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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第69巻(申の巻)
巻頭言
第1篇 清風涼雨
第1章 大評定
第2章 老断
第3章 喬育
第4章 国の光
第5章 性明
第6章 背水会
第2篇 愛国の至情
第7章 聖子
第8章 春乃愛
第9章 迎酒
第10章 宣両
第11章 気転使
第12章 悪原眠衆
第3篇 神柱国礎
第13章 国別
第14章 暗枕
第15章 四天王
第16章 波動
第4篇 新政復興
第17章 琴玉
第18章 老狽
第19章 老水
第20章 声援
第21章 貴遇
第22章 有終
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第69巻(申の巻)
> 第1篇 清風涼雨 > 第5章 性明
<<< 国の光
(B)
(N)
背水会 >>>
第五章
性明
(
せいめい
)
〔一七五〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
篇:
第1篇 清風涼雨
よみ(新仮名遣い):
せいふうりょうう
章:
第5章 性明
よみ(新仮名遣い):
せいめい
通し章番号:
1750
口述日:
1924(大正13)年01月19日(旧12月14日)
口述場所:
伊予 道後ホテル
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1927(昭和2)年10月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
国、愛、浅の三人が政治談義に気勢を上げているところへ、話を立ち聞きしていた取締りが入ってきます。
浅公は空とぼけて取締りを帰そうとしますが、この取締りはブルジョア階級に敵意を露にし、逆に三人の政談に乗ってきます。
ここにいたって愛公は自らの素性を明らかにします。自分は実はヒルの国の国司・楓別の倅、国愛別であり、珍の都で出会った国公と一緒に民衆のために活動している者である、と名乗ります。
取締り(松若彦の御家人で幾公)は、愛公・国公と意気投合し、仲間になってしまいます。そして、それぞれ愛公、国公を親分として結党し、都の南北に侠客として覇を利かせようと相談します。
そうしているうちに、外が騒がしくなり、「国司・国依別の倅、国照別(国公)が車夫となって帳場に潜伏」との号外が出てしまいます。夕暮れにまぎれて四人は裏口から姿をくらまします。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
国公(国照別)、愛公(国愛別)
データ凡例:
データ最終更新日:
2019-09-11 14:58:48
OBC :
rm6905
愛善世界社版:
79頁
八幡書店版:
第12輯 300頁
修補版:
校定版:
81頁
普及版:
66頁
初版:
ページ備考:
001
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
町
(
まち
)
はづれ、
002
深溝町
(
ふかみぞちやう
)
の
俥帳場
(
くるまちやうば
)
に
国
(
くに
)
、
003
愛
(
あい
)
、
004
浅
(
あさ
)
三
(
さん
)
名
(
めい
)
の
輓子
(
ひきこ
)
が
大気焔
(
だいきえん
)
を
挙
(
あ
)
げてゐる
所
(
ところ
)
へ、
005
交通
(
かうつう
)
取締
(
とりしまり
)
の
青白
(
あをじろ
)
い
瘠
(
やせ
)
こけた
先生
(
せんせい
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
話
(
はなし
)
を
立聞
(
たちぎ
)
きした
上
(
うへ
)
、
006
素知
(
そし
)
らぬ
面
(
かほ
)
してツツと
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
007
そして
厭
(
いや
)
らしい
目
(
め
)
をギヨロつかせてゐる。
008
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
今
(
いま
)
の
話
(
はなし
)
を
此
(
この
)
取締
(
とりしまり
)
に
聞
(
き
)
かれたのではないかと、
009
聊
(
いささ
)
か
胸部
(
きやうぶ
)
に
動揺
(
どうえう
)
を
感
(
かん
)
じたが、
010
キチンと
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
坐
(
すわ
)
り
直
(
なほ
)
し
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
。
011
浅
(
あさ
)
『ヘー、
012
旦那
(
だんな
)
何用
(
なによう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
013
車体
(
しやたい
)
の
検査
(
けんさ
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
014
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
に
御
(
お
)
役所
(
やくしよ
)
へ
行
(
い
)
つて
査
(
しら
)
べて
貰
(
もら
)
つた
許
(
ばか
)
りの
健康
(
けんかう
)
車体
(
しやたい
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
015
滅多
(
めつた
)
にお
客
(
きやく
)
さまを
泥道
(
どろみち
)
に
転覆
(
てんぷく
)
させるやうな
気遣
(
きづか
)
ひは
厶
(
ござ
)
いやせぬ。
016
どうぞ
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
017
貴方
(
あなた
)
が
店
(
みせ
)
に
永
(
なが
)
くゐられますと、
018
何
(
なん
)
だか
博奕
(
ばくち
)
でもうつてゐて、
019
又
(
また
)
お
叱言
(
こごと
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
してるのぢやなからうかと、
020
客
(
きやく
)
が
怖
(
こは
)
がつて
寄
(
よ
)
りつきませぬ。
021
さうすれば、
022
たアちまち、
023
吾々
(
われわれ
)
の
鼻
(
はな
)
の
下
(
した
)
が
干上
(
ひあが
)
つて
了
(
しま
)
ひます。
024
ドツサリと
膏
(
あぶら
)
は
取
(
と
)
られ、
025
車体
(
しやたい
)
の
修繕
(
しうぜん
)
は
命
(
めい
)
ぜられ、
026
おまけに
営業
(
えいげふ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
をせられては、
027
俥夫
(
しやふ
)
だつてやり
切
(
き
)
れませぬからね』
028
取締
(
とりしまり
)
『イヤ、
029
車体
(
しやたい
)
検査
(
けんさ
)
でも
何
(
なん
)
でもない、
030
僕
(
ぼく
)
は
交通
(
かうつう
)
取締
(
とりしまり
)
だ。
031
余
(
あま
)
り
面白
(
おもしろ
)
さうに
政治談
(
せいぢだん
)
が
流行
(
はや
)
つて
居
(
を
)
つたので、
032
僕
(
ぼく
)
も
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
きたいと
思
(
おも
)
つて
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
たのだ。
033
随分
(
ずいぶん
)
偉
(
えら
)
い
気焔
(
きえん
)
を
上
(
あ
)
げたものだな。
034
僕
(
ぼく
)
だつて
稲田
(
いなだ
)
大学
(
だいがく
)
の
堕落生
(
だらくせい
)
だから、
035
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
と
同
(
おな
)
じ
仲間
(
なかま
)
だよ。
036
先
(
ま
)
づ
安心
(
あんしん
)
して
胸襟
(
きようきん
)
を
開
(
ひら
)
いて、
037
君
(
きみ
)
の
抱負
(
はうふ
)
を
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れ
玉
(
たま
)
へ、
038
アーン』
039
浅
(
あさ
)
『ヘン、
040
今
(
いま
)
の
取締
(
とりしまり
)
は
何
(
なん
)
とかかんとか
云
(
い
)
つて
衆生
(
しゆじやう
)
の
気
(
き
)
に
合
(
あ
)
ふやうなお
世辞
(
せじ
)
を
云
(
い
)
ひ、
041
臓腑
(
はらわた
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
喋
(
しやべ
)
らしておいて、
042
ソツと
役頭
(
やくがしら
)
に
上申
(
じやうしん
)
し、
043
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
を
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
り
考
(
かんが
)
へてゐるのだから、
044
滅多
(
めつた
)
に
政治談
(
せいぢだん
)
などは
話
(
はな
)
せないのだ。
045
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
取締
(
とりしまり
)
だつて
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
汗膏
(
あせあぶら
)
で
飯
(
めし
)
を
食
(
く
)
つてゐるのだ。
046
言
(
い
)
はば
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
は
旦那
(
だんな
)
さまだから、
047
余
(
あま
)
り
横柄
(
わうへい
)
に
云
(
い
)
はないやうにして
呉
(
く
)
れ。
048
之
(
これ
)
でもタツタ
今
(
いま
)
普選
(
ふせん
)
施行
(
しかう
)
になれば
天下
(
てんか
)
の
代議士
(
だいぎし
)
だからなア』
049
取締
(
とりしまり
)
『ハヽヽ、
050
ソロソロ
臓腑
(
はらわた
)
を
見
(
み
)
せ
出
(
だ
)
したな。
051
ヤ
面白
(
おもしろ
)
い、
052
僕
(
ぼく
)
も
賛成
(
さんせい
)
だ。
053
君
(
きみ
)
が
立候補
(
りつこうほ
)
をやつたら、
054
僕
(
ぼく
)
を
買収
(
ばいしう
)
して
呉
(
く
)
れ
玉
(
たま
)
へ。
055
僕
(
ぼく
)
も
一票
(
いつぺう
)
の
権利
(
けんり
)
はあるんだからな』
056
浅
(
あさ
)
『ヘン、
057
君
(
きみ
)
等
(
たち
)
の
一票
(
いつぺう
)
が
何
(
なん
)
になる。
058
君
(
きみ
)
等
(
たち
)
に
投票
(
とうへう
)
して
貰
(
もら
)
ふ
為
(
ため
)
に
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
すのならば、
059
モチツとらしい
人間
(
にんげん
)
に
投票
(
とうへう
)
して
貰
(
もら
)
ふワ、
060
ヘン、
061
済
(
す
)
みまへんな』
062
取締
(
とりしまり
)
『
大老
(
たいらう
)
だつて、
063
清家
(
せいか
)
だつて、
064
富豪
(
ふがう
)
だつて、
065
俺
(
おれ
)
だつて
君
(
きみ
)
だつて、
066
矢張
(
やつぱり
)
権利
(
けんり
)
は
一票
(
いつぺう
)
だ。
067
買喰
(
かひぐひ
)
大将
(
たいしやう
)
の
一票
(
いつぺう
)
も、
068
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
一票
(
いつぺう
)
も
効能
(
ききめ
)
は
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ。
069
余
(
あま
)
り
見
(
み
)
くびつて
呉
(
く
)
れない』
070
浅
(
あさ
)
『フーン、
071
そんなものか。
072
さうすると、
073
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
買喰
(
かひぐひ
)
大将
(
たいしやう
)
も
普選
(
ふせん
)
即行
(
そくかう
)
となれば
同等
(
どうとう
)
だな。
074
ヨシうまい、
075
それでは
労働者
(
らうどうしや
)
を
味方
(
みかた
)
につけ、
076
大
(
おほ
)
いにやつて
見
(
み
)
ようかな、
077
大政党
(
だいせいたう
)
を
組織
(
そしき
)
して
党首
(
たうしゆ
)
となり、
078
内閣
(
ないかく
)
をとつて
衆生
(
しゆじやう
)
の
為
(
ため
)
に
大
(
おほ
)
いに
経綸
(
けいりん
)
を
行
(
おこな
)
ふ
積
(
つも
)
りだ、
079
イツヒツヒ。
080
其
(
その
)
時
(
とき
)
には
君
(
きみ
)
も
滅多
(
めつた
)
に
交通
(
かうつう
)
取締
(
とりしまり
)
位
(
ぐらゐ
)
はさしておかないよ。
081
ドツト
抜擢
(
ばつてき
)
して
大目付
(
おほめつけ
)
位
(
ぐらゐ
)
には
任
(
にん
)
じてやるからな』
082
取締
(
とりしまり
)
『アツハヽヽヽ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い…
時
(
とき
)
に
083
君
(
きみ
)
は
国
(
くに
)
さま、
084
愛
(
あい
)
さまでないか。
085
何
(
ど
)
うして
又
(
また
)
こんな
所
(
ところ
)
にこんな
商売
(
しやうばい
)
をしてゐるのだ。
086
モウ
隠
(
かく
)
しても
駄目
(
だめ
)
だから、
087
何
(
なに
)
もかも
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ひたい』
088
国
(
くに
)
『
僕
(
ぼく
)
は
国
(
くに
)
さまでも
何
(
なん
)
でもないよ、
089
黒
(
くろ
)
さまだよ。
090
だから
下層
(
かそう
)
階級
(
かいきふ
)
に
帳場
(
ちやうば
)
の
哥兄
(
あにい
)
をして
苦労
(
くらう
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだ。
091
余
(
あま
)
り
見違
(
みちが
)
へて
貰
(
もら
)
ふまいかい。
092
それよりも
早
(
はや
)
く
四辻
(
よつつじ
)
に
立
(
た
)
たないか。
093
又
(
また
)
田車
(
でんしや
)
と
児童車
(
じどうしや
)
の
衝突
(
しようとつ
)
があつちや、
094
忽
(
たちま
)
ち
雄
(
おん
)
とか
雌
(
めん
)
とかの
字
(
じ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
して、
095
おまけに
煙多
(
けむた
)
イ
所
(
ところ
)
へブチ
込
(
こ
)
まれねばならぬやうな
羽目
(
はめ
)
に
陥
(
おちい
)
るぞ』
096
取締
(
とりしまり
)
『
何
(
なん
)
とマア、
097
君
(
きみ
)
は
偉
(
えら
)
いものだね。
098
能
(
よ
)
く
変相
(
へんさう
)
した
者
(
もの
)
だ。
099
隠
(
かく
)
しても
駄目
(
だめ
)
だよ。
100
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
君
(
きみ
)
の
行動
(
かうどう
)
は
僕
(
ぼく
)
も
随分
(
ずいぶん
)
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つたね。
101
児童車
(
じどうしや
)
や
田車
(
でんしや
)
が
衝突
(
しようとつ
)
したつて
何
(
なん
)
だい。
102
将来
(
しやうらい
)
見込
(
みこみ
)
のある
君
(
きみ
)
の
乾児
(
こぶん
)
になれば、
103
今日
(
けふ
)
から
此
(
この
)
十手
(
じつて
)
を
棒
(
ぼう
)
に
振
(
ふ
)
つたつて
恨
(
うら
)
むことはない。
104
あの
児童車
(
じどうしや
)
には、
105
いつもブルブル
階級
(
かいきふ
)
が
狸町
(
たぬきまち
)
の
芸者
(
げいしや
)
を
乗
(
の
)
せて、
106
そり
返
(
かへ
)
つてゐやがるのだから、
107
一遍
(
いつぺん
)
位
(
ぐらゐ
)
衝突
(
しようとつ
)
さしてやつたら
却
(
かへつ
)
て
通街
(
つうかい
)
だ、
108
アツハヽヽヽ』
109
国
(
くに
)
『これは
怪
(
け
)
しからぬ。
110
汝
(
おまへ
)
は
食務
(
しよくむ
)
に
不忠実
(
ふちうじつ
)
な
奴
(
やつ
)
だな』
111
取締
(
とりしまり
)
『ナニ、
112
それが
却
(
かへつ
)
て
忠実
(
ちうじつ
)
になるのだよ』
113
愛
(
あい
)
『ハヽア、
114
たうとう
白状
(
はくじやう
)
しやがつたな。
115
交通
(
かうつう
)
取締
(
とりしまり
)
とは
表面
(
うはべ
)
を
詐
(
いつは
)
る
口答鼠輩
(
ごとごと
)
だな。
116
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しい
目
(
め
)
をしてゐると
思
(
おも
)
つた。
117
モウ
斯
(
か
)
うなれば
仕方
(
しかた
)
がない、
118
云
(
い
)
つて
聞
(
き
)
かしてやらう。
119
俺
(
おれ
)
はヒルの
都
(
みやこ
)
の
楓別
(
かへでわけ
)
の
悴
(
せがれ
)
国愛別
(
くにちかわけ
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だ。
120
愛州
(
あいしう
)
と
名乗
(
なの
)
つて
民情
(
みんじやう
)
視察
(
しさつ
)
の
為
(
ため
)
に
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
てゐるのだ。
121
さうした
所
(
ところ
)
、
122
此
(
この
)
国州
(
くにしう
)
にベツタリコと
出会
(
でつくは
)
し、
123
互
(
たがひ
)
に
胸襟
(
きようきん
)
を
開
(
ひら
)
いて、
124
大
(
おほ
)
いに
天下
(
てんか
)
蛮衆
(
ばんしう
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
さむとしてゐる
所
(
ところ
)
だ。
125
汝
(
きさま
)
も
大方
(
おほかた
)
松若彦
(
まつわかひこ
)
のお
先
(
さき
)
だらうが、
126
あんな
古親爺
(
ふるおやぢ
)
に
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
ついて
居
(
を
)
つても
末
(
すゑ
)
の
見込
(
みこみ
)
がない。
127
社会
(
しやくわい
)
の
廃物
(
はいぶつ
)
だからな。
128
それよりも
此
(
この
)
国
(
くに
)
さまの
乾児
(
こぶん
)
になつて、
129
天下
(
てんか
)
刻下
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
大活動
(
だいくわつどう
)
をする
気
(
き
)
は
無
(
な
)
いか。
130
斯
(
か
)
う
打明
(
うちあ
)
けた
以上
(
いじやう
)
は、
131
ロハでは
帰
(
かへ
)
さないのだ。
132
サア
何
(
ど
)
うだ
降参
(
かうさん
)
するか、
133
従
(
したが
)
ふか、
134
二
(
ふた
)
つに
一
(
ひと
)
つの
返答
(
へんたふ
)
だ。
135
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
自分
(
じぶん
)
の
素性
(
すじやう
)
を
明
(
あ
)
かした
以上
(
いじやう
)
は、
136
此
(
この
)
儘
(
まま
)
お
前
(
まへ
)
を
帰
(
かへ
)
す
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬ、
137
返答
(
へんたふ
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
はふかい』
138
取締
(
とりしまり
)
『ヤ、
139
仕方
(
しかた
)
がない……ではない、
140
結構
(
けつこう
)
だ。
141
万事
(
ばんじ
)
君
(
きみ
)
に
任
(
まか
)
すから、
142
良
(
よ
)
き
様
(
やう
)
にして
呉
(
く
)
れ
玉
(
たま
)
へ』
143
国
(
くに
)
『
僕
(
ぼく
)
も
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
では
無
(
な
)
いのだ。
144
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
本名
(
ほんみやう
)
を
云
(
い
)
ふの
丈
(
だけ
)
は
待
(
ま
)
つて
貰
(
もら
)
はう。
145
何時
(
いつ
)
密告
(
みつこく
)
されるやら
分
(
わか
)
らないからな。
146
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
国
(
くに
)
さまは
147
強
(
つよ
)
きを
扶
(
たす
)
け
弱
(
よわ
)
きを
挫
(
くじ
)
く
惑酔会
(
わくすゐくわい
)
員
(
ゐん
)
でもなければ、
148
猜疑
(
さいぎ
)
と
嫉妬
(
しつと
)
に
充
(
み
)
たされた
三平
(
さんぺい
)
社員
(
しやゐん
)
でもないから
安心
(
あんしん
)
し
給
(
たま
)
へ』
149
取締
(
とりしまり
)
『ヤ、
150
分
(
わか
)
つてる。
151
名
(
な
)
は
聞
(
き
)
かいでも、
152
君
(
きみ
)
の
風采
(
ふうさい
)
と
云
(
い
)
ひ、
153
言葉
(
ことば
)
と
云
(
い
)
ひ、
154
大抵
(
たいてい
)
何処
(
どこ
)
の
狸
(
たぬき
)
か
狐
(
きつね
)
か
位
(
ぐらゐ
)
は
呑込
(
のみこ
)
んでゐる。
155
名乗
(
なの
)
らなけや
名乗
(
なの
)
らいでも
可
(
い
)
い。
156
マア
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
互
(
たがひ
)
に
胸襟
(
きようきん
)
を
開
(
ひら
)
いて
刻下
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
、
157
相提携
(
あひていけい
)
しようだないか』
158
国
(
くに
)
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
、
159
刻下
(
こくか
)
々々
(
こくか
)
と
鶏
(
にはとり
)
のやうに
云
(
い
)
ふのも
結構
(
けつこう
)
だが、
160
寧
(
いつそ
)
人類愛
(
じんるゐあい
)
の
為
(
ため
)
と
云
(
い
)
つた
方
(
はう
)
が
時代
(
じだい
)
相応
(
さうおう
)
だらうよ』
161
取締
(
とりしまり
)
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
僕
(
ぼく
)
は、
162
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
御
(
ご
)
家人
(
けにん
)
で
幾公
(
いくこう
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
だが、
163
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
馬通族
(
ばつうぞく
)
の
提灯持
(
ちやうちんもち
)
をしてゐるのも
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かない、
164
可
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
足
(
あし
)
を
洗
(
あら
)
つて
時代
(
じだい
)
に
目覚
(
めざ
)
めねばならないと
思
(
おも
)
つてゐた
所
(
ところ
)
だ。
165
それでは
国
(
くに
)
さま、
166
如何
(
いか
)
なる
貴
(
たふと
)
い
方
(
かた
)
の
血統
(
ちすぢ
)
か
知
(
し
)
らぬが、
167
先
(
ま
)
づ
国州
(
くにしう
)
、
168
愛州
(
あいしう
)
で
交際
(
つきあ
)
つて
貰
(
もら
)
ひたい。
169
君
(
きみ
)
が
誤大老
(
ごたいらう
)
になつた
時
(
とき
)
は
又
(
また
)
敬語
(
けいご
)
を
使
(
つか
)
ふからな、
170
ワツハヽヽヽ』
171
国
(
くに
)
『ヨシ
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つた。
172
そんなら
幾公
(
いくこう
)
、
173
サア
握手
(
あくしゆ
)
だ』
174
幾
(
いく
)
『イクらでも
握手
(
あくしゆ
)
ならして
呉
(
く
)
れ。
175
何分
(
なにぶん
)
資本
(
しほん
)
が
要
(
い
)
らぬのだからな』
176
国
(
くに
)
『
二
(
ふた
)
つ
目
(
め
)
には
資本
(
しほん
)
だとか
何
(
なん
)
とか、
177
そんなケチなこと
云
(
い
)
ふない。
178
僕
(
ぼく
)
はモウ
資本
(
しほん
)
だとか
清家
(
せいか
)
だとか、
179
そんな
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くと、
180
耳
(
みみ
)
が
痛
(
いた
)
くなり
胸
(
むね
)
が
悪
(
わる
)
くなり、
181
肚
(
はら
)
の
中
(
なか
)
に
擾乱
(
ぜうらん
)
が
勃発
(
ぼつぱつ
)
するやうな
気
(
き
)
がしてならないワ。
182
今
(
いま
)
の
資本家
(
しほんか
)
は
所謂
(
いはゆる
)
足
(
あし
)
の
四本家
(
しほんか
)
だからなア』
183
愛
(
あい
)
『
幾公
(
いくこう
)
が
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
素性
(
すじやう
)
を
嗅
(
か
)
ぎつける
様
(
やう
)
に、
184
寒犬
(
かんけん
)
も
鼻
(
はな
)
が
利
(
き
)
き
出
(
だ
)
した
以上
(
いじやう
)
は
俥夫
(
しやふ
)
も
最早
(
もう
)
駄目
(
だめ
)
だ。
185
キツト
他
(
ほか
)
の
奴
(
やつ
)
が
嗅
(
か
)
ぎつけて
来
(
き
)
よるに
違
(
ちが
)
ひないから、
186
何
(
ど
)
うだ、
187
一
(
ひと
)
つ、
188
此
(
こ
)
れから
侠客
(
けふかく
)
にでもなつたら、
189
将来
(
しやうらい
)
の
計画
(
けいくわく
)
上
(
じやう
)
都合
(
つがふ
)
が
好
(
よ
)
いかも
知
(
し
)
れないぞ』
190
国
(
くに
)
『ソラ
面白
(
おもしろ
)
い。
191
併
(
しか
)
し
誰
(
たれ
)
が
親分
(
おやぶん
)
になるのだ』
192
幾
(
いく
)
『
先
(
ま
)
づ
親分
(
おやぶん
)
は
国
(
くに
)
さまに
願
(
ねが
)
はうかな。
193
併
(
しか
)
しモ
少
(
すこ
)
し
年
(
とし
)
がいつてると
睨
(
にら
)
みが
利
(
き
)
いて
可
(
い
)
いのだがなア』
194
国
(
くに
)
『そんなら
浅
(
あさ
)
の
野郎
(
やらう
)
は
腰抜
(
こしぬけ
)
だから、
195
例外
(
れいぐわい
)
として
俺
(
おれ
)
の
乾児
(
こぶん
)
にしてやる。
196
君
(
きみ
)
は
愛州
(
あいしう
)
の
兄弟分
(
きやうだいぶん
)
となつては
何
(
ど
)
うだ。
197
此
(
この
)
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
北
(
きた
)
と
南
(
みなみ
)
で
侠客
(
けふかく
)
の
親分
(
おやぶん
)
となり、
198
覇
(
は
)
を
利
(
き
)
かさうぢやないか』
199
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『
賛成
(
さんせい
)
々々
(
さんせい
)
大賛成
(
だいさんせい
)
だ』
200
国
(
くに
)
『そんなら
直様
(
すぐさま
)
此処
(
ここ
)
で
結党式
(
けつたうしき
)
……いな
分列式
(
ぶんれつしき
)
を
行
(
や
)
らうだないか……オイ
浅公
(
あさこう
)
、
201
横町
(
よこちやう
)
のお
多福屋
(
たふくや
)
へ
行
(
い
)
つて、
202
豆腐
(
とうふ
)
と
酒
(
さけ
)
を
買
(
か
)
つて
来
(
こ
)
い。
203
湯豆腐
(
ゆどうふ
)
で
一杯
(
いつぱい
)
、
204
柔
(
やはら
)
かう
四角
(
しかく
)
う
盃
(
さかづき
)
をしよう。
205
併
(
しか
)
し
浅州
(
あさしう
)
、
206
誰
(
たれ
)
にも
云
(
い
)
つちやア
可
(
い
)
けないよ』
207
浅
(
あさ
)
『ヨシ
合点
(
がつてん
)
だ』
208
と
徳利
(
とくり
)
をぶら
下
(
さ
)
げ、
209
裏口
(
うらぐち
)
からチヨコチヨコ
走
(
ばし
)
りに
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
210
表
(
おもて
)
の
大道
(
だいだう
)
にはどつかに
馬鹿旦
(
ばかだん
)
事件
(
じけん
)
が
怒
(
おこ
)
つたと
云
(
い
)
ふので、
211
喧平隊
(
けんぺいたい
)
が
四五十
(
しごじふ
)
人
(
にん
)
列
(
れつ
)
を
正
(
ただ
)
して
走
(
はし
)
つて
行
(
ゆ
)
く
靴
(
くつ
)
の
音
(
おと
)
が、
212
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
耳
(
みみ
)
に
異様
(
いやう
)
に
響
(
ひび
)
く。
213
暫
(
しばら
)
くすると
一升
(
いつしよう
)
徳利
(
どつくり
)
を
二本
(
にほん
)
ぶら
下
(
さ
)
げて
浅公
(
あさこう
)
は
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
214
浅
(
あさ
)
『ハアハア……、
215
エライ エライ、
216
雀
(
すずめ
)
の
子
(
こ
)
が
待
(
ま
)
つてゐると
思
(
おも
)
ふて、
217
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
た。
218
サア
一杯
(
いつぱい
)
やらう。
219
二升
(
にしよう
)
なれば、
220
四五
(
しご
)
二十
(
にじふ
)
だ。
221
五合
(
ごがふ
)
宛
(
あて
)
になるから
一寸
(
ちよつと
)
酔
(
よ
)
へるだらう。
222
早
(
はや
)
くから
喉
(
のど
)
の
虫
(
むし
)
奴
(
め
)
がギウギウ ゴウゴウと
催促
(
さいそく
)
してゐやがらア、
223
ヘツヘツヘ』
224
幾
(
いく
)
『オイ、
225
豆腐
(
とうふ
)
は
何
(
ど
)
うしたのだ』
226
浅
(
あさ
)
『
酒呑
(
さけのみ
)
に
豆腐
(
とうふ
)
が
要
(
い
)
るかい。
227
都府
(
とふ
)
は
此
(
こ
)
の
間
(
あひだ
)
の
地震
(
ぢしん
)
で
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
になつたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
よ。
228
今
(
いま
)
福幸院
(
ふくかうゐん
)
を
起
(
おこ
)
して
震議
(
しんぎ
)
の
最中
(
さいちう
)
だから、
229
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つてゐるが
可
(
よ
)
からう。
230
シロ
都風
(
とうふ
)
も
焼豆腐
(
やきどうふ
)
もサツパリ
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
だよ。
231
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
老体
(
らうたい
)
がナマクラの
別荘
(
べつさう
)
で
梯子段
(
はしごだん
)
に
圧
(
あつ
)
せられて
死
(
し
)
んだとか
至難
(
しなん
)
とか
云
(
い
)
ふ
問題
(
もんだい
)
で、
232
豆腐
(
とうふ
)
所
(
どころ
)
の
騒
(
さわ
)
ぎぢやないワ。
233
先
(
ま
)
づ
酒
(
さけ
)
さへあれば
何
(
なん
)
とか
酒段
(
しゆだん
)
がつくだろ』
234
幾
(
いく
)
『
何
(
ど
)
うも
仕方
(
しかた
)
がないな。
235
オイ
兄弟
(
きやうだい
)
、
236
モウ
仕方
(
しかた
)
がねい、
237
豆腐
(
とうふ
)
は
無
(
な
)
くても、
238
此
(
この
)
儘
(
まま
)
徳利
(
とつくり
)
の
口
(
くち
)
から
呑
(
の
)
み
廻
(
まは
)
してやらうかい』
239
国
(
くに
)
『エ、
240
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
い、
241
こんな
小
(
ち
)
つポケな
口
(
くち
)
からチヨビチヨビやつてゐてもはづまないワ。
242
徳利
(
とつくり
)
の
尻
(
けつ
)
を
叩
(
たた
)
き
割
(
わ
)
つて
風
(
かぜ
)
の
通
(
かよ
)
ふやうにすりや
能
(
よ
)
く
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るだらう。
243
卵
(
たまご
)
でも
一方口
(
いつぱうぐち
)
では
吸
(
す
)
へないから、
244
両方
(
りやうはう
)
へ
穴
(
あな
)
を
開
(
あ
)
けるだないか』
245
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
246
俥
(
くるま
)
の
梶棒
(
かぢぼう
)
に
徳利
(
とくり
)
の
尻
(
しり
)
をコンと
打
(
ぶつ
)
つけた
機
(
はずみ
)
に、
247
徳利
(
とつくり
)
は
切腹
(
せつぷく
)
して
忽
(
たちま
)
ち
庭
(
には
)
の
土
(
つち
)
は
一升
(
いつしよう
)
の
酒
(
さけ
)
を
舐
(
な
)
めて
了
(
しま
)
つた。
248
国
(
くに
)
『チエツ、
249
金城
(
きんじやう
)
鉄壁
(
てつぺき
)
も
国
(
くに
)
さまの
一撃
(
いちげき
)
に
遇
(
あ
)
ふてサツパリ
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
だ。
250
ヤツパリ
酒
(
しゆ
)
たる
徳利
(
とくり
)
が
備
(
そな
)
はつて
居
(
を
)
らぬと
見
(
み
)
える
哩
(
わい
)
、
251
ハヽヽヽヽ』
252
浅
(
あさ
)
『オイ
国州
(
くにしう
)
、
253
イヤ
親分
(
おやぶん
)
、
254
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
勿体
(
もつたい
)
ないことをするのだい。
255
土
(
つち
)
が
皆
(
みな
)
結構
(
けつこう
)
な
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
んで
了
(
しま
)
つたぢやないか。
256
本当
(
ほんたう
)
に
一生
(
いつしやう
)
の
損
(
そん
)
をしたものだ』
257
国
(
くに
)
『
徳利
(
とくり
)
階級
(
かいきふ
)
の
口
(
くち
)
計
(
ばか
)
りへ
入
(
い
)
れてるのも
勿体
(
もつたい
)
ないから、
258
チツとはズブ
下
(
した
)
の
土
(
つち
)
にも
呑
(
の
)
ましてやりたいと
思
(
おも
)
ふて
爆発
(
ばくはつ
)
させたのだ。
259
タコマ
山
(
やま
)
でもチヨイ チヨイ
爆発
(
ばくはつ
)
するだないか。
260
未
(
ま
)
だ、
261
ここに
一本
(
いつぽん
)
残
(
のこ
)
つてる、
262
之
(
これ
)
を
汝
(
きさま
)
達
(
たち
)
自由
(
じいう
)
にしたが
可
(
よ
)
からう。
263
俺
(
おれ
)
はモウ
呑
(
の
)
むよりも、
264
斯
(
か
)
うして
胚
(
はら
)
を
打割
(
ぶちわ
)
つて
酒
(
さけ
)
の
洪水
(
こうずい
)
を
起
(
おこ
)
す
方
(
はう
)
が、
265
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
痛快
(
つうくわい
)
か
知
(
し
)
れないワ、
266
アツハヽヽ』
267
愛
(
あい
)
『
一升
(
いつしよう
)
の
酒
(
さけ
)
を
之
(
これ
)
から
四
(
よ
)
人
(
にん
)
寄
(
よ
)
つて
平
(
たひら
)
げることとせう。
268
さうすりや
一人前
(
いちにんまへ
)
二合
(
にがふ
)
五勺
(
ごしやく
)
位
(
くらゐ
)
だ。
269
マア
肴
(
さかな
)
には
公侯
(
こうこう
)
でも
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
てバリバリとやるのだな。
270
そして
芸者
(
げいしや
)
もなし、
271
一人
(
ひとり
)
注
(
つ
)
いで
呑
(
の
)
めば
私酌
(
ししやく
)
にもなり、
272
男
(
をとこ
)
のお
給仕
(
きふじ
)
に
注
(
つ
)
がせば
男酌
(
だんしやく
)
にもなり、
273
小間物
(
こまもの
)
店
(
みせ
)
を
出
(
だ
)
せば
吐
(
は
)
く
爵
(
しやく
)
にもなるのだから、
274
之
(
これ
)
で
爵
(
しやく
)
の
病
(
やまひ
)
を
癒
(
なほ
)
し、
275
溜飲
(
りういん
)
を
下
(
さ
)
げることに
仕様
(
しやう
)
かい』
276
浅
(
あさ
)
『
私酌
(
ししやく
)
も
男酌
(
だんしやく
)
も
結構
(
けつこう
)
ですが、
277
何
(
ど
)
うです
親分
(
おやぶん
)
、
278
三筋
(
みすぢ
)
の
糸
(
いと
)
が
這入
(
はい
)
らないと
余
(
あま
)
り
面白
(
おもしろ
)
くないぢやありませぬか。
279
私
(
わたし
)
が
之
(
これ
)
から
刑務所
(
けいむしよ
)
……オツとドツコイ……
芸務所
(
げいむしよ
)
へ
走
(
はし
)
つて
行
(
い
)
つて、
280
生首
(
なまくび
)
でも
白首
(
しろくび
)
でも
引張
(
ひつぱ
)
つて
来
(
き
)
ませうかな』
281
国
(
くに
)
『おけおけ
282
芸務所
(
げいむしよ
)
は
梅害
(
ばいどく
)
の
養生所
(
やうせいしよ
)
だ。
283
又
(
また
)
一筋縄
(
ひとすぢなは
)
や
二筋縄
(
ふたすぢなは
)
で
負
(
お
)
へぬ
奴
(
やつ
)
が、
284
三筋
(
みすぢ
)
の
糸
(
いと
)
で
鼻
(
はな
)
の
下
(
した
)
の
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
を
操
(
あやつ
)
つてゐるのだから、
285
そんな
代物
(
しろもの
)
を
輸入
(
ゆにふ
)
されちや
背水会
(
はいすいくわい
)
の
迷惑
(
めいわく
)
だ』
286
斯
(
か
)
く
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
り
乍
(
なが
)
ら
287
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
一升
(
いつしよう
)
の
酒
(
さけ
)
を
喇叭呑
(
らつぱのみ
)
にして
平
(
たひら
)
げて
了
(
しま
)
うた。
288
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
289
新聞
(
しんぶん
)
配達
(
はいたつ
)
の
烈
(
はげ
)
しき
鈴
(
りん
)
の
音
(
おと
)
チリン チリンと
響
(
ひび
)
き
来
(
く
)
る。
290
国
(
くに
)
『オイ
浅
(
あさ
)
、
291
号外
(
がうぐわい
)
を
一
(
ひと
)
つ
買
(
か
)
うて
来
(
こ
)
い、
292
キツと
変事
(
へんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
したに
違
(
ちが
)
ひないからな』
293
浅
(
あさ
)
は
言下
(
げんか
)
に
尻
(
しり
)
引
(
ひ
)
き
捲
(
まく
)
り、
294
号外屋
(
がうぐわいや
)
の
跡
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかけ
乍
(
なが
)
ら
295
『オーイ オーイ』と
熊谷
(
くまがい
)
もどきに
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
296
後
(
あと
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
浅
(
あさ
)
の
帰
(
かへ
)
るのを
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
つてゐる。
297
国
(
くに
)
『
地震
(
ぢしん
)
でもなし、
298
政変
(
せいへん
)
でもなからうが、
299
今
(
いま
)
の
号外
(
がうぐわい
)
は
何
(
なん
)
だらうかな。
300
如何
(
どう
)
も
吾々
(
われわれ
)
は
気懸
(
きがか
)
りでならないワ』
301
愛
(
あい
)
『さうだな、
302
此奴
(
こいつ
)
ア、
303
普通
(
ふつう
)
ぢやあるまい。
304
吾々
(
われわれ
)
の
一身
(
いつしん
)
上
(
じやう
)
に
関
(
くわん
)
する
大問題
(
だいもんだい
)
が
起
(
おこ
)
つたのだあるまいか。
305
コラ
幾州
(
いくしう
)
、
306
汝
(
きさま
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
話
(
はなし
)
を
立聞
(
たちぎき
)
しやがつて、
307
新聞
(
しんぶん
)
記者
(
きしや
)
の
奴
(
やつ
)
にでも、
308
何
(
なに
)
か
喋
(
しやべ
)
つたのだらう』
309
幾
(
いく
)
『
何
(
なに
)
、
310
俺
(
おれ
)
は
何
(
なに
)
も
喋
(
しやべ
)
らない。
311
悪徳
(
あくとく
)
新聞
(
しんぶん
)
の
記者
(
きしや
)
が
此処
(
ここ
)
の
軒
(
のき
)
に
立
(
た
)
つてペンを
走
(
はし
)
らしてゐるから、
312
此奴
(
こいつ
)
ア
可怪
(
をか
)
しいと
思
(
おも
)
つて
近寄
(
ちかよ
)
つて
見
(
み
)
れば、
313
記者
(
きしや
)
の
奴
(
やつ
)
314
妙
(
めう
)
な
面
(
つら
)
して、
315
どつかへ
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しよつたのだ。
316
それから
其
(
そ
)
の
後
(
あと
)
を
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
俺
(
おれ
)
が
聞
(
き
)
いた
丈
(
だけ
)
だ。
317
余
(
あま
)
り
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
話
(
はな
)
してゐたものだから「
国照別
(
くにてるわけ
)
俥帳場
(
くるまちやうば
)
に
潜
(
ひそ
)
む」
位
(
ぐらゐ
)
な
見出
(
みだ
)
しで
号外
(
がうぐわい
)
でも
出
(
だ
)
したのかも
知
(
し
)
れないよ。
318
さうすりや
大変
(
たいへん
)
だ、
319
大目付
(
おほめつけ
)
の
奴
(
やつ
)
驚
(
おどろ
)
いて
部下
(
ぶか
)
の
取締
(
とりしまり
)
に
命
(
めい
)
じ、
320
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
逮捕
(
たいほ
)
に
来
(
く
)
るかも
知
(
し
)
れない。
321
サア
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
さう、
322
侠客
(
けふかく
)
の
成
(
な
)
り
始
(
はじ
)
めに
捕
(
つか
)
まつては
幸先
(
さいさき
)
が
悪
(
わる
)
いから……』
323
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はサツと
面
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
が
変
(
かは
)
つた。
324
其処
(
そこ
)
へ
転
(
ころ
)
げる
様
(
やう
)
にして
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのは
浅公
(
あさこう
)
である。
325
浅公
(
あさこう
)
は
門口
(
かどぐち
)
から、
326
『オイ、
327
タヽ
大変
(
たいへん
)
だ。
328
クヽ
国依別
(
くによりわけ
)
のセヽ
悴
(
せがれ
)
、
329
国照別
(
くにてるわけ
)
が、
330
此処
(
ここ
)
の
帳場
(
ちやうば
)
に
潜伏
(
せんぷく
)
してゐるから
其
(
その
)
筋
(
すぢ
)
の
手
(
て
)
が
都下
(
とか
)
一面
(
いちめん
)
に
廻
(
まは
)
つたと、
331
ゴヽ
号外
(
がうぐわい
)
に
書
(
か
)
いてあるワ。
332
クヽ
国照別
(
くにてるわけ
)
が
捉
(
つか
)
まへられたら、
333
オヽ
俺
(
おれ
)
も
乾児
(
こぶん
)
だから
同罪
(
どうざい
)
だ。
334
サア
何
(
なん
)
とかして
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
遁
(
に
)
げようぢやないか』
335
国照別
(
くにてるわけ
)
は
平然
(
へいぜん
)
として、
336
『ハヽヽ、
337
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
338
之
(
これ
)
でこそ
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
時
(
とき
)
到
(
いた
)
れりだ。
339
オイ
愛州
(
あいしう
)
、
340
幾公
(
いくこう
)
、
341
浅
(
あさ
)
、
342
俺
(
おれ
)
に
徒
(
つ
)
いて
来
(
こ
)
い。
343
第二
(
だいに
)
の
計画
(
けいくわく
)
に
移
(
うつ
)
らうぢやないか』
344
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
悠々
(
いういう
)
として
裏口
(
うらぐち
)
から、
345
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
夕暮
(
ゆふぐれ
)
の
暗
(
やみ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ、
346
何処
(
どこ
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
347
(
大正一三・一・一九
旧一二・一二・一四
於伊予道後ホテル、
松村真澄
録)
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