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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第19巻(午の巻)
序
凡例
総説三十三魂
第1篇 神慮洪遠
第1章 高熊山
第2章 鶍の嘴
第3章 千騎一騎
第4章 善か悪か
第2篇 意外の意外
第5章 零敗の苦
第6章 和合と謝罪
第7章 牛飲馬食
第8章 大悟徹底
第3篇 至誠通神
第9章 身魂の浄化
第10章 馬鹿正直
第11章 変態動物
第12章 言照姫
第4篇 地異天変
第13章 混線
第14章 声の在所
第15章 山神の滝
第16章 玉照彦
第17章 言霊車
霊の礎(五)
余白歌
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霊界物語
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如意宝珠(第13~24巻)
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第19巻(午の巻)
> 第3篇 至誠通神 > 第11章 変態動物
<<< 馬鹿正直
(B)
(N)
言照姫 >>>
第一一章
変態
(
へんたい
)
動物
(
どうぶつ
)
〔六五六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第19巻 如意宝珠 午の巻
篇:
第3篇 至誠通神
よみ(新仮名遣い):
しせいつうしん
章:
第11章 変態動物
よみ(新仮名遣い):
へんたいどうぶつ
通し章番号:
656
口述日:
1922(大正11)年05月08日(旧04月12日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年2月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
館の中では、松姫とお節が火鉢を囲んでお陰話にふけっていた。やがて話の内容は、三五教とウラナイ教の違いに移って行く。
神素盞嗚大神の真意を伝えようとするお節だが、松姫はかたくなに変性男子への信仰を貫こうとする。
そこへ熊彦、虎彦が、三五教の馬公と鹿公を虐待して追い払ったことを、注進にやってきた。
松姫はそれを聞くと、うつむいてしまった。お節が熊彦(熊公)と虎彦(虎公)の行為を咎めると、二人は逆にお節を非難した。
しかし松姫は、二人に馬公と鹿公にお詫びをして、ここに連れてくるように、と命じた。熊彦と虎彦は不承不承に門を出て鹿公と馬公を探しに出た。
熊彦と虎彦は、仕方なく森の向こうにいる隆靖彦、隆光彦、馬公、鹿公のところまで行って、同道を懇願した。
熊彦と虎彦は謝罪の念を表すために、四足で歩いて戻ってくる。馬公と鹿公も同じく四足でついていった。隆靖彦、隆光彦は門外に姿を消した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-04-08 18:36:04
OBC :
rm1911
愛善世界社版:
176頁
八幡書店版:
第4輯 95頁
修補版:
校定版:
179頁
普及版:
81頁
初版:
ページ備考:
001
書院造
(
しよゐんづく
)
りのこつてりとした、
002
余
(
あま
)
り
装飾
(
さうしよく
)
の
施
(
ほどこ
)
して
無
(
な
)
い
瀟洒
(
せうしや
)
たる
建物
(
たてもの
)
の
中
(
なか
)
に、
003
三十路
(
みそぢ
)
を
越
(
こ
)
えた
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
と、
004
二十
(
はたち
)
前後
(
ぜんご
)
の
優
(
やさ
)
しい
女
(
をんな
)
、
005
桐
(
きり
)
の
丸火鉢
(
まるひばち
)
を
中
(
なか
)
に
ひそ
ひそと
何
(
なに
)
か
囁
(
ささや
)
き
話
(
ばなし
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
006
お
節
(
せつ
)
『
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
、
007
春
(
はる
)
の
景色
(
けしき
)
も
宜敷
(
よろし
)
う
御座
(
ござ
)
いますが、
008
かう
薄雪
(
うすゆき
)
の
溜
(
たま
)
つた
四方
(
よも
)
八方
(
やも
)
の
景色
(
けしき
)
、
009
この
苔
(
こけ
)
蒸
(
む
)
した
庭
(
には
)
から
見渡
(
みわた
)
す
時
(
とき
)
の
美
(
うつく
)
しさは
又
(
また
)
格別
(
かくべつ
)
で
御座
(
ござ
)
いますな。
010
満目
(
まんもく
)
皆
(
みな
)
銀
(
ぎん
)
の
蓆
(
むしろ
)
を
敷
(
し
)
き
詰
(
つ
)
めたやうに、
011
それへ
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
光
(
ひかり
)
が
宿
(
やど
)
つてきらきらと
反射
(
はんしや
)
して
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
は
恰
(
まる
)
で
玉
(
たま
)
を
敷
(
し
)
き
詰
(
つ
)
めたやうですなア、
012
荒金
(
あらがね
)
の
土
(
つち
)
を
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
遊
(
あそ
)
ばす
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
大御心
(
おほみこころ
)
は、
013
此
(
この
)
景色
(
けしき
)
のやうに
一点
(
いつてん
)
の
塵
(
ちり
)
もなく
汚
(
けが
)
れもなく、
014
実
(
じつ
)
に
瑞々
(
みづみづ
)
しい
御霊
(
みたま
)
で
御座
(
ござ
)
いませう』
015
松姫
(
まつひめ
)
『
左様
(
さやう
)
です、
016
此
(
この
)
雪
(
ゆき
)
の
野辺
(
のべ
)
を
眺
(
なが
)
めますと、
017
妾
(
わらは
)
達
(
たち
)
の
心
(
こころ
)
迄
(
まで
)
、
018
すが
すがしうなつて
来
(
き
)
ます。
019
貴女
(
あなた
)
のお
国
(
くに
)
は
此
(
この
)
辺
(
へん
)
とは
違
(
ちが
)
つて
雪
(
ゆき
)
も
深
(
ふか
)
く、
020
今頃
(
いまごろ
)
は
嘸
(
さぞ
)
綺麗
(
きれい
)
な
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いませう、
021
何事
(
なにごと
)
も
天地
(
てんち
)
の
合
(
あは
)
せ
鏡
(
かがみ
)
と
云
(
い
)
つて、
022
国魂
(
くにたま
)
の
清
(
きよ
)
い
所
(
ところ
)
は
又
(
また
)
それ
相当
(
さうたう
)
に
清
(
きよ
)
い
美
(
うつく
)
しい
景色
(
けしき
)
が
天地
(
てんち
)
自然
(
しぜん
)
に
描
(
ゑが
)
き
出
(
だ
)
されるものです、
023
私
(
わたくし
)
も
一度
(
いちど
)
比沼
(
ひぬ
)
の
真名井
(
まなゐ
)
の
珍
(
うづ
)
の
宝座
(
ほうざ
)
に
参拝
(
さんぱい
)
したいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
ますが、
024
何分
(
なにぶん
)
大任
(
たいにん
)
を
負
(
お
)
はされて
居
(
ゐ
)
ますので、
025
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
館
(
やかた
)
をあけて
置
(
お
)
く
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
026
実
(
じつ
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
は
広
(
ひろ
)
いやうで、
027
窮屈
(
きうくつ
)
なもので
御座
(
ござ
)
います。
028
お
節
(
せつ
)
さま、
029
貴女
(
あなた
)
はこの
夏
(
なつ
)
の
初
(
はじ
)
め、
030
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
方
(
はう
)
へお
越
(
こ
)
しになつて
以来
(
いらい
)
、
031
俄
(
にはか
)
にお
心
(
こころ
)
変
(
がは
)
りがして
三五教
(
あななひけう
)
へ
後戻
(
あともど
)
りをなさつたさうぢやが、
032
三五教
(
あななひけう
)
とウラナイ
教
(
けう
)
は
何
(
ど
)
う
違
(
ちが
)
ひますか』
033
お
節
(
せつ
)
『ハイ
誠
(
まこと
)
にお
恥
(
はづ
)
かしい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います、
034
心
(
こころ
)
にちつとも
根締
(
ねじ
)
めが
無
(
な
)
いものですから、
035
風
(
かぜ
)
のまにまに
弄
(
な
)
ぶられて、
036
つい
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
と
迂路
(
うろ
)
つき
廻
(
まは
)
りました。
037
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
何方
(
どちら
)
の
教
(
をしへ
)
も
実
(
じつ
)
に
結構
(
けつこう
)
だと
思
(
おも
)
ひます、
038
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
元
(
もと
)
は
一株
(
ひとかぶ
)
、
039
三五教
(
あななひけう
)
だとかウラナイ
教
(
けう
)
だとか、
040
名称
(
めいしよう
)
は
分
(
わ
)
かれて
居
(
を
)
りますが、
041
尊敬
(
そんけい
)
する
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
些
(
ち
)
つとも
変
(
かは
)
りはありませぬ、
042
唯
(
ただ
)
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
人々
(
ひとびと
)
の
解釈
(
かいしやく
)
に
浅深
(
せんしん
)
広狭
(
くわうけふ
)
の
別
(
べつ
)
があるのみです。
043
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
人間
(
にんげん
)
と
致
(
いた
)
しましては
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せするより
仕方
(
しかた
)
がありませぬ、
044
此
(
この
)
世
(
よ
)
をお
造
(
つく
)
り
遊
(
あそ
)
ばして
人民
(
じんみん
)
を
昼夜
(
ちうや
)
の
区別
(
くべつ
)
なくお
守
(
まも
)
り
下
(
くだ
)
さる
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
念
(
ねん
)
じさへすればよいのです、
045
教
(
をしへ
)
が
高遠
(
かうゑん
)
だとか、
046
浅薄
(
せんぱく
)
だとか
云
(
い
)
ふのは
人間
(
にんげん
)
の
解釈
(
かいしやく
)
の
如何
(
いかん
)
によるので、
047
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
御
(
ご
)
自身
(
じしん
)
に
対
(
たい
)
しては
何
(
なん
)
の
関係
(
くわんけい
)
も
無
(
な
)
からうと
思
(
おも
)
ひます』
048
松姫
(
まつひめ
)
『
其
(
その
)
お
考
(
かんが
)
へなれば
何故
(
なぜ
)
ウラナイ
教
(
けう
)
へお
出
(
い
)
でになりましたか、
049
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
はいまだに
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
を
)
られるのではありませぬか。
050
「
二世
(
にせ
)
契
(
ちぎ
)
る
夫婦
(
めをと
)
の
中
(
なか
)
も
踏
(
ふ
)
みてゆく
道
(
みち
)
し
違
(
たが
)
へば
憎
(
にく
)
み
争
(
あらそ
)
ふ」と
云
(
い
)
ふ
道歌
(
だうか
)
がありましたねエ、
051
夫
(
をつと
)
は
東
(
ひがし
)
へ
妻
(
つま
)
は
西
(
にし
)
へと
云
(
い
)
ふやうな
信仰
(
しんかう
)
のやり
方
(
かた
)
はちと
考
(
かんが
)
へものですよ、
052
信仰
(
しんかう
)
の
道
(
みち
)
を
異
(
こと
)
にする
時
(
とき
)
は
屹度
(
きつと
)
家内
(
かない
)
は
治
(
をさ
)
まりますまい、
053
夫唱
(
ふしやう
)
婦従
(
ふじゆう
)
と
云
(
い
)
うて
女
(
をんな
)
は
夫
(
をつと
)
に
従
(
したが
)
ふべきものたる
以上
(
いじやう
)
、
054
青彦
(
あをひこ
)
さまの
奉
(
ほう
)
じ
給
(
たま
)
ふ
三五教
(
あななひけう
)
を
信奉
(
しんぽう
)
なさつた
方
(
はう
)
が、
055
御
(
ご
)
家庭
(
かてい
)
の
為
(
た
)
めよいぢやありませぬか、
056
但
(
ただし
)
青彦
(
あをひこ
)
さまを
貴女
(
あなた
)
の
奉
(
ほう
)
ずるウラナイ
教
(
けう
)
へ
帰順
(
きじゆん
)
させるとか、
057
どちらか
一
(
ひと
)
つの
道
(
みち
)
にお
定
(
き
)
めなさつたらどうでせう』
058
お
節
(
せつ
)
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
私
(
わたくし
)
がこれへ
参
(
まゐ
)
りましたのは、
059
貴女
(
あなた
)
に
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
い
事
(
こと
)
があるからで
御座
(
ござ
)
います、
060
貴女
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
のどの
点
(
てん
)
が
悪
(
わる
)
いと
思召
(
おぼしめ
)
すか』
061
松姫
(
まつひめ
)
『
別
(
べつ
)
に
私
(
わたくし
)
としては
彼是
(
かれこれ
)
申上
(
まをしあ
)
げるだけの
権利
(
けんり
)
も
知識
(
ちしき
)
もありませぬ。
062
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
の
三五教
(
あななひけう
)
は
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
御霊
(
みたま
)
が
混入
(
こんにふ
)
して、
063
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
の
教
(
をしへ
)
にない
種々
(
しゆじゆ
)
のものが
輸入
(
ゆにふ
)
されて
居
(
を
)
りますから、
064
此
(
この
)
儘
(
まま
)
にして
置
(
お
)
けば
折角
(
せつかく
)
の
男子
(
なんし
)
の
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
も
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
になつて、
065
天下
(
てんか
)
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
由々敷
(
ゆゆしき
)
一大事
(
いちだいじ
)
と、
066
男子
(
なんし
)
の
系統
(
ひつぽう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまが
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
遊
(
あそ
)
ばし、
067
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずウラナイ
教
(
けう
)
をお
立
(
た
)
てなさつたのですから、
068
ならう
事
(
こと
)
なら
三五教
(
あななひけう
)
の
方々
(
かたがた
)
も
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へ
直
(
なほ
)
して
頂
(
いただ
)
いて、
069
本当
(
ほんたう
)
の
教
(
をしへ
)
を
立
(
た
)
てて
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いものです』
070
お
節
(
せつ
)
『
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
御霊
(
みたま
)
の
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
はお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬのですか』
071
松姫
(
まつひめ
)
『
何
(
なん
)
だか
虫
(
むし
)
が
好
(
す
)
きませぬ、
072
どこかに
物足
(
ものた
)
らぬ
所
(
ところ
)
があるやうで
御座
(
ござ
)
います、
073
合縁
(
あひえん
)
奇縁
(
きえん
)
と
云
(
い
)
うて
信仰
(
しんかう
)
の
道
(
みち
)
にも
向
(
むき
)
、
074
不向
(
ふむき
)
がありましてな』
075
お
節
(
せつ
)
『さう
致
(
いた
)
しますと
貴女
(
あなた
)
は
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
や、
076
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
意中
(
いちう
)
はお
分
(
わか
)
りになつて
居
(
ゐ
)
ないのですか』
077
松姫
(
まつひめ
)
『イヤ、
078
うすうす
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります、
079
何
(
ど
)
うかするとお
二人
(
ふたり
)
様
(
さま
)
は
怪
(
あや
)
しくなつて
来
(
き
)
ました、
080
やがて
三五教
(
あななひけう
)
へお
帰
(
かへ
)
りになるのでせう、
081
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたくし
)
としては、
082
さうくれくれと
掌
(
てのひら
)
返
(
かへ
)
したやうに
軽々
(
かるがる
)
しく、
083
吾
(
わが
)
精神
(
せいしん
)
を
玩弄物
(
おもちや
)
にする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
084
お
節
(
せつ
)
『さうすると
貴女
(
あなた
)
の
師匠
(
ししやう
)
と
仰
(
あふ
)
ぐ
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
や、
085
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
でもお
聞
(
き
)
きなさらぬお
考
(
かんが
)
へですか』
086
松姫
(
まつひめ
)
『
仮令
(
たとへ
)
高姫
(
たかひめ
)
さまが
顛覆
(
てんぷく
)
なされても、
087
私
(
わたくし
)
は
最後
(
さいご
)
の
一人
(
ひとり
)
になる
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
ウラナイ
教
(
けう
)
を
立
(
た
)
てて
行
(
ゆ
)
きます。
088
師匠
(
ししやう
)
も
大切
(
たいせつ
)
だがお
道
(
みち
)
も
大切
(
たいせつ
)
です、
089
お
道
(
みち
)
が
大事
(
だいじ
)
か、
090
師匠
(
ししやう
)
が
大切
(
たいせつ
)
か、
091
よく
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい、
092
それだと
申
(
まを
)
して
師匠
(
ししやう
)
に
背
(
そむ
)
くと
云
(
い
)
ふ
心
(
こころ
)
は
露
(
つゆ
)
程
(
ほど
)
も
持
(
も
)
ちませぬが、
093
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ない
場合
(
ばあひ
)
には
矢張
(
やつぱり
)
本末
(
ほんまつ
)
自他
(
じた
)
公私
(
こうし
)
の
区別
(
くべつ
)
を
明
(
あきら
)
かにするため、
094
ウラナイ
教
(
けう
)
の
孤城
(
こじやう
)
を
死守
(
ししゆ
)
する
考
(
かんが
)
へで
御座
(
ござ
)
います』
095
お
節
(
せつ
)
『さう
聞
(
き
)
きますと
貴女
(
あなた
)
は
何処迄
(
どこまで
)
もお
固
(
かた
)
いのですなア』
096
松姫
(
まつひめ
)
『
岩
(
いは
)
にさへも
姫松
(
ひめまつ
)
の
生
(
は
)
える
例
(
ためし
)
がある。
097
一心
(
いつしん
)
の
誠
(
まこと
)
は
岩
(
いは
)
でも
射貫
(
いぬ
)
くと
云
(
い
)
ひます。
098
私
(
わたくし
)
の
鉄石心
(
てつせきしん
)
は
如何
(
いか
)
なる
砲火
(
はうくわ
)
も
威力
(
ゐりよく
)
も
動
(
うご
)
かす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい、
099
これが
私
(
わたくし
)
の
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
生命
(
せいめい
)
ですから
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
ビク
とも
致
(
いた
)
しませぬよ。
100
槍
(
やり
)
でも
鉄砲
(
てつぱう
)
でも
梃子
(
てこ
)
でも
棒
(
ぼう
)
でも、
101
いつかな いつかな
動
(
うご
)
くやうな
脆弱
(
ぜいじやく
)
な
御魂
(
みたま
)
ぢやありませぬ、
102
そんな
動揺
(
ぐらぐら
)
するやうな
信仰
(
しんかう
)
なら
初
(
はじ
)
めからしない
方
(
はう
)
がよろしい、
103
お
節
(
せつ
)
さまが
私
(
わたくし
)
に
対
(
たい
)
して
何程
(
なにほど
)
婉曲
(
ゑんきよく
)
に
熱心
(
ねつしん
)
にお
勧
(
すす
)
め
下
(
くだ
)
さつても
駄目
(
だめ
)
ですから、
104
何卒
(
どうぞ
)
是
(
これ
)
限
(
かぎ
)
り
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
う
受
(
う
)
けますが、
105
もう
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな。
106
人
(
ひと
)
は
柔順
(
じうじゆん
)
と
忍耐
(
にんたい
)
と
誠
(
まこと
)
さへ
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
守
(
まも
)
つて
居
(
を
)
れば
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さいます。
107
教派
(
けうは
)
の
如何
(
いかん
)
にかかはるものぢやありませぬ』
108
斯
(
か
)
く
二人
(
ふたり
)
の
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも、
109
慌
(
あわ
)
ただしく
駆
(
か
)
け
来
(
きた
)
る
門番
(
もんばん
)
の
熊彦
(
くまひこ
)
、
110
虎彦
(
とらひこ
)
二人
(
ふたり
)
、
111
熊
(
くま
)
、
112
虎
(
とら
)
『
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げます、
113
只今
(
ただいま
)
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
しました、
114
それはそれは、
115
小気味
(
こきみ
)
よい
大勝利
(
だいしようり
)
です、
116
何卒
(
どうぞ
)
お
喜
(
よろこ
)
び
下
(
くだ
)
さいませ』
117
松姫
(
まつひめ
)
『オヽお
前
(
まへ
)
は
熊公
(
くまこう
)
と
虎公
(
とらこう
)
さま、
118
エライ
血相
(
けつさう
)
をして
慌
(
あわた
)
だしく
何事
(
なにごと
)
ですか』
119
虎彦
(
とらひこ
)
『
貴方
(
あなた
)
も
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
120
ウラナイ
教
(
けう
)
の
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
の
瘤仇敵
(
こぶがたき
)
、
121
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
ずる
三五教
(
あななひけう
)
の
木端
(
こつぱ
)
武者
(
むしや
)
、
122
馬
(
うま
)
、
123
鹿
(
しか
)
と
云
(
い
)
ふ
馬鹿面
(
ばかづら
)
した
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
がやつて
来
(
き
)
まして、
124
御免
(
ごめん
)
とも
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
はず、
125
潜
(
くぐ
)
り
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
き、
126
吾々
(
われわれ
)
の
門番
(
もんばん
)
に
無断
(
むだん
)
で、
127
すつ
と
奥
(
おく
)
へ
通
(
とほ
)
らうと
致
(
いた
)
します。
128
貴女
(
あなた
)
が
今迄
(
いままで
)
仰有
(
おつしや
)
つたでせう、
129
三五教
(
あななひけう
)
の
連中
(
れんちう
)
が
来
(
き
)
たら、
130
一人
(
ひとり
)
たりとも
通
(
とほ
)
してはならぬ、
131
追払
(
おつぱら
)
へとの
仰
(
あふ
)
せ、
132
又
(
また
)
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
さまのやうな
馬鹿
(
ばか
)
な
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
つてはならないからと
仰有
(
おつしや
)
つたのを、
133
我々
(
われわれ
)
は
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
を
夢寐
(
むび
)
にも
忘
(
わす
)
れず、
134
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
よく
守
(
まも
)
り、
135
表門
(
おもてもん
)
を
厳重
(
げんぢう
)
に
固
(
かた
)
めて
居
(
を
)
りました。
136
其所
(
そこ
)
へヌクヌクとやつて
来
(
き
)
て、
137
門
(
もん
)
が
四足
(
よつあし
)
だの、
138
吾々
(
われわれ
)
を
四足
(
よつあし
)
身魂
(
みたま
)
だのと
嘲弄
(
てうろう
)
するものですから、
139
エイ
猪口才
(
ちよこざい
)
な、
140
礼儀
(
れいぎ
)
を
知
(
し
)
らぬ
畜生
(
ちくしやう
)
め、
141
畜生
(
ちくしやう
)
なら
畜生
(
ちくしやう
)
相当
(
さうたう
)
の
制裁
(
せいさい
)
を
加
(
くは
)
へてやらうと
云
(
い
)
うて、
142
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
六尺棒
(
ろくしやくぼう
)
を
以
(
もつ
)
て
頭
(
あたま
)
を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つガンとやつた
処
(
ところ
)
、
143
口
(
くち
)
程
(
ほど
)
にもない
腰抜
(
こしぬ
)
け
野郎
(
やらう
)
、
144
荒肝
(
あらぎも
)
を
摧
(
ひし
)
がれ、
145
大地
(
だいち
)
に
蛙踞
(
かへるつくばひ
)
になりめそめそと
吠面
(
ほえづら
)
かわいて
居
(
ゐ
)
る、
146
エヽ
此
(
この
)
尊
(
たふと
)
い
神門
(
しんもん
)
を
無断
(
むだん
)
で
通
(
とほ
)
り、
147
剰
(
あま
)
つさへ
門
(
もん
)
の
様
(
さま
)
が
四足
(
よつあし
)
だのと
吐
(
ほざ
)
いた
上
(
うへ
)
、
148
涙
(
なみだ
)
を
大地
(
だいち
)
に
零
(
こぼ
)
して
霊場
(
れいぢやう
)
を
汚
(
けが
)
しよつたので、
149
つい
勇猛心
(
ゆうまうしん
)
を
発揮
(
はつき
)
して
断行
(
だんかう
)
しました』
150
松姫
(
まつひめ
)
『それは
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をなさつたものだ、
151
誰
(
たれ
)
がそんな
事
(
こと
)
をせいと
云
(
い
)
ひましたか、
152
これ
熊公
(
くまこう
)
、
153
真実
(
ほんと
)
にお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
、
154
虎公
(
とらこう
)
の
云
(
い
)
ふやうな
事
(
こと
)
をしたのかい』
155
熊彦
(
くまひこ
)
『ヘエヘエ、
156
そんな
事
(
こと
)
処
(
どころ
)
ですか、
157
余
(
あま
)
り
業腹
(
ごふばら
)
が
立
(
た
)
つので
尻
(
しり
)
をひん
捲
(
ま
)
くり、
158
虎公
(
とらこう
)
と
二人
(
ふたり
)
、
159
両人
(
りやうにん
)
の
臀部
(
でんぶ
)
をエヽこの
柔道
(
じうだう
)
百段
(
ひやくだん
)
の
腕拳
(
うでこぶし
)
を
固
(
かた
)
めて、
160
青
(
あを
)
くなる
所
(
ところ
)
まで
叩
(
たた
)
いてやりました、
161
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
態
(
ざま
)
つたら
実
(
じつ
)
に
滑稽
(
こつけい
)
でしたよ』
162
松姫
(
まつひめ
)
『
其
(
その
)
お
二人
(
ふたり
)
の
方
(
かた
)
は
何
(
ど
)
うなつたのかい』
163
熊彦
(
くまひこ
)
『ヘエ、
164
其
(
その
)
二人
(
ふたり
)
ですか、
165
イヤ
二匹
(
にひき
)
の
畜生
(
ちくしやう
)
ですか、
166
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
へ
追放
(
おつぽ
)
り
出
(
だ
)
され、
167
めそめそと
女
(
をんな
)
の
腐
(
くさ
)
つたやうに
抱
(
だ
)
きついて
愁歎場
(
しうたんば
)
の
一幕
(
ひとまく
)
を
演
(
えん
)
じて
居
(
ゐ
)
ました。
168
戸
(
と
)
の
節穴
(
ふしあな
)
より
覗
(
のぞ
)
いて
見
(
み
)
ましたら
実
(
じつ
)
に
憐
(
あは
)
れなものでした、
169
イヤ
気味
(
きみ
)
のよい、
170
溜飲
(
りういん
)
が
下
(
さ
)
がるやうでした。
171
アヽ
大変
(
たいへん
)
に
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つてウラナイ
教
(
けう
)
の
爆裂弾
(
ばくれつだん
)
を
未発
(
みはつ
)
に
防
(
ふせ
)
ぎ
得
(
え
)
たのは、
172
全
(
まつた
)
く
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
173
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
愛教
(
あいけう
)
の
大精神
(
だいせいしん
)
の
発露
(
はつろ
)
で
御座
(
ござ
)
います、
174
何卒
(
どうぞ
)
何分
(
なにぶん
)
の
何々
(
なになに
)
を
何々
(
なになに
)
して
下
(
くだ
)
さいますれば
吾々
(
われわれ
)
は
益々
(
ますます
)
神恩
(
しんおん
)
を
忝
(
かたじ
)
けなみ、
175
層一層
(
そういつそう
)
に
厳格
(
げんかく
)
に
御用
(
ごよう
)
を
務
(
つと
)
めます』
176
松姫
(
まつひめ
)
『
竜若
(
たつわか
)
の
受付
(
うけつけ
)
は
黙
(
だま
)
つて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たのかい』
177
熊公
(
くまこう
)
『
指揮
(
しき
)
をなさつたでもなく、
178
なさらぬでもなし、
179
悪
(
わる
)
く
云
(
い
)
へば
瓢鯰
(
へうねん
)
式
(
しき
)
ですな、
180
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾々
(
われわれ
)
に
対
(
たい
)
し
一部
(
いちぶ
)
の
声援
(
せいゑん
)
を
与
(
あた
)
へて
呉
(
く
)
れましたから、
181
其
(
その
)
功績
(
こうせき
)
は
矢張
(
やつぱり
)
等分
(
とうぶん
)
と
見
(
み
)
て
差支
(
さしつかへ
)
無
(
な
)
からうと
思
(
おも
)
ひます、
182
ヘエヘエいやもうエライ
活動
(
くわつどう
)
致
(
いた
)
しました』
183
松姫
(
まつひめ
)
、
184
膝
(
ひざ
)
に
手
(
て
)
を
置
(
お
)
き、
185
俯
(
うつ
)
むいて
何事
(
なにごと
)
か
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
る。
186
お
節
(
せつ
)
『
熊公
(
くまこう
)
、
187
虎公
(
とらこう
)
、
188
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば
三五教
(
あななひけう
)
の
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
が
見
(
み
)
えたやうですが、
189
真実
(
ほんと
)
に
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
手荒
(
てあら
)
い
事
(
こと
)
をなされましたのか、
190
ウラナイ
教
(
けう
)
は
時々
(
ときどき
)
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をする
人
(
ひと
)
が
現
(
あら
)
はれますな、
191
決
(
けつ
)
して
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
はお
喜
(
よろこ
)
びなされますまい』
192
虎彦
(
とらひこ
)
『オイお
節
(
せつ
)
、
193
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのだ、
194
貴様
(
きさま
)
は
猫
(
ねこ
)
見
(
み
)
たやうな
奴
(
やつ
)
だ、
195
甘
(
うま
)
く
口先
(
くちさき
)
で
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
をチヨロマカしよつて、
196
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
馬
(
うま
)
、
197
鹿
(
しか
)
の
畜生
(
ちくしやう
)
と
内外
(
ないぐわい
)
相応
(
あひおう
)
じ、
198
此
(
この
)
館
(
やかた
)
を
根底
(
こんてい
)
から
顛覆
(
てんぷく
)
させようと
仕組
(
しぐ
)
んで
居
(
を
)
るのだらう、
199
そんな
事
(
こと
)
は
貴様
(
きさま
)
が
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
からチヤンと
看破
(
かんぱ
)
して
居
(
を
)
るのだ、
200
貴様
(
きさま
)
も
序
(
ついで
)
に
睾丸
(
きんたま
)
を
握
(
にぎ
)
つて
門外
(
もんぐわい
)
へ
追放
(
おつぽ
)
り
出
(
だ
)
してやらうか』
201
熊彦
(
くまひこ
)
『アハヽヽヽ
女
(
をんな
)
の
睾丸
(
きんたま
)
とは
今
(
いま
)
が
聞
(
き
)
き
初
(
はじ
)
めだ、
202
そりや
虎公
(
とらこう
)
貴様
(
きさま
)
肝玉
(
きもだま
)
の
間違
(
まちが
)
ひだないか』
203
虎彦
(
とらひこ
)
『ちつと
位
(
くらゐ
)
違
(
ちが
)
つたつて、
204
ゴテゴテ
云
(
い
)
ふな、
205
睾
(
きん
)
の
ん
と
肝
(
きも
)
の
も
だけの
間違
(
まちが
)
ひだ、
206
元来
(
ぐわんらい
)
が
門
(
もん
)
から
起
(
おこ
)
つた
もん
題
(
だい
)
だから、
207
肝
(
きも
)
の
も
を
睾
(
きん
)
の
ん
の
言霊
(
ことたま
)
に
詔
(
の
)
り
直
(
なほ
)
したのだ。
208
それだからお
節
(
せつ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
は
俺
(
おれ
)
がいつも、
209
きんもう
九尾
(
きうび
)
の
悪神
(
わるがみ
)
と
云
(
い
)
うたぢやないか、
210
アハヽヽヽ』
211
松姫
(
まつひめ
)
『コレ
虎公
(
とらこう
)
熊公
(
くまこう
)
、
212
馬公
(
うまこう
)
鹿公
(
しかこう
)
とやらによくお
詫
(
わび
)
をして
私
(
わたし
)
の
居間
(
ゐま
)
へお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
して
来
(
く
)
るのだよ、
213
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のない
男
(
をとこ
)
だなア』
214
虎彦
(
とらひこ
)
『ヘエ、
215
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います、
216
あの
様
(
やう
)
な
爆裂弾
(
ばくれつだん
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
いと
仰有
(
おつしや
)
るのですか、
217
貴女
(
あなた
)
も
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はちつと
変
(
へん
)
だと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
ましたが、
218
矢張
(
やつぱり
)
脱線
(
だつせん
)
しとりますなア』
219
松姫
(
まつひめ
)
『ごてごて
云
(
い
)
はいでも
宜敷
(
よろし
)
い、
220
迎
(
むか
)
へてお
出
(
い
)
でなさいと
云
(
い
)
うたら
迎
(
むか
)
へてお
出
(
いで
)
なさい。
221
熊公
(
くまこう
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
くのだよ』
222
両人
(
りやうにん
)
は『ヘエ』と
嫌
(
いや
)
さうな
返事
(
へんじ
)
を
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
投
(
な
)
げ
捨
(
す
)
て
力
(
ちから
)
無
(
な
)
げに
表門
(
おもてもん
)
にやつて
来
(
き
)
た。
223
竜若
(
たつわか
)
『オイ
両人
(
りやうにん
)
、
224
ちつと
貴様
(
きさま
)
顔色
(
かほいろ
)
が
変
(
へん
)
だないか、
225
一体
(
いつたい
)
どうしたのだい』
226
虎彦
(
とらひこ
)
『
何
(
ど
)
うしたも
斯
(
か
)
うしたもあつた
もん
かい、
227
門
(
もん
)
から
大
(
だい
)
もん
題
(
だい
)
が
起
(
おこ
)
つて
我々
(
われわれ
)
は
煩
(
はん
)
もん
苦悩
(
くなう
)
の
真最中
(
まつさいちう
)
だ。
228
本当
(
ほんたう
)
に
馬鹿
(
ばか
)
な
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
つて
来
(
き
)
たよ』
229
熊彦
(
くまひこ
)
『
摺
(
す
)
つた、
230
もん
だと
もん
着
(
ちやく
)
の
結果
(
けつくわ
)
この
熊公
(
くまこう
)
も
今日
(
けふ
)
は
もん
もんの
情
(
じやう
)
に
堪
(
た
)
へ
難
(
がた
)
しだ』
231
竜若
(
たつわか
)
『
貴様
(
きさま
)
の
出方
(
でかた
)
が
悪
(
わる
)
いから、
232
打
(
う
)
ち
返
(
かへ
)
しを
喰
(
くら
)
つたのだよ』
233
熊彦
(
くまひこ
)
『
何
(
なに
)
、
234
出方
(
でかた
)
は
至極
(
しごく
)
完全
(
くわんぜん
)
無欠
(
むけつ
)
寸毫
(
すんがう
)
も
欠点
(
けつてん
)
なしだが、
235
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うてもお
節
(
せつ
)
の
奴
(
やつ
)
、
236
間
(
ま
)
がな
隙
(
すき
)
がな
松姫
(
まつひめ
)
を
籠絡
(
ろうらく
)
しきつて
居
(
ゐ
)
やがるものだから、
237
松姫
(
まつひめ
)
さまの
性格
(
せいかく
)
は
ガラリ
と
一変
(
いつぺん
)
し、
238
いつもなら、
239
比丘尼
(
びくに
)
に
何
(
なに
)
やらを
見
(
み
)
せたやうに
飛
(
と
)
びついて
悦
(
よろこ
)
ぶのだけれど、
240
どんな
結構
(
けつこう
)
な
報告
(
はうこく
)
をしても
ビク
ともしやがらぬのだ。
241
俺
(
おれ
)
やもうお
節
(
せつ
)
の
面
(
つら
)
を
見
(
み
)
ても
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つのだ。
242
エヽ
怪体
(
けつたい
)
の
悪
(
わる
)
い、
243
ケツ、
244
ケヽケ
怪体
(
けつたい
)
が
悪
(
わる
)
くて
腸
(
はらわた
)
が
でんぐり
返
(
がへ
)
る
哩
(
わい
)
、
245
それにまだまだ
業
(
ごう
)
の
沸
(
わ
)
くのは、
246
折角
(
せつかく
)
追放
(
おつぽ
)
り
出
(
だ
)
した
馬
(
うま
)
、
247
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
を
此処
(
ここ
)
へ
丁寧
(
ていねい
)
にお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
せと
吐
(
ぬか
)
しやがるのだもの、
248
薩張
(
さつぱり
)
お
話
(
はなし
)
にならないのだ』
249
虎彦
(
とらひこ
)
『
余
(
あま
)
り
てれ
臭
(
くさ
)
いから、
250
両人
(
りやうにん
)
は
疾
(
とつ
)
くの
昔
(
むかし
)
に
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
りやがつて、
251
其辺
(
そこら
)
に
居
(
ゐ
)
なかつたと
報告
(
はうこく
)
して
置
(
お
)
かうかい』
252
竜若
(
たつわか
)
『そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つた
処
(
ところ
)
で、
253
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
したら
後
(
あと
)
へ
引
(
ひ
)
かぬ
片意地
(
かたいぢ
)
な
松姫
(
まつひめ
)
の
大将
(
たいしやう
)
だ、
254
仮令
(
たとへ
)
百
(
ひやく
)
里
(
り
)
でも
千
(
せん
)
里
(
り
)
でも
跡
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
馬
(
うま
)
、
255
鹿
(
しか
)
の
二人
(
ふたり
)
を
此処
(
ここ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
いと
頑張
(
ぐわんば
)
つて、
256
大
(
おほ
)
きな
雷
(
かみなり
)
でも
落
(
おと
)
しよつたらどうする、
257
屹度
(
きつと
)
さうお
出
(
いで
)
になるに
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
るよ、
258
虎
(
とら
)
、
259
熊
(
くま
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
乱暴
(
らんばう
)
したのだから
貴様
(
きさま
)
は
当
(
たう
)
の
責任者
(
せきにんしや
)
だ、
260
七重
(
ななへ
)
の
膝
(
ひざ
)
を
八重
(
やへ
)
に
折
(
を
)
つて、
261
お
二人
(
ふたり
)
さま、
262
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つてもお
頼
(
たの
)
み
申
(
まを
)
して、
263
お
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
して
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
のお
目
(
め
)
通
(
どほ
)
りへ
実検
(
じつけん
)
に
供
(
そな
)
へ
奉
(
たてまつ
)
るのだよ』
264
虎彦
(
とらひこ
)
『さうだと
云
(
い
)
うて、
265
まさかそんな
阿呆
(
あはう
)
げた
事
(
こと
)
が
七
(
しち
)
尺
(
しやく
)
の
男子
(
だんし
)
として
出来
(
でき
)
るものかい』
266
竜若
(
たつわか
)
『オイ、
267
虎
(
とら
)
、
268
熊
(
くま
)
の
両人
(
りやうにん
)
、
269
上官
(
じやうくわん
)
の
命令
(
めいれい
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
せぬか』
270
虎彦
(
とらひこ
)
『ヘン、
271
一寸
(
ちよつと
)
、
272
上役風
(
うはやくかぜ
)
を
吹
(
ふ
)
かし
遊
(
あそ
)
ばす
哩
(
わい
)
、
273
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今度
(
こんど
)
の
事件
(
じけん
)
は
上官
(
じやうくわん
)
の
責任
(
せきにん
)
だからさう
思
(
おも
)
ひなさい、
274
我々
(
われわれ
)
は
唯
(
ただ
)
上官
(
じやうくわん
)
の
目色
(
めいろ
)
を
見
(
み
)
てやつただけのものだ、
275
万々一
(
まんまんいち
)
吾々
(
われわれ
)
の
行動
(
かうどう
)
に
対
(
たい
)
し、
276
不都合
(
ふつがふ
)
の
点
(
てん
)
ありとみた
時
(
とき
)
は、
277
上官
(
じやうくわん
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
以
(
もつ
)
て、
278
制止
(
せいし
)
せなくてはならぬ
筈
(
はず
)
だ』
279
竜若
(
たつわか
)
『その
責任
(
せきにん
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
背負
(
せお
)
ふのは
当然
(
たうぜん
)
だ、
280
ゴタゴタ
云
(
い
)
はずに
早
(
はや
)
く
謝罪
(
あやま
)
つて
来
(
こ
)
い』
281
熊彦
(
くまひこ
)
『オイ
虎公
(
とらこう
)
、
282
仕方
(
しかた
)
がないなア』
283
と
不承
(
ふしやう
)
無精
(
ぶしやう
)
に
潜
(
くぐ
)
り
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
き、
284
門外
(
もんぐわい
)
を
キヨロ
キヨロと
見廻
(
みまは
)
して
居
(
を
)
る。
285
遥
(
はるか
)
向
(
むか
)
ふの
森蔭
(
もりかげ
)
に
馬
(
うま
)
、
286
鹿
(
しか
)
の
両人
(
りやうにん
)
を
始
(
はじ
)
め、
287
立派
(
りつぱ
)
な
女神
(
めがみ
)
が
二柱
(
ふたり
)
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
288
虎彦
(
とらひこ
)
『オイ
熊公
(
くまこう
)
、
289
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
なめくじり
のやうにあんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
這
(
は
)
つて
往
(
ゆ
)
きやがつたぢやないか、
290
エヽ
厄介
(
やくかい
)
の
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
つたものぢや、
291
何
(
ど
)
うしようかなア』
292
熊彦
(
くまひこ
)
『
何
(
ど
)
うしようも
斯
(
か
)
うしようもあつたものぢやない、
293
謝罪
(
あやま
)
つてお
迎
(
むか
)
へするより
仕方
(
しかた
)
がないワ』
294
虎彦
(
とらひこ
)
『それだと
云
(
い
)
うてあんな
綺麗
(
きれい
)
な
美人
(
びじん
)
が
二人
(
ふたり
)
も
傍
(
そば
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
るぢやないか、
295
睾丸
(
きんたま
)
を
提
(
さ
)
げた
男
(
をとこ
)
が、
296
あんな
綺麗
(
きれい
)
な
美人
(
びじん
)
の
傍
(
そば
)
で
謝罪
(
あやま
)
るなんて
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
が
全潰
(
まるつぶ
)
れだ、
297
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だなア』
298
熊彦
(
くまひこ
)
『エヽ、
299
身
(
み
)
から
出
(
で
)
た
錆
(
さび
)
、
300
誰人
(
だれ
)
に
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
ふ
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
301
恥
(
はぢ
)
を
忍
(
しの
)
んで
参
(
まゐ
)
りませう、
302
サア
虎彦
(
とらひこ
)
、
303
俺
(
おれ
)
に
従
(
つ
)
いて
来
(
く
)
るのだよ』
304
虎彦
(
とらひこ
)
『
本当
(
ほんたう
)
に
土竜
(
むぐらもち
)
になり
度
(
た
)
いワ、
305
せめて
貴様
(
きさま
)
の
後
(
あと
)
から
俺
(
おれ
)
の
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
往
(
い
)
かうかなア、
306
さうぢやと
云
(
い
)
うて
貴様
(
きさま
)
より
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
が
背
(
せ
)
が
高
(
たか
)
いから
肝腎
(
かんじん
)
の
顔
(
かほ
)
の
方
(
はう
)
が
見
(
み
)
えるなり、
307
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だ』
308
熊彦
(
くまひこ
)
『
何
(
いづ
)
れ
面
(
つら
)
を
晒
(
さ
)
らされるのだ、
309
併
(
しか
)
し
一
(
いち
)
時
(
じ
)
凌
(
しの
)
ぎに
俺
(
おれ
)
の
後
(
あと
)
から、
310
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
めて
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るか、
311
邪魔臭
(
じやまくさ
)
ければ
四
(
よ
)
つ
這
(
ばひ
)
になつて
従
(
つ
)
いて
来
(
こ
)
い、
312
さうすれば
暫
(
しばら
)
くなりと
助
(
たす
)
かるだらう』
313
虎彦
(
とらひこ
)
は
熊彦
(
くまひこ
)
の
後
(
あと
)
から
這
(
は
)
はぬ
許
(
ばか
)
りに
屁
(
へ
)
つぴり
腰
(
ごし
)
をしながら
従
(
つ
)
いて
往
(
ゆ
)
く。
314
熊彦
(
くまひこ
)
『モシモシ
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
、
315
先刻
(
せんこく
)
は
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しまして、
316
何
(
なん
)
とも
顔
(
かほ
)
の
合
(
あは
)
しやうがありませぬ、
317
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
面
(
めん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました』
318
馬公
(
うまこう
)
『ハイ、
319
有難
(
ありがた
)
う、
320
吾々
(
われわれ
)
のやうな
無礼者
(
ぶれいもの
)
に、
321
左様
(
さやう
)
な
鄭重
(
ていちよう
)
な
言葉
(
ことば
)
をお
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
さつては
畏
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
ります、
322
貴方
(
あなた
)
の
背後
(
うしろ
)
に
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
た
影
(
かげ
)
はなんで
御座
(
ござ
)
いますか』
323
熊彦
(
くまひこ
)
『これは
私
(
わたくし
)
の
影法師
(
かげぼうし
)
で
御座
(
ござ
)
います』
324
馬公
(
うまこう
)
『お
日様
(
ひさま
)
が
西
(
にし
)
に
輝
(
かがや
)
いて
御座
(
ござ
)
るのに、
325
この
影法師
(
かげぼうし
)
は
南
(
みなみ
)
の
方
(
はう
)
へさして
居
(
ゐ
)
ますなア』
326
熊彦
(
くまひこ
)
『
此奴
(
こいつ
)
ア
高城山
(
たかしろやま
)
で
生擒
(
いけど
)
つた
虎
(
とら
)
で
御座
(
ござ
)
います』
327
虎彦
(
とらひこ
)
『オイ
熊彦
(
くまひこ
)
、
328
余
(
あま
)
り
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
扱
(
あつか
)
ひにするものぢやないぞ、
329
モシモシ
今
(
いま
)
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
を
)
る
奴
(
やつ
)
は、
330
人間
(
にんげん
)
に
見
(
み
)
えても
此奴
(
こいつ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
四足
(
よつあし
)
の
熊
(
くま
)
で
御座
(
ござ
)
います』
331
熊彦
(
くまひこ
)
『エヽいらぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものぢやない
哩
(
わい
)
、
332
モシモシ
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
さん、
333
私
(
わたくし
)
は
良心
(
りやうしん
)
に
責
(
せめ
)
られて
貴方
(
あなた
)
の
前
(
まへ
)
へ
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るだけの
勇気
(
ゆうき
)
がありませぬ、
334
お
詫
(
わび
)
のために
恥
(
はぢ
)
を
忍
(
しの
)
んで
四足
(
よつあし
)
になつて
参
(
まゐ
)
りました、
335
何卒
(
どうぞ
)
、
336
神直日
(
かむなほひ
)
、
337
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
して
下
(
くだ
)
さいまして
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
し、
338
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ、
339
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
に
大変
(
たいへん
)
なお
目玉
(
めだま
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しました。
340
三五教
(
あななひけう
)
のお
節
(
せつ
)
さまも
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
なさいます、
341
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
がお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さらねば
私
(
わたくし
)
達
(
たち
)
は
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
鼻
(
はな
)
の
下
(
した
)
が
干上
(
ひあ
)
つがて
仕舞
(
しま
)
ひます。
342
何卒
(
どうぞ
)
、
343
虎
(
とら
)
一匹
(
いつぴき
)
、
344
熊
(
くま
)
一匹
(
いつぴき
)
助
(
たす
)
けると
思
(
おも
)
うてお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
345
馬公
(
うまこう
)
『ハイ、
346
有難
(
ありがた
)
う、
347
何卒
(
なにとぞ
)
宜敷
(
よろし
)
うお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
348
鹿公
(
しかこう
)
『
御
(
ご
)
丁寧
(
ていねい
)
なお
迎
(
むか
)
ひ
有難
(
ありがた
)
う
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
します』
349
熊公
(
くまこう
)
は
馬
(
うま
)
、
350
鹿
(
しか
)
の
頭部
(
とうぶ
)
に
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
ぎ、
351
熊公
『ヤア、
352
お
頭
(
つむり
)
に
大変
(
たいへん
)
に
血
(
ち
)
が
流
(
なが
)
れて
居
(
を
)
ります、
353
どうなさいました』
354
馬公
(
うまこう
)
『これは
貴方
(
あなた
)
のお
慈悲
(
じひ
)
の
鞭
(
むち
)
で
御座
(
ござ
)
います』
355
鹿公
(
しかこう
)
『これも
矢張
(
やつぱり
)
、
356
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
のお
情
(
なさけ
)
で、
357
結構
(
けつこう
)
なお
蔭
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
きました』
358
虎
(
とら
)
、
359
熊
(
くま
)
は
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
くより、
360
大地
(
だいち
)
に
犬踞
(
いぬつくばひ
)
となり
拳大
(
こぶしだい
)
の
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ、
361
片手
(
かたて
)
に
捧
(
ささ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
362
虎彦、熊彦
『モシ
馬公
(
うまこう
)
に
鹿公
(
しかこう
)
さま、
363
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わたくし
)
にもこの
石
(
いし
)
をもつて
頭
(
あたま
)
に
沢山
(
どつさり
)
お
蔭
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
かして
下
(
くだ
)
さいませ、
364
さうでなければ
奥
(
おく
)
に
這入
(
はい
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませぬ、
365
何卒
(
どうぞ
)
お
願
(
ねが
)
ひで
御座
(
ござ
)
います』
366
馬公
(
うまこう
)
『それは
絶対
(
ぜつたい
)
になりませぬ』
367
鹿公
(
しかこう
)
『
折角
(
せつかく
)
の
御
(
ご
)
懇望
(
こんまう
)
なれど、
368
これ
許
(
ばか
)
りは
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう』
369
隆靖彦
(
たかやすひこ
)
『
皆
(
みな
)
さまの
真心
(
まごころ
)
が
現
(
あら
)
はれて
実
(
じつ
)
に
気分
(
きぶん
)
が
冴
(
さ
)
え
冴
(
ざ
)
え
致
(
いた
)
しました。
370
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
思召
(
おぼしめ
)
しで
御座
(
ござ
)
いませう』
371
隆光彦
(
たかてるひこ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
事
(
こと
)
は
私
(
わたくし
)
にお
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
さいませ、
372
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
がお
待
(
ま
)
ち
兼
(
かね
)
でせう、
373
サア
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
374
熊彦
(
くまひこ
)
、
375
虎彦
(
とらひこ
)
は
四這
(
よつば
)
ひになり、
376
熊彦、虎彦
『サアサア
四足
(
よつあし
)
の
後
(
あと
)
へ
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい、
377
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう』
378
馬公
(
うまこう
)
『そんな
事
(
こと
)
をなさるには
及
(
およ
)
ばぬぢやありませんか、
379
ナア
鹿公
(
しかこう
)
さま』
380
鹿公
(
しかこう
)
『ヘエ、
381
さうですとも、
382
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
さま、
383
何卒
(
どうぞ
)
立
(
た
)
つて
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
384
虎
(
とら
)
、
385
熊
(
くま
)
『
何卒
(
どうぞ
)
、
386
門
(
もん
)
へ
這入
(
はい
)
る
迄
(
まで
)
この
儘
(
まま
)
にさし
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませ』
387
馬公
(
うまこう
)
『アヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
388
そんなら
馬
(
うま
)
も
鹿
(
しか
)
も
四足
(
よつあし
)
になつて
這
(
は
)
つて
往
(
ゆ
)
かうかなア』
389
と
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
を
四這
(
よつば
)
ひになつて
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
390
熊
(
くま
)
を
先頭
(
せんとう
)
に
虎
(
とら
)
、
391
馬
(
うま
)
、
392
鹿
(
しか
)
、
393
四四十六
(
ししじふろく
)
足
(
あし
)
の
変態
(
へんたい
)
動物
(
どうぶつ
)
は
表門
(
おもてもん
)
さして、
394
のそりのそりと
這
(
は
)
つて
往
(
ゆ
)
く。
395
隆靖彦
(
たかやすひこ
)
『
何
(
なん
)
と
誠
(
まこと
)
と
云
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものですなア』
396
隆光彦
(
たかてるひこ
)
『ヤア
実
(
じつ
)
に
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました』
397
と
感歎
(
かんたん
)
しながら
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
さうな
顔
(
かほ
)
をして
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
跡
(
あと
)
をつけて
往
(
ゆ
)
く。
398
(
大正一一・五・八
旧四・一二
加藤明子
録)
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【第11章 変態動物|第19巻|如意宝珠|霊界物語|/rm1911】
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