霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 仇花(あだばな)〔一四三三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第1篇 自愛之柵 よみ(新仮名遣い):じあいのしがらみ
章:第3章 仇花 よみ(新仮名遣い):あだばな 通し章番号:1433
口述日:1923(大正12)年03月14日(旧01月27日) 口述場所:竜宮館 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ケリナ姫はいつのまにか、花が咲く野を夫の鎌彦を尋ねてとぼとぼと歩いていた。向こうからとぼとぼと歩いてくる男をよく見れば、探していた鎌彦であった。
ケリナ姫は嬉しさに抱きついたが、鎌彦は振り放した。そして、自分はケリナ姫をものにするために、恋敵のベルジーを殺害したことを懺悔した。そして行商に出た後、三人組の盗賊に殺されて、今は冥途の八衢にさまよっているのだ、と身の上を話した。
ケリナ姫は自分が幽冥界に来たこと、鎌彦はもう死んでいることを悟った。そしてベルジーは、自分の異母兄だから親しくしていたことを明かし、鎌彦の所業を嘆き非難した。
鎌彦はケリナ姫に詫び、そしてベルジーに対してもお詫びをして赦しを乞おうと幽冥界を尋ねまわっていたが、どうやらベルジーはすでに天国に召されたようだと語った。そして、ケリナ姫がベルジーの妹であれば、代わりに赦しを乞いたいと願い出た。
ケリナ姫は、ベルジーの代わりに赦すなどということはできないし、兄の仇である鎌彦と夫婦になってしまった自分の身魂の因縁を嘆いた。鎌彦もその場に坐して悔悟の涙に暮れている。
そこへベル、ヘル、シャルの泥棒組がやってきた。鎌彦を殺したのはこの三人であった。自分たちが幽冥界に来たことに納得できない三人に対し、鎌彦は伊吹戸主の裁き所へ案内した。八衢の関所に着くと、いつの間にか鎌彦の姿は見えなくなっていた。
八衢の守衛は、裁きの前にエンゼルがそれぞれの身魂に接見し、神の教えを説いて聞かせるのだと説明した。それによって悔い改め改心すれば、生前の罪人も天国へ救われることができるという。しかし自らの心が地獄に向いていれば、エンゼルの言葉は苦しく、お顔も恐ろしくていたたまらず自ら地獄に飛び込んでしまうのだ、と説いた。
ベルは、自分は自由意志を束縛されるのが何より苦しいから、天国へ行くよりも地獄へ行って力いっぱい活動してみたい、と答えた。しかし守衛は、生死簿を見るとまだベルの寿命が尽きていないと言って、金棒でベルを突きたてた。ベルは傍らの草の中に倒れてしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-05-17 17:23:16 OBC :rm5603
愛善世界社版:30頁 八幡書店版:第10輯 156頁 修補版: 校定版:32頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001さつき()花橘(はなたちばな)()()げば
002(むかし)(ひと)(そで)()ぞする
003 (ゆめ)にも(むす)(こひ)しき(わが)()(きみ)如何(いかが)なしつらむと、004恋路(こひぢ)(ふか)(おも)(ぐさ)
005 (はな)いろいろのブラックリストを()()()づる()(はな)や、006燕子花(かきつばた)007(むらさき)(そむ)山吹(やまぶき)色香(いろか)()でて(ただ)一人(ひとり)トボトボと青野(あをの)(はら)辿(たど)()く。008(はな)(わが)()(すす)()(みち)()(わら)へども、009(ただ)一声(ひとこゑ)(おとづ)れもせず、010(その)足音(あしおと)さへも(きこ)えず、011百鳥(ももどり)四辺(あたり)山林(さんりん)()(さけ)べども、012(わが)(なみだ)(いま)()きず。013()にも()きざる(こひ)(いろ)014百花(ももばな)種子(たね)015(みどり)016(くれなゐ)017(しろ)018(あか)019()020爛漫(らんまん)()()づる(うらみ)(ふか)深百合(ふかゆり)や、021(かみ)(めぐみ)深見草(ふかみぐさ)022(こころ)()せて(すす)()の、023(こひ)しき()(をつと)(わらは)(こころ)白露(しらつゆ)の、024(こずゑ)(しも)はおくとても、025(なほ)常磐(ときは)なれや、026(たちばな)目覚草(めざめぐさ)のいと(きよ)し、027(きみ)(おん)()には何事(なにごと)恙在(つつま)(たま)(こと)()くとも、028何方(いづかた)(おは)しますか、029(むかし)(こひ)(しの)(ぐさ)030(はる)めき(わた)りて花霞(はながすみ)031立上(たちのぼ)()(そら)()すてて()(かり)は、032(はな)()(さと)()みや(なら)へるかと、033(こころ)(そら)なる(うたが)ひに()ちぬ。034テルモン(ざん)神苑(しんゑん)()(ほこ)りたる若芽(わかめ)(はな)見捨(みす)ててはや一年(ひととせ)035(かへり)(たま)はぬ(をつと)情無(つれな)さ。036仮令(たとへ)(この)()(かばね)野辺(のべ)(さら)すとも、037(おも)ひつめたる(こひ)意地(いぢ)038足乳根(たらちね)父母(ふぼ)(ゆる)さぬ(こひ)(こが)れし()は、039款冬(くわんとう)(あやま)つて晩春(ばんしゆん)(かぜ)(ほころ)び、040躑躅(つつじ)夜遊(やいう)(ひと)(をり)()て、041(おどろ)(はる)(ゆめ)(うち)042胡蝶(こてふ)(たはむ)色香(いろか)()でしも、043(いま)となり(おも)(まは)せば(こころ)仇花(あだばな)なりしか。044(いま)()()夏草(なつぐさ)の、045湿茸(しめじ)(まじは)姫百合(ひめゆり)の、046手折(たを)(ひと)なき()浅間(あさま)しさ。047アア(こひ)しき鎌彦(かまひこ)(きみ)は、048(いづ)れにましますか、049(ただ)一目(ひとめ)()はまほしやと、050吹来(ふきく)(かぜ)(ひびき)にも、051とつおひつ(こころ)(なや)ませ(なが)ら、052(きた)(きた)へと(すす)()く。
053 (かか)(ところ)前方(むかふ)より、
054 とぼとぼ(きた)一人(ひとり)(をとこ)
055 (をんな)()るより(たたず)みて、
056 いぶかし()にも(なが)()る。
057 (をんな)()るより(おどろ)きの(こゑ)()()げて、
058ケリナ『アア貴方(あなた)(こひ)しき鎌彦(かまひこ)さまぢや(ござ)いませぬか、059()うしてマアこんな(ところ)()られましたか。060(わたし)貴方(あなた)がエルシナ(だに)(いほり)()て、061(ちつ)とばかり商売(あきなひ)をして(かね)(まう)けて()るからと仰有(おつしや)つて、062駱駝(らくだ)(ひき)つれ()()でになつた(その)(あと)は、063(おとな)(ひと)()一人(ひとり)住居(ずまゐ)064晨夕(あしたゆふべ)一人寝(ひとりね)猛獣(まうじう)(こゑ)(おど)ルビは「おどろ」ではなく「おど」かされ、065(あき)(ゆふべ)(むし)()()いては哀傷(あいしやう)(なみだ)にくれ、066(うき)(かさな)つて(こころ)益々(ますます)感傷(かんしやう)(てき)となり()()もあられぬ(おも)ひに()果敢(はか)なみて、067エルシナ(がは)()()げたと(おも)ひきや、068()()らぬ斯様(かやう)(ところ)(まよ)つて(まゐ)りました。069さても(うれ)しや斯様(かやう)(ところ)貴方(あなた)()()(かか)らうとは(ゆめ)にも(ぞん)じませ(なん)だ、070(なつか)しう(ござ)います』
071()きつけば鎌彦(かまひこ)()(はな)し、
072鎌彦(かまひこ)『ケリナ(ひめ)073(まへ)(さだ)めて苦労(くらう)をしたであらう、074(まこと)にすまなかつた。075(しか)(なが)(わし)はお(まへ)には()(かく)して()はなかつたが、076(まへ)結婚(けつこん)する(まへ)に、077(こひ)(かたき)(おも)()み、078ベルジーと()(をとこ)をうまくチヨロマカして(ふち)()()み、079生命(いのち)をとつた()のお(かげ)で、080(まへ)(うれ)しい(なか)となり、081両親(りやうしん)()(しの)んでエルシナ(だに)(いほり)(むす)び、082偕老(かいらう)同穴(どうけつ)(ちぎ)(をり)しも()()なベルジーの怨霊(をんりやう)(あら)はれ、083(おそ)ろしい(かほ)をして(にら)みつけるのでお(まへ)(そば)()(こと)出来(でき)ず、084(また)(まへ)(かほ)がベルジーに()えて()(おそ)ろしくて仕方(しかた)()いので、085行商(ぎやうしやう)事寄(ことよ)せ、086駱駝(らくだ)引連(ひきつ)れて、087(まへ)(わか)れ、088彼方(あなた)此方(こなた)彷徨(さまよ)ふうち三人組(さんにんぐみ)泥坊(どろばう)出逢(であ)ひ、089持物(もちもの)一切(いつさい)掠奪(りやくだつ)され赤裸(まつぱだか)(まま)090ライオン(がは)()げこまれ、091(つみ)(むく)ひで(いま)冥途(めいど)八衢(やちまた)彷徨(さまよ)ふて()るのだ。092何卒(どうぞ)(わし)(こと)(おも)()つてくれぬと何時(いつ)(まで)天国(てんごく)()(こと)出来(でき)ないのだ。093(まへ)()此処(ここ)()精霊(せいれい)ではないやうだ。094(なん)とかして(はや)引返(ひきかへ)し、095()両親(りやうしん)(さま)()(わび)をなし、096相当(さうたう)(をつと)()一生(いつしやう)(おく)つてくれ。097それが(わし)(たの)みだ』
098()(あは)(なみだ)(とも)(をが)んでゐる。
099 ケリナは鎌彦(かまひこ)言葉(ことば)不審(ふしん)(むね)(いだ)(なが)(かしら)(かたむ)けて、100寸時(しばし)思案(しあん)(しづ)んでゐた。101(しばら)くあつて(かほ)()げ、
102ケリナ『モシ鎌彦(かまひこ)さま、103(いま)(はじ)めて貴方(あなた)()言葉(ことば)()いて(おどろ)きました。104(まへ)()(あい)らしいベルジーさまを(ころ)したのですか。105何故(なぜ)そんな(わる)(こと)をして(くだ)さいました。106あのベルジーさまは(じつ)(ところ)(わたし)(あに)(ござ)います。107(とう)さまが内証(ないしよう)(をんな)(はら)ませて(はは)(かく)して首陀(しゆだ)(いへ)へやつたので(ござ)いますよ。108(わたし)(その)(こと)(ちち)から()いて()りましたから、109(これ)(まで)ベルジーさまが(わたし)(いもうと)()らず幾度(いくたび)()()(あそ)ばした(こと)(ござ)いますが、110そこは(てい)よく(ことわ)つて()りました。111(おも)へば(おも)へば(こひ)しき(をつと)(あに)(かたき)であつたか。112(その)(はなし)()くにつけ、113貴方(あなた)(にく)らしいやら、114(こひ)しいやら(われ)(なが)(わが)(こころ)(あや)しうなつて(まゐ)りました』
115鎌彦(かまひこ)(わし)一度(いちど)ベルジーさまに()()(かか)つてお(わび)をせなくてはなりませぬ。116(それ)(ゆゑ)霊界(れいかい)()てから所々(しよしよ)方々(はうばう)(その)所在(ありか)(さが)一言(ひとこと)()(ゆる)しを(いただ)きたいとあせつて()りますが、117(うはさ)()けば、118()うやら天国(てんごく)にお()でになつたさうで()()にかかる(こと)出来(でき)ず、119(じつ)(こま)()つて()ります。120貴方(あなた)兄妹(きやうだい)とあれば()(あにい)さまに(かは)つて何卒(どうぞ)一言(ひとこと)(ゆる)すと()つて(くだ)さいませ。121さうすれば(この)鎌彦(かまひこ)(つみ)(ほど)けて天国(てんごく)生涯(しやうがい)(おく)れるでせう。122何卒(どうぞ)(いま)(まで)厚誼(よしみ)一言(ひとこと)(ゆる)すとの()言葉(ことば)(いただ)()(ござ)います』
123ケリナ『(わたし)貴方(あなた)(ゆる)すといふ資格(しかく)(ござ)いませぬ。124(また)(わたし)(あに)(あだ)()らずに夫婦(ふうふ)になつた(つみ)中々(なかなか)容易(ようい)なものでは(ござ)いますまい。125屹度(きつと)地獄(ぢごく)のドン(ぞこ)()ちねばならぬ(この)霊魂(みたま)126どうして左様(さやう)(こと)出来(でき)ませうか。127アア残念(ざんねん)(ござ)います』
128()(たふ)れる。
129 鎌彦(かまひこ)双手(もろて)()(くさ)生茂(おひしげ)地上(ちじやう)にドツカと()し、130悔悟(くわいご)(なみだ)()れてゐる。131(かか)(ところ)ヘスタスタとベル、132シャル、133ヘルの(さん)(にん)134覆面(ふくめん)頭巾(づきん)黒装束(くろしやうぞく)135(なが)(けん)(こし)にぶら()(なが)ら、136ドシドシとやつて()た。137ベルは鎌彦(かまひこ)姿(すがた)()るより(おどろ)いて、
138ベル『ヤア、139(まへ)はライオン(がは)川縁(かはべり)(おい)駱駝(らくだ)(ひき)行商(ぎやうしやう)にやつて()旅人(たびびと)ではなかつたか』
140鎌彦(かまひこ)『ウン、141さうだ。142あの(とき)泥坊(どろばう)はお(まへ)()(さん)(にん)であつたなア。143到頭(たうとう)天命(てんめい)()きてお(まへ)冥途(めいど)(おく)られたのだな』
144ベル『馬鹿(ばか)をいふない。145貴様(きさま)()(ちが)ふたのか。146此処(ここ)冥途(めいど)ぢやないぞ。147(おれ)(たち)(いま)テルモン(ざん)(ふもと)(とほ)り、148泥坊稼(どろぼうかせ)ぎに(ある)いて()最中(さいちう)だ。149ライオン(がは)激流(げきりう)(おと)()んでやつた以上(いじやう)(その)(はう)最早(もはや)冥途(めいど)()つたと(おも)ひしに、150さてもさても生命(いのち)冥加(めうが)(やつ)ぢや。151何処(どこ)かの(やつ)(たす)けられ、152こんな(ところ)彷徨(さまよ)うてゐやがるのだな。153アハハハハ、154……アツお(まへ)はケリナとかいふナイスぢやないか。155何時(いつ)()にこんな(ところ)()()たのぢや。156サア、157此処(ここ)()つけたを(さいは)(おれ)女房(にようばう)になるのだぞ』
158ケリナ『ホホホホホ、159これはこれは泥坊(どろばう)親方(おやかた)(さま)160貴方(あなた)はエルシナ(がは)()()んで(わたし)(たち)一緒(いつしよ)冥途(めいど)彷徨(さまよ)(きた)(なが)ら、161()泥坊(どろばう)をやらうとなさるのか。162好加減(いいかげん)改心(かいしん)をなさいませ』
163ベル『ハテナ、164さう()くと、165エー、166此奴(こいつ)()二人(ふたり)(やつ)とお(まへ)取合(とりあ)ひから格闘(かくとう)(はじ)め、167深淵(ふかぶち)落込(おちこ)んだと(おも)つたら、168(その)(とき)矢張(やつぱ)()んだのかなア。169ハテ、170合点(がてん)()かぬ(こと)ぢやワイ。171(わし)(ころ)したと(おも)(をとこ)此処(ここ)()つている。172(また)ナイスも此処(ここ)にゐる。173さうして四辺(あたり)景色(けしき)(べつ)(かは)つてゐないやうだし、174合点(がつてん)()かぬ(こと)だ。175オイ、176ヘル、177シャル、178貴様(きさま)此処(ここ)(なん)(おも)ふか』
179ヘル『ウン、180どうも(おれ)(たち)には現界(げんかい)とも幽界(いうかい)とも見当(けんたう)はつかないわ』
181シャル『(ゆめ)でも()てゐるのぢやなからうかなア』
182鎌彦(かまひこ)(けつ)して此処(ここ)現界(げんかい)ぢやありませぬよ。183モウ(すこ)(むか)ふへ()つて()なさい。184伊吹戸主(いぶきどぬしの)(かみ)(さま)のお関所(せきしよ)(ござ)います。185さうしたらスツカリとお(まへ)()んでゐるか、186()きてゐるか(わか)るでせう。187(わたし)もお(まへ)()(かげ)生命(いのち)をとられ、188霊界(れいかい)()たので生前(せいぜん)(ひと)(ころ)した(つみ)(くる)しめられてゐるよりは、189(すこ)(ばか)(くる)しさが(うす)らいだやうに(おも)ふ。190(しか)(なが)(ひと)(ころ)した(つみ)何処(どこ)(まで)()ゆるものではない。191(まへ)(また)(わたし)肉体(にくたい)(ころ)したのだから、192屹度(きつと)(その)(つみ)()れまい。193(しか)(なが)(かみ)(さま)吾々(われわれ)地獄(ぢごく)(おと)さうとはなさらぬ。194(この)中有界(ちううかい)彷徨(さまよ)はして天晴(あつば)(まこと)霊身(れいしん)になり、195(かみ)(ひかり)()()天国(てんごく)生涯(しやうがい)(おく)()()たせ(たま)ふのだ。196これからお(まへ)もモウ()うなつては仕方(しかた)がないから()(あらた)めて善道(ぜんだう)立帰(たちかへ)り、197天国(てんごく)生涯(しやうがい)(おく)つたがよからう』
198ベル『ハーテ、199(わけ)(わか)らぬ(こと)ばかり()(やつ)(あら)はれたものだなア』
200鎌彦(かまひこ)『サア、201(みな)さま、202これから(わたし)案内(あんない)(いた)しませう』
203(さき)()つ。204男女(なんによ)()(にん)(あと)(したが)ひ、205(くさ)茫々(ばうばう)()え、206種々(いろいろ)(はな)()(にほ)青芝道(あをしばみち)(こころ)欣々(いそいそ)(すす)()く。
207 (やうや)くにして八衢(やちまた)関所(せきしよ)()いた。208(しろ)(あか)との守衛(しゆゑい)(れい)(ごと)儼然(げんぜん)として(ひか)へてゐる。209鎌彦(かまひこ)何時(いつ)()にやら姿(すがた)()えなくなつてゐた。210(あか)守衛(しゆゑい)()(にん)姿(すがた)()て、211まづ第一(だいいち)にベルを()()し、212一々(いちいち)生前(せいぜん)罪状(ざいじやう)()調(しら)べ、
213(あか)『アアお(まへ)()うしても地獄行(ぢごくゆ)きだなア。214可愛相(かあいさう)だけれど、215自分(じぶん)(つく)つた地獄(ぢごく)だから、216アア仕方(しかた)がないわ』
217ベル『()(ほど)218(わたし)(おほ)せの(ごと)くよからぬ(こと)(いた)して()ました。219(しか)(なが)らコレも不知(しらず)不識(しらず)(あやま)ちで(ござ)いますから、220何卒(どうぞ)(ゆる)して(いただ)きたう(ござ)います。221(かみ)(さま)(あい)(もつ)()本体(ほんたい)となさるぢやありませぬか。222何処(どこ)(まで)悪人(あくにん)悪人(あくにん)として(ばつ)せず、223地獄(ぢごく)(くる)しみを(くわ)せず、224天国(てんごく)(すく)つて(くだ)さるが(かみ)(さま)だと(おも)ひます。225悪人(あくにん)(ばつ)するのならそれは(けつ)して(あい)とは(まを)されますまい。226(あい)()けた(かみ)最早(もはや)(かみ)ではありますまい』
227(あか)『お(まへ)(ただち)地獄(ぢごく)()くべきものだが、228(いま)此処(ここ)でエンゼルが()説教(せつけう)をなさるから、229(それ)()つて悔改(くいあらた)め、230エンゼルの()言葉(ことば)(みみ)()り、231(こころ)浸潤(しみこま)したならば屹度(きつと)天国(てんごく)(すく)はれるだらう。232(しか)(なが)らお(まへ)(つく)つた悪業(あくごふ)では、233エンゼルの()言葉(ことば)(みみ)()るまい。234人間(にんげん)霊肉(れいにく)脱離(だつり)して霊界(れいかい)(きた)八衢(やちまた)関所(せきしよ)()えて伊吹戸主(いぶきどぬし)(やかた)(みちび)()れられた(とき)には、235エンゼルが冥官(めいくわん)調(しら)べる以前(いぜん)一応(いちおう)接見(せつけん)して、236大神(おほかみ)(さま)高天原(たかあまはら)(およ)天人(てんにん)(てき)生涯(しやうがい)(こと)をお()らせになり、237諸々(もろもろ)(ぜん)や、238真実(しんじつ)(をし)へて(くだ)さるやうになつてゐる。239(しか)(なが)らお(まへ)精霊(せいれい)()()つた(とき)に、240(かみ)屹度(きつと)八衢(やちまた)(おい)善悪(ぜんあく)(をしへ)をなし(その)(こころ)()けやうに()つて(あるひ)天国(てんごく)へ、241(あるひ)地獄(ぢごく)(みづか)()くと()(こと)生前(せいぜん)より(すで)承知(しようち)(なが)らも(こころ)(うち)(これ)(いな)んだり、242(あるひ)(これ)(かる)()てゐたから、243()うしてもエンゼルの言葉(ことば)(くる)しくて()(こと)出来(でき)まい。244エンゼルの()(かほ)(おそ)ろしくなり(むね)(いた)み、245居堪(ゐた)たまらず(よろこ)んで自分(じぶん)(むか)地獄(ぢごく)(みづか)()()むであらう。246(かみ)(けつ)して世界(せかい)人間(にんげん)精霊(せいれい)一人(ひとり)地獄(ぢごく)(おと)さうとは()(かんが)へなさるのではない。247(その)(ひと)(みづか)(かみ)(さま)(せな)()(ひかり)(そむ)地獄(ぢごく)(むか)ふのである。248(その)地獄(ぢごく)はお(まへ)現世(げんせ)()つた(とき)(すで)和合(わがふ)した(ところ)のもので、249(あく)虚偽(きよぎ)とを(あい)する(こころ)(あつ)まり場所(ばしよ)である。250大神(おほかみ)(さま)はエンゼルの()()たり、251(かつ)高天原(たかあまはら)内流(ないりう)()つて(おのおの)精霊(せいれい)自分(じぶん)(はう)引寄(ひきよ)せむと(あそ)ばすけれども、252(もと)より(あく)虚偽(きよぎ)とに()()つたお(まへ)(たち)精霊(せいれい)は、253仁慈(じんじ)無限(むげん)(かみ)(さま)()取計(とりはか)らひを忌嫌(いみきら)ひ、254(ちから)(かぎ)(これ)抵抗(ていかう)し、255自分(じぶん)(はう)から(かみ)(さま)()()(はな)()くものである。256自分(じぶん)所有(しよいう)する(ところ)(あく)虚偽(きよぎ)(かね)(くさり)(もつ)地獄(ぢごく)(みづか)引入(ひきい)るるが(ごと)きものである。257()はばお(まへ)(たち)自由(じいう)意志(いし)(もつ)(みづか)地獄(ぢごく)堕落(だらく)するものだから(かみ)(さま)(これ)()(あい)(ぜん)(しん)との(ちから)(あた)へ、258一人(ひとり)地獄(ぢごく)(おと)そまいと()せつて(ござ)るのだ。259どうぢやこれからエンゼルの()(はなし)()いて、260(かみ)(さま)(そむ)いた(あく)虚偽(きよぎ)とをスツカリと払拭(ふつしき)天国(てんごく)生涯(しやうがい)(おく)()はないか』
261ベル『ハイ、262()(かく)人間(にんげん)意志(いし)自由(じいう)束縛(そくばく)される(ぐらゐ)(くる)しい(こと)(ござ)いませぬ。263天国(てんごく)()つて自分(じぶん)意志(いし)()はぬ(くる)しい生活(せいくわつ)をするよりも、264一層(いつそう)(こと)地獄(ぢごく)()つて(ちから)一杯(いつぱい)活動(くわつどう)して()たう(ござ)います』
265(あか)『ウン、266さうだらう。267(まへ)はどうしても地獄(ぢごく)代物(しろもの)だ。268(おのおの)所主(しよしゆ)(あい)()つて精霊(せいれい)(せき)(さだ)まるものだから、269どうしても(たす)けやうがないワ。270(しか)(なが)(この)生死簿(せいしぼ)には()だお(まへ)此処(ここ)()精霊(せいれい)ぢやないから、271(この)関所(せきしよ)()ゆる(こと)出来(でき)ない』
272ベル『ハテ、273合点(がてん)()かぬ(こと)だなア。274()きて()るのか、275()んで()るのか、276自分(じぶん)には(すこ)しも合点(がてん)()かぬ。277どうも()んだやうな(おぼ)えもなし、278だと()ふてエルシナ(がは)()()んだ(こと)(たしか)だし、279(その)(あひだ)(ひと)(すく)はれて()きてゐるのか、280(あるひ)()んでからも(のこ)つて()意志(いし)がハツキリしてゐるのか、281どうも(その)(てん)(わたし)には(わか)りませぬがなア』
282(あか)『ウン、283そらさうだ、284わかるまい。285仮令(たとへ)肉体(にくたい)(ほろ)ぶるとも、286人間(にんげん)本体(ほんたい)たる精霊(せいれい)意志(いし)想念(さうねん)継続(けいぞく)してゐるなり、287(また)生前(せいぜん)同様(どうやう)肉体(にくたい)(たも)つて()るのだから、288合点(がつてん)()かぬのは無理(むり)もない。289(しか)(なが)此処(ここ)幽冥界(いうめいかい)だ。290霊肉(れいにく)脱離後(だつりご)人間(にんげん)(すなは)精霊(せいれい))の()(ところ)だ。291サア、292(はや)此処(ここ)立去(たちさ)れ。293やがて(たれ)かが(むか)へに()るだらう。294モシ(むか)へに()なかつたならば、295(まへ)()きな地獄(ぢごく)()くだらう。296サア(はや)()てツ』
297金棒(かなぼう)(もつ)突出(つきだ)せば、298ベルはヨロヨロとし(なが)ら、299(かたはら)茫々(ばうばう)たる(くさ)(なか)(たふ)れて(しま)つた。
300大正一二・三・一四 旧一・二七 於竜宮館二階 外山豊二録)

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5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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