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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第19巻(午の巻)
序
凡例
総説三十三魂
第1篇 神慮洪遠
第1章 高熊山
第2章 鶍の嘴
第3章 千騎一騎
第4章 善か悪か
第2篇 意外の意外
第5章 零敗の苦
第6章 和合と謝罪
第7章 牛飲馬食
第8章 大悟徹底
第3篇 至誠通神
第9章 身魂の浄化
第10章 馬鹿正直
第11章 変態動物
第12章 言照姫
第4篇 地異天変
第13章 混線
第14章 声の在所
第15章 山神の滝
第16章 玉照彦
第17章 言霊車
霊の礎(五)
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霊界物語
>
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第19巻(午の巻)
> 第1篇 神慮洪遠 > 第3章 千騎一騎
<<< 鶍の嘴
(B)
(N)
善か悪か >>>
第三章
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
〔六四八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
篇:
第1篇 神慮洪遠
よみ(新仮名遣い):
しんりょこうえん
章:
第3章 千騎一騎
よみ(新仮名遣い):
せんきいっき
通し章番号:
648
口述日:
1922(大正11)年05月06日(旧04月10日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高山彦は、聖地を指して白瀬川のほとりにやってきた。降り続く五月雨に河水は氾濫して渡れない。
高山彦は悔しそうに世継王山を見ていると、後から黒姫が追いついてきた。黒姫は早く河を渡れ、と高山彦をせっつく。高山彦は、どうしてこの激流が渡れようかと黒姫に返すが、黒姫はたちまち大蛇の姿となって河を渡ってしまった。
高山彦はそれを見て震えている。黒姫の大蛇の体から黒雲が出て、高山彦を包むと、高山彦を河の向こうに渡してしまった。黒姫は大蛇から元の姿に戻った。
高山彦は、黒姫の大蛇の姿を見てすっかり恐れをなしてしまった。黒姫は構わず、高山彦を前に立てて世継王山に進んで行く。
世継王山の館では、馬公と鹿公が夜の門番をしていた。二人は月を見ながら俳句を読み合っている。すると、二人は黒姫と高山彦がやってくるのを見つけた。鹿公は、門内に入ると馬公を外に置いたまま、錠を閉めてしまった。
黒姫は、門を開けてくれと頼むが、鹿公は錠を下ろしたまま青彦に注進した。黒姫は馬公が門外に締め出されているのを見つけ、人質にしてしまう。
門の内外で、黒姫と青彦、紫姫、鹿公は互いの主張を言い合って譲らない。黒姫は馬公を人質に取っていても役に立たないと、馬公を放した。紫姫が天の数歌を歌うと、黒姫と高山彦は逃げてしまった。
鹿公は馬公を門内に迎え入れた。馬公は、黒姫は自分を縛るとき、神様にお詫びをしてきつく縛らなかった、と報告すると、青彦はこれを聞いて首を垂れて思案に沈んでしまう。
紫姫は感謝の祝詞を上げるが、玉照姫は激しく泣き出した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-03-30 17:23:20
OBC :
rm1903
愛善世界社版:
31頁
八幡書店版:
第4輯 40頁
修補版:
校定版:
31頁
普及版:
13頁
初版:
ページ備考:
001
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
を
後
(
あと
)
にし、
002
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
003
漸
(
やうや
)
く
白瀬川
(
しらせがは
)
の
畔
(
ほとり
)
に
着
(
つ
)
けば、
004
降
(
ふ
)
り
続
(
つづ
)
く
五月雨
(
さみだれ
)
に
河水
(
かすゐ
)
汎濫
(
はんらん
)
し、
005
波
(
なみ
)
堆
(
うづたか
)
く
渡川
(
とせん
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
不可能
(
ふかのう
)
となりぬ。
006
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
川
(
かは
)
の
岸
(
きし
)
を
下
(
くだ
)
りつ、
007
上
(
のぼ
)
りつ、
008
地団太
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
みて
口惜
(
くや
)
しがり、
009
現在
(
げんざい
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
聖地
(
せいち
)
世継王
(
よつわう
)
山
(
ざん
)
を
眺
(
なが
)
め、
010
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
御
(
ご
)
座所
(
ざしよ
)
は
彼方
(
かなた
)
かと
憧憬
(
どうけい
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られて
狂気
(
きやうき
)
の
如
(
ごと
)
くなり
居
(
ゐ
)
たり。
011
斯
(
かか
)
る
処
(
ところ
)
へ
息
(
いき
)
せき
切
(
き
)
つて
馳来
(
はせきた
)
りしは、
012
妻
(
つま
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
なりける。
013
高山彦
『ヤーお
前
(
まへ
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
か、
014
何
(
なに
)
しに
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのだ』
015
黒姫
『
高山
(
たかやま
)
さま、
016
ソラ
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
はつしやる。
017
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまい。
018
あれ
彼
(
あ
)
の
向
(
むか
)
ふに
見
(
み
)
ゆるは
世継王
(
よつわう
)
の
神山
(
しんざん
)
、
019
三五教
(
あななひけう
)
の
隠
(
かく
)
れ
場所
(
ばしよ
)
、
020
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
は
彼
(
あ
)
の
森
(
もり
)
の
しげみ
に
御座
(
ござ
)
るであらう。
021
サアサア
早
(
はや
)
く
渡
(
わた
)
りなさい』
022
高山彦
『
渡
(
わた
)
れと
云
(
い
)
つたつて
此
(
こ
)
の
激流
(
げきりう
)
が、
023
どうして
渡
(
わた
)
れやうか』
024
黒姫
『
生命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
に
渡
(
わた
)
るのだよ。
025
それだから
男
(
をとこ
)
は
真逆
(
まさか
)
の
時
(
とき
)
に
間
(
ま
)
に
合
(
あは
)
ぬと
云
(
い
)
ふのだ。
026
お
前
(
まへ
)
さまも
鼻高
(
はなだか
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
の
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になつて
中空
(
ちうくう
)
高
(
たか
)
く
渡
(
わた
)
りなさい』
027
高山彦
『ソンナことを
言
(
い
)
つたつて、
028
さう
易々
(
やすやす
)
と
元
(
もと
)
の
体
(
からだ
)
に
還元
(
くわんげん
)
することは
出来
(
でき
)
ないよ』
029
黒姫
『
還元
(
くわんげん
)
出来
(
でき
)
ないと
云
(
い
)
ふ
道理
(
だうり
)
があらうか、
030
貴方
(
あなた
)
の
信仰
(
しんかう
)
が
足
(
た
)
らぬからだ。
031
火
(
ひ
)
になつても
蛇
(
じや
)
になつても、
032
此
(
こ
)
の
川
(
かは
)
渡
(
わた
)
らな
置
(
お
)
くものか』
033
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
034
見
(
み
)
るも
恐
(
おそ
)
ろしき
大蛇
(
だいじや
)
の
姿
(
すがた
)
となり、
035
激流
(
げきりう
)
怒濤
(
どたう
)
の
真
(
ま
)
ン
中
(
なか
)
を
目蒐
(
めが
)
けて、
036
ザンブとばかり
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
037
漸
(
やうや
)
く
対岸
(
むかうぎし
)
に
渡
(
わた
)
り
付
(
つ
)
きたり。
038
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
此
(
こ
)
の
気色
(
けしき
)
に
恐
(
おそ
)
れ
戦
(
をのの
)
き、
039
ガタガタ
慄
(
ぶる
)
ひの
最中
(
さいちう
)
、
040
蛇体
(
じやたい
)
の
身体
(
からだ
)
より
黒雲
(
くろくも
)
起
(
おこ
)
り
一団
(
いちだん
)
となりて、
041
川
(
かは
)
の
上空
(
じやうくう
)
を
此方
(
こなた
)
に
渡
(
わた
)
り
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
身体
(
からだ
)
を
包
(
つつ
)
むよと
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
042
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
川
(
かは
)
の
対岸
(
むかうぎし
)
にバタリと
落
(
お
)
ち
来
(
き
)
たりぬ。
043
蛇体
(
じやたい
)
は
忽
(
たちま
)
ち
元
(
もと
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
と
変
(
へん
)
じ、
044
黒姫
『サア
高山
(
たかやま
)
さま、
045
コンナ
放
(
はな
)
れ
業
(
わざ
)
は
一生
(
いつしやう
)
に
一度
(
いちど
)
より
出来
(
でき
)
ないのだが、
046
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
047
黒姫
(
くろひめ
)
が
信念
(
しんねん
)
の
力
(
ちから
)
が
現
(
あら
)
はれたのだ。
048
サアサアこれに
怖
(
おそ
)
れず、
049
今後
(
こんご
)
は
斯様
(
かやう
)
なことは
無
(
な
)
い
程
(
ほど
)
に、
050
妾
(
わたし
)
に
続
(
つづ
)
いてお
出
(
い
)
でなさい』
051
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
慄
(
ふる
)
ひ
声
(
ごゑ
)
で、
052
高山彦
『ナント
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
恐
(
おそ
)
ろしいものだなア』
053
黒姫
『コレ
高山
(
たかやま
)
さま、
054
お
前
(
まへ
)
はモーこれで
愛想
(
あいさう
)
がつきただらうな。
055
愛想
(
あいさう
)
をつかすなら、
056
つかして
見
(
み
)
なさい、
057
此方
(
こちら
)
にも
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へがありますよ』
058
と
冷
(
ひや
)
やかに
笑
(
わら
)
ふ。
059
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
眼
(
め
)
を
瞬
(
しばた
)
たき、
060
高
(
たか
)
き
鼻
(
はな
)
を
手
(
て
)
の
甲
(
かふ
)
で
擦
(
こす
)
り
乍
(
なが
)
ら、
061
高山彦
『イヤ
何事
(
なにごと
)
も
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
御
(
お
)
任
(
まか
)
せする、
062
此
(
この
)
後
(
ご
)
は
一切
(
いつさい
)
構
(
かま
)
ひ
事
(
ごと
)
は
致
(
いた
)
さぬ。
063
貴女
(
あなた
)
のお
好
(
す
)
きの
様
(
やう
)
に
御
(
お
)
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
さいませ』
064
黒姫
『
大分
(
だいぶ
)
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ましたナア、
065
それでこそ
妾
(
わたし
)
の
立派
(
りつぱ
)
なハズバンドだ。
066
サアサア
往
(
ゆ
)
きませう、
067
エヽなンとした
足
(
あし
)
つきじやいな、
068
確
(
しつか
)
りしなさらぬか、
069
此
(
この
)
川
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
るが
最後
(
さいご
)
、
070
油断
(
ゆだん
)
のならぬ
敵
(
てき
)
の
縄張
(
なはば
)
りだよ』
071
高山彦
『さうだと
云
(
い
)
つて、
072
ナンダか
脚
(
あし
)
がワナワナして
歩
(
ある
)
けないのだもの』
073
黒姫
『エー
何
(
なん
)
とした
卑怯
(
ひけふ
)
な
人
(
ひと
)
だらう。
074
誰
(
たれ
)
が
恐
(
こは
)
いのだい。
075
たか
が
知
(
し
)
れた
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
076
青彦
(
あをひこ
)
の
連中
(
れんちう
)
ぢやないかいナ』
077
高山彦
『
青彦
(
あをひこ
)
、
078
紫姫
(
むらさきひめ
)
も、
079
ナンニも
恐
(
こわ
)
くはない。
080
恐
(
こわ
)
いのはお
前
(
まへ
)
の
性念
(
しやうねん
)
だよ』
081
黒姫
『
高山
(
たかやま
)
さま、
082
斯
(
こ
)
う
見
(
み
)
えても
矢張
(
やつぱり
)
女
(
をんな
)
は
女
(
をんな
)
だよ。
083
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさるな。
084
これでも
又
(
また
)
大事
(
だいじ
)
にして
可愛
(
かあい
)
がつて
上
(
あ
)
げますワ』
085
高山彦
(
たかやまひこ
)
はブルブル
慄
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
086
高山彦
『ヤーもう
可愛
(
かあい
)
がつて
貰
(
もら
)
はいでも
結構
(
けつこう
)
です。
087
私
(
わたくし
)
の
様
(
やう
)
なものは
貴女
(
あなた
)
のお
側
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
るのは
勿体
(
もつたい
)
ない。
088
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
い。
089
どうぞ
草履持
(
ざうりもち
)
になつとして
下
(
くだ
)
さいな』
090
黒姫
『エー
此
(
この
)
人
(
ひと
)
は
又
(
また
)
何
(
なん
)
とした
卑怯
(
ひけふ
)
なことを
云
(
い
)
ふのだらう。
091
アヽもうすつかり
愛想
(
あいさう
)
が
尽
(
つ
)
きちやつた、
092
嫌
(
いや
)
になつて
了
(
しま
)
ふワ』
093
高山彦
『どうぞ
愛想
(
あいさう
)
をつかして
下
(
くだ
)
さいな。
094
嫌
(
いや
)
になつて
貰
(
もら
)
へば
大変
(
たいへん
)
に
好都合
(
かうつがふ
)
です』
095
黒姫
(
くろひめ
)
は
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし、
096
黒姫
『ソリヤ
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだい、
097
嫌
(
いや
)
になつて
呉
(
く
)
れと
言
(
い
)
つたつて、
098
今
(
いま
)
となつて
誰
(
たれ
)
がソンナ
軽挙
(
かるはづみ
)
なことをするものかいな。
099
蛇
(
へび
)
に
狙
(
ねら
)
はれた
蛙
(
かはづ
)
ぢやと
思
(
おも
)
つて
諦
(
あきら
)
めなさいよ』
100
高山彦
『ハイ
諦
(
あきら
)
めます。
101
何事
(
なにごと
)
も
因縁
(
いんねん
)
づくぢやと
思
(
おも
)
つて、
102
コンナ
悪縁
(
あくえん
)
も
辛抱
(
しんばう
)
致
(
いた
)
しませう。
103
前生
(
ぜんせい
)
の
悪
(
わる
)
い
因縁
(
いんねん
)
が
報
(
むく
)
うて
来
(
き
)
たのだから』
104
黒姫
『
何
(
なに
)
が
悪縁
(
あくえん
)
だへ。
105
お
前
(
まへ
)
さまは
男
(
をとこ
)
の
心
(
こころ
)
と
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
、
106
直
(
すぐ
)
に
飽縁
(
あくえん
)
だらうが、
107
妾
(
わたし
)
は
何処迄
(
どこまで
)
も
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
で、
108
何処
(
どこ
)
々々
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
好
(
い
)
いて
好
(
す
)
いてすき
透
(
とう
)
つてゐますよ、
109
ホヽヽヽヽ』
110
高山彦
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
、
111
何卒
(
どうぞ
)
人
(
ひと
)
を
一人
(
ひとり
)
助
(
たす
)
けると
思
(
おも
)
つて
私
(
わたくし
)
の
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
112
黒姫
『そりや
又
(
また
)
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのだえ、
113
モー
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は
赦
(
ゆる
)
してたまるものか。
114
竜宮
(
りうぐう
)
の
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
まで
伴
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
呑
(
の
)
みたり、
115
噛
(
か
)
みたり、
116
舐
(
ねぶ
)
つたり
大事
(
だいじ
)
にして
上
(
あ
)
げようぞへ』
117
高山彦
『モー
大事
(
だいじ
)
にして
貰
(
もら
)
はいでも
結構
(
けつこう
)
です。
118
何卒
(
どうぞ
)
其
(
そ
)
の
御
(
お
)
心遣
(
こころづか
)
ひは
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
になさつて
下
(
くだ
)
さいませ。
119
返礼
(
へんれい
)
の
仕方
(
しかた
)
がありませぬワ』
120
黒姫
『エーわからぬ
男
(
をとこ
)
だ。
121
話
(
はなし
)
は
後
(
あと
)
で
悠
(
ゆつ
)
くりして
上
(
あ
)
げよう。
122
サア
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
往
(
い
)
かねばなるまい。
123
恰度
(
ちやうど
)
日
(
ひ
)
も
暮
(
く
)
れて
来
(
き
)
た』
124
と
高山彦
(
たかやまひこ
)
を
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
たせ、
125
夏草
(
なつぐさ
)
茂
(
しげ
)
る
露野
(
つゆの
)
ケ
原
(
はら
)
を
世継王
(
よつわう
)
の
山麓
(
さんろく
)
指
(
さ
)
して
辿
(
たど
)
り
行
(
ゆ
)
く。
126
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
十三夜
(
じふさんや
)
の
月
(
つき
)
は、
127
楕円形
(
だゑんけい
)
の
鏡
(
かがみ
)
を
空
(
そら
)
に
照
(
てら
)
してゐる。
128
馬公
(
うまこう
)
、
129
鹿公
(
しかこう
)
は
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
眺
(
なが
)
め、
130
馬公
『アヽ
何
(
なん
)
といい
月
(
つき
)
ぢやないか、
131
のう
鹿公
(
しかこう
)
』
132
鹿公
『ソリヤ
馬公
(
うまこう
)
、
133
きまつた
事
(
こと
)
だ。
134
五月
(
ごぐわつ
)
五日
(
いつか
)
の
宵
(
よひ
)
に
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
がお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばし、
135
記念
(
きねん
)
すべき
月
(
つき
)
だもの。
136
古往
(
こわう
)
今来
(
こんらい
)
コンナよい
月
(
つき
)
があるものかい。
137
それに
就
(
つい
)
ても
可哀相
(
かわいさう
)
なのは
黒姫
(
くろひめ
)
ぢやないか。
138
この
通
(
とほ
)
り
御空
(
みそら
)
に
水晶
(
すゐしやう
)
の
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
が
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
り、
139
この
又
(
また
)
屋内
(
をくない
)
にもお
玉
(
たま
)
さまに、
140
玉照姫
(
たまてるひめ
)
さまぢや、
141
之
(
これ
)
を
三
(
み
)
つ
合
(
あは
)
せて
三
(
み
)
つの
御魂
(
みたま
)
と
云
(
い
)
つても
宜
(
い
)
いワ。
142
アヽ、
143
濡
(
ぬ
)
れて
出
(
で
)
たやうに
思
(
おも
)
ふや
雨後
(
うご
)
の
月
(
つき
)
144
とは
如何
(
どう
)
だ』
145
馬公
『ヤー
鹿公
(
しかこう
)
、
146
貴様
(
きさま
)
俳句
(
はいく
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか』
147
鹿公
『ハイ
句
(
く
)
でも、
148
歌
(
うた
)
でも、
149
何
(
なん
)
でも
知
(
し
)
らぬものは
無
(
な
)
い。
150
何
(
なん
)
なと
言
(
い
)
うて
見
(
み
)
よ。
151
当意
(
たうい
)
即妙
(
そくめう
)
、
152
直
(
ただち
)
に
作
(
つく
)
つて
御
(
お
)
目
(
め
)
にかける
鹿公
(
しかこう
)
だよ』
153
馬公
『ソンナラ
今
(
いま
)
彼
(
あ
)
のお
月
(
つき
)
さまに
黒雲
(
くろくも
)
がさしかかり、
154
今
(
いま
)
や
隠
(
かく
)
さうとして
居
(
ゐ
)
る。
155
彼
(
あ
)
れを
一
(
ひと
)
つやつて
見
(
み
)
よ』
156
鹿公
『
黒姫
(
くろひめ
)
に
玉照姫
(
たまてるひめ
)
は
包
(
つつ
)
まれて
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
むとす
青彦
(
あをひこ
)
の
空
(
そら
)
』
157
馬公
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
むのだ。
158
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
さぬかい、
159
鹿公
(
しかこう
)
奴
(
め
)
』
160
鹿公
『
大方
(
おほかた
)
馬公
(
うまこう
)
がさうお
出
(
いで
)
ると
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
161
今度
(
こんど
)
が
真剣
(
しんけん
)
だよ。
162
青彦
(
あをひこ
)
や
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
大空
(
おほぞら
)
に
月
(
つき
)
の
玉照姫
(
たまてるひめ
)
ぞ
輝
(
かがや
)
く
163
とは
如何
(
どう
)
だ』
164
馬公
『ヨーシ モー
一
(
ひと
)
つやれ』
165
鹿公
『いくらでも、
166
月
(
つき
)
を
題
(
だい
)
にするのなら
月
(
つき
)
は
先祖
(
せんぞ
)
よ。
167
月
(
つき
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
御
(
ご
)
先祖
(
せんぞ
)
様
(
さま
)
であるぞよ。
168
馬公
(
うまこう
)
志
(
し
)
つかり
聞
(
き
)
けよアーン、
169
月
(
つき
)
に
叢雲
(
むらくも
)
花
(
はな
)
には
嵐
(
あらし
)
170
東
(
ひがし
)
に
旗雲
(
はたぐも
)
箒星
(
はうきぼし
)
171
天
(
あま
)
の
河原
(
かはら
)
は
北南
(
きたみなみ
)
172
星
(
ほし
)
の
流
(
なが
)
れは
久方
(
ひさかた
)
の
173
フサの
御国
(
みくに
)
に
落
(
お
)
ちて
行
(
ゆ
)
く
174
高山彦
(
たかやまひこ
)
や
短山
(
ひきやま
)
の
175
嶺
(
みね
)
より
昇
(
のぼ
)
る
月影
(
つきかげ
)
も
176
今日
(
けふ
)
は
芽出度
(
めでた
)
き
十三夜
(
じふさんや
)
177
たとへ
黒姫
(
くろひめ
)
かかるとも
178
伊吹
(
いぶき
)
の
狭霧
(
さぎり
)
に
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らし
179
忽
(
たちま
)
ち
変
(
かは
)
る
大御空
(
おほみそら
)
180
紫姫
(
むらさきひめ
)
や
青彦
(
あをひこ
)
の
181
清
(
きよ
)
き
姿
(
すがた
)
となりにけり。
182
とは
如何
(
どう
)
だ』
183
馬公
『
随分
(
ずゐぶん
)
長
(
なが
)
い
歌
(
うた
)
だのう、
184
鹿公
(
しかこう
)
』
185
鹿公
『
長
(
なが
)
いとも
長
(
なが
)
いとも、
186
今
(
いま
)
に
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
が
黒
(
くろ
)
い
顔
(
かほ
)
してやつて
来
(
く
)
るのだ。
187
横
(
よこ
)
に
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
と、
188
縦
(
たて
)
に
長
(
なが
)
い
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
青瓢箪
(
あをべうたん
)
だ。
189
うまくやらぬと
馬鹿
(
うましか
)
を
見
(
み
)
るぞよ。
190
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
は
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
違
(
ちが
)
ひはないぞよ』
191
馬公
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ、
192
モー
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
はうかい。
193
オイオイ
彼
(
あ
)
れを
見
(
み
)
よ、
194
二
(
ふた
)
つの
影
(
かげ
)
が
蠢
(
うごめ
)
いて
居
(
ゐ
)
るぢやないか、
195
鹿
(
しか
)
とは
判
(
わか
)
らぬけれど』
196
鹿公
(
しかこう
)
『ヨオ
来居
(
きを
)
つたぞ、
197
太
(
ふと
)
い
短
(
みじか
)
い
奴
(
やつ
)
と
細
(
ほそ
)
い
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
198
ヤー
此奴
(
こいつ
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
だ。
199
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
ると
空
(
そら
)
のお
月
(
つき
)
さまの
様
(
やう
)
に、
200
黒姫
(
くろひめ
)
に
呑
(
の
)
まれて
了
(
しま
)
つちや、
201
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
が
一大事
(
いちだいじ
)
だ、
202
サアサア
戸
(
と
)
を
締
(
し
)
めろ』
203
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
204
鹿公
(
しかこう
)
は
飛込
(
とびこ
)
みてピシヤリと
錠
(
ぢやう
)
を
下
(
お
)
ろしたり。
205
馬公
『オイ
俺
(
おれ
)
も
入
(
い
)
れて
呉
(
く
)
れないか』
206
鹿公
『エー
邪魔臭
(
じやまくさ
)
い。
207
貴様
(
きさま
)
は
何処
(
どこ
)
か
叢
(
くさむら
)
の
中
(
なか
)
へ
潜伏
(
せんぷく
)
して
居
(
を
)
れ、
208
馬
(
うま
)
じやないか。
209
俺
(
おれ
)
は
中
(
なか
)
から
此
(
こ
)
の
関所
(
せきしよ
)
を
死守
(
ししゆ
)
するのだ』
210
二
(
ふた
)
つの
影
(
かげ
)
は
段々
(
だんだん
)
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
く
)
る。
211
鹿公
(
しかこう
)
は
何
(
ど
)
うしても
開
(
あ
)
けぬ。
212
馬公
(
うまこう
)
は
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
茅
(
かや
)
の
しげみ
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
して
慄
(
ふる
)
ひ
居
(
ゐ
)
る。
213
二人
(
ふたり
)
の
影
(
かげ
)
は
戸口
(
とぐち
)
に
現
(
あら
)
はれたり。
214
一人
(
ひとり
)
は
女
(
をんな
)
、
215
一人
(
ひとり
)
は
男
(
をとこ
)
、
216
女(黒姫)
『モシモシ
一寸
(
ちよつと
)
此処
(
ここ
)
を
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
217
鹿公
『ナンダ、
218
暮六
(
くれむ
)
つ
下
(
さが
)
つてから
他
(
ひと
)
の
家
(
うち
)
を
訪
(
おとづ
)
れる
奴
(
やつ
)
があるかい。
219
夜
(
よ
)
は
魔
(
ま
)
の
世界
(
せかい
)
だ、
220
用
(
よう
)
があれば
明日
(
あす
)
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
い。
221
此
(
この
)
門口
(
かどぐち
)
は
鹿公
(
しかこう
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
開
(
あ
)
けることは
出来
(
でき
)
ないぞよ』
222
女(黒姫)
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いませうが、
223
ホンのチヨイトで
宜
(
よろ
)
しい、
224
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
許
(
ばか
)
り
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
225
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げ
度
(
た
)
い
一大事
(
いちだいじ
)
がございます』
226
鹿公
(
しかこう
)
、
227
戸口
(
とぐち
)
に
立
(
た
)
つて、
228
鹿公
『
其方
(
そちら
)
で
一大事
(
いちだいじ
)
があつても
此方
(
こちら
)
も
亦
(
また
)
一大事
(
いちだいじ
)
だ。
229
ナント
言
(
い
)
つても
開
(
あ
)
けないよ。
230
モシモシ
青彦
(
あをひこ
)
さま、
231
貴方
(
あなた
)
一寸
(
ちよつと
)
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいな。
232
どうやら
黒姫
(
くろひめ
)
がやつて
来
(
き
)
たやうですワ』
233
青彦
(
あをひこ
)
は
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
より、
234
青彦
『
誰
(
たれ
)
がなんと
言
(
い
)
つても
開
(
あ
)
けられないぞ』
235
鹿公
『さうだと
言
(
い
)
つて
馬公
(
うまこう
)
が
外
(
そと
)
に、
236
這入
(
はい
)
り
損
(
そこ
)
ねて
隠
(
かく
)
れて
居
(
ゐ
)
ますがな』
237
黒姫
(
くろひめ
)
は
此
(
こ
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
き、
238
辺
(
あた
)
りの
叢
(
くさむら
)
を
尋
(
たづ
)
ね、
239
黒姫
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
馬公
(
うまこう
)
ぢやな。
240
サアもう
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
241
コレコレ
高山
(
たかやま
)
さま、
242
用意
(
ようい
)
の
綱
(
つな
)
をお
出
(
だ
)
しなさい。
243
エー
何
(
なに
)
をビリビリ
地震
(
ぢしん
)
の
様
(
やう
)
に
慄
(
ふる
)
ふて
居
(
ゐ
)
なさる。
244
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
獣
(
けもの
)
だな』
245
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
自分
(
じぶん
)
の
細帯
(
ほそおび
)
を
解
(
ほど
)
いて、
246
馬公
(
うまこう
)
を
縛
(
しば
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
247
黒姫
『サア
馬公
(
うまこう
)
、
248
此方
(
こつち
)
へ
来
(
く
)
るのだよ。
249
此
(
この
)
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
ける
迄
(
まで
)
、
250
お
前
(
まへ
)
は
人質
(
ひとじち
)
だ。
251
若
(
も
)
し
開
(
あ
)
けなかつたら
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
が
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はして、
252
一呑
(
ひとの
)
みに
呑
(
の
)
みて
了
(
しま
)
はうか』
253
馬公
『エーコンナことだと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた。
254
それだから
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
言霊
(
ことたま
)
を
慎
(
つつし
)
めと
仰有
(
おつしや
)
るのに、
255
鹿公
(
しかこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
256
黒姫
(
くろひめ
)
が
何
(
ど
)
うだの
斯
(
こ
)
うだのと
言
(
い
)
ひよるものだから、
257
コンナ
破目
(
はめ
)
に
陥
(
おちい
)
るんだ。
258
オイ
馬公
(
うまこう
)
は
括
(
くく
)
られたよ、
259
鹿公
(
しかこう
)
開
(
あ
)
けて
呉
(
く
)
れないか』
260
鹿公
『
貴様
(
きさま
)
は
括
(
くく
)
られる
役
(
やく
)
だ、
261
俺
(
おれ
)
は
中
(
なか
)
で
長
(
なが
)
くなつてグツスリ
休
(
やす
)
む
役
(
やく
)
だ。
262
マア
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
ける
迄
(
まで
)
、
263
其処
(
そこ
)
で
立往生
(
たちわうじやう
)
するがよいワ。
264
お
優
(
やさ
)
しい
黒姫
(
くろひめ
)
さまと、
265
色男
(
いろをとこ
)
の
高山
(
たかやま
)
さまとのお
伴
(
つ
)
れだもの、
266
あまり
淋
(
さび
)
しくもあるまいがな』
267
馬公
『ソンナ
冷酷
(
れいこく
)
なことを
言
(
い
)
ふものぢやないよ、
268
お
前
(
まへ
)
もちつとは
朋友
(
ほういう
)
の
道
(
みち
)
を
弁
(
わきま
)
へて
居
(
を
)
るだらう』
269
鹿公
『マア
待
(
ま
)
て、
270
今
(
いま
)
これから
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
が
十八番
(
じふはちばん
)
の
言霊
(
ことたま
)
の
発射
(
はつしや
)
を
為
(
な
)
さるところだ。
271
さうすれば
黒姫
(
くろひめ
)
だつて
高山彦
(
たかやまひこ
)
だつて
風
(
かぜ
)
に
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
散
(
ち
)
る
如
(
ごと
)
く、
272
悲惨
(
ひさん
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
つて
滅
(
ほろび
)
て
了
(
しま
)
ふのだ』
273
馬公
『さうしたら
俺
(
おれ
)
は
何
(
ど
)
うなるのだ』
274
鹿公
『
貴様
(
きさま
)
の
事
(
こと
)
まで、
275
未
(
ま
)
だ
研究
(
けんきう
)
はして
居
(
を
)
らぬ
哩
(
わい
)
。
276
オイ
黒姫
(
くろひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
277
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
てお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
千万
(
せんばん
)
、
278
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
す。
279
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
に
嘸
(
さぞ
)
お
叱言
(
こごと
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
なさつたでせう。
280
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何程
(
なにほど
)
お
前
(
まへ
)
さまが
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
をお
迎
(
むか
)
へしようと
思
(
おも
)
つてもモー
駄目
(
だめ
)
だから
足許
(
あしもと
)
の
明
(
あか
)
るい
間
(
うち
)
に、
281
トツトと
帰
(
かへ
)
りなさい。
282
其処
(
そこ
)
に
馬
(
うま
)
が
一匹
(
いつぴき
)
居
(
を
)
るから、
283
ソレに
乗
(
の
)
つてお
帰
(
かへ
)
りなさいよ』
284
馬公
『コラ
鹿公
(
しかこう
)
、
285
無茶
(
むちや
)
ばつかり
言
(
い
)
ふない、
286
俺
(
おれ
)
は
決
(
けつ
)
して
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
馬
(
うま
)
ではないぞ』
287
黒姫
(
くろひめ
)
『どうしても
開
(
あ
)
けませぬか、
288
開
(
あ
)
けな
宜
(
よろ
)
しい。
289
黒姫
(
くろひめ
)
は
道成寺
(
だうじやうじ
)
の
釣鐘
(
つりがね
)
ぢやないが
此
(
こ
)
の
家
(
いへ
)
を
大蛇
(
だいじや
)
となつて、
290
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
に
取捲
(
とりま
)
き、
291
熱湯
(
ゆ
)
にして
見
(
み
)
せうか』
292
鹿公
『モシモシ
紫姫
(
むらさきひめ
)
さま、
293
青彦
(
あをひこ
)
さま、
294
確
(
しつか
)
りして
下
(
くだ
)
さい。
295
トツケもないことを
言
(
い
)
ひますぜ』
296
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
言葉
(
ことば
)
静
(
しづか
)
に、
297
紫姫
『ホヽヽヽヽ、
298
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
299
鹿
(
しか
)
さま、
300
確
(
しつ
)
かりと
戸
(
と
)
を
締
(
し
)
めて
置
(
お
)
きなさいや、
301
モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
302
誠
(
まこと
)
に
貴女
(
あなた
)
には
御
(
お
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でございますが、
303
神界
(
しんかい
)
の
為
(
た
)
め、
304
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
為
(
ため
)
には
貴女
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
して
不親切
(
ふしんせつ
)
なことを
致
(
いた
)
すのも
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ませぬ。
305
どうぞ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
306
黒姫
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
帰
(
かへ
)
らない。
307
青彦
(
あをひこ
)
と
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
素首
(
そつくび
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
いて、
308
フサの
国
(
くに
)
の
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
にかけ、
309
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
さねば
置
(
お
)
きませぬぞや』
310
青彦
(
あをひこ
)
『
何
(
なん
)
と
執念深
(
しふねんぶか
)
い
婆
(
ば
)
アさまぢやな、
311
青彦
(
あをひこ
)
も
呆
(
あき
)
れたよ。
312
いい
加減
(
かげん
)
に
執着心
(
しふちやくしん
)
を
放棄
(
はうき
)
したらどうだい』
313
黒姫
『
執着心
(
しふちやくしん
)
はお
前
(
まへ
)
のことだよ。
314
お
前
(
まへ
)
から
除
(
と
)
つたがよからう。
315
さうして
玉照姫
(
たまてるひめ
)
さまと、
316
お
玉
(
たま
)
さまを
此方
(
こつち
)
へ
渡
(
わた
)
しなさい』
317
青彦
(
あをひこ
)
『
此
(
こ
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
だけは
何処
(
どこ
)
までも
放
(
はな
)
されない。
318
決
(
けつ
)
して
個人
(
こじん
)
の
私有
(
しいう
)
すべきものでない、
319
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
大切
(
たいせつ
)
な
御
(
お
)
宝
(
たから
)
だ。
320
たとへ
天地
(
てんち
)
が
覆
(
か
)
へるとも、
321
こればかりは
承諾
(
しようだく
)
は
出来
(
でき
)
ない、
322
どうぞ
早
(
はや
)
くお
帰
(
かへ
)
りになつて
下
(
くだ
)
さい』
323
黒姫
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
黒姫
(
くろひめ
)
は
帰
(
かへ
)
りませぬ』
324
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
於
(
おい
)
ても
無
(
な
)
くてはならぬ
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でございます。
325
又
(
また
)
ウラナイ
教
(
けう
)
にも
必要
(
ひつえう
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でございます。
326
さうだと
申
(
まを
)
して
両方
(
りやうはう
)
の
欲求
(
よくきう
)
を
充
(
みた
)
すと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
327
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ませぬから、
328
いつそ
の
事
(
こと
)
貴方
(
あなた
)
が
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
をなさつて、
329
三五教
(
あななひけう
)
にお
入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さつたら
如何
(
どう
)
ですか。
330
貴方
(
あなた
)
が
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
なさつた
以上
(
いじやう
)
は、
331
高姫
(
たかひめ
)
さまも
自然
(
しぜん
)
御
(
ご
)
改心
(
かいしん
)
になりませうから、
332
紫
(
むらさき
)
がさう
云
(
い
)
つたと
高姫
(
たかひめ
)
さまに
伝
(
つた
)
へて
下
(
くだ
)
さいませ』
333
黒姫
『
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
を
弄
(
ろう
)
し
折角
(
せつかく
)
妾
(
わたし
)
が
望
(
のぞ
)
みた
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
を
計略
(
けいりやく
)
を
以
(
もつ
)
て、
334
横領
(
わうりやう
)
なさつたお
前
(
まへ
)
さまこそ
改心
(
かいしん
)
を
為
(
な
)
され。
335
どちらが
善
(
ぜん
)
か、
336
悪
(
あく
)
か、
337
心
(
こころ
)
の
鏡
(
かがみ
)
に
照
(
てら
)
して
御覧
(
ごらん
)
なさい。
338
貴方
(
あなた
)
の
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
精神
(
せいしん
)
を
破壊
(
はくわい
)
する
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
、
339
つまり
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
利己主義
(
われよし
)
ではありませぬか』
340
鹿公
(
しかこう
)
『エー
八釜敷
(
やかまし
)
い
云
(
い
)
ふない、
341
黒姫
(
くろひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
342
貴様
(
きさま
)
こそ
利己主義
(
われよし
)
ぢやないか。
343
此
(
こ
)
の
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
御
(
お
)
経綸
(
しぐみ
)
遊
(
あそ
)
ばして
悦子姫
(
よしこひめ
)
様
(
さま
)
が
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げまでなさつた
因縁
(
いんねん
)
があるのぢや。
344
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
正義
(
せいぎ
)
だ、
345
先取権
(
せんしゆけん
)
があるのだ。
346
他
(
ひと
)
の
宝
(
たから
)
に
垂涎
(
すゐゑん
)
して
要
(
い
)
らぬ
謀叛
(
むほん
)
を
起
(
おこ
)
し
煩悶
(
はんもん
)
をするよりも、
347
すつかりと
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
気楽
(
きらく
)
になつたら
如何
(
どう
)
だ、
348
鹿公
(
しかこう
)
は
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つワイ』
349
黒姫
(
くろひめ
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
是
(
こ
)
れ
許
(
ばか
)
りは
貫徹
(
くわんてつ
)
させなくては
置
(
お
)
くものか。
350
仮令
(
たとへ
)
千
(
せん
)
年
(
ねん
)
万
(
まん
)
年
(
ねん
)
かかつても
祈
(
いの
)
つて
祈
(
いの
)
つて
祈
(
いの
)
り
勝
(
か
)
つて
見
(
み
)
せよう。
351
ヤアコンナ
馬公
(
うまこう
)
を
人質
(
ひとじち
)
に
取
(
と
)
つたところが、
352
何
(
なん
)
の
役
(
やく
)
にも
立
(
た
)
たない。
353
サア
馬公
(
うまこう
)
、
354
世界中
(
せかいぢう
)
放
(
はな
)
し
飼
(
がひ
)
だ。
355
何処
(
どこ
)
なと
勝手
(
かつて
)
にお
出
(
い
)
でなさい』
356
と
縛
(
いましめ
)
を
解
(
ほど
)
けば、
357
馬公
(
うまこう
)
は、
358
馬公
『ヤアヤア
黒姫
(
くろひめ
)
さま
有難
(
ありがた
)
う。
359
ヤアどつこい、
360
お
前
(
まへ
)
に
縛
(
しば
)
られて、
361
お
前
(
まへ
)
に
解
(
ほど
)
かれたのだ、
362
有難
(
ありがた
)
うと
云
(
い
)
ふ
筋
(
すぢ
)
が
無
(
な
)
い。
363
エー
取返
(
とりかへ
)
しのならぬ
失策
(
しつさく
)
をやつたものだ。
364
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい』
365
此
(
この
)
時
(
とき
)
紫姫
(
むらさきひめ
)
の
涼
(
すず
)
やかな
声
(
こゑ
)
にて、
366
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
が
轟
(
とどろ
)
き
渡
(
わた
)
りける。
367
忽
(
たちま
)
ち
黒姫
(
くろひめ
)
は
頭部
(
とうぶ
)
真白
(
まつしろ
)
と
変
(
へん
)
じ、
368
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
き
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
西北
(
せいほく
)
指
(
さ
)
して
逃
(
にげ
)
て
行
(
ゆ
)
く。
369
馬公
(
うまこう
)
『オイ
鹿公
(
しかこう
)
、
370
モー
黒姫
(
くろひめ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
逃
(
にげ
)
て
了
(
しま
)
つたよ。
371
どうぞ
開
(
あ
)
けて
呉
(
く
)
れないか』
372
鹿公
『ヨシヨシ』
373
と
戸
(
と
)
をガラリと
引
(
ひ
)
き
開
(
あ
)
け、
374
鹿公
『オイ
馬公
(
うまこう
)
どうだつたい、
375
貴様
(
きさま
)
縛
(
しば
)
られて
居
(
を
)
つたぢやないか』
376
馬公
『ウン
縛
(
しば
)
られたよ。
377
併
(
しか
)
しチツトモ
痛
(
いた
)
くはなかつた。
378
黒姫
(
くろひめ
)
の
奴
(
やつ
)
、
379
俺
(
おれ
)
を
縛
(
しば
)
るときに
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
小声
(
こごゑ
)
になつて、
380
「
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
済
(
す
)
みませぬ、
381
赦
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい。
382
罪
(
つみ
)
も
無
(
な
)
い
馬公
(
うまこう
)
を
縛
(
しば
)
ります、
383
これも
御
(
お
)
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
ですから、
384
神直日
(
かむなほひ
)
、
385
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し、
386
聞直
(
ききなほ
)
して
下
(
くだ
)
さいませ」と
念
(
ねん
)
じて
居
(
を
)
つた。
387
人
(
ひと
)
の
性
(
せい
)
は
善
(
ぜん
)
なりとは、
388
よく
言
(
い
)
うたものだなア』
389
青彦
(
あをひこ
)
はこれを
聞
(
き
)
いて
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
390
頭
(
かうべ
)
を
首垂
(
うなだ
)
れ
思案
(
しあん
)
に
沈
(
しづ
)
む。
391
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
直
(
ただち
)
に
神前
(
しんぜん
)
に
感謝
(
かんしや
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
する。
392
玉照姫
(
たまてるひめ
)
は
俄
(
にはか
)
にヒシるが
如
(
ごと
)
く
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
し
給
(
たま
)
ひける。
393
お
玉
(
たま
)
は
驚
(
おどろ
)
きあはてて
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
背
(
せ
)
を
撫
(
な
)
で
擦
(
さす
)
り、
394
慰
(
なぐさ
)
め
居
(
ゐ
)
たり。
395
空
(
そら
)
には
白
(
しろ
)
き
魚鱗
(
ぎよりん
)
の
波
(
なみ
)
を
湛
(
たた
)
へた
雲
(
くも
)
の
切
(
き
)
れ
目
(
め
)
に
月
(
つき
)
は
朧
(
おぼろ
)
に
輝
(
かがや
)
き、
396
悲
(
かな
)
しげに
山杜鵑
(
やまほととぎす
)
の
声
(
こゑ
)
峰
(
みね
)
の
彼方
(
かなた
)
に
聞
(
きこ
)
え
居
(
ゐ
)
る。
397
(
大正一一・五・六
旧四・一〇
外山豊二
録)
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【第3章 千騎一騎|第19巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1903】
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