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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第56巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 自愛之柵
第1章 神慮
第2章 恋淵
第3章 仇花
第4章 盗歌
第5章 鷹魅
第2篇 宿縁妄執
第6章 高圧
第7章 高鳴
第8章 愛米
第9章 我執
第3篇 月照荒野
第10章 十字
第11章 惚泥
第12章 照門颪
第13章 不動滝
第14章 方岩
第4篇 三五開道
第15章 猫背
第16章 不臣
第17章 強請
第18章 寛恕
第19章 痴漢
第20章 犬嘘
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霊界物語
>
真善美愛(第49~60巻)
>
第56巻(未の巻)
> 第4篇 三五開道 > 第16章 不臣
<<< 猫背
(B)
(N)
強請 >>>
第一六章
不臣
(
ふしん
)
〔一四四六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻
篇:
第4篇 三五開道
よみ(新仮名遣い):
あなないかいどう
章:
第16章 不臣
よみ(新仮名遣い):
ふしん
通し章番号:
1446
口述日:
1923(大正12)年03月17日(旧02月1日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
朝食が済むと小国姫は三千彦のところにやってきて、テルモン山神館の問題について相談を始めた。この館のバラモン教の神宝である如意宝珠の玉が紛失し、百日以内に取り戻せなければ小国別・小国姫夫婦は死をもってお詫びをしなくてはならないという。
それを苦にして小国別は病に倒れてしまった。また次女のケリナが三年前に駆け落ちしたまま行方不明になり、このことも夫婦の気にかかっているという。小国姫は、これらの問題について神様に祈願し、託宣していただくように依頼した。
三千彦は一週間の時間を約束し、神殿に籠って祈願をこめはじめた。するとスマートの精霊が三千彦にお告げを聞かせはじめた。スマートは、玉国別一行には近いうちにこの館で会えるようになると三千彦を安堵した。そして、如意宝珠の玉は、この神館の家令のせがれのワックスという者が、ある目的のために隠していると託宣した。
スマートは、ワックスが玉を隠していることは小国姫には決して言わず、ただ近いうちに現れると答えるように教えた。また、小国別はもう寿命であること、妹娘のケリナは三五教の修験者に助けられて近いうちに帰ってくることを知らせた。
三千彦は天耳通が開けた者と思って、喜んで大神に感謝し、小国姫の居間に引き返して告げられたように、それぞれの問題の見通しを小国姫に答えた。小国姫は、小国別は残念ながら寿命だが、如意宝珠も妹娘も現れたのを見て国替えすることができる、と聞いて安心した。
そこへ小国別の容態が悪くなったということで、小国姫、三千彦、家令のオールスチンは枕頭に集まった。小国別はしきりに、ワックス、ワックス、と家令の息子の名前を呼んでいる。
小国姫は、何事が小国別とワックスの間にあったか調べるようにオールスチンに命じた。オールスチンは思い当ることがあるように首を傾けながら我が家に戻った。オールスチンが帰ってくると、二三人の人声が聞こえて来る。オールスチンは門の戸にもたれて話の様子を聞いている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
テルモン山の神館の小国別は、初版では「鬼国別」で、御校正本で「小国別」に直された。なぜか第56巻第16章「不臣」だけは「小国彦」(初版では「鬼国彦」)になっている。この章に4回出る。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-10-04 00:19:35
OBC :
rm5616
愛善世界社版:
231頁
八幡書店版:
第10輯 231頁
修補版:
校定版:
244頁
普及版:
109頁
初版:
ページ備考:
001
神殿
(
しんでん
)
の
拝礼
(
はいれい
)
が
終
(
をは
)
ると
共
(
とも
)
に
三千彦
(
みちひこ
)
は
小国姫
(
をくにひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
招
(
せう
)
ぜられ、
002
茶菓
(
さくわ
)
の
饗応
(
きやうおう
)
を
受
(
う
)
け
朝飯
(
あさめし
)
を
頂
(
いただ
)
き
等
(
など
)
して
寛
(
くつろ
)
いでゐる。
003
朝飯
(
てうはん
)
が
済
(
す
)
むと
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
り
小国姫
(
をくにひめ
)
は
憂
(
うれ
)
ひ
顔
(
がほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
004
姫
(
ひめ
)
『アン・ブラツク
様
(
さま
)
、
005
よくまアお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいました。
006
折入
(
をりい
)
つてお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いますが、
007
聞
(
き
)
いては
下
(
くだ
)
さいますまいかな』
008
三千
(
みち
)
『ハイ、
009
私
(
わたし
)
の
力
(
ちから
)
に
及
(
およ
)
ぶ
事
(
こと
)
ならば
如何
(
いか
)
なる
御用
(
ごよう
)
も
承
(
うけたま
)
はりませう。
010
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく
仰
(
おほ
)
せ
下
(
くだ
)
さいませ』
011
姫
(
ひめ
)
『
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります。
012
早速
(
さつそく
)
ながらお
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
しますが、
013
当館
(
たうやかた
)
は
貴方
(
あなた
)
も
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
の
通
(
とほ
)
りバラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が、
014
まだ
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
と
仰
(
おほ
)
せられた
時分
(
じぶん
)
、
015
ここを
第一
(
だいいち
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
とお
定
(
さだ
)
め
遊
(
あそ
)
ばしたバラモン
発祥
(
はつしやう
)
の
旧跡
(
きうせき
)
で
厶
(
ござ
)
います。
016
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
名
(
な
)
は
国彦
(
くにひこ
)
、
017
国姫
(
くにひめ
)
と
申
(
まを
)
しましたが、
018
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
より
御
(
お
)
名
(
な
)
を
頂
(
いただ
)
いて
今
(
いま
)
は
小国別
(
をくにわけ
)
[
※
底本では「小国彦」。他の章ではすべて「小国別」という名前だが、この章だけは何故か「小国彦」になっている。文脈上「小国別」が正しいので修正した。
]
、
019
小国姫
(
をくにひめ
)
と
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
ります。
020
就
(
つ
)
いては
当館
(
たうやかた
)
の
重宝
(
ぢうはう
)
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
が
紛失
(
ふんしつ
)
致
(
いた
)
しまして
今
(
いま
)
に
行衛
(
ゆくゑ
)
は
知
(
し
)
れず、
021
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
に
此
(
この
)
玉
(
たま
)
を
発見
(
はつけん
)
せなければ
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
死
(
し
)
してお
詫
(
わび
)
をせなくてはならない
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
つて
居
(
を
)
ります。
022
吾
(
わが
)
夫
(
をつと
)
はそれを
苦
(
く
)
にして
大病
(
たいびやう
)
に
罹
(
かか
)
らせ
玉
(
たま
)
ひ、
023
命
(
めい
)
旦夕
(
たんせき
)
に
迫
(
せま
)
ると
云
(
い
)
ふ
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
024
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
が
重
(
かさ
)
なれば
重
(
かさ
)
なるもので、
025
今
(
いま
)
より
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
に
妹娘
(
いもうとむすめ
)
のケリナと
云
(
い
)
ふもの、
026
仇
(
あだ
)
し
男
(
をとこ
)
と
共
(
とも
)
に
家出
(
いへで
)
を
致
(
いた
)
し、
027
今
(
いま
)
に
行衛
(
ゆくゑ
)
も
分
(
わか
)
らず、
028
夫婦
(
ふうふ
)
の
心配
(
しんぱい
)
は
口
(
くち
)
で
申
(
まを
)
すやうの
事
(
こと
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ。
029
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
以
(
もつ
)
て
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
所在
(
ありか
)
をお
知
(
し
)
らせ
下
(
くだ
)
さる
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬか』
030
三千彦
(
みちひこ
)
は
天眼通
(
てんがんつう
)
が
些
(
ちつ
)
とも
利
(
き
)
かないので、
031
こんな
問題
(
もんだい
)
を
提出
(
ていしゆつ
)
されても
一言
(
いちごん
)
も
答
(
こた
)
へる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
032
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
033
何
(
なん
)
とかして
此
(
この
)
場
(
ば
)
のゴミを
濁
(
にご
)
さねばならないと
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
大神
(
おほかみ
)
を
念
(
ねん
)
じ
乍
(
なが
)
ら
事
(
こと
)
もなげに
答
(
こた
)
へて
云
(
い
)
ふ。
034
三千
(
みち
)
『お
話
(
はなし
)
を
承
(
うけたま
)
はれば
実
(
じつ
)
に
同情
(
どうじやう
)
に
堪
(
た
)
えませぬ。
035
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
036
私
(
わたし
)
がここへ
参
(
まゐ
)
りました
以上
(
いじやう
)
は
必
(
かなら
)
ず
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
綱
(
つな
)
がかかつて
引寄
(
ひきよ
)
せられたに
相違
(
さうゐ
)
厶
(
ござ
)
いませぬ。
037
ここ
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
の
間
(
あひだ
)
御
(
ご
)
祈念
(
きねん
)
致
(
いた
)
し、
038
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
伺
(
うかが
)
つてみませう』
039
と
其
(
その
)
場
(
ば
)
逃
(
のが
)
れの
覚束
(
おぼつか
)
なげの
挨拶
(
あいさつ
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
040
溺
(
おぼ
)
るる
者
(
もの
)
は
藁条
(
わらすべ
)
一本
(
いつぽん
)
にも
頼
(
たよ
)
らむとする
喩
(
たとへ
)
の
如
(
ごと
)
く、
041
小国姫
(
をくにひめ
)
は
三千彦
(
みちひこ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
力
(
ちから
)
とし
大
(
おほい
)
に
喜
(
よろこ
)
んで
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
042
姫
(
ひめ
)
『
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
043
何分
(
なにぶん
)
に
宜
(
よろ
)
しうお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
044
そして
厚
(
あつ
)
かましいお
願
(
ねが
)
ひで
厶
(
ござ
)
いますが、
045
夫
(
をつと
)
の
病気
(
びやうき
)
は
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いませうかな』
046
三千
(
みち
)
『
先
(
ま
)
づ
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
心魂
(
しんこん
)
を
籠
(
こ
)
めて
祈
(
いの
)
る
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう。
047
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
如何
(
どう
)
しても
必要
(
ひつえう
)
があると
思召
(
おぼしめ
)
したら
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けられるでせうし、
048
又
(
また
)
霊界
(
れいかい
)
にどうしても
御用
(
ごよう
)
があると
思召
(
おぼしめ
)
したら
命
(
いのち
)
をお
引
(
ひ
)
き
取
(
と
)
りになるでせう。
049
生死
(
せいし
)
問題
(
もんだい
)
のみは
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
050
之
(
これ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せなさるより
外
(
ほか
)
に
道
(
みち
)
はありますまい』
051
姫
(
ひめ
)
『
仰
(
おほ
)
せの
如
(
ごと
)
く
何時
(
いつ
)
も
私
(
わたし
)
も
信者
(
しんじや
)
に
生死
(
せいし
)
問題
(
もんだい
)
に
就
(
つ
)
いては、
052
人間
(
にんげん
)
の
如何
(
いかん
)
ともする
所
(
ところ
)
でないと
説
(
と
)
いて
居
(
ゐ
)
ますが、
053
さて
自分
(
じぶん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
関
(
くわん
)
するとなるとツイ
愚痴
(
ぐち
)
が
出
(
で
)
たり、
054
迷
(
まよ
)
ふたりしてお
恥
(
はづか
)
しき
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
055
それから、
056
も
一
(
ひと
)
つ
申兼
(
まをしか
)
ねますが
娘
(
むすめ
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
057
彼娘
(
あれ
)
はまだ
無事
(
ぶじ
)
に
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
残
(
のこ
)
つて
居
(
を
)
るでせうか。
058
或
(
あるひ
)
は
悪者
(
わるもの
)
の
為
(
た
)
めに
殺
(
ころ
)
されたやうな
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いますまいか。
059
それ
許
(
ばか
)
りが
心配
(
しんぱい
)
で
堪
(
たま
)
りませぬ』
060
三千彦
(
みちひこ
)
は
何
(
ど
)
れも
此
(
こ
)
れも
宜
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
な
返事
(
へんじ
)
はして
居
(
を
)
れない。
061
エー、
062
ままよ、
063
一
(
いち
)
か
八
(
ばち
)
かと
決心
(
けつしん
)
して、
064
三千
(
みち
)
『
娘
(
むすめ
)
さまの
事
(
こと
)
は
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
065
屹度
(
きつと
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
恵
(
めぐみ
)
で
近
(
ちか
)
い
内
(
うち
)
に
無事
(
ぶじ
)
にお
帰
(
かへ
)
りになります』
066
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
067
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります。
068
そして
娘
(
むすめ
)
は
今頃
(
いまごろ
)
は
何処
(
どこ
)
の
国
(
くに
)
に
居
(
を
)
りますか。
069
一寸
(
ちよつと
)
それを
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
いもので
厶
(
ござ
)
います』
070
三千彦
(
みちひこ
)
はハツと
詰
(
つ
)
まり
乍
(
なが
)
ら
肝
(
きも
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して、
071
三千
(
みち
)
『つい
近
(
ちか
)
い
所
(
ところ
)
に
隠
(
かく
)
れて
居
(
を
)
られます。
072
まア
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
073
軈
(
やが
)
て
帰
(
かへ
)
られますから、
074
然
(
しか
)
し
詳
(
くは
)
しい
事
(
こと
)
は
御
(
ご
)
神殿
(
しんでん
)
で
伺
(
うかが
)
つて
来
(
こ
)
なくては
申上
(
まをしあげ
)
兼
(
か
)
ねますから』
075
姫
(
ひめ
)
『
成程
(
なるほど
)
、
076
さうで
厶
(
ござ
)
いませう。
077
何卒
(
どうぞ
)
御緩
(
ごゆつく
)
りなさいましたら、
078
一度
(
いちど
)
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
を
伺
(
うかが
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
079
三千
(
みち
)
『ハイ、
080
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
081
これから
早速
(
さつそく
)
伺
(
うかが
)
つて
参
(
まゐ
)
ります。
082
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
誰方
(
どなた
)
もお
出
(
い
)
でにならぬやうに
願
(
ねが
)
ひます』
083
と
云
(
い
)
ひ
残
(
のこ
)
し
神殿
(
しんでん
)
さして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
084
三千彦
(
みちひこ
)
は
神殿
(
しんでん
)
に
進
(
すす
)
み
小声
(
こごゑ
)
になつて
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
085
終
(
をは
)
つて、
086
三千
(
みち
)
『
私
(
わたくし
)
は
大変
(
たいへん
)
な
難問題
(
なんもんだい
)
にぶつつかりました。
087
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
苟
(
いやし
)
くも
三五
(
あななひ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
088
宜
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
な
事
(
こと
)
は
申
(
まを
)
されませぬ。
089
もし
宜
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
の
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
し、
090
化
(
ば
)
けが
露
(
あら
)
はれたなら、
091
それこそ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
名
(
な
)
を
穢
(
けが
)
し、
092
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
に
対
(
たい
)
しても
相済
(
あひす
)
みませぬからハツキリした
事
(
こと
)
を、
093
ここ
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
の
間
(
うち
)
に
私
(
わたくし
)
の
耳許
(
みみもと
)
にお
聞
(
き
)
かせ
下
(
くだ
)
さいますか、
094
但
(
ただし
)
は
夢
(
ゆめ
)
になりと
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さいませ。
095
そしてなる
事
(
こと
)
なら
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
の
所在
(
ありか
)
のほどもお
示
(
しめ
)
し
願
(
ねが
)
ひます』
096
斯
(
か
)
く
念
(
ねん
)
じて
暫
(
しば
)
らく
瞑目
(
めいもく
)
して
居
(
ゐ
)
ると
忽
(
たちま
)
ち
背中
(
せなか
)
がムクムクと
膨
(
ふく
)
れ
出
(
だ
)
し、
097
犬
(
いぬ
)
の
様
(
やう
)
なものが
負
(
お
)
ぶさつた
様
(
やう
)
な
重味
(
おもみ
)
が
感
(
かん
)
じて
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えねど、
098
少
(
すこ
)
し
掠
(
かす
)
つた
声
(
こゑ
)
で
耳許
(
みみもと
)
に
囁
(
ささや
)
いた
者
(
もの
)
がある。
099
之
(
これ
)
はスマートの
精霊
(
せいれい
)
が
三千彦
(
みちひこ
)
の
身
(
み
)
を
守
(
まも
)
るべく
諭
(
さと
)
して
呉
(
く
)
れたのである。
100
さうして
其
(
その
)
示言
(
じげん
)
は
左
(
さ
)
の
通
(
とほ
)
りであつた。
101
精霊
(
せいれい
)
『
三千彦
(
みちひこ
)
殿
(
どの
)
、
102
其方
(
そなた
)
は
大変
(
たいへん
)
に
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るが、
103
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
一行
(
いつかう
)
は
軈
(
やが
)
て
近
(
ちか
)
い
内
(
うち
)
に
此
(
この
)
館
(
やかた
)
でお
目
(
め
)
にかかれるであらう。
104
そして
当館
(
たうやかた
)
の
重宝
(
ぢうはう
)
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
は
家令
(
かれい
)
の
悴
(
せがれ
)
ワツクスと
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
が
或
(
ある
)
目的
(
もくてき
)
のために
隠
(
かく
)
して
居
(
を
)
るのだから、
105
之
(
これ
)
も
只
(
たつた
)
今
(
いま
)
現
(
あら
)
はれるであらう。
106
儂
(
わし
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
身辺
(
しんぺん
)
を
守
(
まも
)
るスマートと
云
(
い
)
ふものだが、
107
小国姫
(
をくにひめ
)
に
対
(
たい
)
しては
決
(
けつ
)
してワツクスが
匿
(
かく
)
して
居
(
を
)
る
等
(
など
)
と
云
(
い
)
つてはなりませぬぞ。
108
然
(
しか
)
し
直様
(
すぐさま
)
、
109
現
(
あら
)
はれる
様
(
やう
)
に
致
(
いた
)
すから
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
すなと
云
(
い
)
つて
置
(
お
)
きなさい。
110
又
(
また
)
此
(
この
)
家
(
や
)
の
主人
(
しゆじん
)
小国別
(
をくにわけ
)
[
※
底本では「小国彦」
]
はここ
暫
(
しば
)
らくの
寿命
(
じゆみやう
)
だから、
111
それは
諦
(
あきら
)
める
様
(
やう
)
に
云
(
い
)
ふて
置
(
お
)
くが
宜
(
よ
)
い。
112
又
(
また
)
娘
(
むすめ
)
のケリナ
姫
(
ひめ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
に
助
(
たす
)
けられ、
113
近
(
ちか
)
い
中
(
うち
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る。
114
之
(
これ
)
も
安心
(
あんしん
)
するやうに
知
(
し
)
らしてやりなさい。
115
尋
(
たづ
)
ねる
事
(
こと
)
は、
116
もう
之
(
これ
)
でないかな』
117
と
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
118
三千彦
(
みちひこ
)
は
初
(
はじ
)
めて
天耳通
(
てんじつう
)
が
開
(
ひら
)
けたものと
考
(
かんが
)
へ、
119
非常
(
ひじやう
)
に
喜
(
よろこ
)
んで
大神
(
おほかみ
)
に
感謝
(
かんしや
)
し、
120
莞爾
(
にこにこ
)
として
小国姫
(
をくにひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
引返
(
ひきかへ
)
した。
121
小国姫
(
をくにひめ
)
は
三千彦
(
みちひこ
)
の
何処
(
どこ
)
ともなく
元気
(
げんき
)
に
充
(
み
)
ちた
顔色
(
がんしよく
)
を
見
(
み
)
て、
122
姫
(
ひめ
)
『こりや、
123
些
(
ちつ
)
と
有望
(
いうばう
)
に
違
(
ちが
)
ひない』
124
と
早
(
はや
)
くも
合点
(
がつてん
)
し、
125
さも
嬉
(
うれ
)
しげに、
126
姫
(
ひめ
)
『これはこれはアンブラツク
様
(
さま
)
、
127
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
128
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
高
(
たか
)
き
貴方
(
あなた
)
、
129
定
(
さだ
)
めし
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
告
(
つ
)
げを
直接
(
ちよくせつ
)
お
聞
(
き
)
きなさいましたでせう。
130
何卒
(
どうぞ
)
お
示
(
しめ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
131
三千
(
みち
)
『イヤ、
132
さう
褒
(
ほ
)
められては
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
ります。
133
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つてもバラモン
教
(
けう
)
へ
這入
(
はい
)
つてから、
134
俄
(
にはか
)
に
抜擢
(
ばつてき
)
されて
宣伝使
(
せんでんし
)
になつたものの、
135
経文
(
きやうもん
)
も
碌
(
ろく
)
にあがりませぬ。
136
只
(
ただ
)
信念
(
しんねん
)
堅実
(
けんじつ
)
と
云
(
い
)
ふ
廉
(
かど
)
を
以
(
もつ
)
て
宣伝使
(
せんでんし
)
にして
貰
(
もら
)
つたのですから、
137
バラモン
教
(
けう
)
の
教理
(
けうり
)
は
少
(
すこ
)
しも
存
(
ぞん
)
じませぬが、
138
信仰
(
しんかう
)
の
力
(
ちから
)
によりまして
天眼通
(
てんがんつう
)
、
139
天耳通
(
てんじつう
)
を
授
(
さづ
)
けて
頂
(
いただ
)
いて
居
(
を
)
ります。
140
それで
何
(
ど
)
んな
事
(
こと
)
でも
鏡
(
かがみ
)
にかけた
如
(
ごと
)
く
知
(
し
)
らして
頂
(
いただ
)
けます』
141
姫
(
ひめ
)
『イヤ、
142
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
143
今
(
いま
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
難
(
むつかし
)
い
小理窟
(
こりくつ
)
ばかり
云
(
い
)
つて、
144
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
経文
(
きやうもん
)
の
研究
(
けんきう
)
に
日
(
ひ
)
を
暮
(
くら
)
し、
145
肝腎
(
かんじん
)
の
信仰
(
しんかう
)
が
欠
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
ますから、
146
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
取次
(
とりつぎ
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
147
些
(
ちつ
)
とも
大神
(
おほかみ
)
の
意思
(
いし
)
が
分
(
わか
)
らないので
厶
(
ござ
)
いますよ。
148
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
が
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
149
さうして
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられましたかな』
150
三千
(
みち
)
『はい、
151
明白
(
はつきり
)
した
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
りませぬが
私
(
わたし
)
のインプレッションに
拠
(
よ
)
りますれば、
152
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
の
重宝
(
ぢうはう
)
は
近
(
ちか
)
い
中
(
うち
)
にお
手
(
て
)
に
這入
(
はい
)
ります。
153
屹度
(
きつと
)
私
(
わたし
)
が
貴女
(
あなた
)
にお
手渡
(
てわた
)
しをしますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
154
さうしてお
嬢
(
ぢやう
)
さまは
日
(
ひ
)
ならずお
帰
(
かへ
)
りになります。
155
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
はお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ながら
天国
(
てんごく
)
へ
御用
(
ごよう
)
がおありなさるさうだから
先
(
ま
)
づお
諦
(
あきら
)
めなさるが
宜
(
よろ
)
しからう』
156
姫
(
ひめ
)
『どうも
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
りました。
157
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
で
昇天
(
しようてん
)
するとあれば
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ませぬが、
158
成
(
な
)
る
事
(
こと
)
ならば
夫
(
をつと
)
の
生存中
(
せいぞんちゆう
)
に
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
在所
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
り、
159
又
(
また
)
娘
(
むすめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
せ
度
(
た
)
いもので
厶
(
ござ
)
いますが、
160
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
りませう、
161
これは
叶
(
かな
)
ひますまいかな』
162
三千
(
みち
)
『イヤ、
163
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
164
之
(
これ
)
は
屹度
(
きつと
)
現
(
あら
)
はれて
参
(
まゐ
)
ります。
165
そして
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
が
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
抱
(
だ
)
き、
166
片手
(
かたて
)
に
姫
(
ひめ
)
さまを
抱
(
だ
)
いて
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
国替
(
くにがへ
)
をなさいますから、
167
まア
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
繰合
(
くりあは
)
せをして
頂
(
いただ
)
くやう
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
を
成
(
な
)
さいませ。
168
私
(
わたし
)
も
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
致
(
いた
)
します』
169
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
170
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
171
と
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にかき
暮
(
く
)
れる。
172
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へ
家令
(
かれい
)
のオールスチンは
衣紋
(
えもん
)
を
繕
(
つくろ
)
ひ
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
173
オールス『もし、
174
奥様
(
おくさま
)
、
175
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
大変
(
たいへん
)
お
苦
(
くるし
)
みで
厶
(
ござ
)
います。
176
そして
奥
(
おく
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れと
仰有
(
おつしや
)
いますから
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
側
(
そば
)
へ
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
177
私
(
わたくし
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
のお
側
(
そば
)
にお
相手
(
あひて
)
を
仕
(
つかまつ
)
りますから』
178
姫
(
ひめ
)
『アン・ブラツク
様
(
さま
)
、
179
今
(
いま
)
家令
(
かれい
)
の
申
(
まを
)
した
通
(
とほ
)
り、
180
主人
(
しゆじん
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
りますから
一寸
(
ちよつと
)
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
りますから
何卒
(
どうぞ
)
御緩
(
ごゆつく
)
りとお
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ』
181
と
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てて
忙
(
いそが
)
しげに
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
182
オールスチンは
三千彦
(
みちひこ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
183
オールス『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
184
どうも
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
います。
185
お
聞
(
きき
)
及
(
およ
)
びの
通
(
とほ
)
り
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
には
大事
(
だいじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
致
(
いた
)
しまして
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
へと
騒
(
さわ
)
ぎ
廻
(
まは
)
つて
居
(
を
)
ります。
186
どうか
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
によりまして、
187
此
(
この
)
急場
(
きふば
)
が
逃
(
のが
)
れますやうにお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
います。
188
そして
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
は
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
いましたか』
189
三千
(
みち
)
『
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
190
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
は
決
(
けつ
)
して
外
(
そと
)
へ
紛失
(
ふんしつ
)
はして
居
(
を
)
りませぬ。
191
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
に
出入
(
でいり
)
する
相当
(
さうたう
)
な
役員
(
やくゐん
)
の
息子
(
むすこ
)
が、
192
或
(
ある
)
目的
(
もくてき
)
を
抱
(
いだ
)
いて
玉
(
たま
)
を
匿
(
かく
)
して
居
(
を
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が、
193
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
告
(
つ
)
げで
分
(
わか
)
りました。
194
軈
(
やが
)
て
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るで
厶
(
ござ
)
いませう』
195
オールス『エ、
196
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
ります、
197
あの
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
宝玉
(
はうぎよく
)
を
此
(
この
)
身内
(
みうち
)
の
者
(
もの
)
が
匿
(
かく
)
して
居
(
を
)
ると
仰有
(
おつしや
)
るのですか。
198
そして
此
(
この
)
館
(
やかた
)
へ
出入
(
でいり
)
する
重
(
おも
)
なる
役員
(
やくゐん
)
の
息子
(
むすこ
)
とは
誰
(
たれ
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
199
参考
(
さんかう
)
のためにお
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
き
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
いますが……』
200
三千
(
みち
)
『まだ
私
(
わたくし
)
も
修行
(
しゆぎやう
)
が
足
(
た
)
りませぬので、
201
隠
(
かく
)
した
人
(
ひと
)
の
姓名
(
せいめい
)
まで
明白
(
はつき
)
り
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
202
丸顔
(
まるがほ
)
の
色白
(
いろじろ
)
い
男
(
をとこ
)
だと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だけは
確
(
たしか
)
に
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
ります』
203
オールス『はてなア、
204
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きまする。
205
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
誰
(
たれ
)
が
匿
(
かく
)
してあるにせよ、
206
之
(
これ
)
を
探
(
さが
)
し
出
(
だ
)
さねば
小国別
(
をくにわけ
)
[
※
底本では「小国彦」
]
様
(
さま
)
の
言
(
い
)
ひ
訳
(
わけ
)
が
立
(
た
)
たず、
207
又
(
また
)
此
(
この
)
館
(
やかた
)
の
役員
(
やくゐん
)
迄
(
まで
)
が
大黒主
(
おほくろぬし
)
から
厳
(
きび
)
しい
罰
(
ばつ
)
を
受
(
う
)
けねばなりませぬ。
208
そしてその
玉
(
たま
)
は
近
(
ちか
)
いうちに
現
(
あら
)
はれるで
厶
(
ござ
)
いませうか』
209
三千
(
みち
)
『
屹度
(
きつと
)
現
(
あら
)
はれます。
210
成
(
な
)
るべく
事
(
こと
)
を
穏
(
おだや
)
かに
済
(
す
)
ませ
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
ひますから、
211
何卒
(
どうぞ
)
秘密
(
ひみつ
)
にして
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さいませ。
212
互
(
たがひ
)
に
瑕
(
きず
)
がついてはなりませぬからな』
213
オールス『
成程
(
なるほど
)
、
214
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
います。
215
こんな
事
(
こと
)
が
外
(
ほか
)
へ
洩
(
も
)
れては
一大事
(
いちだいじ
)
、
216
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
現
(
あら
)
はれますやう、
217
そして
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
安心
(
あんしん
)
の
行
(
ゆ
)
くやう、
218
願
(
ねが
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
219
三千
(
みち
)
『ハイ、
220
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
221
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
小国姫
(
をくにひめ
)
は
再
(
ふたた
)
び
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
222
姫
(
ひめ
)
『もし、
223
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
224
主人
(
しゆじん
)
が
大変
(
たいへん
)
に
様子
(
やうす
)
が
悪
(
わる
)
うなりましたから、
225
何卒
(
どうぞ
)
一
(
ひと
)
つ
御
(
ご
)
祈祷
(
きとう
)
をしてやつて
下
(
くだ
)
さいますまいかな』
226
三千
(
みち
)
『それはお
困
(
こま
)
りです。
227
然
(
しか
)
らば
参
(
まゐ
)
りませう』
228
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
家令
(
かれい
)
と
共
(
とも
)
に
主人
(
しゆじん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
通
(
とほ
)
つた。
229
小国別
(
をくにわけ
)
[
※
底本では「小国彦」
]
は
熱
(
ねつ
)
に
浮
(
う
)
かされて
囈言
(
うさごと
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
230
そして
時々
(
ときどき
)
、
231
ワツクス ワツクスと
呻
(
うめ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
232
ワツクスとは
家令
(
かれい
)
のオールスチンが
息子
(
むすこ
)
である。
233
オールスチンは
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
くよりハツと
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で、
234
俯向
(
うつむ
)
いて
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
235
小国姫
(
をくにひめ
)
は
少
(
すこ
)
しく
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし
乍
(
なが
)
ら、
236
姫
(
ひめ
)
『これ、
237
オールスチン、
238
今
(
いま
)
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
夢中
(
むちう
)
になつて「ワツクス ワツクス」と
仰有
(
おつしや
)
るのはお
前
(
まへ
)
の
悴
(
せがれ
)
の
名
(
な
)
に
違
(
ちが
)
ひない。
239
何
(
なに
)
か
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し、
240
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
の
事
(
こと
)
をして
居
(
ゐ
)
るのではあるまいか。
241
よく
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さい。
242
此
(
この
)
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
にお
尋
(
たづ
)
ねすれば
直
(
すぐ
)
分
(
わか
)
るだらうけれど、
243
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
まで
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
になるのは
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い
事
(
こと
)
だから、
244
お
前
(
まへ
)
、
245
心
(
こころ
)
に
当
(
あた
)
る
事
(
こと
)
があるなら
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず、
246
ワツクスの
事
(
こと
)
に
就
(
つ
)
いて
述
(
の
)
べて
下
(
くだ
)
さい』
247
オールス『ハイ、
248
心当
(
こころあた
)
りと
申
(
まを
)
しては
何
(
なに
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬが、
249
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
宅
(
うち
)
へ
帰
(
かへ
)
りまして
悴
(
せがれ
)
を
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ませう。
250
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
251
然
(
しか
)
らば
奥様
(
おくさま
)
、
252
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
をお
大切
(
たいせつ
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ。
253
アンブラツク
様
(
さま
)
、
254
左様
(
さやう
)
ならば
一寸
(
ちよつと
)
宅
(
たく
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
ります。
255
何卒
(
どうぞ
)
宜
(
よろ
)
しうお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
256
と
言葉
(
ことば
)
を
残
(
のこ
)
し
急
(
いそ
)
ぎ
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
257
オールスチンは
館
(
やかた
)
を
出
(
い
)
でて
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
帰
(
かへ
)
る
道
(
みち
)
すがら
幾度
(
いくたび
)
となく
吐息
(
といき
)
をつき、
258
何事
(
なにごと
)
か
心
(
こころ
)
に
当
(
あた
)
るものの
如
(
ごと
)
く
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
259
杖
(
つゑ
)
を
突
(
つ
)
きトボトボとして
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
260
田圃
(
たんぼ
)
の
稲葉
(
いなば
)
は
風
(
かぜ
)
に
煽
(
あふ
)
られてサラサラと
勇
(
いさ
)
ましく
鳴
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
261
燕
(
つばめ
)
は
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
梭
(
おさ
)
をうつ
様
(
やう
)
に
黒
(
くろ
)
い
羽根
(
はね
)
の
間
(
あひ
)
から
白
(
しろ
)
い
羽毛
(
うまう
)
を
現
(
あら
)
はし、
262
或
(
あるひ
)
は
高
(
たか
)
く
或
(
あるひ
)
は
低
(
ひく
)
く
大車輪
(
だいしやりん
)
の
活動
(
くわつどう
)
を
稲田
(
いなだ
)
の
上
(
うへ
)
にやつて
居
(
ゐ
)
る。
263
寝
(
ね
)
むたさうに
梟
(
ふくろ
)
の
声
(
こゑ
)
はホウホウと
家
(
いへ
)
の
後
(
うしろ
)
の
森林
(
しんりん
)
から
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
264
オールスチンは
秘
(
ひそ
)
かに
吾
(
わが
)
家
(
や
)
の
門口
(
かどぐち
)
に
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ると
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
人声
(
ひとごゑ
)
が
盛
(
さかん
)
に
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
265
心
(
こころ
)
にかかるオールスチンは
耳
(
みみ
)
をすませて
門
(
かど
)
の
戸
(
と
)
に
凭
(
もた
)
れ
話
(
はなし
)
の
様子
(
やうす
)
を
立聞
(
たちぎ
)
きし
居
(
ゐ
)
たりけり。
266
(
大正一二・三・一七
旧二・一
於竜宮館
北村隆光
録)
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【第16章 不臣|第56巻|真善美愛|霊界物語|/rm5616】
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