霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 女権(ぢよけん)拡張(くわくちやう)〔六八四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻 篇:第3篇 男女共権 よみ(新仮名遣い):だんじょきょうけん
章:第10章 女権拡張 よみ(新仮名遣い):じょけんかくちょう 通し章番号:684
口述日:1922(大正11)年05月20日(旧04月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年4月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
竜国別は吹雪の山を高春山に向かって進んで行く。岩の陰に雪を避け、一夜を明かすことになった。
うつらうつらしていると、妙齢の美人が赤子を抱いてやってきた。女は、自分は浪速の者で高春山の鬼婆にさらわれていたのを、逃げてきたのだ、と言った。
竜国別は枯れ柴に火をつけて暖をとった。女は、高春山の内情に通じていると言って、竜国別と一緒に魔神征服に行こうと言う。竜国別は断るが、女は竜国別を誘惑しようとする。
女は自分の審神をしろと竜国別に迫り、竜国別を困惑させる。女は羽衣の舞を舞って竜国別の身魂の曇りを取ってやろうと言い出し、そのために赤子を抱いてくれるように、と竜国別に頼む。
竜国別は、魔神征服の途上、赤子とは言え女の子を抱くことを渋るが、女は女性がいかに勝れているかをとうとうと演説し、とうとう竜国別は不承不承に赤子を抱こうとする。
するとどこからともなく法螺貝の音が響き、大男が雪を踏んで現れると、女に対して大喝した。女は金毛九尾白面の悪狐の正体を表して逃げて行った。竜国別は肝をつぶして夢心地になってしまった。
またそこへ、美妙の音楽が聞こえて天女が現れた。先の大男は鬼武彦、天女は言依別の本守護神・言依姫であった。二柱は竜国別の急を救うために現れたのであった。
鬼武彦は、玉治別、国依別、竜国別の三人では高春山征服は荷が重いので、自分に三人の加勢を命ずるようにと言依姫に頼むが、言依姫はこれは三人の卒業試験だから、危急の場合以外は見守るようにと鬼武彦に依頼した。
竜国別は夢が覚めた心地して、宣伝歌を歌いながら進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-05-12 18:55:57 文字数:5746 OBC :rm2110
愛善世界社版:175頁 八幡書店版:第4輯 328頁 修補版: 校定版:181頁 普及版:78頁 初版: ページ備考:
001吹雪(ふぶき)烈(はげ)しき山(やま)の奥(おく)
002竜国別(たつくにわけ)の宣伝使(せんでんし)は
003高春山(たかはるやま)に向(むか)はむと
004猿(ましら)の声(こゑ)に耳(みみ)打(う)たれ
005心(こころ)イソイソ進(すす)み行(ゆ)く
006人煙(じんえん)稀(まれ)なる谷(たに)の道(みち)
007雪(ゆき)に埋(うづ)もれゆき暮(く)れて
008路傍(ろばう)に立(た)てる岩蔭(いはかげ)に
009少時(しばし)息(いき)をば休(やす)めける。
010 谷(たに)の片方(かたへ)の突出(つきで)た岩(いは)の蔭(かげ)に身(み)を寄(よ)せ、011一夜(いちや)を明(あ)かす事(こと)となりぬ。012竜国別(たつくにわけ)はウツラウツラと眠(ねむ)りに就(つ)きけるが、013フト耳(みみ)に入(い)りしはなまめかしき女(をんな)の声(こゑ)、014驚(おどろ)いて目(め)を醒(さ)ませば妙齢(めうれい)の美人(びじん)、015鬢(びん)のほつれ毛(げ)を頬(ほほ)の辺(あたり)に七八本(しちはちほん)垂(た)れ乍(なが)ら、016稍(やや)憂(うれ)ひを含(ふく)み、017一人(ひとり)の赤児(あかご)を抱(だ)き前方(ぜんぱう)に立(た)てり。
018竜国別『此(この)真夜中(まよなか)の雪路(ゆきみち)に女(をんな)の一人(ひとり)、019而(しか)も乳呑児(ちのみご)を抱(だ)いて、020何処(どこ)へ御(お)出(い)でなされますか』
021女『ハイ妾(わたし)は浪速(なには)の者(もの)で御座(ござ)います。022高春山(たかはるやま)の鬼婆(おにばば)に拐(かどは)かされ、023日夜(にちや)責苦(せめく)に遇(あ)ひ難渋(なんじふ)を致(いた)して居(を)りましたが、024情(なさけ)あるカーリンスと云(い)ふ婆(ばば)アの部下(ぶか)に想(おも)ひをかけられ、025ソツと救(すく)はれて此処迄(ここまで)逃(に)げ帰(かへ)りました。026併(しか)し乍(なが)ら何時(なんどき)追手(おつて)がかからうやら知(し)れませぬ。027どうぞ助(たす)けて下(くだ)さいませ。028妾(わたし)としても此(この)寒(さむ)さに凍(こご)え、029身体(しんたい)強直(きやうちよく)して一歩(ひとあし)も進(すす)む事(こと)が出来(でき)ないので御座(ござ)います。030どうぞ火(ひ)が御座(ござ)りますれば暖取(あた)らして下(くだ)さいませぬか』
031竜国別『それは御(ご)難儀(なんぎ)な事(こと)でせう。032此処(ここ)へ木(こ)の葉(は)を集(あつ)めて焚(た)く訳(わけ)にもゆかず、033困(こま)つたものですなア』
034女『どうぞ貴方(あなた)の暖(あたた)かいお体(からだ)の温(ぬく)みを分(わ)けて頂(いただ)くことは出来(でき)ますまいか。035最早(もはや)斯(か)うなつては、036恥(はぢ)も何(なに)も構(かま)うて居(を)れませぬ。037全身(ぜんしん)の血液(けつえき)が凝固(ぎようこ)しさうに御座(ござ)いますワ』
038竜国別『アー困(こま)つた事(こと)だなア。039今(いま)高春山(たかはるやま)の魔神(まがみ)の征服(せいふく)に向(むか)ふ途中(とちう)、040女(をんな)の肉体(にくたい)に触(ふ)れると云(い)ふ事(こと)は絶対(ぜつたい)に出来(でき)ない。041何(なに)か良(い)い考(かんが)へは出(で)ぬものかなア』
042と四辺(あたり)を見廻(みまは)せば、043雪明(ゆきあか)りに目(め)に付(つ)いたのは一束(ひとたば)の枯柴(かれしば)、044突出(つきで)た岩(いは)に蔽(おほ)はれて乾(かわ)いた儘(まま)に残(のこ)つて居(ゐ)る。
045竜国別『アー此処(ここ)に結構(けつこう)な薪(たきぎ)がある。046何人(なにびと)が刈(か)つて置(お)いたか知(し)らないが、047これも神(かみ)様(さま)の御(お)蔭(かげ)だ、048これを焚(た)いて暖(だん)を取(と)つたら如何(どう)でせう』
049女『それは好都合(かうつがふ)で御座(ござ)います。050どうぞ燃(も)やして下(くだ)さいませ。051しかし余(あま)り大(おほ)きな火(ひ)を焚(た)くと追手(おつて)の目標(めじるし)になつては困(こま)りますから……』
052竜国別『宜(よろ)しい宜(よろ)しい、053小(ちひ)さく燃(も)やしませう。054しかし雪(ゆき)の足形(あしかた)を索(たづ)ねて追手(おつて)が来(く)るかも知(し)れますまい』
055女『お蔭(かげ)で足跡(あしあと)は降(ふ)る雪(ゆき)が次々(つぎつぎ)に埋(うづ)めてくれましたから、056大丈夫(だいぢやうぶ)で御座(ござ)います』
057 竜国別(たつくにわけ)は燧(ひうち)を打(う)ち火(ひ)を出(だ)し、058薪(たきぎ)に点(つ)けて暖(だん)をとり、059女(をんな)も嬉(うれ)しげに手(て)を炙(あぶ)つて居(ゐ)る。
060竜国別『いまのあなたの御(お)話(はなし)に依(よ)れば、061高春山(たかはるやま)へ囚(とら)はれて居(を)られたとの事(こと)、062然(しか)らばアルプス教(けう)の内幕(うちまく)はよく御存(ごぞん)じでせうな』
063女『ハイよく承知(しようち)致(いた)して居(を)ります。064到底(たうてい)あなた方(がた)が三(さん)人(にん)や五(ご)人(にん)お出(い)でになつた所(ところ)で、065飛(と)んで火(ひ)に入(い)る夏(なつ)の虫(むし)ですよ、066お止(や)めになつた方(はう)が却(かへつ)てお身(み)の為(ため)だと思(おも)ひます』
067 竜国別(たつくにわけ)は不機嫌(ふきげん)な顔(かほ)で、
068竜国別『仮令(たとへ)幾万(いくまん)の強敵(きやうてき)があらうとも、069一旦(いつたん)我々(われわれ)は言依別(ことよりわけ)の教主(けうしゆ)より任命(にんめい)された以上(いじやう)は、070一(ひと)つの生命(いのち)が無(な)くなつても、071此(この)使命(しめい)を果(はた)さねばならないのだから、072行(ゆ)く所(ところ)迄(まで)行(ゆ)く積(つも)りです』
073女『それは大変(たいへん)な御(ご)決心(けつしん)で結構(けつこう)で御座(ござ)います。074妾(わたし)もあなたの様(やう)な気(き)の強(つよ)い御(お)方(かた)と手(て)を曳(ひ)いて、075今迄(いままで)鬼婆(おにばば)が妾(わたし)に加(くは)へた惨虐(ざんぎやく)の恨(うら)みを晴(は)らしたいのですから、076どうぞ伴(つ)れて行(い)つて下(くだ)さいませぬか』
077竜国別『イヤ滅相(めつさう)も無(な)い。078女(をんな)の方(かた)と道伴(みちづ)れなんか出来(でき)ますものか。079又(また)あなたに助(たす)けられて、080魔神(まがみ)の征服(せいふく)に行(い)つたと云(い)はれては、081末代(まつだい)の恥辱(はぢ)ですから、082それだけは平(ひら)に御(お)断(ことわ)り致(いた)します』
083女『随分(ずゐぶん)お堅(かた)い方(かた)ですなア。084さう云(い)ふ堅固(けんご)な精神(せいしん)の夫(をつと)が、085妾(わたし)も持(も)つて見(み)たう御座(ござ)いますワ』
086竜国別『コレコレ女中(ぢよちう)、087戯談(じやうだん)も良(よ)い加減(かげん)になさいませ。088貴女(あなた)は赤(あか)ん坊(ばう)を懐(ふところ)に抱(だ)いて居(ゐ)るぢやないか。089立派(りつぱ)な夫(をつと)があるに相違(さうゐ)はありますまい』
090女『イエイエ、091夫(をつと)はまだ持(も)つた事(こと)は御座(ござ)いませぬ』
092竜国別『夫(をつと)が無(な)いのに児(こ)があるとは、093一(ひと)つの不思議(ふしぎ)ではありませぬか』
094女『ホヽヽヽヽ、095三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)にも似合(にあ)はない事(こと)を仰有(おつしや)いますこと。096玉照姫(たまてるひめ)様(さま)の御(ご)生母(せいぼ)のお玉(たま)さまは、097夫(をつと)なしに妊娠(にんしん)なさつたぢやありませぬか』
098竜国別『それはさうだが、099ああ云(い)ふことはまた例外(れいぐわい)だ。100普通(ふつう)の女(をんな)にさう云(い)ふことがある道理(だうり)がない』
101女『妾(わたし)を普通(ふつう)一般(いつぱん)の女(をんな)と御覧(ごらん)になりましたか』
102竜国別『サア別(べつ)に斯(か)う見(み)た所(ところ)では、103何(なん)の変(かは)つた点(てん)もなし、104判別(はんべつ)がつきませぬワイ』
105女『妾(わたし)の素性(すじやう)が分(わか)らない様(やう)な事(こと)では審神者(さには)も駄目(だめ)ですよ。106どうして高春山(たかはるやま)の魔神(まがみ)を帰順(きじゆん)させる事(こと)が出来(でき)ませうか』
107竜国別『これは又(また)妙(めう)な女(をんな)に会(あ)つたものだ。108お前(まへ)は要(えう)するに化物(ばけもの)だらう』
109女『何(いづ)れ化物(ばけもの)には違(ちが)ひありませぬ。110併(しか)し化物(ばけもの)にも善(ぜん)と悪(あく)とがあります。111其(その)審神者(さには)をして下(くだ)さいな』
112竜国別『此(この)雪(ゆき)の降(ふ)るのに、113一人(ひとり)で山路(やまみち)を赤児(あかご)を抱(かか)へて歩(ある)くところを見(み)れば、114先(ま)づ立派(りつぱ)な者(もの)だなかりそうだ。115鷹依姫(たかよりひめ)の悪神(あくがみ)に苦(くる)しめられて逃(に)げて帰(かへ)つたところを見(み)れば、116どうせ碌(ろく)なものぢやなからうて』
117女『鷹依姫(たかよりひめ)に苦(くる)しめられた様(やう)な女(をんな)だから、118碌(ろく)な者(もの)で無(な)いと仰有(おつしや)りますが、119現在(げんざい)玉照姫(たまてるひめ)様(さま)をお生(う)み遊(あそ)ばしたお玉(たま)の方(かた)は、120三国(みくに)ケ岳(だけ)で蜈蚣姫(むかでひめ)に苦(くる)しめられたぢやありませぬか。121あなたの判断(はんだん)は正鵠(せいこう)を欠(か)いで居(ゐ)ますよ。122お玉(たま)さまは立派(りつぱ)だが、123妾(わたし)は雪路(ゆきみち)を夜中(よなか)に歩(ある)いて居(を)るから怪(あや)しいと云(い)ふ事(こと)が先入主(せんにふしゆ)になつて、124お目(め)が眩(くら)んだのぢやありますまいかなア』
125 竜国別(たつくにわけ)は両手(りやうて)を胸(むね)のあたりに組(く)んで太(ふと)い息(いき)をつき考(かんが)へ込(こ)む。126女(をんな)は薪(たきぎ)を先繰(せんぐ)り燻(く)べる。127二人(ふたり)の顔(かほ)は益々(ますます)明(あきら)かになつて来(き)た。128竜国別(たつくにわけ)はフト女(をんな)の顔(かほ)を見(み)ると、129二(ふた)つの耳(みみ)が馬(うま)の様(やう)にビリビリと動(うご)いて居(ゐ)るに気(き)が付(つ)いた。
130竜国別『あなたの耳(みみ)はどうしましたか。131人間(にんげん)なれば耳(みみ)は動(うご)かないのが通例(つうれい)だ。132お前(まへ)さまの耳(みみ)は不随意(ふずゐい)筋(きん)が発達(はつたつ)して居(を)ると見(み)えて、133畜生(ちくしやう)の様(やう)に自由(じいう)自在(じざい)に動(うご)く。134コレヤ屹度(きつと)魔性(ましやう)の女(をんな)に相違(さうゐ)あるまい』
135女『オホヽヽヽ、136耳(みみ)が動(うご)くのがそれ丈(だけ)気(き)になりますか。137あなたは耳(みみ)所(どころ)か肝腎(かんじん)の霊魂(みたま)まで頻(しき)りに動揺(どうえう)し、138ハートには激浪(げきらう)怒濤(どたう)が立(た)ち騒(さわ)いで居(を)るぢやありませぬか。139それの方(はう)がよつ程(ぽど)可笑(をか)しいワ、140ホヽヽヽヽ』
141竜国別『ハーテナ。142ますます分(わか)らなくなつて来(き)たワイ』
143女『本当(ほんたう)に妾(わたし)だつて、144あなたの様(やう)な分(わか)らぬ宣伝使(せんでんし)に出会(であ)うた事(こと)はありませぬワ。145神(かみ)様(さま)はイロイロ姿(すがた)をお変(へん)じ遊(あそ)ばすぢやありませぬか。146木(こ)の花姫(はなひめ)様(さま)を御覧(ごらん)なさい。147竜体(りうたい)にもなれば、148獣(けだもの)にもなり、149立派(りつぱ)な神(かみ)の姿(すがた)にも現(げん)じ、150乞食(こじき)にまで身(み)を窶(やつ)して衆生(しうじやう)済度(さいど)を遊(あそ)ばすのに、151妾(わたし)の耳(みみ)が動(うご)いたと云(い)つて軽率(けいそつ)にも獣(けもの)扱(あつか)ひなさるのは、152チツト聞(きこ)えないぢやありませぬか』
153 竜国別(たつくにわけ)は、
154竜国別『ハーテナー』
155と云(い)つた限(き)り、156又(また)俯向(うつむ)く。
157女『ハテナハテナと何程(なにほど)仰有(おつしや)つても、158あなたの身魂(みたま)が磨(みが)けねば、159此(この)談判(だんぱん)は何時(いつ)までも果(は)てませぬ。160ハテ悟(さと)りの悪(わる)い宣伝使(せんでんし)だこと、161ホヽヽヽヽ』
162竜国別『兎(と)も角(かく)今日(けふ)は本(ほん)守護神(しゆごじん)が不在(ふざい)だから、163番頭(ばんとう)の副(ふく)守護神(しゆごじん)が発動(はつどう)して居(を)るので、164根(ね)つからお前(まへ)さまの審神(さには)も出来(でき)ない。165本(ほん)守護神(しゆごじん)が帰(かへ)つてから、166ユツクリと御(お)答(こたへ)を致(いた)しませう』
167女『ホヽヽヽヽ、168うまい事(こと)仰有(おつしや)いますこと。169一時遁(いちじのが)れの言(い)ひ訳(わけ)でせう。170そんな痩我慢(やせがまん)を出(だ)して我(が)を張(は)らずに、171男(をとこ)らしくスツパリと、172身魂(みたま)が曇(くも)つて居(を)るので分(わか)らないから……と仰有(おつしや)つたらどうです。173妾(わたし)の素性(すじやう)を明(あ)かす為(ため)に、174今(いま)此処(ここ)で羽衣(はごろも)の舞(まひ)を舞(ま)うて見(み)せますから、175どうぞ此(この)赤(あか)ん坊(ばう)を一寸(ちよつと)抱(だ)いて下(くだ)さらぬか』
176竜国別『何(なに)は兎(と)もあれ、177旅(たび)の慰(なぐさ)めだ。178審神(さには)を兼(か)ねて其(その)舞(まひ)を拝見(はいけん)致(いた)さうかなア』
179女『どこまでも徹底(てつてい)的(てき)に、180我(が)の強(つよ)いお方(かた)ですこと、181ホヽヽヽヽ』
182竜国別『我(が)が無(な)ければならず、183我(が)があつてはならず、184我(が)は腹(はら)の中(なか)へキユツと締(し)め込(こ)みて落(お)ちついて居(ゐ)る身魂(みたま)でないと、185誠(まこと)の御用(ごよう)は出来(でき)ませぬワイ』
186女『ホヽヽヽヽ、187三五教(あななひけう)の御(ご)神諭(しんゆ)を其(その)儘(まま)拝借(はいしやく)して、188巧妙(うま)い事(こと)仰有(おつしや)りますこと』
189竜国別『日進(につしん)月歩(げつぽ)の世(よ)の中(なか)、190知識(ちしき)を世界(せかい)に求(もと)めると云(い)つて、191善(い)い事(こと)は直(ただち)に取(と)つて我(わが)物(もの)とするのが、192豁達(かつたつ)自在(じざい)の文明人(ぶんめいじん)としての本領(ほんりやう)だ。193お前(まへ)さまは浪速(なには)の土地(とち)に生(うま)れたものだと云(い)つたが、194文化(ぶんくわ)生活(せいくわつ)と云(い)ふものはどんなものだか知(し)つて居(ゐ)るかい』
195女『ホヽヽヽヽ、196文化(ぶんくわ)生活(せいくわつ)が聞(き)いて呆(あき)れますよ。197そんなことは疾(とう)の昔(むかし)に御存(ごぞん)じの妾(わたし)、198文(ぶん)と云(い)ふのは蚊(か)の活動(くわつどう)する羽翼(うよく)の声(こゑ)……一秒(いちべう)時間(じくわん)に何万回(なんまんくわい)とも知(し)れぬ羽翼(うよく)の廻転(くわいてん)から起(おこ)る声音(せいおん)ですよ。199化(くわ)と云(い)ふのは人(ひと)の褌(ふんどし)で相撲(すまふ)をとつたり顔(かほ)を舐(な)めたりして、200生血(いきち)を絞(しぼ)り自分(じぶん)一人(ひとり)うまい汁(しる)を吸(す)ふと云(い)ふ生活(せいくわつ)でせう。201体主(たいしゆ)霊従(れいじう)、202我利(がり)々々(がり)亡者(まうじや)の充満(じうまん)した世(よ)の中(なか)を矯直(ためなほ)す為(ため)に、203国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)が変性(へんじやう)男子(なんし)の生宮(いきみや)を借(か)つて教(をしへ)を垂(た)れさせられ、204其(その)御心(みこころ)を世界(せかい)に宣伝(せんでん)するお前(まへ)さま達(たち)が、205悪逆(あくぎやく)非道(ひだう)の利己主義(われよし)の文化(ぶんくわ)生活(せいくわつ)を主張(しゆちやう)するとは、206逆様(さかさま)の世(よ)の中(なか)とは云(い)ひ乍(なが)ら、207実(じつ)に矛盾(むじゆん)したものですなア。208それだから神(かみ)様(さま)がこれ丈(だけ)沢山(たくさん)の宣伝使(せんでんし)があつても、209誠(まこと)の解(わか)つた者(もの)は一柱(ひとはしら)も無(な)いと云(い)つて、210御(お)悔(くや)み遊(あそ)ばすのですよ。211三五教(あななひけう)を破(やぶ)る者(もの)は依然(やつぱり)三五教(あななひけう)にあるとは千古(せんこ)不磨(ふま)の金言(きんげん)ですワ。212妾(わたし)は此(この)第一言(だいいちごん)に対(たい)し無量(むりやう)の感(かん)に打(う)たれて居(ゐ)ます。213サア妾(わたし)がこれから羽衣(はごろも)の舞(まひ)を舞(ま)うて、214尊(たふと)き天(てん)の神(かみ)様(さま)を御(ご)招待(せうたい)申上(まをしあ)げ、215貴方(あなた)の心(こころ)の岩戸(いはと)を開(ひら)いて見(み)せませう。216どうぞ此(この)赤(あか)ん坊(ばう)を抱(かか)へて下(くだ)さいませ』
217竜国別『随分(ずゐぶん)愛(あい)らしいお子(こ)だ。218併(しか)し男(をとこ)ですか、219女(をんな)ですか』
220女『三十三(さんじふさん)相(さう)揃(そろ)うた女(をんな)です。221女(をんな)の赤(あか)ん坊(ばう)です』
222竜国別『ヤアそれならば御免(ごめん)蒙(かうむ)りたい。223女(をんな)を……仮令(たとへ)子供(こども)にもせよ、224魔神(まがみ)の征討(せいたう)に上(のぼ)る我々(われわれ)、225抱(だ)く訳(わけ)には行(ゆ)きますまい』
226女『何(なに)を仰有(おつしや)いますか。227女(をんな)位(ぐらゐ)世(よ)の中(なか)に潔白(けつぱく)なものはありますまい。228あなた方(がた)は二(ふた)つ目(め)には婦人(ふじん)に対(たい)し、229軽侮(けいぶ)の目(め)を以(もつ)て臨(のぞ)まれるのが怪(け)しからぬ。230我々(われわれ)は新(あたら)しい婦人(ふじん)となつてどこまでも女権(ぢよけん)拡張(くわくちやう)をやらねばならない。231婦人(ふじん)の代議士(だいぎし)さへ選出(せんしゆつ)される世(よ)の中(なか)に何(なん)と云(い)ふ頭脳(あたま)の古(ふる)い事(こと)を仰有(おつしや)るのでせう』
232竜国別『何(なん)と云(い)つても、233男(をとこ)は陽(やう)、234女(をんな)は陰(いん)だ。235おまけに月(つき)に七日(なぬか)の汚(けが)れがある。236そんな汚(けが)れた女(をんな)に男(をとこ)が触(さは)つてどうなるものか。237清(きよ)きが上(うへ)にも清(きよ)くせなくては、238神業(しんげふ)が勤(つと)まりますまい』
239女『男(をとこ)位(くらゐ)不潔苦(むさくる)しい肉体(にくたい)はありますまい。240十三(じふさん)元素(げんそ)とか、241十五(じふご)元素(げんそ)にて固(かた)め上(あ)げた肉体(にくたい)の、242半(なか)ば腐敗(ふはい)せる燐火(りんくわ)の燃(も)える、243臭気(しうき)の激(はげ)しい醜体(しうたい)を持(も)ち乍(なが)ら、244月(つき)に一(いつ)週間(しうかん)づつ汚(けが)れを排除(はいじよ)し、245清(きよ)められた女(をんな)の肉体(にくたい)が汚(けが)れるとは、246ソラまア何(なん)とした分(わか)らぬ事(こと)を仰有(おつしや)るのでせう。247開闢(かいびやく)の初(はじめ)より、248女(をんな)ならでは夜(よ)の明(あ)けぬ国(くに)と云(い)ふぢやありませぬか。249太陽界(たいやうかい)を治(しろ)しめす大神(おほかみ)様(さま)は男(をとこ)でしたか。250木花(このはな)咲耶姫(さくやひめ)様(さま)はどうでせう。251変性(へんじやう)男子(なんし)の身魂(みたま)、252国治立(くにはるたちの)命(みこと)様(さま)の肉(にく)の宮(みや)は男(をとこ)ですか、253よく考(かんが)へて御覧(ごらん)なさい』
254竜国別『短兵急(たんぺいきふ)にさう攻撃(こうげき)されては、255二(に)の矢(や)が継(つ)げませぬ。256併(しか)し牝鶏(ひんけい)暁(あかつき)を告(つ)ぐる時(とき)は其(その)家(いへ)亡(ほろ)ぶ、257と云(い)ふ事(こと)がある。258何(なん)と云(い)つても牝鶏(めんどり)は牝鶏(めんどり)だ。259何程(なにほど)女(をんな)が男(をとこ)の真似(まね)をしようと思(おも)つても、260第一(だいいち)体格(たいかく)が劣(おと)つて居(を)る。261鼻下(びか)に髭(ひげ)もなければ、262腮髯(あごひげ)もない。263それから見(み)ても男尊(だんそん)女卑(ぢよひ)と云(い)ふ事(こと)は証明(しようめい)されるぢやないか』
264女『よく掃清(はききよ)められた庭(には)には、265雑草(ざつさう)は一本(いつぽん)も生(は)えて居(を)りますまい。266鼻(はな)の下(した)を長(なが)くして女(をんな)に洟(はな)をたらす天罰(てんばつ)の酬(むく)いとして、267雑草(ざつさう)がムシヤクシヤと生(は)えて居(を)るのだ。268お前(まへ)さまは髯(ひげ)を大変(たいへん)自慢(じまん)にして居(を)るが、269其(その)髯(ひげ)は男(をとこ)の卑劣(ひれつ)な根性(こんじやう)を隠(かく)す為(ため)の道具(だうぐ)だ。270つまり世間(せけん)に卑下(ひげ)をせなくてはならぬ所(ところ)を、271神(かみ)様(さま)のお恵(めぐみ)で包(つつ)む様(やう)にして貰(もら)つて居(ゐ)るのだから、272ヒゲと云(い)ふのですよ、273オホヽヽヽ』
274竜国別『どこまでも男子(だんし)を馬鹿(ばか)にするぢやないか。275俺(わし)は天下(てんか)の男子(だんし)に代(かは)つて、276大(おほ)いに男尊(だんそん)女卑(ぢよひ)の至当(したう)なる道理(だうり)を徹底(てつてい)させなくてはならない。277お転婆(てんば)女(をんな)の跋扈(ばつこ)する世(よ)の中(なか)だから……』
278女『ホヽヽヽヽ、279男(をとこ)位(くらゐ)得手(えて)勝手(かつて)な者(もの)がありませうか。280女房(にようばう)に口(くち)の先(さき)でウマい事(こと)ばつかり言(い)つて、281社交(しやかう)の為(ため)だとか、282外交(ぐわいかう)手段(しゆだん)だとか、283甘(うま)い辞令(じれい)を編(あ)み出(だ)して女房(にようばう)の手前(てまへ)を繕(つく)ろひ、284狐鼠(こそ)々々(こそ)と家(いへ)を飛(と)び出(だ)し、285スベタ女(をんな)に酌(しやく)をさせ、286涎(よだれ)をたらして、287間(ま)がな隙(すき)がなズボリ込(こ)み、288スゴスゴと家(うち)へ帰(かへ)つては、289山(やま)の神(かみ)に如何(どう)してウマク弁解(べんかい)しようかと、290そんな事(こと)ばかりに心(こころ)を悩(なや)ましてゐる、291腑甲斐(ふがひ)ない男(をとこ)は、292世界(せかい)に九分(くぶ)九厘(くりん)と云(い)つても差支(さしつかへ)ありますまい。293ヤツパリ女(をんな)は家庭(かてい)の女王(ぢよわう)ですよ。294女(をんな)がそれ程(ほど)卑(いや)しいものなら、295なぜ亭主(おやぢ)になつた男(をとこ)はそれ丈(だけ)女房(にようばう)に遠慮(ゑんりよ)をしたり、296弁解(べんかい)をするのだらう。297何(なん)と云(い)つても男(をとこ)は下劣(げれつ)ですよ。298天下(てんか)の事(こと)は一切(いつさい)女(をんな)でなければ解決(かいけつ)はつきますまい』
299竜国別『お前(まへ)さまは浪速(なには)の土地(とち)に生(うま)れた丈(だけ)に、300新刊(しんかん)雑誌(ざつし)でも沢山(たくさん)に噛(かぢ)つて居(ゐ)ると見(み)え、301随分(ずゐぶん)口先(くちさき)は巧妙(うま)いものだなア』
302女『日進(につしん)月歩(げつぽ)の世(よ)の中(なか)、303一(いち)日(にち)新聞紙(しんぶんし)を見(み)なくても雑誌(ざつし)を繙(ひもと)かなくても、304社会(しやくわい)に遅(おく)れて了(しま)ふのですから、305女(をんな)は十分(じふぶん)に時勢(じせい)に遅(おく)れない様(やう)に注意(ちゆうい)を払(はら)つて居(を)りますよ。306男(をとこ)の様(やう)にスベタ女(をんな)の機嫌(きげん)を取(と)つたり女房(にようばう)の顔色(かほいろ)を見(み)て弁解(べんかい)ばかりに心力(しんりよく)を費消(ひせう)する野呂作(のろさく)とは、307大(おほい)に趣(おもむき)が違(ちが)ふのです。308グヅグヅして居(ゐ)ると、309今(いま)に女尊(ぢよそん)男卑(だんぴ)の実(じつ)が現(あら)はれ、310亭主(おやぢ)は赤(あか)ん坊(ばう)を背(せな)にひつ括(くく)り、311鍋(なべ)の下(した)から、312走(はし)り元(もと)から、313何(なに)から何(なに)まで、314女房(にようばう)の頤使(いし)に従(したが)つて、315御用(ごよう)を承(うけたま)はらねばならぬ様(やう)になつて来(き)ますよ。316現(げん)に今(いま)でもチヨコチヨコ、317さういふ事(こと)が実現(じつげん)して居(ゐ)ます。318女(をんな)は長煙管(ながぎせる)を銜(くは)へながら、319腮(あご)で指図(さしづ)をして居(を)る例(れい)は沢山(たくさん)あるのです。320これも時代(じだい)の趨勢(すうせい)だから、321坂(さか)に車(くるま)を押(お)す事(こと)は出来(でき)ませぬ。322男子(だんし)は須(すべか)らく沈黙(ちんもく)を守(まも)り、323従順(じうじゆん)の態度(たいど)を執(と)るのが、324今後(こんご)の男子(だんし)の立場(たちば)として安全(あんぜん)第一(だいいち)の良法(りやうはふ)と考(かんが)へますワ、325オホヽヽヽ』
326竜国別『イヤもう是(こ)れ位(くらゐ)で、327女権(ぢよけん)拡張論(くわくちやうろん)の演説(えんぜつ)は中止(ちゆうし)を命(めい)じませう』
328女『そんなら此(この)赤(あか)ん坊(ばう)を抱(だ)いて呉(く)れますか』
329竜国別『エー仕方(しかた)がない。330そんなら今日(けふ)に限(かぎ)りて女尊(ぢよそん)男卑(だんぴ)の実(じつ)を示(しめ)しませう。331併(しか)し明日(あす)からは捲土(けんど)重来(ぢゆうらい)、332男子(だんし)の為(ため)に大気焔(だいきえん)を吐(は)いて、333現代(げんだい)のハイカラ婦人(ふじん)の心胆(しんたん)を寒(さむ)からしめる覚悟(かくご)だから、334其(その)積(つも)りで応戦(おうせん)準備(じゆんび)をなさるが良(よ)からう』
335 斯(か)かる所(ところ)へ何処(いづく)ともなく「ブーブー」と法螺貝(ほらがひ)を吹(ふ)く声(こゑ)、336谺(こだま)に響(ひび)き出(だ)した。337女(をんな)はあたりをキヨロキヨロ見廻(みまは)し、338心(こころ)落(おち)つかぬ様子(やうす)である。339ザクザクと雪(ゆき)踏(ふ)み鳴(な)らし、340此(この)場(ば)に現(あら)はれた大(だい)の男(をとこ)、341此(この)態(てい)を見(み)て、
342男(鬼武彦)『汝(なんぢ)魔性(ましやう)の女(をんな)、343そこを動(うご)くなツ』
344と大喝(だいかつ)した。345女(をんな)は乳呑児(ちのみご)を火中(くわちう)に投(とう)じ、346忽(たちま)ち金毛(きんまう)九尾(きうび)白面(はくめん)の悪狐(あくこ)となつて、347宙空(ちうくう)をかけり姿(すがた)を隠(かく)したり。348竜国別(たつくにわけ)はこれを見(み)て肝(きも)を潰(つぶ)し、349夢心地(ゆめごこち)に入(い)つて了(しま)つた。350又(また)もや大空(おほぞら)に美妙(びめう)の音楽(おんがく)が聞(きこ)えて来(き)た。351ややあつて又(また)もや降(くだ)る天女(てんによ)の姿(すがた)、352巨人(きよじん)の前(まへ)に現(あら)はれて、
353女神(言依姫)『アヽ其方(そなた)は鬼武彦(おにたけひこ)様(さま)。354よく竜国別(たつくにわけ)を助(たす)けて下(くだ)さりました。355妾(わらは)は聖地(せいち)に於(おい)て竜国別(たつくにわけ)が危急(ききふ)を悟(さと)り、356取(と)る物(もの)も取敢(とりあ)へず救援(きうゑん)に向(むか)うた言依別(ことよりわけ)の本(ほん)守護神(しゆごじん)言依姫(ことよりひめ)で御座(ござ)ります』
357鬼武彦『何(なに)、358これしきの事(こと)に御(お)褒(ほ)めの詞(ことば)を頂戴(ちやうだい)致(いた)しまして、359実(じつ)に汗顔(かんがん)の至(いた)りで御座(ござ)ります。360併(しか)し竜国別(たつくにわけ)、361玉治別(たまはるわけ)、362国依別(くによりわけ)の三(さん)人(にん)では、363余(あま)りに高春山(たかはるやま)の征服(せいふく)は、364荷(に)が重(おも)すぎる様(やう)ですから、365私(わたくし)に加勢(かせい)を命(めい)じて頂(いただ)けませぬか』
366言依姫『彼(かれ)等(ら)三(さん)人(にん)の、367今度(こんど)は卒業(そつげふ)試験(しけん)も同様(どうやう)ですから、368どうぞ構(かま)へ立(だ)てをしてやつて下(くだ)さりますな。369併(しか)し乍(なが)ら危急(ききふ)の場合(ばあひ)は、370御(ご)助勢(じよせい)を願(ねが)ひおきます。371サアこれから聖地(せいち)を指(さ)して帰(かへ)りませう』
372と二人(ふたり)は雲(くも)に乗(の)り、373中空(ちうくう)に姿(すがた)を隠(かく)したり。374又(また)もや降(ふ)り来(く)る雪(ゆき)しばき、375嵐(あらし)の音(おと)に目(め)を醒(さま)せば岩窟(がんくつ)の前(まへ)に火(ひ)を焚(た)き、376其(その)正中(まんなか)に巨岩(きよがん)が放(ほ)り込(こ)まれてあつた。377赤児(あかご)と見(み)えたのは、378此(こ)の岩石(いはいし)である。379竜国別(たつくにわけ)は夢(ゆめ)の醒(さ)めたる心地(ここち)して、380夜明(よあ)けに間(ま)もなき雪空(ゆきぞら)を、381宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら前進(ぜんしん)する。
382 アヽ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)。
383(大正一一・五・二〇 旧四・二四 松村真澄録)
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