと)をぬがせ、148(わが)目的(もくてき)(たつ)せねばおかぬと、149折角(せつかく)改心(かいしん)してゐた、150(みたま)基礎(どだい)(また)もやグラつき()し、151(ほこら)(もり)神殿(しんでん)素人(しろうと)(ばか)りが(つか)へてゐると()いたを(さいは)ひ、152信者(しんじや)()()み、153一同(いちどう)往生(わうじやう)させ、154(ここ)自分(じぶん)一旗(ひとはた)()げむと(たく)みつつ、155やつて()たのである。156高姫(たかひめ)(また)もや日出(ひのでの)(かみ)自称(じしよう)する病気(びやうき)再発(さいはつ)し、157(しき)りに弁舌(べんぜつ)をふりまはして、158珍彦(うづひこ)159静子(しづこ)(その)(ほか)一同(いちどう)(わが)掌中(しやうちう)にうまく(まる)めて(しま)つた。160(さう)して(あさ)から(ばん)(まで)脱線(だつせん)だらけの神憑(かむがかり)(はじ)め、161(ふたた)筆先(ふでさき)をかき(はじ)めた。162(じつ)厄介(やくかい)至極(しごく)代物(しろもの)である。
163 折角(せつかく)(をさ)まつてゐた自問(じもん)自答(じたふ)神憑(かむがか)りは再発(さいはつ)して、164(しき)りに(くび)()り、165精霊(せいれい)談話(だんわ)(はじ)め、166それを金釘流(かなくぎりう)文字(もじ)(しき)りに()(はじ)めた。167すべて精霊(せいれい)人間(にんげん)との談話(だんわ)危険(きけん)至極(しごく)なれば神界(しんかい)にては(これ)(ゆる)(たま)はぬ(こと)になつてゐる。168(しか)(なが)(この)高姫(たかひめ)一種(いつしゆ)神経病(しんけいびやう)(しや)であつて、169時々(ときどき)精霊(せいれい)耳元(みみもと)(ささや)き、170(あるひ)(くち)をかつて(くだ)らぬ神勅(しんちよく)(つた)ふる厄介者(やつかいもの)である。
171 (すべ)人間(にんげん)精霊(せいれい)容器(いれもの)であつて、172(この)精霊(せいれい)善悪(ぜんあく)両方面(りやうはうめん)人格(じんかく)(そな)へてゐるものである。173(しか)して精霊(せいれい)(かか)()つた(とき)は、174(その)人間(にんげん)肉体(にくたい)自己(じこ)肉体(にくたい)(しん)じ、175(また)(その)記憶(きおく)想念(さうねん)言語(げんご)(まで)も、176精霊(せいれい)自身(じしん)(もの)(しん)じてゐるのである。177(しか)(なが)鋭敏(えいびん)なる精霊(せいれい)肉体(にくたい)自問(じもん)自答(じたふ)する(とき)に、178精霊(せいれい)自身(じしん)(おい)て、179自分(じぶん)(ある)肉体(にくたい)(なか)這入(はい)つてゐるものなる(こと)(さと)るのである。180(しか)して精霊(せいれい)には(せい)守護神(しゆごじん)(ふく)守護神(しゆごじん)とがあり、181(ふく)守護神(しゆごじん)なる(もの)人間(にんげん)憎悪(ぞうを)する(こと)(もつと)劇甚(げきじん)にして、182(その)霊魂(れいこん)肉体(にくたい)とを(あは)せて(これ)(ほろ)(つく)さむ(こと)(ねが)ふものである。183(しか)してかかる(こと)(はなはだ)しく妄想(まうさう)(ふけ)(もの)(あひだ)(おこな)はるる所以(ゆゑん)(その)妄信者(まうしんじや)をして、184自然(しぜん)(てき)人間(にんげん)に、185本来(ほんらい)所属(しよぞく)せる歓楽(くわんらく)より(みづか)(とほ)ざからしめむ(ため)である。186(この)高姫(たかひめ)(みづか)精霊(せいれい)左右(さいう)され、187(しか)して精霊(せいれい)神徳(しんとく)無辺(むへん)日出(ひのでの)(かみ)(かた)(しん)じ、188(その)頤使(いし)(あま)んじ、189(その)(げん)一々(いちいち)信従(しんじゆう)し、190(かつ)筆先(ふでさき)精霊(せいれい)のなすが(まま)()(あら)はすが(ゆゑ)に、191精霊(せいれい)(けつ)して高姫(たかひめ)肉体(にくたい)憎悪(ぞうを)(また)滅尽(めつじん)せむとせないのである。192(むし)(その)肉体(にくたい)使(つか)つて、193精霊(せいれい)思惑(おもわく)遂行(すゐかう)し、194大神(おほかみ)神業(しんげふ)(さまた)げ、195地獄(ぢごく)団体(だんたい)益々(ますます)発達(はつたつ)せしめむと(ねが)ふてゐるのである。196(しか)高姫(たかひめ)自身(じしん)()れに憑依(ひようい)せる精霊(せいれい)至粋(しすゐ)至純(しじゆん)なる日出(ひのでの)(かみ)(しん)()り、197一廉(いつかど)大神(おほかみ)神業(しんげふ)(つか)へてゐる(つも)りで()るから(たま)らないのである。198(しか)大神(おほかみ)時々(ときどき)精霊(せいれい)人間(にんげん)より()りはなし(たま)(こと)がある。199これは()精霊(せいれい)をして、200人間(にんげん)同伴(どうはん)せるを()らざらしめむが(ため)である。201(なん)となれば、202精霊(せいれい)なる(もの)は、203自己(じこ)以外(いぐわい)世界(せかい)あることを()らず、204(すなは)人間(にんげん)なる(もの)が、205(かれ)()以外(いぐわい)存在(そんざい)する(こと)()らないのである。206(ゆゑ)高姫(たかひめ)肉体(にくたい)(かか)つてゐる精霊(せいれい)()出神(でのかみ)(みづか)らも(しん)じ、207(また)高姫(たかひめ)肉体(にくたい)とは()らず、208(たふと)(ある)(しゆ)(かみ)言葉(ことば)(まじ)へてゐる(やう)(おも)つて()つたのである。209(また)肉体(にくたい)這入(はい)つてゐる(こと)(やうや)くにして(さと)ると(いへど)も、210高姫(たかひめ)(はう)(おい)(その)精霊(せいれい)悪神(あくがみ)()らず、211真正(しんせい)日出(ひのでの)(かみ)尊信(そんしん)してゐる以上(いじやう)は、212精霊(せいれい)は、213(けつ)して高姫(たかひめ)霊魂(れいこん)肉体(にくたい)(がい)(くは)へないのは(まへ)()べた(とほ)りである。214すべて精霊(せいれい)霊界(れいかい)(こと)自分(じぶん)霊相応(みたまさうおう)範囲内(はんゐない)(おい)()ることを()(ども)215自然界(しぜんかい)(すこ)しも()ることが出来(でき)ないのである。216()れは現実界(げんじつかい)人間(にんげん)霊界(れいかい)()ることが出来(でき)ないのと同様(どうやう)である。
217 (この)()()つて人間(にんげん)()精霊(せいれい)(もの)()(かへ)すを(かみ)(ゆる)(たま)(とき)は、218精霊(せいれい)自己(じこ)以外(いぐわい)人間(にんげん)あるを()るが(ゆゑ)に、219(じつ)危険(きけん)である。220(なか)には(ふか)宗教(しうけう)(じやう)(こと)(かんが)へ、221(もつぱ)(こころ)()れにのみ(そそ)(とき)は、222(その)(こころ)(うち)自分(じぶん)思惟(しゐ)する(ところ)現実(げんじつ)(てき)()(こと)がある。223(かく)(ごと)人間(にんげん)精霊(せいれい)(はなし)()(はじ)むるものである。
224 すべて宗教(しうけう)(こと)(なん)たるを()はず、225人間(にんげん)(こころ)(うち)より(かんが)へて、226世間(せけん)()ける諸々(もろもろ)事物(じぶつ)(よう)()つて、227(これ)修正(しうせい)せざる(とき)は、228(その)(こと)(その)(ひと)内分(ないぶん)()()んで、229精霊(せいれい)そこに(きよ)(さだ)め、230霊魂(れいこん)(まつた)占領(せんりやう)し、231()くして此処(ここ)在住(ざいぢゆう)する幾多(いくた)精霊(せいれい)頤使(いし)し、232(あるひ)圧迫(あつぱく)し、233(あるひ)放逐(はうちく)するに(いた)るものである。234高姫(たかひめ)(ごと)きは、235(じつ)(その)好適例(かうてきれい)である。
236 空想(くうさう)()み、237熱情(ねつじやう)(さかん)なる高姫(たかひめ)(つね)(その)()(ところ)精霊(せいれい)(なん)たるを()はず、238(ことごと)(これ)(もつ)(きよ)(れい)なりと(しん)じ、239精霊(せいれい)()ふが(まま)盲従(まうじゆう)して、240ヘグレ神社(じんしや)だとか、241末代(まつだい)()王天(わうてん)大神(おほかみ)だとか、242ユラリ(ひこ)だとか、243(あさひ)豊栄(とよさか)(のぼ)(ひめ)だとか、244出鱈目(でたらめ)()(なら)べられ、245宇宙(うちう)唯一(ゆゐいつ)(たふと)(かみ)(あら)はした(ごと)く、246得意(とくい)満面(まんめん)になつて、247(これ)尊敬(そんけい)し、248礼拝(れいはい)し、249(かつ)(その)妄言(まうげん)(しん)じて、250(あまね)(ひろ)()(つた)へむとしてゐるのである。251(かく)(ごと)諸精霊(しよせいれい)(その)(じつ)252(わづか)熱狂(ねつきやう)なる(ふく)守護神(しゆごじん)()ぎない(こと)()らず、253(また)(かく)(ごと)副守(ふくしゆ)虚偽(きよぎ)(もつ)真理(しんり)(かた)(しん)ずるものである。254(ゆゑ)高姫(たかひめ)(また)副守(ふくしゆ)幾度(いくど)となく虚偽(きよぎ)(をし)へられ、255(あるひ)見当外(けんたうはづ)れの(うそ)(ばか)りを()かされて、256万一(まんいち)(その)筆先(ふでさき)相違(さうゐ)した(とき)は、257(かみ)()をひいたのだとか、258()都合(つがふ)だとか、259自分(じぶん)改心(かいしん)()らぬ(ゆゑ)混線(こんせん)したのだとか、260いろいろの理窟(りくつ)をつけて(すこ)しも(うたが)はず、261益々(ますます)有難(ありがた)(しん)じてゐるのである。262悪霊(あくれい)()せられた人間(にんげん)はこんな具合(ぐあひ)になるものである。263(また)(かね)自分(じぶん)(をし)(みちび)き、264(その)(せつ)流入(りうにふ)する(ところ)人間(にんげん)を、265言葉(ことば)(たくみ)()きすすめ、266益々(ますます)(かた)(しん)ぜしめむとするものである。267(しか)して(つひ)には精霊(せいれい)肉体(にくたい)全部(ぜんぶ)占領(せんりやう)し、268()数多(あまた)(ひと)誑惑(きようわく)した(うへ)269(つひ)にいろいろと理窟(りくつ)をつけて、270悪事(あくじ)(をし)へ、271何事(なにごと)(かみ)都合(つがふ)だから、272(ただ)(わが)(げん)(したが)へ、273いひおきにも()きおきにもない、274根本(こつぽん)根本(こつぽん)歴史(れきし)以前(いぜん)(こと)だから、275智者(ちしや)学者(がくしや)何程(なにほど)きばつても(わか)るものでない、276(ただ)人間(にんげん)(まこと)(かみ)(まを)(こと)277日出(ひのでの)(かみ)調(しら)べた(こと)()くより(まこと)(わか)らぬものだ。278(ゆゑ)(この)筆先(ふでさき)をトコトン信用(しんよう)せよ……と(すす)めるのである。279()()(かみ)(しよう)してゐる副守(ふくしゆ)普通(ふつう)精霊(せいれい)とは(かは)つてゐる(てん)は、280自分(じぶん)八岐(やまた)大蛇(をろち)悪霊(あくれい)であり、281金毛(きんまう)九尾(きうび)悪狐(あくこ)であつた、282(しか)し、283五六七(みろく)()()()るに()いて、284何時(いつ)(まで)(あく)()(とほ)(わけ)には()かぬから、285(こころ)(そこ)から改心(かいしん)をし、286(むかし)から()(みだ)して()自分(じぶん)(あく)()(あらた)め、287(しか)して(まこと)(かみ)片腕(かたうで)となつて(はたら)くのであるから、288(あく)にも(つよ)かつたものは(また)(ぜん)にも(つよ)い、289(ゆゑ)自分(じぶん)()(こと)は、290一切(いつさい)霊的(れいてき)であり神的(しんてき)であり、291(かつ)(ぜん)究極(きうきよく)である……と(しん)じてゐるのである。292(ゆゑ)にかくの(ごと)精霊(せいれい)人間(にんげん)たる高姫(たかひめ)同伴(どうはん)往来(わうらい)するも、293(その)肉体(にくたい)(がい)する(こと)はない。
294 高姫(たかひめ)(その)精霊(せいれい)義理(ぎり)天上(てんじやう)日出(ひのでの)(かみ)(および)悪神(あくがみ)改心(かいしん)して(まこと)立返(たちかへ)つた(たふと)(かみ)(しん)じて、295(これ)崇拝(すうはい)し、296(その)頤使(いし)(あま)んずるが(ゆゑ)に、297精霊(せいれい)(また)人間(にんげん)(からだ)這入(はい)つてゐる(こと)感知(かんち)(なが)ら、298(かへつ)(これ)自分(じぶん)便宜(べんぎ)となし、299(あい)するのである。300(かく)(ごと)精霊(せいれい)(まよ)はさるる(もの)は、301愚直(ぐちよく)(もの)(あるひ)貪欲(どんよく)(もの)か、302精神(せいしん)欠陥(けつかん)のある人間(にんげん)であることを記憶(きおく)せねばならぬ。
303 現今(げんこん)大本(おほもと)内部(ないぶ)にも高姫(たかひめ)類似(るゐじ)狂態(きやうたい)(えん)ぜられ、304癲狂者(てんきやうしや)痴呆者(ちはうしや)強欲(がうよく)人間(にんげん)蝟集(ゐしふ)して、305随喜(ずゐき)(なみだ)をこぼし、306地獄(ぢごく)門戸(もんこ)(ひら)かむと(つと)めて()(もの)のあるのは(じつ)仁慈(じんじ)(かみ)()より()(しの)(がた)(ところ)である。307(しか)(なが)ら、308悪霊(あくれい)(その)全肉体(ぜんにくたい)霊魂(れいこん)占有(せんいう)された(もの)は、309容易(ようい)(かみ)聖言(せいげん)()()るる(こと)出来(でき)ないものである。310(かみ)(みち)信仰(しんかう)する(もの)は、311(この)(あひだ)消息(せうそく)充分(じゆうぶん)翫味(ぐわんみ)して、312邪神(じやしん)(あざむ)かれざる(やう)注意(ちゆうい)(のぞ)次第(しだい)である。313(また)(あく)精霊(せいれい)(けつ)して悪相(あくさう)(もつ)(あら)はれず、314表面(へうめん)(もつと)もらしき(ぜん)()ひ、315(かつ)(わが)膝下(しつか)(あつ)まり(きた)人間(にんげん)(たい)し、316(あるひ)()どし(あるひ)賞揚(しやうやう)し、317……(なんぢ)何々(なになに)(みたま)因縁(いんねん)があるとか、318大先祖(おほせんぞ)()うだとか、319中先祖(ちうせんぞ)(あく)(つく)して()たから、320(その)子孫(しそん)たる(なんぢ)が、321祖先(そせん)(ため)(この)(かみ)(めい)(ほう)じ、322充分(じゆうぶん)努力(どりよく)をせなくてはならぬ……なぞと()つて、323誤魔化(ごまくわ)し、324(ひと)邪道(じやだう)に、325()らず()らずの(あひだ)(みちび)かむとするものである。
326大正一二・一・一八 旧一一・一二・二 松村真澄録)
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