霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第八章 津田(つだ)(うみ)〔六八二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻 篇:第2篇 是生滅法 よみ(新仮名遣い):ぜしょうめっぽう
章:第8章 津田の湖 よみ(新仮名遣い):つだのうみ 通し章番号:682
口述日:1922(大正11)年05月19日(旧04月23日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
竜国別は道を北にとって迂回し、大谷山方面からアルプス教を攻めることとなった。国依別は鼓の滝から六甲山へ至る道をとった。そして玉治別は元盗人の三人と共に、津田の湖を舟で越えるルートをとった。
しかし玉治別が舟をこいで湖の半ばにさしかかると、三人はにわかに態度を変え、玉治別の懐のアルプス教の計画書を奪おうとし始めた。三人は櫂で玉治別に打ちかかり、玉治別は湖に落ちてしまった。
三人は落ちた玉治別を櫂で殴りつけようとする。九死に一生のところで、一艘の舟が矢のように現れて、玉治別を救った。これは杢助とお初が助けに来たのであった。
盗人たち三人は杢助の出現に驚いて慌てて逃げるが、湖の中にある大岩石に衝突して舟は砕け、湖水に落ちてしまった。
玉治別は櫂をこいで行き、三人を大岩石の上に助け上げると、宣伝歌を歌って聞かせた。杢助も、三人に仲間の失敗を告げて、改心を迫る。
しかしお初は今度は三人を懲らしめた方がよいと主張し、舟は三人を湖中の大岩石の上に残したまま行ってしまった。するとにわかに湖水のかさが増して、三人は首のあたりまで水に浸かってしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-05-10 18:16:24 OBC :rm2108
愛善世界社版:154頁 八幡書店版:第4輯 320頁 修補版: 校定版:159頁 普及版:70頁 初版: ページ備考:
001 津田(つだ)湖辺(こへん)(あら)はれたる(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)(はじ)め、002(ゑん)003駿(すん)004()005(さん)006(かふ)007(うん)(ろく)(にん)高春山(たかはるやま)(はるか)(なが)めて、008(いま)三方(さんぱう)より進撃(しんげき)せんとする計画(けいくわく)(さだ)むる(をり)しも、009(ろく)(にん)泥棒(どろばう)内輪(うちわ)喧嘩(げんくわ)(はじ)()し、010武州(ぶしう)011駿州(すんしう)012遠州(ゑんしう)向脛(むかふづね)()たれて(その)()(たふ)れたるを()すまし、013(さん)014(かふ)015(うん)(さん)(にん)(この)()見捨(みす)てて、016(もと)()(みち)()()つた。
017 (ここ)竜国別(たつくにわけ)(みち)(きた)()り、018迂回(うくわい)して大谷山(おほたにやま)より()(のぼ)(こと)とした。019(また)国依別(くによりわけ)(つづみ)(たき)()六甲山(ろくかふざん)(のぼ)り、020魔神(まがみ)言向(ことむ)けつつ高春山(たかはるやま)(むか)計画(けいくわく)(さだ)めた。021玉治別(たまはるわけ)湖辺(こへん)(つな)ぎある(ふね)()(たく)し、022津田(つだ)(うみ)(わた)つて驀地(まつしぐら)高春山(たかはるやま)押寄(おしよ)すべく、023(あし)(いた)めた(さん)(にん)(ふね)()せて(みづか)()(あやつ)(なが)ら、024寒風(かんぷう)(すさ)(つき)()西方(せいはう)山麓(さんろく)目蒐(めが)けて()()だす。025湖水(こすゐ)(ほとん)中央(ちうあう)まで(すす)みし(とき)026(さん)(にん)(にはか)立上(たちあが)り、
027遠州(ゑんしう)『オイ貴様(きさま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)028(まこと)(みち)()(とほ)神聖(しんせい)役目(やくめ)であり(なが)ら、029秘密(ひみつ)書類(しよるゐ)()()れたを(さいはひ)に、030(てき)(そな)へを(さと)り、031三方(さんぱう)より()()せむとするは(じつ)見下(みさ)()てたるやり(かた)だ。032何故(なぜ)(まこと)(ひと)つで(すす)まぬのかい』
033駿州(すんしう)(じつ)(ところ)はその手帳(てちやう)吾々(われわれ)仲間(なかま)()つて大切(たいせつ)品物(しなもの)だ。034それを貴様(きさま)()られて(たま)るものか。035杢助(もくすけ)(たく)()いて、036この大切(たいせつ)書類(しよるゐ)貴様(きさま)()()れたのを(さと)つた(ゆゑ)037吾々(われわれ)(ろく)(にん)道々(みちみち)符牒(ふてう)(もつ)(しめ)()はせ、038(わざ)喧嘩(けんくわ)をして()せ、039(あし)(いた)いと(いつは)つてこの(ふね)乗込(のりこ)んだのだぞ』
040武州(ぶしう)『サア、041最早(もはや)ジタバタしても(かな)はぬぞ。042綺麗(きれい)薩張(さつぱり)(おれ)(たち)返納(へんなふ)(いた)せ。043愚図(ぐづ)々々(ぐづ)(ぬか)すと、044()湖中(こちう)()()んで(しま)ふぞ』
045玉治別(たまはるわけ)『アハヽヽヽ、046貴様(きさま)(たち)(なに)(ぬか)すのだ。047三五教(あななひけう)神力(しんりき)無双(むさう)宣伝使(せんでんし)(むか)つて、048刃向(はむか)うとは、049生命(いのち)()らずも(ほど)がある。050蟷螂(たうらう)(をの)(ふる)つて竜車(りうしや)(むか)ふも同然(どうぜん)051(すみや)かに改心(かいしん)(いた)せば(ゆる)してやるが、052何処(どこ)までも悪心(あくしん)()(とほ)すなら、053最早(もはや)是非(ぜひ)(およ)ばぬ、054言霊(ことたま)(もつ)(なんぢ)身体(からだ)(しば)()げ、055()湖水(こすゐ)()()んでやらうか』
056遠州(ゑんしう)貴様(きさま)言霊(ことたま)武器(ぶき)があれば、057此方(こちら)にも言霊(ことたま)武器(ぶき)がある。058おまけにこの鉄腕(てつわん)(うな)りを()てて()つて()るぞよ。059サア(はや)(この)(はう)(わた)さないか』
060玉治別(わた)せと()つても(おれ)一人(ひとり)(もの)では()い。061竜国別(たつくにわけ)や、062国依別(くによりわけ)協議(けふぎ)をした(うへ)063(わた)してもよければ(わた)してやらう』
064遠州馬鹿(ばか)()ふな。065竜国別(たつくにわけ)や、066国依別(くによりわけ)吾々(われわれ)同類(どうるゐ)途中(とちう)待伏(まちふ)せて、067(たひ)らげて(しま)手筈(てはず)がチヤンと(ととの)うて()るのだ。068この(みづうみ)向方(むかふ)(わた)るが最後(さいご)069味方(みかた)のものが()ちうけて、070貴様(きさま)嬲殺(なぶりごろ)しにする手筈(てはず)(きま)つて()る。071(おどろ)いたか、072(なん)吾々(われわれ)計略(けいりやく)(えら)いものだらう』
073玉治別『たとへ小童(こわつぱ)どもの(さん)(にん)()(にん)074(ひやく)(にん)()(きた)るとも、075(びく)とも(いた)すやうな玉治別(たまはるわけ)では()い、076あんまり見損(みそこな)ひを(いた)すな。077鷹依姫(たかよりひめ)表面(おもて)にアルプス(けう)標榜(へうぼう)しながら、078山賊(さんぞく)大親分(おほおやぶん)になつて()るのだな』
079駿州(すんしう)馬鹿(ばか)()ふない。080アルプス(けう)には泥棒(どろばう)一人(ひとり)()ない。081(ただ)(おれ)(たち)駄賃(だちん)(もら)つて(この)仕事(しごと)をするだけだ。082(じつ)(おれ)(たち)はアルプス(けう)ではない。083盗人(ぬすびと)団体(だんたい)だからトツクリ()()よ。084その手帳(てちやう)(おれ)(たち)()(しる)してない(はづ)だ。085聖地(せいち)(しの)()んだ(やつ)名前(なまへ)沢山(たくさん)あるといふことだが、086最早(もはや)貴様(きさま)にそれが(わか)つたところで、087アルプス(けう)痛痒(つうよう)(かん)じない。088(その)(かは)貴様(きさま)()(さん)(にん)宣伝使(せんでんし)()(もの)(いた)せばよいのだ。089……オイ()うだい、090此奴(こいつ)真裸体(まつぱだか)にして秘密(ひみつ)書類(しよるゐ)をフン(だく)り、091高春山(たかはるやま)持参(ぢさん)せば結構(けつこう)()褒美(ほうび)頂戴(ちやうだい)出来(でき)る。092サアぬかるな』
093三方(さんぱう)より(かい)(もつ)()つてかかる。
094 無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)も、095()むを()正当(せいたう)防禦(ばうぎよ)(つも)りで、096両手(りやうて)()(あま)数歌(かずうた)(うた)つた。097されど神慮(しんりよ)(そむ)きし(てき)秘密(ひみつ)書類(しよるゐ)懐中(くわいちゆう)したる(けが)れのためか、098今日(けふ)(かぎ)つて(あま)数歌(かずうた)も、099鎮魂(ちんこん)も、100(なん)効果(かうくわ)(あら)はれなかつた。101(さん)(にん)三方(さんぱう)より滅多打(めつたう)ちに()ちかかる。
102 玉治別(たまはるわけ)()むを()ず、103(また)もや(かい)(にぎ)るより(はや)(さん)(にん)(なか)(まじ)つて飛鳥(ひてう)(ごと)(ふせ)(たたか)うた。104如何(いか)がはしけむ、105遠州(ゑんしう)はバサリと湖中(こちう)()ちた。106二人(ふたり)()()められて玉治別(たまはるわけ)(また)もやザンブとばかり湖中(こちう)真逆(まつさか)(さま)落込(おちこ)んだ。107(ふね)()()(あが)らうとすれば、108二人(ふたり)(うへ)より(かい)(もつ)(あたま)(なぐ)りつけやうとする。109遠州(ゑんしう)(その)(あひだ)(ふね)駆上(かけあが)り、
110遠州『サア(たま)(やつ)111神妙(しんめう)(わた)せばよし、112(わた)さねば貴様(きさま)生命(いのち)はモーないぞ』
113 玉治別(たまはるわけ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)()()()つて逃出(にげだ)す。114(さん)(にん)(かい)(あやつ)(なが)玉治別(たまはるわけ)()ひかける。115玉治別(たまはるわけ)()きつ(しづ)みつ()(まは)る。116秘密(ひみつ)書類(しよるゐ)懐中(くわいちゆう)より脱出(だつしゆつ)して水面(すゐめん)()(あが)つた。117(さん)(にん)手早(てばや)(これ)(ひろ)()げて、118大切(たいせつ)()れた(まま)そつ(ふね)(なか)(かく)し、119(なほ)玉治別(たまはるわけ)()きつ(しづ)みつ()ぐるを()ひかけ、120(あたま)目蒐(めが)けて(なぐ)りつけようとする。121(なぐ)られては一大事(いちだいじ)と、122(くる)しき(いき)()らし(なが)水底(すゐてい)(くぐ)り、123一方(いつぱう)(あたま)()げて(いき)をつぎ()れば、124(また)もや(さん)(にん)(ふね)にて()ひかけて()る。
125 玉治別(たまはるわけ)進退(しんたい)(きは)まり、126九死(きうし)一生(いつしやう)のところへ()()(ごと)く、127一人(ひとり)子供(こども)()せて()ぎつけた一隻(いつさう)(ふね)128玉治別(たまはるわけ)盲亀(まうき)浮木(ふぼく)(よろこ)(いさ)んで(ふね)(とり)ついた。129舟人(ふなびと)玉治別(たまはるわけ)(たす)けて(ふね)()せた。130玉治別(たまはるわけ)(いき)()()えになつてゐる。131()(とき)(さん)(にん)盗人(ぬすびと)は、
132三人『エー邪魔(じやま)ひろぐな』
133()(ふね)目蒐(めが)けて()めかけ(きた)る。
134船人(ふなびと)貴様(きさま)遠州(ゑんしう)135駿州(すんしう)136武州(ぶしう)小盗人(こぬすと)だらう。137サア、138モウ(おれ)此処(ここ)()(うへ)は、139(きさま)最早(もはや)観念(かんねん)せねばなるまい。140(かた)(ぱし)から(たた)(つぶ)してやらう』
141 (この)(こゑ)(さん)(にん)(おどろ)いて一生(いつしやう)懸命(けんめい)(かい)(あやつ)り、142()()(ごと)くに西(にし)西(にし)へと()()した。143湖中(こちう)突出(とつしゆつ)せる大岩石(だいがんせき)(ふね)先端(さき)衝突(しようとつ)させ、144船体(せんたい)()()微塵(みぢん)になつて、145ゴブゴブゴブと沈没(ちんぼつ)した。146(さん)(にん)(おも)(おも)ひに()()()つて()げようとする。
147 船頭(せんどう)(さん)(にん)()いた(あたま)目当(めあて)(ふね)差向(さしむ)けた。148玉治別(たまはるわけ)(やうや)()がついた。149()れば杢助(もくすけ)親子(おやこ)(ふね)()つて、150(さん)(にん)泥棒(どろばう)(かげ)目当(めあて)(はし)つてゐる。
151玉治別『アー貴方(あなた)杢助(もくすけ)さま。152(あやふ)(ところ)をよう(たす)けに()(くだ)さいました』
153杢助(はなし)(あと)でゆつくり()きませう。154愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して()れば(さん)(にん)泥棒(どろばう)生命(いのち)()くなつて(しま)ふ。155サア貴方(あなた)(この)(かい)()いで(くだ)さい』
156 玉治別(たまはるわけ)(ただ)ちに(かい)()(はじ)めた。157(やうや)くにして(さん)(にん)泥棒(どろばう)(すく)()げた。158さうして以前(いぜん)湖中(こちう)(いは)(うへ)(さん)(にん)(おく)り、159(ふね)此方(こなた)引返(ひきかへ)し、160十数間(じふすうけん)(ばか)距離(きより)(たも)つて、161(さん)(にん)(むか)宣伝歌(せんでんか)()かさむと、162(こゑ)(すず)しく(うた)(はじ)めた。
163玉治別(たまはるわけ)朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
164(つき)()つとも()くるとも
165仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
166(まこと)(ちから)()(すく)
167(まこと)(ひと)つの()(なか)
168(まこと)(みち)()(はづ)
169天地(てんち)(つみ)(かさ)ねつつ
170(つひ)には()(くに)(そこ)(くに)
171地獄(ぢごく)(そこ)どん(ぞこ)
172焦熱(せうねつ)地獄(ぢごく)(おと)されて
173(くる)しみ(もだ)える幽界(いうかい)
174(おきて)()らずに智慧(ちゑ)(あさ)
175体主(たいしゆ)霊従(れいじう)人々(ひとびと)
176(ちひ)さき(よく)()(くら)
177結構(けつこう)身魂(みたま)()(なが)
178(ひと)(たから)(うば)()
179()めよ(さわ)げの大騒(おほさわ)
180(あそ)んで(くら)悪企(わるだく)
181地獄(ぢごく)(かま)(みち)(つく)
182それも()らずに曲道(まがみち)
183(とほ)身魂(みたま)ぞいぢらしき
184仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
185(まこと)(みち)(かな)ひなば
186大慈(だいじ)大悲(だいひ)大神(おほかみ)
187(かなら)(たす)(たま)ふべし
188遠州(ゑんしう)武州(ぶしう)駿州(すんしう)
189(なんぢ)(もと)(かみ)御子(みこ)
190(きよ)身魂(みたま)受継(うけつ)ぎし
191(たふと)(かみ)生宮(いきみや)
192(ちひ)さき(よく)にからまれて
193(この)()からなる地獄道(ぢごくだう)
194餓鬼(がき)畜生(ちくしやう)修羅道(しゆらだう)
195責苦(せめく)(みづか)()(なが)
196()(さと)らずに()(よる)
197(みち)(そむ)いた(こと)ばかり
198われは(この)()(たひら)けく
199(をさ)(しづ)むる大神(おほかみ)
200(をしへ)()ぶる宣伝使(せんでんし)
201(けつ)して(にく)しと(おも)はない
202(なんぢ)(ひそ)曲神(まがかみ)
203一日(ひとひ)(はや)()()けて
204(まこと)(みち)(すく)はむと
205(ねが)ふばかりの(わが)(こころ)
206さはさり(なが)三五(あななひ)
207(みち)(をし)ふる神司(かむづかさ)
208()()(わす)れてアルプスの
209(かみ)(をしへ)()(こも)
210鷹依姫(たかよりひめ)計略(けいりやく)
211(こと)(こま)かに(しる)したる
212秘密(ひみつ)(かぎ)(ふところ)
213(をさ)めて(まが)(たふ)さむと
214(おも)うたことは玉治別(たまはるわけ)
215これ一生(いつしやう)(あやま)りぞ
216(なれ)()(これ)(たづさ)へて
217高春山(たかはるやま)持参(もちまゐ)
218鷹依姫(たかよりひめ)手渡(てわた)して
219手柄(てがら)(あら)はし()褒美(ほうび)
220(かね)沢山(たくさん)(もろ)()
221さすれば(なんぢ)(ふところ)
222ふとつて親子(おやこ)安々(やすやす)
223(たの)しき月日(つきひ)(おく)るだらう
224さは()ふものの(さん)(にん)
225(この)()(かり)()(なか)
226万劫(まんご)末代(まつだい)()(とほ)
227霊魂(みたま)生命(いのち)(かぎ)りなし
228なることならば三五(あななひ)
229(かみ)(をしへ)()(まか)
230天晴(あつぱ)世界(せかい)(しほ)となり
231(はな)ともなりて(かん)ばしき
232()のりを(のこ)(のち)()
233あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
234御霊(みたま)(さち)はひましまして
235悪魔(あくま)(ため)(たましひ)
236(くも)らされたる(さん)(にん)
237直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
238()(あやま)ちを()(なほ)
239(かみ)大道(おほぢ)にすくすくと
240(あゆ)ませ(たま)大御神(おほみかみ)
241(うづ)御前(みまへ)玉治別(たまはるわけ)
242(かしこ)(かしこ)()(まつ)る』
243(うた)(をは)つた。
244 (さん)(にん)(この)(うた)(かん)じてか、245(ただし)(はな)(じま)()てられた(かな)しさに(この)()(のが)れむとしてか、246一度(いちど)玉治別(たまはるわけ)(むか)つて両手(りやうて)(あは)せ、247(なみだ)(なが)して改心(かいしん)()(へう)する。248杢助(もくすけ)(ふね)(いは)(まへ)(ちか)づけ(なが)ら、
249杢助(もくすけ)『オイ(さん)(にん)(をとこ)250(きさま)片割(かたわ)三州(さんしう)251甲州(かふしう)252雲州(うんしう)(さん)(にん)(おれ)(やかた)()()んで金銀(きんぎん)小玉(こだま)全部(ぜんぶ)(もら)つて(かへ)りよつた。253(きさま)玉治別(たまはるわけ)懐中(くわいちゆう)せるアルプス(けう)書類(しよるゐ)(ねら)つてゐるさうだ。254(しか)しそれを鷹依姫(たかよりひめ)(とど)けてやつたところで、255(あま)(たい)した礼物(れいもつ)もくれはしよまい。256生命(いのち)(まと)にそんな(よく)()(ちひ)さいことを(いた)すな。257改心(かいしん)するなら(いま)だ。258(なん)()つても()(はな)(じま)()てられては(きさま)(うか)()はあるまい。259サア改心(かいしん)(ちか)ふか()うだ、260改心(かいしん)(いた)せば(この)(ふね)()せて(たす)けてやるが』
261 (さん)(にん)(くち)(そろ)へて、
262三人改心(かいしん)します。263()うぞ(ゆる)して(くだ)さいませ』
264杢助(もくすけ)玉治別(たまはるわけ)さま、265貴方(あなた)のお(かんが)へは()うでせうか』
266玉治別(たまはるわけ)改心(かいしん)さへしてくれたならば四海(しかい)兄弟(きやうだい)だ、267何処(どこ)までも(たす)けたいものですな』
268杢助『そんなら(たす)けてやらうか』
269 お(はつ)(くび)左右(さいう)()り、
270お初『お(とう)さん、271()んな(ひと)(たす)けたつて(すぐ)(また)(わる)いことを(いた)しますよ。272(しばら)くこの(はな)(じま)(あづ)けて()いたがよろしいでせう』
273遠州(ゑんしう)『モシモシ(ちひ)さいお(かた)274(まへ)さまは(とし)にも似合(にあ)はぬ、275きつい(ひと)だな。276そんな(こと)()はずに()うぞ(たす)けて(くだ)さいな。277屹度(きつと)改心(かいしん)しますから』
278お初『イエイエ貴方(あなた)()()改心(かいしん)出来(でき)ませぬよ。279サア、280(とう)さま、281(はや)()(あやつ)つて(くだ)さい。282小父(をぢ)さま、283(かい)()いで(くだ)さい。284(わたし)手伝(てつだ)ひませう』
285玉治別『アヽさうだ。286子供(こども)正直(しやうぢき)だ。287此奴(こいつ)()可愛(かあい)いと(おも)へば、288(しば)らく(いは)(うへ)(あづ)けて()いた(はう)将来(しやうらい)のためだらう。289サア、290杢助(もくすけ)さま、291彼方(あちら)(すす)みませう』
292湖中(こちう)岩島(いはしま)(あと)に、293高春山(たかはるやま)東麓(とうろく)()して()()(ごと)(すす)()く。
294 不思議(ふしぎ)湖水(こすゐ)(みづ)()()水量(みづかさ)(まさ)り、295さしもに(たか)湖中(こちう)(いは)次第(しだい)々々(しだい)水中(すゐちう)(ぼつ)し、296(はや)くも足許(あしもと)まで(なみ)押寄(おしよ)せて()た。297刻々(こくこく)(まさ)水量(みづかさ)(さん)(にん)は、298最早(もはや)(くび)(あた)りまで(つか)つて(しま)つた。
299大正一一・五・一九 旧四・二三 外山豊二録)
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