霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 波動(はどう)〔一七六一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻 篇:第3篇 神柱国礎 よみ(新仮名遣い):しんちゅうこくそ
章:第16章 波動 よみ(新仮名遣い):はどう 通し章番号:1761
口述日:1924(大正13)年01月24日(旧12月19日) 口述場所:伊予 山口氏邸 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1927(昭和2)年10月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
国照別一行は三日三晩禊を修し、鏡の池の霊場に参拝し、宣伝歌を奏上した。その歌、
珍の国にはびこる曲がった道を根本的に改良し、
清き太祝詞を世界の為に宣り上げて、
迷った身魂を救い上げ、常世の国まで救い行く。
珍の国をまこと一つの三五の神代に立て替えて、
諸々の神人らが勇み立ち、安く楽しくいつまでも栄えしめ給へ、永遠無窮の命をよさし給えと願い奉ります。
一行の中で、まず浅公が鏡の池に言霊を発し、託宣を祈った。浅公は、子分の中の上下を問う。すると鏡の池は「実力のある者が上になるべし」と託宣し、駒治を一の子分と定めた。
浅公は不満を訴えるが、ここに駒治と浅公は角力を取り、結果、駒治が一の子分と定まった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-10-17 19:09:18 文字数:3210 OBC :rm6916
愛善世界社版:226頁 八幡書店版:第12輯 356頁 修補版: 校定版:237頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001 国照別(くにてるわけ)一行(いつかう)は四辺(あたり)の果実(このみ)をむしり乍(なが)ら、002飢(うゑ)を凌(しの)ぎ三日(みつか)三夜(みよさ)の身禊(みそぎ)を修(しう)し、003鏡(かがみ)の池(いけ)の由緒(ゆいしよ)深(ふか)き霊場(れいぢやう)に参拝(さんぱい)し声(こゑ)も涼(すず)しく宣伝歌(せんでんか)を奏上(そうじやう)した。
004国照別(くにてるわけ)『アさ日(ひ)は清(きよ)く明(あき)らけく
005イてり通(とほ)らすテルの国(くに)
006ウき世(よ)の悩(なや)みを他所(よそ)にして
007エらまれ切(き)つた身魂(みたま)等(ら)が
008オさまりゐます懸橋(かけはし)御殿(ごてん)
009カみも平(たひ)らに安(やす)らかに
010キこしめすらむ真心(まごころ)の
011クに照別(てるわけ)の御(おん)願(ねがひ)
012ケしきいやしき曲道(まがみち)を
013コん本的(ぽんてき)に改良(かいりやう)し
014サかえ尽(つ)きせぬ珍(うづ)の国(くに)
015シきます国魂(くにたま)大御神(おほみかみ)
016スずしき聖(きよ)き太祝詞(ふとのりと)
017セかいの為(ため)に宣(の)り上(あ)げて
018ソぐりし身魂(みたま)を救(すく)ひ上(あ)げ
019タすけて生(い)かす高砂(たかさご)の
020チとせ栄(さか)ゆる松(まつ)の教(のり)
021ツきは御空(みそら)を隈(くま)もなく
022テらして暗(やみ)を晴(は)らしつつ
023トこ世(よ)の国(くに)まで救(すく)ひ行(ゆ)く
024ナみに漂(ただよ)ふ高砂(たかさご)の
025ニしと東(ひがし)の珍(うづ)の国(くに)
026ヌしとなるべき吾(わが)魂(たま)も
027ネそこの国(くに)の悩(なや)みをば
028ノぞかぬうちは是非(ぜひ)もなし
029ハやく身魂(みたま)をあらためて
030ヒろく尊(たふと)き御恵(みめぐみ)の
031フゆを世界(せかい)に現(あら)はして
032ヘい和(わ)に民(たみ)を治(おさ)め行(ゆ)く
033ホまれも高(たか)き珍(うづ)の国(くに)
034マこと一(ひと)つの三五(あななひ)の
035ミちの光(ひかり)に陰(かげ)もなし
036ムかしの神代(かみよ)に立替(たてか)へて
037メぐみ洽(あまね)き草(くさ)の露(つゆ)
038モもの神人(しんじん)勇(いさ)み立(た)ち
039ヤすく楽(たの)しく何時(いつ)迄(まで)も
040イのち栄(さか)えて国(くに)の為(ため)
041ユう冥界(めいかい)を救(すく)ふ為(ため)
042エい遠(ゑん)無窮(むきう)の生命(せいめい)を
043ヨさし玉(たま)へと願(ね)ぎ奉(まつ)る
044ワが言霊(ことたま)の大前(おほまへ)に
045ヰてり通(とほ)らい奉(まつ)りなば
046ウき世(よ)の雲(くも)をかきわけて
047ヱがほに充(み)てる神(かみ)の顔(かほ)
048ヲがませ玉(たま)へ惟神(かむながら)
049国照別(くにてるわけ)が善悪(よしあし)の
050世(よ)のさまうつす鏡池(かがみいけ)
051玉(たま)の宮居(みやゐ)の御(おん)前(まへ)に
052畏(かしこ)み畏(かしこ)み願(ね)ぎ奉(まつ)る』
053と歌(うた)ひ終(をは)り、054拍手(はくしゆ)し、055傍(かたはら)の巌(いはほ)に腰(こし)を打(うち)かけ、056昔(むかし)の歴史話(れきしばなし)に移(うつ)りける。
057国(くに)『オイ、058乾児(こぶん)共(ども)、059此(この)鏡(かがみ)の池(いけ)は一名(いちめい)言霊(ことたま)の池(いけ)と云(い)つて高砂島(たかさごじま)第一(だいいち)の神秘(しんぴ)的(てき)な霊場(れいぢやう)だ。060真心(まごころ)を以(もつ)てこちらから言霊(ことたま)を発射(はつしや)すれば、061キツト神(かみ)様(さま)が言霊(ことたま)を以(もつ)て答(こた)へて下(くだ)さるさうだが、062どうだ一(ひと)つ滝(たき)で身(み)を浄(きよ)めて来(き)たのを幸(さいは)ひ、063神(かみ)様(さま)に伺(うかが)つて見(み)ようかい』
064浅(あさ)『如何(いか)にもソラ面白(おもしろ)う厶(ござ)いませう。065此処(ここ)で乾児(こぶん)の順序(じゆんじよ)を神(かみ)様(さま)に聞(き)いて定(きめ)さして貰(もら)ひませう。066それが公平(こうへい)で互(たがひ)に怨恨(うらみ)が残(のこ)らいで宜(よろ)しいからなア』
067国(くに)『それも結構(けつこう)だ。068そんなら浅公(あさこう)、069お前(まへ)から一(ひと)つ神(かみ)様(さま)に願(ねが)つて見(み)よ』
070浅(あさ)『ハイ、071承知(しようち)しました』
072と云(い)ひ乍(なが)ら拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)し、
073浅公(あさこう)『惟神(かむながら)昔(むかし)の神(かみ)の坐(ま)しまさば
074示(しめ)させ給(たま)へ吾(わが)願言(ねぎごと)を。
075言霊(ことたま)の池(いけ)と名(な)に負(お)ふ斎場(ゆには)なれば
076答(こた)へ給(たま)はむ吾(わが)言(こと)の葉(は)に』
077 忽(たちま)ち鏡(かがみ)の池(いけ)はブクブクブクと異様(いやう)な泡(あわ)を吹(ふ)き出(だ)した。
078 国照別(くにてるわけ)外(ほか)一同(いちどう)は早速(さつそく)の感応(かんのう)に襟(えり)を正(ただ)し、079片唾(かたづ)を呑(の)んで畏(かしこ)まつて居(ゐ)る。080浅公(あさこう)も小気味(こぎみ)が悪(わる)くなつたが、081後(あと)へ退(ひ)く訳(わけ)にも行(い)かず、082額(ひたひ)から冷汗(ひやあせ)を流(なが)し乍(なが)ら、
083浅公『アヽ有難(ありがた)や辱(かたじけ)なや、084鏡(かがみ)の池(いけ)の生神(いきがみ)様(さま)、085侠客(けふかく)の浅公(あさこう)が朝間(あさま)も早(はや)うから、086阿呆(あはう)が足(た)らいで、087あられもない事(こと)を御(お)願(ねがひ)申(まを)しますが、088どうぞ、089あら立(だ)てずに、090あらましで宜(よろ)しいから、091御(ご)神徳(しんとく)をあらはして下(くだ)さいませ』
092 鏡(かがみ)の池(いけ)から、
093鏡の池の神『アツハヽヽヽ、094浅公(あさこう)の浅智慧(あさぢゑ)の阿呆(あはう)奴(め)、095開(あ)いた口(くち)が塞(ふさ)がらぬワイ』
096浅(あさ)『イヽヽいけ好(す)かない、097イヽヽの一番(いちばん)から人(ひと)を罵倒(ばたう)する神(かみ)が何処(どこ)にありますか、098ウヽヽうるさいと思(おも)はずに、099どうぞ真面目(まじめ)に私(わたし)の願(ねがひ)を聞(き)いて下(くだ)さい、100国(くに)さまの乾児(こぶん)の中(なか)に於(おい)て誰(たれ)が上(うへ)になるか下(した)になるかと云(い)ふ事(こと)を聞(き)かして貰(もら)へばそれで良(い)いのです』
101 池(いけ)の中(なか)から、
102鏡の池の神『エヽヽえらい奴(やつ)が、103上(うへ)になるのだ、104オヽヽ劣(おと)つた奴(やつ)が下(した)になるのだ。105そんな事(こと)をカヽヽ神(かみ)に聞(き)かずとも、106キヽヽ気(き)がつき相(さう)なものぢやないか。107クヽヽ国照別(くにてるわけ)の国公(くにこう)の乾児(こぶん)になつた以上(いじやう)は、108汝(きさま)も侠客(けふかく)だ。109一(ひと)つケヽヽ喧嘩(けんくわ)でもして力比(ちからくら)べを致(いた)し、110コヽヽこつかれた奴(やつ)が乾児(こぶん)になるのだ。111サヽヽ騒(さわ)ぐには及(およ)ばぬ、112今(いま)の世(よ)は言論(げんろん)よりも実力(じつりよく)だ。113シヽヽ主義(しゆぎ)も糸瓜(へちま)もあつたものぢやないぞ。114スヽヽ速(すみやか)に実行(じつかう)する奴(やつ)が数多(あまた)の人気(にんき)を、115セヽヽ制(せい)するのだ。116今(いま)に珍(うづ)の国(くに)にはソヽヽ騒動(さうだう)が起(おこ)るから、117タヽヽ互(たがひ)に霊(たま)を練(ね)つて、118生死(せいし)のチヽヽ巷(ちまた)にかけまはり、119体(からだ)も魂(たましひ)も人(ひと)に秀(すぐ)れて、120ツヽヽ強(つよ)くなつておかねば、121テヽヽ天下(てんか)は取(と)れぬぞよ。122トヽヽ遠(とほ)い国(くに)へ駆落(かけおち)致(いた)し、123ナヽヽ何(なに)かの事(こと)を研究(けんきう)し、124天晴(あつぱれ)立派(りつぱ)な男(をとこ)伊達(だて)となつて、125故郷(ふるさと)へ、126ニヽヽ錦(にしき)を飾(かざ)り、127親(おや)に反(そむ)いて国許(くにもと)を、128ヌヽヽぬけて出(で)た贖(あがな)ひを致(いた)し、129ネヽヽ根(ね)の国(くに)底(そこ)の国(くに)の国民(こくみん)の苦(く)を救(すく)ひ、130ノヽヽ長閑(のどか)な、131神代(かみよ)に立直(たてなほ)さねばならぬぞよ。132ハヽヽ早(はや)く霊(たま)を研(みが)き、133ヒヽヽ一人(ひとり)でも霊(たま)の研(みが)けた者(もの)を集(あつ)め、134勢力(せいりよく)をフヽヽふやして、135ヘヽヽ平和(へいわ)と人道(じんだう)の為(ため)に社会(しやくわい)に貢献(こうけん)する、136ホヽヽ方策(はうさく)を定(さだ)めたが良(よ)からう。137マヽヽ誠(まこと)一(ひと)つが世(よ)の宝(たから)だ。138ミヽヽ身(み)を粉(こな)に致(いた)し、139ムヽヽ昔(むかし)の神(かみ)の教(をしへ)を遵奉(じゆんぽう)し、140メヽヽ名利(めいり)に耽(ふけ)らず、141モヽヽ諸々(もろもろ)の欲(よく)に離(はな)れ、142ヤヽヽ大和(やまと)魂(だましひ)を研(みが)き上(あ)げ、143イヽヽ厳(いづ)の御霊(みたま)の教(をしへ)に従(したが)ふて、144ユヽヽ勇敢(ゆうかん)に大胆(だいたん)に、145エヽヽ遠慮(ゑんりよ)会釈(ゑしやく)もなく、146ヨヽヽヨウ言(い)はぬワ、147世(よ)の為(ため)に活動(くわつどう)するのだぞ。148ラヽヽ乱世(らんせい)の今日(こんにち)、149リヽヽ倫常(りんじやう)は地(ち)に落(お)ち、150ルヽヽ累卵(るゐらん)の危(あやふ)き各階級(かくかいきふ)の状態(じやうたい)、151レヽヽ連年(れんねん)の不景気(ふけいき)に人心(じんしん)は悪化(あくくわ)し、152ロヽヽ老骨(らうこつ)は上(かみ)に立(た)つて国政(こくせい)を料理(れうり)し、153最早(もはや)珍(うづ)の国(くに)の人心(じんしん)は収拾(しうしふ)す可(べか)らざるに立至(たちいた)つて居(ゐ)る。154ワヽヽ吾(わが)身(み)の出世(しゆつせ)許(ばか)り考(かんが)へて他人(ひと)の事(こと)は、155ヰヽヽ指(ゐび)一本(いつぽん)そへてやらんと云(い)ふ悪党(あくたう)な世(よ)の中(なか)だ。156ウヽヽ有為(うゐ)転変(てんぺん)の世(よ)の中(なか)は、157何時(なんどき)変(かは)るか知(し)れないぞ。158ヱヽヽ遠国(ゑんごく)へ行(い)つて、159魂(みたま)を研(みが)き、160天晴(あつぱ)れ、161ヲヽヽ男(をとこ)となつて、162ここ三(さん)年(ねん)の内(うち)には帰(かへ)つて来(こ)よ。163浅公(あさこう)許(ばか)りでない、164親分(おやぶん)の国州(くにしう)、165其(その)他(ほか)一同(いちどう)の者(もの)に気(き)をつけておく。166さうして駒治(こまはる)は国州(くにしう)の一(いち)の乾児(こぶん)と神(かみ)が定(さだ)めるぞよ、167ブルブルブルブル ウーツ』
168と唸(うな)つたきり、169後(あと)はコトツとも言葉(ことば)は無(な)くなつて了(しま)つた。
170駒治(こまはる)『鏡(かがみ)の池(いけ)の神(かみ)様(さま)、171どうも有難(ありがた)う厶(ござ)ります。172貴神(あなた)の仰有(おつしや)ることは良(よ)く合(あ)ひました。173私(わたし)の思(おも)ふ通(とほ)り云(い)つて下(くだ)さいました。174惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
175浅(あさ)『オイ駒州(こましう)、176此(この)神(かみ)はチツト審神(さには)の必要(ひつえう)があるぞ。177大方(おほかた)汝(きさま)の副守(ふくしゆ)か何(なに)かが飛出(とびだ)しやがつて、178あんなこと吐(ほざ)いたのだらう。179エー、180ケツタクソの悪(わる)い、181誰(たれ)が何(なん)と云(い)つても俺(おれ)が一(いち)の枝(えだ)だからのう』
182駒治(こまはる)『一(いち)の枝(えだ)だから駄目(だめ)だと云(い)ふのだよ。183松(まつ)の木(き)でも見(み)よ、184一(いち)の枝(えだ)が枯(か)れて二(に)の枝(えだ)、185二(に)の枝(えだ)が枯(か)れて三(さん)の枝(えだ)が出来(でき)、186後(あと)から後(あと)から立派(りつぱ)な枝(えだ)がより以上(いじやう)大(おほ)きく出(で)るぢやないか。187マア兎(と)も角(かく)神(かみ)様(さま)の仰有(おつしや)る通(とほ)りに任(まか)しておくのだなア』
188国(くに)『ハヽヽヽ先(ま)づ此処(ここ)で、189それ程(ほど)神(かみ)様(さま)の神勅(しんちよく)を疑(うたが)ふのなら、190力比(ちからくら)べをやつて見(み)よ。191喧嘩(けんくわ)さすと互(たがひ)に疵(きず)がついて可(い)かぬから、192神(かみ)様(さま)の前(まへ)で角力(すまう)でもとつて、193勝(か)つ奴(やつ)を一(いち)の乾児(こぶん)にすることにせう。194浅公(あさこう)195お前(まへ)も得心(とくしん)だらうなア。196お前(まへ)も先夜(せんや)の事(こと)を思(おも)へば余(あま)り威張(ゐば)れぬぢやないか』
197 ここに二人(ふたり)は一番(いちばん)勝負(しようぶ)の角力(すまう)を取(と)り、198いよいよ駒治(こまはる)が国州(くにしう)の一(いち)の枝(えだ)と定(さだ)まり、199意気(いき)揚々(やうやう)として山(やま)を降(くだ)り蛸取村(たことりむら)の海岸(かいがん)に出(で)た。
200 国照別(くにてるわけ)一行(いつかう)は蛸取村(たことりむら)の海岸(かいがん)に息(いき)を休(やす)め乍(なが)ら渺茫(べうばう)たる海原(うなばら)の景色(けしき)を眺(なが)め、201愉快(ゆくわい)げに歌(うた)つて居(ゐ)る。
202国州(くにしう)『雲(くも)か山(やま)かはた波(なみ)か
203渺茫(べうばう)千里(せんり)の塩(しほ)の波(なみ)
204浅(あさ)ましき人間(にんげん)の眼(め)を以(もつ)て
205大西(たいせい)の洋(うみ)に臨(のぞ)む
206十(じふ)里(り)二十(にじふ)里(り)三十(さんじふ)里(り)
207僅(わづ)かに視線(しせん)は働(はたら)けども
208いかにせむ海(うみ)の彼方(あなた)に
209漂(ただよ)へる国(くに)の姿(すがた)の
210目(め)に入(い)らぬ悲(かな)しさ
211行交(ゆきか)ふ白帆(しらほ)は
212花弁(はなびら)の如(ごと)く
213波(なみ)のまにまに
214清(きよ)く輝(かがや)く
215吾(われ)は今(いま)
216磯辺(いそべ)に立(た)ちて
217広大(くわうだい)無辺(むへん)の
218天地(てんち)に跼蹐(きよくせき)し
219人間(にんげん)の身(み)の
220いと腋甲斐(ふがひ)なきを
221深(ふか)く深(ふか)く歎(なげ)く
222あゝ吾(われ)今(いま)
223住(す)みなれし故国(ここく)を捨(す)てて
224始(はじ)めて此(この)広(ひろ)き海洋(かいやう)の波(なみ)に接(せつ)す
225珍(うづ)の国(くに)は広(ひろ)しと雖(いへど)
226此(この)海原(うなばら)に及(およ)ばむや
227大空(おほぞら)の雲(くも)と
228海原(うなばら)の波(なみ)と
229相接(あひせつ)する所(ところ)
230定(さだ)めて麗(うるは)しき宝国(はうこく)あらむ
231あゝ思(おも)へば思(おも)へば
232微弱(びじやく)なる人間(にんげん)の身(み)よ
233いとも雄大(ゆうだい)なる
234天地(てんち)の現象(げんしやう)
235宇宙(うちう)の摂理(せつり)
236今更(いまさら)乍(なが)ら
237吾(わが)胸(むね)は轟(とどろ)き始(はじ)めぬ
238吾(わが)志(こころざ)すヒルの都(みやこ)は
239果(はた)して何処(いづこ)ぞ
240かの遠(とほ)き紅(くれない)の雲(くも)の
241真下(ました)ならむか
242はた又(また)それよりもズツと秀(すぐ)れて
243遠(とほ)き遠(とほ)き低(ひく)き雲(くも)の
244真下(ました)に在(あ)るか
245思(おも)へば
246わが前途(ぜんと)は
247極(きは)めて遼遠(れうゑん)なり
248四(よ)人(にん)の供人(ともびと)を引(ひき)つれて
249際限(さいげん)もなき
250原野(げんや)を行(ゆ)く
251吾(わが)心(こころ)の波(なみ)の高(たか)さよ
252否(いな)胸(むね)の騒(さわ)ぎよ
253沈静(ちんせい)せしめ給(たま)へ
254天地(てんち)の司宰(しさい)とあれまする
255国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)
256荒金(あらがね)の地(つち)を領有(うしはぎ)給(たま)ふ
257神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)よ
258帆(ほ)は白(しろ)し波(なみ)は高(たか)し
259空(そら)は広(ひろ)く雲(くも)は低(ひく)し
260吾(われ)等(ら)五(ご)人(にん)の前途(ぜんと)を守(まも)らせ給(たま)へ』
261と詠(えい)じ終(をは)り、262国照別(くにてるわけ)は先頭(せんとう)に立(た)ちて、263伝来(でんらい)の古(ふる)き宣伝歌(せんでんか)を高唱(かうしやう)し乍(なが)ら264テル国(くに)街道(かいだう)を北(きた)へ北(きた)へと進(すす)み行(ゆ)く。
265(大正一三・一・二四 旧一二・一二・一九 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)
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