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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第21巻(申の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 千辛万苦
第1章 高春山
第2章 夢の懸橋
第3章 月休殿
第4章 砂利喰
第5章 言の疵
第2篇 是生滅法
第6章 小杉の森
第7章 誠の宝
第8章 津田の湖
第9章 改悟の酬
第3篇 男女共権
第10章 女権拡張
第11章 鬼娘
第12章 奇の女
第13章 夢の女
第14章 恩愛の涙
第4篇 反復無常
第15章 化地蔵
第16章 約束履行
第17章 酒の息
第18章 解決
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第21巻(申の巻)
> 第3篇 男女共権 > 第14章 恩愛の涙
<<< 夢の女
(B)
(N)
化地蔵 >>>
第一四章
恩愛
(
おんあい
)
の
涙
(
なみだ
)
〔六八八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
篇:
第3篇 男女共権
よみ(新仮名遣い):
だんじょきょうけん
章:
第14章 恩愛の涙
よみ(新仮名遣い):
おんあいのなみだ
通し章番号:
688
口述日:
1922(大正11)年05月20日(旧04月24日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
玉治別と杢助・お初親子は、津田の湖水を渡って高春山の正面から攻め上った。三人は途中、一人の女がアルプス教の手の者たちに捕らえられて責められているところに出くわした。
杢助によってアルプス教の者たちは追い払われた。女は玉治別の妻・お勝であった。お勝は父の松鷹彦の病気を夫に知らせるためにやってきたのであった。
しかし玉治別は今は宣伝使の使命として高春山の言霊戦に携わる身であり、女を連れることはできないと言い渡した。そして、自分の使命を知っていながら情に曇らされて行動するような女は自分の妻ではない、と厳しくお勝を諌めた。
玉治別の言葉にお勝は自分の非を悟り、帰って行った。杢助は玉治別の心中を察して慰めの言葉をかけ、三人は高春山へと登っていく。
お勝は帰り道の道中、自分の非を悔い、夫の諭しに感謝をする宣伝歌を歌った。武志の宮に帰りつくと、父の松鷹彦は気分良く天の真浦に介抱されながら、お勝の帰りを出迎えた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-16 19:33:11
OBC :
rm2114
愛善世界社版:
229頁
八幡書店版:
第4輯 348頁
修補版:
校定版:
236頁
普及版:
103頁
初版:
ページ備考:
001
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
津田
(
つだ
)
の
湖水
(
こすゐ
)
を
渡
(
わた
)
つて、
002
高春山
(
たかはるやま
)
の
正面
(
しやうめん
)
より
攻
(
せ
)
め
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
003
杢助
(
もくすけ
)
はお
初
(
はつ
)
を
背
(
せな
)
に
負
(
お
)
ひ
其
(
その
)
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ふ。
004
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
く
暮
(
く
)
れ
果
(
は
)
てて、
005
月
(
つき
)
は
雪雲
(
ゆきぐも
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
006
姿
(
すがた
)
も
朧気
(
おぼろげ
)
に
天空
(
てんくう
)
に
明滅
(
めいめつ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
007
一行
(
いつかう
)
は、
008
とある
木蔭
(
こかげ
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
める
折柄
(
をりから
)
に、
009
慌
(
あわ
)
ただしき
数多
(
あまた
)
の
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
、
010
刻々
(
こくこく
)
に
近寄
(
ちかよ
)
り
来
(
きた
)
る。
011
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
012
杢助
(
もくすけ
)
は
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に、
013
何事
(
なにごと
)
ならむと
透
(
す
)
かし
見
(
み
)
れば、
014
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
に
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
ませ、
015
エイヤエイヤと
言
(
い
)
ひつつ
担
(
かつ
)
ぎ
来
(
きた
)
る。
016
様子
(
やうす
)
あらんと
両人
(
りやうにん
)
は
息
(
いき
)
を
凝
(
こ
)
らして
眺
(
なが
)
むれば、
017
数多
(
あまた
)
の
男
(
をとこ
)
は、
018
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
の
稍
(
やや
)
広
(
ひろ
)
き
所
(
ところ
)
に
下
(
おろ
)
し、
019
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
解
(
と
)
き
何事
(
なにごと
)
かよつて
集
(
たか
)
つて、
020
訊問
(
じんもん
)
を
始
(
はじ
)
め
出
(
だ
)
した。
021
甲
『コレヤ
女
(
をんな
)
、
022
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
いづこ
)
の
者
(
もの
)
だ。
023
白状
(
はくじやう
)
いたせ』
024
女(お勝)
『
妾
(
わたし
)
は
都
(
みやこ
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います』
025
甲
『
馬鹿
(
ばか
)
を
言
(
い
)
ふな。
026
此
(
この
)
黒
(
くろ
)
い
目
(
め
)
でチヨツと
睨
(
にら
)
んだら
間違
(
まちがひ
)
はないぞ。
027
貴様
(
きさま
)
は
田舎
(
ゐなか
)
の
女
(
をんな
)
であらうがな』
028
女(お勝)
『それを
尋
(
たづ
)
ねてどうなさいますか』
029
乙
『
必要
(
ひつえう
)
があつて
尋
(
たづ
)
ねるのだ。
030
綺麗
(
きれい
)
サツパリと
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
して
了
(
しま
)
へ』
031
女(お勝)
『
妾
(
わたし
)
は
浪速
(
なには
)
の
都
(
みやこ
)
に
生
(
うま
)
れた
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
032
父
(
ちち
)
もなければ、
033
母
(
はは
)
もなし、
034
兄弟姉妹
(
きやうだい
)
もなき
憐
(
あは
)
れな
独身者
(
ひとりもの
)
、
035
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
に
紛
(
まぎ
)
れ
込
(
こ
)
み、
036
あなた
方
(
がた
)
に
捉
(
とら
)
へられたので
御座
(
ござ
)
いますが、
037
何一
(
なにひと
)
つ
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
した
覚
(
おぼ
)
えがありませぬ。
038
どうぞ
見遁
(
みのが
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
039
乙
『
貴様
(
きさま
)
はアルプス
教
(
けう
)
の
重要
(
ぢうえう
)
書類
(
しよるゐ
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れた
奴
(
やつ
)
の
女房
(
にようばう
)
に
間違
(
まちが
)
ひない。
040
サア
有体
(
ありてい
)
に
汝
(
きさま
)
が
夫
(
をつと
)
の
所在
(
ありか
)
及
(
および
)
書類
(
しよるゐ
)
の
所在
(
ありか
)
を
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
せ』
041
女(お勝)
『
何
(
なに
)
かと
思
(
おも
)
へば、
042
思
(
おも
)
ひも
掛
(
か
)
けぬ
妙
(
めう
)
な
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ね、
043
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
は
今
(
いま
)
が
聞始
(
ききはじ
)
めで
御座
(
ござ
)
いますワ』
044
甲
『
汝
(
きさま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の……
名
(
な
)
は
忘
(
わす
)
れたが……
女房
(
にようばう
)
であらう』
045
女(お勝)
『イエイエ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して、
046
左様
(
さやう
)
の
者
(
もの
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ』
047
乙
『
度渋
(
どしぶ
)
とい、
048
白々
(
しらじら
)
しい
女
(
をんな
)
だ。
049
仮令
(
たとへ
)
水責
(
みづぜ
)
め
火責
(
ひぜ
)
めに
遇
(
あ
)
はしても、
050
白状
(
はくじやう
)
させねば
置
(
お
)
くものか』
051
女(お勝)
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
りましても、
052
知
(
し
)
らぬ
事
(
こと
)
は
何処迄
(
どこまで
)
も
知
(
し
)
りませぬ』
053
甲
『
此奴
(
こいつ
)
ア、
054
一通
(
ひととほ
)
りでは
吐
(
ぬか
)
すまい……オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
055
真裸
(
まつぱだか
)
にして
面白
(
おもしろ
)
い
芸当
(
げいたう
)
をやらしてやらうぢやないか』
056
一同
『よからう よからう』
057
と
一同
(
いちどう
)
は
泣
(
な
)
きひしる
女
(
をんな
)
を
真裸
(
まつぱだか
)
になし、
058
甲
『サア
女
(
をんな
)
、
059
ワンと
言
(
い
)
へ、
060
吐
(
ぬか
)
さな、
061
此
(
この
)
かつ
杭
(
くひ
)
が
貴様
(
きさま
)
の
頭
(
あたま
)
にお
見舞
(
みまひ
)
申
(
まを
)
すぞ』
062
女(お勝)
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
063
人間
(
にんげん
)
が
畜生
(
ちくしやう
)
の
真似
(
まね
)
は
出来
(
でき
)
ませぬワ』
064
甲
『
出来
(
でき
)
なくば
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
すのだ。
065
……サア、
066
ワンと
申
(
まを
)
せ』
067
一同
(
いちどう
)
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
068
一同
『ワツハヽヽヽ………』
069
と
笑
(
わら
)
ふ。
070
忽
(
たちま
)
ち
傍
(
かた
)
への
木
(
き
)
の
小蔭
(
こかげ
)
より、
071
(杢助)
『ヤアヤア アルプス
教
(
けう
)
の
悪魔
(
あくま
)
共
(
ども
)
、
072
よつく
聞
(
き
)
け。
073
某
(
それがし
)
こそは、
074
湯谷
(
ゆや
)
ケ
岳
(
だけ
)
の
麓
(
ふもと
)
に
於
(
おい
)
て
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
と
聞
(
きこ
)
えたる、
075
木挽
(
こびき
)
の
杢助
(
もくすけ
)
、
076
本名
(
ほんみやう
)
は
時置師
(
ときおかしの
)
神
(
かみ
)
だ。
077
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
前非
(
ぜんぴ
)
を
悔
(
く
)
い、
078
其
(
その
)
女
(
をんな
)
に
衣服
(
いふく
)
を
着
(
き
)
せ、
079
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
真裸
(
まつぱだか
)
となつて
四
(
よ
)
つ
這
(
ばひ
)
になり、
080
ワンワンと
吠
(
ほ
)
えよ。
081
違背
(
ゐはい
)
に
及
(
およ
)
ばば
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
が
片端
(
かたつぱし
)
から
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
素首
(
そつくび
)
を
捻切
(
ねぢき
)
つてやるぞ』
082
甲
『オイ
偉
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
が
斯
(
こ
)
んな
所
(
ところ
)
までやつて
来
(
き
)
やがつたぢやないか。
083
真裸
(
まつぱだか
)
になつて
四
(
よ
)
つ
這
(
ばい
)
になるのは
残念
(
ざんねん
)
だし、
084
どうしようかなア』
085
乙
『サア、
086
逃
(
に
)
げろ
逃
(
に
)
げろ』
087
杢助
『コレヤ
者共
(
ものども
)
、
088
逃
(
に
)
げようといつても、
089
逃
(
にが
)
しはせぬぞ。
090
逃
(
に
)
げるなら
逃
(
に
)
げて
見
(
み
)
よ。
091
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
味方
(
みかた
)
の
強者
(
つはもの
)
を
取巻
(
とりま
)
かせ
置
(
お
)
いたれば、
092
一寸
(
いつすん
)
でも
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
動
(
うご
)
くが
最後
(
さいご
)
、
093
汝
(
なんぢ
)
の
身体
(
しんたい
)
は
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
だ。
094
それでも
構
(
かま
)
はねば、
095
どちらへなりと
勝手
(
かつて
)
に
走
(
はし
)
れ』
096
甲
『オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
097
どうしようかなア』
098
乙
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
生命
(
いのち
)
が
大事
(
だいじ
)
だ。
099
裸
(
はだか
)
になつて、
100
また
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
れば
良
(
い
)
いぢやないか。
101
仮令
(
たとへ
)
ワンワンと
言
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
102
其
(
その
)
儘
(
まま
)
犬
(
いぬ
)
になつて
了
(
しま
)
ふのでもなし、
103
此処
(
ここ
)
は
一
(
ひと
)
つ
安全策
(
あんぜんさく
)
に、
104
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
通
(
どほ
)
り
真裸
(
まつぱだか
)
となり、
105
ワンと
一声
(
ひとこゑ
)
吠
(
ほ
)
えて
見
(
み
)
ようぢやないか』
106
丙
『
此
(
この
)
寒
(
さむ
)
いのに
真裸
(
まつぱだか
)
になつたら、
107
震
(
ふる
)
ひあがるぢやないか』
108
杢助
『
貴様
(
きさま
)
が
寒
(
さむ
)
いのも、
109
此
(
この
)
女
(
をんな
)
が
寒
(
さむ
)
いのも
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ。
110
早
(
はや
)
く
女
(
をんな
)
に
着物
(
きもの
)
をお
着
(
き
)
せ
申
(
まを
)
せ。
111
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
致
(
いた
)
すと、
112
杢助
(
もくすけ
)
が
汝
(
なんぢ
)
の
雁首
(
がんくび
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
かうか』
113
(丙?)
『マアマアマア
杢助
(
もくすけ
)
さん、
114
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
芳名
(
はうめい
)
は
此
(
この
)
辺
(
へん
)
で
知
(
し
)
らない
者
(
もの
)
はありませぬ。
115
お
偉
(
えら
)
い
方
(
かた
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
116
我々
(
われわれ
)
仲間
(
なかま
)
もよく
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
ります。
117
どうぞ
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
118
杢助
『
早
(
はや
)
く
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
せないか』
119
甲
『ハイ、
120
コラコラ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
121
着物
(
きもの
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
い。
122
此
(
この
)
御
(
ご
)
婦人
(
ふじん
)
に
鄭重
(
ていちよう
)
に
着
(
き
)
せるのだ』
123
丙
(
へい
)
は
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
着物
(
きもの
)
を
持
(
も
)
つて、
124
コハゴハ
女
(
をんな
)
の
後
(
うしろ
)
に
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
り、
125
一間
(
いつけん
)
程
(
ほど
)
の
距離
(
きより
)
から、
126
女
(
をんな
)
の
背中
(
せなか
)
を
目
(
め
)
がけてポイと
放
(
ほ
)
り、
127
二三間
(
にさんげん
)
後
(
あと
)
ずさりし、
128
木
(
き
)
の
株
(
かぶ
)
に
躓
(
つまづ
)
いてドスンと
尻餅
(
しりもち
)
をつき、
129
「アイタヽヽ」と
顔
(
かほ
)
をしかめて
居
(
ゐ
)
る。
130
女
(
をんな
)
は
早速
(
さつそく
)
其
(
その
)
着物
(
きもの
)
を
着
(
つ
)
け、
131
女(お勝)
『
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
132
危急
(
ききふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
133
ようお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいました』
134
杢助
『
其
(
その
)
御
(
お
)
礼
(
れい
)
には
及
(
およ
)
びませぬ。
135
……ヤイヤイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
136
そこに
真裸
(
まつぱだか
)
となつて
這
(
は
)
はないか。
137
早
(
はや
)
く
這
(
は
)
はぬと
首
(
くび
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
くぞ』
138
一同
(
いちどう
)
はブツブツ
小声
(
こごゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
139
真裸
(
まつぱだか
)
の
儘
(
まま
)
、
140
蛙突這
(
かへるつくばひ
)
になつて
慄
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
141
杢助
『コレコレお
女中
(
ぢよちう
)
、
142
其
(
その
)
着物
(
きもの
)
をお
前
(
まへ
)
さまは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
143
一々
(
いちいち
)
畳
(
たた
)
んで
始末
(
しまつ
)
をつけて
下
(
くだ
)
さい。
144
さうして
一所
(
ひととこ
)
へ
集
(
あつ
)
め、
145
帯
(
おび
)
でグツと
括
(
くく
)
り、
146
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
が
担
(
かつ
)
いで
津田
(
つだ
)
の
湖
(
うみ
)
へ、
147
ドンブリと
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
ふ
考
(
かんが
)
へだから……』
148
甲
『モシモシ
此
(
この
)
寒
(
さむ
)
いのに
着物
(
きもの
)
を
取
(
と
)
られては、
149
息絶
(
いきつ
)
いて
了
(
しま
)
ひます。
150
どうぞ
着物
(
きもの
)
だけは
赦
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい』
151
杢助
『ヨシ、
152
それなら
着物
(
きもの
)
は
其
(
その
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
かう。
153
俺
(
おれ
)
も
泥棒
(
どろばう
)
になつたと
云
(
い
)
はれては
末代
(
まつだい
)
の
恥
(
はぢ
)
だから……、
154
併
(
しか
)
し
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
は
一度
(
いちど
)
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
したら
後
(
あと
)
へは
引
(
ひ
)
かぬ
男
(
をとこ
)
だ。
155
サア、
156
一度
(
いちど
)
にワンと
言
(
い
)
へ』
157
一同
(
いちどう
)
は
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ
乍
(
なが
)
ら、
158
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で、
159
甲乙丙
『イイ……ワン』
160
と
吠
(
ほ
)
える。
161
杢助
『コレヤコレヤ
貴様
(
きさま
)
、
162
ワンの
前
(
まへ
)
に
何
(
なん
)
だか
付
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
たぢやないか』
163
甲
『ハイ……イウイウ……
幽霊
(
いうれい
)
が
付
(
つ
)
いて
居
(
を
)
りました』
164
杢助
『
貴様
(
きさま
)
は……ワンと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら……イワンと
吐
(
ぬか
)
すのか。
165
どこまでも
負惜
(
まけをし
)
みの
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
だな。
166
マア
一時
(
ひととき
)
ばかり……ワンは
是
(
こ
)
れ
限
(
ぎ
)
りで
堪
(
こら
)
へてやる、
167
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
赤裸
(
はだか
)
で
辛抱
(
しんばう
)
致
(
いた
)
せ。
168
何程
(
なにほど
)
寒
(
さむ
)
くても
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
はカマ
ワン
ぢや、
169
アハヽヽヽ。
170
モシモシお
女中
(
ぢよちう
)
さま、
171
お
前
(
まへ
)
さまは
何処
(
どこ
)
のお
方
(
かた
)
だ』
172
女(お勝)
『ハイ、
173
妾
(
わたし
)
は
宇都山
(
うづやま
)
村
(
むら
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
174
老人
(
としより
)
が
急病
(
きふびやう
)
で
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
りますので、
175
我
(
わが
)
夫
(
をつと
)
の
玉治別
(
たまはるわけ
)
に
知
(
し
)
らさうと
思
(
おも
)
ひ、
176
聖地
(
せいち
)
へ
参
(
まゐ
)
つて
承
(
うけたま
)
はれば、
177
高春山
(
たかはるやま
)
の
言霊戦
(
ことたません
)
に
出陣
(
しゆつぢん
)
したとやら、
178
旦夕
(
たんせき
)
に
迫
(
せま
)
る
父
(
ちち
)
の
生命
(
いのち
)
、
179
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
妾
(
わたし
)
も
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
なれども、
180
高春山
(
たかはるやま
)
の
言向
(
ことむ
)
け
戦
(
せん
)
に
御
(
お
)
加勢
(
かせい
)
をなし、
181
父
(
ちち
)
の
生存中
(
せいぞんちゆう
)
に
夫
(
をつと
)
に
会
(
あ
)
はせたいばつかりにやつて
来
(
き
)
ました』
182
杢助
『
何
(
なに
)
、
183
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
貴女
(
あなた
)
の
夫
(
をつと
)
とな。
184
コレコレ
玉治別
(
たまはるわけ
)
さま、
185
奥
(
おく
)
さまがお
見
(
み
)
えになつて
居
(
ゐ
)
ます。
186
なぜ
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
をなさいませぬか』
187
玉治別
『
私
(
わたし
)
は
高春山
(
たかはるやま
)
の
言霊戦
(
ことたません
)
が
済
(
す
)
みますまで、
188
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
189
断
(
だん
)
じて
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
ではありますまい』
190
杢助
『それでも
今
(
いま
)
本人
(
ほんにん
)
がさう
仰有
(
おつしや
)
つたではありませぬか』
191
玉治別
『ヤアそれなる
女
(
をんな
)
、
192
我
(
わが
)
女房
(
にようばう
)
の
名
(
な
)
を
詐
(
いつは
)
り──
不届
(
ふとどき
)
至極
(
しごく
)
な
奴
(
やつ
)
、
193
我
(
わが
)
女房
(
にようばう
)
は
女々
(
めめ
)
しくも
神業
(
しんげふ
)
のため
出陣
(
しゆつぢん
)
したる
夫
(
をつと
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふ
如
(
ごと
)
き
狼狽者
(
うろたへもの
)
ではない。
194
仮令
(
たとへ
)
親
(
おや
)
の
急病
(
きふびやう
)
なればとて、
195
公私
(
こうし
)
を
混同
(
こんどう
)
し、
196
夫
(
をつと
)
の
大事
(
だいじ
)
を
誤
(
あやま
)
らしむる
如
(
ごと
)
き
馬鹿
(
ばか
)
な
女房
(
にようばう
)
は
持
(
も
)
たない。
197
何
(
いづ
)
れの
女
(
をんな
)
か
知
(
し
)
らねども
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れ』
198
お
勝
(
かつ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ、
199
お勝
『あなたの
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
……イヤお
言葉
(
ことば
)
はよく
分
(
わか
)
りました。
200
決
(
けつ
)
して
妾
(
わたし
)
は
玉治別
(
たまはるわけ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
女房
(
にようばう
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ』
201
杢助
『
不届
(
ふとど
)
きな
女
(
をんな
)
共
(
ども
)
奴
(
め
)
、
202
我々
(
われわれ
)
男子
(
だんし
)
を
誑
(
たば
)
かるとは
何事
(
なにごと
)
ぞ。
203
…コレコレ
玉治別
(
たまはるわけ
)
さま、
204
一
(
ひと
)
つ
懲
(
こ
)
らしめておやりなさい』
205
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
熱涙
(
ねつるゐ
)
を
呑
(
の
)
み
乍
(
なが
)
ら、
206
お
勝
(
かつ
)
の
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
り、
207
玉治別
『
不届
(
ふとど
)
き
至極
(
しごく
)
の
女
(
をんな
)
奴
(
め
)
、
208
汝
(
なんぢ
)
は
真裸
(
まつぱだか
)
にして
河
(
かは
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んでも、
209
尚
(
なほ
)
足
(
た
)
らぬ
不届
(
ふとどき
)
な
奴
(
やつ
)
なれど、
210
今日
(
けふ
)
は
差赦
(
さしゆる
)
して
遣
(
つか
)
はす。
211
サア
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れ。
212
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
女房
(
にようばう
)
は
決
(
けつ
)
してそんな
未練
(
みれん
)
な
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
者
(
もの
)
ではないぞ。
213
アハヽヽヽ、
214
杢助
(
もくすけ
)
さま、
215
妙
(
めう
)
な
奴
(
やつ
)
もあるものですな』
216
杢助
『それなる
女
(
をんな
)
、
217
汝
(
なんぢ
)
も
必
(
かなら
)
ず
夫
(
をつと
)
があるであらう。
218
夫
(
をつと
)
の
名誉
(
めいよ
)
を
毀損
(
きそん
)
する
様
(
やう
)
な
行状
(
ぎやうじやう
)
は
決
(
けつ
)
して
致
(
いた
)
すでないぞや。
219
又
(
また
)
汝
(
なんぢ
)
夫
(
をつと
)
ありとせば、
220
必
(
かなら
)
ず
夫
(
をつと
)
の
無情
(
むじやう
)
を
恨
(
うら
)
んではならぬぞや』
221
お
勝
(
かつ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
222
お勝
『ハイ
妾
(
わたし
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
りの
狼狽
(
うろた
)
へた
女
(
をんな
)
で
御座
(
ござ
)
います。
223
まだ
幸
(
さいはひ
)
に
夫
(
をつと
)
は
持
(
も
)
ちませぬ。
224
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
225
若
(
も
)
し
霊魂
(
れいこん
)
上
(
じやう
)
の
夫
(
をつと
)
がありとすれば、
226
如何
(
いか
)
なる
無情
(
むじやう
)
な
仕打
(
しうち
)
をなされましても
決
(
けつ
)
して
恨
(
うら
)
みとは
存
(
ぞん
)
じませぬ。
227
女
(
をんな
)
の
はした
ない
心
(
こころ
)
から、
228
皆様
(
みなさま
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかける
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
は
慎
(
つつし
)
みます。
229
これから
妾
(
わたし
)
も
国
(
くに
)
へ
帰
(
かへ
)
りますから、
230
皆様
(
みなさま
)
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
231
玉治別
『
道中
(
だうちう
)
は
小盗人
(
こぬすと
)
が
往来
(
わうらい
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るから、
232
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
233
随分
(
ずゐぶん
)
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて
帰
(
かへ
)
つたがよからうぞ』
234
お勝
『ハイハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
235
あなたの
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
なお
言葉
(
ことば
)
はどこまでも
忘
(
わす
)
れませぬ。
236
左様
(
さやう
)
なれば
不束者
(
ふつつかもの
)
の
女
(
をんな
)
、
237
これでお
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
します。
238
随分
(
ずゐぶん
)
皆様
(
みなさま
)
、
239
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けてお
出
(
い
)
でなさいませ。
240
御
(
ご
)
成功
(
せいこう
)
を
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
ります』
241
杢助
『ヤア
御
(
お
)
女中
(
ぢよちう
)
、
242
御
(
ご
)
心底
(
しんてい
)
は
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
す。
243
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
だとて、
244
血
(
ち
)
もあれば
涙
(
なみだ
)
もある。
245
今
(
いま
)
は
何
(
なに
)
も
言
(
い
)
はぬが
花
(
はな
)
、
246
又
(
また
)
お
目
(
め
)
にかかる
事
(
こと
)
がありませう』
247
お勝
『ハイハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
248
とシホシホとして
足早
(
あしばや
)
に
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り、
249
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り、
250
月夜
(
つきよ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
251
杢助
『
玉治別
(
たまはるわけ
)
さま、
252
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
に
出会
(
でつくは
)
したものですなア。
253
随分
(
ずゐぶん
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
をして
居
(
を
)
ると、
254
局面
(
きよくめん
)
が
忽
(
たちま
)
ち
一変
(
いつぺん
)
し、
255
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
があつたり、
256
辛
(
つら
)
い
事
(
こと
)
があつたり、
257
イヤもう
大変
(
たいへん
)
に
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
きました。
258
あなたも
定
(
さだ
)
めて
御
(
ご
)
修行
(
しうぎやう
)
が
出来
(
でき
)
たでせう』
259
玉治別
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う。
260
千万
(
せんばん
)
無量
(
むりやう
)
の
思
(
おも
)
ひ……
否
(
いな
)
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
きました』
261
お初
『サアサア
小父
(
をぢ
)
さま、
262
お
父
(
とう
)
さま、
263
ボツボツ
参
(
まゐ
)
りませう』
264
杢助
(
もくすけ
)
は
負
(
お
)
うた
子
(
こ
)
に
教
(
をし
)
へられ、
265
浅瀬
(
あさせ
)
を
渡
(
わた
)
る
心地
(
ここち
)
にて、
266
森林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
を
山上
(
さんじやう
)
目
(
め
)
がけてスタスタと
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
267
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
時々
(
ときどき
)
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
268
ワザと
元気
(
げんき
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
269
後
(
あと
)
に
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
270
お
勝
(
かつ
)
は
道々
(
みちみち
)
小声
(
こごゑ
)
に
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
271
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて
帰路
(
きろ
)
に
就
(
つ
)
いた。
272
お勝
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
273
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわけ
)
る
274
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
275
玉治別
(
たまはるわけ
)
と
現
(
あら
)
はれて
276
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神言
(
かみごと
)
を
277
畏
(
かしこ
)
みまつり
三人
(
みたり
)
連
(
づ
)
れ
278
高春山
(
たかはるやま
)
に
潔
(
いさぎよ
)
く
279
出
(
い
)
でます
後
(
あと
)
に
悲
(
かな
)
しくも
280
力
(
ちから
)
と
思
(
おも
)
ふ
父上
(
ちちうへ
)
は
281
俄
(
にはか
)
の
病
(
やまひ
)
に
臥
(
ふ
)
し
給
(
たま
)
ひ
282
命
(
めい
)
旦夕
(
たんせき
)
に
迫
(
せま
)
り
来
(
く
)
る
283
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
284
兄
(
あに
)
の
命
(
みこと
)
はましませど
285
義理
(
ぎり
)
の
中
(
なか
)
なる
弟
(
おとうと
)
の
286
玉治別
(
たまはるわけ
)
のわが
夫
(
をつと
)
287
父
(
ちち
)
の
死
(
し
)
に
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はずして
288
空
(
むな
)
しく
帰
(
かへ
)
り
給
(
たま
)
ひなば
289
何
(
なん
)
とて
道
(
みち
)
に
叶
(
かな
)
ふべき
290
神
(
かみ
)
を
敬
(
ゐやま
)
ひわが
親
(
おや
)
に
291
孝養
(
かうやう
)
尽
(
つく
)
すは
子
(
こ
)
たる
身
(
み
)
の
292
務
(
つと
)
めと
固
(
かた
)
く
聞
(
き
)
くからは
293
女房
(
にようばう
)
の
身
(
み
)
として
棄
(
す
)
てらりよか
294
兄
(
あに
)
の
命
(
みこと
)
に
許
(
ゆる
)
されて
295
父
(
ちち
)
の
病気
(
びやうき
)
を
救
(
すく
)
はむと
296
聖地
(
せいち
)
に
参
(
まゐ
)
り
真心
(
まごころ
)
を
297
籠
(
こ
)
めて
恢復
(
くわいふく
)
祈
(
いの
)
りつつ
298
心
(
こころ
)
の
闇
(
やみ
)
に
包
(
つつ
)
まれて
299
遠
(
とほ
)
き
路
(
みち
)
をばスタスタと
300
玉治別
(
たまはるわけ
)
や
国依別
(
くによりわけ
)
の
301
悲
(
かな
)
しき
仲
(
なか
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
に
302
父
(
ちち
)
の
様子
(
やうす
)
を
知
(
し
)
らさむと
303
来
(
きた
)
りて
見
(
み
)
ればアルプスの
304
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
手下
(
てした
)
共
(
ども
)
305
われを
捉
(
とら
)
へて
難題
(
なんだい
)
を
306
吹
(
ふ
)
きかけ
来
(
きた
)
る
恐
(
おそ
)
ろしさ
307
わが
身
(
み
)
危
(
あや
)
ふくなりし
時
(
とき
)
308
忽
(
たちま
)
ち
木蔭
(
こかげ
)
に
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
309
杢助
(
もくすけ
)
さまとか
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
が
310
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひて
悪者
(
わるもの
)
を
311
追
(
お
)
ひ
退
(
しりぞ
)
けて
下
(
くだ
)
さつた
312
あゝ
有難
(
ありがた
)
し
有難
(
ありがた
)
し
313
神
(
かみ
)
は
妾
(
わたし
)
をどこまでも
314
労
(
いた
)
はりますか
尊
(
たふと
)
やと
315
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
ぶ
折
(
をり
)
も
折
(
をり
)
316
夫
(
をつと
)
の
声
(
こゑ
)
によく
似
(
に
)
たる
317
其
(
その
)
言霊
(
ことたま
)
に
胸
(
むね
)
躍
(
をど
)
り
318
飛
(
と
)
び
付
(
つ
)
きたくは
思
(
おも
)
へども
319
悪魔
(
あくま
)
の
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
りたる
320
玉治別
(
たまはるわけ
)
はどこまでも
321
妻
(
つま
)
ではないとしらばくれ
322
千万
(
せんまん
)
無量
(
むりやう
)
の
悲
(
かな
)
しみを
323
心
(
こころ
)
に
包
(
つつ
)
み
玉
(
たま
)
ひつつ
324
事理
(
じり
)
明白
(
めいはく
)
な
御
(
おん
)
教
(
をしへ
)
325
世間
(
せけん
)
の
義理
(
ぎり
)
にからまれて
326
不覚
(
ふかく
)
を
取
(
と
)
りし
妾
(
われ
)
こそは
327
実
(
げ
)
に
浅
(
あさ
)
ましき
心
(
こころ
)
かな
328
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
329
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
330
迷
(
まよ
)
ひ
果
(
は
)
てたるわが
心
(
こころ
)
331
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
332
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しませ
三五
(
あななひ
)
の
333
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
334
妾
(
わたし
)
は
是
(
これ
)
より
本国
(
ほんごく
)
へ
335
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
に
継
(
つ
)
いで
立帰
(
たちかへ
)
り
336
父
(
ちち
)
の
看護
(
かんご
)
を
余念
(
よねん
)
なく
337
国依別
(
くによりわけ
)
のわが
兄
(
あに
)
や
338
玉治別
(
たまはるわけ
)
のわが
夫
(
つま
)
に
339
代
(
かは
)
りて
孝養
(
かうやう
)
尽
(
つく
)
します
340
何卒
(
なにとぞ
)
許
(
ゆる
)
させ
賜
(
たま
)
へかし
341
女心
(
をんなごころ
)
の
はした
なき
342
今
(
いま
)
の
仕業
(
しわざ
)
を
大神
(
おほかみ
)
の
343
広
(
ひろ
)
き
心
(
こころ
)
に
見直
(
みなほ
)
して
344
迷
(
まよ
)
ひの
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
せかし
345
仮令
(
たとへ
)
天地
(
てんち
)
は
変
(
かは
)
るとも
346
妾
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
は
何時
(
いつ
)
までも
347
今
(
いま
)
賜
(
たま
)
はりし
御教
(
みをしへ
)
を
348
胆
(
きも
)
に
銘
(
めい
)
じて
忘
(
わす
)
れまじ
349
神
(
かみ
)
の
隈手
(
くまで
)
も
恙
(
つつが
)
なく
350
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
らせ
玉
(
たま
)
へかし
351
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
352
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
353
と
樹木
(
じゆもく
)
鬱蒼
(
うつさう
)
たる
猛獣
(
まうじう
)
の
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
山路
(
やまみち
)
を、
354
一人
(
ひとり
)
スタスタ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
355
お
勝
(
かつ
)
は
武志
(
たけし
)
の
宮
(
みや
)
の
社務所
(
ながどこ
)
に
漸
(
やうや
)
く
帰
(
かへ
)
り
着
(
つ
)
いた。
356
不思議
(
ふしぎ
)
や
父
(
ちち
)
の
松鷹彦
(
まつたかひこ
)
は、
357
今日
(
けふ
)
は
何時
(
いつ
)
もよりは
気分
(
きぶん
)
も
好
(
よ
)
しとて、
358
庭先
(
にはさき
)
の
枝振
(
えだぶ
)
りの
良
(
よ
)
い
松
(
まつ
)
を
眺
(
なが
)
めて、
359
天
(
あめ
)
の
真浦
(
まうら
)
に
介抱
(
かいほう
)
され
乍
(
なが
)
ら、
360
嬉
(
うれ
)
しげにお
勝
(
かつ
)
の
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
りし
姿
(
すがた
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
361
(
大正一一・五・二〇
旧四・二四
松村真澄
録)
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