霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一章 高熊山(たかくまやま)(謡曲調)〔六四六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻 篇:第1篇 神慮洪遠 よみ(新仮名遣い):しんりょこうえん
章:第1章 高熊山 よみ(新仮名遣い):たかくまやま 通し章番号:646
口述日:1922(大正11)年05月06日(旧04月10日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
梅咲き匂う春の夜半に、牛飼う男子の枕辺に忽然として異様な輝きが現れた。五色の玉が賎が伏屋の中を飛び回り、男子の身体に飛び込んだ。
男子は心機一転し、筆を取ると床の間の壁に天地大本大御神と書き下ろした。この世に神無きものと思いつめた青年が、恭敬礼拝神号を唱えつつ、我が身の罪を詫びた。折りしも、門の戸を叩いて訪れる者がある。
天教山の木花姫命の使い、松岡と名乗る神使は、男子を迎えに来たと言う。屋内に微妙の音楽が聞こえ、梅の花びらが男子に降りかかると、男子たちまち紫の衣に包まれた。
残し書きを置いて、神使に連れられて雲に乗り、山の口までやって来た。それまで洋服姿であった松岡神使は異様の白髪神人と化し、男子の手をとって千丈の岩谷の前に連れて来た。
高天原の移写という高熊山の岩窟には、四十八個の宝座があり、神々が神集うという。神使は、ここで男子に、現世の衣を脱いで瑞の御魂の真人となるようにと言い渡して去っていった。
男子はたちまち須弥仙山の上に立っていた。そこで出あったのは、小幡明神であった。小幡明神は、男子は五六七神世出現にあたり、丹州としてこの世に現れた御魂であるという。
気がつくと男子は、岩窟の前に端座していた。たちまち虚空に音楽が聞こえると、岩窟は壮麗な大宮殿となっていた。宮殿より、「瑞月」と呼ぶ声がする。黄金の霊鳥たちに導かれて、黄金の扉が開かれると、中より女神が現れた。
女神は、三千年の昔に国治立大神と共に、中津御国を後にして根底の国に至ったが、今、西王母の園の桃の実が実るときが来て、皇大神に奉るのだ、と語った。すると女神の姿は消えてしまった。
小幡明神に送られて、宇宙の外の世界を眺めて、地上を指して下り来る。見ると、以前の宝座の前であった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-03-29 17:57:38 文字数:2424 OBC :rm1901
愛善世界社版:13頁 八幡書店版:第4輯 33頁 修補版: 校定版:13頁 普及版:4頁 初版: ページ備考:
001 梅(うめ)咲(さ)き匂(にほ)ふ春(はる)の夜半(よは)、002牛(うし)飼(か)ふ男子(をのこ)の枕辺(まくらべ)に、003忽然(こつぜん)として現(あら)はれ出(い)でたる異様(いやう)の輝(かがや)き、004眼(まなこ)を睜(みは)り眺(なが)むれば、005世人(せじん)の無情(むじやう)残酷(ざんこく)を、006うら紫(むらさき)や青黄色(あをきいろ)、007神(かみ)の大道(おほぢ)も白玉(しらたま)や、008赤(あか)き心(こころ)の五色(ごしき)の玉(たま)は、009賤(しづ)が伏屋(ふせや)の室内(しつない)を、010右往(うわう)左往(さわう)に飛(と)び交(か)ひて、011何時(いつ)とはなしに男子(をのこ)の身体(しんたい)目蒐(めが)けて、012或(あるひ)は胸(むね)に、013或(あるひ)は腹(はら)に、014肩(かた)に背中(せなか)に滲(にじ)み込(こ)み、015男子(をのこ)は忽(たちま)ち心機(しんき)一転(いつてん)して、016三十路(みそぢ)に近(ちか)き現身(うつそみ)の、017命毛(いのちげ)の筆(ふで)執(と)るより早(はや)く、018苦労(くらう)する墨硯(すみすずり)の海(うみ)に、019うつす誠(まこと)の月照(つきてる)の、020神(かみ)の御霊(みたま)に照(て)らされて、021床(とこ)の間(ま)近(ちか)く立寄(たちよ)りつ、022壁(かべ)にさらさら書(か)き下(お)ろす、023天地(あめつち)大本(おほもと)大御神(おほみかみ)、024今日(けふ)は昨日(きのふ)に引替(ひきか)へて、025此(この)世(よ)に神(かみ)なきものをぞと、026思(おも)ひ詰(つ)めたる青年(わかもの)が、027恭敬(きようけい)礼拝(らいはい)神号(しんがう)を唱(とな)へつつ、028吾(わが)身(み)の罪(つみ)を詫(わ)ぶる折(をり)しも、029門(かど)の戸(と)を叩(たた)き訪(おとの)ふ者(もの)あり。
030神使(しんし)『吾(われ)こそは、031天教山(てんけうざん)に現(あら)はれ給(たま)ふ木(こ)の花姫(はなひめ)の御(おん)使(つかひ)、032弥勒(みろく)の御代(みよ)を松岡(まつをか)の、033梅花(ばいくわ)も開(ひら)く蓮葉(はちすば)の、034台(うてな)の国(くに)に導(みちび)かむ。035早(はや)く此(この)門(かど)あけさせ給(たま)へ』
036若男(わかいをとこ)『あら訝(いぶ)かしや、037此(この)真夜中(まよなか)に金門(かなど)を敲(たた)く人(ひと)の有(あ)りとは。038風(かぜ)も静(しづ)まり水(みづ)さへも、039子(ね)の正刻(しやうこく)に候(さふら)へば、040夜(よ)の明(あ)くるを待(ま)つて訪(おとづ)れ給(たま)へ』
041 松岡(まつをか)神使(しんし)は詞(ことば)も終(をは)らぬに、042戸(と)をさらりと引(ひ)き開(あ)け、043悠々(いういう)として入(い)り来(きた)り、
044神使(しんし)『吾(われ)は天教山(てんけうざん)の皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)使(つかひ)なり。045抑(そもそ)も木花(このはな)咲耶姫(さくやひめの)命(みこと)、046蓮華(はちす)の山(やま)に立(た)たせ給(たま)ひて、047西(にし)の空(そら)高(たか)く望(のぞ)ませ給(たま)へば、048瑞雲(ずゐうん)棚引(たなび)き、049星(ほし)の光(ひかり)奇(くし)く照(てら)させ給(たま)へば、050神(かみ)の仕組(しぐみ)の真人(しんじん)の現(あら)はれ給(たま)ふ瑞祥(ずゐしやう)ならむ。051汝(なんぢ)迅(と)く迅(と)く我(わが)神言(みこと)を奉(ほう)じ、052雲井(くもゐ)の空(そら)を翔(かけ)つけて、053天(あめ)の八重雲(やへくも)押開(おしひら)き、054心(こころ)の空(そら)も丹波(あかなみ)の、055青垣山(あをがきやま)を繞(めぐ)らせる、056穴太(あなを)の郷(さと)に出立(いでた)ちて、057我(わが)神言(みこと)を宣(の)り伝(つた)へ、058迎(むか)へ帰(かへ)れとの御(ご)神勅(しんちよく)なり。059早々(はやはや)吾(われ)に続(つづ)かせ、060天教山(てんけうざん)に参上(まゐのぼ)り給(たま)へ』
061 男子(をのこ)は益々(ますます)訝(いぶ)かりつ、062松岡(まつをか)神使(しんし)の顔(かほ)を打眺(うちなが)め、063暫(しば)し茫然(ばうぜん)として居(ゐ)たりけり。064時(とき)しもあれや一陣(いちぢん)の春風(しゆんぷう)烈(はげ)しく、065梅(うめ)の花片(はなびら)を撒(ま)いて、066家(いへ)の外面(そとも)を亘(わた)りゆく。067忽(たちま)ち屋内(をくない)に美妙(びめう)の音楽(おんがく)聞(きこ)え、068梅(うめ)の花片(はなびら)チラチラと、069男子(をのこ)が頭(かしら)に降(ふり)かかるよと見(み)る間(ま)に、070紫(むらさき)の被衣(かづき)に包(つつ)まれ、071あと白雲(しらくも)となりにける。
072若男(わかいをとこ)『嗚呼(あゝ)吾(われ)は空(そら)行(ゆ)く鳥(とり)なれや。073遥(はるか)に高(たか)き雲(くも)に乗(の)り、074地上(ちじやう)の人(ひと)が各自(めいめい)に、075喜怒(きど)哀楽(あいらく)に捉(とら)はれて、076手振(てぶ)り足振(あしぶ)りする様(さま)を、077吾(われ)を忘(わす)れて眺(なが)むなり。078実(げ)に面白(おもしろ)の人(ひと)の世(よ)や。079然(さ)れども余(あま)り興(きよう)に乗(の)り、080地上(ちじやう)に落(お)つる事(こと)もがな。081嗟(あゝ)、082大神(おほかみ)よ大神(おほかみ)よ、083千代(ちよ)に八千代(やちよ)に永久(とこしへ)に吾(わが)身(み)を守(まも)らせ給(たま)へかし』
084と唯(ただ)一筆(ひとふで)の落(おと)し書(がき)、085賤(しづ)が伏家(ふせや)に遺(のこ)し置(お)き、086松樹(しようじゆ)茂(しげ)れる山(やま)の口(くち)、087洋服姿(やうふくすがた)の松岡(まつをか)神使(しんし)、088俄(にはか)に白髪(はくはつ)異様(いやう)の神人(しんじん)と変化(へんげ)し、089男子(をのこ)が手(て)を把(と)り、090林(はやし)の茂(しげ)みをイソイソと、091進(すす)むで此処(ここ)に如月(きさらぎ)の、092九日(ここのか)の月(つき)西山(せいざん)に傾(かたむ)きて、093再(ふたた)び閉(と)ざす闇(やみ)の幕(まく)、094千丈(せんぢやう)の岩窟(いはや)の前(まへ)に着(つ)きにけり。
095 松岡(まつをか)神使(しんし)は男子(をのこ)に一礼(いちれい)し、
096神使(しんし)『此処(ここ)は名(な)におふ、097高天原(たかあまはら)の移写(いしや)と聞(きこ)えたる高熊山(たかくまやま)の岩窟(がんくつ)にて候(さふらふ)、098天地(あめつち)百(もも)の神(かみ)たちの、099時(とき)有(あ)つて神集(かむつど)ひに集(つど)ひ給(たま)ふ、100四十八(しじふはち)個(こ)の宝座(ほうざ)あり。101吾(われ)はこれにて袂(たもと)を別(わか)たむ。102汝(なんぢ)は此処(ここ)に現世(うつしよ)の粗(あら)き衣(きぬ)を脱(ぬ)ぎ、103瑞(みづ)の御霊(みたま)の真人(しんじん)として、104五六七(みろく)の神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)せよ。105さらばさらば』
106と云(い)ふかと見(み)れば、107姿(すがた)は消(き)えて白雲(しらくも)の、108彼方(あなた)の空(そら)に幽(かす)かに靉(たなび)く訝(いぶ)かしさ。109男子(をのこ)は忽(たちま)ち身体(しんたい)硬化(かうくわ)し、110時間(じかん)空間(くうかん)を超越(てうゑつ)し、111寒暑(かんしよ)の外(ほか)に立(た)ちて、112何時(いつ)とはなしに身変定(みかへる)の、113今(いま)の姿(すがた)と白装束(しらしやうぞく)、114黄金(こがね)の翼(つばさ)身(み)に備(そな)へ、115一道(いちだう)の空(そら)に輝(かがや)く光(ひかり)の架橋(かけはし)、116矢(や)を射(い)る如(ごと)く天(あめ)の八重雲(やへくも)切(き)り抜(ぬ)けて、117須弥仙(しゆみせん)山(ざん)の頂上(ちやうじやう)に、118早(はや)くも其(その)身(み)は立(た)ちにける。119白馬(はくば)に跨(またが)り、120白雲(はくうん)別(わ)けて駆来(かけきた)る一人(ひとり)の神人(しんじん)、121男子(をのこ)の前(まへ)に立(た)ち現(あら)はれ、122馬(うま)を乗(の)り棄(す)てツカツカと立寄(たちよ)り、123男子(をのこ)の左手(ゆんで)をシツカと握(にぎ)り、
124明神(みやうじん)『われは小幡(をばた)大明神(だいみやうじん)なり。125此(この)度(たび)五六七(みろく)の神世(しんせい)出現(しゆつげん)に際(さい)し、126天津(あまつ)神(かみ)国津(くにつ)神(かみ)の依(よ)さしのまにまに、127暫時(しばらく)丹州(たんしう)と現(あら)はれ給(たま)ふ汝(なんぢ)が御霊(みたま)、128現幽神(げんいうしん)三界(さんかい)の探険(たんけん)を命(めい)じ、129神業(しんげふ)に参加(さんか)せしめよとの神勅(しんちよく)なれば、130三十五(さんじふご)年(ねん)の昔(むかし)より、131木(こ)の花姫(はなひめ)と語(かた)らひて、132汝(なれ)が御霊(みたま)を拝領(はいりやう)し、133我(わ)が氏(うぢ)の子(こ)として生(うま)れ出(い)でしめたり。134ゆめゆめ疑(うたが)ふ事(こと)勿(なか)れ』
135 男子(をのこ)は驚(おどろ)き『ハイ』と一声(ひとこゑ)、136さし俯(うつむ)き、137涙(なみだ)に暮(く)るる折(をり)しもあれ、138松(まつ)吹(ふ)く風(かぜ)に覚(さま)されて、139四辺(あたり)を見(み)れば此(こ)は如何(いか)に、140処(ところ)はシカと分(わか)らねど、141何処(どこ)とはなしに見覚(みおぼ)えの、142有難(ありがた)や、143清(きよ)き岩窟(がんくつ)の前(まへ)に端坐(たんざ)し居(を)るこそ不思議(ふしぎ)なれ。144男子(をのこ)は首(かうべ)を傾(かたむ)け、
145若男(わかいをとこ)『人里(ひとざと)離(はな)れし此(この)深山(みやま)の奥(おく)、146何処(いづこ)の山(やま)かは知(し)らねども、147何(なん)とはなしに、148心(こころ)勇(いさ)ましき所(ところ)かな。149牛(うし)飼(か)ふ男子(をのこ)の昨日(きのふ)まで、150賤(しづ)の職業(みわざ)に励精(いそし)みし身(み)の、151四辺(あたり)に輝(かがや)く吾(わが)身(み)の服装(ふくさう)、152紫(むらさき)青(あを)赤(あか)白(しろ)黄色(きいろ)、153白地(しろぢ)に梅(うめ)の花(はな)は散(ち)り、154裳裾(もすそ)に松葉(まつば)の模様(もやう)、155何時(いつ)の間(ま)にかは更衣(きさらぎ)や、156忽(たちま)ち変(かは)る女神(めがみ)の姿(すがた)、157心(こころ)も凪(な)ぎて春風(はるかぜ)の、158木々(きぎ)の木(こ)の花(はな)撫(な)で渡(わた)る、159いとも長閑(のどか)な思(おも)ひなり』
160 忽(たちま)ち虚空(こくう)に音楽(おんがく)聞(きこ)え、161今迄(いままで)岩窟(がんくつ)と見(み)えしは、162夢(ゆめ)か現(うつつ)か幻(まぼろし)か、163際限(さいげん)もなく四方(よも)に展開(てんかい)せる、164荘厳(さうごん)無比(むひ)の大宮殿(だいきうでん)、165黄金(こがね)の甍(いらか)旭(あさひ)に輝(かがや)き、166眼下(がんか)の渓間(たにま)を眺(なが)むれば、167緑(みどり)漂(ただよ)ふ池(いけ)の面(も)に、168鴛鴦(をし)の比翼(つがひ)の此処(ここ)彼処(かしこ)、169時(とき)ならぬ菖蒲(あやめ)の花(はな)も咲(さ)きみだれ、170百鳥(ももとり)の唄(うた)ふ声(こゑ)、171天国(てんごく)浄土(じやうど)も斯(か)くやあらむと思(おも)はるる許(ばか)りなり。172嗚呼(ああ)訝(いぶ)かしや訝(いぶ)かしやと、173首(かうべ)を傾(かた)げ思案(しあん)に暮(く)るる時(とき)しもあれ、174宮殿(きうでん)の彼方(あなた)に声(こゑ)ありて、
175『瑞月(ずゐげつ)、176瑞月(ずゐげつ)』
177と呼(よ)ばせ給(たま)ふ。178男子(をのこ)は此(この)声(こゑ)に耳(みみ)を澄(す)ませ、
179若男(わかいをとこ)『瑞月(ずゐげつ)とは誰人(たれびと)なるか、180われより外(ほか)に人(ひと)も無(な)し。181怪(あや)しき事(こと)よ』
182と佇(たたず)む折(をり)しも、183黄金(こがね)の翼(つばさ)を飜(ひるがへ)し、184此(この)場(ば)に向(むか)つて現(あら)はれ来(きた)る、185黄金(こがね)の鵄(とび)を先頭(せんとう)に、186孔雀(くじやく)、187鳳凰(ほうわう)、188迦陵(かりよう)頻伽(びんが)、189八咫烏(やあたがらす)、190何時(いつ)とはなしに王仁(おに)の身(み)は、191又(また)もや月(つき)の付近(まぢか)まで進(すす)み居(ゐ)るよと見(み)る中(うち)に、192黄金(こがね)の扉(とびら)は開(ひら)かれて、193中(なか)より現(あら)はれ給(たま)ふ梅花(ばいくわ)の如(ごと)き女神(めがみ)の姿(すがた)、194二人(ふたり)の侍女(じぢよ)に松梅(まつうめ)の小枝(こえだ)を持(も)たせ、195御(おん)手(て)に玉(たま)を携(たづさ)へて、196言葉(ことば)静(しづ)かに宣(の)り給(たま)ふ。
197女神(めがみ)『われこそは三千(さんぜん)年(ねん)の其(その)昔(むかし)、198国治立(くにはるたち)の大神(おほかみ)と共(とも)に、199中津(なかつ)御国(みくに)の聖地(せいち)を後(あと)にして、200根底(ねそこ)の国(くに)に到(いた)りしが、201一度(いちど)に開(ひら)く梅花(ばいくわ)の時(とき)を得(え)て、202再(ふたた)び天(てん)に舞(ま)ひ昇(のぼ)り、203今(いま)は西王母(せいわうぼ)が園(その)の桃(もも)、204花(はな)散(ち)り実(み)のる時(とき)ぞ来(き)て、205皇(すめ)大神(おほかみ)に奉(たてまつ)らむ。206時(とき)遅(おく)れては一大事(いちだいじ)、207小幡(をばた)明神(みやうじん)の承諾(うべなひ)に依(よ)りて、208今(いま)より汝(なれ)が命(みこと)の体(たい)を借(か)らむ』
209と言(い)ふかと見(み)れば、210姿(すがた)は消(き)えて白煙(しらけむり)、211忽(たちま)ち其(その)身(み)は天馬(てんば)に跨(またが)り、212小幡(をばた)明神(みやうじん)に送(おく)られて、213宇宙(うちう)の外(そと)の世界(せかい)を眺(なが)め、214地上(ちじやう)を指(さ)して降(くだ)り来(く)る。215此処(ここ)は何処(いづく)ぞ、216以前(いぜん)の宝座(ほうざ)の前(まへ)、217不思議(ふしぎ)なりける次第(しだい)なり。
218(大正一一・五・六 旧四・一〇 松村真澄録)
219○
220 本章(ほんしやう)は、221謡曲(えうきよく)まがひに口述(こうじゆつ)してありますから、222専門(せんもん)の方々(かたがた)は言葉(ことば)の長短(ちやうたん)を補(おぎな)ひ又(また)は削(けづ)り謡(うた)ひよく直(なほ)して見(み)て下(くだ)さい。
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