霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第21巻(申の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 千辛万苦
第1章 高春山
第2章 夢の懸橋
第3章 月休殿
第4章 砂利喰
第5章 言の疵
第2篇 是生滅法
第6章 小杉の森
第7章 誠の宝
第8章 津田の湖
第9章 改悟の酬
第3篇 男女共権
第10章 女権拡張
第11章 鬼娘
第12章 奇の女
第13章 夢の女
第14章 恩愛の涙
第4篇 反復無常
第15章 化地蔵
第16章 約束履行
第17章 酒の息
第18章 解決
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスク完了しました
。どうもありがとうございます。
|
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第21巻(申の巻)
> 第4篇 反復無常 > 第16章 約束履行
<<< 化地蔵
(B)
(N)
酒の息 >>>
第一六章
約束
(
やくそく
)
履行
(
りかう
)
〔六九〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
篇:
第4篇 反復無常
よみ(新仮名遣い):
はんぷくむじょう
章:
第16章 約束履行
よみ(新仮名遣い):
やくそくりこう
通し章番号:
690
口述日:
1922(大正11)年05月21日(旧04月25日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
杢助・お初、玉治別は高春山の中腹・天の森についた。ここで竜国別、国依別と落ち合う手はずになっていたため、三人は待っていたが、なかなか竜国別、国依別はやってこない。
玉治別はしきりに、二人が女難の相が出ていることを心配している。そこへ竜国別が登って来て合流した。
玉治別は竜国別の額に傷があることを見とがめ、わけを尋ねるが、竜国別は約束だから話すことはできない、と言って傷の由来を隠そうとする。
しかし杢助はその傷の様子から、大谷山の鬼娘に血を吸われたことを見通してしまう。竜国別は仕方なく、鬼娘のお光と邂逅した有様を白状した。
すると早速黒雲を起こして鬼娘がやってきた。竜国別は隠れて杢助が鬼娘の相手をする。鬼娘は竜国別を渡せとわめくが、杢助の楯にして竜国別は、約束は履行しないと宣言する。
鬼娘は悔しがって、杢助がいないときに竜国別を襲ってやると言う。しかしそのとき、お初が鬼娘を呼んで、自分を覚えているか、と話しかけた。
鬼娘はお初の顔を見ると、一声叫んで白煙となって消滅してしまった。あたりを包んでいた黒雲は吹き払われてしまった。杢助はこれで鬼娘も成仏したと言って、竜国別を安堵させた。
そこへ国依別が男たちを引き連れて登って来た。国依別はいきさつを一行に語る。するとお初が突然、作戦を申し伝える、と荘重な声で呼ばわった。宣伝使たち四人はハイと答えて大地に平伏し、お初の宣旨を待った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-02 02:27:11
OBC :
rm2116
愛善世界社版:
263頁
八幡書店版:
第4輯 361頁
修補版:
校定版:
272頁
普及版:
119頁
初版:
ページ備考:
001
高春山
(
たかはるやま
)
の
中腹
(
ちうふく
)
なる
天
(
あめ
)
の
森
(
もり
)
の
祠
(
ほこら
)
の
傍
(
かたはら
)
に
漸
(
やうや
)
う
登
(
のぼ
)
り
着
(
つ
)
いた
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
002
杢助
(
もくすけ
)
、
003
お
初
(
はつ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
004
周囲
(
しうゐ
)
に
碁列
(
ごれつ
)
せる
平岩
(
ひらいは
)
に
脚
(
あし
)
を
休
(
やす
)
め
乍
(
なが
)
ら、
005
ひそひそ
話
(
はなし
)
に
耽
(
ふけ
)
る。
006
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
此処
(
ここ
)
へ
着
(
つ
)
いてから
殆
(
ほとん
)
ど
二時
(
ふたとき
)
ばかりになるが、
007
まだ
竜国別
(
たつくにわけ
)
も
見
(
み
)
えず、
008
国依別
(
くによりわけ
)
も
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
せないが
一体
(
いつたい
)
如何
(
どう
)
したものだらうなア。
009
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る
気遣
(
きづか
)
ひは
無
(
な
)
い
筈
(
はず
)
だ。
010
此
(
こ
)
の
森
(
もり
)
に
落
(
お
)
ち
合
(
あ
)
ひ、
011
一団
(
いちだん
)
となつて
上
(
のぼ
)
ると
云
(
い
)
ふ
計画
(
けいくわく
)
だから、
012
マサカ
約束
(
やくそく
)
を
無視
(
むし
)
して
一人
(
ひとり
)
上
(
のぼ
)
る
筈
(
はず
)
もなからう。
013
アヽ
遅
(
おそ
)
いことだワイ』
014
杢助
(
もくすけ
)
『ナニ
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬよ、
015
軈
(
やが
)
て
見
(
み
)
えませう。
016
噂
(
うはさ
)
をすれば
影
(
かげ
)
とやら、
017
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
のことを
云
(
い
)
つてをると、
018
ツイ
来
(
く
)
るものだ。
019
軈
(
やが
)
て
堂々
(
だうだう
)
と
登
(
のぼ
)
つて
来
(
こ
)
られるでせう』
020
玉治別
(
たまはるわけ
)
『あの
国依別
(
くによりわけ
)
にしても、
021
竜国別
(
たつくにわけ
)
にしても
随分
(
ずゐぶん
)
女難
(
ぢよなん
)
の
相
(
さう
)
があるから、
022
途中
(
とちう
)
で
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
にチヨロ
魔化
(
まくわ
)
されて、
023
肝腎
(
かんじん
)
の
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
して
居
(
を
)
るのではあるまいかなア』
024
杢助
(
もくすけ
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りますまい。
025
津田
(
つだ
)
の
湖辺
(
こへん
)
で
別
(
わか
)
れた
時
(
とき
)
には、
026
余程
(
よほど
)
の
堅
(
かた
)
い
決心
(
けつしん
)
の
色
(
いろ
)
が
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
ましたよ。
027
女
(
をんな
)
に
対
(
たい
)
しては
何
(
なん
)
の
交渉
(
かうせふ
)
もありますまい。
028
枯木
(
こぼく
)
寒巌
(
かんがん
)
に
倚
(
よ
)
る
三冬
(
さんとう
)
暖気
(
だんき
)
無
(
な
)
し
程
(
てい
)
の
堅家
(
かたや
)
だから、
029
屹度
(
きつと
)
女
(
をんな
)
なんかに
目
(
め
)
をくれるやうな
人物
(
じんぶつ
)
とは
認
(
みと
)
められませぬワ』
030
玉治別
(
たまはるわけ
)
『イヤ
余
(
あま
)
り
安心
(
あんしん
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
031
何分
(
なにぶん
)
元
(
もと
)
が
元
(
もと
)
ですから、
032
随分
(
ずゐぶん
)
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は
発展
(
はつてん
)
したものです。
033
大勢
(
おほぜい
)
の
前
(
まへ
)
では
石部
(
いしべ
)
金吉
(
きんきち
)
、
034
金兜
(
かなかぶと
)
、
035
梃子
(
てこ
)
でも
棒
(
ぼう
)
でも、
036
女
(
をんな
)
位
(
くらゐ
)
に
動
(
うご
)
かない
堅造
(
かたざう
)
のやうに
見
(
み
)
えて
居
(
を
)
つても、
037
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
の
情火
(
じやうくわ
)
と
云
(
い
)
ふ
曲者
(
くせもの
)
が
煙
(
けむり
)
を
噴出
(
ふきだ
)
すと、
038
ツイその
煤煙
(
ばいえん
)
に
包
(
つつ
)
まれて
目
(
め
)
が
眩
(
くら
)
み
途方
(
とつけ
)
も
無
(
な
)
い
所
(
ところ
)
へ
脱線
(
だつせん
)
する
虞
(
おそれ
)
のある
代物
(
しろもの
)
です。
039
教主
(
けうしゆ
)
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
は
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
が
心情
(
しんじやう
)
を
御
(
ご
)
洞察
(
どうさつ
)
遊
(
あそ
)
ばして、
040
出立
(
しゆつたつ
)
の
際
(
さい
)
にも、
041
決
(
けつ
)
して
女
(
をんな
)
にかかり
合
(
あ
)
つてはいけない、
042
今度
(
こんど
)
の
言霊戦
(
ことたません
)
は
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
試練
(
しれん
)
だと
仰有
(
おつしや
)
つた
位
(
くらゐ
)
ですから、
043
実
(
じつ
)
に
心許
(
こころもと
)
ない
代物
(
しろもの
)
ですよ。
044
鬼
(
おに
)
でも
閻魔
(
えんま
)
でも
美人
(
びじん
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
怒
(
おこ
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはない。
045
況
(
いは
)
んや
人間
(
にんげん
)
に
於
(
おい
)
てをや。
046
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
今迄
(
いままで
)
の
経歴
(
けいれき
)
が
経歴
(
けいれき
)
ですからなア』
047
杢助
(
もくすけ
)
『
此
(
こ
)
の
連山
(
れんざん
)
重畳
(
ちようでふ
)
たる
山道
(
やまみち
)
に、
048
そんな
女
(
をんな
)
が
迂路
(
うろ
)
ついて
居
(
ゐ
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはありますまい。
049
生物
(
いきもの
)
と
云
(
い
)
つたら
猪
(
しし
)
、
050
狼
(
おほかみ
)
、
051
蛇
(
へび
)
、
052
狐
(
きつね
)
、
053
狸
(
たぬき
)
位
(
くらゐ
)
なものでせう。
054
人間
(
にんげん
)
と
言
(
い
)
へばアルプス
教
(
けう
)
の
連中
(
れんちう
)
が
徘徊
(
はいくわい
)
してゐる
位
(
くらゐ
)
なもの、
055
私
(
わたし
)
は
女
(
をんな
)
よりも
案
(
あん
)
じるのは、
056
アルプス
教
(
けう
)
の
集団
(
しふだん
)
に
出会
(
でつくは
)
し
苦戦
(
くせん
)
に
苦戦
(
くせん
)
を
重
(
かさ
)
ね、
057
其
(
そ
)
の
為
(
ため
)
に
時間
(
じかん
)
を
費
(
つひ
)
やして
居
(
ゐ
)
られるのではあるまいかと
思
(
おも
)
ひます。
058
大谷山
(
おほたにやま
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
魔神
(
まがみ
)
の
多
(
おほ
)
い
所
(
ところ
)
、
059
六甲山
(
ろくかふざん
)
も
時々
(
ときどき
)
テーリスタンが
部下
(
ぶか
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
構
(
かま
)
へて
居
(
を
)
る
地点
(
ちてん
)
ですから、
060
それ
等
(
ら
)
に
対手
(
あひて
)
になつてゐるかも
知
(
し
)
れますまい。
061
昨夜
(
さくや
)
の
女
(
をんな
)
を
虐
(
いぢ
)
めたやうに、
062
あの
通
(
とほ
)
り
沢山
(
たくさん
)
な
奴
(
やつ
)
が
徘徊
(
はいくわい
)
して
居
(
を
)
るのですから、
063
随分
(
ずゐぶん
)
に
苦戦
(
くせん
)
をやつてゐられるのでせうよ』
064
玉治別
(
たまはるわけ
)
『それはさうと、
065
あの
秘密
(
ひみつ
)
書類
(
しよるゐ
)
に
依
(
よ
)
つて
敵
(
てき
)
の
配置
(
はいち
)
を
覚
(
さと
)
り、
066
間道
(
かんだう
)
ばかり
進
(
すす
)
んで
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
だから、
067
滅多
(
めつた
)
に
敵
(
てき
)
に
出会
(
でつくは
)
す
筈
(
はず
)
はなからうと
思
(
おも
)
はれます』
068
杢助
(
もくすけ
)
『さうだとすれば
随分
(
ずゐぶん
)
暇
(
ひま
)
の
要
(
い
)
ることだなア。
069
併
(
しか
)
し
此方
(
こちら
)
は
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つて
真直
(
まつすぐ
)
に
来
(
き
)
たのだから、
070
余程
(
よほど
)
早
(
はや
)
いのは
道理
(
だうり
)
だ。
071
二時
(
ふたとき
)
や、
072
三時
(
みとき
)
遅
(
おく
)
れたつて
寧
(
むしろ
)
当然
(
たうぜん
)
かも
知
(
し
)
れますまい』
073
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
我々
(
われわれ
)
は
湖上
(
こじやう
)
に
於
(
おい
)
ていろいろと
時間
(
ひま
)
をとりましたから、
074
平均
(
へいきん
)
すれば
向方
(
むかふ
)
の
方
(
はう
)
が
早
(
はや
)
く
此処
(
ここ
)
へ
到着
(
たうちやく
)
してゐなければならないのですワ』
075
斯
(
かか
)
る
処
(
ところ
)
へ
蓑笠
(
みのかさ
)
の
影
(
かげ
)
、
076
霧
(
きり
)
の
中
(
なか
)
よりポコポコと
浮
(
う
)
き
上
(
あが
)
り
登
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
る。
077
杢助
(
もくすけ
)
『アー
誰
(
たれ
)
か
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
ましたよ。
078
大方
(
おほかた
)
竜国別
(
たつくにわけ
)
様
(
さま
)
でせう』
079
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
首
(
くび
)
を
伸
(
の
)
ばして
見
(
み
)
つめてゐる。
080
追々
(
おひおひ
)
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
く
)
る
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
。
081
竜国別
(
たつくにわけ
)
『アヽ
長
(
なが
)
らく
待
(
ま
)
たしたでせう。
082
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
嶮
(
けは
)
しい
山坂
(
やまさか
)
、
083
それにいろいろの
道草
(
みちぐさ
)
を
喰
(
く
)
つて
居
(
ゐ
)
たものですから、
084
ツイ
遅
(
おく
)
れました』
085
玉治別
(
たまはるわけ
)
『ヤア
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
086
又
(
また
)
谷底
(
たにそこ
)
へでも
沈澱
(
ちんでん
)
したのぢやなからうかと、
087
実
(
じつ
)
は
心配
(
しんぱい
)
して
居
(
ゐ
)
ました』
088
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
国依別
(
くによりわけ
)
さまはまだお
見
(
み
)
えになりませぬか』
089
玉治別
(
たまはるわけ
)
『まだ
見
(
み
)
えませぬワ、
090
如何
(
どう
)
したのでせう』
091
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
中々
(
なかなか
)
予定通
(
よていどほ
)
りには
進
(
すす
)
めないものでしてなア。
092
私
(
わたし
)
も
大変
(
たいへん
)
な
面白
(
おもしろ
)
いことに
出会
(
であ
)
つて
来
(
き
)
ましたよ』
093
と
笠
(
かさ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぐ。
094
見
(
み
)
れば
額
(
ひたひ
)
を
石
(
いし
)
で
割
(
わ
)
られた
傷
(
きず
)
、
095
玉治別
(
たまはるわけ
)
『ヤア
貴方
(
あなた
)
の
額
(
ひたひ
)
は
如何
(
どう
)
なさつた。
096
大変
(
たいへん
)
な
傷
(
きず
)
ぢやありませぬか』
097
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
石
(
いし
)
に
躓
(
つまづ
)
き
倒
(
こ
)
けた
途端
(
とたん
)
に、
098
額
(
ひたひ
)
を
打
(
う
)
ちました』
099
玉治別
(
たまはるわけ
)
『それは
又
(
また
)
妙
(
めう
)
ぢやなア。
100
一割
(
いちわり
)
高
(
たか
)
い
鼻
(
はな
)
を
打
(
う
)
ちさうなものだのに、
101
如何
(
どう
)
して
又
(
また
)
その
額
(
ひたひ
)
を
打
(
う
)
たれたのでせう』
102
竜国別
(
たつくにわけ
)
『アヽこれは
一寸
(
ちよつと
)
訳
(
わけ
)
があつて、
103
明白
(
めいはく
)
に
申上
(
まをしあ
)
げ
兼
(
か
)
ねます。
104
どうぞ
此
(
こ
)
の
事
(
こと
)
だけは
堅
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
がしてあるのだから、
105
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さいますな』
106
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
約束
(
やくそく
)
ぢやありますまい。
107
貴方
(
あなた
)
はアルプス
教
(
けう
)
の
部下
(
ぶか
)
に
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
かれ、
108
頭
(
あたま
)
を
こつ
かれたのでせう。
109
折角
(
せつかく
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
揃
(
そろ
)
つて、
110
無疵
(
むきず
)
で、
111
天晴
(
あつぱれ
)
勝利
(
しようり
)
を
得
(
え
)
て
帰
(
かへ
)
らうと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに、
112
負傷者
(
ふしやうしや
)
を
出
(
だ
)
したと
云
(
い
)
ふことは
実
(
じつ
)
に
残念
(
ざんねん
)
だ』
113
竜国別
(
たつくにわけ
)
『イエイエ アルプス
教
(
けう
)
の
連中
(
れんちう
)
には、
114
一人
(
ひとり
)
も
逢
(
あ
)
うたことが
御座
(
ござ
)
いませぬ。
115
道中
(
だうちう
)
は
至極
(
しごく
)
無事
(
ぶじ
)
平穏
(
へいおん
)
でした』
116
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
無事
(
ぶじ
)
平穏
(
へいおん
)
の
途中
(
とちう
)
に
其
(
そ
)
の
傷
(
きず
)
は
又
(
また
)
如何
(
どう
)
なさつたのだ。
117
吾々
(
われわれ
)
は
親子
(
おやこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
よりも
親密
(
しんみつ
)
にして
居
(
ゐ
)
る
仲
(
なか
)
、
118
何故
(
なぜ
)
御
(
お
)
隠
(
かく
)
しなさるか』
119
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
何
(
ど
)
うしても
斯
(
か
)
うしても
秘密
(
ひみつ
)
は
秘密
(
ひみつ
)
です。
120
これ
計
(
ばか
)
りは
私
(
わたし
)
一生
(
いつしやう
)
の
間
(
あひだ
)
云
(
い
)
ふことは
出来
(
でき
)
ませぬ。
121
もしも
半口
(
はんくち
)
でも
言
(
い
)
はうものなら
大変
(
たいへん
)
です。
122
やつて
来
(
き
)
ますからなア』
123
玉治別
(
たまはるわけ
)
『やつて
来
(
く
)
るとは、
124
そりや
又
(
また
)
何
(
なん
)
ですか。
125
世界
(
せかい
)
の
鬼
(
おに
)
、
126
大蛇
(
をろち
)
、
127
悪狐
(
あくこ
)
、
128
醜女
(
しこめ
)
、
129
探女
(
さぐめ
)
を
悉
(
ことごと
)
く
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さねばならぬ
宣伝使
(
せんでんし
)
、
130
何
(
なに
)
がやつて
来
(
き
)
たところで
怖
(
おそ
)
ろしいものがある
道理
(
だうり
)
はない。
131
怪体
(
けつたい
)
なことを
仰有
(
おつしや
)
るのですな』
132
竜国別
(
たつくにわけ
)
『これは
誓約
(
うけひ
)
がしてありますから、
133
約束
(
やくそく
)
を
破
(
やぶ
)
れば
矢張
(
やつぱり
)
違約
(
ゐやく
)
の
罪
(
つみ
)
になりますワ』
134
玉治別
(
たまはるわけ
)
『ハヽヽヽヽ、
135
エライ
惚気
(
のろけ
)
方
(
かた
)
だなア。
136
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て
立派
(
りつぱ
)
なナイスに
出会
(
でつくわ
)
し、
137
夫婦
(
ふうふ
)
の
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
び、
138
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
からお
前様
(
まへさま
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
、
139
鼻
(
はな
)
の
高
(
たか
)
い
方
(
かた
)
は
他
(
ほか
)
の
女
(
をんな
)
に
惚
(
ほ
)
れられると
困
(
こま
)
るから、
140
傷
(
きず
)
をつけて
置
(
お
)
かうなんて、
141
ナイスに
頭
(
あたま
)
を
割
(
わ
)
らせ、
142
さうして
夫婦
(
ふうふ
)
の
誓約
(
うけひ
)
をしたのでせう。
143
その
代
(
かは
)
り
貴方
(
あなた
)
も
女
(
をんな
)
の
小指
(
こゆび
)
位
(
ぐらゐ
)
は
預
(
あづ
)
かつたでせうなア』
144
竜国別
(
たつくにわけ
)
『イヤもう
迷惑
(
めいわく
)
千万
(
せんばん
)
、
145
ナイスと
婚約
(
こんやく
)
を
結
(
むす
)
ぶやうな、
146
そんな
気楽
(
きらく
)
なことですかい。
147
大変
(
たいへん
)
な
椿事
(
ちんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
したのですよ。
148
言
(
い
)
ひ
度
(
た
)
いは
山々
(
やまやま
)
なれど
斯
(
こ
)
んなことを
言
(
い
)
ふと、
149
鬼娘
(
おにむすめ
)
がやつて
来
(
き
)
ますよ』
150
杢助
(
もくすけ
)
『ハヽヽヽヽ、
151
大谷山
(
おほたにやま
)
の
谷底
(
たにそこ
)
に
巣
(
す
)
を
構
(
かま
)
へて
居
(
を
)
る
鬼娘
(
おにむすめ
)
のお
光
(
みつ
)
に
逢
(
あ
)
うて、
152
血
(
ち
)
を
吸
(
す
)
はれたのだなア』
153
竜国別
(
たつくにわけ
)
『メヽヽ
滅相
(
めつさう
)
な、
154
そんなものに
逢
(
あ
)
うたことはありませぬワ』
155
杢助
(
もくすけ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
156
我々
(
われわれ
)
を
偽
(
いつは
)
るのですか。
157
偽
(
いつは
)
りの
罪
(
つみ
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
重
(
おも
)
いものですよ』
158
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
約束
(
やくそく
)
を
破
(
やぶ
)
つても
罪
(
つみ
)
になる。
159
偽
(
いつは
)
つても
罪
(
つみ
)
になる。
160
エー
仕方
(
しかた
)
がない、
161
実
(
じつ
)
はお
光
(
みつ
)
と
云
(
い
)
ふ
鬼娘
(
おにむすめ
)
に
出会
(
でつくわ
)
し、
162
頭
(
あたま
)
をこづかれ、
163
血
(
ち
)
を
二升
(
にしよう
)
許
(
ばか
)
り
吸
(
す
)
ひとられ、
164
何処
(
どこ
)
ともなしに
気分
(
きぶん
)
がサツパリとしました。
165
併
(
しか
)
し
何
(
なん
)
となく
意気
(
いき
)
沮喪
(
そさう
)
したやうな
感
(
かん
)
じが
致
(
いた
)
します。
166
千
(
せん
)
里
(
り
)
向
(
むか
)
ふでも
私
(
わし
)
の
耳
(
みみ
)
は
聞
(
きこ
)
えるから、
167
人
(
ひと
)
に
言
(
い
)
つたが
最後
(
さいご
)
、
168
生命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
ると
云
(
い
)
ひました。
169
私
(
わたし
)
も
男
(
をとこ
)
だから
鬼娘
(
おにむすめ
)
の
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
は
怖
(
おそ
)
れませぬが、
170
やつて
来
(
き
)
たら
何
(
なん
)
とかして
下
(
くだ
)
さいますか』
171
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま、
172
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
173
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
て
忽
(
たちま
)
ち
鬼娘
(
おにむすめ
)
を
消滅
(
せうめつ
)
させて
了
(
しま
)
ひますよ』
174
杢助
(
もくすけ
)
『
万一
(
まんいち
)
やつて
来居
(
きを
)
つたなら、
175
此
(
こ
)
の
杢助
(
もくすけ
)
が
足
(
あし
)
で
踏
(
ふ
)
み
躙
(
にじ
)
り
降参
(
かうさん
)
させて
呉
(
く
)
れます。
176
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさるな』
177
斯
(
かか
)
る
所
(
ところ
)
へ
黒雲
(
くろくも
)
を
起
(
おこ
)
し、
178
山麓
(
さんろく
)
より
鬼娘
(
おにむすめ
)
、
179
面
(
かほ
)
ばかり
現
(
あら
)
はし、
180
ヌーヌーと
雲
(
くも
)
と
共
(
とも
)
に
上
(
あが
)
つて
来
(
く
)
る。
181
竜国別
(
たつくにわけ
)
『ヤアどうやら
見覚
(
みおぼ
)
えのある
鬼娘
(
おにむすめ
)
がやつて
来
(
き
)
たやうだ。
182
モシ
杢助
(
もくすけ
)
さま、
183
頼
(
たの
)
みますよ』
184
杢助
(
もくすけ
)
『
心配
(
しんぱい
)
なさるな。
185
貴方
(
あなた
)
は
早
(
はや
)
く
言霊戦
(
ことたません
)
を
始
(
はじ
)
めなさい。
186
其
(
そ
)
の
他
(
ほか
)
のことは、
187
みんな
此
(
この
)
杢助
(
もくすけ
)
が
御
(
お
)
引受
(
ひきう
)
け
申
(
まを
)
す』
188
と
云
(
い
)
ふ
折
(
をり
)
しも
鬼娘
(
おにむすめ
)
はグワツと
耳
(
みみ
)
迄
(
まで
)
引裂
(
ひきさ
)
けた
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
189
舌
(
した
)
をノロノロ
出
(
だ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
190
鬼娘
(
おにむすめ
)
『
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
191
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
た
筈
(
はず
)
だが、
192
何処
(
どこ
)
に
居
(
を
)
るかな』
193
杢助
(
もくすけ
)
『
此処
(
ここ
)
に
確
(
たし
)
かたつた
一人
(
ひとり
)
居
(
ゐ
)
る。
194
さうして
貴様
(
きさま
)
は
竜国別
(
たつくにわけ
)
を
探
(
さが
)
して
何
(
なに
)
をする
積
(
つも
)
りだ。
195
見
(
み
)
つともない。
196
小
(
ちつ
)
ぽけな
角
(
つの
)
を
生
(
は
)
やし、
197
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けてやつて
来
(
き
)
たところで、
198
誰一人
(
たれひとり
)
貴様
(
きさま
)
に
同情
(
どうじやう
)
するものはありやしないぞ。
199
あんまり
馬鹿
(
ばか
)
にすな。
200
貴様
(
きさま
)
の
顔
(
かほ
)
と
相談
(
そうだん
)
して
来
(
こ
)
い。
201
男
(
をとこ
)
の
尻
(
しり
)
を
追
(
お
)
ふのなら
女
(
をんな
)
らしいオチヨボ
口
(
ぐち
)
をして
来
(
き
)
たら
如何
(
どう
)
だ。
202
大神楽
(
だいかぐら
)
のやうな
無恰好
(
ぶかつかう
)
な
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けよつて、
203
そないな
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
ると
大抵
(
たいてい
)
の
男
(
をとこ
)
は、
204
夜分
(
やぶん
)
には
襲
(
おそ
)
はれて
安眠
(
あんみん
)
が
出来
(
でき
)
はしないぞ。
205
何故
(
なぜ
)
女
(
をんな
)
らしく
淑
(
しと
)
やかに
化
(
ば
)
けて
来
(
こ
)
ぬか』
206
お
光
(
みつ
)
『お
前
(
まへ
)
に
用
(
よう
)
はない。
207
俺
(
わし
)
は
竜国別
(
たつくにわけ
)
に
堅
(
かた
)
い
堅
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
がしてある。
208
約束
(
やくそく
)
履行
(
りかう
)
のために
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのだから、
209
邪魔
(
じやま
)
して
下
(
くだ
)
さるな』
210
杢助
(
もくすけ
)
『アハヽヽヽヽ、
211
何
(
なん
)
と
物好
(
ものず
)
きもあればあるものだな。
212
コレ
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま、
213
何程
(
なにほど
)
一人旅
(
ひとりたび
)
で
女
(
をんな
)
に
飢
(
かつ
)
ゑて
居
(
を
)
ると
言
(
い
)
つても、
214
あんまりぢやないか。
215
般若
(
はんにや
)
の
面
(
つら
)
みたやうな
鬼娘
(
おにむすめ
)
と、
216
なんぞ
堅
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
でもしたのか』
217
お
光
(
みつ
)
『
堅
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
した
証拠
(
しようこ
)
には
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
額口
(
ひたひぐち
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい、
218
俺
(
わし
)
の
所有物
(
しよいうぶつ
)
と
云
(
い
)
ふ
証拠
(
しようこ
)
に
石
(
いし
)
の
刻印
(
こくいん
)
が
捺
(
お
)
してある
筈
(
はず
)
だ。
219
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
生命
(
いのち
)
は
最早
(
もはや
)
此方
(
こつち
)
の
物
(
もの
)
だ。
220
邪魔
(
じやま
)
をして
下
(
くだ
)
さるな』
221
杢助
(
もくすけ
)
『
二人
(
ふたり
)
の
恋仲
(
こひなか
)
を、
222
俺
(
おれ
)
もさう
野暮
(
やぼ
)
な
生
(
うま
)
れ
付
(
つ
)
きぢやないから、
223
別
(
べつ
)
に
邪魔
(
じやま
)
する
積
(
つも
)
りぢやないが、
224
さてもさても
呆
(
あき
)
れたものだなア。
225
生命
(
いのち
)
までも
斯
(
こ
)
んな
鬼娘
(
おにむすめ
)
に
賭
(
か
)
けて、
226
約束
(
やくそく
)
するとは
余
(
あんま
)
りぢやないか。
227
おまけに
石
(
いし
)
の
刻印
(
こくいん
)
まで
捺
(
お
)
して
貰
(
もら
)
ふとは、
228
何処
(
どこ
)
までも
徹底
(
てつてい
)
した
恋愛
(
れんあい
)
だなア』
229
お
光
(
みつ
)
『
早
(
はや
)
く
除
(
の
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
230
俺
(
わし
)
は
胸
(
むね
)
の
火
(
ひ
)
が
燃
(
も
)
えて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るから、
231
お
光
(
みつ
)
狂乱
(
きやうらん
)
のやうになつて
了
(
しま
)
ひますよ』
232
杢助
(
もくすけ
)
『アハヽヽヽ、
233
山家
(
やまが
)
に
長
(
なが
)
らく
蟄居
(
ちつきよ
)
して
居
(
を
)
つたので、
234
芝居
(
しばゐ
)
を
見
(
み
)
る
機会
(
きくわい
)
がなかつたが、
235
一
(
ひと
)
つ
此処
(
ここ
)
で
其
(
そ
)
のお
光
(
みつ
)
狂乱
(
きやうらん
)
の
演劇
(
えんげき
)
を、
236
無料
(
むれう
)
拝観
(
はいくわん
)
さして
貰
(
もら
)
ひたいものだなア』
237
竜国別
(
たつくにわけ
)
『オイお
光
(
みつ
)
、
238
昨日
(
きのふ
)
の
約束
(
やくそく
)
はモー
取消
(
とりけし
)
だ。
239
誰
(
たれ
)
が
貴様
(
きさま
)
のやうな
鬼娘
(
おにむすめ
)
と
堅
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
んでたまらうか。
240
其
(
その
)
場
(
ば
)
遁
(
のが
)
れの
遁
(
に
)
げ
口上
(
こうじやう
)
だつた。
241
貴様
(
きさま
)
も
好
(
い
)
い
馬鹿
(
ばか
)
だなア』
242
と
杢助
(
もくすけ
)
の
力強
(
ちからづよ
)
を
後楯
(
うしろだて
)
に
徐々
(
そろそろ
)
メートルを
上
(
あ
)
げ
出
(
だ
)
した。
243
お
光
(
みつ
)
『ヘン、
244
偉
(
えら
)
さうに、
245
杢助
(
もくすけ
)
が
居
(
を
)
ると
思
(
おも
)
つて、
246
お
前
(
まへ
)
は
虎
(
とら
)
の
威
(
ゐ
)
を
借
(
か
)
る
奴狐
(
どぎつね
)
だ。
247
欺
(
だま
)
すことは
上手
(
じやうず
)
だなア。
248
この
鬼娘
(
おにむすめ
)
でさへも
呆
(
あき
)
れて
物
(
もの
)
が
云
(
い
)
はれませぬワイ。
249
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
其方
(
そちら
)
は
取消
(
とりけ
)
しても、
250
此方
(
こちら
)
は
取消
(
とりけ
)
さぬのだ。
251
何処
(
どこ
)
までも
生命
(
いのち
)
を
貰
(
もら
)
ふから
覚悟
(
かくご
)
をしなさい』
252
杢助
(
もくすけ
)
は
足許
(
あしもと
)
のギザギザした
石
(
いし
)
を
一
(
ひと
)
つ
拾
(
ひろ
)
ひ、
253
グツと
握
(
にぎ
)
つて、
254
杢助
(
もくすけ
)
『オイ、
255
お
光
(
みつ
)
、
256
約束
(
やくそく
)
は
履行
(
りかう
)
してやらう。
257
生命
(
いのち
)
も
奪
(
と
)
らしてやらう。
258
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
証文
(
しようもん
)
は
返
(
かへ
)
して
貰
(
もら
)
はねばならぬ。
259
サア、
260
此
(
この
)
石
(
いし
)
で
貴様
(
きさま
)
の
額
(
ひたひ
)
に
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
刻印
(
こくいん
)
を
捺
(
お
)
してやらう。
261
これで
再
(
ふたた
)
び
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
関
(
くわん
)
しては、
262
毛頭
(
まうとう
)
苦情
(
くじやう
)
は
申
(
まを
)
しませぬと
言
(
い
)
ふ
証拠
(
しようこ
)
だぞ。
263
サア
早
(
はや
)
く
凸凹
(
でこぼこ
)
を
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
せ』
264
竜国別
(
たつくにわけ
)
『お
光
(
みつ
)
、
265
ざまア
見
(
み
)
やがれ。
266
其
(
そ
)
の
凸
(
でこ
)
を
杢助
(
もくすけ
)
さまの
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
提出
(
ていしゆつ
)
するのだ』
267
お
光
(
みつ
)
『エー
残念
(
ざんねん
)
な、
268
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
269
お
前
(
まへ
)
も
杢助
(
もくすけ
)
と
年
(
ねん
)
が
年中
(
ねんぢう
)
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
るのぢやあるまい。
270
又
(
また
)
一人
(
ひとり
)
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
もあらう。
271
その
時
(
とき
)
に
約束
(
やくそく
)
を
屹度
(
きつと
)
履行
(
りかう
)
するから、
272
さう
思
(
おも
)
つてゐらつしやい』
273
お
初
(
はつ
)
、
274
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で、
275
お
初
(
はつ
)
『オホヽヽヽ、
276
鬼娘
(
おにむすめ
)
のお
光
(
みつ
)
どの、
277
私
(
わし
)
の
顔
(
かほ
)
を
見覚
(
みおぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
ますか』
278
お
光
(
みつ
)
は
不図
(
ふと
)
六
(
ろく
)
歳
(
さい
)
のお
初
(
はつ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るなり、
279
キヤツと
叫
(
さけ
)
んで
白煙
(
はくえん
)
となり
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
280
今迄
(
いままで
)
包
(
つつ
)
んで
居
(
ゐ
)
た
黒雲
(
くろくも
)
は、
281
高春山
(
たかはるやま
)
の
吹颪
(
ふきおろし
)
に
払拭
(
ふつしき
)
されて
四方
(
よも
)
に
飛散
(
ひさん
)
し、
282
山麓
(
さんろく
)
の
谷川
(
たにがは
)
の
水
(
みづ
)
までハツキリと
見
(
み
)
えるやうになつて
来
(
き
)
た。
283
杢助
(
もくすけ
)
『アハヽヽヽ、
284
鬼娘
(
おにむすめ
)
と
云
(
い
)
つても
脆
(
もろ
)
いものだなア。
285
到頭
(
たうとう
)
煙散
(
えんさん
)
霧消
(
むせう
)
して
了
(
しま
)
ひ
居
(
を
)
つた。
286
アヽ
彼奴
(
あいつ
)
もこれで
成仏
(
じやうぶつ
)
しただらう。
287
さア、
288
モウ
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさい』
289
竜国別
(
たつくにわけ
)
『エライ
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
をかけましたが、
290
御
(
お
)
かげ
で
助
(
たす
)
かりました』
291
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
竜国別
(
たつくにわけ
)
さま、
292
随分
(
ずゐぶん
)
奇抜
(
きばつ
)
なローマンスを
見
(
み
)
せて
呉
(
く
)
れたものだな。
293
蓼
(
たで
)
喰
(
く
)
ふ
虫
(
むし
)
も
好
(
す
)
き
好
(
ず
)
きとはよく
言
(
い
)
つたものだ』
294
竜国別
(
たつくにわけ
)
『お
前
(
まへ
)
まで
余
(
あんま
)
り
人
(
ひと
)
をひやかすものぢやない。
295
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
もチツとは
推量
(
すゐりやう
)
して
呉
(
く
)
れ』
296
一同
(
いちどう
)
『アハヽヽヽ』
297
と
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
敵地
(
てきち
)
にあるを
忘
(
わす
)
れて
面白
(
おもしろ
)
さうに
笑
(
わら
)
ふ。
298
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
時
(
とき
)
に、
299
国依別
(
くによりわけ
)
はまだ
来
(
こ
)
ないのかなア。
300
又
(
また
)
鬼娘
(
おにむすめ
)
と
途中
(
とちう
)
に
狎戯
(
いちやつ
)
いて
居
(
を
)
るのぢやなからうかな』
301
竜国別
(
たつくにわけ
)
『
斯
(
か
)
う
隙
(
ひま
)
が
要
(
い
)
るからは
何
(
なに
)
か
一
(
ひと
)
つの
故障
(
こしやう
)
が
起
(
おこ
)
つたのだらう。
302
彼奴
(
あいつ
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
罪業
(
めぐり
)
を
積
(
つ
)
んで
居
(
を
)
るから、
303
一人
(
ひとり
)
旅行
(
たび
)
は
剣呑
(
けんのん
)
だ』
304
と
語
(
かた
)
る
時
(
とき
)
しも、
305
国依別
(
くによりわけ
)
は
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
数人
(
すうにん
)
の
男
(
をとこ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
306
玉治別
(
たまはるわけ
)
『アヽ
国依別
(
くによりわけ
)
さまか、
307
随分
(
ずゐぶん
)
待呆
(
まちばう
)
けに
逢
(
あ
)
うたよ。
308
如何
(
どう
)
して
居
(
を
)
つたのだい』
309
国依別
(
くによりわけ
)
『
大変
(
たいへん
)
な
大事件
(
だいじけん
)
が
途中
(
とちう
)
で
勃発
(
ぼつぱつ
)
して、
310
それが
為
(
ため
)
に
時間
(
ひま
)
が
要
(
い
)
つたのだよ。
311
到頭
(
たうとう
)
地獄
(
ぢごく
)
の
八丁目
(
はつちやうめ
)
迄
(
まで
)
旅行
(
りよかう
)
して、
312
昔
(
むかし
)
の
女房
(
にようばう
)
に
包囲
(
はうゐ
)
攻撃
(
こうげき
)
され
困
(
こま
)
つて
了
(
しま
)
つた。
313
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から
嬶
(
かか
)
ア
泣
(
な
)
かしの
後家倒
(
ごけだふ
)
し、
314
刃物
(
はもの
)
要
(
い
)
らずの
女殺
(
をんなごろ
)
しをやつて
来
(
き
)
た
報
(
むく
)
いで、
315
幽冥界
(
いうめいかい
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ひ
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだところ、
316
合計
(
がふけい
)
十打
(
じふダース
)
ばかりのレコが
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
現
(
あら
)
はれて、
317
百万
(
ひやくまん
)
陀羅
(
だら
)
恨
(
うら
)
みの
数々
(
かずかず
)
繰返
(
くりかへ
)
し、
318
俺
(
わし
)
も
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
昔
(
むかし
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
し、
319
涎
(
よだれ
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
繰返
(
くりかへ
)
して
居
(
を
)
つたのだから、
320
ツイ
遅
(
おく
)
れて
済
(
す
)
まなかつた。
321
随分
(
ずゐぶん
)
退屈
(
たいくつ
)
であつたらうなア』
322
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
別
(
べつ
)
に
退屈
(
たいくつ
)
でも
何
(
なん
)
でも
無
(
な
)
かつた。
323
竜国別
(
たつくにわけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
324
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
鬼娘
(
おにむすめ
)
と
堅
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
び、
325
其
(
そ
)
の
契約
(
けいやく
)
を
履行
(
りかう
)
せよと
云
(
い
)
つて、
326
お
光
(
みつ
)
の
鬼娘
(
おにむすめ
)
がやつて
来
(
き
)
て、
327
今
(
いま
)
既
(
すで
)
に
愁歎場
(
しうたんば
)
の
幕
(
まく
)
を
下
(
お
)
ろしたところだ。
328
モー
一足
(
ひとあし
)
早
(
はや
)
く
来
(
く
)
ると
面白
(
おもしろ
)
い
活劇
(
くわつげき
)
が
見
(
み
)
られるところだつたよ。
329
さうしてお
前
(
まへ
)
は
一人
(
ひとり
)
で
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
だつたのに、
330
随分
(
ずゐぶん
)
沢山
(
たくさん
)
に
人間
(
にんげん
)
を
伴
(
つ
)
れて
居
(
を
)
るではないか』
331
国依別
(
くによりわけ
)
『これは
死
(
し
)
んだ
女房
(
にようばう
)
の
亡霊
(
ばうれい
)
が
憑依
(
ひようい
)
した
容器
(
いれもの
)
だ』
332
玉治別
(
たまはるわけ
)
『
仮令
(
たとへ
)
亡霊
(
ばうれい
)
でも、
333
高春山
(
たかはるやま
)
の
征伐
(
せいばつ
)
が
済
(
す
)
む
迄
(
まで
)
女
(
をんな
)
を
伴
(
つ
)
れることは
出来
(
でき
)
ないと
云
(
い
)
ふ
規則
(
きそく
)
ではなかつたか』
334
国依別
(
くによりわけ
)
『それは
御
(
お
)
互
(
たがひ
)
様
(
さま
)
だ。
335
お
前
(
まへ
)
もお
初
(
はつ
)
さまを
伴
(
ともな
)
うて
来
(
き
)
ただらう。
336
たとへ
小供
(
こども
)
でも
女
(
をんな
)
は
矢張
(
やつぱり
)
女
(
をんな
)
だ。
337
竜国別
(
たつくにわけ
)
も
又
(
また
)
鬼娘
(
おにむすめ
)
と
途中
(
とちう
)
に
於
(
おい
)
て、
338
何
(
なん
)
だか
堅
(
かた
)
い
契約
(
けいやく
)
を
結
(
むす
)
んで
一悶着
(
ひともんちやく
)
を
おつ
始
(
ぱじ
)
めたと
云
(
い
)
ふではないか。
339
俺
(
おれ
)
ばかり
責
(
せ
)
めるのはチツと
惨酷
(
ざんこく
)
だよ。
340
此処
(
ここ
)
へ
伴
(
つ
)
れて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのは、
341
実際
(
じつさい
)
はアルプス
教
(
けう
)
の
部下
(
ぶか
)
で、
342
松姫
(
まつひめ
)
さまの
兄
(
あに
)
の
常公
(
つねこう
)
迄
(
まで
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのだ。
343
俺
(
おれ
)
の
戦利品
(
せんりひん
)
は
先
(
ま
)
づザツト
斯
(
こ
)
んなものだよ』
344
お
初
(
はつ
)
『ヤアヤア
竜国別
(
たつくにわけ
)
、
345
国依別
(
くによりわけ
)
、
346
玉治別
(
たまはるわけ
)
、
347
杢助
(
もくすけ
)
、
348
其
(
その
)
他
(
た
)
の
者
(
もの
)
ども、
349
これより
妾
(
わらは
)
が
作戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
を
汝
(
なんぢ
)
らに
伝
(
つた
)
ふる。
350
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
を
守
(
まも
)
り、
351
わが
言葉
(
ことば
)
を
謹聴
(
きんちやう
)
せよ』
352
と
子供
(
こども
)
に
似合
(
にあ
)
はず、
353
荘重
(
さうちよう
)
な
力
(
ちから
)
の
籠
(
こも
)
つた
声
(
こゑ
)
で
呼
(
よ
)
ばはるにぞ、
354
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は「ハイ」と
答
(
こた
)
へた
儘
(
まま
)
大地
(
だいち
)
に
平伏
(
へいふく
)
して
宣示
(
せんじ
)
を
待
(
ま
)
つ。
355
(
大正一一・五・二一
旧四・二五
外山豊二
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 化地蔵
(B)
(N)
酒の息 >>>
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第21巻(申の巻)
> 第4篇 反復無常 > 第16章 約束履行
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第16章 約束履行|第21巻|如意宝珠|霊界物語|/rm2116】
合言葉「みろく」を入力して下さい→