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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第21巻(申の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 千辛万苦
第1章 高春山
第2章 夢の懸橋
第3章 月休殿
第4章 砂利喰
第5章 言の疵
第2篇 是生滅法
第6章 小杉の森
第7章 誠の宝
第8章 津田の湖
第9章 改悟の酬
第3篇 男女共権
第10章 女権拡張
第11章 鬼娘
第12章 奇の女
第13章 夢の女
第14章 恩愛の涙
第4篇 反復無常
第15章 化地蔵
第16章 約束履行
第17章 酒の息
第18章 解決
余白歌
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霊界物語
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(B)
(N)
砂利喰 >>>
第三章
月休殿
(
げつきうでん
)
〔六七七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
篇:
第1篇 千辛万苦
よみ(新仮名遣い):
せんしんばんく
章:
第3章 月休殿
よみ(新仮名遣い):
げっきゅうでん
通し章番号:
677
口述日:
1922(大正11)年05月16日(旧04月20日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
三人は、梅照彦の館で晩餐を取り、主客四方山話にふけった。玉治別は、出発前夜に岩の橋が落ちるという大変な夢を見たために、高春山への道を変えたこと、高熊山の岩窟に参拝していくのが順当であると気づいたこと、を話した。
竜国別と国依別は、高春山に行く使命自体が、言依別命の密命であり、みだりに話すべきことではないと、玉治別に注意する。一同は口の軽さについて四方山話を繰り広げ、やがて寝につくことになった。
玉治別はすぐに寝入っていびきをかいてしまったが、国依別と竜国別の二人は寝付かれずに外に出て庭園を逍遥する。二人は月を眺めながら話をし、月宮殿の境内までやってきた。
二人は、お宮が古くて荒れていることを嘆く。国依別は、五六七の世になればこの宮が輝いて闇を照らし、高天原の霊国にある月宮殿のようになるのだが、真の徳が失せた世の中の姿がこのお宮に写されているのだ、と嘆く。
竜国別は、テンやイタチが住んでお宮を荒らしていることに、御神徳があれば、罰が当たるはずだと嘆く
すると、社の中から声がして、畜生は畜生だから罰を当てないのだ、と言う。そして二人に対して、畜生ならば罰を当てずに赦してやろう、しかし人間ならば即座に神罰を当ててやる、と返答を迫る。
二人は、畜生ではないのでそう言うわけにもいかず、しかし人間だと言うと神罰が恐ろしいので、何と答えようか相談している。社の声に脅かされて、ついに二人は畜生と人間が半分の身魂だと答えた。
すると社の中の声は、半身を引き抜いてやろう、と罰を言い渡した。二人はそろそろ、お宮の声が、田吾作の声に似ていることにきづき、怪しみ出す。二人が田吾作を呼びつけると、玉治別が社の中から出てきた。
三人は笑いながら梅照彦の館に帰って来た。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-02 01:11:57
OBC :
rm2103
愛善世界社版:
62頁
八幡書店版:
第4輯 287頁
修補版:
校定版:
65頁
普及版:
27頁
初版:
ページ備考:
001
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
002
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
003
国依別
(
くによりわけ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
珍
(
うづ
)
の
館
(
やかた
)
の
奥
(
おく
)
の
室
(
ま
)
に
打通
(
うちとほ
)
り、
004
梅照姫
(
うめてるひめ
)
が
調理
(
てうり
)
せし
晩餐
(
ばんさん
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
ち、
005
主客
(
しゆきやく
)
打
(
う
)
ち
解
(
と
)
けて
四方
(
よも
)
八方
(
やも
)
の
話
(
はなし
)
に
耽
(
ふけ
)
る。
006
梅照彦
(
うめてるひこ
)
『
最前
(
さいぜん
)
の
玉治別
(
たまはるわけ
)
様
(
さま
)
のお
歌
(
うた
)
に
依
(
よ
)
つて、
007
津
(
つ
)
の
国
(
くに
)
の
高春山
(
たかはるやま
)
へお
出
(
い
)
でになる
事
(
こと
)
を
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
008
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此方
(
こちら
)
から
御
(
お
)
出
(
い
)
でになるのは、
009
少
(
すこ
)
し
迂回
(
うくわい
)
ではありませぬか』
010
玉治別
『
少
(
すこ
)
しは
迂回
(
うくわい
)
ですが
是
(
これ
)
には
理由
(
わけ
)
があるのです。
011
実
(
じつ
)
は
福知山
(
ふくちやま
)
の
方面
(
はうめん
)
から
柏原
(
かいばら
)
を
通
(
とほ
)
り
鬼
(
おに
)
の
懸橋
(
かけはし
)
を
渡
(
わた
)
つて
参
(
まゐ
)
る
積
(
つも
)
りでしたが、
012
出発
(
しゆつぱつ
)
の
前夜
(
ぜんや
)
に
大変
(
たいへん
)
な
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
まして……それで
此方
(
こちら
)
へ
途
(
みち
)
を
変
(
か
)
へたのです。
013
さうして
玉照彦
(
たまてるひこ
)
様
(
さま
)
のお
出
(
で
)
ましになつた
高熊山
(
たかくまやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
を
拝
(
はい
)
して
行
(
ゆ
)
くのが
順当
(
じゆんたう
)
だと
気
(
き
)
がついたのです。
014
悪魔
(
あくま
)
に
対
(
たい
)
し
言霊戦
(
ことたません
)
を
開始
(
かいし
)
するのですから、
015
余程
(
よほど
)
修業
(
しうげふ
)
をして
参
(
まゐ
)
らねばなりませぬ。
016
高姫
(
たかひめ
)
、
017
黒姫
(
くろひめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
018
不覚
(
ふかく
)
にも
飛行船
(
ひかうせん
)
に
乗
(
の
)
つて
只
(
ただ
)
一息
(
ひといき
)
に
苦労
(
くらう
)
も
無
(
な
)
しに
高
(
たか
)
い
所
(
ところ
)
から
敵
(
てき
)
を
威喝
(
ゐかつ
)
しようと
思
(
おも
)
つて
出
(
で
)
たものですから、
019
三
(
さん
)
ケ
月
(
げつ
)
有余
(
いうよ
)
も
経
(
た
)
つた
今日
(
こんにち
)
何
(
なん
)
の
消息
(
せうそく
)
も
無
(
な
)
し、
020
それが
為
(
た
)
めに
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
が
我々
(
われわれ
)
を
密
(
ひそ
)
かにお
遣
(
つか
)
はしになるのです。
021
聖地
(
せいち
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
我々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
以外
(
いぐわい
)
、
022
誰
(
たれ
)
一人
(
ひとり
)
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
ないのです。
023
バラモン
教
(
けう
)
やアルプス
教
(
けう
)
の
間者
(
まはしもの
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
信者
(
しんじや
)
となつて
化込
(
ばけこ
)
んで
居
(
を
)
りますから、
024
うつかりした
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
はれないのです。
025
又
(
また
)
仮令
(
たとへ
)
異教
(
いけう
)
の
間者
(
まはしもの
)
が
居
(
を
)
らないにしても
幹部
(
かんぶ
)
の
連中
(
れんちう
)
や
信者
(
しんじや
)
に
知
(
し
)
らせますと、
026
直
(
すぐ
)
に
如何
(
どん
)
な
大切
(
たいせつ
)
の
事
(
こと
)
でも
喋
(
しやべ
)
つて
仕舞
(
しま
)
ひますから
困
(
こま
)
つたものですよ。
027
何故
(
なぜ
)
あれだけ
秘密
(
ひみつ
)
が
守
(
まも
)
れないのかと
不思議
(
ふしぎ
)
な
位
(
くらゐ
)
です。
028
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
外
(
ほか
)
に
誰
(
たれ
)
にも
言
(
い
)
ふなと
仰有
(
おつしや
)
つたのですから、
029
秘密
(
ひみつ
)
は
何処迄
(
どこまで
)
も
守
(
まも
)
らねばなりませぬからなア』
030
国依別
(
くによりわけ
)
『オイ、
031
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
032
お
前
(
まへ
)
は
幹部
(
かんぶ
)
が
喋舌
(
しやべ
)
ると
今
(
いま
)
言
(
い
)
つたが、
033
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
何
(
なに
)
も
言
(
い
)
はないのに、
034
お
前
(
まへ
)
は
斯
(
こ
)
んな
秘密
(
ひみつ
)
を
門前
(
かどさき
)
で
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
歌
(
うた
)
つたぢやないか。
035
猿
(
さる
)
の
尻笑
(
しりわら
)
ひと
言
(
い
)
ふのはお
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
だよ』
036
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ハヽヽヽヽ、
037
到頭
(
たうとう
)
秘密
(
ひみつ
)
が
曝
(
ば
)
れて
仕舞
(
しま
)
つたぢやないか。
038
「これは
秘密
(
ひみつ
)
だからお
前
(
まへ
)
さまより
外
(
ほか
)
には
言
(
い
)
はないから、
039
誰
(
たれ
)
にも
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるな」と
口止
(
くちど
)
めする。
040
聞
(
き
)
いた
人
(
ひと
)
は「
諾々
(
よしよし
)
決
(
けつ
)
して
言
(
い
)
はぬ」と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
041
又
(
また
)
次
(
つぎ
)
の
人
(
ひと
)
に「
此奴
(
こいつ
)
ア
秘密
(
ひみつ
)
だから
誰
(
たれ
)
にも
言
(
い
)
はれぬ。
042
お
前
(
まへ
)
だけに
言
(
い
)
つたのだから、
043
屹度
(
きつと
)
他言
(
たごん
)
はして
呉
(
く
)
れるな」と
口止
(
くちど
)
めする。
044
又
(
また
)
次
(
つぎ
)
から
次
(
つぎ
)
へと
其
(
その
)
通
(
とほ
)
り
繰返
(
くりかへ
)
されるものだ。
045
そして
一人
(
ひとり
)
より
言
(
い
)
はないと
言
(
い
)
つた
者
(
もの
)
が、
046
会
(
あ
)
ふ
人
(
ひと
)
毎
(
ごと
)
に
尋
(
たづ
)
ねもせぬのに「お
前
(
まへ
)
一人
(
ひとり
)
だけだ」と
言
(
い
)
つて、
047
終
(
しまひ
)
には
秘密
(
ひみつ
)
の
方
(
はう
)
が
拡
(
ひろ
)
がるものだ。
048
表向
(
おもてむき
)
広告
(
くわうこく
)
的
(
てき
)
に
言
(
い
)
つたのは
誰
(
たれ
)
も
耳
(
みみ
)
に
止
(
と
)
めないから
却
(
かへつ
)
て
拡
(
ひろ
)
まらないものだよ。
049
「お
前
(
まへ
)
一人
(
ひとり
)
と
定
(
さだ
)
めて
置
(
お
)
いて、
050
浮気
(
うはき
)
や
其
(
その
)
日
(
ひ
)
の
出来
(
でき
)
心
(
ごころ
)
」
式
(
しき
)
だから
困
(
こま
)
つたものだ。
051
なア
国依別
(
くによりわけ
)
』
052
国依別
(
くによりわけ
)
『そうだなア、
053
此
(
この
)
筆法
(
ひつぱふ
)
を
宣伝
(
せんでん
)
に
応用
(
おうよう
)
したら
如何
(
どう
)
でせう。
054
不言講
(
いはずかう
)
とか
言
(
い
)
つて「お
前
(
まへ
)
丈
(
だ
)
けに
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かしてやるのだから、
055
主人
(
しゆじん
)
にでも……
仮令
(
たとへ
)
我
(
わが
)
子
(
こ
)
にでも
女房
(
にようばう
)
にでも
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
はならぬ」と
口止
(
くちど
)
めをして
置
(
お
)
くと、
056
其
(
その
)
男
(
をとこ
)
は「
俺
(
おれ
)
は
身魂
(
みたま
)
が
立派
(
りつぱ
)
だから、
057
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
らぬ
事
(
こと
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
彼
(
かれ
)
の
口
(
くち
)
を
通
(
とほ
)
して
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さつたのだ」「
俺
(
おれ
)
の
身魂
(
みたま
)
は
立派
(
りつぱ
)
だから、
058
神慮
(
しんりよ
)
に
叶
(
かな
)
つて
居
(
を
)
るから、
059
斯
(
か
)
う
言
(
い
)
ふ
大切
(
たいせつ
)
な
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らして
貰
(
もら
)
へるのだ」と
思
(
おも
)
つて
自慢
(
じまん
)
相
(
さう
)
に
人々
(
ひとびと
)
に
秘密
(
ひみつ
)
々々
(
ひみつ
)
と
言
(
い
)
つては
喋
(
しやべ
)
り
散
(
ち
)
らす、
060
それが
却
(
かへつ
)
て
能
(
よ
)
く
拡
(
ひろ
)
まる
様
(
やう
)
なものだ。
061
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
も、
062
その
筆法
(
ひつぱふ
)
を
応用
(
おうよう
)
したら、
063
却
(
かへつ
)
て
良
(
い
)
いかも
知
(
し
)
れないぞ、
064
アハヽヽヽ』
065
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
然
(
しか
)
しそれは……さうとして、
066
梅照彦
(
うめてるひこ
)
さまはそんな
軽薄
(
けいはく
)
な
御
(
お
)
方
(
かた
)
ぢや
無
(
な
)
いから、
067
屹度
(
きつと
)
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
られるでせう』
068
梅照彦
(
うめてるひこ
)
『
私
(
わたくし
)
は
守
(
まも
)
る
積
(
つも
)
りですが、
069
女房
(
にようばう
)
や
下男
(
しもべ
)
が……
余
(
あま
)
り
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
仰有
(
おつしや
)
つたものだから……
全部
(
すつかり
)
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
りませう。
070
そいつア
何
(
ど
)
うも
請負
(
うけお
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬなア』
071
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だ。
072
何卒
(
どうぞ
)
成就
(
じやうじゆ
)
するまで
他
(
た
)
へ
洩
(
も
)
れない
様
(
やう
)
に……
喋舌
(
しやべ
)
られては
困
(
こま
)
るから……どうか
暫時
(
しばらく
)
奥
(
おく
)
さまと
下男
(
げなん
)
とは
座敷牢
(
ざしきらう
)
にでも
入
(
い
)
れて、
073
人
(
ひと
)
に
会
(
あ
)
はさない
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さいますまいかなア』
074
梅照姫
(
うめてるひめ
)
『オホヽヽヽ、
075
妾
(
わたし
)
は
滅多
(
めつた
)
に
言
(
い
)
ひませぬが、
076
貴方
(
あなた
)
言
(
い
)
はぬ
様
(
やう
)
になされませ。
077
屹度
(
きつと
)
道々
(
みちみち
)
秘密
(
ひみつ
)
を
開
(
あ
)
け
放
(
はな
)
しにして、
078
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
もみんな
仰有
(
おつしや
)
るでせう』
079
玉治別
(
たまはるわけ
)
『イヤイヤ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
080
余
(
あんま
)
りむかついたものですから、
081
つい
門口
(
かどぐち
)
で
脱線
(
だつせん
)
したのですよ』
082
梅照姫
(
うめてるひめ
)
『
余程
(
よほど
)
言霊
(
ことたま
)
鉄道
(
てつだう
)
の
敷設
(
ふせつ
)
工事
(
こうじ
)
が
請負
(
うけおひ
)
と
見
(
み
)
えて、
083
粗末
(
そまつ
)
な
事
(
こと
)
がしてあると
見
(
み
)
えてますなア、
084
ホヽヽヽヽ』
085
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
何分
(
なにぶん
)
宇都山
(
うづやま
)
村
(
むら
)
の
田吾作
(
たごさく
)
時代
(
じだい
)
には、
086
随分
(
ずゐぶん
)
狼狽者
(
あわてもの
)
の
大将
(
たいしやう
)
だといふ
評判
(
ひやうばん
)
でしたから、
087
矢張
(
やつぱり
)
三才児
(
みつご
)
の
癖
(
くせ
)
は
百歳
(
ひやく
)
迄
(
まで
)
とか
言
(
い
)
つて、
088
仕方
(
しかた
)
の
無
(
な
)
いものですワイ』
089
玉治別
(
たまはるわけ
)
『そんな
昔
(
むかし
)
の
事
(
こと
)
をさらけ
出
(
だ
)
して、
090
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
で
言
(
い
)
ふものぢやない。
091
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
092
私
(
わし
)
が
出立
(
しゆつたつ
)
の
際
(
さい
)
に「
何卒
(
どうぞ
)
誰
(
たれ
)
にも
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
宇都山
(
うづやま
)
村
(
むら
)
の
田吾作
(
たごさく
)
だと
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるな、
093
秘密
(
ひみつ
)
にして
下
(
くだ
)
さい」と
頼
(
たの
)
んだ
時
(
とき
)
「
俺
(
おれ
)
も
男
(
をとこ
)
だ、
094
ヨシ、
095
言
(
い
)
はぬと
云
(
い
)
つたら
首
(
くび
)
が
千切
(
ちぎ
)
れても
言
(
い
)
はない」と
言明
(
げんめい
)
し
乍
(
なが
)
ら、
096
三日
(
みつか
)
も
経
(
た
)
たぬ
間
(
うち
)
に
秘密
(
ひみつ
)
を
明
(
あか
)
すとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だい。
097
余
(
あんま
)
り
人
(
ひと
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものぢやありませぬぞ。
098
自分
(
じぶん
)
の
過失
(
あやまち
)
は
分
(
わか
)
らぬものと
見
(
み
)
えますわい』
099
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ヤア
此奴
(
こいつ
)
ア
縮尻
(
しくじ
)
つた。
100
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らお
前
(
まへ
)
が
田吾作
(
たごさく
)
だつたと
言
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
101
今回
(
こんくわい
)
の
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
に
齟齬
(
そご
)
を
来
(
きた
)
す
様
(
やう
)
な
大問題
(
だいもんだい
)
ぢや
無
(
な
)
いから……マア
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
るのだなア』
102
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
だと
云
(
い
)
つて
秘密
(
ひみつ
)
を
洩
(
も
)
らしても
良
(
い
)
いのですか。
103
小
(
ちひ
)
さい
事
(
こと
)
を
洩
(
も
)
らすやうな
人
(
ひと
)
は、
104
矢張
(
やつぱり
)
大事
(
だいじ
)
を
洩
(
も
)
らすものですよ。
105
蟻穴
(
ぎけつ
)
堤防
(
ていばう
)
を
崩
(
くづ
)
すとか
言
(
い
)
つて、
106
極微細
(
ごくびさい
)
な
事
(
こと
)
から
大失敗
(
だいしつぱい
)
を
演
(
えん
)
ずるものだ。
107
如何
(
どう
)
ですか』
108
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ヤア
大変
(
たいへん
)
な
速射砲
(
そくしやはう
)
を
向
(
む
)
けられて……イヤもう
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
109
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
屹度
(
きつと
)
慎
(
つつし
)
みませう』
110
梅照彦
(
うめてるひこ
)
『
皆
(
みな
)
さま、
111
お
疲労
(
くたびれ
)
でせうから、
112
もうお
寝
(
やす
)
みなさいませ』
113
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
攻撃
(
こうげき
)
計
(
ばか
)
り
受
(
う
)
けて
居
(
を
)
つても
詮
(
つま
)
らない。
114
ア、
115
お
迎
(
むか
)
ひが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
だ。
116
アーアツ』
117
と
口
(
くち
)
の
引裂
(
ひきさ
)
ける
様
(
やう
)
な
欠伸
(
あくび
)
をなし、
118
目
(
め
)
を
擦
(
こす
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
119
梅照姫
(
うめてるひめ
)
『サア、
120
お
寝
(
やす
)
みなさいませ。
121
奥
(
おく
)
の
室
(
ま
)
に
寝床
(
ねま
)
が
敷
(
し
)
いて
御座
(
ござ
)
いますから』
122
玉治別
(
たまはるわけ
)
は、
123
玉治別
『
皆
(
みな
)
さま、
124
お
先
(
さき
)
へ』
125
と
奥
(
おく
)
の
室
(
ま
)
に
入
(
い
)
るや
否
(
いな
)
や、
126
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
き
鼾
(
いびき
)
をかいて
他愛
(
たあい
)
もなく
寝入
(
ねい
)
つて
了
(
しま
)
ふ。
127
二人
(
ふたり
)
は
続
(
つづ
)
いて、
128
竜国別、国依別
『
左様
(
さやう
)
なれば
寝
(
やす
)
ませて
頂
(
いただ
)
きませう』
129
と
奥
(
おく
)
の
室
(
ま
)
に
入
(
い
)
る。
130
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
粥
(
かゆ
)
を
煮
(
に
)
る
大
(
おほ
)
きな
鼾
(
いびき
)
が
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
つて
二人
(
ふたり
)
とも
寝
(
ね
)
つかれず、
131
そつと
裏口
(
うらぐち
)
を
開
(
あ
)
けて、
132
月
(
つき
)
を
賞
(
ほ
)
め
乍
(
なが
)
ら
庭園
(
ていえん
)
を
逍遥
(
せうえう
)
してゐる。
133
竜国別
(
たつくにわけ
)
『アヽ
佳
(
い
)
い
月
(
つき
)
だな。
134
秋
(
あき
)
の
月
(
つき
)
も
佳
(
い
)
いが、
135
冬
(
ふゆ
)
の
月
(
つき
)
も
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
綺麗
(
きれい
)
な
様
(
やう
)
だ。
136
あの
月
(
つき
)
の
中
(
なか
)
に
猿
(
さる
)
と
兎
(
うさぎ
)
が
餅
(
もち
)
を
搗
(
つ
)
いて
居
(
を
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
137
一
(
ひと
)
つ
我々
(
われわれ
)
に
搗落
(
つきおと
)
して
呉
(
く
)
れさうなものだなア』
138
国依別
(
くによりわけ
)
『アハヽヽヽ、
139
八日日
(
やうかび
)
が
来
(
き
)
たら
落
(
おと
)
して
呉
(
く
)
れますワイ』
140
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
卯月
(
うづき
)
八日
(
やうか
)
、
141
花
(
はな
)
より
団子
(
だんご
)
と
言
(
い
)
つて、
142
あれや
餅
(
もち
)
ぢやない、
143
団子
(
だんご
)
ぢや』
144
国依別
(
くによりわけ
)
『
団子
(
だんご
)
でも
餅
(
もち
)
でも、
145
矢張
(
やつぱり
)
搗
(
つ
)
かねばならぬよ』
146
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
団子
(
だんご
)
は
月
(
つき
)
が
落
(
おと
)
すのぢや
無
(
な
)
い。
147
此方
(
こちら
)
から
搗
(
つ
)
いて
上
(
あ
)
げるのだよ。
148
竹
(
たけ
)
の
先
(
さき
)
に
躑躅
(
つつじ
)
の
花
(
はな
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
括
(
くく
)
つてな……』
149
国依別
(
くによりわけ
)
『その
上
(
あ
)
げた
団子
(
だんご
)
を
揺
(
ゆ
)
すつて
落
(
おと
)
して
喰
(
く
)
つて
呉
(
く
)
れるのだ。
150
十五
(
じふご
)
の
月
(
つき
)
は
望月
(
もちづき
)
(
餅搗
(
もちつき
)
)と
云
(
い
)
ふから、
151
屹度
(
きつと
)
十五
(
じふご
)
日
(
にち
)
になれば
餅搗
(
もちつき
)
するに
違
(
ちが
)
ひない』
152
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
良
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
洒落
(
しやれ
)
て
置
(
お
)
かぬか。
153
お
月
(
つき
)
さまに
恥
(
はづ
)
かしいぞよ』
154
国依別
(
くによりわけ
)
『
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
開
(
ひら
)
く
我々
(
われわれ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
155
何
(
なに
)
……
月
(
つき
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
する
事
(
こと
)
があらうかい。
156
子
(
こ
)
がお
母
(
か
)
アさまになんぞお
呉
(
く
)
れと
言
(
い
)
つて、
157
駄々
(
だだ
)
と
団子
(
だんご
)
をこねるやうな
心餅
(
こころもち
)
で
居
(
を
)
るのだよ、
158
アハヽヽヽ』
159
竜国別
(
たつくにわけ
)
『あのお
月
(
つき
)
さまの
顔
(
かほ
)
には
痘痕
(
あばた
)
が
出来
(
でき
)
て
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
160
円満
(
ゑんまん
)
清朗
(
せいろう
)
、
161
月
(
つき
)
の
如
(
ごと
)
しと
言
(
い
)
ふけれど、
162
余
(
あんま
)
りあの
痘痕面
(
あばたづら
)
では
立派
(
りつぱ
)
でも
無
(
な
)
い
様
(
やう
)
だ。
163
月
(
つき
)
は
玉兎
(
ぎよくと
)
と
云
(
い
)
ふからには、
164
ドコか
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
円
(
まる
)
い
御
(
ご
)
面相
(
めんさう
)
に
似
(
に
)
た
所
(
ところ
)
がある
様
(
やう
)
ぢや
無
(
な
)
いか』
165
国依別
(
くによりわけ
)
『
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
面
(
つら
)
の
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
えてるのは、
166
矢張
(
やつぱり
)
あれは
地球
(
ちきう
)
の
影
(
かげ
)
が
映
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
167
白
(
しろ
)
い
所
(
ところ
)
は
水
(
みづ
)
、
168
黒
(
くろ
)
い
所
(
とこ
)
は
陸地
(
りくち
)
だ。
169
天体学
(
てんたいがく
)
の
事
(
こと
)
なら、
170
何
(
なん
)
でも
俺
(
おれ
)
に
尋
(
たづ
)
ねたら
聞
(
き
)
かしてやらう、
171
オホン』
172
竜国別
(
たつくにわけ
)
『アハヽヽヽ、
173
瑞月
(
ずいげつ
)
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
の
第四
(
だいよん
)
巻
(
くわん
)
を
読
(
よ
)
んだのだらう』
174
国依別
(
くによりわけ
)
『そんな
本
(
ほん
)
が
何処
(
どこ
)
にあるのだ』
175
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
三十五万
(
さんじふごまん
)
年
(
ねん
)
の
未来
(
みらい
)
に
活版刷
(
くわつぱんずり
)
で
天声社
(
てんせいしや
)
から
発行
(
はつかう
)
せられた
単行本
(
たんかうぼん
)
だ。
176
それに
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
177
貴様
(
きさま
)
はまだ
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
いのだなア。
178
あれだけ
名高
(
なだか
)
い
名著
(
めいちよ
)
を
知
(
し
)
らないとは
余程
(
よほど
)
時代
(
じだい
)
遅
(
おく
)
れだ。
179
それでも
宣伝使
(
せんでんし
)
だからなア』
180
国依別
(
くによりわけ
)
『
未来
(
みらい
)
の
著述
(
ちよじゆつ
)
は
見
(
み
)
ても
見
(
み
)
ぬ
顔
(
かほ
)
をして
居
(
を
)
るものだ。
181
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
開
(
ひら
)
けて
来
(
く
)
ると
種々
(
いろいろ
)
の
学者
(
がくしや
)
とやら、
182
役者
(
やくしや
)
とやらが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
183
屁理屈
(
へりくつ
)
を
言
(
い
)
つて
飯食
(
めしく
)
ふ
種
(
たね
)
にする
奴
(
やつ
)
があるから、
184
……それを
思
(
おも
)
うと
俺
(
おれ
)
も
愛想
(
あいさう
)
が
月
(
つき
)
さまだよ。
185
まア
現在
(
げんざい
)
の
事
(
こと
)
でさへも
分
(
わか
)
らないのに、
186
未来
(
みらい
)
の
事
(
こと
)
までも
研究
(
けんきう
)
は
廃
(
や
)
めて
置
(
お
)
かうかい。
187
三五教
(
あななひけう
)
の
其
(
その
)
時代
(
じだい
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
でさへも、
188
読
(
よ
)
んで
居
(
ゐ
)
ないものがある
位
(
くらゐ
)
だからなア』
189
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
未来
(
みらい
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
無謀
(
むぼう
)
なものだなア。
190
しかし
大分
(
だいぶ
)
に
夜露
(
よつゆ
)
を
浴
(
あ
)
びた
様
(
やう
)
だが、
191
もう
徐々
(
そろそろ
)
帰
(
かへ
)
つて
寝床
(
ねま
)
に
横
(
よこた
)
はらうぢやないか』
192
国依別
(
くによりわけ
)
『
俺
(
おれ
)
はもう
少時
(
しばらく
)
散歩
(
さんぽ
)
する。
193
却
(
かへつ
)
て
一人
(
ひとり
)
の
方
(
はう
)
が
都合
(
つがふ
)
が
好
(
い
)
いから……お
前
(
まへ
)
は
先
(
さき
)
へ
寝
(
ね
)
たが
宜
(
よ
)
からう。
194
又
(
また
)
肝腎
(
かんじん
)
の
時
(
とき
)
になつて
眠
(
ね
)
むたがると
困
(
こま
)
るからなア』
195
竜国別
(
たつくにわけ
)
『そんならお
先
(
さき
)
へ
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
る。
196
お
前
(
まへ
)
は、
197
ゆつくりお
月
(
つき
)
さまとオツキ
合
(
あ
)
ひ
話
(
ばなし
)
でもするが
良
(
よ
)
いわい。
198
近
(
ちか
)
い
所
(
とこ
)
に
御座
(
ござ
)
るからよく
聞
(
きこ
)
えるだらう』
199
国依別
(
くによりわけ
)
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
200
お
月様
(
つきさま
)
の
分霊
(
ぶんれい
)
が……これ
見
(
み
)
い、
201
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り……
草
(
くさ
)
の
上
(
うへ
)
にも
玉
(
たま
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
いて
御座
(
ござ
)
る。
202
貴様
(
きさま
)
の
鬚
(
ひげ
)
にも
沢山
(
たくさん
)
に
天降
(
あまくだ
)
つて
御座
(
ござ
)
るぢやないか。
203
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
威徳
(
ゐとく
)
は
斯
(
こ
)
んなものだ。
204
貴様
(
きさま
)
はお
月様
(
つきさま
)
は
只
(
ただ
)
御
(
ご
)
一体
(
いつたい
)
で
大空
(
おほぞら
)
ばつかりに
居
(
を
)
られると
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうだが、
205
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
弥勒
(
みろく
)
様
(
さま
)
だから、
206
草
(
くさ
)
の
片葉
(
かきは
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
を
降
(
くだ
)
して、
207
輝
(
かがや
)
き
給
(
たま
)
ふではないか』
208
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
成
(
な
)
る
程
(
ほど
)
、
209
さう
言
(
い
)
へば……そうだ。
210
是
(
これ
)
だけは
国
(
くに
)
さまの
嘘月
(
うそつき
)
でも
間誤月
(
まごつき
)
でもない、
211
併
(
しか
)
し
雨露月
(
うろつき
)
だなア』
212
国依別
(
くによりわけ
)
『
分
(
わか
)
つたか、
213
「
月
(
つき
)
二
(
ふた
)
つ
担
(
にな
)
うて
帰
(
かへ
)
る
水
(
みづ
)
貰
(
もら
)
ひ」と
云
(
い
)
つて、
214
一荷
(
いつか
)
の
桶水
(
をけみづ
)
の
中
(
なか
)
にも
御
(
ご
)
丁寧
(
ていねい
)
に
一
(
ひと
)
ツづつお
月様
(
つきさま
)
は
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
して
下
(
くだ
)
さるのだ』
215
竜国別
(
たつくにわけ
)
『よく
分
(
わか
)
りました。
216
モウ
之
(
これ
)
位
(
くらゐ
)
で
御
(
ご
)
中止
(
ちゆうし
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
217
国依別
(
くによりわけ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
218
此処
(
ここ
)
は
月
(
つき
)
の
名所
(
めいしよ
)
、
219
月宮殿
(
げつきうでん
)
の
御
(
ご
)
境内
(
けいだい
)
だ。
220
これ
丈
(
だ
)
け
結構
(
けつこう
)
な
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
拝
(
をが
)
んで
此
(
この
)
儘
(
まま
)
寝
(
ね
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか。
221
サア
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
月宮殿
(
げつきうでん
)
へ
参拝
(
さんぱい
)
して、
222
その
上
(
うへ
)
で
寝
(
やす
)
まうぢやないか』
223
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ウン、
224
それもそうだ。
225
そんなら
一
(
ひと
)
つ
是
(
これ
)
からお
参詣
(
まゐり
)
して
来
(
こ
)
うか。
226
天
(
てん
)
には
寒月
(
かんげつ
)
、
227
地
(
ち
)
には
迂露月
(
うろつき
)
の
影
(
かげ
)
ふるふだ、
228
アハヽヽヽ』
229
両人
『サア
行
(
ゆ
)
かう』
230
と
両人
(
りやうにん
)
は
鬱蒼
(
こんもり
)
とした
森影
(
もりかげ
)
に
建
(
た
)
てられたお
宮
(
みや
)
の
前
(
まへ
)
にすたすたと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
231
二人
(
ふたり
)
は
月
(
つき
)
の
森
(
もり
)
の
月宮殿
(
げつきうでん
)
の
階段
(
かいだん
)
を
登
(
のぼ
)
りながら、
232
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
結構
(
けつこう
)
な
月
(
つき
)
だが、
233
斯
(
か
)
う
鬱蒼
(
こんもり
)
と
樹木
(
じゆもく
)
が
茂
(
しげ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
234
肝腎
(
かんじん
)
の
月宮殿
(
げつきうでん
)
は、
235
暗
(
やみ
)
も
同様
(
どうやう
)
ぢやないか。
236
此
(
この
)
月宮殿
(
げつきうでん
)
は
暗宮殿
(
あんきうでん
)
だ。
237
これ
程
(
ほど
)
綺麗
(
きれい
)
なお
月様
(
つきさま
)
が
祀
(
まつ
)
つてあるのに、
238
何故
(
なぜ
)
此
(
この
)
森
(
もり
)
が
明
(
あか
)
くないのだらう』
239
国依別
(
くによりわけ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
言
(
い
)
ふな。
240
之
(
これ
)
は
晦
(
つごもり
)
の
月宮殿
(
げつきうでん
)
といつて、
241
お
月様
(
つきさま
)
のお
休
(
やす
)
み
遊
(
あそ
)
ばす
御殿
(
ごてん
)
だ。
242
宮
(
きう
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
は
休
(
きう
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
に
改
(
あらた
)
めさへすれば、
243
名実
(
めいじつ
)
相適
(
あひかな
)
ふのだ、
244
イヤ
明月
(
めいげつ
)
相反
(
あひはん
)
すと
言
(
い
)
ふのだ。
245
アハヽヽヽ』
246
神殿
(
しんでん
)
の
何処
(
いづく
)
ともなく、
247
『ガサガサ グヽヽヽ』
248
と
怪
(
あや
)
しき
物音
(
ものおと
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
249
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ヤア
此
(
この
)
宮
(
みや
)
は
余程
(
よほど
)
古
(
ふる
)
いと
思
(
おも
)
へば、
250
貂
(
てん
)
か
鼬
(
いたち
)
が
巣
(
す
)
をしてると
見
(
み
)
えて、
251
大変
(
たいへん
)
に
暴
(
あば
)
れて
居
(
を
)
るぢやないか。
252
「
月
(
つき
)
は
天
(
てん
)
に
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
る」と
詩人
(
しじん
)
が
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るが、
253
貂
(
てん
)
は
月
(
つき
)
の
宮
(
みや
)
に
棲
(
す
)
み
渡
(
わた
)
り
頭
(
あたま
)
から
糞
(
くそ
)
、
254
小便
(
せうべん
)
を
垂
(
た
)
れ
流
(
なが
)
すぢやないか。
255
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
月宮殿
(
げつきうでん
)
も
薩張
(
さつぱり
)
愛想
(
あいさう
)
が
月
(
つき
)
の
宮
(
みや
)
ぢや。
256
此
(
この
)
宮
(
みや
)
も
貂
(
てん
)
や
鼬
(
いたち
)
の
棲処
(
すみか
)
となつては
最早
(
もはや
)
運
(
うん
)
の
月
(
つき
)
だなア』
257
国依別
(
くによりわけ
)
『
人間
(
にんげん
)
の
運命
(
うんめい
)
にも
栄枯
(
ゑいこ
)
盛衰
(
せいすゐ
)
がある。
258
潮
(
しほ
)
にも
満干
(
みちひ
)
がある。
259
此
(
この
)
宮
(
みや
)
さまは
今
(
いま
)
は
干潮時
(
ひきしほどき
)
ぢや。
260
それだからかう
見窄
(
みすぼ
)
らしく
荒廃
(
くわうはい
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
261
之
(
これ
)
でも
五六七
(
みろく
)
の
世
(
よ
)
に
成
(
な
)
れば、
262
此
(
この
)
お
宮
(
みや
)
は
金光
(
きんくわう
)
燦然
(
さんぜん
)
として
闇
(
やみ
)
を
照
(
てら
)
し、
263
高天原
(
たかあまはら
)
の
霊国
(
れいごく
)
にある
月宮殿
(
げつきうでん
)
の
様
(
やう
)
になるのだが、
264
何程
(
なにほど
)
結構
(
けつこう
)
な
弥勒
(
みろく
)
さまのお
宮
(
みや
)
でも
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
ざればこんなものだ。
265
信真
(
しんしん
)
の
徳
(
とく
)
の
失
(
う
)
せたる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
姿
(
すがた
)
が
遺憾
(
ゐかん
)
なく
此
(
この
)
お
宮
(
みや
)
に
写
(
うつ
)
されてあるのだ。
266
嗚呼
(
ああ
)
如何
(
いか
)
にせんやだ』
267
竜国別
(
たつくにわけ
)
『そうだなア、
268
社会
(
しやくわい
)
の
時代
(
じだい
)
的
(
てき
)
反映
(
はんえい
)
かも
知
(
し
)
れないなア。
269
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
頭
(
あたま
)
から
四足
(
よつあし
)
に
糞
(
くそ
)
や
小便
(
せうべん
)
をかけられ、
270
四足
(
よつあし
)
と
同居
(
どうきよ
)
して
御座
(
ござ
)
る
様
(
やう
)
では
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
も
何
(
なに
)
もあつたものぢやない。
271
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
さへあれば、
272
こんな
失敬
(
しつけい
)
な……
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
へ
上
(
あが
)
つて
糞
(
くそ
)
や
小便
(
せうべん
)
を
垂
(
た
)
れる
奴
(
やつ
)
に、
273
罰
(
ばち
)
を
当
(
あ
)
てて
動
(
うご
)
けない
様
(
やう
)
に
霊縛
(
れいばく
)
なさりさうなものぢやないか』
274
社
(
やしろ
)
の
中
(
なか
)
より、
275
(玉治別)
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
であるぞよ。
276
汝
(
なんぢ
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
277
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
278
国依別
(
くによりわけ
)
の
盲目
(
めくら
)
ども、
279
否
(
いな
)
魔誤月
(
まごつき
)
、
280
嘘月
(
うそつき
)
、
281
キヨロ
月
(
つき
)
人足
(
にんそく
)
、
282
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
すことを
耳
(
みみ
)
を
浚
(
さら
)
へてよつく
聞
(
き
)
け。
283
神
(
かみ
)
は
人間
(
にんげん
)
の
信真
(
しんしん
)
の
頭
(
かうべ
)
に
宿
(
やど
)
る、
284
決
(
けつ
)
して
畜生
(
ちくしやう
)
等
(
など
)
には
神
(
かみ
)
の
聖霊
(
せいれい
)
は
宿
(
やど
)
らないぞ。
285
畜生
(
ちくしやう
)
には
人間
(
にんげん
)
の
副霊
(
ふくれい
)
が
宿
(
やど
)
つて
居
(
を
)
るのだ。
286
それだから
神殿
(
しんでん
)
に
鼬
(
いたち
)
や
貂
(
てん
)
等
(
など
)
が
小便
(
せうべん
)
を
垂
(
た
)
れ
様
(
やう
)
が、
287
糞
(
くそ
)
を
垂
(
た
)
れ
様
(
やう
)
が、
288
放任
(
はうにん
)
してあるのだ。
289
元来
(
ぐわんらい
)
が
畜生
(
ちくしやう
)
の
因縁
(
いんねん
)
を
以
(
もつ
)
て
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るからだ。
290
神
(
かみ
)
は
人間
(
にんげん
)
らしき
人間
(
にんげん
)
が
無礼
(
ぶれい
)
を
致
(
いた
)
した
時
(
とき
)
は
即座
(
そくざ
)
に
神罰
(
しんばつ
)
を
与
(
あた
)
ふるぞ。
291
只今
(
ただいま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
獣
(
けだもの
)
が
人間
(
にんげん
)
の
皮
(
かは
)
を
被
(
かぶ
)
り
白日
(
はくじつ
)
天下
(
てんか
)
を
横行
(
わうかう
)
濶歩
(
くわつぽ
)
する
暗
(
やみ
)
の
世
(
よ
)
だ。
292
今
(
いま
)
、
293
此処
(
ここ
)
へ
人一
(
にんいち
)
化九
(
ばけきう
)
の
妖怪
(
えうくわい
)
が
二匹
(
にひき
)
も
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
よつたが、
294
之
(
これ
)
も
人間
(
にんげん
)
で
無
(
な
)
いから
神罰
(
しんばつ
)
は
当
(
あ
)
てないで
差赦
(
さしゆる
)
してやらう。
295
サア
如何
(
どう
)
ぢや、
296
人間
(
にんげん
)
なれば
人間
(
にんげん
)
と
判然
(
はつきり
)
申
(
まを
)
せ。
297
四足
(
よつあし
)
の
容器
(
いれもの
)
なれば
容器
(
いれもの
)
で
御座
(
ござ
)
いますと
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
せ。
298
神
(
かみ
)
の
方
(
はう
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるぞよ』
299
国依別
(
くによりわけ
)
は
小声
(
こごゑ
)
で
竜国別
(
たつくにわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
300
国依別
『オイ、
301
何
(
なん
)
だらうな。
302
えらい
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふぢやないか』
303
竜国別
(
たつくにわけ
)
『あんまり
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
悪
(
わる
)
いことを
言
(
い
)
つたものだから、
304
神
(
かみ
)
さまが
怒
(
おこ
)
つて
御座
(
ござ
)
るのかも
知
(
し
)
れないよ』
305
国依別
(
くによりわけ
)
『
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
る
様
(
やう
)
なことは
出来
(
でき
)
はしまいかな』
306
竜国別
(
たつくにわけ
)
『サア、
307
其処
(
そこ
)
ぢやて。
308
俺
(
おれ
)
も
一
(
ひと
)
つ
如何
(
どう
)
言
(
い
)
はうか
知
(
し
)
らんと
思
(
おも
)
つて
心配
(
しんぱい
)
をして
居
(
を
)
るのだ。
309
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
たる
万物
(
ばんぶつ
)
の
霊長
(
れいちやう
)
、
310
大和
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
の
人間
(
にんげん
)
で
御座
(
ござ
)
いますと
言
(
い
)
へば、
311
直
(
すぐ
)
に
神罰
(
しんばつ
)
を
当
(
あ
)
てられて
如何
(
どん
)
な
目
(
め
)
に
逢
(
あ
)
はされるか
知
(
し
)
れないし、
312
四足
(
よつあし
)
の
容器
(
いれもの
)
と
言
(
い
)
へば、
313
お
咎
(
とが
)
めは
無
(
な
)
いけれど
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
に
対
(
たい
)
して
申訳
(
まをしわけ
)
が
立
(
た
)
たぬなり、
314
自分
(
じぶん
)
も
何
(
なん
)
だか
阿呆
(
あはう
)
らしくて、
315
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
にもそんな
事
(
こと
)
は
断然
(
だんぜん
)
、
316
アヽもう
良
(
よ
)
う
言
(
い
)
はんワ』
317
宮
(
みや
)
の
御殿
(
ごてん
)
より、
318
(玉治別)
『
人間
(
にんげん
)
か、
319
四足
(
よつあし
)
か、
320
早
(
はや
)
く
返答
(
へんたふ
)
致
(
いた
)
せ。
321
四足
(
よつあし
)
と
有体
(
ありてい
)
に
白状
(
はくじやう
)
すれば
今日
(
けふ
)
は
断然
(
だんぜん
)
赦
(
ゆる
)
して
遣
(
つか
)
はす。
322
人間
(
にんげん
)
と
申
(
まを
)
せば
此
(
この
)
儘
(
まま
)
汝
(
なんぢ
)
の
生命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
つて、
323
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
、
324
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
へ
追
(
お
)
ひやつてやらう。
325
サア
早
(
はや
)
く
返答
(
へんたふ
)
を
致
(
いた
)
さぬか』
326
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ハイ、
327
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
328
今
(
いま
)
鳩首
(
きうしゆ
)
謀議
(
ぼうぎ
)
の
最中
(
さいちう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
329
相談
(
そうだん
)
が
纏
(
まと
)
まつた
上
(
うへ
)
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
を
申上
(
まをしあ
)
げます』
330
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
331
(玉治別)
『エー、
332
これしきの
問題
(
もんだい
)
に
凝議
(
ぎようぎ
)
も
何
(
なに
)
もあつたものか、
333
一目
(
いちもく
)
瞭然
(
れうぜん
)
だ、
334
早
(
はや
)
く
返答
(
へんたふ
)
致
(
いた
)
せ。
335
四足
(
よつあし
)
に
間違
(
まちが
)
ひあるまいがな』
336
両人
(
りやうにん
)
『へ……そ……それは……あんまり……
殺生
(
せつしやう
)
で
御座
(
ござ
)
います……』
337
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
338
(玉治別)
『それなら
誠
(
まこと
)
の
人間
(
にんげん
)
と
申
(
まを
)
すのか』
339
国依別
(
くによりわけ
)
『ハイ……まア
人間
(
にんげん
)
が
半分
(
はんぶん
)
……
畜生
(
ちくしやう
)
が
半分
(
はんぶん
)
で
人獣
(
にんじう
)
合一
(
がふいつ
)
の
身魂
(
みたま
)
で
御座
(
ござ
)
います』
340
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
341
(玉治別)
『
然
(
しか
)
らば
獣
(
けだもの
)
の
分
(
ぶん
)
だけは
赦
(
ゆる
)
して
遣
(
つか
)
はす。
342
半分
(
はんぶん
)
の
人間
(
にんげん
)
を
之
(
これ
)
から
成敗
(
せいばい
)
致
(
いた
)
す。
343
耳
(
みみ
)
一
(
ひと
)
つ、
344
眼玉
(
めだま
)
一
(
ひと
)
つ、
345
鼻
(
はな
)
一
(
ひと
)
つ、
346
下腮
(
したあご
)
を
取
(
と
)
り、
347
手
(
て
)
一本
(
いつぽん
)
、
348
足
(
あし
)
一本
(
いつぽん
)
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
いてやらう。
349
有難
(
ありがた
)
う
思
(
おも
)
へ』
350
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ヤア、
351
もう
何卒
(
どうぞ
)
今度
(
こんど
)
に
限
(
かぎ
)
り
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
352
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
353
(玉治別)
『
何
(
なに
)
、
354
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
て
呉
(
く
)
れと
申
(
まを
)
すか、
355
蛇
(
じや
)
の
目
(
め
)
の
唐傘
(
からかさ
)
の
様
(
やう
)
な
大
(
おほ
)
きな
目
(
め
)
で
睨
(
にら
)
んでやらうか』
356
国依別
(
くによりわけ
)
『イエイエ
滅相
(
めつさう
)
な、
357
そんな
目
(
め
)
で
睨
(
にら
)
まれては
此方
(
こちら
)
も……めゝゝゝゝ
迷惑
(
めいわく
)
を
致
(
いた
)
します』
358
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
359
(玉治別)
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
も
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
で
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
屋根
(
やね
)
は
雨
(
あめ
)
漏
(
も
)
り、
360
鼬
(
いたち
)
、
361
貂
(
てん
)
の
棲処
(
すみか
)
となり、
362
些
(
いささ
)
か
迷惑
(
めいわく
)
をいたして
居
(
を
)
る。
363
どうか
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
片腕
(
かたうで
)
が
欲
(
ほ
)
しいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た
矢先
(
やさき
)
だ。
364
いやでも
応
(
おう
)
でも
其
(
その
)
方
(
はう
)
達
(
たち
)
の
片腕
(
かたうで
)
を
取
(
と
)
つてやらう』
365
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
滅相
(
めつさう
)
もない、
366
片腕
(
かたうで
)
どころか、
367
弥勒
(
みろく
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
なら、
368
両腕
(
りやううで
)
を
差上
(
さしあ
)
げて
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
して
尽
(
つく
)
しますから、
369
お
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
します』
370
と
泣
(
な
)
き
入
(
い
)
る。
371
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
372
(玉治別)
『よしよし、
373
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
は
註文
(
ちうもん
)
通
(
どほ
)
り
赦
(
ゆる
)
してやらう。
374
サア
脇立
(
わきだち
)
、
375
眷族
(
けんぞく
)
共
(
ども
)
、
376
両人
(
りやうにん
)
の
骨
(
ほね
)
を
粉
(
こな
)
にし
身
(
み
)
を
砕
(
くだ
)
いて
参
(
まゐ
)
れ。
377
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
して
尽
(
つく
)
さして
呉
(
く
)
れえと
願
(
ねが
)
ひよつたぞよ』
378
竜国別
(
たつくにわけ
)
『モシモシ、
379
その
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
の
意味
(
いみ
)
が
断然
(
だんぜん
)
違
(
ちが
)
ひます。
380
さう
早取
(
はやど
)
りをしてもらつては
困
(
こま
)
ります』
381
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
382
(玉治別)
『
粉骨
(
ふんこつ
)
砕身
(
さいしん
)
とは
読
(
よ
)
んで
字
(
じ
)
の
如
(
ごと
)
しだ。
383
神
(
かみ
)
は
正直
(
しやうぢき
)
だから
誤魔化
(
ごまくわ
)
しは、
384
些
(
ちつと
)
も
聞
(
き
)
かぬぞよ』
385
国依別
(
くによりわけ
)
『オイ
竜
(
たつ
)
、
386
此奴
(
こいつ
)
アちつと
怪
(
あや
)
しいぞ』
387
竜国別
(
たつくにわけ
)
『そうだなア、
388
田吾作
(
たごさく
)
の
声
(
こゑ
)
に
似
(
に
)
ては
居
(
ゐ
)
やせぬかなア』
389
宮
(
みや
)
の
中
(
うち
)
より、
390
(玉治別)
『コラコラ
両人
(
りやうにん
)
、
391
其
(
その
)
方
(
はう
)
はまだ
疑
(
うたが
)
ふのか。
392
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
く
月
(
つき
)
の
玉治別
(
たまはるわけの
)
命
(
みこと
)
、
393
又
(
また
)
の
御名
(
みな
)
は
田吾作彦
(
たごさくひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
であつたぞよ。
394
ワツハヽヽヽ』
395
竜国別
(
たつくにわけ
)
『あんまり
馬鹿
(
ばか
)
にすない。
396
俺
(
おれ
)
の
胆玉
(
きもだま
)
を
大方
(
おほかた
)
潰
(
つぶ
)
して
仕舞
(
しま
)
ひやがつた』
397
国依別
(
くによりわけ
)
『こら、
398
悪戯
(
ふざ
)
けた
真似
(
まね
)
をしやがると
承知
(
しようち
)
をせぬぞ』
399
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
胆玉
(
きもだま
)
ばかりぢや
無
(
な
)
からう。
400
睾丸
(
きんたま
)
が
潰
(
つぶ
)
れかけただらう、
401
アハヽヽヽ』
402
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
403
ドシンドシンと
朽
(
く
)
ちはてた
階段
(
かいだん
)
を
降
(
くだ
)
つて
来
(
く
)
る。
404
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
梅照彦
(
うめてるひこ
)
の
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して、
405
月
(
つき
)
を
仰
(
あふ
)
ぎつつ
門前
(
もんぜん
)
に
着
(
つ
)
いた。
406
梅照彦
(
うめてるひこ
)
、
407
梅照姫
(
うめてるひめ
)
は、
408
梅照彦、梅照姫
『モシ
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
、
409
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
られました。
410
俄
(
にはか
)
に
三人
(
さんにん
)
様
(
さま
)
のお
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えぬので、
411
何
(
なに
)
かお
気
(
き
)
に
障
(
さは
)
つてお
帰
(
かへ
)
りになつたかと
思
(
おも
)
ひ、
412
大変
(
たいへん
)
に
胆
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
しましたよ』
413
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
睾丸
(
きんたま
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですかな、
414
アハヽヽヽ』
415
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
実
(
じつ
)
は
我々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
はあんまり
月
(
つき
)
が
佳
(
い
)
いので、
416
つい
浮
(
う
)
かれて
散歩
(
さんぽ
)
をし……
月宮殿
(
げつきうでん
)
に
参拝
(
さんぱい
)
して……』
417
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
胆玉
(
きもだま
)
を
潰
(
つぶ
)
しました』
418
竜国別
(
たつくにわけ
)
『お
前
(
まへ
)
、
419
黙
(
だま
)
つて
居
(
を
)
れ。
420
人
(
ひと
)
の
話
(
はなし
)
の
尻
(
しり
)
を
取
(
と
)
るものぢやない』
421
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
何
(
なに
)
、
422
尻
(
しり
)
は
取
(
と
)
りたくないが
睾丸
(
きんたま
)
が
取
(
と
)
り
度
(
た
)
いのだ、
423
アハヽヽヽ』
424
国依別
(
くによりわけ
)
『
月宮殿
(
げつきうでん
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
とこ
)
は
妙
(
めう
)
な
処
(
ところ
)
ですな。
425
貂
(
てん
)
がものを
言
(
い
)
ひましたよ。
426
而
(
しか
)
も
神
(
かみ
)
さまの
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つて……
てん
と
合点
(
がてん
)
のゆかぬ
事
(
こと
)
ですわい』
427
梅照彦
(
うめてるひこ
)
『エ、
428
貂
(
てん
)
がものを
言
(
い
)
ひましたか、
429
それや
聞
(
き
)
き
始
(
はじ
)
めだ。
430
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
貂
(
てん
)
でせう』
431
国依別
(
くによりわけ
)
『
何
(
なん
)
でも
田吾作
(
たごさく
)
とか
言
(
い
)
ふ
貂
(
てん
)
で、
432
鼬
(
いたち
)
の
成上
(
なりあが
)
りださうです。
433
随分
(
ずゐぶん
)
気
転
(
きてん
)
の
利
(
き
)
かぬ
馬鹿
(
ばか
)
貂
(
てん
)
の
水転
(
みづてん
)
でしたよ、
434
アハヽヽヽ』
435
一同
(
いちどう
)
腹
(
はら
)
を
抱
(
かか
)
へて『アハヽヽヽ』と
笑
(
わら
)
ひ
転
(
こ
)
ける。
436
(
大正一一・五・一六
旧四・二〇
北村隆光
録)
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