霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 寛恕(くわんじよ)〔一四四八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第4篇 三五開道 よみ(新仮名遣い):あなないかいどう
章:第18章 寛恕 よみ(新仮名遣い):かんじょ 通し章番号:1448
口述日:1923(大正12)年03月17日(旧02月1日) 口述場所:竜宮館 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
小国姫と三千彦は、家令オールスチンのせがれが如意宝珠紛失事件に関わっていると気づいていた。三千彦は、この罪は内々にこの件を処理することが肝心であることを小国姫に説いて聞かせている。
そこへエルがあわてて家令家で起こったことを報告しにやってきた。慌て者のエルの説明は要領を得なかったが、三千彦はすべて見通していた。そこへオールスチンが如意宝珠の玉を持ち、息子を引いてやってきて、罪を告白し、謝罪した。
オールスチンが自害しようとしたのを三千彦は素早く引き留め、自分が三五教の宣伝使であることを一同に明かした。三千彦は立って宣伝歌を歌い、これまでの述懐を述べた。そしてこれ以上罪びとを造らせない意志を明かした。
オールスチンとワックスは、三千彦の宣伝歌を聞いて安堵した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-07-16 12:07:31 文字数:3868 OBC :rm5618
愛善世界社版:256頁 八幡書店版:第10輯 241頁 修補版: 校定版:270頁 普及版:122頁 初版: ページ備考:
001 小国姫(をくにひめ)は三千彦(みちひこ)と共(とも)に一間(ひとま)に入(はい)つて心配(しんぱい)らし相(さう)に、002密々(ひそびそ)と話(はなし)をしてゐる。
003姫(ひめ)『モシ、004アンブラツク様(さま)、005家令(かれい)の態度(たいど)がどうも貴方(あなた)が御(お)出(いで)になつてから、006何(なん)だかソワソワしてゐるやうですから、007彼(かれ)の悴(せがれ)でも若(も)しや玉(たま)を隠(かく)したのでは厶(ござ)いますまいか。008吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)を困(こま)らせ窮地(きうち)に陥(おとしい)れ、009娘(むすめ)のデビス姫(ひめ)を女房(にようばう)に致(いた)し、010良(よ)からぬ思惑(おもわく)を立(た)てようとしてゐるのでは厶(ござ)いますまいか。011何(ど)うも常(つね)から怪(あや)しいと思(おも)つてゐますが、012何(なに)を云(い)つても家令(かれい)の悴(せがれ)ではあり、013言(い)ひ出(だ)しかねて誠(まこと)に困(こま)つて居(を)ります。014貴方(あなた)の御(お)考(かんが)へは何(ど)うで厶(ござ)いますな』
015三千(みち)『モシ貴方(あなた)、016家令(かれい)の悴(せがれ)が如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)を隠(かく)して居(を)つたとすれば、017何(ど)うなさる考(かんが)へで厶(ござ)いますか』
018姫(ひめ)『左様(さやう)な事(こと)が判(わか)れば、019何程(なにほど)家令(かれい)の息子(むすこ)と云(い)つても許(ゆる)す事(こと)は出来(でき)ますまい』
020三千(みち)『ここは兎(と)も角(かく)円満(ゑんまん)に事(こと)を済(す)まさなくてはなりますまい。021第一(だいいち)お館(やかた)の恥(はぢ)になりますから……、022そして世間(せけん)へパツとしてからは仕方(しかた)がありませぬから、023成(な)るべくは内証(ないしよう)で済(す)ましてやつたら何(ど)うで厶(ござ)いませう』
024姫(ひめ)『玉(たま)さへ還(かへ)つて参(まゐ)りますれば、025吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)の不調法(ぶてうはふ)にもならず、026皆(みな)が助(たす)かる事(こと)ならば余(あま)り表(おもて)へ出(だ)したくは厶(ござ)いませぬ。027併(しか)し乍(なが)ら之(これ)も明瞭(はつきり)した事(こと)は判(わか)りませぬから貴方(あなた)様(さま)に伺(うかが)つて頂(いただ)き度(た)いと思(おも)つて、028主人(しゆじん)の病気(びやうき)の看護(かんご)の隙(すき)に御(お)居間(ゐま)迄(まで)参(まゐ)りました』
029三千(みち)『貴方(あなた)が如何(いか)なる罪(つみ)も内済(ないさい)にしてやると云(い)ふ御(お)考(かんが)へならば申(まを)しませう。030実(じつ)は御(お)察(さつ)しの通(とほ)り家令(かれい)の悴(せがれ)ワツクス、031並(ならび)にエキス、032ヘルマンと云(い)ふ三(さん)人(にん)の若(わか)い者(もの)が或(ある)目的(もくてき)の為(ため)宝珠(ほつしゆ)を盗(ぬす)んで隠(かく)してゐるのです』
033姫(ひめ)『ア、034それで合点(がつてん)が行(ゆ)きました。035何(ど)うもワツクスの態度(たいど)がソワソワして居(ゐ)ると思(おも)ふて居(を)りました。036家令(かれい)のオールスチンは極(きは)めて忠実(ちうじつ)な正直(しやうぢき)な者(もの)で厶(ござ)いますから、037彼(かれ)に限(かぎ)つてそんな事(こと)をする気遣(きづかひ)は厶(ござ)いませぬが、038体(からだ)は生(う)みつけても、039魂(たましひ)は生(う)みつけぬとか申(まを)しまして、040英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)の悴(せがれ)に馬鹿(ばか)が生(うま)れたり、041忠臣(ちうしん)義士(ぎし)の子(こ)に叛逆人(はんぎやくにん)の生(うま)れるのは世間(せけん)に沢山(たくさん)ある習(なら)ひで厶(ござ)いますから、042家令(かれい)が貴方(あなた)の話(はなし)を聞(き)いて慌(あわ)てて帰(かへ)りましたのも、043何(なに)か心(こころ)に当(あた)る事(こと)があつたので厶(ござ)いませう。044夫(それ)に就(つい)て僕(しもべ)のエルをして様子(やうす)を考(かんが)へにやらせましたが何(ど)うしたものか未(ま)だ帰(かへ)つて来(き)ませぬ』
045三千(みち)『ヤ、046今(いま)に帰(かへ)られます。047さうすれば真相(しんさう)が解(わか)ります。048成(な)る可(べ)く之(これ)は大業(おほげふ)にしては成(な)りますまい』
049と話(はな)す処(ところ)へ、050僕(しもべ)のエルは慌(あわ)ただしく帰(かへ)り来(きた)り、051息(いき)を喘(はづ)ませ乍(なが)ら、
052エル『モシ奥様(おくさま)、053タタ大変(たいへん)で厶(ござ)います。054殺(ころ)し合(あ)ひが始(はじ)まりました』
055姫(ひめ)『ナニ、056殺(ころ)し合(あひ)が始(はじ)まつたと……どこかに喧嘩(けんくわ)をして居(を)つたのかい』
057エル『メメ滅相(めつさう)な、058殺(ころ)し合(あひ)といつたら喧嘩(けんくわ)ぢやありませぬがなア。059喧嘩(けんくわ)のモ一(ひと)つ毛(け)の生(は)えた事(こと)ですがなア。060ソレ生命(いのち)の取合(とりあひ)の事(こと)ですがなア。061怖(おそ)ろしや怖(おそ)ろしや、062地異(ちい)天変(てんぺん)地異(ちい)天変(てんぺん)、063喉(のど)を締(し)める、064置物(おきもの)をブツつける、065喚(わめ)く、066裏口(うらぐち)から山越(やまご)しに逃(に)げ出(だ)す、067庫(くら)へスツ込(こ)む、068ソレはソレは偉(えら)い事(こと)で厶(ござ)いました』
069姫(ひめ)『エル、070そんな事(こと)云(い)つて解(わか)るかい。071そら一体(いつたい)何処(どこ)の事(こと)だい』
072エル『ヘイ、073定(きま)つて居(を)りますがなア。074家(いへ)の中(なか)の事(こと)ですがなア』
075姫(ひめ)『誰(たれ)と誰(たれ)とが喧嘩(けんくわ)をしたと云(い)ふのだ』
076エル『男(をとこ)と男(をとこ)が命(いのち)の奪(と)り合(あひ)をしたのです。077エー、078解(わか)らぬ御(お)方(かた)ですなア』
079姫(ひめ)『何処(どこ)の何兵衛(なにべゑ)だと問(と)ふてゐるのぢや』
080エル『エー辛気臭(しんきくさ)い、081何兵衛(なにべゑ)も彼兵衛(かんべゑ)もありますかい。082愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)ると生命(いのち)が失(な)くなりますがなア。083アアもどかしい事(こと)だワイ』
084姫(ひめ)『そんな解(わか)らぬ事(こと)を何時(いつ)迄(まで)も云(い)つて居(を)つても埒(らち)があかぬぢやないか。085此方(こちら)がもどかしいワ。086家令(かれい)の館(やかた)へ未(ま)だ行(ゆ)かぬのか。087大方(おほかた)犬(いぬ)の喧嘩(けんくわ)でも見(み)て居(を)つたのだらう』
088エル『ハイ、089その家令(かれい)ですがなア。090それはそれは偉(えら)い事(こと)怒(おこ)つてましたよ。091大(おほ)きな額口(ひたひぐち)に青筋(あをすぢ)を立(た)てましてね……』
092三千(みち)『アハハハハ、093イヤもうエルさまとやら、094分(わか)つて居(を)ります。095お前(まへ)さまは随分(ずいぶん)慌(あわ)てて居(を)るから、096云(い)ふ事(こと)がシドロモドロになつて解(わか)り憎(にく)いが、097お前(まへ)は家令(かれい)の宅(うち)へ行(い)つて四(よ)人(にん)の喧嘩(けんくわ)を見(み)て来(き)たのだらう』
098エル『ハイ其(その)通(とほ)りで厶(ござ)います。099サア之(これ)から村中(むらぢう)を布令(ふれ)て来(き)ます。100大変(たいへん)ぢや大変(たいへん)ぢや』
101と飛(と)び出(だ)さうとするのを、102小国姫(をくにひめ)は襟髪(えりがみ)掴(つか)んでグツと引戻(ひきもど)し、
103姫(ひめ)『コリヤ、104エル、105何処(どこ)へも行(ゆ)く事(こと)はならぬ。106そして何(なに)も喋(しやべ)る事(こと)はならぬぞ』
107エル『ソソそんな事(こと)仰有(おつしや)つても、108之(これ)が黙(だま)つて居(を)られませうか。109愚図(ぐづ)々々(ぐづ)して居(を)ると家令(かれい)の生命(いのち)が失(な)くなるか知(し)れませぬぞや』
110三千(みち)『エルさま、111まア落付(おちつ)いて下(くだ)さい。112家令(かれい)は大丈夫(だいぢやうぶ)だから、113そして何(なに)も云(い)つちやなりませぬよ』
114 エルは『ハイ』と云(い)ひ乍(なが)ら、115縮(ちぢ)んで了(しま)つた。
116三千(みち)『奥(おく)さま、117何(ど)うやらワツクスが隠(かく)してゐたところ、118家令殿(かれいどの)に看破(かんぱ)されて一悶着(ひともんちやく)が起(おこ)つたと見(み)えます。119之(これ)は私(わたし)に任(まか)して下(くだ)さい。120キツト如意(によい)宝珠(ほつしゆ)を持(も)つて帰(かへ)り御(お)目(め)にかけます。121そして家令(かれい)の親子(おやこ)を私(わたくし)に任(まか)して下(くだ)さいませ。122斯(か)うして発見(はつけん)したのも矢張(やつぱり)神(かみ)様(さま)の御(お)蔭(かげ)で厶(ござ)いますからなア』
123姫(ひめ)『何事(なにごと)も神徳(しんとく)高(たか)き貴方(あなた)様(さま)の仰(おほ)せ、124御(お)任(まか)せ申(まを)します』
125と話(はな)して居(を)る処(ところ)へ、126家令(かれい)のオールスチンは、127吾(わが)子(こ)のワツクスを引立(ひきた)て乍(なが)ら、128如意(によい)宝珠(ほつしゆ)の玉(たま)を幾重(いくへ)にも厳重(げんぢう)に包(つつ)み、129此(この)場(ば)に現(あら)はれ来(きた)り、130パツと両手(りやうて)をつき、
131オールス『奥様(おくさま)、132誠(まこと)に申訳(まをしわけ)の無(な)い事(こと)を致(いた)しました。133悴(せがれ)の馬鹿者(ばかもの)が悪(わる)い友達(ともだち)に唆(そそのか)され、134種々(いろいろ)の謀叛(むほん)を企(たく)み、135隠(かく)して居(を)りましたのを漸(やうや)く覚(さと)り、136悴(せがれ)に腰縄(こしなは)をつけて、137此処迄(ここまで)お詫(わび)に参(まゐ)りました。138何(いづ)れ倅(せがれ)は生命(いのち)の大罪人(だいざいにん)で厶(ござ)いますから、139思(おも)ふ存分(ぞんぶん)にしてやつて下(くだ)さいませ。140私(わたし)の倅(せがれ)に斯様(かやう)な者(もの)が出来(でき)たと思(おも)へば旦那(だんな)様(さま)へも、141世間(せけん)へも申訳(まをしわけ)が立(た)ちませぬから……』
142と云(い)ふより早(はや)く懐剣(くわいけん)を引抜(ひきぬ)き、143矢庭(やには)に吾(わが)腹(はら)に突立(つきた)てようとする一刹那(いつせつな)、144三千彦(みちひこ)は飛(と)び下(くだ)りて懐剣(くわいけん)をもぎとり、145声(こゑ)を励(はげ)まして、
146三千(みち)『オールスチン殿(どの)、147心(こころ)を落付(おちつ)けなされ。148何事(なにごと)も皆(みな)神(かみ)様(さま)の摂理(せつり)で厶(ござ)いませう。149此(この)問題(もんだい)は奥様(おくさま)より私(わたし)が一任(いちにん)されて居(を)りますから、150先(ま)づ御(お)急(せ)きなさるには及(およ)びませぬ。151今(いま)死(し)ぬる命(いのち)を長(なが)らへて御(ご)主人(しゆじん)様(さま)へ忠義(ちうぎ)を御(お)尽(つく)しなさる方(はう)が、152何程(なにほど)誠(まこと)が通(とほ)るか知(し)れませぬよ。153そして貴方(あなた)の息子(むすこ)、154ワツクス殿(どの)も三千彦(みちひこ)が預(あづ)かつて居(を)りますれば安心(あんしん)なさるが宜(よろ)しい。155実(じつ)の処(ところ)私(わたし)はアンブラツクとは仮(かり)の名(な)、156実(じつ)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)三千彦(みちひこ)と申(まを)す者(もの)、157当館(たうやかた)はバラモン教(けう)だと知(し)つた故(ゆゑ)に、158故意(わざ)とバラモン教(けう)の宣伝使(せんでんし)と化(ば)け込(こ)んで御(お)救(すく)ひに参(まゐ)つたのです。159今(いま)迄(まで)吾(わが)名(な)を詐(いつは)つた罪(つみ)は奥様(おくさま)を始(はじ)め御(ご)一同(いちどう)様(さま)御(お)許(ゆる)しを願(ねが)ひます』
160姫(ひめ)『エー何(なん)と仰有(おつしや)います。161貴方(あなた)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)で厶(ござ)いましたか。162之(これ)はイカイ御(ご)無礼(ぶれい)を致(いた)しました。163併(しか)し乍(なが)らよくまア急場(きふば)を助(たす)けて下(くだ)さいました。164有難(ありがた)う存(ぞん)じます。165貴方(あなた)の御(ご)神徳(しんとく)に依(よ)つて玉(たま)の所在(ありか)が分(わか)り、166斯(こ)んな嬉(うれ)しい事(こと)は厶(ござ)いませぬ』
167三千(みち)『三五教(あななひけう)と云(い)ひ、168バラモン教(けう)と云(い)ふも元(もと)を正(ただ)せば一(ひと)つの神(かみ)様(さま)で厶(ござ)いますから、169教(をしへ)に勝劣(しようれつ)は厶(ござ)いますまい。170只(ただ)道(みち)を奉(ほう)ずるものの心(こころ)に依(よ)つて御(ご)神徳(しんとく)の現(あら)はれに大小(だいせう)高下(かうげ)の区別(くべつ)がつく丈(だ)けのものです』
171オールス『貴方(あなた)は初(はじ)めて御(お)目(め)にかかつた時(とき)から、172何処(どこ)とはなしに変(かは)つた御(お)方(かた)と思(おも)つて居(を)りましたが、173三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)で厶(ござ)いましたか。174誠(まこと)に失礼(しつれい)致(いた)しました。175斯様(かやう)な乱痴気(らんちき)騒(さわ)ぎを御(お)目(め)に掛(か)け、176誠(まこと)に御(お)恥(はづ)かしう厶(ござ)います。177吾々(われわれ)親子(おやこ)はバラモンの顔(かほ)に泥(どろ)を塗(ぬ)つたものですから、178何卒(どうぞ)死(し)なして下(くだ)さいませ。179之(これ)ばかりがお願(ねがひ)で厶(ござ)います。180そして私(わたし)の自殺(じさつ)に依(よ)つて倅(せがれ)の罪(つみ)を幾分(いくぶん)軽(かる)くして下(くだ)さる事(こと)ならば、181それを冥途(めいど)の御(お)土産(みやげ)として、182勇(いさ)んで死(し)に就(つ)きます。183南無(なむ)大自在天(だいじざいてん)大国彦(おほくにひこの)命(みこと)様(さま)……』
184と合掌(がつしやう)し、185決死(けつし)の覚悟(かくご)を示(しめ)して居(ゐ)る。
186 三千彦(みちひこ)は立上(たちあが)り宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ始(はじ)めたり。
187三千彦『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
188吾(われ)は三千彦(みちひこ)神司(かむつかさ)
189神(かみ)の御綱(みつな)に操(あやつ)られ
190不知(しらず)々々(しらず)にテルモンの
191山(やま)の麓(ふもと)に現(あら)はれて
192清(きよ)き流(なが)れを打(う)ち渡(わた)り
193此方(こなた)に向(むか)つて進(すす)む折(をり)
194小国姫(をくにひめ)の神司(かむづかさ)
195二人(ふたり)の侍女(じぢよ)を伴(ともな)ひて
196いと懇(ねもごろ)に吾(わ)が身(み)をば
197館(やかた)に誘(いざな)ひ帰(かへ)りまし
198種々(いろいろ)雑多(ざつた)の御(おん)悩(なや)み
199包(つつ)まず隠(かく)さず宣(の)り玉(たま)ひ
200はからせ玉(たま)ふを聞(き)くよりも
201同情(どうじやう)の涙(なみだ)に堪(た)えかねて
202皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)前(まへ)に
203真心(まごころ)籠(こ)めて祈(いの)る折(をり)
204神(かみ)の化身(けしん)のスマートが
205吾(わ)が耳(みみ)近(ちか)く声(こゑ)をかけ
206如意(によい)の宝珠(ほつしゆ)の行衛(ゆくゑ)をば
207完全(うまら)に委曲(つばら)に相示(あひしめ)し
208ケリナの姫(ひめ)や其(その)外(ほか)の
209数多(あまた)の託宣(たくせん)下(くだ)しつつ
210雲路(くもぢ)を分(わ)けて帰(かへ)ります
211吾(わ)れは心(こころ)も勇(いさ)み立(た)ち
212小国姫(をくにひめ)に打(う)ち向(むか)ひ
213天地(てんち)の道理(だうり)を説(と)き諭(さと)し
214唯(ただ)何事(なにごと)も神直日(かむなほひ)
215心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
216見直(みなほ)しませと勧(すす)めつつ
217神(かみ)の御前(みまへ)に平伏(ひれふ)して
218此(この)難局(なんきよく)をいと安(やす)く
219結(むす)ばむために村肝(むらきも)の
220心(こころ)を千々(ちぢ)に配(くば)りけり
221時(とき)しもあれやエルさまは
222慌(あわ)ただしくも入(い)り来(きた)り
223家令(かれい)の館(やかた)に人殺(ひとごろし)
224大騒動(だいさうどう)が突発(とつぱつ)し
225居(ゐ)たりと報告(ほうこく)聞(き)くよりも
226外(ほか)へ洩(も)れては一大事(いちだいじ)
227如何(いかが)はせむと思(おも)ふ折(をり)
228オールスチンの御(ご)入来(じうらい)
229珍(うづ)の宝(たから)を芽出度(めでたく)も
230此処(ここ)に運(はこ)ばせ玉(たま)ひたる
231此(この)瑞祥(ずゐしやう)はテルモンの
232館(やかた)の万代(ばんだい)不易(ふえき)なる
233瑞祥(ずゐしやう)なりと祝(いは)ひつつ
234凡(すべ)ての曲(まが)を宣(の)り直(なほ)し
235唯(ただ)何事(なにごと)も大神(おほかみ)の
236さばきに任(まか)せ奉(まつ)るべし
237人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
238元(もと)より悪(あ)しきものならず
239八岐(やまた)大蛇(をろち)や醜神(しこがみ)の
240曲津霊(まがつみたま)に曇(くも)らされ
241不知(しらず)々々(しらず)に悪魔道(あくまだう)へ
242堕(お)ち行(ゆ)きたりしものなれば
243皇(すめ)大神(おほかみ)に賜(たま)ひたる
244厳(いづ)の言霊(ことたま)宣(の)り上(あ)げて
245いろいろ雑多(ざつた)の罪科(つみとが)を
246科戸(しなど)の風(かぜ)に吹払(ふきはら)ひ
247払(はら)ひ清(きよ)めて速川(はやかは)の
248流(なが)れの如(ごと)く身体(からたま)や
249霊(みたま)に塵(ちり)も止(と)めざれと
250皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)前(まへ)に
251三千彦(みちひこ)祈(いの)り奉(たてまつ)る
252小国姫(をくにひめ)よオールスチンよ
253ワツクス司(つかさ)よ心安(うらやす)く
254思召(おぼしめ)されよ三千彦(みちひこ)が
255ここに現(あら)はれ来(き)し上(うへ)は
256如何(いか)でか罪人(つみびと)造(つく)らむや
257心(こころ)安(やす)かれ惟神(かむながら)
258神(かみ)に誓(ちか)ひて宣(の)り伝(つた)ふ
259朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
260月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
261仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
262誠(まこと)一(ひと)つの三五(あななひ)の
263教(をしへ)に身(み)をば任(まか)しなば
264如何(いか)なる曲(まが)の猛(たけ)びをも
265決(けつ)して怖(おそ)るる事(こと)は無(な)し
266尊(たふと)み敬(ゐやま)へ三五(あななひ)の
267皇(すめ)大神(おほかみ)の御(ご)神徳(しんとく)
268バラモン教(けう)を守(まも)ります
269大国彦(おほくにひこ)の御(おん)稜威(みいづ)
270ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
271霊(みたま)幸(さち)はひましませよ』
272 三千彦(みちひこ)の歌(うた)にて家令(かれい)のオールスチン及(および)ワツクスはヤツと安心(あんしん)し、273涙(なみだ)を流(なが)して神恩(しんおん)を感謝(かんしや)し、274如意(によい)宝珠(ほつしゆ)を奉持(ほうぢ)して小国別(をくにわけ)の病室(びやうしつ)に罪(つみ)を陳謝(ちんしや)すべく、275小国姫(をくにひめ)、276三千彦(みちひこ)と共(とも)にシトシトと進(すす)み行(ゆ)く。
277(大正一二・三・一七 旧二・一 於竜宮館 外山豊二録)
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