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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第69巻(申の巻)
巻頭言
第1篇 清風涼雨
第1章 大評定
第2章 老断
第3章 喬育
第4章 国の光
第5章 性明
第6章 背水会
第2篇 愛国の至情
第7章 聖子
第8章 春乃愛
第9章 迎酒
第10章 宣両
第11章 気転使
第12章 悪原眠衆
第3篇 神柱国礎
第13章 国別
第14章 暗枕
第15章 四天王
第16章 波動
第4篇 新政復興
第17章 琴玉
第18章 老狽
第19章 老水
第20章 声援
第21章 貴遇
第22章 有終
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第69巻(申の巻)
> 第1篇 清風涼雨 > 第4章 国の光
<<< 喬育
(B)
(N)
性明 >>>
第四章
国
(
くに
)
の
光
(
ひかり
)
〔一七四九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
篇:
第1篇 清風涼雨
よみ(新仮名遣い):
せいふうりょうう
章:
第4章 国の光
よみ(新仮名遣い):
くにのひかり
通し章番号:
1749
口述日:
1924(大正13)年01月19日(旧12月14日)
口述場所:
伊予 道後ホテル
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1927(昭和2)年10月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
珍の都にも、貧しい人々がかなり出てくるようになり、松若彦以下の施政方針に対して、いたるところに不平不満が勃発してきています。
人力車の帳場に、三人の車夫が、政治談義にふけっています。
国公:上流階級の出だが、わけあって車夫になっているようです。
愛公:社会改造のために地位を捨て、民情を研究し、上下揃え升掛けひきならす活動をしようと目論んでいます。
浅公:現在の不公平な施政に不満を持つ車夫。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
国公(国照別)、愛公(国愛別)
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-09-11 14:58:25
OBC :
rm6904
愛善世界社版:
71頁
八幡書店版:
第12輯 297頁
修補版:
校定版:
73頁
普及版:
66頁
初版:
ページ備考:
001
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
大都会
(
だいとくわい
)
にも、
002
世
(
よ
)
の
変遷
(
へんせん
)
につれて
立
(
た
)
チン
坊
(
ばう
)
や
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
が、
003
場末
(
ばすゑ
)
の
方
(
はう
)
には、
004
可
(
か
)
なり
沢山
(
たくさん
)
に
出来
(
でき
)
た。
005
そして
国依別
(
くによりわけ
)
の
国司
(
こくし
)
に
対
(
たい
)
しては
余
(
あま
)
り
怨嗟
(
ゑんさ
)
の
声
(
こゑ
)
も
放
(
はな
)
たなかつたが、
006
松若彦
(
まつわかひこ
)
以下
(
いか
)
の
施政
(
しせい
)
方針
(
はうしん
)
については、
007
至
(
いた
)
る
所
(
ところ
)
に
不平
(
ふへい
)
の
声
(
こゑ
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
し、
008
何時
(
いつ
)
不祥
(
ふしやう
)
事件
(
じけん
)
が
突発
(
とつぱつ
)
するかも
分
(
わか
)
らないやうになつて
来
(
き
)
た。
009
人力車
(
くるま
)
の
帳場
(
ちやうば
)
に
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
輓
(
ひ
)
き
子
(
こ
)
があぐら
座
(
ざ
)
になつて、
010
配達
(
はいたつ
)
して
来
(
く
)
る
新聞紙
(
しんぶんし
)
を
読
(
よ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
011
捩鉢巻
(
ねじはちまき
)
した
儘
(
まま
)
政治談
(
せいぢだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
012
甲
(
かふ
)
『オイ
愛州
(
あいしう
)
、
013
つまらぬぢやないか、
014
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
、
015
額
(
ひたひ
)
に
汗
(
あせ
)
をし
埃
(
ほこり
)
まぶれになつて、
016
ゼントルメンとかいふ
奴
(
やつ
)
の
馬
(
うま
)
となり、
017
重
(
おも
)
たいゴム
輪
(
わ
)
をひいて
送
(
おく
)
つてやつた
所
(
ところ
)
で、
018
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
とも
吐
(
ぬ
)
かさず、
019
お
札
(
ふだ
)
さまを
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
程
(
ほど
)
与
(
あた
)
へられ、
020
ヘイヘイハイハイと
米
(
こめ
)
つきバツタ
宜
(
よろ
)
しくといふ
体裁
(
ていさい
)
で
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
つてゐるのだが、
021
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
平等愛
(
べうどうあい
)
の
神
(
かみ
)
が
厶
(
ござ
)
るとすれば、
022
なぜ
何時
(
いつ
)
までも、
023
こんなみじめな
生涯
(
しやうがい
)
に
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
見
(
み
)
すてておくのだらうか、
024
本当
(
ほんたう
)
に
合点
(
がつてん
)
がゆかぬ』
025
愛
(
あい
)
『オイ
浅
(
あさ
)
、
026
今日
(
けふ
)
も
亦
(
また
)
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くのか、
027
チツとしつかりせい。
028
車輓
(
くるまひき
)
だつて、
029
さう
悲観
(
ひくわん
)
したものだない。
030
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
国司
(
こくし
)
だつて、
031
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は、
032
バラモン
教
(
けう
)
の
巡礼
(
じゆんれい
)
にもなり、
033
人
(
ひと
)
の
門
(
かど
)
に
立
(
た
)
つて
乞食
(
こじき
)
もなさつたといふ
事
(
こと
)
だ。
034
車夫
(
しやふ
)
だつて
時
(
とき
)
が
来
(
く
)
れば、
035
どんな
出世
(
しゆつせ
)
が
出来
(
でき
)
よまいものでもないワ。
036
なア
国公
(
くにこう
)
、
037
お
前
(
まへ
)
何
(
ど
)
う
思
(
おも
)
ふか』
038
国
(
くに
)
『ウン、
039
そらさうだ。
040
余
(
あま
)
り
苦
(
く
)
にする
必要
(
ひつえう
)
もあるまい。
041
己
(
おれ
)
がたつた
今
(
いま
)
、
042
アルゼンチンの
大統領
(
だいとうりやう
)
となつてお
前
(
まへ
)
たちを
救
(
すく
)
ふてやるから
楽
(
たのし
)
んで
待
(
ま
)
つてゐるが
宜
(
よ
)
いワ。
043
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
国
(
くに
)
さまは
国
(
くに
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
……ヲツトドツコイ
国
(
くに
)
の
柱
(
はしら
)
だからなア』
044
浅
(
あさ
)
『ヘン、
045
偉
(
えら
)
さうに
云
(
い
)
ふない、
046
蛇
(
じや
)
は
寸
(
すん
)
にして
人
(
ひと
)
を
呑
(
の
)
む、
047
栴檀
(
せんだん
)
は
二葉
(
ふたば
)
より
芳
(
かん
)
ばしいといふぢやないか、
048
お
前
(
まへ
)
のやうな
青瓢箪
(
あをべうたん
)
の
蒲柳性
(
ほりうせい
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
持
(
も
)
つてゐて、
049
何
(
ど
)
うしてそんな
大
(
だい
)
それた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
やうかい、
050
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
くも
程
(
ほど
)
があるワイ』
051
国
(
くに
)
『マア
見
(
み
)
ておれ、
052
新政党
(
しんせいたう
)
でも
組織
(
そしき
)
して
衆生
(
しゆじやう
)
を
教導
(
けうだう
)
し、
053
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢうらい
)
、
054
タコマ
山
(
やま
)
の
風雲
(
ふううん
)
をまき
起
(
おこ
)
し、
055
一挙
(
いつきよ
)
にして
天教
(
てんけう
)
地教
(
ちけう
)
の
山
(
やま
)
を
踏
(
ふ
)
み
砕
(
くだ
)
き、
056
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
を
建設
(
けんせつ
)
してみせる。
057
俺
(
おれ
)
は
天下
(
てんか
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だからなア。
058
汝
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
に
与力
(
よりき
)
同心
(
どうしん
)
が
恐
(
おそろ
)
しうて、
059
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
地震
(
ぢしん
)
のやうにビリビリ
慄
(
ふる
)
つてゐるやうな
天
(
あま
)
ん
若
(
じやく
)
は
例外
(
れいぐわい
)
だが、
060
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は、
061
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
としての
成案
(
せいあん
)
が
十二分
(
じふにぶん
)
にあるのだ』
062
浅
(
あさ
)
『ヘン、
063
誰
(
たれ
)
が
慄
(
ふる
)
うてゐるか、
064
国
(
くに
)
、
065
汝
(
きさま
)
こそ
陰弁慶
(
かげべんけい
)
の
外
(
そと
)
すぼり、
066
朝寒
(
あさざむ
)
にボロ
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
で
慄
(
ふる
)
ひ
通
(
とほ
)
してゐるだないか。
067
余
(
あま
)
り
振
(
ふる
)
つた
事
(
こと
)
をいふと、
068
車夫
(
しやふ
)
仲間
(
なかま
)
から
除名
(
ぢよめい
)
するぞ、
069
アン』
070
国
(
くに
)
『ハヽヽヽ、
071
慄
(
ふる
)
ふのは
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
流行物
(
りうかうぶつ
)
だ。
072
不断
(
ふだん
)
的
(
てき
)
の
大地
(
だいち
)
の
震動
(
しんどう
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なりだが、
073
先
(
ま
)
づ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
人間
(
にんげん
)
共
(
ども
)
の
行
(
や
)
る
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へてみよ。
074
皆
(
みな
)
慄
(
ふる
)
うてるだないか。
075
汝
(
きさま
)
が
女房
(
にようばう
)
を
貰
(
もら
)
ふた
時
(
とき
)
にも
三々
(
さんさん
)
九度
(
くど
)
を
行
(
や
)
つただらう。
076
其
(
その
)
時
(
とき
)
には
手
(
て
)
が
慄
(
ふる
)
ひ
胴体
(
どうたい
)
迄
(
まで
)
慄
(
ふる
)
うたといふだないか。
077
始
(
はじ
)
めての
泥棒
(
どろばう
)
に、
078
近所
(
きんじよ
)
の
火事
(
くわじ
)
、
079
遺書
(
かきおき
)
の
文句
(
もんく
)
、
080
女房
(
にようばう
)
から
貰
(
もら
)
うた
三行半
(
みくだりはん
)
をよむ
時
(
とき
)
、
081
始
(
はじ
)
めての
大道
(
だいだう
)
演説
(
えんぜつ
)
、
082
葱
(
ねぶか
)
の
義太夫
(
ぎだいう
)
に
出歯
(
でば
)
包丁
(
ばうちやう
)
の
小包
(
こづつみ
)
を
貰
(
もら
)
うた
時
(
とき
)
、
083
取締
(
とりしまり
)
に
一喝
(
いつかつ
)
された
時
(
とき
)
、
084
咬
(
か
)
んだ
唇
(
くちびる
)
、
085
弱虫
(
よわむし
)
の
夜道
(
よみち
)
、
086
死刑
(
しけい
)
の
宣告
(
せんこく
)
、
087
まあザツとこんなものだ、
088
皆
(
みな
)
ふるつてゐるだらう。
089
慄
(
ふる
)
ふのが
今日
(
こんにち
)
の
世態
(
せたい
)
だ。
090
普選
(
ふせん
)
即行
(
そくかう
)
だと
云
(
い
)
つて、
091
衆生
(
しゆじやう
)
が
一致
(
いつち
)
団結
(
だんけつ
)
、
092
城下
(
じやうか
)
に
迫
(
せま
)
るや
否
(
いな
)
や、
093
元老
(
げんらう
)
の
自由
(
じいう
)
とか
言論
(
げんろん
)
の
自由
(
じいう
)
とかが、
094
圧迫
(
あつぱく
)
するとか、
095
圧迫
(
あつぱく
)
されたとか
云
(
い
)
つてふるひ
落
(
おと
)
されるだないか。
096
清遊会
(
せいいうくわい
)
でさへも
分裂
(
ぶんれつ
)
して
新党
(
しんたう
)
を
樹
(
た
)
て、
097
悪玉
(
あくだま
)
をふるひおとしてゐるだないか。
098
まだもふるふてゐるのは、
099
古手
(
ふるて
)
親爺
(
おやぢ
)
の
跋扈
(
ばつこ
)
跳梁
(
てうりやう
)
だ。
100
車夫
(
しやふ
)
だつて、
101
古
(
ふるく
)
なりや
車
(
くるま
)
もロクに
輓
(
ひ
)
けやしないぞ。
102
車夫
(
しやふ
)
組合
(
くみあひ
)
でも
作
(
つく
)
つて、
103
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
のやうな
老齢
(
らうれい
)
職
(
しよく
)
にたへざる
者
(
もの
)
は
振
(
ふる
)
ひおとす
考
(
かんが
)
へだ、
104
イツヒヽヽヽヽ』
105
浅
(
あさ
)
『オイ
愛公
(
あいこう
)
、
106
汝
(
きさま
)
も
一
(
ひと
)
つ
加勢
(
かせい
)
してくれ、
107
国公
(
くにこう
)
は
其
(
その
)
筋
(
すぢ
)
の
犬
(
いぬ
)
かも
知
(
し
)
れないよ。
108
どうみても
乗馬面
(
じやうめづら
)
をしてゐるだないか。
109
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
奴
(
やつ
)
、
110
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
怖
(
おそ
)
ろしくなつたものだから、
111
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
仲間
(
なかま
)
の
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へようと
思
(
おも
)
つて
国公
(
くにこう
)
をよこしよつたのかも
知
(
し
)
れぬ。
112
此奴
(
こいつ
)
、
113
車夫
(
しやふ
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
銭使
(
ぜにつか
)
ひがあらい。
114
そしていつも
帳場
(
ちやうば
)
に
座
(
すわ
)
つて、
115
足
(
あし
)
が
痛
(
いた
)
いの
腰
(
こし
)
が
痛
(
いた
)
いのと
吐
(
ぬ
)
かして、
116
一度
(
いちど
)
も
客
(
きやく
)
を
乗
(
の
)
せた
事
(
こと
)
はないぢやないか。
117
うつかりしてると
足許
(
あしもと
)
から
鳥
(
とり
)
が
立
(
た
)
つやうな
目
(
め
)
に
合
(
あは
)
されるかも
知
(
し
)
れぬぞ。
118
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
下層
(
かそう
)
社会
(
しやくわい
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
探
(
さぐ
)
つてる
奴
(
やつ
)
だから、
119
どうだ
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
殺
(
たた
)
んで
了
(
しま
)
はふだないか、
120
エヽーー』
121
愛
(
あい
)
『オイ
浅
(
あさ
)
、
122
汝
(
きさま
)
は
国公
(
くにこう
)
を
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
普通
(
ふつう
)
の
車夫
(
しやふ
)
と
思
(
おも
)
つてゐたのか、
123
エヽトンマだな。
124
そんなウス
野呂
(
のろ
)
では
車夫
(
しやふ
)
だつて
勤
(
つと
)
まりやしないぞ。
125
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
有様
(
ありさま
)
を
考
(
かんが
)
へてみろ、
126
宣伝使
(
せんでんし
)
や
比丘
(
びく
)
の
連中
(
れんちう
)
はいかめしく
法衣
(
ほふい
)
をまとつて
淫事
(
いんじ
)
に
耽
(
ふけ
)
り、
127
神仏
(
しんぶつ
)
を
悪用
(
あくよう
)
して
正直
(
しやうぢき
)
な
人間
(
にんげん
)
をだまし、
128
武士
(
さむらい
)
は
銭
(
ぜに
)
を
愛
(
あい
)
し
129
暫消
(
ざんせう
)
の
力
(
ちから
)
を
悪用
(
あくよう
)
して
衆生
(
しゆじやう
)
を
圧迫
(
あつぱく
)
し、
130
黄金力
(
わうごんりよく
)
を
濫用
(
らんよう
)
してトラストを
作
(
つく
)
り、
131
利権
(
りけん
)
を
獲得
(
くわくとく
)
し、
132
不時
(
ふじ
)
の
災害
(
さいがい
)
に
附
(
つけ
)
込
(
こ
)
んで
暴利
(
ばうり
)
を
貪
(
むさぼ
)
る
商人
(
せうにん
)
が
頻出
(
ひんしゆつ
)
し、
133
懺悔
(
ざんげ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
喰物
(
くひもの
)
にする
偽君子
(
ぎくんし
)
が
現
(
あら
)
はれた
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
134
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
のやうにボロ
車
(
ぐるま
)
を
輓
(
ひ
)
いたり、
135
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
には
俯向
(
うつむ
)
いて
土
(
つち
)
を
掘
(
ほ
)
り、
136
汗
(
あせ
)
や
脂
(
あぶら
)
で
取
(
とり
)
上
(
あ
)
げた
収獲
(
しうくわく
)
を
吸
(
す
)
ひとられ
137
本当
(
ほんたう
)
に
地獄道
(
ぢごくだう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
をしてゐるやうなものだ。
138
大
(
おほ
)
きな
面
(
つら
)
をしてゐやがる
連中
(
れんちう
)
は
139
懐手
(
ふところで
)
で
握
(
にぎ
)
り
睾丸
(
きんたま
)
で
飯
(
めし
)
をくらひ、
140
白昼
(
はくちう
)
大道
(
だいだう
)
の
真中
(
まんなか
)
を
自動車
(
じどうしや
)
の
土埃
(
つちぼこり
)
を
立
(
た
)
て
乍
(
なが
)
ら、
141
売笑婦
(
ばいた
)
と
共
(
とも
)
にかけ
廻
(
まは
)
り
142
人
(
ひと
)
の
迷惑
(
めいわく
)
はそ
知
(
し
)
らぬ
顔
(
かほ
)
、
143
おまけに
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
子供
(
こども
)
を
引
(
ひき
)
倒
(
たふ
)
しておいて、
144
屁
(
へ
)
一
(
ひと
)
つ
放
(
ひ
)
りかけてゆくといふ
不人情
(
ふにんじやう
)
な、
145
不合理
(
ふがふり
)
な、
146
不正義
(
ふせいぎ
)
な
無人道
(
むじんだう
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
誰
(
たれ
)
だつて
歎
(
なげ
)
かないものがあらうか。
147
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
之
(
これ
)
からかふいふ
邪道
(
じやだう
)
を
通
(
とほ
)
る
横着者
(
わうちやくもの
)
の
内面
(
ないめん
)
を
悉
(
ことごと
)
く
暴露
(
ばくろ
)
し、
148
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
を
明
(
あきら
)
かにして、
149
純真
(
じゆんしん
)
な
人道
(
じんだう
)
に
返
(
かへ
)
し、
150
此
(
この
)
宇宙
(
うちう
)
をして
光明
(
くわうみやう
)
世界
(
せかい
)
に
捩直
(
ねぢなほ
)
さねばならないのだ。
151
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
を
云
(
い
)
へば、
152
此
(
この
)
国
(
くに
)
さまも
此
(
この
)
愛
(
あい
)
さまも、
153
生
(
うま
)
れついての
車夫
(
しやふ
)
だない。
154
一寸
(
ちよつと
)
様子
(
やうす
)
があつて
社会
(
しやくわい
)
改造
(
かいざう
)
の
為
(
ため
)
に、
155
顕要
(
けんえう
)
の
地位
(
ちゐ
)
をすて、
156
両親
(
りやうしん
)
や
家来
(
けらい
)
に
叛
(
そむ
)
いて、
157
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
研究
(
けんきう
)
にかかつてゐるのだ。
158
実際
(
じつさい
)
の
事
(
こと
)
いへばお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
可愛相
(
かあいさう
)
なものだ。
159
弥勒
(
みろく
)
菩薩
(
ぼさつ
)
は
土
(
つち
)
から
現
(
あら
)
はれると
云
(
い
)
ふことだが、
160
今日
(
こんにち
)
の
乗馬
(
じやうめ
)
社会
(
しやくわい
)
には
吾々
(
われわれ
)
を
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
救
(
すく
)
ふて
呉
(
く
)
れるやうな
聖人
(
せいじん
)
君子
(
くんし
)
は
現
(
あら
)
はれないだらう。
161
それだから
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
身
(
み
)
を
下
(
くだ
)
して
下層
(
かそう
)
社会
(
しやくわい
)
の
仲間
(
なかま
)
に
入
(
い
)
り、
162
民情
(
みんじやう
)
を
研究
(
けんきう
)
してゐるのだ。
163
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
最早
(
もはや
)
天運
(
てんうん
)
循環
(
じゆんくわん
)
、
164
上下
(
うへした
)
揃
(
そろ
)
へて
桝
(
ます
)
かけひきならす
165
と
云
(
い
)
ふ
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
の
実現期
(
じつげんき
)
が
近付
(
ちかづ
)
いたのだから
166
まア
安心
(
あんしん
)
し
玉
(
たま
)
へ。
167
やがて
普選
(
ふせん
)
にもなるだらうから、
168
其
(
その
)
時
(
とき
)
はお
前
(
まへ
)
も
代議士
(
だいぎし
)
の
名乗
(
なのり
)
を
上
(
あ
)
げて
議政
(
ぎせい
)
壇上
(
だんじやう
)
に
咆哮
(
はうかう
)
し、
169
珍
(
うづ
)
の
天地
(
てんち
)
を
昔
(
むかし
)
の
神代
(
かみよ
)
に
返
(
かへ
)
すのだな、
170
アツハヽヽヽ』
171
浅
(
あさ
)
『
果
(
はた
)
して
普選
(
ふせん
)
が
即行
(
そくかう
)
され
172
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
でも
代議士
(
だいぎし
)
になつて
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
す
様
(
やう
)
なことがあるだらうかな。
173
凡
(
すべ
)
て
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
思
(
おも
)
ふやうに
行
(
ゆ
)
かぬものだ。
174
まして
現代
(
げんだい
)
の
如
(
ごと
)
き
信用
(
しんよう
)
の
出来
(
でき
)
ぬ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
では、
175
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
買
(
か
)
うて
呉
(
く
)
れるものはあるまい。
176
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
普選
(
ふせん
)
を
即行
(
そくかう
)
しても
177
矢張
(
やは
)
り、
1771
ゼントルマンが
黄白
(
くわうはく
)
をまきちらして、
178
益々
(
ますます
)
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
泥濘
(
でいねい
)
の
中
(
なか
)
へつき
落
(
おと
)
すに
違
(
ちが
)
ひなからうと
思
(
おも
)
ふよ。
179
何故
(
なぜ
)
に
又
(
また
)
之
(
これ
)
程
(
ほど
)
虚偽
(
きよぎ
)
と
罪悪
(
ざいあく
)
に
充
(
み
)
ちた
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だらう。
180
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ろ、
181
一
(
ひと
)
つだつて
信用
(
しんよう
)
されることはないぢやないか。
182
地震
(
ぢしん
)
博士
(
はかせ
)
の
予言
(
よげん
)
、
183
天気
(
てんき
)
予報
(
よはう
)
、
184
海老茶
(
ゑびちや
)
式部
(
しきぶ
)
の
兄
(
にい
)
さまと
云
(
い
)
ひ、
185
媒介者
(
なかうど
)
の
口
(
くち
)
から
云
(
い
)
ふ
初婚
(
しよこん
)
と
品行
(
ひんかう
)
問題
(
もんだい
)
、
186
新聞
(
しんぶん
)
の
攻撃
(
こうげき
)
記事
(
きじ
)
俄
(
にはか
)
の
中止
(
ちうし
)
、
187
如何
(
いか
)
なる
重症
(
ぢうしやう
)
も
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
に
根治
(
こんぢ
)
すると
云
(
い
)
ふ
梨田
(
なしだ
)
ドラックの
広告
(
くわうこく
)
、
188
新聞
(
しんぶん
)
雑誌
(
ざつし
)
の
発行
(
はつかう
)
部数
(
ぶすう
)
、
189
福引
(
ふくびき
)
の
一等
(
いつとう
)
当選品
(
たうせんひん
)
の
行衛
(
ゆくへ
)
、
190
葬礼
(
さうれい
)
の
出棺
(
しゆつくわん
)
時間
(
じかん
)
、
191
売薬屋
(
ばいやくや
)
の
御
(
お
)
礼
(
れい
)
広告
(
くわうこく
)
、
192
連日
(
れんじつ
)
連夜
(
れんや
)
満員
(
まんゐん
)
大入
(
おほいり
)
の
提灯持
(
ちやうちんもち
)
、
193
正何時
(
しやうなんじ
)
に
御
(
ご
)
来会
(
らいくわい
)
下
(
くだ
)
され
度候
(
たくさふらふ
)
、
194
天下
(
てんか
)
無比
(
むひ
)
の
大
(
だい
)
勉強店
(
べんきやうてん
)
は
弊店
(
へいてん
)
のみ
195
と、
196
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
迄
(
まで
)
嘘
(
うそ
)
で
固
(
かた
)
めた
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ぢやないか。
197
普選
(
ふせん
)
だつて、
198
矢張
(
やつぱり
)
売薬屋
(
ばいやくや
)
の
広告
(
くわうこく
)
同様
(
どうやう
)
で、
199
一
(
いち
)
時
(
じ
)
遁
(
のが
)
れの
人気取
(
にんきとり
)
だらうよ。
200
俺
(
おれ
)
は
決
(
けつ
)
してここ
二
(
に
)
年
(
ねん
)
や
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
の
間
(
あひだ
)
には
普選
(
ふせん
)
が
実行
(
じつかう
)
されるものとは
思
(
おも
)
はないね。
201
マア
孫
(
まご
)
の
代
(
だい
)
位
(
ぐらゐ
)
になつたら、
202
せうことなしに
普選
(
ふせん
)
断行
(
だんかう
)
と
出
(
で
)
かけるだらうよ。
203
それよりも
俥夫
(
しやふ
)
は
俥夫
(
しやふ
)
としての
立場
(
たちば
)
から、
204
一文
(
いちもん
)
でも
高値
(
たかね
)
を
吹
(
ふ
)
きかけて、
205
不当
(
ふたう
)
の
賃銭
(
ちんせん
)
を
取
(
と
)
つてやるのだなア。
206
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
両人
(
ふたり
)
は
何
(
なん
)
だか
乗馬
(
じやうめ
)
出
(
で
)
の
様
(
やう
)
な
口吻
(
くちぶり
)
をもらしてゐたが、
207
自分
(
じぶん
)
から
名乗
(
なの
)
る
奴
(
やつ
)
にロクな
奴
(
やつ
)
アありやしないワ。
208
大方
(
おほかた
)
稲田
(
いなだ
)
大学
(
だいがく
)
の
落第生
(
らくだいせい
)
位
(
ぐらゐ
)
だらうよ。
209
取締
(
とりしまり
)
にもなれず、
210
教員
(
けうゐん
)
にもなれず、
211
政治家
(
せいぢか
)
になるには
金
(
かね
)
が
要
(
い
)
るし、
212
放蕩
(
はうたう
)
の
結果
(
けつくわ
)
俥夫
(
しやふ
)
に
成
(
な
)
り
下
(
さが
)
り
213
見事
(
みごと
)
理窟
(
りくつ
)
丈
(
だけ
)
覚
(
おぼ
)
えて
来
(
き
)
て
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
いてるのだらう。
214
俺
(
おれ
)
の
霊眼
(
れいがん
)
に
215
汝
(
きさま
)
の
顔
(
かほ
)
に
堕落生
(
だらくせい
)
だと
書
(
か
)
いてあるのが
見
(
み
)
えすいてゐるのだからな、
216
ウツフツフヽ』
217
と
互
(
たがひ
)
に
不得
(
ふとく
)
要領
(
えうりやう
)
な
法螺
(
ほら
)
を
云
(
い
)
ひかはしてゐる。
218
其処
(
そこ
)
へ
靴音
(
くつおと
)
忍
(
しの
)
ばせやつて
来
(
き
)
たのは
交通係
(
かうつうがかり
)
の
印
(
しるし
)
を
腕
(
うで
)
に
巻
(
ま
)
いた
色
(
いろ
)
の
青白
(
あをじろ
)
い
営養
(
えいやう
)
不良
(
ふりやう
)
的
(
てき
)
な
面
(
つら
)
をした
取締
(
とりしまり
)
であつた。
219
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
思
(
おも
)
はず、
220
かいてゐた
胡坐
(
あぐら
)
を
元
(
もと
)
へ
直
(
なほ
)
し、
221
キチンとすわり
込
(
こ
)
んだ
儘
(
まま
)
取締
(
とりしまり
)
の
面
(
かほ
)
を
見上
(
みあ
)
げた。
222
(
大正一三・一・一九
旧一二・一二・一四
於道後ホテル、
松村真澄
録)
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