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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第21巻(申の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 千辛万苦
第1章 高春山
第2章 夢の懸橋
第3章 月休殿
第4章 砂利喰
第5章 言の疵
第2篇 是生滅法
第6章 小杉の森
第7章 誠の宝
第8章 津田の湖
第9章 改悟の酬
第3篇 男女共権
第10章 女権拡張
第11章 鬼娘
第12章 奇の女
第13章 夢の女
第14章 恩愛の涙
第4篇 反復無常
第15章 化地蔵
第16章 約束履行
第17章 酒の息
第18章 解決
余白歌
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(B)
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第一二章
奇
(
くしび
)
の
女
(
をんな
)
〔六八六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
篇:
第3篇 男女共権
よみ(新仮名遣い):
だんじょきょうけん
章:
第12章 奇の女
よみ(新仮名遣い):
くしびのおんな
通し章番号:
686
口述日:
1922(大正11)年05月20日(旧04月24日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
竜国別は宣伝歌を歌いながら、大谷山の谷深く進んで行った。年老いた松の木立の下で一夜の雨露を凌ごうと立ち止まった。ふと傍らを見ると、小さな祠がある。竜国別は天津祝詞を奏上し、宣伝歌を歌った。
祠の社の下で横たわっていると、夜更けに女の泣き声で眼を覚ました。数人の男が一人の女をこの場に連れてきた。
男たちは、女にアルプス教のカーリンスの奥方になるように、と無理強いしている。しかし女は強気で男たちに食ってかかり、要求を断固として拒否している。女は物怖じせずに男たちを痛罵した。
男たちは怒って、無理やり女を連れ去ろうとする。竜国別は祠の後ろから、大自在天だと言って怒鳴りつけた。驚いた男たちは走り去ってしまう。女は静かに社に進み来ると、何事か暗祈黙祷している。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-14 18:51:58
OBC :
rm2112
愛善世界社版:
206頁
八幡書店版:
第4輯 340頁
修補版:
校定版:
212頁
普及版:
93頁
初版:
ページ備考:
001
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
小声
(
こごゑ
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら、
002
大谷山
(
おほたにやま
)
の
谷
(
たに
)
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
003
夕
(
ゆふ
)
べを
告
(
つ
)
ぐる
鐘
(
かね
)
の
声
(
こゑ
)
、
004
諸行
(
しよぎやう
)
無常
(
むじやう
)
と
鳴
(
な
)
り
響
(
ひび
)
く。
005
空
(
そら
)
に
烏
(
からす
)
の
幾千羽
(
いくせんば
)
、
006
塒
(
ねぐら
)
求
(
もと
)
めてカアカアと
物憂
(
ものう
)
げに
啼
(
な
)
き
立
(
た
)
つる。
007
身
(
み
)
に
沁
(
し
)
む
風
(
かぜ
)
は
樹々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
を
七五三
(
しちごさん
)
に
揺
(
ゆす
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
008
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
年
(
とし
)
古
(
ふ
)
りたる
松
(
まつ
)
の
木立
(
こだち
)
に
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
りて
一夜
(
いちや
)
の
雨露
(
うろ
)
を
凌
(
しの
)
がんと、
009
傍
(
かたはら
)
を
見
(
み
)
れば
小
(
ちひ
)
さき
祠
(
ほこら
)
がある。
010
竜国別
(
たつくにわけ
)
『アヽ
有難
(
ありがた
)
い、
011
何
(
いづ
)
れかの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
社
(
やしろ
)
が
建
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
012
大方
(
おほかた
)
、
013
山口
(
やまぐち
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
祭
(
まつ
)
つてあるのだらう』
014
と
独言
(
ひとりご
)
ちつつ
神前
(
しんぜん
)
に
恭
(
うやうや
)
しく
拍手
(
はくしゆ
)
叩頭
(
こうとう
)
し、
015
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
016
宣伝歌
(
せんでんか
)
をうたつて
祠
(
ほこら
)
の
後
(
うしろ
)
に
横
(
よこた
)
はる。
017
其
(
その
)
歌
(
うた
)
、
018
竜国別
『
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
019
玉治別
(
たまはるわけ
)
や
国依別
(
くによりわけ
)
の
020
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
021
津田
(
つだ
)
の
湖辺
(
こへん
)
に
到着
(
たうちやく
)
し
022
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
が
力
(
ちから
)
とも
023
杖
(
つゑ
)
とも
頼
(
たの
)
む
秘密文
(
ひみつぶみ
)
024
ふとした
事
(
こと
)
より
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れて
025
敵
(
てき
)
の
配置
(
はいち
)
を
悉
(
ことごと
)
く
026
手
(
て
)
に
取
(
と
)
る
如
(
ごと
)
く
探索
(
たんさく
)
し
027
茲
(
ここ
)
に
間道
(
かんだう
)
潜
(
くぐ
)
りつつ
028
山野
(
さんや
)
を
伝
(
つた
)
ひて
来
(
きた
)
るうち
029
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
くに
暮
(
く
)
れ
果
(
は
)
てて
030
行手
(
ゆくて
)
も
見
(
み
)
えずなりければ
031
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
の
岩
(
いは
)
が
根
(
ね
)
に
032
そつと
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
り
降
(
ふ
)
る
雪
(
ゆき
)
を
033
凌
(
しの
)
ぎて
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かすうち
034
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
る
妙齢
(
めうれい
)
の
035
花
(
はな
)
をあざむく
一
(
いち
)
婦人
(
ふじん
)
036
赤子
(
あかご
)
を
胸
(
むね
)
に
抱
(
いだ
)
きつつ
037
寒気
(
かんき
)
に
閉
(
と
)
ぢられ
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
038
儘
(
まま
)
にならねば
一夜
(
ひとよさ
)
の
039
我
(
われ
)
に
暖気
(
だんき
)
を
与
(
あた
)
へよと
040
身辺
(
しんぺん
)
近
(
ちか
)
く
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
く
)
る
041
我
(
われ
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
うてふ
042
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
043
高春山
(
たかはるやま
)
の
曲神
(
まがかみ
)
を
044
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
帰
(
かへ
)
るまで
045
女
(
をんな
)
に
肌
(
はだ
)
は
触
(
ふ
)
れまじと
046
唯
(
ただ
)
一言
(
いちごん
)
に
断
(
ことわ
)
れば
047
女
(
をんな
)
は
又
(
また
)
もや
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ
048
火
(
ひ
)
を
焚
(
た
)
き
呉
(
く
)
れよと
願
(
ねが
)
ひ
入
(
い
)
る
049
ふと
傍
(
かたはら
)
に
目
(
め
)
をやれば
050
天
(
てん
)
の
与
(
あた
)
へか
枯小柴
(
かれこしば
)
051
忽
(
たちま
)
ち
燧
(
ひうち
)
を
打
(
う
)
ち
出
(
い
)
でて
052
火
(
ひ
)
を
点
(
てん
)
ずれば
炎々
(
えんえん
)
と
053
四辺
(
あたり
)
は
真昼
(
まひる
)
の
如
(
ごと
)
くなり
054
女
(
をんな
)
の
顔
(
かほ
)
はありありと
055
生地
(
きぢ
)
迄
(
まで
)
スツカリ
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た
056
男尊
(
だんそん
)
女卑
(
ぢよひ
)
の
言論
(
げんろん
)
と
057
女尊
(
ぢよそん
)
男卑
(
だんぴ
)
の
弁舌
(
べんぜつ
)
に
058
天
(
あま
)
の
瓊鉾
(
ぬぼこ
)
(舌)を
磨
(
と
)
ぎ
澄
(
す
)
まし
059
火花
(
ひばな
)
を
散
(
ち
)
らして
戦
(
たたか
)
へば
060
女
(
をんな
)
もさるもの
中々
(
なかなか
)
に
061
我
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
怖
(
おそ
)
れない
062
既
(
すで
)
に
危
(
あやふ
)
く
見
(
み
)
えし
時
(
とき
)
063
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
の
谷々
(
たにだに
)
の
064
木霊
(
こだま
)
を
響
(
ひび
)
かせ
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
065
法螺貝
(
ほらがひ
)
吹
(
ふ
)
いた
大男
(
おほをとこ
)
066
忽
(
たちま
)
ち
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれて
067
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
を
一睨
(
ひとにら
)
み
068
女
(
をんな
)
は
驚
(
おどろ
)
き
抱
(
だ
)
きし
子
(
こ
)
を
069
直
(
すぐ
)
に
火中
(
くわちう
)
に
投
(
な
)
げ
捨
(
す
)
てて
070
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
071
我
(
われ
)
は
睡魔
(
すゐま
)
に
襲
(
おそ
)
はれて
072
夢路
(
ゆめぢ
)
を
辿
(
たど
)
る
折柄
(
をりから
)
に
073
揺
(
ゆ
)
り
起
(
おこ
)
されて
目
(
め
)
を
開
(
ひら
)
き
074
四辺
(
あたり
)
きよろきよろ
見廻
(
みまは
)
せば
075
大江
(
おおえ
)
の
山
(
やま
)
に
現
(
あら
)
はれし
076
鬼武彦
(
おにたけひこ
)
の
白狐神
(
びやくこがみ
)
077
続
(
つづ
)
いて
言依姫
(
ことよりひめの
)
神
(
かみ
)
078
我
(
わ
)
が
眼前
(
がんぜん
)
に
現
(
あら
)
はれて
079
急場
(
きふば
)
を
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ひつつ
080
妙音
(
めうおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
の
音楽
(
おんがく
)
に
081
連
(
つ
)
れて
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
消
(
き
)
えたまふ
082
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
083
巌
(
いはほ
)
を
背
(
せな
)
にうとうとと
084
睡
(
ねむ
)
りながらに
明
(
あ
)
けを
待
(
ま
)
つ
085
雪
(
ゆき
)
は
頻
(
しき
)
りに
降
(
ふ
)
り
来
(
きた
)
り
086
道
(
みち
)
も
塞
(
ふさ
)
がり
進退
(
しんたい
)
の
087
自由
(
じいう
)
を
失
(
うしな
)
ひ
ユキ
詰
(
つ
)
まる
088
中
(
なか
)
をも
厭
(
いと
)
はず
荒魂
(
あらみたま
)
089
勇気
(
ゆうき
)
を
鼓
(
こ
)
してザクザクと
090
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
しもむくむくと
091
雪
(
ゆき
)
の
中
(
なか
)
より
現
(
あら
)
はれし
092
不思議
(
ふしぎ
)
の
女
(
をんな
)
に
手
(
て
)
をひかれ
093
破
(
やぶ
)
れた
小屋
(
こや
)
に
伴
(
ともな
)
はれ
094
種々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
の
問題
(
もんだい
)
を
095
吹
(
ふ
)
きかけられて
困
(
こま
)
り
入
(
い
)
り
096
如何
(
いかが
)
はせんと
思
(
おも
)
ふうち
097
傘
(
かさ
)
のやうなる
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いて
098
パツと
消
(
き
)
えたと
思
(
おも
)
ひきや
099
忽
(
たちま
)
ち
変
(
かは
)
る
大白狐
(
おほびやくこ
)
100
山路
(
やまぢ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
駆出
(
かけい
)
だす
101
よくよく
見
(
み
)
ればこは
如何
(
いか
)
に
102
五
(
ご
)
尺
(
しやく
)
有余
(
いうよ
)
も
積
(
つも
)
りたる
103
雪
(
ゆき
)
の
山路
(
やまぢ
)
はいつとなく
104
消
(
き
)
えて
僅
(
わづ
)
かな
薄雪
(
うすゆき
)
に
105
不審
(
ふしん
)
の
胸
(
むね
)
を
抱
(
だ
)
きながら
106
ふと
傍
(
かたはら
)
を
眺
(
なが
)
むれば
107
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らんや
岩
(
いは
)
の
根
(
ね
)
に
108
くだらぬ
夢路
(
ゆめぢ
)
を
辿
(
たど
)
りつつ
109
心
(
こころ
)
の
眼
(
まなこ
)
を
閉
(
と
)
ぢて
居
(
ゐ
)
た
110
朝日
(
あさひ
)
の
光
(
ひかり
)
を
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びて
111
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でスタスタと
112
雪
(
ゆき
)
に
印
(
いん
)
した
足跡
(
あしあと
)
を
113
索
(
たづ
)
ねて
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
もあれ
114
雪
(
ゆき
)
踏
(
ふ
)
み
分
(
わ
)
けて
駆来
(
かけきた
)
る
115
野猪
(
のじし
)
に
出遇
(
であ
)
ひ
暫
(
しばら
)
くは
116
道
(
みち
)
に
佇
(
たたず
)
み
眺
(
なが
)
め
入
(
い
)
る
117
空
(
くう
)
を
掠
(
かす
)
めて
何処
(
どこ
)
よりか
118
白羽
(
しらは
)
の
征矢
(
そや
)
の
飛
(
と
)
び
来
(
きた
)
り
119
猪
(
しし
)
の
頭
(
かしら
)
に
突
(
つ
)
き
立
(
た
)
てば
120
猪
(
しし
)
は
驚
(
おどろ
)
き
右左
(
みぎひだり
)
121
前
(
まへ
)
や
後
(
うしろ
)
に
狂
(
くる
)
ひつつ
122
峰
(
みね
)
の
尾上
(
をのへ
)
を
打
(
う
)
ち
渡
(
わた
)
り
123
谷間
(
たにま
)
に
身
(
み
)
をば
隠
(
かく
)
したり
124
鳥
(
とり
)
獣
(
けだもの
)
の
末
(
すゑ
)
までも
125
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
くる
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
126
これが
見捨
(
みす
)
てて
置
(
お
)
かれうか
127
助
(
たす
)
けやらんと
足跡
(
あしあと
)
を
128
探
(
さぐ
)
りて
谷間
(
たにま
)
に
下
(
くだ
)
り
往
(
ゆ
)
く
129
萱
(
かや
)
茫々
(
ばうばう
)
と
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
り
130
人跡
(
じんせき
)
絶
(
た
)
えし
谷
(
たに
)
の
底
(
そこ
)
131
血糊
(
ちのり
)
を
標
(
しる
)
べに
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
132
自然
(
しぜん
)
に
穿
(
うが
)
てる
岩
(
いは
)
の
洞
(
ほら
)
133
其
(
その
)
傍
(
かたはら
)
に
横
(
よこた
)
はる
134
猪
(
しし
)
の
屍
(
かばね
)
を
愍
(
あは
)
れみて
135
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
136
蘇
(
よみがへ
)
らせて
助
(
たす
)
けんと
137
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
しも
岩窟
(
がんくつ
)
の
138
中
(
なか
)
より
出
(
い
)
づる
鬼娘
(
おにむすめ
)
139
忽
(
たちま
)
ち
猪
(
しし
)
にかぶりつき
140
血汐
(
ちしほ
)
を
吸
(
す
)
ひ
込
(
こ
)
む
嫌
(
いや
)
らしさ
141
はて
訝
(
いぶ
)
かしとよく
見
(
み
)
れば
142
高城山
(
たかしろやま
)
の
近村
(
きんそん
)
に
143
お
竜
(
たつ
)
が
娘
(
むすめ
)
と
生
(
うま
)
れたる
144
お
光
(
みつ
)
の
顔
(
かほ
)
によく
似
(
に
)
たり
145
お
光
(
みつ
)
は
血汐
(
ちしほ
)
を
吸
(
す
)
ひ
終
(
をは
)
り
146
我
(
わが
)
顔
(
かほ
)
じつと
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
め
147
お
前
(
まへ
)
は
隣
(
となり
)
の
小父
(
をぢ
)
さまか
148
お
前
(
まへ
)
はお
光
(
みつ
)
か
何
(
なん
)
として
149
この
山奥
(
やまおく
)
に
忍
(
しの
)
び
住
(
す
)
む
150
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
れと
促
(
うなが
)
せば
151
お
光
(
みつ
)
は
首
(
くび
)
をふりながら
152
猪
(
しし
)
の
血糊
(
ちのり
)
は
吸
(
す
)
ひ
飽
(
あ
)
いた
153
美味
(
うま
)
い
香
(
にほひ
)
のするお
前
(
まへ
)
154
喰
(
く
)
はしておくれと
強要
(
ねだり
)
よる
155
これや
大変
(
たいへん
)
と
驚
(
おどろ
)
いて
156
なだめ
慊
(
すか
)
しついろいろと
157
義理
(
ぎり
)
人情
(
にんじやう
)
を
教
(
をし
)
ふれば
158
お
光
(
みつ
)
はフンと
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
159
馬耳
(
ばじ
)
東風
(
とうふう
)
と
聞
(
き
)
き
流
(
なが
)
し
160
義理
(
ぎり
)
人情
(
にんじやう
)
を
弁
(
わきま
)
へて
161
如何
(
どう
)
して
鬼
(
おに
)
になれますか
162
お
前
(
まへ
)
の
生血
(
いきち
)
を
唯
(
ただ
)
一度
(
いちど
)
163
飲
(
の
)
ましてくれいと
云
(
い
)
ひながら
164
手頃
(
てごろ
)
の
石
(
いし
)
を
手
(
て
)
に
持
(
も
)
つて
165
忽
(
たちま
)
ち
砕
(
くだ
)
く
我
(
わ
)
が
額
(
ひたひ
)
166
血潮
(
ちしほ
)
は
川
(
かは
)
と
迸
(
ほとばし
)
る
167
我
(
われ
)
は
脆
(
もろ
)
くも
気絶
(
きぜつ
)
して
168
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らずなりけるが
169
俄
(
にはか
)
に
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
寒風
(
かんぷう
)
に
170
眼
(
まなこ
)
覚
(
さ
)
ませばこは
如何
(
いか
)
に
171
額
(
ひたひ
)
は
少
(
すこ
)
し
痛
(
いた
)
けれど
172
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
に
清々
(
すがすが
)
と
173
洗
(
あら
)
つたやうな
心地
(
ここち
)
して
174
鬼
(
おに
)
の
娘
(
むすめ
)
と
誓約
(
うけひ
)
しつ
175
やつと
虎口
(
ここう
)
を
逃
(
のが
)
れ
出
(
い
)
で
176
崎嶇
(
きく
)
たる
山路
(
やまぢ
)
辿
(
たど
)
りつつ
177
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
につきにけり
178
月
(
つき
)
は
御空
(
みそら
)
に
輝
(
かがや
)
けど
179
木立
(
こだち
)
の
茂
(
しげ
)
み
深
(
ふか
)
くして
180
我
(
わが
)
影
(
かげ
)
だにも
見
(
み
)
えかぬる
181
椿
(
つばき
)
の
森
(
もり
)
の
宮
(
みや
)
の
下
(
した
)
182
明日
(
あす
)
はいよいよ
大谷
(
おほたに
)
の
183
山
(
やま
)
を
踏
(
ふ
)
み
越
(
こ
)
え
高春山
(
たかはるやま
)
の
184
曲
(
まが
)
の
砦
(
とりで
)
に
向
(
むか
)
ふなり
185
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
186
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましまして
187
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
188
高姫
(
たかひめ
)
黒姫
(
くろひめ
)
両人
(
りやうにん
)
を
189
救
(
すく
)
ひ
出
(
いだ
)
させ
給
(
たま
)
へかし
190
野立
(
のだち
)
の
彦
(
ひこ
)
や
野立姫
(
のだちひめ
)
191
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大御神
(
おほみかみ
)
192
木花姫
(
このはなひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
193
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
194
遥
(
はるか
)
に
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る』
195
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
つて
古社
(
ふるやしろ
)
の
床下
(
ゆかした
)
に
横
(
よこた
)
はり
居
(
ゐ
)
る。
196
夜
(
よ
)
は
深々
(
しんしん
)
と
更
(
ふ
)
け
渡
(
わた
)
り、
197
寂然
(
せきぜん
)
として
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
のそよぎもピタリと
止
(
と
)
まつた
丑満
(
うしみつ
)
の
頃
(
ころ
)
、
198
猿
(
さる
)
を
責
(
せ
)
めるやうな
女
(
をんな
)
の
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
、
199
刻々
(
こくこく
)
に
近
(
ちか
)
づき
来
(
きた
)
る。
200
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けて、
201
何者
(
なにもの
)
なるかと
息
(
いき
)
を
凝
(
こ
)
らして
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
202
バタバタと
数人
(
すうにん
)
の
足音
(
あしおと
)
、
203
女
(
をんな
)
を
一人
(
ひとり
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
連
(
つ
)
れ
来
(
きた
)
り、
204
甲
『サア、
205
もう
斯
(
か
)
うなつた
上
(
うへ
)
は、
206
じたばた
しても
駄目
(
だめ
)
だ。
207
体
(
てい
)
よくカーリンスの
宣伝使
(
せんでんし
)
の
奥
(
おく
)
さまになつて、
208
左
(
ひだり
)
団扇
(
うちは
)
で
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
頤
(
あご
)
で
使
(
つか
)
ふ
身分
(
みぶん
)
となるのが、
209
却
(
かへ
)
つてお
前
(
まへ
)
の
身
(
み
)
に
取
(
と
)
つて
幸福
(
かうふく
)
だらう。
210
土臭
(
つちくさ
)
い
田舎者
(
ゐなかつぺい
)
に
心中立
(
しんぢうだ
)
てをしたつて
何
(
なん
)
になるか、
211
サア
早
(
はや
)
うウンと
云
(
い
)
へ』
212
女(お作)
『お
前
(
まへ
)
は
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
の
癖
(
くせ
)
に、
213
私
(
わたし
)
のやうな
繊弱
(
かよわ
)
き
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて、
214
無理
(
むり
)
往生
(
わうじやう
)
をさせようとは
些
(
ちつ
)
と
卑怯
(
ひけふ
)
ではありませぬか。
215
カーリンスとか
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
に、
216
それだけの
徳望
(
とくばう
)
があれば、
217
天下
(
てんか
)
の
女
(
をんな
)
は
何程
(
なにほど
)
袖
(
そで
)
で
蜂
(
はち
)
を
掃
(
はら
)
ふやうにして
居
(
を
)
つても、
218
獅噛
(
しが
)
みついてゆきます。
219
世間
(
せけん
)
から
高春山
(
たかはるやま
)
のカーリンスの
鬼
(
おに
)
と
噂
(
うはさ
)
され、
220
蚰蜒
(
げぢげぢ
)
か
蛇
(
へび
)
のやうに
嫌
(
きら
)
はれて
居
(
ゐ
)
るお
方
(
かた
)
に、
221
誰
(
たれ
)
が
靡
(
なび
)
くものが
有
(
あ
)
りませう。
222
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
はその
蚰蜒
(
げぢげぢ
)
に
頤
(
あご
)
で
使
(
つか
)
はれて
居
(
を
)
る
人間
(
にんげん
)
だから、
223
なほ
更
(
さら
)
鼻持
(
はなもち
)
のならぬ
男
(
をとこ
)
だ。
224
エヽ
汚
(
けが
)
らはしい、
225
もう
触
(
さは
)
つて
下
(
くだ
)
さるな』
226
乙
『
此奴
(
こいつ
)
中々
(
なかなか
)
剛情
(
がうじやう
)
な
女
(
をんな
)
だ、
227
よしよし
貴様
(
きさま
)
がさう
出
(
で
)
れば
此方
(
こつち
)
にも
覚悟
(
かくご
)
がある』
228
女(お作)
『
其
(
その
)
覚悟
(
かくご
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひませう』
229
乙
『そんな
事
(
こと
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
秘密
(
ひみつ
)
だ、
230
貴様
(
きさま
)
に
聞
(
き
)
かす
必要
(
ひつえう
)
が
何処
(
どこ
)
にあるか』
231
女(お作)
『ありますとも、
232
私
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
の
目的物
(
もくてきぶつ
)
、
233
云
(
い
)
はば
当局者
(
たうきよくしや
)
である。
234
秘密
(
ひみつ
)
を
知
(
し
)
らずにどうして
一
(
いち
)
日
(
にち
)
だつて
治
(
をさ
)
まつて
行
(
ゆ
)
きますか』
235
甲
『エヽ、
236
女
(
をんな
)
の
癖
(
くせ
)
に
何
(
なに
)
を
ツベコベ
と
吐
(
ほざ
)
くのだ、
237
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
いてやらうか』
238
女(お作)
『
口
(
くち
)
を
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
きなさつても
宜
(
よろ
)
しい。
239
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
万々一
(
まんまんいち
)
私
(
わたし
)
がカーリンスの
女房
(
にようばう
)
になると
定
(
きま
)
つたら、
240
お
前
(
まへ
)
は
私
(
わたし
)
の
家来
(
けらい
)
ぢやないか。
241
さうすれば
主人
(
しゆじん
)
の
口
(
くち
)
を
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
き、
242
折角
(
せつかく
)
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
を
傷者
(
きずもの
)
にしたと
云
(
い
)
ふ
罪
(
つみ
)
を、
243
何
(
ど
)
うしてカーリンスにお
詫
(
わび
)
をなさるか、
244
お
詫
(
わび
)
の
仕方
(
しかた
)
がありますまい』
245
甲
『たつて
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
かうとは
申
(
まを
)
しませぬ。
246
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
我々
(
われわれ
)
の
要求
(
えうきう
)
を
容
(
い
)
れて、
247
奥
(
おく
)
さまになつて
下
(
くだ
)
さいますか』
248
女(お作)
『ホヽヽヽヽ、
249
好
(
す
)
かんたらしい、
250
カーリンスの
嫁
(
よめ
)
になる
位
(
くらゐ
)
なら
烏
(
からす
)
の
嫁
(
よめ
)
に
行
(
ゆ
)
きますワ』
251
甲
『
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
男子
(
だんし
)
を
貴様
(
きさま
)
は
翻弄
(
ほんろう
)
するのか』
252
女(お作)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
ですよ。
253
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふものは
強
(
つよ
)
いものです。
254
女
(
をんな
)
の
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
一条
(
ひとすぢ
)
あれば
大象
(
だいざう
)
も
繋
(
つな
)
ぐと
云
(
い
)
ふ
魔力
(
まりよく
)
をもつて
居
(
ゐ
)
る。
255
ヒヨツトコ
野郎
(
やらう
)
の
五
(
ご
)
人
(
にん
)
や
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
、
256
束
(
たば
)
になつて
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
が
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
ですワ、
257
そんな
謀反
(
むほん
)
は
大抵
(
たいてい
)
にしてお
止
(
や
)
めなさい。
258
山
(
やま
)
も
田
(
た
)
も
家
(
いへ
)
も
倉
(
くら
)
も、
259
舌
(
した
)
の
先
(
さき
)
や
目
(
め
)
の
先
(
さき
)
で
一遍
(
いつぺん
)
に
消滅
(
せうめつ
)
させたり、
260
顛覆
(
てんぷく
)
させたりするのは
女
(
をんな
)
の
力
(
ちから
)
です。
261
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
男
(
をとこ
)
に
生
(
うま
)
れたと
言
(
い
)
つてエラさうにして
居
(
を
)
るが、
262
多寡
(
たくわ
)
の
知
(
し
)
れた
青瓢箪
(
あをべうたん
)
のお
化
(
ばけ
)
見
(
み
)
た
様
(
やう
)
なカーリンスに、
263
口汚
(
くちぎたな
)
なく
酷
(
こ
)
き
使
(
つか
)
はれて、
264
満足
(
まんぞく
)
をして
居
(
ゐ
)
るやうな
腰抜
(
こしぬ
)
けだから、
265
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものだよ』
266
丙
『これや
女
(
をんな
)
、
267
そんな
劫託
(
がふたく
)
を
並
(
なら
)
べる
癖
(
くせ
)
に、
268
何故
(
なぜ
)
キヤツキヤツと
悲鳴
(
ひめい
)
を
挙
(
あ
)
げたのだ。
269
そんな
空威張
(
からいば
)
りをしたつて
駄目
(
だめ
)
だぞ』
270
女(お作)
『ホヽヽヽヽ、
271
キヤアキヤアと
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
は
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
ですか。
272
お
前
(
まへ
)
こそ
女
(
をんな
)
の
腐
(
くさ
)
つたやうな
猿
(
さる
)
とも
人間
(
にんげん
)
とも
弁別
(
べんべつ
)
のつかぬ
代物
(
しろもの
)
は、
273
キヤアキヤアと
云
(
い
)
うて
泣
(
な
)
くだらうが、
274
私
(
わたし
)
はお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
のする
事
(
こと
)
が
余
(
あんま
)
り
可笑
(
をか
)
しいので、
275
キヤツキヤツと
云
(
い
)
つて
笑
(
わら
)
つたのですよ』
276
丁
『
何
(
なん
)
とマア
強太
(
しぶと
)
い
女
(
をんな
)
もあればあるものだなア。
277
俺
(
おれ
)
は
生
(
うま
)
れてからこんな
女
(
をんな
)
に
出遇
(
であ
)
つた
事
(
こと
)
がないワ』
278
女(お作)
『
出遇
(
であ
)
つた
事
(
こと
)
がない
筈
(
はず
)
、
279
世界
(
せかい
)
の
女
(
をんな
)
はお
前
(
まへ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
ても、
280
お
前
(
まへ
)
の
方
(
はう
)
から
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いても、
281
嫌
(
いや
)
がつて
皆
(
みな
)
逃
(
に
)
げて
仕舞
(
しま
)
ふ。
282
それもお
前
(
まへ
)
が
強
(
つよ
)
いとか、
283
怖
(
こは
)
いとか
云
(
い
)
うて
逃
(
に
)
げるのではない。
284
汚
(
けが
)
らはしくつて、
285
怪体
(
けつたい
)
な
臭
(
にほひ
)
がして
鼻持
(
はなも
)
ちがならないから、
286
化物
(
ばけもの
)
だと
思
(
おも
)
つて
逃
(
に
)
げるのですよ』
287
丙
『
仕方
(
しかた
)
のない
女
(
をんな
)
だなア。
288
こんな
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて、
289
カーリンスの
奥
(
おく
)
さまにでもしようものなら、
290
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
却
(
かへ
)
つて
迷惑
(
めいわく
)
になるかも
知
(
し
)
れやしないぞ』
291
女(お作)
『ナニ
決
(
けつ
)
して
迷惑
(
めいわく
)
にやなりませぬ。
292
キヨロキヨロ
間誤
(
まご
)
ついて
居
(
ゐ
)
ると、
293
ちよいちよい
長煙管
(
ながきせる
)
がお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
のお
頭
(
つむり
)
にお
見舞
(
みまひ
)
申
(
まを
)
す
位
(
くらゐ
)
なものだよ。
294
けれども
生命
(
いのち
)
には
別条
(
べつでう
)
はないから
安心
(
あんしん
)
なさい、
295
ホヽヽヽヽ』
296
甲
『
女子
(
によし
)
と
小人
(
せうじん
)
は
養
(
やしな
)
ひ
難
(
がた
)
し、
297
到底
(
たうてい
)
弁舌
(
べんぜつ
)
では
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
敗軍
(
はいぐん
)
だ。
298
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
に
限
(
かぎ
)
る。
299
サア
各自
(
めいめい
)
に
手足
(
てあし
)
を
取
(
と
)
り、
300
高春山
(
たかはるやま
)
に
帰
(
かへ
)
つてゆかう。
301
これや
女
(
をんな
)
、
302
何
(
な
)
んぼ
頤
(
あご
)
が
達者
(
たつしや
)
でも
直接
(
ちよくせつ
)
行動
(
かうどう
)
には
叶
(
かな
)
ふまい、
303
男
(
をとこ
)
は
口
(
くち
)
は
下手
(
へた
)
だが
実地
(
じつち
)
の
力
(
ちから
)
は
強
(
つよ
)
いぞ』
304
女(お作)
『ホヽヽヽヽ、
305
たつた
一人
(
ひとり
)
の
繊弱
(
かよわ
)
い
女
(
をんな
)
に
対
(
たい
)
し
見
(
み
)
つともない、
306
五
(
ご
)
人
(
にん
)
も
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
も
一丈
(
いちぢやう
)
の
褌
(
まはし
)
をかいた
荒男
(
あらをとこ
)
が、
307
蚯蚓
(
みみづ
)
を
蟻
(
あり
)
が
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて
巣
(
す
)
へ
引
(
ひ
)
き
込
(
こ
)
むやうにせねば、
308
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
引捉
(
ひつとら
)
へて、
309
その
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないとは、
310
何
(
なん
)
と
男
(
をとこ
)
程
(
ほど
)
困
(
こま
)
つたものはないものだなア』
311
甲
『
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない、
312
男
(
をとこ
)
は
裸
(
はだか
)
百貫
(
ひやくくわん
)
と
云
(
い
)
つて、
313
体
(
からだ
)
が
一
(
ひと
)
つあれば
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
一人前
(
いちにんまへ
)
の
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
として
通用
(
つうよう
)
するのだ。
314
女
(
をんな
)
は
蔭
(
かげ
)
ものだ。
315
もつと
女
(
をんな
)
らしく
淑
(
しと
)
やかにしたら
如何
(
どう
)
だい。
316
女
(
をんな
)
の
徳
(
とく
)
は
柔順
(
じうじゆん
)
にあるのだぞ』
317
女(お作)
『
私
(
わたし
)
は
柔順
(
じうじゆん
)
なんか
大
(
だい
)
の
嫌
(
きら
)
ひだ。
318
私
(
わたし
)
の
女
(
をんな
)
としての
徳
(
とく
)
は
柔術
(
じうじゆつ
)
だ。
319
一
(
ひと
)
つ
見本
(
みほん
)
にお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
を、
320
お
月
(
つき
)
さまの
世界
(
せかい
)
迄
(
まで
)
も
放
(
はう
)
りあげて
見
(
み
)
ようか』
321
甲
『オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
322
如何
(
どう
)
しようかなア。
323
こんな
女
(
をんな
)
を
迂濶
(
うつかり
)
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
らうものなら、
324
何
(
ど
)
んな
大騒動
(
だいさうどう
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
するか
知
(
し
)
れたものぢやないぞ』
325
乙
『それだと
云
(
い
)
つて、
326
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
らねばカーリンスの
親方
(
おやかた
)
に
合
(
あは
)
す
顔
(
かほ
)
がなし、
327
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
になつたものだなア』
328
女(お作)
『
一
(
ひと
)
つ
柔術
(
じうじゆつ
)
をお
目
(
め
)
にかけませうかな、
329
オホヽヽヽ』
330
甲
『エヽ、
331
この
上
(
うへ
)
は
直接
(
ちよくせつ
)
行動
(
かうどう
)
だ。
332
乙
(
おつ
)
、
333
丙
(
へい
)
、
334
丁
(
てい
)
、
335
戊
(
ぼう
)
、
336
己
(
き
)
、
337
一度
(
いちど
)
にかかれ』
338
一同
『ヨシ、
339
合点
(
がつてん
)
だ』
340
と
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
手取
(
てと
)
り
足取
(
あしと
)
り
無理
(
むり
)
に
女
(
をんな
)
を
担
(
かつ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
かむとする。
341
女
(
をんな
)
は
又
(
また
)
もやキヤツ キヤツと
頻
(
しき
)
りに
叫
(
さけ
)
ぶ。
342
祠
(
ほこら
)
の
後
(
うしろ
)
より、
343
(竜国別)
『
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
てツ、
344
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国別
(
おほくにわけの
)
命
(
みこと
)
これにあり、
345
申
(
まを
)
し
渡
(
わた
)
す
仔細
(
しさい
)
がある』
346
と
雷
(
らい
)
の
如
(
ごと
)
く
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
347
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
女
(
をんな
)
を
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
投
(
な
)
げ
捨
(
す
)
て
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
散
(
ち
)
つた。
348
女
(
をんな
)
は
静々
(
しづしづ
)
と
神前
(
しんぜん
)
に
詣
(
まう
)
で、
349
拍手
(
はくしゆ
)
しながら
何事
(
なにごと
)
か
暗祈
(
あんき
)
黙祷
(
もくたう
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
350
(
大正一一・五・二〇
旧四・二四
加藤明子
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