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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第21巻(申の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 千辛万苦
第1章 高春山
第2章 夢の懸橋
第3章 月休殿
第4章 砂利喰
第5章 言の疵
第2篇 是生滅法
第6章 小杉の森
第7章 誠の宝
第8章 津田の湖
第9章 改悟の酬
第3篇 男女共権
第10章 女権拡張
第11章 鬼娘
第12章 奇の女
第13章 夢の女
第14章 恩愛の涙
第4篇 反復無常
第15章 化地蔵
第16章 約束履行
第17章 酒の息
第18章 解決
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霊界物語
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第21巻(申の巻)
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<<< 酒の息
(B)
(N)
余白歌 >>>
第一八章
解決
(
かいけつ
)
〔六九二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
篇:
第4篇 反復無常
よみ(新仮名遣い):
はんぷくむじょう
章:
第18章 解決
よみ(新仮名遣い):
かいけつ
通し章番号:
692
口述日:
1922(大正11)年05月21日(旧04月25日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫と黒姫を閉じ込めた岩窟の前にやってきたテーリスタンは、二人に外へ出るように言って錠を開ける。高姫は鷹依姫を言向け和すのだから案内しろ、とテーリスタンに命じる。
道々、高姫はなぜテーリスタンが三五教に味方するようになったかと問いかけた。テーリスタンは、子供ながら二人を岩窟から救い出すためにやってきたお初に降参したのだ、と語る。
高姫は感心しながら鷹依姫の居間にやってきた。高姫は、自分たちを岩窟に閉じ込めて飢えさせた鷹依姫を非難する。鷹依姫は、食事を与えなかったのはテーリスタンとカーリンスだと責任を転嫁し、二人と言い争う。
テーリスタンとカーリンスは、お初に仲裁を頼むが、お初は鷹依姫も、テーリスタンもカーリンスも善人ではないから改心するように、と言い聞かせる。テーリスタンとカーリンスは赤面して反省する。
そこへ杢助、玉治別、竜国別、国依別の四人がやってきた。お初は鷹依姫に向かって底力のある声で改心を迫ると、鷹依姫ははらはらと涙を流して、遂には声を放ってその場に泣き伏した。
次にお初は高姫に向かって、改心して呑み込んだ二つの玉を返すように、と言い渡した。高姫は観念し、お初が腰を打つと、紫の玉と如意宝珠の玉を吐き出した。
お初は紫の玉を鷹依姫に返そうとするが、鷹依姫は改心した以上、玉は三五教へ献上すると答えた。そして、自分は行方をくらました極道息子との再会を願ってバラモン教に入信したが、遂には一派を立ててアルプス教を開くまでになってしまったのだ、と身の上を明かした。
鷹依姫の息子の特徴は、竜国別と一致した。お初は、竜国別は確かに鷹依姫の息子に違いないと明らかにし、高春山の途上の社で竜国別に試練を与えた女は、自分の化身であったことを明かした。
鷹依姫と竜国別は、親子の対面を果たした。お初は竜国別は額の傷によって身魂の罪は取り払われて水晶の魂となったことを宣言した。そして天津祝詞を捧げて聖地に帰るようにと一行を促した。
一同はこの言葉にはっと頭を下げ、口をすすいで天津祝詞を奏上した。そして宣伝歌を玉治別の音頭により高唱した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-02 02:37:19
OBC :
rm2118
愛善世界社版:
286頁
八幡書店版:
第4輯 369頁
修補版:
校定版:
295頁
普及版:
130頁
初版:
ページ備考:
001
テーリスタンは
密室前
(
みつしつぜん
)
に
現
(
あら
)
はれて、
002
テーリスタン
『モシモシ
私
(
わたし
)
はテーリスタンで
御座
(
ござ
)
います。
003
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
004
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
005
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
は
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
006
高姫
『お
前
(
まへ
)
はテーリスタンだな。
007
いつも
我々
(
われわれ
)
を
軽蔑
(
けいべつ
)
して
置
(
お
)
きながら、
008
今日
(
けふ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
其
(
その
)
丁寧
(
ていねい
)
な
物
(
もの
)
云
(
い
)
ひは
何事
(
なにごと
)
だい。
009
大方
(
おほかた
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がやつて
来
(
き
)
たものだから、
010
そんなお
追従
(
つゐしよう
)
を
云
(
い
)
ふのだらう。
011
なア
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
012
抜目
(
ぬけめ
)
のない
男
(
をとこ
)
ぢやありませぬか』
013
テーリスタン
『イエ
決
(
けつ
)
してさうぢや
御座
(
ござ
)
いませぬが、
014
どうも
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
に
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
感動
(
かんどう
)
しました。
015
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
016
高姫
『
出
(
で
)
いと
云
(
い
)
つたつて、
017
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のやうに
海老錠
(
えびぢやう
)
をかけて
置
(
お
)
いたぢやないか。
018
お
前
(
まへ
)
は
妾
(
わし
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
を
石室
(
いはむろ
)
に
入
(
い
)
れた
積
(
つも
)
りか
知
(
し
)
らぬが、
019
高姫
(
たかひめ
)
大明神
(
だいみやうじん
)
、
020
黒姫
(
くろひめ
)
大明神
(
だいみやうじん
)
の
結構
(
けつこう
)
な
御
(
お
)
扉
(
みと
)
ぢやぞエ、
021
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
る。
022
大幣
(
おほぬさ
)
でも
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
十分
(
じふぶん
)
に
祓
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
め、
023
お
供
(
そな
)
へ
物
(
もの
)
を
沢山
(
どつさり
)
と
奉
(
たてまつ
)
つて
冠装束
(
かむりしやうぞく
)
で
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
024
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きの
舞
(
まひ
)
を
舞
(
ま
)
はぬ
事
(
こと
)
には、
025
此
(
この
)
女神
(
めがみ
)
さまは
滅多
(
めつた
)
に
出
(
で
)
はせぬぞエ』
026
テーリスタンは
鍵
(
かぎ
)
を
以
(
もつ
)
て、
027
ガタガタ
云
(
い
)
はせながら
石
(
いし
)
の
戸
(
と
)
をパツと
開
(
ひら
)
き、
028
テーリスタン
『サア
何卒
(
どうぞ
)
お
出
(
で
)
まし
下
(
くだ
)
さいませ』
029
黒姫
『アヽ
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
う、
030
サア、
031
高姫
(
たかひめ
)
さま
出
(
で
)
ませうか』
032
高姫
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
033
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ひなさる、
034
お
前
(
まへ
)
さまは
呆
(
とぼ
)
けて
居
(
ゐ
)
るのか。
035
コレヤコレヤ、
036
テーリスタン、
037
貴様
(
きさま
)
は
人
(
ひと
)
の
住家
(
すみか
)
の
戸
(
と
)
を
勝手
(
かつて
)
に
開
(
あ
)
けよつて、
038
誰
(
たれ
)
の
許可
(
ゆるし
)
を
受
(
う
)
けたのだ。
039
家宅
(
かたく
)
侵入罪
(
しんにふざい
)
で
訴
(
うつた
)
へてやるがどうだい』
040
テーリスタン
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
041
さういちやつかずに、
042
御
(
お
)
頼
(
たの
)
みぢや、
043
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
044
高姫
『
出
(
で
)
て
呉
(
く
)
れいと
頼
(
たの
)
むなら
聞
(
き
)
いてやらぬ
事
(
こと
)
もない。
045
今日
(
けふ
)
はお
供
(
そな
)
へ
物
(
もの
)
も、
046
祝詞
(
のりと
)
も
免除
(
めんぢよ
)
してやらう。
047
実
(
じつ
)
は
妾
(
わたし
)
も
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く、
048
こんな
暗
(
くら
)
い
所
(
ところ
)
へ
居
(
を
)
りたい
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
い
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いのだ。
049
サアサア
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
050
お
前
(
まへ
)
さまから
先
(
さき
)
に
出
(
で
)
なさい。
051
大分
(
だいぶん
)
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
から
出
(
で
)
たさうだつたから』
052
黒姫
『
先生
(
せんせい
)
からお
先
(
さき
)
へ
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さいませ。
053
あまり
失礼
(
しつれい
)
ですから』
054
高姫
『そんならお
先
(
さき
)
へ
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう。
055
長
(
なが
)
らく
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になりました。
056
サアもう
此処
(
ここ
)
まで
出
(
で
)
た
以上
(
いじやう
)
は、
057
神変
(
しんぺん
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
に、
058
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
を
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んだ
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
、
059
仮令
(
たとへ
)
何万
(
なんまん
)
人
(
にん
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
るとも、
060
フンと
一
(
ひと
)
つ
鼻息
(
はないき
)
をしたら
飛
(
と
)
び
散
(
ち
)
つて
仕舞
(
しま
)
ふ
位
(
くらゐ
)
なものだ。
061
これから
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
を
一
(
ひと
)
つ
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
してやらうかなア』
062
テーリスタン
『
貴女
(
あなた
)
はお
腹
(
なか
)
は
空
(
す
)
きませぬか。
063
大分
(
だいぶん
)
にお
瘠
(
や
)
せになりましたな。
064
テーは
心配
(
しんぱい
)
ですワ』
065
高姫
『
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
や
二百
(
にひやく
)
日
(
にち
)
食
(
く
)
はいでも
瘠
(
やせ
)
るやうな
高姫
(
たかひめ
)
とは
些
(
ちつ
)
と
違
(
ちが
)
います。
066
イヤ
瘠
(
やせ
)
たのぢやない。
067
体
(
からだ
)
を
細
(
ほそ
)
くして
置
(
お
)
いたのだよ。
068
サアサア テーリスタン、
069
案内
(
あんない
)
をしなさい、
070
婆
(
ばば
)
アの
傍
(
そば
)
へ』
071
テーリスタン
『イヤ、
072
もう
最前
(
さいぜん
)
からカーリンスと
二人
(
ふたり
)
酔
(
よ
)
つて
管
(
くだ
)
をまいてまいて、
073
まき
潰
(
つぶ
)
した
所
(
とこ
)
です。
074
もはや
我々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
ですから
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
075
高姫
『お
前
(
まへ
)
のやうな
者
(
もの
)
が
信者
(
しんじや
)
になれば、
076
安心
(
あんしん
)
所
(
どころ
)
か、
077
益々
(
ますます
)
気
(
き
)
をつけねばなるまい。
078
誰
(
たれ
)
に
許
(
ゆる
)
されて
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
になつたのだい』
079
テーリスタン
『
私
(
わたくし
)
はお
初
(
はつ
)
さまに
頼
(
たの
)
みました』
080
高姫
『お
初
(
はつ
)
さまて
誰
(
たれ
)
の
事
(
こと
)
だえ』
081
テーリスタン
『
五
(
いつ
)
つ
六
(
むつ
)
つのちつぽけな
娘
(
むすめ
)
の
子
(
こ
)
です。
082
貴女
(
あなた
)
を
岩窟
(
いはや
)
から
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さねばならぬと
云
(
い
)
つて
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
子供
(
こども
)
だてら
やつて
来
(
き
)
たのですよ』
083
高姫
『さうしてお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
其
(
その
)
子供
(
こども
)
に
降参
(
かうさん
)
したのかい』
084
テーリスタン
『ハイハイ
何処
(
どこ
)
ともなしに
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
が
備
(
そな
)
はつて
居
(
ゐ
)
るので、
085
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
降参
(
かうさん
)
をして
貴女
(
あなた
)
をお
救
(
すく
)
ひ
申
(
まを
)
したのです』
086
高姫
『
何
(
なん
)
と
偉
(
えら
)
い
子供
(
こども
)
もあればあるものぢやなア。
087
子供
(
こども
)
に
大人
(
おとな
)
が
助
(
たす
)
けられるなんて
昔
(
むかし
)
から
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
がない。
088
時節
(
じせつ
)
と
云
(
い
)
ふものは
結構
(
けつこう
)
なものだな』
089
黒姫
『
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
090
それで
世
(
よ
)
が
逆
(
さか
)
さまになつて
居
(
を
)
ると、
091
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
筆
(
ふで
)
にお
示
(
しめ
)
しになつて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか』
092
高姫
『
黒姫
(
くろひめ
)
さまは
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
して
居
(
ゐ
)
なさい。
093
言葉尻
(
ことばじり
)
を
捉
(
つか
)
まへられちや
却
(
かへつ
)
て
不利益
(
ふりえき
)
ですよ。
094
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふものは
成
(
な
)
る
可
(
べ
)
く
喋舌
(
しやべ
)
らぬ
方
(
はう
)
が
高尚
(
かうしやう
)
に
見
(
み
)
えて
宜敷
(
よろし
)
い、
095
併
(
しか
)
し
妾
(
わたし
)
は
例外
(
れいぐわい
)
だ。
096
何
(
ど
)
うしても
率先
(
そつせん
)
して
云
(
い
)
はねばならぬ
役廻
(
やくまは
)
りだから……これこれアルプス
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
どの、
097
長
(
なが
)
らく
結構
(
けつこう
)
な
岩窟
(
がんくつ
)
ホテルに
逗留
(
とうりう
)
さして
頂
(
いただ
)
きまして、
098
日々
(
にちにち
)
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
根
(
ね
)
つから
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しませず、
099
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
の
段
(
だん
)
有
(
あ
)
りがたくお
礼
(
れい
)
申上
(
まをしあ
)
げませぬワイ』
100
鷹依姫
『
別
(
べつ
)
に
山中
(
さんちう
)
の
事
(
こと
)
とて
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
も
御座
(
ござ
)
りませず、
101
テーリスタンやカーリンスに
申付
(
まをしつ
)
けて、
102
三度
(
さんど
)
々々
(
さんど
)
、
103
相当
(
さうたう
)
の
食物
(
しよくもつ
)
をお
上
(
あ
)
げ
申
(
まを
)
すやう
命令
(
めいれい
)
して
置
(
お
)
きましたが、
104
何
(
ど
)
うせお
気
(
き
)
に
召
(
め
)
すやうなものは
上
(
あ
)
げられませぬでしたらう』
105
テーリスタン
『コレ
婆
(
ば
)
アさん、
106
自分
(
じぶん
)
の
責任
(
せきにん
)
を
我々
(
われわれ
)
に
転嫁
(
てんか
)
するのかい。
107
私
(
わし
)
がそつと
隠
(
かく
)
して
高姫
(
たかひめ
)
さまや
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
進上
(
しんじやう
)
しようと
思
(
おも
)
へば、
108
隼
(
はやぶさ
)
のやうな
目
(
め
)
でジロジロと
私
(
わし
)
を
睨
(
にら
)
みつけ、
109
さうして
水
(
みづ
)
一滴
(
いつてき
)
、
110
飯
(
めし
)
一粒
(
ひとつぶ
)
やつてはならない。
111
斯
(
か
)
うして
置
(
お
)
けば、
112
高姫
(
たかひめ
)
がカンピンタンになるだらう。
113
都合
(
つがふ
)
よく
干
(
ひ
)
からびた
時
(
とき
)
に、
114
腹
(
はら
)
に
呑
(
の
)
んだ
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
も
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
も
刳
(
く
)
り
抜
(
ぬ
)
いて
取
(
と
)
ると
云
(
い
)
つたのでは
無
(
な
)
かつたのではないか。
115
今
(
いま
)
となつて、
116
そんな
卑怯
(
ひけふ
)
な
二枚舌
(
にまいじた
)
を
使
(
つか
)
ふものぢや
無
(
な
)
いワ。
117
なア、
118
カーリンス、
119
俺
(
おれ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
間違
(
まちが
)
ひはあるまい』
120
カーリンス
『オヽ、
121
さうとも さうとも、
122
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
にさへ
けち
けち
云
(
い
)
つて
酒
(
さけ
)
も
碌
(
ろく
)
に
呑
(
の
)
まさない
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
い、
123
悪党婆
(
あくたうばば
)
アだから、
124
どうしてあれだけ
憎
(
にく
)
んで
居
(
ゐ
)
た
高姫
(
たかひめ
)
さまや
黒姫
(
くろひめ
)
さまに、
125
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
を
差上
(
さしあ
)
げる
筈
(
はず
)
があらうかい』
126
鷹依姫
『お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
嘘
(
うそ
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
127
私
(
わし
)
を
八方
(
はつぱう
)
攻撃
(
こうげき
)
喰
(
く
)
はして
困
(
こま
)
らす
積
(
つも
)
りだな』
128
テーリスタン
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だ。
129
大勢
(
おほぜい
)
の
人
(
ひと
)
を
困
(
こま
)
らせて
置
(
お
)
くと
其
(
その
)
罪障
(
めぐり
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
130
自分
(
じぶん
)
も
又
(
また
)
困
(
こま
)
らねばならぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
すぞよ、
131
と
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
つた。
132
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
けると
云
(
い
)
ふのは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
133
現
(
げん
)
にお
初
(
はつ
)
さまはまだ
年
(
とし
)
は
六
(
むつ
)
つだが、
134
尊
(
たふと
)
い
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
生
(
うま
)
れ
代
(
かは
)
りだ。
135
此
(
この
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
れば
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
が
一遍
(
いつぺん
)
に
分
(
わか
)
るのだ……
私
(
わたくし
)
が
悪
(
わる
)
いですか
婆
(
ばば
)
が
悪
(
わる
)
いですか
判断
(
はんだん
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
136
お初
『お
婆
(
ば
)
アさまもあんまり
良
(
よ
)
い
事
(
こと
)
はない。
137
テーリスタンもカーリンスもあまり
善人
(
ぜんにん
)
でもありませぬよ。
138
早
(
はや
)
う
改心
(
かいしん
)
をしなさい。
139
改心
(
かいしん
)
さへすれば
皆
(
みな
)
元
(
もと
)
の
善人
(
ぜんにん
)
になれますよ』
140
テー、
141
カーの
二人
(
ふたり
)
は
顔
(
かほ
)
を
真赤
(
まつか
)
に
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
いて
俯
(
うつ
)
むく。
142
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
表口
(
おもてぐち
)
より、
143
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら、
144
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
145
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
146
国依別
(
くによりわけ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に、
147
力強
(
ちからづよ
)
の
杢助
(
もくすけ
)
、
148
其
(
その
)
他
(
た
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
のアルプス
教
(
けう
)
の
信者
(
しんじや
)
を
従
(
したが
)
へ、
149
どやどやと
這入
(
はい
)
つて
来
(
く
)
る。
150
玉治別
(
たまはるわけ
)
『ヨー、
151
貴女
(
あなた
)
は
高姫
(
たかひめ
)
さま、
152
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
153
ヨウ、
154
マア
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
155
我々
(
われわれ
)
は
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
内命
(
ないめい
)
を
受
(
う
)
けて、
156
漸
(
やうや
)
く
三方
(
さんぱう
)
より
当山
(
たうざん
)
に
攻
(
せ
)
め
登
(
のぼ
)
り、
157
言霊戦
(
ことたません
)
に
向
(
むか
)
つたのです。
158
あゝこれで
結構
(
けつこう
)
だ。
159
此
(
この
)
方
(
かた
)
は
湯谷
(
ゆや
)
ケ
谷
(
だに
)
の
杢助
(
もくすけ
)
さまと
云
(
い
)
つて、
160
実
(
じつ
)
は
時置師
(
ときおかしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
変名
(
へんめい
)
、
161
大変
(
たいへん
)
なお
世話
(
せわ
)
になつたのですワ』
162
高姫
『それはそれは
皆
(
みな
)
さま
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
でした。
163
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
164
杢助
(
もくすけ
)
様
(
さま
)
とやら、
165
玉治別
(
たまはるわけ
)
さまが
いかい
お
世話
(
せわ
)
になられたさうです。
166
私
(
わたし
)
から
厚
(
あつ
)
くお
礼
(
れい
)
申上
(
まをしあ
)
げます』
167
黒姫
『
皆様
(
みなさま
)
よくこそお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました。
168
時
(
とき
)
にこの
婆
(
ば
)
アさまはまだ
改心
(
かいしん
)
せないのかな』
169
お初
『サアお
婆
(
ば
)
アさま、
170
モウ
斯
(
か
)
うなつては
我
(
が
)
を
張
(
は
)
つても
駄目
(
だめ
)
ですよ。
171
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
もすつかり
懺悔
(
ざんげ
)
して
誠
(
まこと
)
の
心
(
こころ
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り、
172
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
生宮
(
いきみや
)
として、
173
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
清
(
きよ
)
く
麗
(
うるは
)
しくお
暮
(
くら
)
しなさい』
174
とお
初
(
はつ
)
の
小
(
ちひ
)
さき
唇
(
くちびる
)
より、
175
何
(
なん
)
となく
底力
(
そこぢから
)
のある
声
(
こゑ
)
にて
極
(
き
)
めつけられ、
176
さしもに
頑固
(
ぐわんこ
)
な
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
も
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
し、
177
遂
(
つい
)
には
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにける。
178
お
初
(
はつ
)
『サア、
179
これからは
高姫
(
たかひめ
)
さまだ。
180
お
前
(
まへ
)
さまはウラナイ
教
(
けう
)
を
樹
(
た
)
てて
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
に
反対
(
はんたい
)
をして
居
(
を
)
つた
時
(
とき
)
、
181
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
館
(
やかた
)
に
立
(
た
)
ち
入
(
い
)
り、
182
冠島
(
かむりじま
)
の
宝庫
(
はうこ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
し、
183
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
を
奪
(
うば
)
ひ
取
(
と
)
つて
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んだその
罪
(
つみ
)
で、
184
こんな
岩窟
(
がんくつ
)
へ
長
(
なが
)
らく
閉
(
と
)
じ
籠
(
こ
)
められ、
185
苦
(
くる
)
しんだのですよ。
186
何程
(
なにほど
)
負
(
ま
)
けぬ
気
(
き
)
になつて
空元気
(
からげんき
)
を
出
(
だ
)
しても
矢張
(
やつぱり
)
辛
(
つら
)
かつたでせう。
187
今
(
いま
)
妾
(
わたし
)
の
前
(
まへ
)
にその
玉
(
たま
)
を
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
しなさい。
188
さうして
又
(
また
)
、
189
昔
(
むかし
)
竹熊
(
たけくま
)
と
云
(
い
)
ふ
悪神
(
わるがみ
)
が
居
(
を
)
つて、
190
八尋殿
(
やひろどの
)
へ
竜宮城
(
りうぐうじやう
)
の
使神
(
ししん
)
を
招待
(
せうたい
)
し、
191
芳彦
(
よしひこ
)
の
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
つた
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
つたが、
192
竹熊
(
たけくま
)
の
終焉
(
しゆうえん
)
と
共
(
とも
)
に
死海
(
しかい
)
へ
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ
十個
(
じつこ
)
の
玉
(
たま
)
の
中
(
なか
)
で、
193
この
玉
(
たま
)
ばかりは
汚
(
けが
)
されず、
194
中空
(
ちうくう
)
に
飛
(
と
)
んで
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
へ
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た
玉
(
たま
)
ですよ。
195
それをこの
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れて、
196
それを
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
としてアルプス
教
(
けう
)
を
樹
(
た
)
てて
居
(
を
)
つたのだが、
197
其
(
その
)
玉
(
たま
)
をお
前
(
まへ
)
さまは
又
(
また
)
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで
仕舞
(
しま
)
つたぢやないか。
198
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
に
何程
(
なにほど
)
玉
(
たま
)
があると
云
(
い
)
つても、
199
さう
云
(
い
)
ふ
悪
(
わる
)
い
心
(
こころ
)
で
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んだのだから、
200
少
(
すこ
)
しも
光
(
ひかり
)
が
出
(
で
)
ない。
201
サア
私
(
わたし
)
が
此所
(
ここ
)
で
出
(
だ
)
して
上
(
あ
)
げよう。
202
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
返
(
かへ
)
し
申
(
まを
)
し、
203
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
は
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さまに
返
(
かへ
)
してお
上
(
あ
)
げなさいませ』
204
高姫
『ハイ
仕方
(
しかた
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ、
205
如何
(
どう
)
したら
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んだ
玉
(
たま
)
が
出
(
で
)
ませうかなア』
206
お初
『
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
207
私
(
わたし
)
が
今
(
いま
)
楽
(
らく
)
に
出
(
だ
)
してあげませう』
208
と
云
(
い
)
ひつつ、
209
高姫
(
たかひめ
)
の
腰
(
こし
)
を
一
(
ひと
)
つエヽと
声
(
こゑ
)
かけ
打
(
う
)
つた
機
(
はづみ
)
に、
210
ポイと
口
(
くち
)
から
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
たのは
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
である。
211
もう
一
(
ひと
)
つ
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
で
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
つた
機
(
はづみ
)
に
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
たのが
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
であつた。
212
高姫
(
たかひめ
)
はグタリと
疲
(
つか
)
れて
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れる。
213
お初
『
高姫
(
たかひめ
)
さまは
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ、
214
暫
(
しばら
)
く
休息
(
きうそく
)
なされば
元気
(
げんき
)
は
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
りになります。
215
サア
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま、
216
貴方
(
あなた
)
は
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
大切
(
たいせつ
)
に
預
(
あづか
)
つて
聖地
(
せいち
)
へお
帰
(
かへ
)
りなさい。
217
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
さま、
218
紫
(
むらさき
)
の
玉
(
たま
)
は
貴方
(
あなた
)
の
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
たものだ、
219
何
(
ど
)
うか
受取
(
うけと
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
220
鷹依姫
『
私
(
わたくし
)
も
最早
(
もはや
)
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
しました
以上
(
いじやう
)
は
玉
(
たま
)
の
必要
(
ひつえう
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
221
何卒
(
どうぞ
)
これを
聖地
(
せいち
)
へ
献上
(
けんじやう
)
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
います。
222
私
(
わたくし
)
も
白状
(
はくじやう
)
を
致
(
いた
)
しまするが、
223
私
(
わたくし
)
には
唯
(
たつた
)
一人
(
ひとり
)
の
伜
(
せがれ
)
が
御座
(
ござ
)
いました。
224
その
伜
(
せがれ
)
が
極道者
(
ごくだうもの
)
で
近所
(
きんじよ
)
の
人
(
ひと
)
に
迷惑
(
めいわく
)
をかけたり、
225
喧嘩
(
けんくわ
)
をする、
226
賭博
(
ばくち
)
はうつ、
227
女
(
をんな
)
に
ずぼる
、
228
妾
(
わたし
)
が
意見
(
いけん
)
をすれば「
何
(
なに
)
、
229
親顔
(
おやがほ
)
をしてゴテゴテ
云
(
い
)
ふな」と
撲
(
なぐ
)
りつける、
230
終
(
しまひ
)
の
果
(
はて
)
には
親
(
おや
)
をふり
捨
(
す
)
てて、
231
何処
(
いづこ
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
仕舞
(
しま
)
ひました。
232
極道
(
ごくだう
)
の
子
(
こ
)
は
尚
(
なほ
)
可愛
(
かあい
)
とか
申
(
まを
)
しまして、
233
況
(
ま
)
して
一人
(
ひとり
)
の
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にもかけ
替
(
が
)
へのない
伜
(
せがれ
)
、
234
も
一度
(
いちど
)
会
(
あ
)
ひたい
事
(
こと
)
だと
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
し、
235
とうとうバラモン
教
(
けう
)
に
入信
(
にふしん
)
し、
236
遂
(
つひ
)
にアルプス
教
(
けう
)
を
樹
(
た
)
てる
事
(
こと
)
になつたので
御座
(
ござ
)
います。
237
妾
(
わたし
)
のやうな
不運
(
ふうん
)
なものは
世界
(
せかい
)
に
御座
(
ござ
)
いませぬ』
238
玉治別
『さうしてその
伜
(
せがれ
)
の
名
(
な
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
でしたか』
239
と
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
問
(
と
)
ひに、
240
鷹依姫
『ハイ、
241
今
(
いま
)
は
如何
(
どう
)
なつたか
行方
(
ゆくへ
)
は
分
(
わか
)
りませぬが、
242
顔
(
かほ
)
の
特徴
(
とくちやう
)
と
云
(
い
)
へば
一割
(
いちわり
)
人
(
ひと
)
より
鼻
(
はな
)
の
高
(
たか
)
いもので
御座
(
ござ
)
いました。
243
そして
名
(
な
)
は
竜若
(
たつわか
)
と
申
(
まを
)
します。
244
偉
(
えら
)
いまあ
極道
(
ごくだう
)
で
親
(
おや
)
に
心配
(
しんぱい
)
をかけよつたが、
245
今頃
(
いまごろ
)
はどうして
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
か、
246
アーア』
247
と
袖
(
そで
)
を
絞
(
しぼ
)
る。
248
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
不審
(
ふしん
)
さうに、
249
玉治別
『コレコレ
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
250
お
前
(
まへ
)
も
竜若
(
たつわか
)
と
云
(
い
)
つたぢやないか。
251
そして
一人
(
ひとり
)
の
母
(
はは
)
があると
話
(
はな
)
した
事
(
こと
)
があるなア。
252
何処
(
どこ
)
やら
此
(
この
)
婆
(
ば
)
アさまに
目許
(
めもと
)
、
253
鼻
(
はな
)
の
高
(
たか
)
い
具合
(
ぐあひ
)
がよく
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
るやうだ。
254
もしや
此
(
この
)
婆
(
ば
)
アさまぢやあるまいかな』
255
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
256
ウンと
吐息
(
といき
)
しながら
涙
(
なみだ
)
をホロホロと
流
(
なが
)
して
居
(
ゐ
)
る。
257
お
初
(
はつ
)
『
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
伜
(
せがれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
竜国別
(
たつくにわけ
)
に
間違
(
まちが
)
ひはない。
258
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
させるために、
259
神
(
かみ
)
が
仕組
(
しぐ
)
んで
当山
(
たうざん
)
へ
差
(
さ
)
し
向
(
む
)
けられたのです。
260
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
改心
(
かいしん
)
に
免
(
めん
)
じ、
261
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
して
上
(
あ
)
げよう。
262
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
263
昨夜
(
さくや
)
古
(
ふる
)
き
社
(
やしろ
)
の
前
(
まへ
)
にて
汝
(
なんぢ
)
の
逢
(
あ
)
うた
女
(
をんな
)
は
妾
(
わたし
)
の
化身
(
けしん
)
であつたぞや』
264
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
265
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかき
暮
(
く
)
れる。
266
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
払
(
はら
)
ひ、
267
鷹依姫
『アヽ、
268
其方
(
そなた
)
は
伜
(
せがれ
)
の
竜若
(
たつわか
)
であつたか。
269
ヨウ、
270
マア
改心
(
かいしん
)
して
下
(
くだ
)
さつた。
271
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
になつたものだ。
272
もう
是
(
これ
)
限
(
かぎ
)
り
母
(
はは
)
も
改心
(
かいしん
)
するから、
273
何卒
(
どうぞ
)
妾
(
わたし
)
の
罪
(
つみ
)
をお
詫
(
わび
)
して
下
(
くだ
)
さい』
274
竜国別
『
母様
(
ははさま
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか、
275
お
懐
(
なつ
)
かしう
存
(
ぞん
)
じます』
276
鷹依姫
『お
前
(
まへ
)
、
277
額
(
ひたひ
)
の
疵
(
きず
)
は
如何
(
どう
)
なさつた。
278
矢張
(
やつぱり
)
人
(
ひと
)
に
憎
(
にく
)
まれて
怪我
(
けが
)
をしたのぢやないかな』
279
竜国別
『エヽ』
280
お初
『
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
此
(
この
)
額
(
ひたひ
)
の
疵
(
きず
)
によつて、
281
身魂
(
みたま
)
の
罪
(
つみ
)
をすつかり
取払
(
とりはら
)
はれ、
282
水晶
(
すゐしやう
)
の
身魂
(
みたま
)
と
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
れり。
283
其
(
その
)
徳
(
とく
)
に
依
(
よ
)
り
親子
(
おやこ
)
の
対面
(
たいめん
)
を
許
(
ゆる
)
したのである。
284
決
(
けつ
)
して
争
(
あらそ
)
ひなどを
致
(
いた
)
したのではないから、
285
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさるがよからう。
286
何時
(
いつ
)
まで
云
(
い
)
うても
果
(
はて
)
しがなければ、
287
サア
皆
(
みな
)
さま、
288
一緒
(
いつしよ
)
に
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
289
感謝
(
かんしや
)
祈願
(
きぐわん
)
の
詞
(
じ
)
を
捧
(
ささ
)
げて、
290
聖地
(
せいち
)
へ
一同
(
いちどう
)
うち
揃
(
そろ
)
うて
参
(
まゐ
)
りませう』
291
との
言葉
(
ことば
)
に
一同
(
いちどう
)
ハツと
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
292
口
(
くち
)
を
嗽
(
すす
)
ぎ、
293
手
(
て
)
を
洗
(
あら
)
つて
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
294
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
音頭
(
おんど
)
に
連
(
つ
)
れて
高唱
(
かうしやう
)
する。
295
(
大正一一・五・二一
旧四・二五
加藤明子
録)
296
(昭和一〇・六・五 王仁校正)
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