霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第四章 盗歌(とうか)〔一四三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第56巻 真善美愛 未の巻 篇:第1篇 自愛之柵 よみ(新仮名遣い):じあいのしがらみ
章:第4章 盗歌 よみ(新仮名遣い):とうか 通し章番号:1434
口述日:1923(大正12)年03月14日(旧01月27日) 口述場所:竜宮館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
白と赤の八衢の守衛たちは生死簿を調べ、ヘル、シャル、ケリナ姫もまだ現界に数十年の寿命が残っていると告げ、東に向かって進むようにと命じた。三人は言われるままに向かって行くと、一人の男と鉢合わせた。
男はケリナ姫の貧しい身なりを見るとからかいだして三人に絡んだ。その男・六造とシャルは掛け合いをやっている。すると蓑笠をかぶった五十あまりの婆がとぼとぼとやってきた。四人はその姿がどこともなく変わっているのに不審を抱き、道端の草むらに身を隠した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-06-10 18:41:38 文字数:4128 OBC :rm5604
愛善世界社版:42頁 八幡書店版:第10輯 161頁 修補版: 校定版:44頁 普及版:19頁 初版: ページ備考:
001高天原(たかあまはら)と根(ね)の国(くに)を
002中断(ちうだん)したる中有界(ちううかい)
003百(もも)のエンゼル下(くだ)り来(き)て
004伊吹戸主(いぶきどぬし)の御(お)館(やかた)に
005集(あつ)まりたまひ愛善(あいぜん)の
006徳(とく)をば教(をし)へ信真(しんしん)の
007光(ひかり)を照(てら)して精霊(せいれい)を
008皆(みな)悉(ことごと)く天界(てんかい)に
009救(すく)はむものと大神(おほかみ)の
010大御心(おほみこころ)を畏(かしこ)みて
011言葉(ことば)を尽(つく)し気(き)を配(くば)り
012諭(さと)したまへど現世(うつしよ)に
013ありたる時(とき)に諸々(もろもろ)の
014悪(あく)と虚偽(きよぎ)との罪悪(ざいあく)に
015御魂(みたま)を汚(けが)し破(やぶ)りたる
016精霊(みたま)は清(きよ)きエンゼルの
017宣(の)る言霊(ことたま)に堪(た)へきれず
018頭(かしら)は痛(いた)み胸(むね)はやけ
019耳(みみ)には針(はり)をさす如(ごと)く
020いと苦(くる)しげに自(おのづか)ら
021自由(じいう)自在(じざい)に根(ね)の国(くに)や
022底(そこ)の国(くに)へと駆(かけ)り行(ゆ)く
023ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
024宇宙(うちう)の主宰(しゆさい)と現(あ)れませる
025仁慈(じんじ)無限(むげん)の大神(おほかみ)は
026人(ひと)の精霊(みたま)は云(い)ふも更(さら)
027禽獣(きんじう)虫魚(ちうぎよ)に至(いた)るまで
028霊(れい)あるものは悉(ことごと)く
029皆(みな)天国(てんごく)へ救(すく)ひ上(あ)げ
030各団体(かくだんたい)の円満(ゑんまん)を
031はからせ給(たま)へど如何(いか)にせむ
032悪(あく)に慣(な)れたる精霊(せいれい)は
033善(ぜん)と真(しん)とを忌(い)み嫌(きら)ひ
034悪(あく)と虚偽(きよぎ)との悪魔道(あくまだう)へ
035自(みづか)ら勇(いさ)んで降(くだ)りゆく
036醜(しこ)の御魂(みたま)ぞあはれなり
037皇(すめ)大神(おほかみ)は此(この)様(さま)を
038憐(あはれ)みたまひ現世(うつしよ)に
039厳(いづ)の御魂(みたま)や瑞御魂(みづみたま)
040神(かみ)の依(よ)さしのエンゼルを
041下(くだ)したまひて霊界(れいかい)の
042奇(くし)き有様(ありさま)悉(ことごと)く
043完全(うまら)に委曲(つばら)に説(と)き諭(さと)し
044示(しめ)させたまへど現世(うつしよ)の
045自愛(じあい)の欲(よく)に囚(とら)はれて
046眼(まなこ)をふさぎ耳(みみ)を閉(と)ぢ
047神(かみ)の光(ひかり)を背(せな)にして
048皆(みな)散(ち)り散(ぢ)りに逃(に)げて行(ゆ)く
049醜(しこ)の御魂(みたま)ぞ憐(あは)れなり
050神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
051善(ぜん)と悪(あく)との報(むく)ひをば
052いと審(つばらか)に説(と)き諭(さと)し
053罪(つみ)をば宥(ゆる)し救(たす)けむと
054心(こころ)を千々(ちぢ)に砕(くだ)きつつ
055血(ち)を吐(は)く思(おも)ひの杜鵑(ほととぎす)
056八千八(はつせんや)度(たび)の声(こゑ)枯(か)れて
057竜宮館(りうぐうやかた)の渡船場(わたしば)に
058立(た)たせたまふぞ畏(かしこ)けれ
059ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
060御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ。
061 白赤(しろあか)の守衛(しゆゑい)は、062ヘル、063シャル、064ケリナ姫(ひめ)の生死簿(せいしぼ)を調(しら)べ、065未(ま)だ何(いづ)れも数十(すうじふ)年(ねん)現界(げんかい)に寿命(じゆみやう)の残(のこ)つて居(ゐ)ることを三(さん)人(にん)に宣(の)り聞(き)かせ、066一(いち)時(じ)も早(はや)く此処(ここ)を立(た)ち去(さ)り東(ひがし)に向(むか)つて進(すす)めよと命(めい)じた。067三(さん)人(にん)は夢(ゆめ)か現(うつつ)か、068現界(げんかい)か、069幽界(いうかい)か、070少(すこ)しも合点(がてん)ゆかず暗中(あんちう)摸索(もさく)の体(てい)にて、071守衛(しゆゑい)が云(い)ふままに踵(きびす)をかへし、072東(ひがし)を指(さ)してトボトボと進(すす)み行(い)く。
073ケリナ『細(ほそ)き煙(けぶり)も絶(た)え絶(だ)えの
074光(ひかり)の影(かげ)を後(あと)にして
075恋(こひ)しき夫(つま)を尋(たづ)ねむと
076草(くさ)の枢(とぼそ)を引(ひ)き立(た)てて
077エルシナ河(がは)の辺(ほとり)まで
078進(すす)み来(きた)れる折(をり)もあれ
079傾(かたむ)く峰(みね)の月影(つきかげ)は
080妾(わらは)が姿(すがた)を見下(みおろ)して
081諸行(しよぎやう)無常(むじやう)と慄(ふる)ひ居(を)る
082ああ懐(なつか)しや懐(なつか)しや
083恋(こひ)しき人(ひと)の後(あと)追(お)ふて
084荒野(あらの)ケ原(はら)を打(う)ち渡(わた)り
085露(つゆ)に体(からだ)を霑(うるほ)して
086涙(なみだ)を絞(しぼ)る悲(かな)しさよ
087濡(ぬ)るるも花(はな)の下影(したかげ)に
088宿(やど)らむものと立(た)ち寄(よ)れば
089傾(かたむ)く月(つき)は夜(よ)を残(のこ)し
090仰(あふ)げば高(たか)し天(あま)の河(かは)
091空(そら)には雁(かり)の声(こゑ)すれど
092尋(たづ)ぬる人(ひと)の便(たよ)りをば
093聞知(ききし)るよしもないぢやくり
094ああ如何(いか)にせむ千秋(せんしう)の
095恨(うらみ)を呑(の)んで遠近(をちこち)と
096彷徨(さまよ)ひ来(きた)りエルシナの
097谷川(たにがは)目蒐(めが)けて身(み)を投(とう)じ
098寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)となりしよと
099思(おも)ふまもなくヘル、シヤール
100二人(ふたり)の男(をとこ)に助(たす)けられ
101又(また)も浮世(うきよ)の荒風(あらかぜ)に
102当(あた)りて心(こころ)を砕(くだ)く折(をり)
103泥坊頭(どろばうがしら)のベルさまが
104無体(むたい)の恋慕(れんぼ)を吹(ふ)きかける
105ヘルとシヤールの両人(りやうにん)を
106向(むか)ふにまはしケリナをば
107互(たがひ)に妻(つま)に娶(めと)らむと
108鎬(しのぎ)を削(けづ)る果敢(はか)なさよ
109妾(わらは)は驚(おどろ)き森林(しんりん)の
110パインの梢(こずゑ)にかけ登(のぼ)り
111難(なん)を避(さ)け居(ゐ)る時(とき)もあれ
112闇(やみ)をつらぬく水(みづ)の音(おと)
113忽(たちま)ち三人(みたり)の黒影(くろかげ)は
114エルシナ河(がは)の深淵(しんえん)に
115落(お)ちたるものか憐(あは)れやと
116窺(うかが)ふ途端(とたん)に踏(ふ)み外(はづ)し
117ケリナも共(とも)に深淵(しんえん)に
118落(お)ち込(こ)みたりと思(おも)ひきや
119いつの間(ま)にかは知(し)らねども
120草花(くさばな)茂(しげ)る田圃道(たんぼみち)
121彷徨(さまよ)ひ来(きた)りし訝(いぶか)しさ
122思(おも)ふに此地(ここ)は霊界(れいかい)か
123探(たづ)ねあぐみし背(せ)の君(きみ)の
124鎌彦(かまひこ)さまに廻(めぐ)り会(あ)ひ
125過(すぎ)し昔(むかし)の物語(ものがたり)
126聞(き)いて驚(おどろ)く吾(わが)心(こころ)
127恋(こひ)しき人(ひと)は兄(あに)の仇(あだ)
128如何(いか)なる因果(いんぐわ)の廻(めぐ)り来(き)て
129斯(かく)も不思議(ふしぎ)な運命(うんめい)の
130綱(つな)に繋(つな)がれ居(ゐ)たりしぞ
131これも現世(げんせ)の宿業(しゆくごふ)が
132廻(めぐ)り廻(めぐ)りて吾(われ)の身(み)に
133来(きた)りしものか情(なさ)けなや
134兄(あに)のベルジーを殺(ころ)したる
135夫(つま)と恃(たの)みし鎌彦(かまひこ)は
136又(また)もやベルに殺(ころ)されて
137ライオン河(がは)の泡(あわ)となり
138消(き)えて後(あと)なく霊界(れいかい)の
139巷(ちまた)に迷(まよ)ふ憐(あはれ)さよ
140ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
141御魂(みたま)の恩頼(ふゆ)を賜(たまは)りて
142中有界(ちううかい)に迷(まよ)ひたる
143吾(われ)等(ら)の御魂(みたま)を速(すみやか)に
144神(かみ)の御国(みくに)へ救(すく)へかし
145朝日(あさひ)も照(て)らず月(つき)もなく
146星(ほし)さへ見(み)えぬこの道(みち)に
147咲(さ)き誇(ほこ)りたる百(もも)の花(はな)
148香(かを)りはあまりなけれども
149艶(えん)を競(きそ)ふて並(なら)び居(ゐ)る
150草木(くさき)の花(はな)に至(いた)るまで
151常世(とこよ)の春(はる)を楽(たの)しみて
152歓(ゑら)ぎ遊(あそ)べる世(よ)の中(なか)に
153吾(われ)等(ら)三人(みたり)は何(なん)として
154花(はな)も実(み)もなき霊界(れいかい)の
155心(こころ)淋(さび)しき此(この)旅路(たびぢ)
156憐(あはれ)みたまへ天津(あまつ)神(かみ)
157国津(くにつ)神(かみ)達(たち)八百万(やほよろづ)
158神(かみ)の使(つかひ)の御(おん)前(まへ)に
159謹(つつし)み敬(うやま)ひ願(ね)ぎまつる
160謹(つつし)み畏(かしこ)み願(ね)ぎまつる』
161と歌(うた)ひ乍(なが)ら進(すす)み行(ゆ)く。162一人(ひとり)の泥酔(よひどれ)男(をとこ)頬被(ほほかぶ)りを深(ふか)く被(かぶ)り乍(なが)ら、163淋(さび)しさうな筒袖(つつそで)で、164労働姿(らうどうすがた)の儘(まま)やつて来(き)た。165三人(みたり)は道(みち)の傍(かたへ)の木影(こかげ)に立(た)ち留(どま)り其(その)男(をとこ)を目送(もくそう)して居(ゐ)る。166余(あま)り広(ひろ)からぬ道(みち)を、167右(みぎ)によろよろ左(ひだり)によろよろと足許(あしもと)危(あやふ)く、
 
168男(をとこ)(六造)『晴(は)れを待(ま)つ宵(よひ)、169曇(くも)るも憎(にく)や
170 曇(くも)りまつよに、171晴(は)れる月(つき)
172 恋(こひ)は誰(た)が(五位(ごゐ)、173鷹(たか))
174 教(をし)(鴛鴦(をし))へつるかも仮(かり)初(そめ)に(鶴(つる)、175鴨(かも)、176雁(かり))
177 ほのみし影(かげ)の身(み)にしみて憂(う)き(家鶏(かけ)、178鵜(う))
179 やつこらしよ、180やつこらしよ……ぢや』
 
181と唄(うた)ひ乍(なが)ら三(さん)人(にん)にドンと突(つ)き当(あた)り、
182男(をとこ)(六造)『ドド誰奴(どやつ)だい、183往来(わうらい)の妨(さまた)げをしやがつて些(ちつと)済(す)まぬぢやないか。184見(み)れば男(をとこ)が二人(ふたり)に女(をんな)が一匹(いつぴき)、185ヘン馬鹿(ばか)にしてけつかるわい。186一寸(ちよつと)見(み)た所(ところ)では綺麗(きれい)な女(をんな)だが、187その衣類(きもの)は何(なん)だい。188まるきり古家(ふるいへ)の障子(しやうじ)見(み)たやうに窓(まど)が明(あ)きさらして肌(はだ)が見(み)えて居(を)るぢやないか。189えらい、190虱(しらみ)だ。191何(なん)だ美人(びじん)かと思(おも)へば虱(しらみ)太夫(だいう)さまか、192ペツペツペツ、193ああ汚(きたな)い、194臭(くさ)い臭(くさ)い』
195と鼻(はな)を撮(つま)む。
196ヘル『こりや、197どこの誰奴(どやつ)か知(し)らないが、198俺(おれ)の奥(おく)さまを捉(つかま)へて何(なん)といふ暴言(ばうげん)を吐(は)くのだ、199もう承知(しようち)はしないぞ』
200男(をとこ)(六造)『アハハハハ。201乞食(こじき)女(をんな)を奥(おく)さまだなんて好(い)いデレ助(すけ)だなア、202ハハー、203こんな虱(しらみ)太夫(だいう)でも後(あと)を慕(した)つて来(く)る男(をとこ)が〆(しめ)て二人(ふたり)もあるかと思(おも)へば世(よ)の中(なか)は不思議(ふしぎ)のものだなア。204オイ阿魔女(あまつちよ)お前(まへ)の名(な)は何(なん)と云(い)ふのだ。205虱(しらみ)のお宿(やど)さま、206名(な)を云(い)ふのが恥(はづ)かしいのか、207ペツペツペツ』
208ヘル『こりや、209何所(どこ)の奴(やつ)か知(し)らぬが一寸(ちよつと)待(ま)て、210貴様(きさま)は一体(いつたい)此処(ここ)を何処(どこ)と心得(こころえ)て居(ゐ)るか』
211男(をとこ)(六造)『ヘン、212何処(どこ)も彼所(かしこ)もあるものかい、213此処(ここ)はフサの国(くに)テルモン山(ざん)の麓(ふもと)の高野(たかの)ケ原(はら)だ。214俺(おれ)の女房(にようばう)がこの先(さき)の村(むら)に待(ま)つて居(ゐ)るのだ。215これから帰(かへ)るのだよ。216夫(それ)は夫(それ)は別嬪(べつぴん)だぞ』
217ヘル『これや、218惚(のろ)けやがるない、219貴様(きさま)は此処(ここ)を高野(たかの)ケ原(はら)と思(おも)つて居(ゐ)るか知(し)らぬが此処(ここ)は冥土(めいど)の八衢(やちまた)だ。220些(ちつと)確(しつか)りせぬかい、221そして此処(ここ)に現(あら)はれた女(をんな)の方(かた)は俺(おれ)の女房(にようばう)とは佯(いつは)り、222実(じつ)の所(ところ)は三十三(さんじふさん)相(さう)に身(み)を変(へん)じ遊(あそ)ばす観自在天(くわんじざいてん)様(さま)だぞ』
223男(をとこ)(六造)『ハハハハハ、224何(なに)を吐(ぬか)しやがるのだい。225観(くわん)自在天(じざいてん)とはよく洒落(しやれ)たものだ。226このナイスの体(からだ)には、227胡麻(ごま)を撒(ふ)りかけた如(ごと)く観音(くわんのん)様(さま)が御(ご)出現(しゆつげん)だからな、228ウフフフフ
229噛(か)みつかば許(ゆる)しはするなよただ捻(ひね)れ
230布子(ぬのこ)の裏(うら)にわたがみはなし
231梅桜(うめさくら)摺縫箔(すりぬひはく)の古小袖(ふるこそで)
232花見(はなみ)虱(しらみ)の飛(と)び散(ち)りにけり
233汗水(あせみづ)になりて世渡(よわた)る人(ひと)の身(み)の
234夏(なつ)の虱(しらみ)は浮(うき)つ沈(しづ)みつ
235か、236ウントコシヨ、237ウントコシヨ、238か。
239引(ひ)きかつぎ帷布(かたびら)ごしに空(そら)見(み)れば
240雲井(くもゐ)を走(はし)る月(つき)の夜虱(よじらみ)
241冬籠(ふゆごもり)布子(ぬのこ)の綿(わた)に住(す)む虱(しらみ)
242雪(ゆき)の如(ごと)くに白(しら)けてぞ臥(ふ)す』
243ヘル『アハハハハ。244こりや虱(しらみ)太夫(たいう)、245ソロリソロリと新左衛門(しんざゑもん)坊主(ばうず)の云(い)ふやうな事(こと)を吐(こ)くぢやないか、246貴様(きさま)は余(よ)つ程(ほど)虱(しらみ)博士(はかせ)と見(み)えるな』
247男(をとこ)(六造)『定(きま)つた事(こと)だ。248俺(おれ)こそ虱(しらみ)のお庄屋(しやうや)さまだ。249これ見(み)ろ、250こんな浅黄(あさぎ)の筒袖(つつそで)を着(き)て居(ゐ)るから貴様(きさま)の目(め)には分(わか)るまいが、251俺(おれ)の着物(きもの)は六道(ろくだう)の辻(つじ)だ。252沢山(たくさん)の虱(しらみ)がウヨウヨと右往(うわう)左往(さわう)に活動(くわつどう)して居(ゐ)るのぢや。253俺(おれ)の名(な)も六造(ろくざう)なり合(あ)ふたり叶(かな)ふたりだ。254一層(いつそ)の事(こと)その虱(しらみ)ナイスと此処(ここ)で一(ひと)つ観音較(くわんのんくら)べをして夫婦(ふうふ)になる訳(わけ)にはゆくまいかなア』
255ヘル『こりや、256貴様(きさま)は今(いま)この先(さき)に美(うつく)しい女房(にようばう)が待(ま)つて居(ゐ)ると言(い)つたぢやないか、257夫(それ)にも関(かかは)らず、258このナイスと結婚(けつこん)すれば重婚(ぢうこん)の罪(つみ)で八衢(やちまた)の関所(せきしよ)で厳罰(げんばつ)に処(しよ)せられるのを知(し)らぬのか。259貴様(きさま)は気(き)の多(おほ)い、260箸豆(はしまめ)人足(にんそく)と見(み)えるわい』
261六造(ろくざう)『実(じつ)の所(ところ)はまだ女房(にようばう)が無(な)いのだ。262俺(おれ)の方(はう)から女房(にようばう)と定(き)めて居(ゐ)るだけで、263先方(せんぱう)の意志(いし)はテンと分(わか)らぬのだ。264今日(けふ)で三(さん)年(ねん)計(ばか)り顔(かほ)を見(み)に通(かよ)つて居(ゐ)るのだが、265まだ一口(ひとくち)も心(こころ)の思(おも)ひを先方(せんぱう)に響(ひび)かした事(こと)はないのだ。266つまり予定(よてい)の女房(にようばう)だからなア』
267ヘル『アハハハハ。268大方(おほかた)其(その)辺(へん)のことだと思(おも)ふて居(ゐ)たのだ。269貴様(きさま)のスタイルで猫(ねこ)だつて女房(にようばう)になる奴(やつ)があるかい、270虱(しらみ)に体(からだ)を舐(ねぶ)らして置(お)く位(くらゐ)が性(しやう)に合(あ)つて居(ゐ)るわい。271も少(すこ)し先(さき)に行(ゆ)くと六道(ろくだう)の辻(つじ)だから、272虱(しらみ)でも提出(ていしゆつ)して地獄行(ぢごくゆき)の冥罰(めいばつ)を助(たす)かつたらよからう、273虱(しらみ)は観世音(くわんぜおん)菩薩(ぼさつ)だからのう』
274六(ろく)『碌(ろく)でもない事(こと)を云(い)ふない。275八衢(やちまた)だとか六道(ろくだう)の辻(つじ)だとか、276何(なに)を呆(とぼけ)て居(ゐ)るのだ。277此処(ここ)は現界(げんかい)だ。278貴様(きさま)は大方(おほかた)夢(ゆめ)でも見(み)て居(ゐ)るのだらう。279虱(しらみ)のやうなものは俺(おれ)も実(じつ)は好(す)かないのだけれど、280何分(なにぶん)洗濯(せんたく)して呉(く)れる女房(にようばう)もなし、281噛(か)んだり捻(ひね)つたり縁側(えんがは)に拡(ひろ)げて徳利(とくり)を転(ころ)がしたりして征伐(せいばつ)しても仲々(なかなか)絶(た)え切(き)らぬものだ。282六道(ろくだう)の辻(つじ)と云(い)へば地獄(ぢごく)、283餓鬼(がき)、284畜生(ちくしやう)、285修羅(しゆら)、286人間(にんげん)、287天上(てんじやう)、288と云(い)ふ事(こと)だが夫(そ)れについて面白(おもしろ)い虱(しらみ)の歌(うた)がある、289一(ひと)つ聞(き)かしてやらうか』
290ヘル『ウン、291承(うけたま)はらう、292どうで碌(ろく)な歌(うた)ぢやあるまいが、293併(しか)し乞食(こじき)の門付(かどつ)けを聞(き)くと思(おも)つてお耳(みみ)を借(か)してやらう、294古汚(ふるきたな)い虱(しらみ)のわくやうな歌(うた)なら御免(ごめん)だぞ』
295六(ろく)『どうせ虱(しらみ)のわく着物(きもの)は古(ふる)いに定(きま)つて居(ゐ)るわ、296黴(かび)の生(は)へた頭(あたま)から捻(ひね)り出(だ)した歌(うた)でなくては虱(しらみ)に対(たい)する名歌(めいか)が出来(でき)るものでない、297野暮(やぼ)の事(こと)を云(い)ふな。298サアこれから地獄(ぢごく)の虱(しらみ)だ。
 
299   地獄(ぢごく)
300捻(ひね)る楽(らく)潰(つぶ)す極楽(ごくらく)火(ひ)は浄土(じやうど)
301水(みづ)に入(い)るこそ地獄(ぢごく)なりけり
302   餓鬼(がき)
303脱(ぬ)ぎ捨(す)てて竿(さを)にかけたる古布子(ふるぬのこ)
304餓鬼(がき)の如(ごと)くに痩虱(やせじらみ)かな
305   畜生(ちくしやう)
306人(ひと)を喰(く)ふ事(こと)より外(ほか)はいざ虱(しらみ)
307生畜生(いきちくしやう)の果(はて)と云(い)ふべき
308   修羅(しゆら)
309血交(ちまじ)りに殺(ころ)し捨(す)てたる虱(しらみ)こそ
310さながら修羅(しゆら)の衢(ちまた)なりけり
311   人間(にんげん)
312帷布(かたびら)の縫目(ぬひめ)に宿(やど)る虱(しらみ)こそ
313人(ひと)と同(おな)じく立(た)ちてゆくなり
314   天上(てんじやう)
315五月雨(さみだれ)や竜(たつ)の鱗(うろこ)にわく虱(しらみ)
316つれてもろ共(とも)天(てん)に登(のぼ)れり
317かくれ住(す)む肌(はだ)の守(まもり)の虱(しらみ)こそ
318生(い)きた観音(くわんのん)菩薩(ぼさつ)なりけり』[※虱に関する一連の狂歌についてはオニペディアの「虱の歌」参照]
319シャル『アハハハハ。320十八(じふはち)世紀(せいき)のお茶坊主(ちやばうず)が吐(ほざ)いた歌(うた)ぢやないか、321貴様(きさま)の作(つく)つたのぢやあるまい』
322六造(ろくざう)『誰(たれ)が作(つく)つても同(おな)じ事(こと)ぢや、323現在(げんざい)俺(おれ)の口(くち)から出(で)たのぢやないか、324他人(ひと)のものなら他人(ひと)の口(くち)から出(で)る、325俺(おれ)の作(つく)つた証拠(しようこ)には俺(おれ)の声(こゑ)をもつて俺(おれ)の口(くち)から貴様(きさま)に伝(つた)へてやつたぢやないか、326ゴテゴテ云(い)ふない』
327シャル『他人(ひと)の歌(うた)を盗(ぬす)む奴(やつ)は、328八衢(やちまた)の関所(せきしよ)で調(しら)べられたら矢張(やつぱり)咎(とがめ)られて咎人(とがにん)になるぞよ、329歌(うた)を盗(ぬす)む奴(やつ)を盗歌人(とがにん)といふのだぞ、330ウフフフフ』
331 斯(か)かる所(ところ)へ蓑笠(みのかさ)を被(かぶ)つた五十余(ごじふあまり)の一人(ひとり)の婆(ばば)アが、332金剛杖(こんがうづゑ)をつき、333何(なに)か小声(こごゑ)に歌(うた)ひながら、334トボトボと進(すす)み来(く)る。335四(よ)人(にん)は其(その)姿(すがた)の何処(どこ)ともなく変(かは)つて居(ゐ)るのに不審(ふしん)を抱(いだ)き、336つくづくと眺(なが)めて居(ゐ)た。337婆(ばば)は何(なに)か急用(きふよう)でもあるやうに頻(しき)りに足許(あしもと)を急(いそ)いで居(ゐ)る。338四(よ)人(にん)は何(なん)と思(おも)ふたか道端(みちばた)の背丈(せたけ)の延(の)びた雑草(ざつさう)の中(なか)に身(み)を隠(かく)した。
339(大正一二・三・一四 旧一・二七 於竜宮館二階 加藤明子録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→