霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第21巻(申の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 千辛万苦
第1章 高春山
第2章 夢の懸橋
第3章 月休殿
第4章 砂利喰
第5章 言の疵
第2篇 是生滅法
第6章 小杉の森
第7章 誠の宝
第8章 津田の湖
第9章 改悟の酬
第3篇 男女共権
第10章 女権拡張
第11章 鬼娘
第12章 奇の女
第13章 夢の女
第14章 恩愛の涙
第4篇 反復無常
第15章 化地蔵
第16章 約束履行
第17章 酒の息
第18章 解決
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第21巻(申の巻)
> 第4篇 反復無常 > 第15章 化地蔵
<<< 恩愛の涙
(B)
(N)
約束履行 >>>
第一五章
化地蔵
(
ばけぢざう
)
〔六八九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第21巻 如意宝珠 申の巻
篇:
第4篇 反復無常
よみ(新仮名遣い):
はんぷくむじょう
章:
第15章 化地蔵
よみ(新仮名遣い):
ばけじぞう
通し章番号:
689
口述日:
1922(大正11)年05月21日(旧04月25日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年4月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
国依別は六甲山の頂上を目指して登っている途上であった。枯れ草の中に地蔵が立っているところへやってきて、一休みするうち、動かず冷たい地蔵に対して、外面如菩薩内心如夜叉だと、文句を言い非難をし出した。
すると地蔵は石から離れて飛び出し、国依別も心に鬼を飼う宣伝使だと悪口を言って返した。国依別は地蔵の口が悪いので、幽界で高利貸しをしているのではないか、と返す。
地蔵は話を合わせて高利貸しの苦労を語り、地蔵としてじっと立っている苦労を語った。そして国依別が宗彦時代に女を苦しめた罪を数えた。
地蔵は国依別に、自分を背負って六甲山の上まで連れて行ってくれ、と頼み出した。渋る国依別に対して地蔵は、自分を背負って行くだけの甲斐性がなければ高春山の鷹依姫を言向け和すことはできない、と言い返す。
そして竜国別はすでに鬼娘に喰われて他界したと言って国依別の意気をくじこうとした。国依別はその話を信じずに鎮魂を始めた。すると地蔵は国依別の昔の女・お市の姿と化した。そしてここは六甲山ではなく、すでに幽界だと国依別を脅す。
国依別はお市と言い争ううち、五六人の男の声で目を覚ました。国依別は石地蔵の前で寝込んで夢を見ていたのであった。
国依別に声をかけて起こしたのは、高春山のテーリスタンの部下たちであった。男たちは三五教の宣伝使を召捕りにやってきたのであった。
しかし男たちの中に、国依別に妹を取られた常公がいて、見知っていた。そこで国依別は昔の女の一人である常公の妹・お松の消息を尋ねた。お松はその後、ウラナイ教に入って松姫として権勢を奮っていたという。
国依別はお松が松姫となっていたことに感心し、一時は自分の女だったことを男たちに自慢してのろけて見せた。男たちはその語り口に呑まれ、すっかり国依別に惚れ込んでしまった。
国依別は男たちを言向け和して信者となすと、一行を引き連れて高春山を目指すこととなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-05-02 02:25:43
OBC :
rm2115
愛善世界社版:
245頁
八幡書店版:
第4輯 354頁
修補版:
校定版:
253頁
普及版:
110頁
初版:
ページ備考:
001
バラモン
教
(
けう
)
の
其
(
その
)
一派
(
いつぱ
)
002
アルプス
教
(
けう
)
を
樹立
(
じゆりつ
)
して
003
高春山
(
たかはるやま
)
に
巣窟
(
さうくつ
)
を
004
構
(
かま
)
へて
住
(
す
)
める
鬼婆
(
おにばば
)
の
005
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
が
悪業
(
あくげふ
)
を
006
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
救
(
すく
)
はむと
007
三五教
(
あななひけう
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
008
高姫
(
たかひめ
)
黒姫
(
くろひめ
)
両人
(
りやうにん
)
は
009
鳥
(
とり
)
の
岩樟船
(
いはくすぶね
)
に
乗
(
の
)
り
010
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
中天
(
ちうてん
)
に
011
雲
(
くも
)
押
(
お
)
し
開
(
ひら
)
き
分
(
わ
)
け
上
(
のぼ
)
り
012
高春山
(
たかはるやま
)
の
麓
(
ふもと
)
まで
013
二人
(
ふたり
)
は
無事
(
ぶじ
)
に
着陸
(
ちやくりく
)
し
014
黄金
(
こがね
)
の
草
(
くさ
)
の
茂
(
しげ
)
りたる
015
胸突坂
(
むなつきざか
)
を
攀
(
よ
)
じ
登
(
のぼ
)
り
016
岩窟
(
がんくつ
)
並
(
なら
)
ぶ
天
(
あめ
)
の
森
(
もり
)
017
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
休
(
やす
)
らひて
018
天
(
あま
)
の
瓊矛
(
ぬぼこ
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
し
019
言霊戦
(
ことたません
)
の
最中
(
さいちう
)
に
020
テーリスタンやカーリンス
021
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
の
両腕
(
りやううで
)
と
022
頼
(
たの
)
む
曲津
(
まがつ
)
に
誘
(
さそ
)
はれて
023
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
引
(
ひ
)
き
行
(
ゆ
)
かれ
024
音信
(
たより
)
も
今
(
いま
)
に
知
(
し
)
れざれば
025
二人
(
ふたり
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
いだ
)
さむと
026
言依別
(
ことよりわけ
)
の
神言
(
みこと
)
もて
027
竜国別
(
たつくにわけ
)
や
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
028
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
029
遠
(
とほ
)
き
山路
(
やまぢ
)
を
打渉
(
うちわた
)
り
030
漸
(
やうや
)
う
此処
(
ここ
)
に
津田
(
つだ
)
の
湖
(
うみ
)
031
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
北
(
きた
)
の
路
(
みち
)
032
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
湖水
(
こすゐ
)
をば
033
横断
(
よこぎ
)
り
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
034
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
035
鼓
(
つづみ
)
の
滝
(
たき
)
を
右
(
みぎ
)
に
見
(
み
)
て
036
神
(
かみ
)
と
君
(
きみ
)
とに
真心
(
まごころ
)
を
037
尽
(
つ
)
くす
誠
(
まこと
)
の
宝塚
(
たからづか
)
038
峰
(
みね
)
を
伝
(
つた
)
ひて
六甲
(
ろくかふ
)
の
039
御山
(
みやま
)
を
指
(
さ
)
して
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
040
国依別
(
くによりわけ
)
は
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
巡礼姿
(
じゆんれいすがた
)
の
甲斐
(
かひ
)
々々
(
がひ
)
しく、
041
六甲山
(
ろくかふざん
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
目蒐
(
めが
)
けて
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
くに
路
(
みち
)
の
傍
(
かた
)
への
枯草
(
かれくさ
)
の
中
(
なか
)
にスツクと
立
(
た
)
てる
石地蔵
(
いしぢざう
)
がある。
042
国依別
『アヽ
大変
(
たいへん
)
にコンパスも
疲労
(
ひらう
)
を
訴
(
うつた
)
へ
出
(
だ
)
した。
043
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
石地蔵
(
いしぢざう
)
を
相手
(
あひて
)
に
一服
(
いつぷく
)
しようかなア。
044
……オイ
地蔵
(
ぢざう
)
さま、
045
お
前
(
まへ
)
は
何時
(
いつ
)
も
美
(
うつく
)
しい
顔
(
かほ
)
をして
慈悲
(
じひ
)
の
権化
(
ごんげ
)
とも
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
せて
御座
(
ござ
)
るが、
046
随分
(
ずゐぶん
)
冷酷
(
れいこく
)
なものだなア。
047
どこを
撫
(
な
)
でてもチツとも
温味
(
ぬくみ
)
はありやしない。
048
何程
(
なんぼ
)
地蔵
(
ぢざう
)
だと
云
(
い
)
つても
斯
(
か
)
う
蒲鉾
(
かまぼこ
)
の
様
(
やう
)
に
石
(
いし
)
に
半身
(
はんしん
)
をくつつけて、
049
半分
(
はんぶん
)
体
(
からだ
)
を
出
(
だ
)
した
所
(
ところ
)
は、
050
まるで
磔刑
(
はりつけ
)
に
遇
(
あ
)
うた
様
(
やう
)
なものだよ。
051
今
(
いま
)
の
世界
(
せかい
)
悪
(
あく
)
の
映像
(
えいざう
)
は、
052
恰度
(
ちやうど
)
お
前
(
まへ
)
が
好
(
い
)
い
代表者
(
だいへうしや
)
だ。
053
外面
(
げめん
)
如
(
によ
)
地蔵
(
ぢざう
)
、
054
内心
(
ないしん
)
如
(
によ
)
閻魔
(
えんま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
型
(
かた
)
が
映
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだなア』
055
地蔵
(
ぢざう
)
は
石
(
いし
)
から
離
(
はな
)
れて
浮
(
う
)
き
出
(
で
)
た
様
(
やう
)
に、
056
ヒヨコヒヨコと
錫杖
(
しやくじやう
)
を
突
(
つ
)
いて、
057
一二間
(
いちにけん
)
許
(
ばか
)
り
歩
(
あゆ
)
み
出
(
だ
)
し、
058
地蔵
『オイ
国依別
(
くによりわけ
)
、
059
イヤ
女殺
(
をんなごろ
)
しの
後家倒
(
ごけだふ
)
しの、
060
宗彦
(
むねひこ
)
の
巡礼
(
じゆんれい
)
上
(
あが
)
りの
宣伝使
(
せんでんし
)
、
061
貴様
(
きさま
)
の
翫弄
(
ぐわんろう
)
した
女
(
をんな
)
達
(
たち
)
に、
062
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
会
(
あ
)
はしてやらうか。
063
俺
(
おれ
)
の
悪口
(
あくこう
)
を
言
(
い
)
ひよつたが、
064
貴様
(
きさま
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
だよ。
065
貴様
(
きさま
)
こそ
心
(
こころ
)
に
鬼
(
おに
)
を
沢山
(
たくさん
)
抱擁
(
はうよう
)
し、
066
外面
(
ぐわいめん
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
なぞと、
067
チツとチヤンチヤラ
可笑
(
をか
)
しいワイ。
068
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
を
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
が
信任
(
しんにん
)
するとは、
069
ヤツパリ
暗
(
くら
)
がりの
世
(
よ
)
は
暗
(
くら
)
がりの
世
(
よ
)
だ。
070
盲目
(
めくら
)
ばかりの
暗黒
(
あんこく
)
世界
(
せかい
)
だなア』
071
国依別
『コレコレ
石地蔵
(
いしぢざう
)
さま、
072
否
(
いな
)
化地蔵
(
ばけぢざう
)
さま、
073
お
前
(
まへ
)
はチツト
言霊
(
ことたま
)
が
悪
(
わる
)
いぢやないか。
074
大方
(
おほかた
)
幽界
(
いうかい
)
で
高歩貸
(
たかぶがし
)
でも
行
(
や
)
つて
居
(
を
)
るのだらう。
075
中々
(
なかなか
)
娑婆気
(
しやばけ
)
があつて
面白
(
おもしろ
)
いワイ』
076
地蔵
『
今
(
いま
)
の
社会
(
しやくわい
)
の
奴
(
やつ
)
ア、
077
追々
(
おひおひ
)
と
渋
(
しぶ
)
とうなつて
来
(
き
)
やがつて、
078
俺
(
おれ
)
の
商売
(
しやうばい
)
もサツパリ
算用
(
さんよう
)
合
(
あ
)
うて
銭
(
ぜに
)
足
(
た
)
らず。
079
あちらからも
小便
(
せうべん
)
を
掛
(
か
)
け、
080
こちらからも
小便
(
せうべん
)
をかけ、
081
まるで
世界
(
せかい
)
の
奴
(
やつ
)
ア、
082
犬
(
いぬ
)
の
様
(
やう
)
なものだよ。
083
借
(
か
)
る
時
(
とき
)
にや
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つて
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るが、
084
返
(
かへ
)
せと
言
(
い
)
へば
鬼権
(
おにごん
)
だとか
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つてかぶり
付
(
つ
)
く、
085
咬犬
(
かみいぬ
)
の
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
ばつかりだ。
086
俺
(
おれ
)
も
仕方
(
しかた
)
がないで、
087
高歩貸
(
たかぶがし
)
をフツツリと
断念
(
だんねん
)
し、
088
菩提心
(
ぼだいしん
)
を
起
(
おこ
)
して
石地蔵
(
いしぢざう
)
になり、
089
世界
(
せかい
)
の
亡者
(
まうじや
)
を
助
(
たす
)
けてやらうと
思
(
おも
)
つて、
090
終始
(
しうし
)
一貫
(
いつくわん
)
不動
(
ふどう
)
の
精神
(
せいしん
)
を
以
(
もつ
)
て、
091
路
(
みち
)
の
辻
(
つじ
)
に
鯱
(
しやち
)
こばつて
居
(
を
)
れば、
092
俺
(
おれ
)
に
金
(
かね
)
を
借
(
か
)
つた
奴
(
やつ
)
、
093
借
(
か
)
る
時
(
とき
)
の
地蔵顔
(
ぢざうがほ
)
、
094
済
(
な
)
す
時
(
とき
)
の
閻魔顔
(
えんまがほ
)
、
095
悪魔道
(
あくまだう
)
に
落
(
お
)
ちた
報
(
むく
)
ひで、
096
情
(
なさけ
)
ない、
097
犬
(
いぬ
)
に
性
(
しやう
)
を
変
(
へん
)
じて
再
(
ふたた
)
び
娑婆
(
しやば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
098
又
(
また
)
しても
小便
(
せうべん
)
をかけて
通
(
とほ
)
りよる。
099
本当
(
ほんたう
)
に
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
仕方
(
しかた
)
のないものだ。
100
お
前
(
まへ
)
は
高歩貸
(
たかぶがし
)
は
苦
(
くるし
)
めなかつたが、
101
女
(
をんな
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
苦
(
くるし
)
めたものだのう。
102
キツト
貴様
(
きさま
)
も
其
(
その
)
報
(
むく
)
いで、
103
今度
(
こんど
)
は
猫
(
ねこ
)
に
生
(
うま
)
れ
変
(
かは
)
るのは、
104
閻魔
(
えんま
)
の
帳面
(
ちやうめん
)
にチヤンと
記
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
たぞ。
105
国依別
(
くによりわけ
)
と
云
(
い
)
ふのは
娑婆
(
しやば
)
に
居
(
を
)
る
間
(
あひだ
)
の
雅号
(
ががう
)
だ。
106
貴様
(
きさま
)
の
名
(
な
)
はヤツパリ
竹公
(
たけこう
)
又
(
また
)
の
名
(
な
)
は
宗彦
(
むねひこ
)
、
107
右
(
みぎ
)
の
腕
(
かいな
)
に
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
の
斑紋
(
はんもん
)
があると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
記
(
しる
)
してある。
108
どうだ
間違
(
まちが
)
ひか』
109
国依別
『それはチツとも
間違
(
まちがひ
)
がない。
110
併
(
しか
)
し
冥土
(
めいど
)
へ
行
(
ゆ
)
けば
美人
(
びじん
)
は
沢山
(
たくさん
)
居
(
ゐ
)
るだらうな』
111
地蔵
『
居
(
を
)
らいでかい。
112
しかし
乍
(
なが
)
ら
婦人
(
ふじん
)
同盟会
(
どうめいくわい
)
が
創立
(
さうりつ
)
されて、
113
第一
(
だいいち
)
、
114
宗彦
(
むねひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たら、
115
集
(
よ
)
つて
かか
つて、
116
血
(
ち
)
の
池
(
いけ
)
へブチ
込
(
こ
)
んでやらうと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
に、
117
チヤンと
定
(
き
)
まつて
居
(
ゐ
)
るよ』
118
国依別
『お
前
(
まへ
)
は
一体
(
いつたい
)
男
(
をとこ
)
か
女
(
をんな
)
か』
119
地蔵
『それを
尋
(
たづ
)
ねて
何
(
なに
)
にするのだ。
120
若
(
も
)
し
俺
(
おれ
)
が
女
(
をんな
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つたら、
121
又
(
また
)
何
(
なに
)
か
地金
(
ぢがね
)
を
出
(
だ
)
して
註文
(
ちうもん
)
でもするのだらう』
122
国依別
『
誰
(
たれ
)
がそんな
冷
(
つめ
)
たい
奴
(
やつ
)
に
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
る
馬鹿
(
ばか
)
があるかい』
123
地蔵
『
幽界
(
いうかい
)
に
居
(
を
)
る
女
(
をんな
)
は、
124
誰
(
たれ
)
もかれも
氷
(
こほり
)
の
様
(
やう
)
な
冷
(
つめ
)
たい
体
(
からだ
)
ばつかりだぞ』
125
国依別
『お
前
(
まへ
)
は
坤
(
ひつじさる
)
の
金神
(
こんじん
)
の
別名
(
べつめい
)
で、
126
実
(
じつ
)
に
優
(
やさ
)
しい
神
(
かみ
)
の
権化
(
ごんげ
)
ぢやと
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
つたが、
127
違
(
ちが
)
ふのか』
128
地蔵
『
地蔵
(
ぢざう
)
にもイロイロの
種類
(
しゆるゐ
)
がある。
129
俺
(
おれ
)
は
借
(
か
)
る
時
(
とき
)
の
地蔵顔
(
ぢざうがほ
)
、
130
済
(
な
)
す
時
(
とき
)
の
閻魔顔
(
えんまがほ
)
と
云
(
い
)
つて
善悪
(
ぜんあく
)
両面
(
りやうめん
)
を
兼
(
か
)
ねた
活仏
(
いきぼとけ
)
だ。
131
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も
金
(
かね
)
次第
(
しだい
)
、
132
俺
(
おれ
)
がお
前
(
まへ
)
に
対
(
たい
)
し、
133
柔
(
やはら
)
かく
親切
(
しんせつ
)
に
持
(
も
)
ちかけるのも
辛
(
つら
)
く
当
(
あた
)
るのも、
134
みんなお
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
一
(
ひと
)
つだ。
135
善
(
ぜん
)
も
悪
(
あく
)
も
全部
(
ぜんぶ
)
此
(
この
)
地蔵
(
ぢざう
)
の
方寸
(
はうすん
)
にあるのだ。
136
昔
(
むかし
)
から
地蔵
(
ぢざう
)
(
地頭
(
ぢとう
)
)に
法
(
はふ
)
なしと
云
(
い
)
つて、
137
天下
(
てんか
)
は
地蔵
(
ぢざう
)
の
自由
(
じいう
)
だ。
138
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
な、
139
善
(
ぜん
)
だの
悪
(
あく
)
だのと、
140
俄
(
にはか
)
上人
(
しやうにん
)
になつて
迂路
(
うろ
)
付
(
つ
)
くものぢやない。
141
なぜ
生地
(
きぢ
)
其
(
その
)
儘
(
まま
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はさぬのか』
142
国依別
『お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
に
人
(
ひと
)
を
三文
(
さんもん
)
もせぬ
様
(
やう
)
に
言
(
い
)
つて
了
(
しま
)
へばそれまでだが、
143
これでも
娑婆
(
しやば
)
世界
(
せかい
)
に
於
(
お
)
いては
最優等
(
さいいうとう
)
の
身魂
(
みたま
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
る
神
(
かみ
)
のお
使
(
つかひ
)
だぞ』
144
地蔵
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
145
俺
(
おれ
)
を
背中
(
せなか
)
に
負
(
お
)
うて
六甲山
(
ろくかふざん
)
の
頂上
(
てつぺん
)
まで
連
(
つ
)
れて
往
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ。
146
俺
(
おれ
)
もこんな
谷底
(
たにそこ
)
に
何時
(
いつ
)
までも
立
(
たち
)
ん
坊
(
ばう
)
になつて
居
(
を
)
つては
面白
(
おもしろ
)
くない。
147
そこらの
景色
(
けしき
)
も
見飽
(
みあ
)
いて
了
(
しま
)
つた。
148
チツと
世間
(
せけん
)
を
広
(
ひろ
)
く
見
(
み
)
たいからなう……』
149
国依別
『それや
事
(
こと
)
と
品
(
しな
)
によつたら、
150
負
(
お
)
うて
行
(
い
)
つてやらない
事
(
こと
)
もない。
151
併
(
しか
)
し
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も
金
(
かね
)
次第
(
しだい
)
だ、
152
金
(
かね
)
を
幾
(
いく
)
ら
出
(
だ
)
すか』
153
地蔵
『
俺
(
おれ
)
は
貴様
(
きさま
)
の
実地
(
じつち
)
目撃
(
もくげき
)
する
通
(
とほ
)
り
石
(
いし
)
の
地蔵
(
ぢざう
)
だ、
154
金
(
かね
)
があらう
筈
(
はず
)
はないよ』
155
国依別
『そんなら
止
(
や
)
めて
置
(
お
)
かうかい。
156
アタ
重
(
おも
)
たい。
157
此
(
この
)
山坂
(
やまさか
)
を
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
丈
(
だけ
)
でも
持
(
も
)
て
余
(
あま
)
して
居
(
を
)
るのに、
158
此
(
この
)
上
(
うへ
)
重量
(
ぢうりやう
)
を
追加
(
つゐか
)
しては
堪
(
たま
)
つたものぢやないワ』
159
地蔵
『
貴様
(
きさま
)
も
割
(
わり
)
とは
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
く
奴
(
やつ
)
だなア。
160
そんな
事
(
こと
)
で
高春山
(
たかはるやま
)
の
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
が
帰順
(
きじゆん
)
すると
思
(
おも
)
ふのか。
161
俺
(
おれ
)
を
山頂
(
さんちやう
)
まで
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
く
丈
(
だけ
)
の
勇気
(
ゆうき
)
がなければ、
162
どうせ
落第
(
らくだい
)
だ。
163
貴様
(
きさま
)
の
連
(
つ
)
れの
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
津田
(
つだ
)
の
湖水
(
こすゐ
)
で、
164
遠州
(
ゑんしう
)
、
165
駿州
(
すんしう
)
、
166
武州
(
ぶしう
)
の
為
(
ため
)
に
亡
(
ほろ
)
ぼされ、
167
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
鬼娘
(
おにむすめ
)
に
喰
(
く
)
はれて
了
(
しま
)
つたぞ。
168
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
るは
貴様
(
きさま
)
一人
(
ひとり
)
だ。
169
到底
(
たうてい
)
此
(
この
)
言霊戦
(
ことたません
)
は
駄目
(
だめ
)
だから、
170
俺
(
おれ
)
を
負
(
お
)
うて
上
(
うへ
)
まで
能
(
よ
)
う
行
(
ゆ
)
かぬ
位
(
くらゐ
)
なら、
171
寧
(
むし
)
ろ
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
いで、
172
是
(
これ
)
から
引返
(
ひきかへ
)
したがよからうぞ』
173
国依別
『
何
(
なに
)
ツ、
174
竜国別
(
たつくにわけ
)
は
鬼娘
(
おにむすめ
)
に
喰
(
く
)
はれたと。
175
それや
本当
(
ほんたう
)
かい』
176
地蔵
『それや
本当
(
ほんたう
)
だ。
177
地蔵
(
ぢざう
)
(
自業
(
じごふ
)
)
自得
(
じとく
)
だ』
178
国依別
『コレヤ
石地蔵
(
いしぢざう
)
、
179
貴様
(
きさま
)
は
洒落
(
しやれ
)
てるのか。
180
嘘
(
うそ
)
だらう』
181
地蔵
『
誰
(
たれ
)
が
嘘
(
うそ
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つて、
182
あつたら
口
(
くち
)
に
風
(
かぜ
)
を
引
(
ひ
)
かす
馬鹿
(
ばか
)
があるかい。
183
玉治別
(
たまはるわけ
)
は
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
の
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
り、
184
頭
(
あたま
)
に
三角
(
さんかく
)
の
霊衣
(
れいい
)
を
被
(
かぶ
)
つて、
185
たつた
今
(
いま
)
やつて
来
(
く
)
る。
186
マア
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
るが
宜
(
よ
)
からう』
187
国依別
(
くによりわけ
)
は「ハテナア」と
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み
大地
(
だいち
)
にドツカと
坐
(
ざ
)
し、
188
鎮魂
(
ちんこん
)
を
修
(
しう
)
し、
189
自
(
みづか
)
ら
虚実
(
きよじつ
)
の
判断
(
はんだん
)
に
心力
(
しんりよく
)
を
熱中
(
ねつちゆう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
190
地蔵
『ハヽヽヽヽ、
191
何時
(
いつ
)
まで
考
(
かんが
)
へたつて、
192
一旦
(
いつたん
)
国替
(
くにがへ
)
した
者
(
もの
)
が
帰
(
かへ
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはない。
193
早
(
はや
)
く
俺
(
おれ
)
の
要求
(
えうきう
)
を
容
(
い
)
れないか』
194
国依別
『
八釜
(
やかま
)
しく
云
(
い
)
ふない。
195
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
も
自由
(
じいう
)
にならぬ
中風
(
ちうぶ
)
地蔵
(
ぢざう
)
奴
(
め
)
。
196
負
(
お
)
うて
行
(
い
)
つてやるも、
197
やらぬも、
198
俺
(
おれ
)
の
考
(
かんが
)
へ
一
(
ひと
)
つだ。
199
今
(
いま
)
臍下
(
さいか
)
丹田
(
たんでん
)
、
200
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
に
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
を
神集
(
かむつど
)
ひに
集
(
つど
)
ひ、
201
神議
(
かむはか
)
りに
議
(
はか
)
らむとして、
202
諸神
(
しよしん
)
を
鎮魂
(
ちんこん
)
にて
招
(
お
)
ぎまつり
居
(
を
)
る
最中
(
さいちう
)
だ』
203
地蔵
(
ぢざう
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
204
なまめかしい
美人
(
びじん
)
の
姿
(
すがた
)
と
化
(
くわ
)
して
了
(
しま
)
つた。
205
女
『サア
国
(
くに
)
さまえ、
206
妾
(
わたし
)
はお
前
(
まへ
)
さまに
娑婆
(
しやば
)
で
随分
(
ずゐぶん
)
嬲
(
なぶ
)
られたお
市
(
いち
)
ですよ』
207
国依別
『ナニ、
208
お
市
(
いち
)
だ、
209
馬鹿
(
ばか
)
を
言
(
い
)
ふな。
210
大方
(
おほかた
)
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
奴狐
(
どぎつね
)
め。
211
俺
(
おれ
)
を
誑
(
ばか
)
す
積
(
つも
)
りだらうが、
212
そんな
事
(
こと
)
に
誑
(
たぶら
)
される
国依別
(
くによりわけ
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るかい』
213
女
『
妾
(
わたし
)
は
最早
(
もはや
)
幽界
(
いうかい
)
の
人間
(
にんげん
)
、
214
お
前
(
まへ
)
も、
215
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つてらつしやるか
知
(
し
)
らぬが、
216
此処
(
ここ
)
は
六甲山
(
ろくかふざん
)
ぢやない、
217
六道
(
ろくだう
)
の
辻
(
つじ
)
ぢやぞえ。
218
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
なさい。
219
そこらの
光景
(
くわうけい
)
が
娑婆
(
しやば
)
とはスツカリ
違
(
ちが
)
ひませうがな』
220
国依別
『
馬鹿
(
ばか
)
を
言
(
い
)
ふない。
221
何処
(
どこ
)
に
違
(
ちが
)
つたとこがあるか。
222
グツグツ
吐
(
ぬか
)
すと、
223
狐
(
きつね
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はしてやらうか』
224
女
『ホヽヽヽヽ、
225
あの
宗
(
むね
)
さまの
気張
(
きば
)
りようわいなう。
226
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
から
恐
(
おそ
)
ろしくなつて
来
(
き
)
たと
見
(
み
)
え、
227
汗
(
あせ
)
をブルブルかいて、
228
あらむ
限
(
かぎ
)
りの
力
(
ちから
)
を
出
(
だ
)
して、
229
空威張
(
からいば
)
りして
居
(
ゐ
)
らつしやるワ、
230
そんなこつて、
231
どうして
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
が
往生
(
わうじやう
)
しますかい』
232
国依別
『
往生
(
わうじやう
)
さす、
233
ささぬは
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
自由
(
じいう
)
の
権
(
けん
)
だ。
234
女
(
をんな
)
だてら
我々
(
われわれ
)
の
行動
(
かうどう
)
を、
235
喋々
(
てふてふ
)
と
容喙
(
ようかい
)
する
権利
(
けんり
)
があるか』
236
女
『あつても
無
(
な
)
くても、
237
妾
(
わたし
)
は
妖怪
(
えうくわい
)
だから
容喙
(
ようかい
)
するのが
当然
(
あたりまへ
)
だ。
238
お
前
(
まへ
)
さまは
現界
(
げんかい
)
に
居
(
を
)
つた
時
(
とき
)
から、
239
沢山
(
たくさん
)
の
女
(
をんな
)
を
誘拐
(
いうかい
)
しなさつただらう。
240
それだから
今度
(
こんど
)
は
幽界
(
いうかい
)
へ
来
(
き
)
て、
241
反対
(
はんたい
)
に
女
(
をんな
)
から
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
容喙
(
ようかい
)
されるのは、
242
過去
(
くわこ
)
の
作
(
つく
)
つた
罪業
(
ざいごふ
)
が
酬
(
むく
)
うて
来
(
き
)
たのですよ、
243
ホヽヽヽヽ、
244
あのマア
不快
(
つま
)
らぬさうなお
顔
(
かほ
)
……』
245
国依別
『エー
放
(
ほ
)
つときやがれ』
246
女
『
放
(
ほ
)
つとけと
仰有
(
おつしや
)
つても、
247
お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
な
悪党
(
あくたう
)
は
何程
(
なにほど
)
気張
(
きば
)
つても
仏
(
ほつとけ
)
にはなれませぬぞえ。
248
鬼
(
おに
)
にもなれず、
249
マア
石地蔵
(
いしぢざう
)
に
小便
(
せうべん
)
をかけて
歩
(
ある
)
く
犬
(
いぬ
)
位
(
くらゐ
)
なものだ。
250
けれども
幽界
(
いうかい
)
では
顔
(
かほ
)
丈
(
だけ
)
は
人間
(
にんげん
)
たる
事
(
こと
)
を
許
(
ゆる
)
される。
251
それだから
人犬
(
にんけん
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
252
人犬
(
にんけん
)
番犬
(
ばんけん
)
妻王
(
さいわう
)
の
馬
(
うま
)
と
云
(
い
)
つて
妾
(
わたし
)
を
今
(
いま
)
まで
馬
(
うま
)
にして
来
(
き
)
たが、
253
今度
(
こんど
)
は
妻王
(
さいわう
)
の
馬
(
うま
)
にしてあげるのだ。
254
サア
其処
(
そこ
)
に
四這
(
よつば
)
ひに
這
(
は
)
ひなさいよ』
255
国依別
『どこまでも
男
(
をとこ
)
をチヨン
嬲
(
なぶ
)
るのか。
256
男
(
をとこ
)
の
腕
(
うで
)
には
骨
(
ほね
)
があるぞ』
257
女
『
女
(
をんな
)
だつて
骨
(
ほね
)
はありますよ。
258
細
(
ほそ
)
うても
樫
(
かし
)
の
木
(
き
)
、
259
お
前
(
まへ
)
の
腕
(
うで
)
は
太
(
ふと
)
く
見
(
み
)
えても
新米竹
(
しんまいだけ
)
の
様
(
やう
)
な、
260
中
(
なか
)
が
空虚
(
うつろ
)
でヘナヘナだ。
261
娑婆
(
しやば
)
では
腕
(
うで
)
を
振廻
(
ふりまは
)
して、
262
こけ
嚇
(
おど
)
しが
利
(
き
)
いただらう。
263
新米竹
(
しんまいだけ
)
の
竹
(
たけ
)
さんと
云
(
い
)
つて、
264
威張
(
ゐば
)
つて
行
(
ゆ
)
けたが、
265
幽界
(
いうかい
)
ではチツと
様子
(
やうす
)
が
違
(
ちが
)
ひますよ』
266
国依別
『エー
雀
(
すずめ
)
の
親方
(
おやかた
)
見
(
み
)
たいに、
267
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
娑婆
(
しやば
)
でも
囀
(
さへづ
)
るが、
268
幽界
(
いうかい
)
へ
来
(
き
)
てもヤツパリ
囀
(
さへづ
)
るのかなア。
269
雀女
(
すずめをんな
)
奴
(
め
)
が』
270
女
『
竹
(
たけ
)
さんに
雀
(
すずめ
)
は
品
(
しな
)
よくとまる、
271
とめて
止
(
と
)
まらぬ
恋
(
こひ
)
の
道
(
みち
)
だ。
272
あちらからも
青
(
あを
)
い
顔
(
かほ
)
して
細
(
ほそ
)
い
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
し、
273
こちらからも
細
(
ほそ
)
い
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
して、
274
竹
(
たけ
)
さん
来
(
こ
)
い
来
(
こ
)
いと
招
(
よ
)
んで
居
(
ゐ
)
る……あの
厭
(
いや
)
らしい
亡者
(
まうじや
)
の
姿
(
すがた
)
を
御覧
(
ごらん
)
。
275
それ
芒原
(
すすきはら
)
の
彼方
(
あなた
)
から、
276
お
前
(
まへ
)
に
翻弄
(
ほんろう
)
された
雀女
(
すずめをんな
)
が、
277
沢山
(
たくさん
)
に
頭
(
あたま
)
を
出
(
だ
)
してゐるぢやないか。
278
チツとは
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
つただらう』
279
国依別
『オモイ
知
(
し
)
るも、
280
軽
(
かる
)
い
知
(
し
)
るもあつたものかい。
281
女
(
をんな
)
なら
亡者
(
まうじや
)
であらうが、
282
化物
(
ばけもの
)
であらうが、
283
ビクとも
致
(
いた
)
さぬ
竹
(
たけ
)
さん
兼
(
けん
)
宗彦
(
むねひこ
)
兼
(
けん
)
国依別
(
くによりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
だ。
284
サアお
市
(
いち
)
、
285
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だが
貴様
(
きさま
)
ここへユウカイして
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ。
286
俺
(
おれ
)
が
一々
(
いちいち
)
因縁
(
いんねん
)
を
説
(
と
)
いて、
287
諒解
(
りやうかい
)
の
行
(
ゆ
)
く
様
(
やう
)
にしてやる。
288
ワツハヽヽヽ。
289
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
化物
(
ばけもの
)
でも
気分
(
きぶん
)
の
良
(
い
)
いものだワイ』
290
お市
『お
前
(
まへ
)
は
娑婆
(
しやば
)
で、
291
石灰竈
(
いしばひがま
)
の
鼬
(
いたち
)
のやうにコテコテ
塗
(
ぬ
)
つた
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
や、
292
化女
(
ばけをんな
)
、
293
売淫女
(
ぢごく
)
、
294
夜鷹
(
よたか
)
なぞに、
295
何時
(
いつ
)
も
現
(
うつつ
)
を
抜
(
ぬ
)
かして、
296
鼻毛
(
はなげ
)
を
抜
(
ぬ
)
かれ、
297
眉毛
(
まゆげ
)
を
数
(
よ
)
まれ、
298
涎
(
よだれ
)
を
垂
(
た
)
らかし、
299
骨
(
ほね
)
まで
蒟蒻
(
こんにやく
)
の
様
(
やう
)
に
為
(
し
)
られて
来
(
き
)
た
代物
(
しろもの
)
だから、
300
化物
(
ばけもの
)
は
好
(
よ
)
い
配偶
(
はいぐう
)
だ。
301
どんな
奴
(
やつ
)
でも
構
(
かま
)
はぬ
物喰
(
ものく
)
ひのよい
助作
(
すけさく
)
だから、
302
ヤツパリ
幽界
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
ても
其
(
その
)
癖
(
くせ
)
が
止
(
や
)
まぬと
見
(
み
)
える。
303
娑婆
(
しやば
)
から
幽界
(
いうかい
)
へ、
304
そんな
糟
(
かす
)
を
持越
(
もちこ
)
して
貰
(
もら
)
つては、
305
閻魔
(
えんま
)
さまも
聊
(
いささ
)
か
迷惑
(
めいわく
)
だらう。
306
地蔵顔
(
ぢざうがほ
)
してお
前
(
まへ
)
の
巾着
(
きんちやく
)
ばつかり
狙
(
ねら
)
つて
居
(
を
)
る
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
は、
307
幽界
(
ここ
)
にも
多数
(
たくさん
)
に
居
(
を
)
るから、
308
御
(
ご
)
註文
(
ちうもん
)
なら
幾
(
いく
)
らでも
召集
(
せうしふ
)
して
来
(
き
)
ませうか』
309
国依別
『オイ
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つた。
310
物
(
もの
)
も
相談
(
そうだん
)
ぢやが、
311
貴様
(
きさま
)
一旦
(
いつたん
)
暇
(
ひま
)
をやつたのだが、
312
今度
(
こんど
)
は
一
(
ひと
)
つ
焼
(
や
)
き
直
(
なほ
)
し、
313
ドント
張
(
は
)
り
込
(
こ
)
んで
焼木杭
(
やけぼつくひ
)
に
火
(
ひ
)
が
点
(
つ
)
いた
様
(
やう
)
に、
314
旧交
(
きうかう
)
を
暖
(
あたた
)
めたらどうだ。
315
さうすれば
貴様
(
きさま
)
も
沢山
(
たくさん
)
な
女
(
をんな
)
を
集
(
あつ
)
めて
来
(
き
)
て、
316
修羅
(
しゆら
)
を
燃
(
も
)
やし
修羅道
(
しゆらだう
)
へ
落
(
お
)
ちる
心配
(
しんぱい
)
はないぞ』
317
お市
『ホヽヽヽヽ、
318
自惚
(
うぬぼれ
)
も
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
にしたがよいワイナ。
319
誰
(
たれ
)
がお
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
なヒヨツトコから
暇
(
ひま
)
を
貰
(
もら
)
ふものかいナ。
320
暇
(
ひま
)
を
貰
(
もら
)
ふ
所
(
ところ
)
までクツついとる
馬鹿
(
ばか
)
があるものかい。
321
憚
(
はばか
)
り
乍
(
なが
)
ら、
322
お
市
(
いち
)
の
方
(
はう
)
から
肱鉄
(
ひぢてつ
)
を
喰
(
く
)
はして、
323
鼻毛
(
はなげ
)
を
抜
(
ぬ
)
いてお
暇
(
ひま
)
を
呉
(
く
)
れたのだ。
324
三行半
(
みくだりはん
)
は
誰
(
たれ
)
が
書
(
か
)
いたのだ。
325
お
前
(
まへ
)
覚
(
おぼ
)
えがあるだらう』
326
国依別
『
幽界
(
いうかい
)
へ
来
(
き
)
てまで、
327
そんな
恥
(
はぢ
)
を
曝
(
さら
)
すものぢやない。
328
俺
(
おれ
)
ばつかりの
恥辱
(
ちじよく
)
ぢやないぞ。
329
女
(
をんな
)
は
温順
(
おんじゆん
)
なのが
値打
(
ねうち
)
だ。
330
一旦
(
いつたん
)
女房
(
にようばう
)
になつたら、
331
仮令
(
たとへ
)
夫
(
をつと
)
が
馬鹿
(
ばか
)
でもヒヨツトコでも、
332
泥棒
(
どろばう
)
でも、
333
どこまでも
女
(
をんな
)
としての
貞操
(
ていさう
)
を
尽
(
つく
)
すのが
良妻
(
りやうさい
)
賢母
(
けんぼ
)
だ。
334
それに
滔々
(
たうたう
)
と
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
から
暇
(
ひま
)
をやつたなぞと、
335
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
的
(
てき
)
行為
(
かうゐ
)
を
自
(
みづか
)
ら
曝
(
さら
)
け
出
(
だ
)
すと
云
(
い
)
ふ
不利益
(
ふりえき
)
な
事
(
こと
)
があるか。
336
閻魔
(
えんま
)
さまに
聞
(
きこ
)
えたら、
337
キツト
貴様
(
きさま
)
は
冥罰
(
めいばつ
)
を
蒙
(
かうむ
)
るに
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
るぞ』
338
お市
『ホヽヽヽヽ、
339
ガンザカ
箒
(
ばうき
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
が、
340
どこを
押
(
お
)
したらそんな
真面目
(
まじめ
)
くさつた
言葉
(
ことば
)
が
出
(
で
)
るのですかい。
341
貴方
(
あなた
)
はそんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
丈
(
だけ
)
の
資格
(
しかく
)
はありませぬよ』
342
国依別
『アヽしようもない。
343
石地蔵
(
いしぢざう
)
や
亡者
(
まうじや
)
女
(
をんな
)
に
妨
(
さまた
)
げられて、
344
思
(
おも
)
はぬ
光陰
(
くわういん
)
を
空費
(
くうひ
)
した。
345
サア
是
(
こ
)
れから
高春山
(
たかはるやま
)
へ
出陣
(
しゆつぢん
)
せねばならぬ、
346
そこ
退
(
の
)
け』
347
女
『
退
(
の
)
けと
云
(
い
)
つたつて、
348
どうして
退
(
の
)
けませう。
349
妾
(
わたし
)
だつてアヽ
云
(
い
)
ふものの、
350
ヤツパリ、
351
仮令
(
たとへ
)
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
にもせよ、
352
お
前
(
まへ
)
と、
353
夫
(
をつと
)
よ
妻
(
つま
)
よと
呼
(
よ
)
んで
暮
(
くら
)
した
仲
(
なか
)
だもの、
354
チツとは
同情心
(
どうじやうしん
)
が
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだから、
355
お
前
(
まへ
)
も
酷
(
きつ
)
い
女
(
をんな
)
だと
思
(
おも
)
はずに、
356
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
をよく
考
(
かんが
)
へて
下
(
くだ
)
さらぬと
困
(
こま
)
りますよ。
357
此
(
この
)
位
(
くらゐ
)
な
事
(
こと
)
に
怒
(
おこ
)
る
様
(
やう
)
では、
358
人犬
(
にんけん
)
たる
資格
(
しかく
)
はありませぬぞえ。
359
夫婦
(
ふうふ
)
喧嘩
(
げんくわ
)
は
犬
(
いぬ
)
も
食
(
く
)
はぬと
云
(
い
)
ふぢやありませぬか。
360
お
前
(
まへ
)
もあんまり
夫婦
(
めをと
)
喧嘩
(
げんくわ
)
に
角
(
つの
)
を
立
(
た
)
てて
怒
(
おこ
)
ると、
361
外
(
ほか
)
の
人犬
(
にんけん
)
が
見
(
み
)
て
馬鹿
(
ばか
)
にしますよ。
362
そこらの
女
(
をんな
)
に
小便
(
せうべん
)
を
掛
(
か
)
けさがし
高利
(
たかぶ
)
を
借
(
か
)
つては
糞
(
ばば
)
を
掛
(
か
)
けさがしたか……そいつア
知
(
し
)
らぬが、
363
後家倒
(
ごけだふ
)
しの
婆喰
(
ばばくら
)
ひの
人犬
(
にんけん
)
ぢやないか。
364
お
前
(
まへ
)
に
喰
(
く
)
はれた
後家婆
(
ごけばば
)
アも、
365
臭
(
くさ
)
い
顔
(
かほ
)
して
随分
(
ずゐぶん
)
沢山
(
たくさん
)
に
色欲道
(
しきよくだう
)
の
辻
(
つじ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りますぜ。
366
これからがお
前
(
まへ
)
の
性念場
(
しやうねんば
)
だ。
367
マア
楽
(
たの
)
しんで
行
(
ゆ
)
かつしやい。
368
妾
(
わたし
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
の
交誼
(
よしみ
)
でこれ
丈
(
だけ
)
の
注意
(
ちゆうい
)
を
与
(
あた
)
へて
置
(
お
)
く。
369
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても
地蔵
(
ぢざう
)
(
自業
(
じごふ
)
)
自得
(
じとく
)
だから
諦
(
あきら
)
めて
行
(
い
)
きなさい』
370
国依別
『
俺
(
おれ
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
幽界
(
いうかい
)
に
来
(
き
)
たのだらうかなア。
371
オイお
市
(
いち
)
、
372
俺
(
おれ
)
にはテンと
顕幽
(
けんいう
)
分離
(
ぶんり
)
の
時期
(
じき
)
が
分
(
わか
)
らない。
373
貴様
(
きさま
)
は
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るだらう。
374
言
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れないか』
375
女
『オホヽヽヽ、
376
分
(
わか
)
りますまい。
377
お
前
(
まへ
)
がモウ
此
(
この
)
後
(
さき
)
七十
(
しちじふ
)
年
(
ねん
)
経
(
た
)
つた
未来
(
みらい
)
に、
378
斯
(
か
)
うして
妾
(
わし
)
に
会
(
あ
)
ふのだよ』
379
国依別
『なあんだ。
380
それならまだ
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ』
381
女
『お
前
(
まへ
)
は
丙午
(
ひのえうま
)
の
年
(
とし
)
だから、
382
随分
(
ずゐぶん
)
これから
女
(
をんな
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
殺
(
ころ
)
して、
383
七十
(
しちじふ
)
年後
(
ねんさき
)
になれば
今
(
いま
)
の
何十倍
(
なんじふばい
)
と
云
(
い
)
ふ
亡者
(
まうじや
)
が
出来
(
でき
)
て、
384
歓迎会
(
くわんげいくわい
)
でも
開
(
ひら
)
くだらうから、
385
苦
(
くる
)
しんで
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るがよからう』
386
国依別
『お
構
(
かま
)
ひ
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
だ。
387
俺
(
おれ
)
は
楽
(
たの
)
しんで
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
る。
388
楽天
(
らくてん
)
主義
(
しゆぎ
)
の
統一
(
とういつ
)
主義
(
しゆぎ
)
の
進展
(
しんてん
)
主義
(
しゆぎ
)
の
清潔
(
せいけつ
)
主義
(
しゆぎ
)
を
標榜
(
へうぼう
)
する
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ』
389
女
『
如何
(
いか
)
にもお
前
(
まへ
)
は
畜生道
(
ちくしやうだう
)
へ
落転
(
らくてん
)
主義
(
しゆぎ
)
だらう。
390
さうして
現界
(
げんかい
)
で
高春山
(
たかはるやま
)
を
征服
(
せいふく
)
し、
391
鬼婆
(
おにばば
)
に
糞
(
ばば
)
をかけられ、
392
天
(
あめ
)
の
真名井
(
まなゐ
)
へ
泣
(
な
)
きもつて、
393
吠面
(
ほえづら
)
かわいて
立帰
(
たちかへ
)
り、
394
他
(
はた
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
からドツサリ
氷
(
こほり
)
の
様
(
やう
)
な
冷
(
つめ
)
たい
水
(
みづ
)
を
打掛
(
ぶつか
)
けられ、
395
アヽこれで
清潔
(
せいけつ
)
主義
(
しゆぎ
)
の
実行
(
じつかう
)
だと
喜
(
よろこ
)
ぶのだらう。
396
折角
(
せつかく
)
人犬
(
にんけん
)
になつた
魂
(
たましひ
)
を
曇
(
くも
)
らして、
397
再
(
ふたた
)
び
鼬
(
いたち
)
となり、
398
人
(
ひと
)
に
最後屁
(
さいごぺ
)
をひりかけ、
399
業
(
ごふ
)
を
経
(
へ
)
て
貂
(
てん
)
に
進
(
すす
)
む、
400
進貂
(
しんてん
)
主義
(
しゆぎ
)
を
実行
(
じつかう
)
なさいませ』
401
国依別
『
娑婆
(
しやば
)
にある
間
(
あひだ
)
は、
402
どうしようと
斯
(
か
)
うしようと
俺
(
おれ
)
の
腕
(
うで
)
にあるのだ。
403
お
構
(
かま
)
ひ
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
だ。
404
亡者
(
まうじや
)
は
亡者
(
まうじや
)
らしく
石塔
(
せきたふ
)
の
下
(
した
)
へ
蟄伏
(
ちつぷく
)
して、
405
時々
(
ときどき
)
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いたら
首
(
くび
)
を
突出
(
つきだ
)
し、
406
糠団子
(
ぬかだんご
)
でも
喰
(
く
)
て
居
(
を
)
れば
好
(
い
)
いのだ、
407
マア
暫
(
しばら
)
く
楽
(
たの
)
しんで
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
れ。
408
七十
(
しちじふ
)
年
(
ねん
)
未来
(
さき
)
になれば、
409
俺
(
おれ
)
の
殺
(
ころ
)
した
女亡者
(
をんなまうじや
)
に
限
(
かぎ
)
り、
410
全部
(
ぜんぶ
)
統一
(
とういつ
)
主義
(
しゆぎ
)
を
実行
(
じつかう
)
し、
411
幽冥界
(
いうめいかい
)
に
一
(
ひと
)
つの
国依別
(
くによりわけ
)
王国
(
わうごく
)
を
建設
(
けんせつ
)
するから、
412
それまでにイロイロと
世
(
よ
)
の
持方
(
もちかた
)
の
研究
(
けんきう
)
をして
置
(
お
)
くのだよ。
413
其
(
その
)
時
(
とき
)
には
貴様
(
きさま
)
を
伴食
(
ばんしよく
)
大臣
(
だいじん
)
に
登庸
(
とうよう
)
してやる』
414
お市
『
誰
(
たれ
)
が、
415
お
前
(
まへ
)
の
部下
(
ぶか
)
になるものが
一人
(
ひとり
)
でもありますかい。
416
エー
娑婆臭
(
しやばくさ
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひなさるな』
417
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
五六
(
ごろく
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
418
茨
(
いばら
)
の
杖
(
つゑ
)
を
突
(
つ
)
き
乍
(
なが
)
ら
走
(
は
)
せ
来
(
きた
)
り、
419
男
『オイ
三五教
(
あななひけう
)
の……
貴様
(
きさま
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
だらう。
420
俺
(
おれ
)
は
高春山
(
たかはるやま
)
のテーリスタンの
部下
(
ぶか
)
の
者
(
もの
)
だ。
421
早
(
はや
)
く
起
(
お
)
きぬかい』
422
国依別
『ハハア、
423
貴様
(
きさま
)
は
悪業
(
あくごふ
)
充
(
み
)
ちて
幽界
(
いうかい
)
へ
来
(
う
)
せたのだなア。
424
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
改心
(
かいしん
)
せぬかい。
425
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
は
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
と
見
(
み
)
えるが、
426
何程
(
なにほど
)
幽界
(
いうかい
)
へ
来
(
き
)
ても、
427
女房
(
にようばう
)
は
欲
(
ほ
)
しいだらう。
428
チツト
使
(
つか
)
ひ
古
(
ふる
)
しでお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬか
知
(
し
)
らぬが、
429
俺
(
おれ
)
のお
古
(
ふる
)
が
一寸
(
ちよつと
)
十打
(
じふダース
)
程
(
ほど
)
此処
(
ここ
)
にあるのだ。
430
一
(
ひと
)
つ
手
(
て
)
を
叩
(
たた
)
けば「アーイ」と
言
(
い
)
つてやつて
来
(
く
)
るのだ。
431
「
旦那
(
だんな
)
さん、
432
こんちは」と
云
(
い
)
つてお
出
(
い
)
でになるぞ。
433
中
(
なか
)
にや
随分
(
ずゐぶん
)
素敵
(
すてき
)
な
奴
(
やつ
)
もあるから、
434
何
(
ど
)
れなつと
選
(
よ
)
り
取
(
ど
)
り
見取
(
みど
)
りだ。
435
一品
(
ひとしな
)
が
一銭
(
いつせん
)
九厘
(
くりん
)
屋
(
や
)
で
御座
(
ござ
)
い』
436
甲
『オイ
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なに
)
寝惚
(
ねとぼ
)
けて
居
(
ゐ
)
やがるのだ。
437
辻地蔵
(
つじぢざう
)
の
前
(
まへ
)
に
寝転
(
ねころ
)
びやがつて、
438
シツカリさらさぬかい』
439
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
国依別
(
くによりわけ
)
は
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見
(
み
)
まはし、
440
国依別
『ハハア、
441
なあんだ。
442
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたのか……オイ
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
だい』
443
甲
『
俺
(
おれ
)
は
言
(
い
)
はいでも
知
(
し
)
れた、
444
高春山
(
たかはるやま
)
の
鷹依姫
(
たかよりひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
だ。
445
貴様
(
きさま
)
は
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
高春山
(
たかはるやま
)
へ
何
(
なに
)
しに
行
(
ゆ
)
くのだ。
446
此処
(
ここ
)
は
南
(
みなみ
)
の
関所
(
せきしよ
)
だぞ』
447
国依別
『アヽさうだつたか。
448
マアゆつくり
一服
(
いつぷく
)
せい。
449
相談
(
そうだん
)
がある』
450
甲
『
貴様
(
きさま
)
に
相談
(
そうだん
)
をかけられるのは、
451
碌
(
ろく
)
な
事
(
こと
)
ぢやあるまい』
452
国依別
『
其
(
その
)
落
(
お
)
ちつかぬ
様子
(
やうす
)
はなんだい。
453
戦
(
たたか
)
はぬ
間
(
うち
)
から
負
(
ま
)
けてるぢやないか、
454
地震
(
ぢしん
)
の
神懸
(
かむがかり
)
をしやがつて………チツと
胴
(
どう
)
を
据
(
す
)
ゑないか』
455
甲
『
貴様
(
きさま
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
のヘボ
宣伝使
(
せんでんし
)
だらう。
456
サア
白状
(
はくじやう
)
せい』
457
国依別
『アハヽヽヽ、
458
天晴
(
あつぱ
)
れ
堂々
(
だうだう
)
たる
天下
(
てんか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
459
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
小童
(
こわつぱ
)
武者
(
むしや
)
に、
460
何
(
なに
)
隠
(
かく
)
す
必要
(
ひつえう
)
があるか。
461
国依別
(
くによりわけの
)
命
(
みこと
)
とは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だ』
462
乙(常公)
『ヤア
貴様
(
きさま
)
は
竹公
(
たけこう
)
ぢやないか。
463
何時
(
いつ
)
やら
俺
(
おれ
)
の
妹
(
いもうと
)
をチヨロまかした
曲者
(
くせもの
)
奴
(
め
)
』
464
国依別
『ウンお
前
(
まへ
)
はお
松
(
まつ
)
の
兄貴
(
あにき
)
の
常公
(
つねこう
)
だつたなア。
465
言
(
い
)
はば
義理
(
ぎり
)
の
兄貴
(
あにき
)
だ。
466
併
(
しか
)
し
貴様
(
きさま
)
もよく
零落
(
れいらく
)
したものだなア。
467
さうしてお
松
(
まつ
)
はどうなつたか』
468
常公
『
貴様
(
きさま
)
余程
(
よほど
)
迂濶者
(
うつそり
)
だなア。
469
俺
(
おれ
)
の
妹
(
いもうと
)
のお
松
(
まつ
)
は
生意気
(
なまいき
)
な
奴
(
やつ
)
で、
470
俺
(
おれ
)
と
信仰
(
しんかう
)
を
異
(
こと
)
にし、
471
到頭
(
たうとう
)
ウラナイ
教
(
けう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
の
乾児
(
こぶん
)
になりやがつて、
472
高城山
(
たかしろやま
)
で
松姫
(
まつひめ
)
と
名乗
(
なの
)
り、
473
立派
(
りつぱ
)
にやつてけつかるのだ。
474
俺
(
おれ
)
は
心
(
こころ
)
が
合
(
あ
)
はないから
行
(
い
)
つた
事
(
こと
)
がないが、
475
中々
(
なかなか
)
俺
(
おれ
)
の
妹
(
いもうと
)
だけあつて
善
(
ぜん
)
にもせよ、
476
悪
(
あく
)
にもせよ、
477
傑出
(
けつしゆつ
)
した
所
(
ところ
)
があるワイ』
478
国依別
『
何
(
なに
)
ツ、
479
あの
松姫
(
まつひめ
)
がお
松
(
まつ
)
だと
云
(
い
)
ふのか。
480
其奴
(
そいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ。
481
さう
云
(
い
)
へば
何
(
なん
)
だか
合点
(
がてん
)
がゆかぬと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのだ。
482
松姫
(
まつひめ
)
は
中々
(
なかなか
)
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
とは
違
(
ちが
)
うて、
483
今
(
いま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
錚々
(
さうさう
)
たる
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
484
ヤツパリ
俺
(
おれ
)
に
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
る
様
(
やう
)
な
奴
(
やつ
)
だから、
485
代物
(
しろもの
)
がどつか
違
(
ちが
)
つた
所
(
ところ
)
があるのだな、
486
アハヽヽヽ』
487
丙
『オイ
斯
(
こ
)
んな
所
(
とこ
)
で
惚気
(
のろけ
)
を
聞
(
き
)
かしやがつて、
488
何
(
なん
)
だ、
489
チツと
確乎
(
しつかり
)
せぬかい』
490
国依別
『
羨
(
うらや
)
ましいだらう。
491
随分
(
ずゐぶん
)
松姫
(
まつひめ
)
は
別嬪
(
べつぴん
)
だぞ。
492
知慧
(
ちゑ
)
もあれば
力
(
ちから
)
もあり、
493
愛嬌
(
あいけう
)
もあり、
494
あんな
奴
(
やつ
)
ア、
495
滅多
(
めつた
)
にあつたものぢやない。
496
俺
(
おれ
)
もさう
聞
(
き
)
くと、
497
松姫
(
まつひめ
)
が
一層
(
いつそう
)
崇高
(
すうかう
)
な
人格者
(
じんかくしや
)
の
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
たワイ』
498
一同
(
いちどう
)
は、
499
一同
『ワツハヽヽヽ』
500
と
笑
(
わら
)
ひ
転
(
こ
)
ける。
501
甲
(
かふ
)
、
502
乙
(
おつ
)
、
503
丙
(
へい
)
、
504
丁
(
てい
)
、
505
戊
(
ぼう
)
、
506
己
(
き
)
の
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
遂
(
つい
)
に
国依別
(
くによりわけ
)
に
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
され、
507
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
国依別
(
くによりわけ
)
の
洒脱
(
しやだつ
)
なる
気品
(
きひん
)
に
惚込
(
ほれこ
)
み、
508
信者
(
しんじや
)
となつて
高春山
(
たかはるやま
)
へ
筒井
(
つつゐ
)
順慶
(
じゆんけい
)
式
(
しき
)
を
発揮
(
はつき
)
すべく、
509
がやがや
囁
(
ささや
)
きながら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
510
(
大正一一・五・二一
旧四・二五
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 恩愛の涙
(B)
(N)
約束履行 >>>
霊界物語
>
如意宝珠(第13~24巻)
>
第21巻(申の巻)
> 第4篇 反復無常 > 第15章 化地蔵
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第15章 化地蔵|第21巻|如意宝珠|霊界物語|/rm2115】
合言葉「みろく」を入力して下さい→