霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 悪原(あしはら)眠衆(みんしう)〔一七五七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻 篇:第2篇 愛国の至情 よみ(新仮名遣い):あいこくのしじょう
章:第12章 悪原眠衆 よみ(新仮名遣い):あしはらみんしゅう 通し章番号:1757
口述日:1924(大正13)年01月23日(旧12月18日) 口述場所:伊予 山口氏邸 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1927(昭和2)年10月26日
概要: 舞台:松若彦の館 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
松若彦の長男・松依別は、父親に恋人との仲を無理やり裂かれてやけになり、毎日遊郭通い。娘の常盤姫は出歩いてほとんど家に戻らない。
松若彦は子供たちの行状に、妻の捨子姫に小言を言っている。
そこへ家僕の新公が慌しく入って来て、プロ階級演説会で取締と群集が衝突した事件を報告する。:闘争は不思議な天女が現れて鎮静したが、その天女の顔が常盤姫そっくりであった。また、白馬も家のものに間違いない、と。
松若彦はそれを聞いて、娘がプロ運動に参加したことに怒り、帰って来ても家に一歩も入れないように新公に言いつける。
やがて、常盤姫が帰って来る。新公は、松若彦の言葉を伝えるが、常盤姫はそれを聞いて逆に喜び、「もう二度と家には戻らない」と言って出て行ってしまう。
常盤姫は、途中で兄の松依別とすれ違う。松依別は遊郭帰りで酔っていたが、兄妹は別れを交わす。
松依別は遊郭帰りの体で屋敷に入り、酔った勢いで父親の松若彦に悪態をつく。
松若彦はそれを見て肝をつぶし、倒れて腰を打って唸ってしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:オリオン座(オレオン星座) データ凡例: データ最終更新日:2018-05-02 13:59:39 OBC :rm6912
愛善世界社版:168頁 八幡書店版:第12輯 335頁 修補版: 校定版:176頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001 松若彦(まつわかひこ)(わが)(やかた)(おく)()捨子姫(すてこひめ)(とも)に、002(しち)むつかしい(つら)をさらしてブツブツ小言(こごと)()(なが)ら、003愚痴(ぐち)つて()る。
004『コレ捨子姫(すてこひめ)005(まへ)教育(けういく)があまり放縦(はうじう)だから、006(せがれ)松依別(まつよりわけ)日日(ひにち)毎日(まいにち)変装(へんさう)して、007悪原(あしはら)遊廓(いうくわく)(かよ)ふなり、008(いもうと)常盤姫(ときはひめ)はお転婆(てんば)になり、009(ひめ)(さま)御用(ごよう)だとか()つて、010(うち)(そと)なる(この)(ごろ)行状(ぎやうじやう)011(これ)では清家(せいか)権威(けんゐ)(たも)たれまい。012チとしつかりして()れぬと(こま)るぢやないか。013(おれ)政務(せいむ)(いそが)しいので子供(こども)教育(けういく)などにはかかつて()られない。014子供(こども)悪化(あくくわ)するのは(みな)母親(ははおや)教育(けういく)(わる)いからだ』
015捨子(すてこ)(おほせ)(まで)もなく、016(わらは)充分(じゆうぶん)教育(けういく)(ほどこ)して()りますが、017(べつ)清家(せいか)(せがれ)018(むすめ)として(はづか)しい(やう)(そだ)(かた)はして()いと(かんが)へて()ります』
019 松若彦(まつわかひこ)(こゑ)(とが)らし、
020悪原(あしはら)遊廓(いうくわく)()()(かよ)(やう)(そだ)(かた)をしておいて、021それでも其方(そち)()いと(まを)すのか。022非常識(ひじやうしき)にも(ほど)があるぞよ』
023捨子(すてこ)(せがれ)年頃(としごろ)身分(みぶん)024最早(もはや)妻帯(さいたい)をさせねばならぬ年頃(としごろ)(ござ)いますのに、025貴方(あなた)何時(いつ)家庭(かてい)()うだの、026資格(しかく)()うだのと、027(ふる)めかしい(こと)仰有(おつしや)りますので、028(せがれ)失恋(しつれん)結果(けつくわ)自棄(やけ)気味(ぎみ)になつてるので(ござ)います。029(せがれ)(あい)してる(をんな)は、030貴方(あなた)御存(ごぞん)じの饂飩屋(うどんや)(むすめ)(ふく)()(もの)031(その)(ふく)(かみ)貴方(あなた)地位(ちゐ)釣合(つりあ)はぬとか()つて、032家来(けらい)(まは)圧迫(あつぱく)(てき)(えん)をお()りになつたぢやありませぬか。033それ(ゆゑ)(せがれ)失恋(しつれん)結果(けつくわ)034如何(いか)なる(こと)仕出(しで)かすかと、035心配(しんぱい)()()()られ()かつたので(ござ)います。036世間(せけん)にある(なら)ひ、037失恋(しつれん)結果(けつくわ)淵川(ふちかは)()()げて無理(むり)心中(しんぢう)をしたり、038鉄道(てつだう)往生(わうじやう)039(あるひ)鉄砲腹(てつぱうばら)040首吊(くびつ)りなど失恋者(しつれんしや)最後(さいご)色々(いろいろ)(ござ)います。041それ(ゆゑ)(せがれ)如何(どう)するであらうかと心配(しんぱい)(いた)042三五(あななひ)大神(おほかみ)(さま)祈願(きぐわん)をして()ました(ところ)043(せがれ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)しが出来(でき)たと()えて、044いきりぬきに悪原(あしはら)遊廓(いうくわく)(かよ)(やう)になつたのでせう。045失恋者(しつれんしや)()くべき結果(けつくわ)としては046最善(さいぜん)方法(はうはふ)(えら)んだものだと感心(かんしん)(いた)して()ります』
047松若(まつわか)『コレ捨子(すてご)048イヤ(ばば)殿(どの)049(まへ)そんなこと正気(しやうき)()つてるのか。050家名(かめい)毀損(きそん)する(せがれ)051手討(てうち)(いた)しても()()らぬ(やつ)052それに其方(そなた)賛成(さんせい)()えるな、053()しからぬぢやないか。054(わが)(いへ)正鹿山津見(まさかやまづみ)(さま)()時代(じだい)より(うづ)一国(いつこく)代理権(だいりけん)(まか)され、055権門(けんもん)勢家(せいか)として今日(こんにち)(まで)(つた)はつて()立派(りつぱ)家筋(いへすぢ)だ。056(その)家筋(いへすぢ)汚点(をてん)(いん)する(もの)ならば、057(なに)(ほど)大切(たいせつ)(せがれ)でも(ゆる)すことは出来(でき)ないではないか』
058捨子(すてこ)『それは数十(すうじふ)年前(ねんまへ)道徳律(だうとくりつ)(ござ)いませう。059道徳(だうとく)政治(せいぢ)宗教(しうけう)人情(にんじやう)風俗(ふうぞく)日進(につしん)月歩(げつぽ)()(なか)060さういふカビの()えた思想(しさう)は、061今日(こんにち)では通用(つうよう)(いた)しますまい。062貴方(あなた)一国(いつこく)宰相(さいしやう)であり(なが)ら、063さういふ(ふる)(あたま)で、064()衆生(しゆじやう)納得(なつとく)する(こと)だと、065何時(いつ)不思議(ふしぎ)がつて()るので(ござ)いますワ。066(さいはひ)(せがれ)なり(むすめ)時代(じだい)相応(さうおう)(たましひ)(うま)れてくれたので、067まだしもそれを老後(らうご)(たのし)みと(いた)しまして、068不平(ふへい)でならぬ月日(つきひ)(おく)つて()ります』
069(なん)(おも)つたか、070捨子姫(すてこひめ)今日(けふ)捨鉢(すてばち)気味(ぎみ)となつて、071()めず(おく)せずやつて退()けた。072松若彦(まつわかひこ)数十(すうじふ)(ねん)()うて()柔順(じうじゆん)女房(にようばう)が、073こんな(おも)()つた(こと)()はうとは(ゆめ)にも()らず、074(はじ)めての(こと)なので、075(もし)狂気(きやうき)したのではあるまいかと(あん)()し、076()(なに)よりも(さか)らはぬが第一(だいいち)だ、077()(すこ)(ばか)(ねつ)()める(まで)078(かれ)()(やう)にしてやらうかと(こころ)(さだ)め、079猫撫(ねこな)(ごゑ)()して、080(せな)()(なが)ら、
081松若(まつわか)『コレ捨子姫(すてこひめ)殿(どの)082(まへ)()(とほ)りだ。083テモ(さて)明敏(めいびん)頭脳(づなう)だな。084(まへ)はチト(げき)して()(やう)だから、085今日(けふ)はモウ(なに)()はない。086ゆつくりと(おく)()つて(しづ)かに(やす)んだが()からう』
087 捨子姫(すてこひめ)松若彦(まつわかひこ)(こころ)(はや)くも()んで(しま)つた。088自分(じぶん)逆上(ぎやくじやう)して()ると(しん)じて()るのを(さいは)ひ、089日頃(ひごろ)鬱積(うつせき)して()自分(じぶん)意見(いけん)全部(ぜんぶ)此所(ここ)(しやべ)()てて松若彦(まつわかひこ)決心(けつしん)(うなが)さむと覚悟(かくご)をきはめ、090ワザと(そら)とぼけて、
091『ホヽヽヽ、092あのマア御前(ごぜん)(さま)のむつかしいお(かほ)わいの。093(わらは)(これ)から淵川(ふちかは)()()げて(なが)のお(わか)れを(いた)しますから、094どうぞ(ひま)(くだ)さいませ。095(ひま)をやらぬと仰有(おつしや)つても、096(わらは)覚悟(かくご)(さだ)めた以上(いじやう)(した)()んでも()んで()せませう。097マア()にたいワ、098ホヽヽヽ。099霊肉(れいにく)脱離(だつり)(さかひ)()え、100一刻(いつこく)(はや)天国(てんごく)(のぼ)り、101(きよ)(たの)しく第二(だいに)生活(せいくわつ)()()(ござ)います。102アレアレ、103エンゼル(さま)が、104黄金(こがね)(あふぎ)(ひら)いて(わらは)(きた)(きた)れと(まね)いて()らつしやる。105あゝ(はや)()()いものだなア』
106 松若彦(まつわかひこ)益々(ますます)(おどろ)いて、107……あゝ此奴(こいつ)丸気違(まるきちが)ひだ。108仕方(しかた)()い、109()機嫌(きげん)(そん)()(やう)にせなくちやなるまい……と、
110『アイヤ捨子姫(すてこひめ)殿(どの)111其方(そなた)()(とほ)り、112(この)松若彦(まつわかひこ)はどんな(こと)でも()いて()げるから、113天国(てんごく)なんか()かぬやうにして()れ。114(とし)()つてから女房(にようばう)先立(さきだ)たれちや、115(さび)しいからなア』
116捨子(すてこ)(わらは)()(こと)を、117ハイハイと()つて、118一言(ひとこと)(そむ)かず()いて(くだ)さいますか』
119松若(まつわか)『ウン、120(なん)でも()いてやらう。121遠慮(ゑんりよ)なしに()つて()たが()からう』
122捨子(すてこ)『そんなら(まをし)()げます。123()第一(だいいち)大老職(たいらうしよく)返上(へんじやう)し、124どうぞ(わらは)一緒(いつしよ)民間(みんかん)(くだ)つて、125衆生(しゆじやう)怨府(ゑんぷ)(のが)れて(くだ)さいませ。126そして衆生(しゆじやう)政権(せいけん)をお(わた)(くだ)さいますれば、127衆生(しゆじやう)はキツト国司家(こくしけ)中心(ちうしん)として立派(りつぱ)政治(せいぢ)(おこな)はれるで(ござ)いませう』
128 松若彦(まつわかひこ)迷惑(めいわく)(てい)(つら)(しか)めたが、129エー(しか)(なが)(さか)らうて発動(はつどう)されちや(たま)らない。130(なん)でもいい、131気違(きちが)ひの()(こと)だから、132ウンウンと()ふて()けば()い……とズルイ(かんが)へを(おこ)し、
133松若(まつわか)『ウン、134ヨシヨシ、135何時(いつ)でも返上(へんじやう)する(つも)りだ』
136捨子(すてこ)『あゝ(うれ)しい(こと)137流石(さすが)松若彦(まつわかひこ)(さま)138それでこそ(わらは)(をつと)(ござ)いますワ。139どうぞ御意(ぎよい)(かは)らぬ(うち)140大老職(たいらうしよく)辞表(じへう)(したた)め、141実印(じついん)()して(くだ)さいませ。142さうでなければ、143(わらは)()んで天国(てんごく)(まゐ)ります』
144松若(まつわか)『チエ(こま)つた気違(きちが)ひだなア。145(まづ)()いてやらねば(おさ)まらない。146()いた(ところ)()さなければ()いのだ』
147文机(ふづくゑ)から料紙(れうし)取出(とりだ)(すみ)をすつて(ふで)(すみ)し、148大老(たいらう)辞表(じへう)をスラスラと()(したた)め、149捨子姫(すてこひめ)(まへ)実印(じついん)押捺(あふなつ)し、
150松若(まつわか)『サア捨子姫(すてこひめ)151(これ)得心(とくしん)だらうなア』
152捨子(すてこ)『ハイ得心(とくしん)(ござ)います。153どうぞ(その)辞表(じへう)を、154(わらは)()(わた)(くだ)さいませ』
155松若(まつわか)『イヤイヤ156()うしておけば何時(いつ)でも()せるのだ。157()しお(まへ)()たしておいて、158そこらへ()とされては大変(たいへん)だから、159()(わた)すこと(だけ)()めておかう』
160捨子(すてこ)『それでは貴方(あなた)(わらは)(いつは)つて()らつしやるのでせう。161政権(せいけん)顕職(けんしよく)恋々(れんれん)として162()らつしやるのでせうがな』
163 松若彦(まつわかひこ)(しやく)にさへて、
164『エ、165やかましい、166きまつた(こと)だ。167今日(こんにち)地位(ちゐ)(けつ)して(この)松若彦(まつわかひこ)()たのでない。168()はば祖先(そせん)名代(みやうだい)(おな)(こと)だ。169軽々(かるがる)しく(おれ)一了見(いちれうけん)では左様(さやう)(こと)出来(でき)るものか。170()先祖(せんぞ)(さま)地下(ちか)から()(おこ)し、171(ゆる)しを()けずばなるまい。172其方(そなた)には八岐(やまた)大蛇(をろち)魅入(みい)つて()るのであらう。173(けが)らはしい、174そちらへ()けツ』
175焼糞(やけくそ)になつて呶鳴(どな)りつけた。176捨子姫(すてこひめ)177……老人(としより)(あま)腹立(はらだ)てさすのも()(どく)だ、178ここらで(まく)切所(きりどころ)だ……と従順(じうじゆん)沈黙(ちんもく)()つて(しま)つた。179松若彦(まつわかひこ)(つゑ)をつき(なが)ら、180()()らしの(ため)庭先(にはさき)(はな)()むとて、181二足(ふたあし)三足(みあし)(そと)()(ところ)家僕(かぼく)新公(しんこう)(あわただ)しく(かへ)(きた)り、
182御前(ごぜん)(さま)(まをし)()げます』
183 松若彦(まつわかひこ)(おどろ)いて、
184『ヤ、185(まへ)(しん)ぢやないか。186(その)(あわ)てた様子(やうす)何事(なにごと)ぞ。187(また)プロ運動(うんどう)でもおつ(ぱじ)まつたのか』
188 (この)親爺(おやぢ)189プロ運動(うんどう)()()かると()えて、190(ふた)()にはプロ運動(うんどう)突発(とつぱつ)したのではないか191(たづ)ねるのが(この)(ごろ)習慣(しふくわん)となつて()た。
192新公(しんこう)(おほせ)(ごと)く、193たつた(いま)194赤切(あかぎれ)公園(こうゑん)(おい)て、195プロ階級(かいきふ)演説会(えんぜつくわい)(はじ)まり、196大変(たいへん)取締(とりしまり)衆生(しゆじやう)との衝突(しようとつ)で、197()まぶれ(さわ)ぎが勃発(ぼつぱつ)(いた)しました』
198松若(まつわか)『ナアニ、199プロ階級(かいきふ)演説会(えんぜつくわい)?、1991そして()まぶれ(さわ)ぎ、200(その)(あと)()うなつた』
201()(なが)ら、202(おどろ)いて(には)敷石(しきいし)(うへ)にドスンと尻餅(しりもち)をつき203……『アイタタツタ』と(つら)(しか)めて()る。
204新公(しんこう)『お(かげ)で、205(その)(さわぎ)鎮静(ちんせい)(いた)しましたが、206不思議(ふしぎ)(こと)には、207エンゼルだと()つて、208白馬(はくば)(またが)り、209妙齢(めうれい)美人(びじん)(あら)はれ210……松若彦(まつわかひこ)(わる)いが、211衆生(しゆじやう)(わる)い……テな(こと)(うた)ひましたら、212不思議(ふしぎ)(もの)でげすな、213ピタリと争闘(さうとう)()まりました。214(しか)しながら(その)エンゼルの(かほ)当家(たうけ)のお嬢様(ぢやうさま)にソツクリでした。215()(あそ)ばした(うま)も、216(やしき)のに寸分(すんぶん)(ちが)はぬ白馬(はくば)(ござ)ります。217()しも、2171嬢様(ぢやうさま)(たく)()られず白馬(はくば)()ないとすれば、218テツキリ常磐姫(ときはひめ)(さま)間違(まちが)(ござ)いますまい』
219松若(まつわか)今朝(けさ)から(ひめ)()らず、220(うま)()ないから、221あのお転婆娘(てんばむすめ)どつかの公園(こうゑん)散歩(さんぽ)()つたと(おも)つて()たが、222プロ運動(うんどう)(くは)はり()つたか。223そして衆生(しゆじやう)(まへ)松若彦(まつわかひこ)(わる)いなどと()へば、224()(なか)(たきぎ)(あぶら)をかけて(とび)()(やう)なものだ。225益々(ますます)プロ運動(うんどう)熾烈(しれつ)ならしめ、226国家(こくか)基礎(きそ)(あやふ)くする(こと)になる。227新公(しんこう)228()しも(ひめ)(かへ)つて()ても松若彦(まつわかひこ)(ゆる)さぬ(かぎ)り、229一歩(いつぽ)()れてはならぬぞ。230あーあ、231()()くて心配(しんぱい)する(おや)()いが、232()(ため)(おや)心配(しんぱい)せねばならぬか』
233新公(しんこう)御前(ごぜん)(さま)234()()(ため)()心配(しんぱい)になりますか。235さうすればお(かね)のある(ため)236爵位(しやくゐ)のある(ため)には一入(ひとしほ)()心配(しんぱい)(ござ)いませうな』
237松若(まつわか)爵位(しやくゐ)()(ため)238黄金(わうごん)()(ため)心配(しんぱい)心配(しんぱい)にはならぬ。239(この)老体(らうたい)もそれある(ため)(いき)をして()るのだ。240アツハヽヽヽ』
241(ひや)やかに(わら)(なが)ら、242(つゑ)(ちから)にエチエチと(おく)()さして(すす)()る。
243 新公(しんこう)(はうき)()にし(なが)ら、244(ひと)(つぶや)いて()る。
245『よい(とし)をして執着心(しふちやくしん)(ふか)老耄爺(おいぼれぢい)だな。246国司(こくし)(さま)から(もら)つたお菓子(くわし)葡萄酒(ぶだうしゆ)も、247(また)沢山(たくさん)政治家(せいぢか)(れん)出入(でいり)(もの)乾児(こぶん)(ども)から病気(びやうき)見舞(みまひ)だと()つて()つて()るサイダーにビール、248林檎(りんご)菓子(くわし)249(ひと)つも自分(じぶん)()はず(ひと)にも()()れやがらず、250(みな)(かね)にして郵便局(ゆうびんきよく)(あづ)け、251(かね)のたまるのを唯一(ゆゐいつ)(たのし)みとして()欲惚(よくぼ)(ぢぢ)だから、252サツパリ駄目(だめ)だワイ。253(おれ)(たち)にビールの一本(いつぽん)振舞(ふるま)つてよかりさうなものだのに、254毎日(まいにち)日日(ひにち)車力(しやりき)()んで()りにやりあがる。255本当(ほんたう)(けち)(ぢぢ)だ。256それだから()うしたものだ、257(おや)(しん)()()(らく)258孫乞食(まごこじき)()つて、259三代目(さんだいめ)になれば、260(この)財産(ざいさん)もスツカリ()んで(しま)ふのは(いま)から()えて()る。261松依別(まつよりわけ)さまの(この)(ごろ)悪原(あしはら)(がよ)ひと()つたら、262本当(ほんたう)痛快(つうくわい)だ。263印形(いんぎやう)(ぬす)()しては銀行(ぎんかう)から(かね)()し、264金銭(きんせん)湯水(ゆみづ)(ごと)くに使(つか)ひ、265大尽(だいじん)(あそ)びをやつて()らつしやるのに、266(よく)()(くら)んで、267(なに)()らずに()るとは可哀相(かあいさう)なものだな。268(かね)(こしら)へて(ばん)する身魂(みたま)と、269(かね)使(つか)身魂(みたま)とがあると()えるワイ。270アツハヽヽヽ』
271(ひと)(わら)つて()る。272其処(そこ)(うま)(またが)つて、273悠々(いういう)(かへ)つて()たのは盛装(せいさう)()らした常磐姫(ときはひめ)であつた。
274新公(しんこう)『ヤ、275(ぢやう)さま、276(かへ)りなさいませ。277貴方(あなた)はオレオン星座(せいざ)からお(くだ)りになつた、278エンゼルの松代姫(まつよひめ)さまぢや(ござ)りませぬかな』
279常磐(ときは)『ホヽヽヽ(しん)さま、280(まへ)()()たのかえ』
281新公(しんこう)『ヘーヘー貴女(あなた)のお芝居(しばゐ)(この)新公(しんこう)282目敏(めざと)くも看破(かんぱ)して()りましたが、283(しか)しながら衆生(しゆじやう)があれ(だけ)不思議(ふしぎ)がつて()るのに、284素破(すつぱ)()いちや面白(おもしろ)うないと(おも)つて、285(だま)つて(かへ)つて()ました。286そして御前(ごぜん)(さま)一寸(ちよつと)(はなし)ました(ところ)287大変(たいへん)()立腹(りつぷく)で、288……清家(せいか)(むすめ)がプロ運動(うんどう)煽動(せんどう)をする(やう)なことでは、289(この)(うち)へは()れられぬ、290門前払(もんぜんばらい)()はせ……とそれはそれはえらい(いきほひ)(ござ)いましたよ。291マア一寸(ちよつと)(この)(もん)(くぐ)るのは見合(みあ)はして(いただ)きませう。292御前(ごぜん)(さま)代理権(だいりけん)()つて()りますから(だん)じて()れませぬ』
293常磐(ときは)『ホヽヽヽ、294大分(だいぶん)面白(おもしろ)うなつて()たね。295さうすると父上(ちちうへ)今日(けふ)(かぎ)り、296(ひま)(くだ)さるのだらうか。297さうなれば、298(わらは)願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)だワ。299そんなら、300父上(ちちうへ)に、301(これ)つきり、302()にかかりませぬから、303……随分(ずいぶん)(おん)()大切(たいせつ)になさいませ……と()つたと(つた)へて()れ、304左様(さやう)なら』
305(こま)(かしら)立直(たてなほ)し、306(いで)()かむとするを、307新公(しんこう)(おどろ)いて、
308『あゝ、309()()しお嬢様(ぢやうさま)310少時(しばらく)()(くだ)さいませ。311(なに)(ほど)(きび)しく仰有(おつしや)つても、312()可愛(かあ)ゆう()(おや)(ござ)いませぬ。313貴方(あなた)()改心(かいしん)(くだ)さらば、314キツトお(ゆる)(くだ)さいますから、315御前(ごぜん)(さま)(うかが)つて()(まで)316マアマア一寸(ちよつと)()()(くだ)さいませ』
317常磐(ときは)『オイ(しん)さま、318折角(せつかく)解放(かいはう)された(わらは)を、319(ふたた)(くるし)める(やう)(こと)はして(くだ)さるな。320父上(ちちうへ)(その)伝言(でんごん)()(うへ)は、321(わらは)世界晴(せかいばれ)のしたやうな心持(こころもち)がして()た……左様(さやう)なら、322父上(ちちうへ)母上(ははうへ)(よろ)しう()つてお()れ』
323()(のこ)手綱(たづな)かいくり、324(やかた)門前(もんぜん)階段(かいだん)を、325『ハイハイ』と(うま)をいましめ(なが)(くだ)つて()く。326其処(そこ)へヅブ(ろく)()ふて、327(あに)松依別(まつよりわけ)懐手(ふところで)をし(なが)ら、328三尺帯(さんじやくおび)(しり)のあたりに()め、329自堕落(じだらく)(ふう)をして、330頬冠(ほほかむ)りを七分(しちぶ)三分(さんぶ)(かぶ)り、
331失恋(しつれん)したとて短気(たんき)()すな
332悪原廓(あしはらくるわ)(はな)()く……と。
333日々(ひにち)毎日(まいにち)悪原(あしはら)(がよ)
334(はや)親爺(おやぢ)()んで()しい……と。
335(いへ)親爺(おやぢ)雪隠(せんち)のそばの(かき)
336(しぶ)うて(きたな)うて(こま)こてくはれない……と』
337千鳥足(ちどりあし)になつて、338階段(かいだん)(のぼ)つて()ると、339(いもうと)(うま)とベタリ出会(でつくは)し、
340松依(まつより)『こんな(せま)(ところ)(うま)()りやがつて、341ドヽ何奴(どいつ)だい。342()(ところ)343一寸(ちよつと)渋皮(しぶかは)()けたナイスと()えるが、344一寸(ちよつと)(うま)から()りて()い。345握手(あくしゆ)(ひと)つもやつてやらア。346エー、347ゲー、348アツプー、349エー(くる)しい(くる)しい。350なんぼ(くる)しいても美人(びじん)(かほ)()りや気分(きぶん)(わる)くないものだ』
351 常磐姫(ときはひめ)352馬上(ばじやう)より、
353『あゝ()つともない、354(にい)さまぢや(ござ)いませぬか。355(わらは)常磐姫(ときはひめ)(ござ)いますよ』
356松依(まつより)(とき)(いま)357親爺(おやぢ)(ほろ)間際(まぎは)(かな)……とか(なん)とか仰有(おつしや)いましてね、358……あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、359これから()んで、360薬鑵頭(やくわんあたま)のお小言(こごと)頂戴(ちやうだい)するのかな』
361常磐(ときは)『コレ(にい)さま、362しつかりなさいませ。363(いもうと)(ござ)いますよ』
364松依(まつより)(いもうと)でも(なん)でも(かま)ふものか、365……(いも)()(なか)(へだ)つる吉野川(よしのがは)……((うた)悪原通(あしはらがよひ)でいきりぬく』
366 常磐姫(ときはひめ)()むを()ず、367(うま)からヒラリと飛下(とびお)松依別(まつよりわけ)(せな)(たた)(なが)ら、
368(にい)さま、369しつかりして(くだ)さいませ、370(わらは)(これ)から(ちち)(いかり)()れ、371家出(いへで)(いた)します。372貴方(あなた)はどうぞ両親(りやうしん)(こころ)(なほ)して、373()(つか)へて(くだ)さいませ。374(これ)(この)()(わか)れにならうも()れませぬから……』
375流石(さすが)気丈(きぢやう)常磐姫(ときはひめ)も、376(なみだ)湿(しめ)つた(こゑ)(しぼ)つて()る。377松依別(まつよりわけ)(はじ)めて(いもうと)(さと)り、378(にはか)()がついた(やう)に、
379『ヤア(いもうと)か、380一体(いつたい)何処(どこ)()くのだ』
381常磐(ときは)『ハイ、382(ちち)勘当(かんどう)されましたので、383(これ)から(たれ)(はばか)らず、384プロ運動(うんどう)にでも()かける(つも)りで(ござ)いますワ』
385松依(まつより)『ナアニ、386プロ運動(うんどう)? 結構(けつこう)々々(けつこう)387それも結構(けつこう)だが、388悪原(あしはら)(がよ)ひも結構(けつこう)だらう。389親爺(おやぢ)(やつ)衆生(しゆじやう)膏血(かうけつ)(しぼ)り、390沢山(たくさん)(かね)(ため)()きやがつたものだから、391()ぬにも()ねず、392()(ところ)へも()けず(くるし)んで()るから、393チツと(その)(かね)浪費(らうひ)し、394(ふか)(つみ)をチツトでも(かる)うしてやらうと(おも)つて、395(いま)(しき)りに孝行(かうかう)運動(うんどう)最中(さいちう)だ。396(まへ)(これ)からプロ運動(うんどう)をやり、397親爺(おやぢ)内閣(ないかく)(たふ)し、398チツと(つみ)()つてやれ。399(まへ)(これ)から親孝行(おやかうかう)(はげ)むがよいぞ、400左様(さやう)なら……』
401(また)もや(もん)をくぐり、
402松依別(まつよりわけ)(あに)悪原(あしはら)(いもと)(やつ)
403プロ運動(うんどう)孝行(かうかう)する……と』
404 新公(しんこう)(はうき)()つた(まま)405庭園(ていえん)(すみ)つこから(はし)つて()て、
406若様(わかさま)407御前(ごぜん)(さま)大変(たいへん)()立腹(りつぷく)(ござ)います。408どうぞ着物(きもの)着替(きか)へて、409這入(はい)(くだ)さいませぬと、410(その)ザマでお這入(はい)りになつては、411(おほき)(かみなり)()ちます。412すると吾々(われわれ)(まで)迷惑(めいわく)(いた)しますから、413チツと(ひく)(こゑ)でものを仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ』
414松依(まつより)『エツヘヽヽヽ、415面白(おもしろ)いな、416(むね)がスイとする(やう)(かみなり)一遍(いつぺん)()ちて(もら)ひたいものだ。417……地震(じしん)(かみなり)火事(くわじ)親爺(おやぢ)418親爺(おやぢ)(こは)くて大神楽(だいかぐら)()られぬ……と、419アーア(ろく)でもない(さけ)無茶(むちや)苦茶(くちや)に、420(さと)(あま)()()ひるものだから、421(うち)(かへ)つても()(さけ)()(のこ)つてけつかる。422423(しか)愉快(ゆくわい)だ、424……オイ親爺(おやぢ)425(いもうと)()()して、426どうする(つも)りだ。427(いもうと)()()すのなら、428何故(なぜ)(あに)から()()さぬのぢやい。429よう()()さぬのか、430(おれ)(はう)から()()てやらうか』
431とダミ(ごゑ)(ふり)()げて呶鳴(どな)つて()る。432松若彦(まつわかひこ)(なん)だか(めう)(こゑ)屋外(をくぐわい)(きこ)えるので、433(つゑ)をついて(あら)はれ(きた)り、434(まど)からソツと(のぞ)いて、435松依別(まつよりわけ)姿(すがた)(きも)(つぶ)し、436『アツ』と()つた(まま)(その)()(たふ)れ、437したたか(こし)()つて、438ウンウンと(うな)つて()る。439(やかた)(なか)(うへ)(した)への大騒動(おほさうどう)440(みづ)(くすり)医者(いしや)よと、441家令(かれい)家扶(かふ)家従(かじゆう)面々(めんめん)自動車(じどうしや)自用俥(じようしや)()ばして大活動(だいくわつどう)(はじ)()した。442松依別(まつよりわけ)懐手(ふところで)をし(なが)ら、443ブラリブラリと(また)もや門口(かどぐち)()して(いで)()く。
444大正一三・一・二三 旧一二・一二・一八 伊予 於山口氏邸、松村真澄録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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